本発明は、取水目的の井戸、もしくは、汚染された土壌の地下水の調査や、土壌を浄化する工法などに使用される観測井戸などの井戸の構築方法に関するものである。
従来、地中の地下水を採取したり、地中の気体を吸引したり、または地中に空気を送り込んだりするために、井戸を構築することが知られている。例えば、このような井戸は、ボーリングマシンで削孔したケーシング孔に、孔の直径より一回り小さい直径の井戸管を建て込み、その井戸管と孔壁との間には砂などのろ過材料を充填し、最後にケーシングを引き抜いて構築する。
この井戸管は、地下水を採取した際、深さの管壁に孔あるいは開口部(ストレーナ)が形成されており、地中から孔に流れ込んだ地下水は、ろ過材料によって土砂などの侵入が阻止されて、地下水のみがストレーナを通って井戸管の内部に流れ込むようになっている。
しかしながらこのような井戸の構築方法は、孔を掘削した後に井戸管の建て込み、ろ過材の充填、ケーシングの引き抜きなど工程が多くなるので手間がかかるうえに、使用部材が多いのでコストが高くなる傾向にある。
下記特許文献には外周に複数のスリットが形成されたスクリーン管を備えた特殊な井戸用管を、クローラ式の打込み機で地中に打ち込んで井戸を構築する方法が開示されている。
特開2000−28495号公報
特許文献1では、図6に示すように、クローラ13上に搭載された小形の打
込機15を使用し、管体2を土中へ打ち込む。
この打ち込みは、打込機15のコラム18に設けられた昇降装置14を油圧により駆動して、該昇降装置に組み込まれた打撃ハンマー16を上昇させて、矢印Pで示すように所定長の井戸用管10の頭部を叩きながら井戸用管10の打ち込みを行う。
なお、打撃ハンマー16から打ち込み衝撃を受ける井戸用管10の後端には被打撃ヘッド部30が取り付けられている。
井戸用管10を打ち込むにあたり、打撃ハンマー16のストローク長を勘案した寸法の管体を構成する。
例えば貫入部1と短管22、さらにスクリーン管4を接続して長さ1.5mの管体を用意し、該管体を地中に打ち込む。適宜の深さまで管体の打ち込みがなされたら、高さが1.0mの短管22を継ぎ足して打ち込みを行う。
以下、順次短管を継ぎ足しながら井戸用管10の土中Eへの打ち込みを行い、スクリーン管4が所定の深度に達したところで打ち込みを停止し、井戸の埋設が完了する。
前記特許文献1のように打撃ハンマーで頭部を叩きながら管体を地中に打ち込むのでは堅牢な管が必要となり、管の肉厚が厚くなるので内径が小さくなり、集水効率が低下するという問題がある。また、大きな内径を確保すると外径も大きくなるので、大型の打込み機が必要になる。
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、打撃による埋設ではないので堅牢な管を用いずともすみ、その結果、迅速かつ安価に井戸の構築でき、例えば災害復旧活動時、水源確保が困難な地域のおける簡易井戸の構築などが可能となる井戸の構築方法を提供することにある。
前記目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、外周に複数の開口部が形成されて内外が連通された有孔管材を取水部として地中に打ち込んでおこなう井戸の構築方法であって、取水部先に尖り状の掘削ヘッドを設置し、取水部およびその上の取水管内を貫通する掘削回転軸で掘削ヘッドを回転させながら取水部およびその上の取水管を地中に掘進させることを要旨とするものである。
請求項1記載の本発明によれば、掘削回転軸で掘削ヘッドを回転させながら同時に取水部およびその上の取水管を地中に埋設して井戸を構築できるものであり、また、取水部は外周に複数の開口部が形成されて内外が連通された有孔管材によるものなので、ここから水を取り込むことができる。
請求項2記載の本発明は、取水部は、内外の方向に貫通する複数の透水孔をその周壁に同一方向にかつ直線状に延びるように形成した熱可塑性樹脂製かご状体の内周面側に前記複数の透水孔を覆うように透水性フィルタを配置したことを要旨とするものである。
請求項2記載の本発明によれば、複数の透水孔は、同一方向にかつ直線状に延びるようにそれぞれ形成されているため、透水孔の向きが地盤の水脈の流れに沿うように埋設することで透水効率を上げることができる。また、複数の透水孔が同一方向にかつ直線状に延びるように形成されているため、簡易な構造の金型を使用して形成することが可能になるため、製造コストを低減することができる。
さらに、透水孔を覆う透水性フィルタに地中の石、砂等が過度に付着すると、透水孔が水を通さなくなってしまう(透水孔に目詰まりが生じてしまう)が、透水孔の部位で比較的大きな石、砂等をまずブロックし、その後、透水性フィルタによって細かい砂等をブロックすることができる。このため、透水性フィルタに比較的大きな石、砂等が付着することを効果的に防止することができ、透水孔の目詰まりを効率良く防止することができる。
請求項3記載の本発明は、透水性フィルタは熱可塑性樹脂製かご状体の外側を覆い、その上をジオテキスタイルの網体(ジオグリッド)で押えることを要旨とするものである。
請求項3記載の本発明によれば、透水性フィルタが外周側に配置されると、透水性フィルタは土や砂等に常時接することになるが、その上をジオテキスタイルの網体(ジオグリッド)で押えることで防護し、透水性フィルタが破損することを効果的に防止することができる。
請求項4記載の本発明は、掘削ヘッドは、取水部の先を嵌合する筒状胴体部の先に放射線形状の先端翼を設け、また、筒状胴体部の周壁にコテ用凸条を設けてなる無排土掘削ヘッドであることを要旨とするものである。
請求項4記載の本発明によれば、掘削ヘッドは掘削回転軸で回転しながら降下し、土中を掘削推進するが、先端翼は放射線形状で、掘削ヘッド直下の土砂を回転により徐々に外径方向に搬送して、掘削していく。外径まで搬送された土砂はコテ用凸条によって掘削孔壁に押し付けることにより、無排土掘削を行うことができる。そして、土砂が圧密された孔壁は、その中を取水部およびその上の取水管が回転しながら降下していく場合に崩壊を生じるおそれがない。
請求項5記載の本発明は、掘削ヘッドは、筒状胴体部の底に凹孔を形成し、掘削回転軸と着脱自在に係合させ、所定深度掘進後取水部およびその上の取水管とともに地中に残置することを要旨とするものである。
請求項5記載の本発明によれば、掘削ヘッドは取水部およびその上の取水管とともに地中に残置するものであり、掘削回転軸は掘削ヘッドの掘進中はこれと係合して回転駆動を行うが、所定深度まで掘進した後では掘削ヘッドと切り離し、引き上げを行う。
請求項6記載の本発明は、掘削ヘッドは、取水部先を嵌合する筒状胴体部の先に拡径羽根を設け、また、筒状胴体部の周壁にコテ用凸条を設けてなる無排土掘削ヘッドであることを要旨とするものである。
請求項6記載の本発明によれば、拡径羽根を設けることで回転掘削時には羽根を拡径して必要な掘削径を確保できる。
請求項7記載の本発明は、掘削ヘッドは、筒状胴体部と掘削回転軸とを着脱自在に係合させ、所定深度掘進後取水部およびその上の取水管とともに筒状胴体部のみを地中に残置することを要旨とするものである。
以上述べたように本発明の井戸の構築方法は、井戸を構築するための取水部およびその上の取水管を掘削と同時に回転力および圧縮力をかけること無く埋設することができ、打撃による埋設ではないので堅牢な管を用いずともすみ、その結果、迅速かつ安価に井戸の構築ができるものである。
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の井戸の構築方法の第1実施形態を示す一部切欠いた正面図で、本発明により構築する井戸は取水管5の先端に取水部3を設けたものを井戸として埋設するものである。
取水部3は、周に複数の開口部が形成されて内外が連通された有孔管材で構成し、これに接続する取水管5には、塩化ビニル管、薄肉鋼管、ホース、蛇腹管などが使用できる。
このような取水管5の先端に取水部3を設けたもの井戸構成材は、掘削機により、掘進とともに設置するものであり、掘削機としては前記従来例として図5にその1例を説明すると、クローラ13等の重機に起伏自在に備えたリーダー6のトップシーブから駆動装置7を昇降自在に吊り下げ、駆動装置7に連結する掘削回転軸8の先端に尖り状の掘削ヘッド9を設置した。この掘削機および掘削装置には、通常地盤改良、地質調査などで使用する重機および掘削ロッドが使用できる。
掘削ヘッド9は前記取水部3の先を嵌合する筒状胴体部11の先にフィッシュテールと称する放射線形状の先端翼12を設け、また、筒状胴体部11の周壁に丸棒によるコテ用凸条17を設けてなる無排土掘削ヘッドである。
先端翼12は先端先細りで湾曲した羽根であり、本実施形態では掘削ヘッド9の中心を点対称として左右に配設される、その側端は筒状胴体部11よりも張り出し、掘削径は一例としてφ155とした。
また、掘削ヘッド9は、掘削回転軸8と着脱自在に係合させるため、筒状胴体部11の底板11aに掘削ヘッド9の中心を点対称として扇形の凹孔19を形成した。
図示は省略するが、掘削回転軸8の先端には前記凹孔19に係止する機構を設け、掘削回転軸8が正転の場合は掘削ヘッド9を拘束して回転駆動し、逆転の場合は掘削ヘッド9を離脱させるものである。
取水部3は、内外の方向に貫通する複数の透水孔20をその周壁に同一方向にかつ直線状に延びるように形成した熱可塑性樹脂製かご状体21による。
熱可塑性樹脂は、ポリエステル、ポリプロピレン等であり、各透水孔20は、熱可塑性樹脂製かご状体21の外周面から内周面まで延びるように形成されている。
透水孔20は貫通方向の長さが所定寸法である第1の透水孔と、貫通方向の長さが所定寸法より長い第2の透水孔とを含んでいる。透水孔20の長さが長いほど目詰まりし難くできるので、異なった長さの透水孔20を設けることで、一時に全ての透水孔20が地中の砂等によって目詰まりしたり、内部に砂等が侵入することを効果的に防止することができる。
熱可塑性樹脂製かご状体21は円筒形で、円筒軸方向の断面視で半円形状の2分体を例えば超音波溶着等の方法によって溶着してなる。
熱可塑性樹脂製かご状体21の内周面側または外周面側に透水性フィルタ23を前記複数の透水孔20を覆うように配置する。
透水性フィルタ23は、その厚みが例えば1mm、2mm程度の不織布であり、熱可塑性樹脂製かご状体21に一体成型されている。
透水性フィルタ23は、熱可塑性樹脂製かご状体21と同様に、熱可塑性樹脂製(ポリエステル、ポリプロピレン等製)である。これによって、熱可塑性樹脂製かご状体21の金型成型時に、金型内に透水性フィルタ23を入れた状態で、材料を金型内に入れることで、透水性フィルタ23と熱可塑性樹脂製かご状体21とを容易に溶着させて一体成型することが可能になる。
透水性フィルタ23を熱可塑性樹脂製かご状体21の外側を覆うように配設する場合には、さらにその上をジオテキスタイルの網体24(ジオグリッド)で押える。
ジオグリッドには延伸ポリプロピレンテープ製の芯材に、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂を被覆した帯体を格子状に織り、交点を加熱融着により一体化した構造のセルフォース(旭化成工業株式会社の登録商標名)が好適であり、補強材として必要な引張強度特性、クリープ特性、耐衝撃性、耐久性、土との摩擦特性、耐薬品性に優れている。
セルフォースは、特に、耐衝撃性においては盛土材料が岩ずりでも、敷き均し転圧時の損傷による強度低下が小さく(強度保持率94%以上)、安全性の高い土構造物が構築できるものであり、クリープ低減係数が大きく(0.65)、本発明においてこのようなジオテキスタイルの網体24で透水性フィルタ23を外側から被覆保護した。網体24の固定はクリップ止もしくは接着により行う。
本発明は掘削機により、先端に取水部3を設けた取水管5を地中に打ち込んで井戸を構築するものであり、掘削ヘッド9の筒状胴体部11に取水部3の先を嵌合させ、掘削回転軸8を取水部3および取水管5に挿通させ、掘削回転軸8を回転(正転)させて掘削ヘッド9により掘進を行う。
掘削ヘッド9は先端翼12で、掘削ヘッド直下の土砂を回転により徐々に筒状胴体部11の外径方向に搬送し、外径まで搬送された土砂はコテ用凸条17によって掘削孔壁に押し付けることにより、無排土掘削を行う。
土砂が圧密された孔壁は、その中を取水部3およびその上の取水管5が回転しながら降下していく場合に崩壊を生じるおそれがない。
取水部3が地下水脈まで達したら、掘削回転軸8を逆転させて掘削ヘッド9との係合を解除し、掘削ヘッド9をアンカー体として残置して掘削回転軸8のみを地上に引き抜く。
なお、取水管5はその径は取水部3の径よりも細いか、もしくは同等なものでよく、図示は省略するが途中継ぎ足し可能で、掘削回転軸8を継ぎ足す場合に、必要に応じて長くしていくことができる。
図2は本発明の第2実施形態を示すもので、掘削ヘッド9は、取水部3の先を嵌合する筒状胴体部11の先に前記先端翼12の代わりに拡径羽根25を設けた。拡径羽根25は掘削ヘッド9の軸部に対して掘削アーム25aが掘進時には広がるように軸着される。
なお、筒状胴体部11の周壁にコテ用凸条17を設けてなる無排土掘削ヘッドである点は前記第1実施形態と同じである。
この第2実施形態によれば掘削ヘッド9は、筒状胴体部11と掘削回転軸8とを着脱自在に係合させ、所定深度掘進後、取水部3およびその上の取水管5とともに筒状胴体部11のみを地中に残置して、拡径羽根25ごと掘削回転軸8を地上に引き抜くことができる。
以上の適用例は、例えば簡易に井戸を構築する場合で、災害復旧時に迅速に井戸を構築する必要がある場合などに好適であり、地中に埋設され、地下水などに含まれる汚染物質の採取・観測井戸の構築などにも適用可能なものである。
本発明の井戸の構築方法の第1実施形態を示す一部切欠いた正面図である。
本発明の井戸の構築方法の第2実施形態を示す一部切欠いた正面図である。
掘削ヘッドの側面図である。
掘削ヘッドの底面図である。
掘削機の説明図である。
従来例を示す正面図である。
1…貫入部 2…管体
3…取水部 4…スクリーン管
5…取水管 6…リーダー
7…駆動装置 8…掘削回転軸
9…掘削ヘッド 10…井戸用管
11…筒状胴体部 11a…底板
12…先端翼 13…クローラ
14…昇降装置 15…打込機
16…打撃ハンマー 17…コテ用凸条
18…コラム 19…凹孔
20…透水孔 21…熱可塑性樹脂製かご状体
22…短管 23…透水性フィルタ
24…網体 25…拡径羽根
25a…掘削アーム 30…被打撃ヘッド部
本発明は、取水目的の井戸、もしくは、汚染された土壌の地下水の調査や、土壌を浄化する工法などに使用される観測井戸などの井戸の構築方法に関するものである。
従来、地中の地下水を採取したり、地中の気体を吸引したり、または地中に空気を送り込んだりするために、井戸を構築することが知られている。例えば、このような井戸は、ボーリングマシンで削孔したケーシング孔に、孔の直径より一回り小さい直径の井戸管を建て込み、その井戸管と孔壁との間には砂などのろ過材料を充填し、最後にケーシングを引き抜いて構築する。
この井戸管は、地下水を採取した際、深さの管壁に孔あるいは開口部(ストレーナ)が形成されており、地中から孔に流れ込んだ地下水は、ろ過材料によって土砂などの侵入が阻止されて、地下水のみがストレーナを通って井戸管の内部に流れ込むようになっている。
しかしながらこのような井戸の構築方法は、孔を掘削した後に井戸管の建て込み、ろ過材の充填、ケーシングの引き抜きなど工程が多くなるので手間がかかるうえに、使用部材が多いのでコストが高くなる傾向にある。
下記特許文献には外周に複数のスリットが形成されたスクリーン管を備えた特殊な井戸用管を、クローラ式の打込み機で地中に打ち込んで井戸を構築する方法が開示されている。
特開2000−28495号公報
特許文献1では、図6に示すように、クローラ13上に搭載された小形の打込機15を使用し、管体2を土中へ打ち込む。
この打ち込みは、打込機15のコラム18に設けられた昇降装置14を油圧により駆動して、該昇降装置に組み込まれた打撃ハンマー16を上昇させて、矢印Pで示すように所定長の井戸用管10の頭部を叩きながら井戸用管10の打ち込みを行う。
なお、打撃ハンマー16から打ち込み衝撃を受ける井戸用管10の後端には被打撃ヘッド部30が取り付けられている。
井戸用管10を打ち込むにあたり、打撃ハンマー16のストローク長を勘案した寸法の管体を構成する。
例えば貫入部1と短管22、さらにスクリーン管4を接続して長さ1.5mの管体を用意し、該管体を地中に打ち込む。適宜の深さまで管体の打ち込みがなされたら、高さが1.0mの短管22を継ぎ足して打ち込みを行う。
以下、順次短管を継ぎ足しながら井戸用管10の土中Eへの打ち込みを行い、スクリーン管4が所定の深度に達したところで打ち込みを停止し、井戸の埋設が完了する。
前記特許文献1のように打撃ハンマーで頭部を叩きながら管体を地中に打ち込むのでは堅牢な管が必要となり、管の肉厚が厚くなるので内径が小さくなり、集水効率が低下するという問題がある。また、大きな内径を確保すると外径も大きくなるので、大型の打込み機が必要になる。
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、打撃による埋設ではないので堅牢な管を用いずともすみ、その結果、迅速かつ安価に井戸の構築でき、例えば災害復旧活動時、水源確保が困難な地域のおける簡易井戸の構築などが可能となる井戸の構築方法を提供することにある。
前記目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、外周に複数の開口部が形成されて内外が連通された有孔管材を取水部として地中に打ち込んでおこなう井戸の構築方法であって、取水部は、内外の方向に貫通する複数の透水孔をその周壁に同一方向にかつ直線状に延びるように形成した熱可塑性樹脂製かご状体の前記複数の透水孔を覆うように透水性フィルタを配置し、透水性フィルタは熱可塑性樹脂製かご状体の外側を覆い、その上をジオテキスタイルの網体(ジオグリッド)で押え、取水部先に尖り状の掘削ヘッドを設置し、取水部およびその上の取水管内を挿通する掘削回転軸で掘削ヘッドを回転させながら取水部およびその上の取水管を地中に掘進させることを要旨とするものである。
請求項1記載の本発明によれば、掘削回転軸で掘削ヘッドを回転させながら同時に取水部およびその上の取水管を地中に埋設して井戸を構築できるものであり、また、取水部は外周に複数の開口部が形成されて内外が連通された有孔管材によるものなので、ここから水を取り込むことができる。
また、複数の透水孔は、同一方向にかつ直線状に延びるようにそれぞれ形成されているため、透水孔の向きが地盤の水脈の流れに沿うように埋設することで透水効率を上げることができる。また、複数の透水孔が同一方向にかつ直線状に延びるように形成されているため、簡易な構造の金型を使用して形成することが可能になるため、製造コストを低減することができる。
さらに、透水孔を覆う透水性フィルタに地中の石、砂等が過度に付着すると、透水孔が水を通さなくなってしまう(透水孔に目詰まりが生じてしまう)が、透水孔の部位で比較的大きな石、砂等をまずブロックし、その後、透水性フィルタによって細かい砂等をブロックすることができる。このため、透水性フィルタに比較的大きな石、砂等が付着することを効果的に防止することができ、透水孔の目詰まりを効率良く防止することができる。
これに加えて、透水性フィルタが外周側に配置されると、透水性フィルタは土や砂等に常時接することになるが、その上をジオテキスタイルの網体(ジオグリッド)で押えることで防護し、透水性フィルタが破損することを効果的に防止することができる。
請求項2記載の本発明は、掘削ヘッドは筒状胴体部を有し、取水部の先を嵌合する筒状胴体部の先に放射線形状の先端翼を設け、また、筒状胴体部の周壁にコテ用凸条を設けてなる無排土掘削ヘッドであることを要旨とするものである。
請求項2記載の本発明によれば、掘削ヘッドは掘削回転軸で回転しながら降下し、土中を掘削推進するが、先端翼は放射線形状で、掘削ヘッド直下の土砂を回転により徐々に外径方向に搬送して、掘削していく。外径まで搬送された土砂はコテ用凸条によって掘削孔壁に押し付けることにより、無排土掘削を行うことができる。そして、土砂が圧密された孔壁は、その中を取水部およびその上の取水管が回転しながら降下していく場合に崩壊を生じるおそれがない。
請求項3記載の本発明は、掘削ヘッドは、筒状胴体部の底に凹孔を形成し、掘削回転軸と着脱自在に係合させ、所定深度掘進後取水部およびその上の取水管とともに地中に残置することを要旨とするものである。
請求項3記載の本発明によれば、掘削ヘッドは取水部およびその上の取水管とともに地中に残置するものであり、掘削回転軸は掘削ヘッドの掘進中はこれと係合して回転駆動を行うが、所定深度まで掘進した後では掘削ヘッドと切り離し、引き上げを行う。
請求項4記載の本発明は、掘削ヘッドは筒状胴体部を有し、取水部先を嵌合する筒状胴体部の先に拡径羽根を設け、また、筒状胴体部の周壁にコテ用凸条を設けてなる無排土掘削ヘッドであることを要旨とするものである。
請求項4記載の本発明によれば、拡径羽根を設けることで回転掘削時には羽根を拡径して必要な掘削径を確保できる。
請求項5記載の本発明は、掘削ヘッドは、筒状胴体部と掘削回転軸とを着脱自在に係合させ、所定深度掘進後取水部およびその上の取水管とともに筒状胴体部のみを地中に残置することを要旨とするものである。
請求項5記載の本発明によれば、拡径羽根を設ける場合でも同様に掘削ヘッドは取水部およびその上の取水管とともに地中に残置するものであり、掘削回転軸は掘削ヘッドの掘進中はこれと係合して回転駆動を行うが、所定深度まで掘進した後では掘削ヘッドと切り離し、引き上げを行う。
以上述べたように本発明の井戸の構築方法は、井戸を構築するための取水部およびその上の取水管を掘削と同時に回転力および圧縮力をかけること無く埋設することができ、打撃による埋設ではないので堅牢な管を用いずともすみ、その結果、迅速かつ安価に井戸の構築ができるものである。
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の井戸の構築方法の第1実施形態を示す一部切欠いた正面図で、本発明により構築する井戸は取水管5の先端に取水部3を設けたものを井戸として埋設するものである。
取水部3は、周に複数の開口部が形成されて内外が連通された有孔管材で構成し、これに接続する取水管5には、塩化ビニル管、薄肉鋼管、ホース、蛇腹管などが使用できる。
このような取水管5の先端に取水部3を設けたもの井戸構成材は、掘削機により、掘進とともに設置するものであり、掘削機としては前記従来例として図5にその1例を説明すると、クローラ13等の重機に起伏自在に備えたリーダー6のトップシーブから駆動装置7を昇降自在に吊り下げ、駆動装置7に連結する掘削回転軸8の先端に尖り状の掘削ヘッド9を設置した。この掘削機および掘削装置には、通常地盤改良、地質調査などで使用する重機および掘削ロッドが使用できる。
掘削ヘッド9は取水部の先を嵌合する筒状胴体部を有し、前記取水部3の先を嵌合する筒状胴体部11の先にフィッシュテールと称する放射線形状の先端翼12を設け、また、筒状胴体部11の周壁に丸棒によるコテ用凸条17を設けてなる無排土掘削ヘッドである。
先端翼12は先端先細りで湾曲した羽根であり、本実施形態では掘削ヘッド9の中心を点対称として左右に配設される、その側端は筒状胴体部11よりも張り出し、掘削径は一例としてφ155とした。
また、掘削ヘッド9は、掘削回転軸8と着脱自在に係合させるため、筒状胴体部11の底板11aに掘削ヘッド9の中心を点対称として扇形の凹孔19を形成した。
図示は省略するが、掘削回転軸8の先端には前記凹孔19に係止する機構を設け、掘削回転軸8が正転の場合は掘削ヘッド9を拘束して回転駆動し、逆転の場合は掘削ヘッド9を離脱させるものである。
取水部3は、内外の方向に貫通する複数の透水孔20をその周壁に同一方向にかつ直線状に延びるように形成した熱可塑性樹脂製かご状体21による。
熱可塑性樹脂は、ポリエステル、ポリプロピレン等であり、各透水孔20は、熱可塑性樹脂製かご状体21の外周面から内周面まで延びるように形成されている。
透水孔20は貫通方向の長さが所定寸法である第1の透水孔と、貫通方向の長さが所定寸法より長い第2の透水孔とを含んでいる。透水孔20の長さが長いほど目詰まりし難くできるので、異なった長さの透水孔20を設けることで、一時に全ての透水孔20が地中の砂等によって目詰まりしたり、内部に砂等が侵入することを効果的に防止することができる。
熱可塑性樹脂製かご状体21は円筒形で、円筒軸方向の断面視で半円形状の2分体を例えば超音波溶着等の方法によって溶着してなる。
熱可塑性樹脂製かご状体21の内周面側または外周面側に透水性フィルタ23を前記複数の透水孔20を覆うように配置する。
透水性フィルタ23は、その厚みが例えば1mm、2mm程度の不織布であり、熱可塑性樹脂製かご状体21に一体成型されている。
透水性フィルタ23は、熱可塑性樹脂製かご状体21と同様に、熱可塑性樹脂製(ポリエステル、ポリプロピレン等製)である。これによって、熱可塑性樹脂製かご状体21の金型成型時に、金型内に透水性フィルタ23を入れた状態で、材料を金型内に入れることで、透水性フィルタ23と熱可塑性樹脂製かご状体21とを容易に溶着させて一体成型することが可能になる。
透水性フィルタ23を熱可塑性樹脂製かご状体21の外側を覆うように配設する場合には、さらにその上をジオテキスタイルの網体24(ジオグリッド)で押える。
ジオグリッドには延伸ポリプロピレンテープ製の芯材に、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂を被覆した帯体を格子状に織り、交点を加熱融着により一体化した構造のセルフォース(旭化成工業株式会社の登録商標名)が好適であり、補強材として必要な引張強度特性、クリープ特性、耐衝撃性、耐久性、土との摩擦特性、耐薬品性に優れている。
セルフォースは、特に、耐衝撃性においては盛土材料が岩ずりでも、敷き均し転圧時の損傷による強度低下が小さく(強度保持率94%以上)、安全性の高い土構造物が構築できるものであり、クリープ低減係数が大きく(0.65)、本発明においてこのようなジオテキスタイルの網体24で透水性フィルタ23を外側から被覆保護した。網体24の固定はクリップ止もしくは接着により行う。
本発明は掘削機により、先端に取水部3を設けた取水管5を地中に打ち込んで井戸を構築するものであり、掘削ヘッド9の筒状胴体部11に取水部3の先を嵌合させ、掘削回転軸8を取水部3および取水管5に挿通させ、掘削回転軸8を回転(正転)させて掘削ヘッド9により掘進を行う。
掘削ヘッド9は先端翼12で、掘削ヘッド直下の土砂を回転により徐々に筒状胴体部11の外径方向に搬送し、外径まで搬送された土砂はコテ用凸条17によって掘削孔壁に押し付けることにより、無排土掘削を行う。
土砂が圧密された孔壁は、その中を取水部3およびその上の取水管5が回転しながら降下していく場合に崩壊を生じるおそれがない。
取水部3が地下水脈まで達したら、掘削回転軸8を逆転させて掘削ヘッド9との係合を解除し、掘削ヘッド9をアンカー体として残置して掘削回転軸8のみを地上に引き抜く。
なお、取水管5はその径は取水部3の径よりも細いか、もしくは同等なものでよく、図示は省略するが途中継ぎ足し可能で、掘削回転軸8を継ぎ足す場合に、必要に応じて長くしていくことができる。
図2は本発明の第2実施形態を示すもので、掘削ヘッド9は、取水部3の先を嵌合する筒状胴体部11の先に前記先端翼12の代わりに拡径羽根25を設けた。拡径羽根25は掘削ヘッド9の軸部に対して掘削アーム25aが掘進時には広がるように軸着される。
なお、筒状胴体部11の周壁にコテ用凸条17を設けてなる無排土掘削ヘッドである点は前記第1実施形態と同じである。
この第2実施形態によれば掘削ヘッド9は、筒状胴体部11と掘削回転軸8とを着脱自在に係合させ、所定深度掘進後、取水部3およびその上の取水管5とともに筒状胴体部11のみを地中に残置して、拡径羽根25ごと掘削回転軸8を地上に引き抜くことができる。
以上の適用例は、例えば簡易に井戸を構築する場合で、災害復旧時に迅速に井戸を構築する必要がある場合などに好適であり、地中に埋設され、地下水などに含まれる汚染物質の採取・観測井戸の構築などにも適用可能なものである。
本発明の井戸の構築方法の第1実施形態を示す一部切欠いた正面図である。
本発明の井戸の構築方法の第2実施形態を示す一部切欠いた正面図である。
掘削ヘッドの側面図である。
掘削ヘッドの底面図である。
掘削機の説明図である。
従来例を示す正面図である。
1…貫入部 2…管体
3…取水部 4…スクリーン管
5…取水管 6…リーダー
7…駆動装置 8…掘削回転軸
9…掘削ヘッド 10…井戸用管
11…筒状胴体部 11a…底板
12…先端翼 13…クローラ
14…昇降装置 15…打込機
16…打撃ハンマー 17…コテ用凸条
18…コラム 19…凹孔
20…透水孔 21…熱可塑性樹脂製かご状体
22…短管 23…透水性フィルタ
24…網体 25…拡径羽根
25a…掘削アーム 30…被打撃ヘッド部