JP4062127B2 - ディープウエル工法、ディープウエル、覆水井、揚水井、vocの揚水曝気システム、ガス吸引井 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、ストレーナ管の設置を不要としたディープウエル工法、この工法で構築されるディープウエル、覆水井、揚水井、ガス吸引井、並びに前記覆水井及び揚水井を備えたVOCの揚水曝気システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどの塩素系有機化合物に代表されるVOC(有機化合物)による地下水汚染は、帯水層の分布によっては汚染範囲が広範囲に広がる。このVOC除去のための方法の一つとして、VOC汚染範囲を止水壁で囲み、その中の地下水をディープウエルなどで揚水した後、汚染土を掘削してから曝気処理する「掘削曝気法」がある。この方法は、汚染土壌を隔離した後に処理を行うため、確実性が高いもののの、工期・コストの面で不利であるといった課題がある。
【0003】
このため、通常、広範囲の汚染に対しては、揚水した汚染水を曝気して覆水・循環させることを繰返す「揚水曝気法」が採用されている。揚水曝気に際しては、地下水を放流するための覆水井およびポンプ揚水用の揚水井の掘削が必要である。
【0004】
ところで、覆水井および揚水井の施工にあたっては、孔壁崩壊が問題となる。つまり、通常の縦穴掘削に際しては、孔壁崩壊防止用として泥水を用いて掘削を行っているが、泥水を用いた場合には、土壌の透水性が低下し、地盤に対する透水性がなくなるため、泥水を用いることができない。
【0005】
そこで、従来では、オールケーシングにより直径1,000mm程度の径による削孔を行い、その後、直径600mm程度のストレーナ管を建込み、その周囲にフィルター用の砂利を充填してからケーシングを引抜き、ストレーナ管を地中に残置しこれをディープウエルとして活用する方法がおこなわれており、またこれに伴ってストレーナ管の改良なども行われている(特許文献1)。
ストレーナ管は、筒状ケーシングの先端部に、有底のスクリーン管を一体化したもので、スクリーン管の外周にはスリットが形成され、このスリットを通じてスクリーン管の内外を地下水が出入りする。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−269938号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のディープウェル工法にあっては、先端に特殊スリットを形成した高価なストレーナ管を採用するものであるため、ディープウエル一本あたりの設置工費が高く、また、ディープウエルが不要になった場合にはストレーナ管を引抜く手数も生じ、撤去費用も高価となっていた。
【0008】
本発明は、以上の課題を解決するものであって、その目的は、ディープウエルの施工に際してストレーナ管を不要とし、安価に施工できるとともに、ディープウエルが不要になった段階では埋め戻しにより撤去できるようにしたディープウエル工法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は、ディープウエルの内径より大きな径の掘削孔を削孔する工程と、削孔された孔に、不透水性にして硬化性を有する充填材料を充填する工程と、前記充填材料が強度を発現した後、前記ディープウエルの内径と同一径のケーシングによりその先端が前記充填材料の下部を突抜けた状態で削孔する工程と、前記ケーシング先端部にフィルタ材を配置し、該フィルタ材をケーシング先端位置に残置した状態で、ケーシングを引き抜く工程と、を備えたことを特徴とする。従って、本発明工法は、充填材料の充填固化により坑壁の堅牢性を確保した上でケーシングによる削孔により地下透水層に連通させるため、ストレーナ管が不要となる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明では、ディープウエルが覆水井であり、前記削孔深さおよび充填材料の充填深さが、注水レベルの上端位置に設定され、その下部を貫通する削孔位置に設置されるフィルタ材が削孔位置に充填される砂利であることにより、充填材料の下部位置においては砂利を通じて地下連通する。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明では、前記ディープウエルが揚水井であり、ディープウエルの内径より大きな径であって、不透水性層に到達する深さの掘削孔を削孔し、削孔された孔の下部側にフィルタ材として砂利を充填するとともに、上部側に不透水性かつ硬化性の充填材料を充填し、充填材料の強度発現後ディープウエルの内径と同一径のケーシングにより、前記不透水層まで到達する深さまで削孔し、前記ケーシング先端部内周にフィルタ材として円筒形のスクリーンネットを配置し、スクリーンネット籠を前記ケーシング先端位置に残置した状態で該ケーシングを引抜くものであることにより、施工後はスクリーンネット籠の内部に排水ポンプを設置し、ここより地下水の揚水が可能となる。
また、請求項4に記載の発明は、ディープウェルに係るものであり、請求項5に記載の発明は、ディープウエルとして構築される覆水井に係るものであり、請求項6に記載の発明は、ディープウエルとして構築される揚水井に係るものであり、請求項7に記載の発明は、請求項5記載の覆水井と、請求項6記載の揚水井とを備えるVOCの揚水曝気システムに係るものであり、請求項8に記載の発明は、ガス吸引井に係るものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。図1(a)〜(e)は本発明工法を覆水井に適用した場合を示す。
【0013】
まず、(a)に示すように、掘削用重機1を用い、ケーシング付オーガー2を用いて地盤Eを削孔する。地盤Eの削孔は、ボイリングを防止するため、ケーシング3の内部に清水4を満たしつつ行われる。この削孔時における削孔深さDは、得ようとする覆水井の注水レベルとなる位置の上端までであり、また得ようとする覆水井の内径より大きな径とする。なお、ケーシング付オーガー2に代えて、通常のオーガーを用いて地盤を削孔することもできるが、この場合は、孔壁の崩壊を防止するため、掘削孔の内部に泥水を満たしつつ削孔する。
【0014】
次に、(b)に示すように、得られた掘削孔3の内部に硬化性の充填材料5を注入し、清水4と置換える。硬化性充填材料5としては、例えば泥土モルタルなどが用いられる。
【0015】
前記充填材料5の固化後、(c)に示すように、ケーシング付オーガー2を内部が中空のケーシング6に置換え、このケーシング6を用いて、硬化性充填材料5の内側を削孔しつつ内周側に切取られた充填材料5を地上に排出する。この削孔径は、得ようとする覆水井の内径とし、またその削孔深さD2は注水レベルの下部側までとする。この結果、硬化した充填材料5で構成された円筒体からなる覆水井を構築することができる。
【0016】
削孔作業完了後は、(d)に示すように、ケーシング6内にフィルタ材として砂利7を充填しつつケーシング6を上部側に引上げる。これにより、注水レベル以下の位置においては、土圧に抗して砂利7がむき出し状態に周囲地盤に接し、この砂利7を通じて地盤Eに対して透水状態となり、覆水井8を完成する。
【0017】
従って、覆水井8の施工完了後は、(e)に示すように、覆水井8内に水を注入すると、地下水位WLとの水位差に応じた水圧により、注水された水は砂利7を通じて覆水井8の下部周囲から地盤E内に浸透することになる。
【0018】
図2(a)〜(e)は本発明を揚水井に適用した場合を示す。なお、前記と同一箇所には同一符号を付し、異なる箇所および新たに付加した部分のみ異なる符号を用いて説明する。
【0019】
まず(a)に示すように、前記と同様に、ケーシング付オーガー2により清水4を満たしつつ地盤Eを削孔する。この場合の掘削孔3の削孔深さDは、先端が不透水性地盤E1内にやや貫入する程度の深さ、径は得ようとする揚水井の内径より大とする。次に、(b)に示すように掘削孔3の底部側にフィルタ材としての砂利7を所定高さまで投入し、その上部側に充填材料5を投入して清水4と置換する。
【0020】
前記充填材料5の固化養生後、(c)に示すように、掘削用ビットとして内部中空のケーシング6に置換え、このケーシング6を用いて、硬化した充填材料5の内側を削孔しつつ内周側に切取られた充填材料5を排出し、また先端側における砂利7も排出する。この掘削孔径及び掘削深さは前記と同様である。この結果、硬化した充填材料5で構成された円筒体からなる揚水井を構築することができる。
【0021】
その後、(d)に示すように、砂利7の充填位置に筒状のスクリーンネット籠10(図の一部に拡大して示す)を挿通し、その後ケーシング6を引上げる。これによって、砂利7は周囲土圧によって籠10の周囲に密着するが、籠10の耐圧性によってその内側を中空に保持した状態で揚水井11の施工を終了する。この後、籠10の内部に後述する水中ポンプを設置し、これを駆動することによって、地下水は揚水され、地上側に排出される。
【0022】
図3は、以上の覆水井8および揚水井11を用いたVOCの揚水曝気法のシステム構成の例を示すものである。同図において、地盤Eの地下水上流側には複数の覆水井8が設置されている。各覆水井8としては、地盤E内の上部側不透水層E1に到達したもの、これを突抜けて下部側不透水層E2に到達したもの、及びその中間深さに到達したものがある。一方、地盤Eにおける地下水位の下流側には複数の揚水井11が設置され、それぞれが上部側不透水層E1,下部側不透水層E2に到達しており、また、その最低部には前述の水中ポンプ12が配置されている。以上のように、これら覆水井8及び揚水井11は指定された汚染土壌の上流と下流とを囲うようにして複数配置される。
【0023】
さらに、地表部には曝気装置14及びこれに接続したVOC吸着塔15が配置されており、各揚水井11の水中ポンプ12によって吸上げられた地下水は、曝気装置14内で曝気され、揮発性のVOCを揮発させ、このVOCは吸着塔15で吸着され、大気中に放出される。曝気を終えた地下水は前記各覆水井8を通じて再び地盤E内に放流されることになり、常時汚染地域内を循環させながら揚水と復水を連続して行うことにより、地下水中に溶出したVOCを順次取除くことができるのである。また、土壌が無害化したならば、水中ポンプ12のみを撤去し、埋め戻すことにより現状復帰ができることになる。
【0024】
図4(a)〜(c)は、揚水井、覆水井の他の構築工法にして、ガス吸引井としても利用することができる本発明のディープウェル工法を示している。同図(a)は、図2(a)に示されるように、ケーシング付オーガー2により清水4を満たしつつ地盤Eを削孔した後、掘削孔3内にパイプ16をその先端が掘削孔3の底部近傍に至るように挿入してから掘削孔3内にフィルタ材としての砂利7を所定高さまで投入し、その上部側に充填材料5を投入して清水4と置換する。パイプ16の挿入後、適宜のタイミングでパイプ16を通じて砂利7内に水中ポンプ12を挿入し、水中ポンプ12を駆動することにより、これに接続された揚水管17を通して揚水することができる。
【0025】
図4(b),(c)は、(a)と同様に地盤Eを削孔した後、掘削孔3内にパイプ16を後述する砂利7の中にその先端が埋設されるように挿入してから、掘削孔3内にフィルタ材としての砂利7を所定高さまで投入し、その上部側に充填材料5を投入して清水4と置換すると、パイプ16を通じて覆水することができる覆水井として(b)、またパイプ16を通じてガス吸引することができるガス吸引井とすることができる(c)。
【0026】
なお、上述したように、硬化した充填材料5を掘削することにより構築される覆水井及び揚水井は、その頂部の崩壊や地下掘削工事の際における衝撃等からの損壊を防止するため、内部にメッシュ筋を配置したり、複数の主筋とその周囲に配置されたフープ筋とを配置することが好ましい。
【0027】
【発明の効果】
以上の説明により明らかなように、本発明によるディープウエル工法によれば、ディープウエル施工に際してストレーナ管を不要とし、安価に施工できるとともに、ディープウエルが不要になった段階では埋め戻しにより撤去できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(e)は本発明工法を覆水井の施工に適用した場合の施工手順を示す説明図である。
【図2】(a)〜(e)は本発明工法を揚水井の施工に適用した場合の施工手順を示す説明図である。
【図3】覆水井および揚水井を用いたVOCの揚水曝気法のシステム構成を示す説明図である。
【図4】(a)〜(c)は、揚水井、覆水井の他の構築工法にして、ガス吸引井としても利用することができる本発明のディープウェル工法を示す説明図である。
【符号の説明】
3 掘削孔
5 硬化性充填材料
6 ケーシング
7 砂利
8 覆水井
10 スクリーンネット籠
11 揚水井
12 水中ポンプ
Claims (8)
- ディープウエルの内径より大きな径の掘削孔を削孔する工程と、
削孔された孔に、不透水性にして硬化性を有する充填材料を充填する工程と、
前記充填材料が強度を発現した後、前記ディープウエルの内径と同一径のケーシングによりその先端が前記充填材料の下部を突抜けた状態で削孔する工程と、
前記ケーシング先端部にフィルタ材を配置し、該フィルタ材をケーシング先端位置に残置した状態で、ケーシングを引き抜く工程と、
を備えたことを特徴とするディープウエル工法。 - 前記ディープウエルが覆水井であり、前記削孔深さおよび充填材料の充填深さが、注水レベルの上端位置に設定され、その下部を貫通する削孔位置に設置されるフィルタ材が該削孔位置に充填される砂利であることを特徴とする請求項1に記載のディープウェル工法。
- 前記ディープウエルが揚水井であり、ディープウエルの内径より大きな径であって、不透水性層に到達する深さの掘削孔を削孔し、削孔された孔の下部側にフィルタ材として砂利を充填するとともに、上部側に不透水性かつ硬化性の充填材料を充填し、充填材料の強度発現後ディープウエルの内径と同一径のケーシングにより、前記不透水性層まで到達する深さまで削孔し、前記ケーシング先端部内周にフィルタ材として円筒形のスクリーンネット籠を配置し、スクリーンネットを前記ケーシング先端位置に残置した状態で該ケーシングを引抜くものであることを特徴とする請求項1に記載のディープウエル工法。
- ディープウエルの内径より大きな径の掘削孔を削孔し、削孔された孔に、不透水性にして硬化性を有する充填材料を充填し、前記充填材料が強度を発現した後、前記ディープウエルの内径と同一径のケーシングによりその先端が前記充填材料の下部を突抜けた状態で削孔し、前記ケーシング先端部にフィルタ材を配置し、該フィルタ材をケーシング先端位置に残置した状態で、ケーシングを引き抜いてなることを特徴とするディープウエル。
- ディープウエルとして構築される覆水井であって、
ディープウエルの内径より大きな径の掘削孔を、削孔深さが注水レベルの上端位置となるように削孔し、削孔された孔に、不透水性にして硬化性を有する充填材料を、充填深さが注水レベルの上端位置となるよう充填し、前記充填材料が強度を発現した後、前記ディープウエルの内径と同一径のケーシングによりその先端が前記充填材料の下部を突抜けた状態で削孔し、前記ケーシング先端部に砂利を配置し、該砂利をケーシング先端位置に残置した状態で、ケーシングを引き抜いてなることを特徴とする覆水井。 - ディープウエルとして構築される揚水井であって、
ディープウエルの内径より大きな径であって、不透水性層に到達する深さの掘削孔を削孔し、削孔された孔の下部側に砂利を充填するとともに、上部側に不透水性にして硬化性を有する充填材料を充填し、前記充填材料が強度を発現した後、前記ディープウエルの内径と同一径のケーシングによりその先端が前記充填材料の下部を突抜けて前記不透水性層まで到達する深さまで削孔し、前記ケーシング先端部内周に円筒形のスクリーンネット籠を配置し、該スクリーンネット籠及び前記砂利をケーシング先端位置に残置した状態で、ケーシングを引き抜いてなることを特徴とする揚水井。 - 請求項5記載の覆水井と、
前記覆水井の地下水下流側に設けられた請求項6記載の揚水井と、
前記揚水井から汲み上げられた地下水を曝気し、揮発性のVOCを揮発させるための曝気装置と、
前記揮発したVOCを吸着するための吸着塔と、
前記曝気装置により曝気された後の地下水を前記覆水井に供給する手段と、を備えることを特徴とするVOCの揚水曝気システム。 - ディープウエルとして構築されるガス吸引井であって、
ディープウエルの内径より大きな径の掘削孔を削孔し、削孔された孔に、不透水性にし て硬化性を有する充填材料を充填し、前記充填材料が強度を発現した後、前記ディープウエルの内径と同一径のケーシングによりその先端が前記充填材料の下部を突抜けた状態で削孔し、前記ケーシング先端部にフィルタ材を配置し、該フィルタ材をケーシング先端位置に残置した状態で、ケーシングを引き抜き、前記充填材料に削孔した孔にパイプを挿入してなり、このパイプを通じてガス吸引することを特徴とするガス吸引井。
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