以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る貨幣処理装置1の正面側の外観を示す斜視図である。
図1に示す貨幣処理装置1は、たとえば、銀行等に設置される出納機である。
貨幣処理装置1は、ばら紙幣処理ユニット2と、包装紙幣処理ユニット3と、包装硬貨処理ユニット4と、ばら硬貨処理ユニット5とを含んでいる。これらの処理ユニットは、図1における左側から順に、包装紙幣処理ユニット3、ばら紙幣処理ユニット2、包装硬貨処理ユニット4、ばら硬貨処理ユニット5の順で配置されている。それぞれの処理ユニットは、対応する貨幣(硬貨または紙幣)の入出金処理を行う。ここで、ばら紙幣は、1枚毎に分離した状態の個々の紙幣を指していて、包装紙幣は、所定数毎にまとめられて帯封された紙幣(まとまった紙幣の束)を指していて、単に「束」と呼ばれることもある。同様に、ばら硬貨は、1枚毎に分離した状態の個々の硬貨を指していて、包装硬貨は、所定数毎にまとめられて包装された硬貨(硬貨のまとまりによって構成された棒状体)を指している。包装紙幣および包装硬貨は、所定数毎にまとめて包装された包装貨幣に含まれる。
貨幣処理装置1は、その上部に、貨幣処理装置1に所定の処理を実行させるために係員によって操作される操作部6と、必要な情報が表示される表示部7(報知手段)とを主に備えている。
図2は、貨幣処理装置1におけるばら紙幣処理ユニット2の模式的な縦断面図である。
図2を参照して、ばら紙幣処理ユニット2は、その筐体10内に、入金部11と、複数(ここでは5つ)の収納庫12と、複数(ここでは2つ)の整理一時保留部13と、出金リジェクト部14と、入金リジェクト部15と、搬送機構16とを備えている。
筐体10の正面(図2では左面)上部には、シャッター17によって開閉される入金口18が形成されていて、入金部11と入金リジェクト部15とが上下に並んで入金口18に臨むように配置されている。複数の収納庫12は、前後方向(図2の左右方向)に並んで配置されていて、各収納庫12には、予め定められた金種のばら紙幣が収納される。また、収納庫12の上部には、一時保留部が設けられており(図示せず)、入金した紙幣を一旦保留し、係員の承認で下部(収納庫12)に収納するようになっている。なお、いずれかの収納庫12は、全ての金種についての損券(傷んだ紙幣)を専用に収納するためのものであってもよい。
筐体10内において、入金部11と各収納庫12とは、入金路19でつながっている。入金路19は、入金部11から延び、収納庫12の手前で収納庫12毎に分岐して、対応する収納庫12に対して別々につながっている。入金路19の途中には、紙幣の金種、正損、真偽および表裏を識別する識別部20が設けられている。入金路19において識別部20よりも収納庫12側には、V字に折れ曲がった反転路21が並列的に接続されている。入金路19において識別部20と反転路21との間から、入金リジェクト路22が分岐して、入金リジェクト部15につながっている。
開放された入金口18から入金部11に入金されたばら紙幣Sは、入金路19を流れて収納庫12側へ搬送される。その途中で、識別部20によってばら紙幣Sの識別が行われ、偽札等であると識別されたばら紙幣Sは、入金リジェクト路22から入金リジェクト部15まで搬送され、入金口18から返却される。表裏が逆であると識別されたばら紙幣Sは、一旦反転路21でスイッチバックされて表裏が直されてから、入金路19に合流する。そして、入金路19において収納庫12の手前まで流れてきたばら紙幣Sは、対応する金種の収納庫12に収納されたり、損券専用の収納庫12に収納されたりする(損券の場合)。
また、ばら紙幣処理ユニット2は、その筐体10内に、出金部23を備えている。筐体10の上面には、シャッター24によって開閉される出金口25が形成されていて、出金部23が出金口25に臨むように配置されている。筐体10内において、各収納庫12と出金部23とは、出金路26でつながっている。出金路26は、各収納庫12から個別に延びてから1つに合流し、出金部23まで延びている。出金路26の途中には、識別部27が設けられている。識別部27の機能は、前述した識別部20とほぼ同じである。出金路26において識別部27よりも出金部23側の部分からは、3つの分岐路28が分岐している。3つの分岐路28のうち、1つは、一方の整理一時保留部13に接続され、他の1つは、他方の整理一時保留部13に接続され、残りの1つは、出金リジェクト部14に接続されている。出金路26において識別部27と分岐路28(識別部27に最も近い分岐路28)との間の部分と、入金路19において反転路21と収納庫12との間の部分とは、中継路29によってショートカットされている。
各収納庫12に収納されたばら紙幣Sは、必要に応じて、収納庫12から繰り出されて出金路26を流れる。その途中で、ばら紙幣Sは、識別部27による識別を受ける。斜行や重送等で異常であると識別されたばら紙幣Sは、分岐路28を介して出金リジェクト部14に収納され、所定のタイミングで回収される。正常であると識別されたばら紙幣Sは、出金部23まで搬送されて出金口25から外部に出金されたり、分岐路28を介して整理一時保留部13に収納されたりする。整理一時保留部13に収納されたばら紙幣Sは、積層状態で収納される。なお、入金部11に入金されたばら紙幣Sが、収納庫12を介さずに、中継路29経由で入金路19から出金路26に受け渡されて整理一時保留部13に収納されることもある。
ここで、搬送機構16は、整理一時保留部13に収納されたばら紙幣Sの積層方向(ここでは筐体10の上下方向)に移動可能な一対のアーム30を備えていて、筐体10内で整理一時保留部13の後側に配置されている。所定枚数まで積層されたばら紙幣Sは、まとまった状態(積層状態)で一対のアーム30によって挟持され、整理一時保留部13から取り出される。搬送機構16は、取り出したばら紙幣Sのまとまりを、ばら紙幣処理ユニット2の隣の包装紙幣処理ユニット3まで搬送する。
図3は、貨幣処理装置1における包装紙幣処理ユニット3の模式的な縦断面図である。
図3を参照して、包装紙幣処理ユニット3は、その筐体40内に、帯封機構41と、第1搬送機構42と、リフト43(入替手段、保留手段)と、第2搬送機構44(入替手段)と、複数(ここでは5つ)のカセット45(収納部)とを含んでいる。また、包装紙幣処理ユニット3は、ばら紙幣処理ユニット2との間で搬送機構16を共有している。つまり、搬送機構16は、ばら紙幣処理ユニット2および包装紙幣処理ユニット3のどちらにも属している。搬送機構16は、筐体40内では、奥寄り(筐体40の後側(図3の右側))に配置される。
帯封機構41は、搬送機構16によってばら紙幣処理ユニット2から包装紙幣処理ユニット3まで搬送されてきたばら紙幣Sのまとまりを受け取って帯封するためのものであって、筐体40内において、搬送機構16の前側(図3の左側)に位置している。帯封機構41の構成として、公知の構成を用いることができる。帯封機構41によって帯封されたばら紙幣Sのまとまりは、前述した包装紙幣(束)Tとなる。
第1搬送機構42は、筐体40内において帯封機構41の前側に設けられている。第1搬送機構42は、上下一対のベルトユニット46を含む。各ベルトユニット46は、前後に離れて配置された一対のローラ47と、これらのローラ47に掛け回された無端状のベルト48と有する。図3を基準として側面視において、上側のベルトユニット46のベルト48は時計回りに周回移動し、下側のベルトユニット46のベルト48は反時計回りに周回移動する。そのため、帯封機構41による帯封を終えた束Tは、周回移動する上下のベルト48の間において前側へ搬送される。
ここで、筐体40内の前寄りには、上下に延びる移動スペース49が形成されている(1点鎖線で囲んだ部分を参照)。移動スペース49の上下方向寸法は、筐体40の内部空間の上下方向寸法とほぼ同じである。束Tは、上下のベルト48によって、移動スペース49へ向けて搬送される。
リフト43は、水平方向に平坦に延びるベース50と、ベース50上に積層された載置板51とを含んでいる。載置板51は、その前端部の支点77を中心として、ベース50と平行な水平位置(実線の載置板51を参照)と、後側へ向かうのに従ってベース50から浮くように傾斜した傾斜位置(点線の載置板51を参照)との間で回動可能である。リフト43全体は、移動スペース49内で上下移動可能である。図3に示されたときのリフト43の上下方向位置を、待機位置ということにする。リフト43は、待機位置を下限として、待機位置から移動スペース49内の任意の位置まで上昇することができる。
ここで、筐体40の正面上部には、シャッター52によって開閉される出金口53が形成されている。出金口53と移動スペース49の上端部とは連通している。また、筐体40の正面下部において、待機位置のリフト43と上下方向で同じ位置には、投出口65が形成されている。この実施形態では、投出口65を開閉するシャッターを筐体40に設けていないが、このシャッターを設けても構わない。
第2搬送機構44は、前後に離れて配置された一対のローラ54と、これらのローラ54に掛け回された無端状のベルト55とを有する。ベルト55は、筐体40の前後方向において長く、その前端部は、移動スペース49内にまではみ出ていて、その後端部は、筐体40の後端部の近傍に配置されている。ベルト55は、図3における側面視において時計回りおよび反時計回りの両方向に周回移動することができる。ベルト55の外周面には、複数の突起56が設けられている。複数の突起56は、ベルト55の周方向(周回移動方向)において等間隔で配置されている。また、第2搬送機構44は、ベルト55の内側の一対のローラ54の間における前側のローラ54の近傍(移動スペース49から離れた位置)に配置された1本の支点ローラ57をさらに有している。ここで、当該前側のローラ54と、ベルト55において支点ローラ57よりも当該前側のローラ54側の部分とのまとまりを、回動ユニット58ということにする。回動ユニット58は、支点ローラ57を支点として、水平方向に延びて移動スペース49内にはみ出した進出位置(実線で示した回動ユニット58を参照)と、移動スペース49から退避して略垂直に延びた退避位置(2点鎖線で示した回動ユニット58を参照)との間で回動可能である。第2搬送機構44には、回動ユニット58を回動させる駆動機構(モータ等)が含まれている。移動スペース49内でリフト43が上下移動している間、回動ユニット58は、退避位置にある。
複数のカセット45は、上下方向に長手のボックス状であって、筐体40の前後方向に並んで配置されている。各カセット45は、筐体40に対して着脱可能である。筐体40の側壁には、着脱されるカセット45を通過させる開口(図示せず)が形成されている。各カセット45では、上面に、出入口59が形成されているとともに、出入口59を開閉するカセットシャッター60が設けられている(図3における最も左側のカセット45を参照)。原則として、各カセット45内には、同一金種の紙幣からなる束Tが、上下に積層された状態で収納される。各カセット45内には、ステージ64(入替手段、移動部材)が設けられている。ステージ64の上面は、水平方向に平坦である。各カセット45内に積層状態で収納された束Tは、ステージ64上に載置され、ステージ64によって下側から支えられている。ステージ64は、束Tが載置された状態で、カセット45内で上下移動可能である。
ここで、前述した第2搬送機構44のベルト55は、筐体40内の全てのカセット45の真上に位置していて、これらのカセット45を上方から前後方向において跨るように配置されている。
筐体40内において、各カセット45の真上かつベルト55よりも低い位置には、本体シャッター61(入替手段)が1つずつ設けられている。そして、筐体40内には、ガイド部材62が設けられている。ガイド部材62は、水平に延びる板状である。ガイド部材62は、隣り合う本体シャッター61の間や、移動スペース49に最も近い本体シャッター61から移動スペース49までの間を塞いでいる。ガイド部材62と本体シャッター61とのまとまりは、水平に延びる1枚の板状をなしていて、ベルト55の下側外周面に対して隙間を隔てて下から対向しており、当該隙間は、束搬送路63となっている。束搬送路63は、筐体40内の全てのカセット45の真上に位置していて、これらのカセット45を上方から跨るように前後(水平)に延びている。
図4は、包装紙幣処理ユニット3における本体シャッター61の構成を示す模式的な平面図である。
ここで、図4を参照して、本体シャッター61の詳細について説明する。1つの本体シャッター61は、一対の開閉板76を含んでいる。一対の開閉板76は、カセット45の並び方向(束搬送路63の延びる方向であり、図4の左右方向)に対して平面視で直交する方向に配列されていて、同一水平面において、互いに接離する方向にスライド可能である(図4の太線矢印参照)。一対の開閉板76が離間して、これらの開閉板76の間にスペースが形成されると、本体シャッター61が開いたことになる(点線で示した開閉板76を参照)。一方、一対の開閉板76が接近して、先ほどのスペースがなくなると、本体シャッター61が閉じたことになる(実線で示した開閉板76を参照)。
次に、図3を参照して、包装紙幣処理ユニット3における束Tの流れについて説明する。
帯封機構41からの束Tは、前述したように、第1搬送機構42の上下のベルト48によって、移動スペース49へ向けて搬送される。このとき、移動スペース49内のリフト43は、第1搬送機構42の位置まで上昇していて、この位置で待機している。第1搬送機構42によって移動スペース49まで搬送された束Tは、リフト43に受け渡され、水平位置の載置板51上に載せられる。
その後、リフト43は、移動スペース49内において、束搬送路63より少し低い位置まで下降する。リフト43の下降が終わったとき、リフト43上の束Tは、束搬送路63と上下方向において同じ位置にある。次いで、今まで退避位置にあった回動ユニット58が進出位置まで回動し、第2搬送機構44のベルト55が、図3における反時計回りに周回移動する。これにより、ベルト55のいずれかの突起56がリフト43上の束Tに引っ掛かり、この束Tを束搬送路63内へ取り込む。引き続きベルト55が周回移動することによって、この束Tは、束搬送路63内において移動スペース49から離れる方向へ搬送される。そして、この束Tが、この束Tと同一金種の束Tを収納するカセット45の真上まで搬送されると、この束Tの搬送(ベルト55の周回移動)がストップする。
次いで、図3における右から2つ目のカセット45を参照して、束搬送路63内の束Tの真下のカセット45におけるステージ64が上昇し、この束Tの真下の本体シャッター61および当該カセット45のカセットシャッター60の両方が開く。これにより、束搬送路63内の束Tは、落下して、先ほど上昇してきたステージ64(ステージ64上に既に束Tが積層されている場合には、最上位の束T)に受け止められる。そして、このステージ64が下降すると、今まで束搬送路63内にあった束Tは、出入口59を経てカセット45内に収納された状態になる。このように、帯封を終えた束Tは、対応するカセット45に収納される。
また、カセット45内から束Tを出金する場合、当該カセット45におけるカセットシャッター60と、このカセット45の真上の本体シャッター61との両方が開く。次いで、当該カセット45内のステージ64が上昇し、ステージ64に積層された束Tにおける最上位の束Tが、カセット45の出入口59を介して束搬送路63内まで押し上げられる。この状態で、第2搬送機構44のベルト55が、図3における時計回りに周回移動する。これにより、ベルト55のいずれかの突起56がこの束Tに引っ掛かり、この束Tを束搬送路63内において移動スペース49側へ搬送する。このとき、第2搬送機構44では、回動ユニット58は、進出位置にあり、リフト43は、移動スペース49内において、束搬送路63より少し低い位置で待機している。また、束Tが移動スペース49側へ搬送されると、この束Tを今まで収納していたカセット45のステージ64が下降するとともに、今まで開いていたカセットシャッター60および本体シャッター61の両方が閉じる。
そして、この束Tが、移動スペース49内まで搬送されると、この束Tの搬送(ベルト55の周回移動)はストップし、この束Tは、真下のリフト43に受け渡され、水平位置の載置板51上に載せられる。同様の手順で、カセット45内の束Tが1つずつ繰り出されて束搬送路63内を搬送され、リフト43の載置板51上に積層される。
リフト43への束Tの積み込みが完了した後、今まで進出位置にあった回動ユニット58が退避位置まで回動し、リフト43は、移動スペース49内において、上限位置(移動スペース49の上端)まで上昇する。この状態で、シャッター52が開いて出金口53が開放され、係員によって、リフト43上の束Tが取り出される。これによって、カセット45内の束Tの出金が完了する。
または、リフト43は、移動スペース49内において、待機位置まで下降する。下降後、リフト43の載置板51が水平位置から傾斜位置まで傾斜し、載置板51上の束Tが、載置板51を滑り落ちて投出口65から機外に投出される。これによっても、カセット45内の束Tが出金される。
このように、各カセット45では、束Tの収納および繰出が、カセットシャッター60がある上端側(出入口59側)において同一方向から行われる。
図5は、包装紙幣処理ユニット3内における1つのカセット45とその周囲の部分とを示す模式図である。
カセット45およびその周囲の詳細について、図5を参照して説明する。前述したように、第2搬送機構44のベルト55の下側外周面と、ガイド部材62および本体シャッター61との間には、束搬送路63が形成されている。筐体40内において、平面視で各カセット45と一致する位置には、上から順に、押圧センサ66と、位置センサ67と、開閉センサ68と、ニアフル検知センサ69と、フル検知センサ70とが設けられている。
押圧センサ66および位置センサ67は、カセット45側でなく、筐体40側に設けられている。押圧センサ66は、上から束搬送路63内に突出するように設けられている。位置センサ67は、本体シャッター61と、その本体シャッター61の真下のカセット45(出入口59)との間に配置されている。位置センサ67は、フォトインタラプタであって、水平方向に離れて配置される発光素子67Aおよび受光素子67Bを含んでいる。発光素子67Aによって発光された検知光(図5における1点鎖線であり、センサ68,69,70において同じ)は、平面視において本体シャッター61(その真下のカセット45の出入口59)を横切ってから受光素子67Bに受光されるようになっている。
開閉センサ68、ニアフル検知センサ69およびフル検知センサ70は、フォトインタラプタであって、カセット45内に設けられている。開閉センサ68は、カセット45の出入口59のすぐ下に配置されていて、ニアフル検知センサ69は、カセット45の底より少し高い位置に配置され、フル検知センサ70は、カセット45の底近辺に配置されている。位置センサ67と同様に、開閉センサ68も発光素子68Aおよび受光素子68Bを含み、ニアフル検知センサ69も発光素子69Aおよび受光素子69Bを含み、フル検知センサ70も発光素子70Aおよび受光素子70Bを含んでいる。開閉センサ68、ニアフル検知センサ69およびフル検知センサ70のそれぞれにおいて、発光素子および受光素子は、水平方向に離れて配置されていて、発光素子によって発光された検知光(図5における1点鎖線)は、平面視において、出入口59を横切ってから受光素子に受光されるようになっている。
また、カセット45内には、上端側および下端側に1つずつローラ71が配置されていて、これらのローラ71に無端状のベルト72が掛け回されている。ベルト72は、図5における時計回りおよび反時計回りの両方に周回移動可能である。ベルト72の周方向1箇所には、取付部材73を介してステージ64が連結されていて、ベルト72の周回移動に応じて、ステージ64は、前述したように上下移動することができる。
カセット45内に収納される束Tの数が多くなると、これらの束Tを下から支えるステージ64は、カセット45内を徐々に下降する。ステージ64が、ニアフル検知センサ69の検知光を遮光するまで下降した時、カセット45内の束Tは、もうすぐ満杯の状態(ニアフル状態)まで収納されている。ステージ64が、フル検知センサ70の検知光を遮光するまで下降した時、カセット45内の束Tは、完全に満杯の状態(フル状態)まで収納されている。このように、ニアフル検知センサ69は、カセット45内の束Tの数がニアフルであるか否かを検知し、フル検知センサ70は、カセット45内の束Tの数がフルであるか否かを検知する。
束搬送路63の束Tをカセット45内に収納する場合や、カセット45内の束Tを出金のために束搬送路63内に送り出す場合には、ステージ64が上昇する。ステージ64またはステージ64にすでに載置された束Tのうち最上位のものが、開閉センサ68の検知光を遮光した時、カセット45のカセットシャッター60が開く。カセットシャッター60が開いた後、ステージ64(または、ステージ64にすでに載置された束Tのうち最上位のもの)がカセット45上端の出入口59より上側に至るまで上昇すると、位置センサ67の検知光がステージ64またはステージ64にすでに載置された束Tによって遮光される。
束搬送路63の束Tをカセット45内に収納する場合、位置センサ67の検知光が遮光されたことに応じて、位置センサ67の検知光が遮光されなくなるまで(透光されるまで)、ステージ64が下降し、下降後の位置で待機する。束搬送路63の束Tは、このカセット45の真上の本体シャッター61上まで搬送される。その後、本体シャッター61が開いて束Tの下からずれるので、この束Tは、落下し、その先で待機していたステージ64(または、ステージ64にすでに載置された束Tのうち最上位のもの)に受け止められる。このとき、受け止められた束Tによって位置センサ67の検知光が遮光されるので、この検知光が透光されるまで、ステージ64が下降し、下降後の位置で待機する。また、このとき、先ほど開いた本体シャッター61が閉じる。そして、束搬送路63における後続の束Tが、この本体シャッター61の上まで搬送されると、本体シャッター61が開いてステージ64に受け止められる。このようにして、ステージ64に束Tが続々と積層される。ステージ64への束Tの積層が完了すると、ステージ64が下降する。下降に伴って、開閉センサ68の検知光が遮光されなくなると、カセットシャッター60が閉じる。そして、ステージ64の下降が完了すると、カセット45内への束Tの収納が完了する。
ステージ64にすでに載置された束Tのうち最上位のものを出金等のために束搬送路63内に送り出す場合、カセット45の上昇に伴って位置センサ67の検知光が遮光されたことに応じて、本体シャッター61が開き、ステージ64がさらに上昇する。そして、当該最上位のもの(束T)が押圧センサ66に下から接触すると、押圧センサ66がONになり、これに応じて、本体シャッター61が閉じる。これにより、ステージ64に載置された束Tのうち最上位の束Tだけが、他の束Tから分離されて束搬送路63内に残される。その後は、前述したように第2搬送機構44のベルト55が周回移動して、束搬送路63内の束Tが移動スペース49側へ搬送される。また、ステージ64が下降する。下降に伴って、開閉センサ68の検知光が遮光されなくなると、カセットシャッター60が閉じる。これにより、カセット45内の束Tを束搬送路63内に送り出す処理が完了する。
次に、包装紙幣処理ユニット3の電気的構成について説明する。
図6は、包装紙幣処理ユニット3の制御回路ブロック図であり、この発明の特徴と関連する部分のみを示すブロック図である。
図6を参照して、包装紙幣処理ユニット3は、マイクロコンピュータ等で構成された制御部80を備えている。制御部80(判断手段、入替手段、受信手段)は、包装紙幣処理ユニット3の動作を制御する。
制御部80には、前述したリフト43、搬送機構(第1搬送機構42および第2搬送機構44)、本体シャッター61、押圧センサ66、位置センサ67および全てのカセット45のそれぞれと、メモリ部81と、着脱センサ82と、識別部83とが電気的に接続されている。各カセット45では、前述したステージ64、カセットシャッター60およびセンサ(開閉センサ68、ニアフル検知センサ69およびフル検知センサ70)のそれぞれが制御部80に対して電気的に接続されている。ここで、リフト43、搬送機構、本体シャッター61、ステージ64およびカセットシャッター60のそれぞれでは、厳密には、それぞれを駆動させる機構(モータ等)が制御部80に接続されている。
メモリ部81は、必要な情報を記憶する(詳しくは、後述する)。着脱センサ82は、各カセット45が筐体40に装着されているのか否かを検知する。識別部83の機能は、前述した識別部20や27とほぼ同じである。図3を参照して、識別部83は、移動スペース49に対して最寄りの位置にあるガイド部材62(図3における最も左側のガイド部材62)に取り付けられていて、束搬送路63内に下から臨んでいる。束搬送路63内で搬送される束Tが識別部83を通過する際、識別部83は、束Tにおいて識別部83側の紙幣(最下位の紙幣の下面)を識別することによって、当該束Tを識別したものとする。
図6に戻り、制御部80は、押圧センサ66、位置センサ67、着脱センサ82、開閉センサ68、ニアフル検知センサ69およびフル検知センサ70からの検知内容等に基づいて、リフト43、搬送機構、本体シャッター61および各カセット45のステージ64およびカセットシャッター60等を動かす。これによって、制御部80は、前述したように、該当するカセット45内に束Tを収納したり、該当するカセット45から束Tを取り出したりすることができる。
ここで、図3を参照して、投出口65から出金される束Tは、投出口65から機外に投出されて係員に回収される。この場合、投出された束Tは、誰でも触ることができることから、セキュリティ上の懸念がある。また、一度に投出される束Tの数が多い場合には、投出された束Tの回収が煩わしくなるという懸念もある。
そこで、セキュリティに関しては、たとえば、一定以上の権限を有する係員が取り扱う場合だけに、投出口65から束Tが出金されるようになるとよい。たとえば、係員が自身の権限を記録したIDカードを携帯していて、包装紙幣処理ユニット3で出金を行いたい場合に、このIDカードを当該ユニットの読取部(図示せず)に読み取らせる。そして、IDカードから読み取られた権限が一定以上であれば、投出口65から束Tが出金され、当該権限が一定未満であれば、投出口65からの出金が禁止される。投出口65からの出金が禁止された場合には、出金したい束Tを収納したカセット45を筐体40から引き出すことによって、束Tを出金することができる。この場合、カセット45では、カセットシャッター60が無断で開放できないようになっているので、カセット45内の束Tが(権限が一定未満の)誰かに勝手に触られることはない。
また、束Tの回収の煩わしさに関しては、たとえば、一度に出金する束Tの数が少ない場合(所定数未満の場合)には投出口65から束Tが出金されるようにし、一度に出金する束Tの数が多い場合(所定数以上の場合)には、セキュリティの場合と同様に、カセット45を筐体40から引き出すことによってのみ束Tを出金できるようにすればよい。
もちろん、一定以上の権限を有する係員が取り扱う場合や、一度に出金する束Tの数が少ない場合であっても、係員による操作部6(図1参照)の操作によって、束Tを投出口65から出金させるパターンと、束Tをカセット45に収納された状態で出金させるパターンとを任意に選択できてもよい。
また、束Tの出金先を出金口53と投出口65との間で任意に選択できてもよい。たとえば、出金口53から出金する場合には、投出口65から出金する場合と異なり、シャッター52の開閉動作が必要になる。そのため、出金口53から大量の束Tを出金する場合には、束Tを複数回に分割して出金しなければならず、そのためには、リフト43を何度も上下移動させるだけでなく、シャッター52を何度も開閉しなければならない。その手間を考慮すると、出金口53で一度に出金できる束Tの数を、シャッター52を何度も開閉せずに済むように、投出口65で一度に出金できる束Tの数よりも少なく設定したい。そこで、一度に出金する束Tの数が少ない場合には、出金口53から出金されるようにし、一度に出金する束Tの数が多い場合には、投出口65から出金されるようにするとよい。
また、出金口53から複数の束Tが出金される場合、同一金種の束Tが出金されるようになっているが、投出口65からは、同一金種の束Tに限らず、異種金種の束Tが混在状態で出金されるようになっている。また、カセット45には、同一金種の束Tだけが収納されるカセット45(ここでは、「金種カセット」ということにする)だけでなく、異種金種の束Tが混在状態で収納されるカセット45(ここでは、「一括カセット」ということにする)も存在する。そこで、金種カセットから同一金種の束Tを出金する場合には、出金口53から金種毎に出金するようにし、一括カセットから異種金種の束Tを出金する場合には、投出口65からまとめて出金するようにしてもよい。
図7は、包装紙幣処理ユニット3のメモリ部81に記憶されるテーブル84を示す図である。
メモリ部81には、図7に示すテーブル84が記憶されている。テーブル84には、カセット45毎(ここでは、カセットA,B,C,D…と区別している)に、束Tの在庫数と、精査回数と、ステージ64の動作回数と、ステージ64の総移動距離と、束Tの総収納数とが登録されている。
束Tの在庫数とは、現時点で各カセット45内に収納されている束Tの総数である。これからカセット45に収納されようとする束Tは、収納先のカセット45が決まっているので、束Tが識別部83(図3参照)によって識別され、該当するカセット45に収納されると、その都度、テーブル84では、該当する(収納先の)カセット45における在庫数が1つ加算されるように更新される。逆に、カセット45から取り出された1つの束Tが識別部83によって識別され、装置の外に投出または他のカセット45に収納されると、その都度、テーブル84では、当該カセット45における在庫数が1つ減算されるように更新される。そして、識別部83は、束Tが1つ識別部83を通過する度に束Tを1つカウントする計数センサを兼ねている。
精査回数に関し、精査(精査処理)とは、あるカセット45内に現在収納されている全ての束Tを一旦取り出して、各束Tが適正であるか否か(正しい金種であるか否かや、損傷があるか否か等)やカセット45内の束Tの在庫数を識別部83で確認してから、元のカセット45に戻す処理のことである。具体的には、図8Aを参照して、カセットA内において、出入口59に近い側(カセットAの上側)から順に、束(3)、束(2)、束(1)という3つの束Tが収納されていたとする。精査処理が開始されると、まず、束(3)、束(2)、束(1)が、この順番でカセットAから取り出され、その後、図8Bに示すように、リフト43上に、リフト43側からこの順番で積層される。この際、束(3)、束(2)、束(1)が、この順番で識別部83によって識別およびカウントされる。その結果、問題がなければ、リフト43上に積層された束(1)、束(2)、束(3)が、図8Cに示すように、この順番で、元のカセットAに戻され、これによって精査処理が完了する。カセットAに戻された束(3)、束(2)、束(1)は、精査処理が開始される前と同様に、出入口59に近い側からこの順でカセットA内に収納されている(図8A参照)。精査回数とは、直近で在庫数が0(零)を超えた時(カセット45が空でなくなった時)から現在までの所定期間に実施された精査処理の回数である。
図7に戻り、ステージ64の動作回数に関し、静止状態からステージ64が移動して再び静止した場合に、ステージ64が1回動作したとみなし、ステージ64の動作回数とは、直近で在庫数が0(零)を超えた時から現在までの所定期間にステージ64が動作した回数である。
ステージ64の総移動距離に関し、ステージ64を上下移動させるベルト72(図5参照)が周回移動したとき、この周回移動量は、移動の度に、そのときのステージ64の移動距離として記録されている。ステージ64の総移動距離とは、直近で在庫数が0(零)を超えた時から現在までの所定期間におけるステージ64の移動距離の累積値である。
束Tの総収納数とは、直近で在庫数が0(零)を超えた時から現在までの所定期間にカセット45に収納された束Tの数(一度の収納処理で収納された束Tの数)の累積値である。
ここで、精査回数、ステージ64の動作回数、ステージ64の総移動距離および束Tの総収納数のそれぞれを、「パラメータ」と呼ぶことにする。在庫数が0(零)になったこと(カセット45が空になったこと)に応じて、そのカセット45についての各パラメータは、制御部80によって0(零)にクリアされる。
図3を参照して、包装紙幣処理ユニット3では、前述したようにカセット45内でステージ64が上下移動するので、ステージ64に積層された束Tは、カセット45から取り出されて出金される対象でなくても、ステージ64とともに上下移動する。また、前述した精査処理が行われると、カセット45内の束Tは、カセット45内だけでなく、束搬送路63や移動スペース49内も移動しなければならない。
そのため、ステージ64に積層された束Tは、移動に伴って、カセット45の内面や隣り合う束Tや筐体40内における周囲のもの等に摺れる。ステージ64の上下移動や精査処理が繰り返されることによって、束Tが他の物に摺れる頻度が増えると、束Tの帯封が傷んで破れてしまい、束Tがカセット45内や筐体40内で個々のばら紙幣Sにばらけてしまう虞がある。特に、カセット45において出入口59から離れた位置(ステージ64に近い位置)にある束Tほど、なかなか出金されないし、出入口59から離れているぶん移動距離が比較的長くなるので、ばらけてしまう確率が高い。また、束Tがばらけるだけでなく、束Tにおいて帯封に覆われていない端面が摺れて傷む不具合も生じ得る。
そこで、包装紙幣処理ユニット3では、所定のタイミングにおいて、入替処理を行うようになっている。入替処理が行われると、カセット45内に収納された束Tの並び(収納順序)が入れ替えられ、今まで出入口59から離れた位置にあった束Tが出入口59に近い位置へ配置転換される。これにより、出入口59から離れた位置にあった束Tを、ばらけてしまうまでの早い段階に、出金してしまうことができる。
ここでの所定のタイミングとは、前述した各パラメータ(精査回数、ステージ64の動作回数、ステージ64の総移動距離および束Tの総収納数)が、それぞれに設定された閾値を超えたタイミングとしている。
図9は、包装紙幣処理ユニット3において行われる制御動作の一例を示すフローチャートである。
図9を参照して、入替処理を開始するにあたって、制御部80は、待機状態において、筐体40にカセット45がセット(装着)されているのか否かを着脱センサ82(図6参照)の検知内容に基づいて監視している(ステップS1)。
カセット45(ここでは複数のカセット45)がセットされている場合(ステップS1でYES)、制御部80は、各カセット45における束Tの在庫数が1より多いか否かをテーブル84において確認する(ステップS2)。在庫数が1以下の場合では(ステップS2でNO)、入替処理を行うこと自体が不要となるからである。
カセット45における在庫数が1より多い場合(ステップS2でYES)、制御部80は、そのカセット45について、テーブル84における前記パラメータが閾値を超えたか否かを確認する(ステップS3)。このとき、精査回数、ステージ64の動作回数、ステージ64の総移動距離および束Tの総収納数におけるいずれか1つのパラメータ(予め定められた1つのパラメータでもよい)が閾値を超えたか否かを判断してもよいし、複数のパラメータがそれぞれの閾値を超えたか否かを判断してもよい。いずれにせよ、制御部80は、ステップS3において、パラメータが閾値を超えたか否かを判断することによって、予め設定された条件が満たされたか否かをカセット45毎に判断する。パラメータが閾値を超えた場合に、前記条件が満たされたこと(前記条件が満たされたと判断されたこと)になる。
ここで、空のカセット45では、各パラメータがクリアされていることから閾値を超えることがないので、制御部80は、当該空のカセット45については、ここでの判断の対象外とする。この場合、束Tの収納順序を入れ替える必要のない空のカセット45について考慮せずに済むので、束Tを収納しているカセット45において、束Tの収納順序の入れ替えを正確に実行できる。
そして、パラメータが閾値を超えた場合(ステップS3でYES)、制御部80は、パラメータが閾値を超えたカセット45において、入替処理を実行する(ステップS4)。つまり、(前述した)予め設定された条件が満たされたと判断されたとき、その判断の対象となったカセット45についての入替処理が実行される。入替処理については、追って具体例を示して説明する。
入替処理が完了した後、制御部80は、入替処理を実行したカセット45についてテーブル84で記録されている全パラメータを0(零)にクリアする(ステップS5)。
次に、図10Aおよび図10Bを参照して、第1の例に係る入替処理を説明する。ここでは、入替処理を行うカセット45(図10AにおけるカセットA)以外に、同一金種の束Tを収納するための空のカセット45(図10AにおけるカセットB)が存在する場合を例に説明する。そのため、前述したステップS1では、同一金種の束Tを収納するための2以上の複数のカセット45がセットされていることを確認する必要がある。
カセットA内において、図10Aに示すように、出入口59に近い側(カセットAの上側)から順に、束(3)、束(2)、束(1)という3つの束Tが収納されていたとする。この場合において、入替処理が開始されると、束(3)、束(2)、束(1)が、この順番でカセットAから取り出されて、図10Bに示すように、空のカセットBのステージ64上に、ステージ64側からこの順番で積層され、これにより、入替処理が完了する。その結果、カセットAからカセットBに入れ替えられた3つの束Tは、入替処理が開始される前とは逆に、出入口59に近い側から束(1)、束(2)、束(3)の順でカセットB内に収納されている。これにより、今までカセットAにおいて出入口59から最も遠い奥側に配置されていた束(1)が、カセットBにおいて出入口59から最も近い位置に配置転換される。ここでの入替処理として、制御部80は、ステージ64および第2搬送機構44を駆動させることによって(カセットシャッター60や本体シャッター61の開閉等も含まれる)、カセットAに収納された束Tを全て繰り出して、繰り出した順に他の空のカセットBに収納する。なお、この場合、テーブル84(図7参照)では、カセットAの在庫数が0(零)に書き換えられ、カセットBの在庫数が、0になる前のカセットAの在庫数に書き換えられ、カセットAおよびBについてのパラメータは、全てクリアされる。
次に、図11A〜図11Dを参照して、第2の例に係る入替処理を説明する。ここでは、入替処理をおこなうカセット45(図11AにおけるカセットA)以外に、同一金種の束Tを収納したカセット45(図11AにおけるカセットB)が存在する場合を例に説明する。そのため、前述したステップS1では、同一金種の束Tを収納するための2以上の複数のカセット45がセットされていることを確認する必要がある。
図11Aに示すように、カセットA内において、出入口59に近い側(カセットAの上側)から順に、束(3)、束(2)、束(1)という3つの束Tが収納されていて、カセットB内において、出入口59に近い側(カセットBの上側)から順に、束(6)、束(5)、束(4)という3つの束Tが収納されていたとする。この場合において、入替処理が開始されると、束(6)、束(5)、束(4)が、この順番でカセットBから取り出されて、図11Bに示すように、リフト43上に、リフト43側からこの順番で積層される。次いで、束(3)、束(2)、束(1)が、この順番でカセットAから取り出されて、図11Cに示すように、空になったカセットBのステージ64上に、ステージ64側からこの順番で積層される。最後に、リフト43上に積層されていた束(4)、束(5)、束(6)が、この順番でリフト43から取り出されて、図11Dに示すように、空になったカセットAのステージ64上に、ステージ64側からこの順番で積層される。これにより、入替処理が完了する。
その結果、カセットAからカセットBに入れ替えられた3つの束Tは、入替処理が開始される前(図11A参照)とは逆に、出入口59に近い側から束(1)、束(2)、束(3)の順でカセットB内に収納されている。これにより、今までカセットAにおいて出入口59から最も遠い奥側に配置されていた束(1)が、カセットBにおいて出入口59から最も近い位置に配置転換される。一方、カセットBからカセットAに入れ替えられた3つの束Tは、入替処理が開始される前と同様に、出入口59に近い側から束(6)、束(5)、束(4)の順でカセットA内に収納されている。ここでの入替処理として、制御部80は、リフト43、ステージ64および第2搬送機構44を駆動させることによって(カセットシャッター60や本体シャッター61の開閉等も含まれる)、カセットBを一旦空にしてから、カセットAに収納された束Tを全て繰り出して、繰り出した順に他の空のカセットBに収納する。なお、この場合、テーブル84(図7参照)では、カセットAの在庫数が、カセットBの元の(入替処理前の)在庫数に書き換えられ、カセットBの在庫数が、カセットAの元の在庫数に書き換えられ、カセットAおよびBについてのパラメータは、全てクリアされる。
以上のように、予め設定された条件を満たしたカセット45に収納された束Tの収納順序が入れ替えられる入替処理によって、そのカセット45において元々奥側にあった(繰り出される順番が後のほうの)束Tが、繰り出される順番が先のほうになるように、収納し直すことができる。また、古い束Tのみを先に繰り出すことができるように、収納し直すことができる。これにより、カセット45において奥側にあった束Tがずっと奥側に留まってしまうようなことを抑制し、奥側にあった束Tを、その包装(束Tの場合は、帯封)が傷んで破れる前に、早く外部に出金することができる。その結果、貨幣処理装置1では、装置内で束Tが個々の紙幣にばらけることを防止できる。特に、予め設定された条件を満たしたカセット45毎に、束Tの収納順序を入れ替えることができる。
さらに、第1および第2の両方の例に係る入替処理によれば、カセット45に収納された束Tを全て繰り出して、繰り出した順に他の空のカセット45に収納することによって、束Tの収納順序を素早く入れ替えることができる。また、第1および第2の例では、同一金種の束Tを収納するカセット45が2つ存在する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、カセット45が金種別に設けられていてもよい。この場合には、メモリ部81に記憶されている各カセット45に割り当てられた金種情報を参照し、入替処理が行われた金種の束Tを収納するカセット45の(元々の)割り当て金種を、入替処理後に収納されている束Tの金種となるように更新する。
次に、ばら硬貨処理ユニット5および包装硬貨処理ユニット4について説明する。
ばら硬貨処理ユニット5については、簡単に説明する。図1を参照して、ばら硬貨処理ユニット5は、その上面のホッパー90を介して外部から入金されたばら硬貨Bを受け入れることができ、受け入れたばら硬貨Bを金種毎に振り分けて保管することができる。また、ばら硬貨処理ユニット5は、受け入れたばかりのばら硬貨Bや、今まで保管していたばら硬貨Bを包装硬貨処理ユニット4に受け渡すことができる。
図12は、貨幣処理装置1における包装硬貨処理ユニット4の模式的な縦断面図である。
図12を参照して、包装硬貨処理ユニット4は、その筐体100内に、包装機構101と、搬送機構102(入替手段、繰出手段、保留手段、収納手段)と、複数(ここでは、6つ)のカセット103(収納部、繰出手段、収納手段、移動部材)と、払出部104と、貯留部105とを含んでいる。ここで、図12における左側が筐体100の前側であり、図12における右側が筐体100の後側である。
包装機構101は、筐体100内において下端寄りの領域に配置されている。ばら硬貨処理ユニット5から搬送されてきたばら硬貨Bを受け取って、所定枚数毎にまとめて包装紙で包装する。包装機構101として、公知の機構を用いることができる。包装紙で包装されたばら硬貨Bのまとまりは、前述した包装硬貨Kとなる。
搬送機構102は、筐体100内において前寄りの領域に配置されている。搬送機構102は、上下に間隔を隔てて配置された一対のローラ106と、これらのローラ106に掛け回された無端状のベルト107(移動部材)とを含んでいる。上側のローラ106は、筐体100の上端近傍に配置されていて、下側のローラ106は、筐体100の下端近傍に配置されている。ベルト107は、図12における時計回りおよび反時計回りの両方に周回移動することができる。ベルト107の外周面には、複数の爪108が設けられている。これらの爪108は、ベルト107の周方向(周回移動方向)において等間隔で配置されていて、当該周方向における同じ向き(図12における反時計回り)に向けてベルト107の外側へ延びている。ベルト107の後側領域で上下に並ぶ爪108は、後上側(図12における右上側)へ傾斜して延びている。ベルト107の前側領域で上下に並ぶ爪108は、前下側(図12における左下側)へ傾斜して延びている。ここで、ベルト107が周回移動している際における各爪108の軌跡によって区画される縦長楕円環状の領域を「ベルト移動領域112」ということにする。つまり、ベルト107の周回移動に伴う各爪108の軌跡は、ベルト移動領域112と一致している。
カセット103は、筐体100内において搬送機構102の後側の領域に配置されている。カセット103は、前後方向に長手のトレイ形状をなしている。詳しくは、カセット103は、前後方向に長手の底板109と、底板109の前端から湾曲しながら立ち上がる前側湾曲部110と、底板109の後端から湾曲しながら立ち上がる後側湾曲部111とを一体的に含んでいる。また、カセット103は、その左右方向(図12における紙面に垂直な方向)における側面を塞ぐ側板(図示せず)も含んでいる。
複数のカセット103は、上下方向に並んで配置されていて、それぞれのカセット103は、平行になっている。各カセット103は、後側湾曲部111が前側湾曲部110よりも高い位置に配置されるように、水平方向に対して後上側へ傾斜した状態で配置されている。筐体100内には、各カセット103を下から支持する支持部材113が設けられている。なお、図12では、カセット103が6つ図示されているが、たとえば、カセット103は、上下方向だけでなく、左右方向にも並んで配置されていてもよい。具体的には、左右に並んだ2つのカセット103の組が上下に6組並んでいてもよい。
各カセット103は、筐体100内において、支持部材113に支持されて傾斜した姿勢を保ちつつ、傾斜方向に沿って前後にスライド可能である。図12において実線で示された各カセット103の位置を「待機位置」ということにすると、各カセット103は、待機位置から前側の「進出位置」まで前進し、進出位置から待機位置まで戻ることができる。待機位置にあるカセット103では、前側湾曲部110がベルト移動領域112から後側へ外れていて、進出位置にあるカセット103では、前側湾曲部110がベルト移動領域112内に入り込んでいる(上から2番目のカセット103において点線で示した前側湾曲部110を参照)。筐体100内に設けられた駆動機構(図示せず)が、各カセット103を個別にスライドさせる。
各カセット103には、左右方向に長手となった姿勢の包装硬貨K(カセット103毎に同一金種の包装硬貨K)が、カセット103の傾斜方向に沿って並んで収納される。カセット103内において、これらの包装硬貨Kは、自重によって、まとまった状態で前側湾曲部110へ片寄っており、前側湾曲部110によって前下側からせき止められた状態になっている。各カセット103は、包装硬貨Kを収納(支持)した状態で、待機位置と進出位置との間でスライド可能である。
図13は、包装硬貨処理ユニット4における1つのカセット103の前端部およびその周辺の模式的な斜視図である。
図13を参照して、カセット103についてさらに説明する。図13では、カセット103における前述した(カセット103の左右方向の側面を塞ぐ)側板114が図示されている。カセット103の前端部には、切欠き115が形成されている。切欠き115は、たとえば、前側湾曲部110の上端縁から底板109の前端部までの領域に連続して設けられていて、当該領域において、カセット103の幅方向(左右方向)における略中央部分を切り欠いて(貫通して)いる。切欠き115は、カセット103内の包装硬貨Kが切欠き115から脱落しない程度の大きさになっている。
また、筐体100内では、各カセット103の前端部の近傍(真下)に、ストッパ116(入替手段、収納手段)が1つずつ設けられている(図12も参照)。各ストッパ116は、幅方向に延びるベース部117と、ベース部117の上端縁から上方へ突出する突起118(ここでは、幅方向に間隔を隔てて2つ設けられている)とを一体的に備えている。各ストッパ116は、下限位置と、上限位置との間で上下にスライドすることができる。待機状態のストッパ116は、下限位置にある(図12の各ストッパ116は下限位置にある)。筐体100内に設けられた駆動機構(図示せず)が、各ストッパ116を個別にスライドさせる。
下限位置にあるストッパ116は、カセット103が待機位置および進出位置のいずれにあっても、カセット103の前端部よりも低い位置ある(後述する図15参照)。ストッパ116が上限位置にある場合、ストッパ116の突起118が、カセット103のスライド軌跡上に位置する。そのため、待機位置のカセット103が進出位置までスライドすると、上限位置のストッパ116の突起118が、前側からカセット103の切欠き115内に進入する(後述する図14(b)および(c)参照)。この状態でカセット103が待機位置まで戻ると、上限位置のストッパ116の突起118は、カセット103の切欠き115から外れる。また、カセット103が進出位置にある状態で、ストッパ116が下限位置から上限位置までスライドすると、上限位置のストッパ116の突起118が、下側からカセット103の切欠き115内に進入する。この状態でストッパ116が下限位置まで戻ると、ストッパ116の突起118は、カセット103の切欠き115から外れる(後述する図14(d)および(e)参照)。
図12を参照して、払出部104は、上面が開放されたボックス状であって、筐体100内において、搬送機構102よりも前側の領域の上端部に配置されている。筐体100の前面上端部には、シャッター119によって開閉される出金口120が形成されていて、出金口120は、払出部104の内部に対して上から連通している。払出部104は、前述したベルト移動領域112に対して前側から臨んでいる。払出部104においてベルト移動領域112に臨む部分には、レバー121が設けられている。レバー121は、上下に延びる板状または棒状であって、下端部の支点122を中心として回動可能である。レバー121は、ベルト移動領域112から外れて上下に延びる待機姿勢(実線部分)と、ベルト移動領域112内へはみ出すように傾斜する傾斜姿勢(点線部分)との間で回動可能である。
貯留部105は、上面が開放されたボックス状であって、筐体100内において、払出部104の下方に配置されている。貯留部105は、前述したベルト移動領域112に対して前側から臨んでいる。貯留部105においてベルト移動領域112に臨む部分には、レバー123が設けられている。レバー123は、上下に延びる板状または棒状であって、下端部の支点124を中心として回動可能である。レバー123は、ベルト移動領域112から外れて上下に延びる待機姿勢(実線部分)と、ベルト移動領域112内へはみ出すように傾斜する傾斜姿勢(点線部分)との間で回動可能である。
筐体100の前面の下部(出金口120より低い位置)には、投出口125が形成されている。筐体100内には、ベルト移動領域112の前側下部から前下側へ傾斜して延びる投出ダクト126が接続されている。投出ダクト126においてベルト移動領域112に接続された部分には、レバー127が設けられている。レバー127は、上下に延びる板状または棒状であって、下端部の支点128を中心として回動可能である。レバー127は、ベルト移動領域112から外れて上下に延びる待機姿勢(実線部分)と、ベルト移動領域112内へはみ出すように傾斜する傾斜姿勢(点線部分)との間で回動可能である。待機姿勢のレバー127は、投出ダクト126においてベルト移動領域112に接続された部分を塞いでいる。
また、筐体100内には、包装機構101とベルト移動領域112とをつなぐ中継ダクト129が設けられている。中継ダクト129は、包装機構101から下向きに延びてから湾曲しながら前側へ水平に延びて、ベルト移動領域112につながっている。中継ダクト129においてベルト移動領域112に接続された部分には、レバー130が設けられている。レバー130は、上下に延びる板状または棒状であって、上端部の支点131を中心として回動可能である。レバー130は、上下に延びて中継ダクト129(ベルト移動領域112に接続された部分)を塞ぐ待機姿勢(実線部分)と、水平に延びて中継ダクト129を開放してベルト移動領域112に連通させる水平姿勢(点線部分)との間で回動可能である。
また、包装硬貨処理ユニット4は、マイクロコンピュータ等で構成された制御部140(判断手段、入替手段、受信手段)を備えている。制御部140は、包装硬貨処理ユニット4の動作を制御する。特に、制御部140は、包装機構101によるばら硬貨Bの包装動作や、搬送機構102におけるベルト107の周回移動や、カセット103のスライドや、ストッパ116のスライドや、レバー121,123,127,130の回動を制御する。
次に、包装硬貨処理ユニット4内における包装硬貨Kの動きについて説明する。
図14(a)〜(f)は、包装硬貨処理ユニット4においてカセット103に包装硬貨Kを収納する手順を説明するための模式図である。図15(a)〜(c)は、包装硬貨処理ユニット4においてカセット103から包装硬貨Kを繰り出す手順を説明するための模式図である。
以下では、図12とともに、図14および図15も参照しながら説明する。
前述したように包装機構101で形成された包装硬貨Kは、中継ダクト129内を通ってベルト移動領域112側へ向かう。このとき、レバー130が水平姿勢になっているとともに、搬送機構102のベルト107が図12における反時計回りへの周回移動を開始している。中継ダクト129内を通過し終えた包装硬貨Kは、ベルト移動領域112内に進入し、その際に包装硬貨Kのちょうど真下に位置していた爪108に受け止められる。この包装硬貨Kは、爪108に下から受け止められた状態で、ベルト107の周回移動に伴って上昇する。
この包装硬貨Kがいずれかのカセット103に収納される場合には、収納先のカセット103の前側湾曲部110よりも高い位置まで当該包装硬貨Kが上昇したときに、ベルト107の周回移動が一時停止する。そのときの状態が、図14(a)に示されている。
図14(a)の状態では、収納先のカセット103は待機位置にあって、このカセット103に対応するストッパ116は下限位置にある。次いで、図14(b)に示すようにストッパ116が上限位置までスライドし、この状態で、図14(c)に示すようにカセット103が進出位置まで前進する。すると、このカセット103内に既に収納されていた包装硬貨Kのうち先頭(最も前側)の包装硬貨Kが、カセット103の切欠き115に進入してきたストッパ116の突起118(図13参照)によって後側へ押される。これにより、このカセット103内に既に収納されていた包装硬貨K全体が後側へずれ、カセット103内の前端には、包装硬貨Kをちょうど1本収納できる収納スペース132が形成される。収納スペース132は、爪108に受け止められた状態にある包装硬貨Kの真下に位置している。
その後、ベルト107が今までとは逆向きに周回移動し、先ほどから爪108に受け止められた状態にある包装硬貨Kが、下降して、図14(d)に示すように、前記収納スペース132に上から収納される。爪108は、カセット103の切欠き115(図13参照)を介して下へ抜けるようになっている。そして、包装硬貨Kが収納スペース132に収納されたことに応じて、ベルト107の周回移動が停止する。その後、図14(e)に示すようにストッパ116が下限位置に戻ると、今まで後側へずらされていた包装硬貨K全体が、新しく収納された先頭の包装硬貨Kに寄りかかる。そして、このカセット103が、図14(f)に示すように待機位置に戻ると、カセット103への包装硬貨Kの収納処理が完了する。
また、カセット103から包装硬貨Kを取り出す場合には、図15(a)に示すように、まず、該当するカセット103が待機位置から進出位置まで進出する。すると、搬送機構102のベルト107が図15における反時計回りへの周回移動を開始する。これにより、このカセット103の前側湾曲部110の真下にある爪108が上昇する。この爪108は、ベルト107の周回移動に伴って、図15(b)に示すように、進出位置のカセット103の切欠き115(図13参照)に下から進入し、このカセット103内の先頭の包装硬貨Kを引っ掛けて上昇させる。これにより、当該カセット103から包装硬貨Kが1本取り出される。同様の手順で、後続の爪108が切欠き115内に進入することによって、カセット103から包装硬貨Kを先頭側から1本ずつ繰り出すことができる。カセット103内では、包装硬貨Kが先頭から1本ずつ繰り出されるのに応じて、残りの包装硬貨Kが前側へずれる。そして、このカセット103が、図15(c)に示すように待機位置に戻ると、カセット103から包装硬貨Kを取り出す処理(取出処理)が完了する。なお、カセット103から包装硬貨Kを取り出す場合には、ストッパ116は常に下限位置にある。
このように、各カセット103では、包装硬貨Kの収納および繰出(取出)が、搬送機構102側(前側湾曲部110側)において同一方向から行われる(図14および図15参照)。
そして、いずれかの爪108に包装硬貨K(カセット103から取り出された包装硬貨Kや包装機構101から受け渡されたばかりの包装硬貨K)が引っ掛かった状態において、当該包装硬貨Kをカセット103に収納する以外の処理を行うことができる。
たとえば、ベルト107が、図12における反時計回りに周回移動して、爪108に引っ掛かった包装硬貨Kが払出部104の手前まで来たときに、払出部104のレバー121が待機姿勢(実線部分)から傾斜姿勢(点線部分)になって、この包装硬貨Kを受け取る。そして、レバー121は、待機姿勢に戻ることによって、この包装硬貨Kを払出部104内に収納する。その後、シャッター119が開いて出金口120が開放され、係員が払出部104内に包装硬貨Kを取り出すと、包装硬貨Kが機外に出金されたことになる。
また、ベルト107が、図12における反時計回りに周回移動して、爪108に引っ掛かった包装硬貨Kが貯留部105の手前まで来たときに、貯留部105のレバー123が待機姿勢(実線部分)から傾斜姿勢(点線部分)になって、この包装硬貨Kを受け取る。そして、レバー123は、待機姿勢に戻ることによって、この包装硬貨Kを貯留部105内に収納する。たとえば、収納先のカセット103が満杯の場合に、貯留部105が臨時の収納先として、包装硬貨Kを受け入れることができる。
また、ベルト107が、図12における反時計回りに周回移動して、爪108に引っ掛かった包装硬貨Kが投出ダクト126の手前まで来たときに、投出ダクト126のレバー127が待機姿勢(実線部分)から傾斜姿勢(点線部分)になって、この包装硬貨Kを受け取る。そして、レバー127は、待機姿勢に戻ることによって、この包装硬貨Kを投出ダクト126内に取り込む。これにより、取り込まれた包装硬貨Kは、投出ダクト126内を滑り落ちて、投出口125から機外に投出され、係員に回収される。
このような包装硬貨処理ユニット4においても、包装紙幣処理ユニット3と同様に、前述した精査処理や入替処理を行われる。包装硬貨処理ユニット4での入替処理に関し、入替処理を開始するタイミングは、予め定められている。たとえば、各カセット103についての精査回数、カセット103のスライド回数、搬送機構102のベルト107の周回移動の総距離および包装硬貨Kの総収納数のそれぞれを、「パラメータ」と呼び、包装硬貨処理ユニット4のメモリ部(図示せず)において記憶している。そして、少なくともいずれかのパラメータが(パラメータ毎に定められた)閾値を超えたときが、入替処理を開始するタイミングである。包装硬貨処理ユニット4の制御部140も、包装紙幣処理ユニット3の制御部80と同様に、図9の処理を実施する。そのため、包装硬貨処理ユニット4では、入替処理に関しては、包装紙幣処理ユニット3と同様の効果(包装硬貨Kが個々の貨幣にばらけることの防止等)を得ることができる。なお、包装紙幣処理ユニット3の場合と同様に、カセット103が空になると、そのカセット103についての全パラメータは、クリアされる。
図16Aおよび図16Bは、包装硬貨処理ユニット4における第1の例に係る入替処理を説明するための模式図である。
包装硬貨処理ユニット4において、包装硬貨Kが収納されたカセット103と、空のカセット103とが存在しているとする。たとえば、図16Aでは、上から1番目、3番目および5番目のカセット103には包装硬貨Kが8本ずつ収納されていて、残りの(上から2番目、4番目および6番目の)カセットは空であるとする。当該1番目のカセット103には、搬送機構102から遠い順に、包装硬貨K(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)が並んで収納されている。当該3番目のカセット103には、搬送機構102から遠い順に、包装硬貨K(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)が並んで収納されている。当該5番目のカセット103には、搬送機構102から遠い順に、包装硬貨K(17)、(18)、(19)、(20)、(21)、(22)、(23)、(24)が並んで収納されている。なお、ここで包装硬貨Kの語尾に続く括弧内の数字は、図16Aおよび図16Bに図示された各包装硬貨Kに付された数字と一致している。
当該1番目のカセット103についての入替処理が開始されると、当該1番目のカセット103の全ての包装硬貨Kは、搬送機構102に近いものから順に、このカセット103から取り出され、取り出された順番で、別の空のカセット103(ここでは、上から2番目のカセット103)に収納される。同様に、当該3番目のカセット103についての入替処理が開始されると、当該3番目のカセット103の全ての包装硬貨Kは、搬送機構102に近いものから順に、このカセット103から取り出され、取り出された順番で、別の空のカセット103(ここでは、上から4番目のカセット103)に収納される。同様に、当該5番目のカセット103についての入替処理が開始されると、当該5番目のカセット103の全ての包装硬貨Kは、搬送機構102に近いものから順に、このカセット103から取り出され、取り出された順番で、別の空のカセット103(ここでは、上から6番目のカセット103)に収納される。当該1番目、3番目および5番目のカセット103全てについて入替処理が終わった直後の状態が、図16Bに示されている。
入替処理前に、カセット103内で搬送機構102から離れた奥側にあった包装硬貨K(包装硬貨K(1)、(2)、(9)、(10)、(17)、(18)等)は、入替処理後には、収納先のカセット103内で搬送機構102に近い側に配置転換される。逆に、入替処理前に、カセット103内で搬送機構102に近い側にあった包装硬貨K(包装硬貨(7)、(8)、(15)、(16)、(23)、(24)等)は、入替処理後には、収納先のカセット103内で搬送機構102から遠い奥側に配置転換される。ここでの入替処理として、制御部140は、カセット103およびストッパ116をスライドさせる駆動機構や、搬送機構102を前述したように駆動させることによって、カセット103に収納された包装硬貨Kを全て繰り出して、繰り出した順に他の空のカセット103に収納する。これによって、包装硬貨Kの収納順序を素早く入れ替えることができる。
図17A〜図17Dは、包装硬貨処理ユニット4における第2の例に係る入替処理を説明するための模式図である。
また、搬送機構102を利用した別の入替処理もありえる。具体的には、図17Aを参照して、搬送機構102から遠い順に、包装硬貨K(1)、(2)、(3)が並んで収納されているカセット103内の包装硬貨Kを、搬送機構102に近いものから順に、ベルト107の爪108へと受け渡す。このとき、ベルト107は、図17Aにおける時計回りに周回移動する。そのため、このカセット103内の包装硬貨Kが全て取り出されると、取り出された包装硬貨Kは、図17Bに示すように、ベルト107の周回移動方向に沿って、当該カセット103から近い順に、包装硬貨K(1)、(2)、(3)で並んで配置される。この後、ベルト107を、図17Bにおける反時計回りに周回移動させ、図17Cに示すように、包装硬貨K(3)が当該カセット103を通過すると、ベルト107の周回移動が停止する。この状態では、包装硬貨Kは、ベルト107の周回移動方向に沿って、当該カセット103から近い順に、包装硬貨K(3)、(2)、(1)で並んで配置される。その後、これらの包装硬貨Kを、当該カセット103から近い順に、つまり、包装硬貨K(3)、(2)、(1)の順に元のカセット103に収納し直す。これにより、入替処理が完了し、当該カセット103には、入替処理前での順番(図17A参照)とは逆の順番で(図17D参照)で包装硬貨Kが収納される。
ここでの入替処理として、制御部140は、カセット103およびストッパ116をスライドさせる駆動機構や、搬送機構102を前述したように駆動させる。これによって、制御部140は、カセット103に収納された包装硬貨Kを全て繰り出し、繰り出された包装硬貨Kを搬送機構102の爪108で一時保留し、一時保留された包装硬貨Kを、先ほど繰り出された順に元のカセット103に収納する。
この場合、カセット103に収納された包装硬貨Kを繰り出して搬送機構102に一時保留してから、繰り出した順に元のカセット103に収納するので、繰り出した包装硬貨Kを受け入れる空のカセット103がなくても、包装硬貨Kの収納順序を入れ替えることができる。
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前述した入替処理を開始するタイミングに関するパラメータとして、各カセット45(カセット103)において、直近で在庫数が0(零)を超えた時から現在までに実施された束T(包装硬貨K)の収納処理および取出処理のいずれかの回数またはこれらの処理の合計回数を採用してもよい。また、束Tの帯封や包装硬貨Kの包装に識別タグ(RFIDタグ等)を取り付けて識別すること等によって各束Tのカセット45内での滞在時間(各包装硬貨Kのカセット103内での滞在時間)を把握できる場合には、当該滞在時間を前記パラメータとして採用してもよい。滞在時間が所定の閾値を超えた束Tや包装硬貨Kが存在する場合には、その束Tや包装硬貨Kのみの繰り出される順番が先の方になるような入替処理を実施したり、その束Tを収納したカセット45や、その包装硬貨Kを収納したカセット103で入替処理を実施したりする。なお、前記パラメータが閾値を超えたときには、該当するカセット45,103だけでなく、装置内の全てのカセット45,103について入替処理が実行されてもよい。
また、入替処理を開始するタイミングは、前述したパラメータが閾値を超えたタイミングでなく、係員が入替処理を開始させるために操作部6(図1参照)を操作したときのタイミングであってもよいし、係員の持つ携帯端末から送信された入替処理を指示する信号を受信したタイミングであってもよい。これにより、任意のタイミングで入替処理を開始することができる。
また、包装紙幣処理ユニット3の制御部80や包装硬貨処理ユニット4の制御部140には、前述した操作部6および表示部7(図1参照)が電気的に接続されていてもよい。その場合、前述したパラメータが閾値を超えたことに応じて(前述したステップS3でYES)、入替処理を行うか否かという旨のメッセージが表示部7に表示される。つまり、表示部7は、この旨を報知する。なお、この旨が音声となって報知されてもよい。この報知によって、行員(係員)は、束Tや包装硬貨Kの収納順序の入れ替え(入替処理)を行う必要があることを知ることができる。メッセージが表示部7に表示される場合、係員は、入替処理を行うか否か(入替処理を行うか否かを指示する信号)を、操作部6(図1参照)または係員が保有する携帯端末の操作によって包装紙幣処理ユニット3や包装硬貨処理ユニット4に入力する。制御部80や制御部140は、(係員の操作部6の操作による)入替処理を指示する信号(入力信号)を受信すると、包装紙幣処理ユニット3や包装硬貨処理ユニット4において入替処理を実行してもよい。
この場合、束Tや包装硬貨Kの収納順序の入れ替えを任意のタイミングで開始することができる。これにより、入出金等を行いたい(貨幣処理装置1を利用したい)タイミングにおいて、入替処理が不意に開始されてしまうことによって貨幣処理装置1を利用できなくなるという不具合を防止できる。
また、上述では、収納部(カセット45やカセット103)毎に入替処理の要否を判断する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、貨幣処理装置1や包装紙幣処理ユニット3や包装硬貨処理ユニット4の各収納部の精査回数の和であったり、ステージ等の動作回数の和であったり、ステージ等の総移動距離の和でもって入替処理の要否を判断するようにしてもよい。
また、貨幣処理装置1では、ばら紙幣処理ユニット2および包装紙幣処理ユニット3と、包装硬貨処理ユニット4およびばら硬貨処理ユニット5とが揃っている(図1参照)。しかし、本発明は、ばら紙幣処理ユニット2および包装紙幣処理ユニット3だけで構成された貨幣処理装置1や、包装硬貨処理ユニット4およびばら硬貨処理ユニット5だけで構成された貨幣処理装置1や、包装紙幣処理ユニット3または包装硬貨処理ユニット4だけで構成された貨幣処理装置1にも適用可能である。
また、この発明は、出納機等以外に、包装貨幣の入出金処理を行う両替機やATM等にも適用できる。