JP2016053354A - 燃料噴射弁 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 インジェクタは、アウトオリフィス流量を拡大したり、燃料の噴射圧力を増大させたりした場合でも、制御プレート6の利点を活用し、インオリフィスをインオリフィス孔38、43に2分割することで、2つのインオリフィス孔38、43の総合流量で所望のニードル閉弁速度を実現できるので、制御弁の制御バルブ11における高圧シート負荷を軽減することができる。この結果、アクチュエータ3の駆動力を増大させることなく、ニードル開弁速度およびニードル閉弁速度を向上することができる。これにより、ニードルの開閉弁応答性を向上することができる。
【選択図】 図1
Description
従来より、内燃機関(エンジン)の気筒に燃料を噴射する燃料噴射弁の一例として、アクチュエータの変位を利用して制御弁を切替駆動することで、制御室内の燃料圧力(制御室圧)を調整し、ニードルの開閉動作を制御する燃料噴射弁(以下従来例のインジェクタ)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この従来例のインジェクタは、噴孔を開閉するニードルと、このニードルに対して閉弁方向に作用する燃料圧力を蓄える制御室と、この制御室内の燃料圧力を増減制御する制御弁と、この制御弁の弁体(以下制御バルブ)を切替動作させる駆動力を発生するアクチュエータとを備えている。
また、制御弁としては、制御室と共用流路を介して常時連通する連通ポートを、低圧燃料通路と連通する低圧ポートと高圧燃料通路と連通する高圧ポートとに選択的に連通させる制御バルブ、およびこの制御バルブを高圧ポートを開く側で、且つ低圧ポートを閉じる側に付勢するバルブスプリングを有する3方弁構造の制御弁が使用されている。そして、制御弁室の壁面には、低圧ポート開口周縁部である低圧シート、および高圧ポートの開口周縁部である高圧シートが設けられている。また、制御バルブは、バルブスプリングと一緒に制御弁室に収容されている。
この場合、ニードル開弁速度はアウトオリフィス流量(絞り径)により設定でき、また、ニードル閉弁速度はインオリフィス流量(絞り径)により設定できるので、ニードルの開閉弁速度を独立して設定することができる。この結果、ニードルの開閉弁速度の設計自由度が向上する。
ところが、従来のインジェクタにおいては、アウトオリフィス流量を拡大し、ニードル開弁速度を向上し、且つ燃料の噴射率を向上した場合、燃料の噴射量の制御性を向上するため併せてニードル閉弁速度を向上することが望ましいが、高圧燃料通路から制御弁室を介して制御室に導入する高圧燃料の流量を規制するインオリフィス流量は制御バルブの高圧シート負荷に対抗するアクチュエータの駆動力の制約を受けるため、ニードル閉弁速度を向上させるには限界がある。
これにより、アウトオリフィス流量を大きくし、逆に、インオリフィス流量を少なくすると、アクチュエータへの通電を停止してから制御室内の燃料圧力がニードル閉弁圧まで上昇するのに時間がかかる。
したがって、ニードル閉弁タイミング(時期)が遅くなるので、ECUからのインジェクタ閉弁指令に対する噴射終了遅れが増加するため、噴射量の精度および制御性が悪化するという課題がある。特に、ピエゾアクチュエータの伸張変位を利用して制御バルブを切替駆動するインジェクタの場合、上記の課題がより顕著になる。
ここで、エンジン出力を向上し、且つ排気エミッションを改善するという目的で、燃料の噴射圧力、つまり高圧燃料通路を流通する燃料圧力を増大させると、ニードルの開弁時における制御バルブの高圧シート負荷が増大する。この結果、制御バルブの高圧シート径および低圧シール状態の時のバルブリフト量を拡大し、ニードル閉弁速度を向上させるには、アクチュエータの駆動力を向上させることが求められる。
したがって、アウトオリフィス流量を拡大し、燃料の噴射率を向上させたり、また、燃料の噴射圧力を増大させたりした場合には、アクチュエータの駆動力を増大させることなく、ニードル開弁速度およびニードル閉弁速度を向上することは困難であった。
このとき、ニードル開弁速度は、アウトオリフィスにより規定される燃料流量(アウトオリフィス流量)によって設定される。
したがって、アウトオリフィス流量を拡大し、燃料の噴射率を向上させたり、また、燃料の噴射圧力を増大させたりした場合でも、インオリフィスを少なくとも2つの第1、第2インオリフィスに分割することで、少なくとも2つの第1、第2インオリフィスの総合流量で所望のニードル閉弁速度を実現できるので、制御弁の弁体における高圧シート負荷を軽減することができる。この結果、アクチュエータの駆動力を増大させることなく、ニードル開弁速度およびニードル閉弁速度を向上することができる。これにより、ニードルの開閉弁応答性を向上することができる。
図1ないし図3は、本発明を適用した燃料噴射システムに使用されるインジェクタ(実施例1)を示したものである。
インジェクタは、エンジンの気筒の燃焼室に連通する複数の噴孔(後述する)を有し、これらの噴孔を開閉するニードル1等を内蔵する有底筒状のノズルボディ2と、ニードル1に対して閉弁方向に作用する燃料圧力を増減制御する3方向2位置切替弁(以下3方弁)構造の制御弁、自身の変位を利用して制御弁を切替駆動する駆動力を発生するアクチュエータ3等を内蔵する円筒状のインジェクタボディ4とを備えている。
ここで、制御弁は、制御バルブ11が開弁することで、圧力制御室14から燃料排出流路(後述する)を介して燃料系の低圧側へ燃料を流出させる圧力制御弁である。
なお、本実施例の制御弁の詳細は、後述する。
また、オリフィスプレート10の図示上端面には、制御弁室13に臨み、制御バルブ11の高圧側弁部(後述する)が着座可能な平面環形状の高圧シート面(高圧側弁座)17が形成されている。この高圧シート面17の中央部では、高圧燃料通路(後述する)と制御弁室13とを連通する高圧ポート18が開口している。
また、バルブボディ9の制御弁室13の壁面には、圧力制御室14と常時連通する連通ポート19が開口形成されている。
また、オリフィスプレート10の図示下端面には、制御プレート6の弁部が着座可能な環状のバルブシート面(後述する)が形成されている。
また、インジェクタボディ4の中心軸線から所定の径方向距離分だけ偏芯(オフセット)した位置には、軸線方向に真っ直ぐに延びるピエゾ収容孔が形成されている。このピエゾ収容孔の内部には、制御弁の弁体(制御バルブ11)を切替駆動するアクチュエータ3と、ピエゾピストン21とバルブピストン22との間に油密室23を有し、アクチュエータ3の伸張変位を拡大してバルブピストン22に伝える変位拡大機構とが収容されている。また、ピエゾ収容孔の内部には、バルブピストンスプリング24も収容されている。
そして、インジェクタは、アクチュエータ3の伸縮変位を利用して制御バルブ11を切替駆動することで、圧力制御室14内の燃料圧力を調整(増減)し、ニードル1の開閉動作を制御する。これにより、エンジンの気筒の燃焼室内に噴射される燃料噴射量、噴射時期および噴射パターン(噴射率)が制御される。
ここで、燃料溜まり室26は、ニードル収容孔の中間部に設けられている。この燃料溜まり室26内に導入される燃料圧力は、ニードル1に対して、ニードル1の開弁方向に付勢する付勢力として作用する開弁方向油圧力(FO)である。
複数の噴孔27は、ニードル1の弁部が着座可能なシート部(弁座)よりも燃料の流れ方向の下流側に設けられて、ニードル収容孔の内外を連通している。つまり、複数の噴孔27は、エンジンの気筒の燃焼室内とノズルボディ2の内部とを連通している。
ニードルスプリング5は、ニードル1に対して、ニードル1の閉弁方向に付勢する付勢力(弾性力、スプリングセット荷重:Fsp)を発生するニードル付勢手段(弾性部材)である。このニードルスプリング5は、ニードル1の中径部外周に固定された環状のスプリングシート29とノズルシリンダ8の環状端面(スプリング座部)との間でノズル軸方向に圧縮された状態で配置された圧縮コイルスプリングである。
また、圧力制御室14は、制御プレート6の閉弁側受圧面とニードル1のピストン部28の受圧面との間に形成される容積可変空間である。この圧力制御室14内に導入される燃料圧力は、制御プレート6に対して、制御プレート6の閉弁方向に付勢する付勢力として作用する閉弁方向油圧力(FC)である。
高圧導入流路は、インジェクタボディ4のインレットポートから導入された高圧力の燃料を燃料溜まり室26を介して複数の噴孔27へ供給する第1高圧導入流路と、この第1高圧導入流路から分岐して制御弁室13を迂回して圧力制御室14内へ高圧力の燃料を導入する第2高圧導入流路と、第1高圧導入流路から分岐して制御弁室13を経由して圧力制御室14内へ高圧力の燃料を導入する第3高圧導入流路とを備えている。
燃料流路35は、ニードル1の外周面とニードル収容孔の孔壁面との間に形成される環状の流路である。また、燃料流路36は、ニードル収容孔内に形成されて、インジェクタの開弁時にノズルボディ2のニードルシート面とニードル1の弁部との間に形成される環状の燃料流路、およびこの燃料流路と複数の噴孔27とを連通するサック室を含んでいる。
インオリフィス孔38は、絞りなし流路(後述する)を介して、高圧燃料通路(31〜34)から第2導入経路(後述する)を経由して圧力制御室14へ導入される高圧燃料の流量を規制する第2入口側絞り孔(第2インオリフィス)である。
高圧燃料通路は、高圧流路孔31〜33および燃料流路34と、高圧流路孔31〜33と連通する高圧流路孔37と、この高圧流路孔37と連通するインオリフィス孔38、高圧流路孔31〜33および燃料流路34と連通する環状の高圧連通路41と、この高圧連通路41と連通する高圧流路孔42と、この高圧流路孔42と連通するサブインオリフィス孔(以下インオリフィス孔)43とを有している。
なお、制御弁室13の壁面には、圧力制御室14から燃料を燃料系の低圧側へ流出させる低圧燃料通路と制御弁室13とを連通する低圧ポート16と、圧力制御室14へ導入する高圧燃料が流通する高圧燃料通路と制御弁室13とを連通する高圧ポート18と、共用流路孔45を介して圧力制御室14と常時連通する連通ポート19とが開口形成されている。
絞りなし流路は、後述する絞り有り流路を迂回して、共用流路孔45から圧力制御室14へ高圧燃料を導入する導入流路で、共用流路孔45と連通する流路隙間48、およびこの流路隙間48と圧力制御室14とを連通する連通流路49等を有している。
なお、流路隙間48は、オリフィスプレート10のバルブシート面に形成(凹設)された環状の凹溝を含んでいる。
燃料排出流路の絞り有り流路は、圧力制御室14と連通する流路孔51、およびこの流路孔51と連通するメインアウトオリフィス孔(以下アウトオリフィス孔)52等を有している。
なお、アウトオリフィス孔52は、制御弁室13よりも燃料の流れ方向の上流側に設置されて、圧力制御室14から共用流路孔45および制御弁室13を介して低圧燃料通路へ流出する燃料の流量を規制する出口側絞り孔である。このアウトオリフィス孔52は、制御プレート6の中心軸線上に形成されている。また、低圧ポート16の上流端は、凹溝形状の制御弁室13の底面(天面)で開口している。
ノズルシリンダ8は、オリフィスプレート10の結合部に溶接固定により接続されている。このノズルシリンダ8は、オリフィスプレート10の結合部からニードル収容孔の内部へ突出するように配置されている。
また、バルブボディ9には、インジェクタボディ4の高圧流路孔31とオリフィスプレート10の高圧流路孔33とを連通する高圧流路孔32が形成されている。また、バルブボディ9には、制御バルブ11およびバルブスプリング12を移動可能に収容する制御弁室13が形成されている。また、バルブボディ9には、低圧ポート16を介して、インジェクタボディ4のスプリング収容室55と制御弁室13とを連通し、バルブボディ9の板厚方向に真っ直ぐに延びる貫通孔58が形成されている。また、バルブボディ9には、制御弁室13と共用流路孔45とを常時連通する連通ポート19が形成されている。
なお、制御弁室13は、バルブボディ9の図示下端面で開口し、この開口側から奥側まで延びる凹溝である。
また、オリフィスプレート10には、バルブボディ9の高圧流路孔32とノズルボディ2の燃料流路34とを連通する高圧流路孔33が形成されている。また、オリフィスプレート10の中心軸線上には、オリフィスプレート10の板厚方向に真っ直ぐに延びる共用流路孔45が貫通形成されている。また、オリフィスプレート10には、高圧連通路41と制御弁室13とを連通する高圧流路孔42、インオリフィス孔43および高圧ポート18が形成されている。
アクチュエータ3は、電荷の充放電により軸線方向に伸縮するピエゾ素子をその軸線方向に多数積層してなるピエゾ素子積層体と、このピエゾ素子積層体を保護する筒状の絶縁スリーブと、ピエゾ素子積層体の軸線方向の両端に設けられる絶縁基板とを備えている。このアクチュエータ3は、一対のピエゾリード端子間に、ピエゾ駆動回路(EDU:図示せず)からピエゾ駆動信号(ピエゾ印加電圧またはピエゾ駆動電流)が印加されるように構成されている。
変位拡大機構は、アクチュエータ3の伸縮変位(伸張、収縮)を受けてアクチュエータ3と一体移動するピエゾピストン(大径ピストン)21と、制御バルブ11と一体往復移動可能に連結したバルブピストン(小径ピストン)22と、作動油(燃料)が充填された油密室23とを備えている。この変位拡大機構は、バルブピストン22が、アクチュエータ3の変位方向と略同一方向に制御バルブ11を間接的に駆動するように構成されている。
変位拡大機構は、アクチュエータ3の伸張変位により油密室23内の燃料圧力(油圧力)が上昇することで、アクチュエータ3およびピエゾピストン21の変位を拡大(駆動力を低減)してバルブピストン22に伝え、このバルブピストン22の変位により制御バルブ11を切替駆動するように構成されている。
バルブピストン22の受圧面積は、ピエゾピストン21の受圧面積よりも小さい。
バルブピストンスプリング24は、バルブピストン22に対して、制御バルブ11の開弁方向に付勢する付勢力(Fsp)を発生するコイルスプリングである。このバルブピストンスプリング24は、スプリング収容室55の奥側のスプリング座部とバルブピストン22の鍔部66(スプリング座部)との間で軸線方向に圧縮された状態で配置された圧縮コイルスプリングである。また、バルブピストンスプリング24は、スプリング収容室55内に収容されている。
ピストンシリンダ64には、アクチュエータ3の伸縮変位時において、バルブピストン22の図示下端側およびバルブピストンスプリング24を収容するスプリング収容室55の容積変化(呼吸作用)によるへばり付きを防止するために、ピエゾピストン21の円筒周壁の外部からスプリング収容室55内に作動油供給経路を確保するという目的で、円筒周壁の内外を連通する複数の径方向連通孔56が形成されている。すなわち、複数の径方向連通孔56は、低圧流路57と連通している。なお、低圧流路57は、インジェクタボディ4のアウトレットポートと連通している。
また、変位伝達ピン65は、バルブピストン22の開弁方向の変位、つまり変位拡大機構による軸線方向の一方側への駆動力を制御弁の制御バルブ11に伝えると共に、バルブピストン22の鍔部66に与えられたバルブピストンスプリング24の付勢力を制御バルブ11に伝える。すなわち、バルブピストン22は、変位伝達ピン65を介して、制御バルブ11を強制開弁している。
制御弁は、変位伝達ピン65を介してバルブピストン22に強制的に開弁駆動される制御バルブ11、およびこの制御バルブ11をその閉弁方向に付勢するバルブスプリング12等を有し、バルブボディ9の制御弁室13内に往復移動可能に収容されている。
制御バルブ11は、高圧ポート18と連通ポート19を連通し、且つ低圧ポート16と連通ポート19の連通を遮断する低圧シール状態と、低圧ポート16と連通ポート19を連通し、且つ高圧ポート18と連通ポート19の連通を遮断する高圧シール状態とを選択的に切り替える弁体である。
なお、鍔部74の外周に、バルブボディ9のガイド孔(シリンダ孔)の孔壁面に対して往復摺動可能な摺動部(面)を設けても良い。この場合、バルブボディ9の制御弁室13の壁面に、鍔部74の摺動部を往復摺動可能に支持するガイド孔(シリンダ孔)が設けられる。
高圧側弁部72は、高圧シート面17に着座する平面形状の高圧シール面を有している。
弁軸部75の軸線方向(往復移動方向)の一端面(図示上端面)には、低圧側弁部71の低圧シール面が設けられている。また、弁軸部75の軸線方向(往復移動方向)の他端面(図示下端面)には、高圧側弁部72の高圧シール面が設けられている。
なお、低圧シート面15は、高圧シート面17との間に所定の軸方向距離(制御弁室13の高さ寸法)を隔てて対向して配置されている。
また、バルブスプリング12は、バルブボディ9の制御弁室13の奥側のスプリング座部と制御バルブ11の鍔部74(スプリング座部)との間で軸線方向に圧縮された状態で配置された圧縮コイルスプリングである。
これによって、低圧側弁部71が低圧シート面15より離脱(リフト)して低圧ポート16を開放し、且つ高圧側弁部72が高圧シート面17に着座(シート)して高圧ポート18を閉鎖することで、圧力制御室14内の燃料が、流路孔51、アウトオリフィス孔52、共用流路孔45、連通ポート19、制御弁室13を通って低圧ポート16等の低圧燃料通路を介して燃料系の低圧側へ流出させる。これにより、圧力制御室14内の燃料圧力が素早く低下し、ニードル開弁圧(Po)まで圧力制御室14内の燃料圧力が低下すると、ニードル1が開弁動作を開始してエンジンの気筒の燃焼室内に高圧燃料が噴射される。
これによって、低圧側弁部71が低圧シート面15に着座(シート)して低圧ポート16を閉鎖し、且つ高圧側弁部72が高圧シート面17より離脱(リフト)して高圧ポート18を開放することで、高圧ポート18から制御弁室13、連通ポート19、共用流路孔45、流路隙間48および連通流路49を通って圧力制御室14内へ高圧燃料が導入される。これにより、圧力制御室14内の燃料圧力が素早く上昇し、ニードル閉弁圧(Pc)まで圧力制御室14内の燃料圧力が回復すると、ニードル1が閉弁動作を開始してエンジンの気筒の燃焼室内への燃料噴射が終了する。
インオリフィス孔43は、制御弁室13、圧力制御室14および流路隙間48よりも燃料の流れ方向の上流側に設置されている。このインオリフィス孔43は、第1導入経路上に設けられて、制御弁室13および共用流路孔45と直列配置されている。
なお、第1燃料経路とは、圧力制御室14から流路孔51およびアウトオリフィス孔52を経由して共用流路孔45へ燃料を流出させる燃料排出経路である。また、第2燃料経路とは、共用流路孔45から流路隙間48および連通流路49を経由し、且つ流路孔51およびアウトオリフィス孔52を迂回して圧力制御室14へ高圧燃料を導入する燃料導入経路である。
また、流路隙間48は、制御プレート6の開弁側受圧面とオリフィスプレート10のバルブシート面59との間に形成される容積可変空間である。この流路隙間48内に導入される燃料圧力は、制御プレート6に対して、制御プレート6の開弁方向に付勢する付勢力として作用する開弁方向油圧力(FO)である。
また、制御プレートスプリング7は、制御プレート6の閉弁側受圧面(スプリング座部)とニードル1の収容凹部の奥側の底面(スプリング座部)との間で軸線方向に圧縮された状態で配置された圧縮コイルスプリングである。
次に、本実施例のインジェクタの作用を図1ないし図3に基づいて簡単に説明する。
また、インオリフィス孔43の通過流量(サブインオリフィス流量)よりも、インオリフィス孔38の通過流量(メインインオリフィス流量)の方が多くなるように絞り径が設定されている。なお、インオリフィス孔38の通過流量(メインインオリフィス流量)よりも、インオリフィス孔43の通過流量(サブインオリフィス流量)の方が多くなるように絞り径が設定しても良い。
そして、インジェクタの内部に導入された高圧燃料の一部は、インジェクタボディ4のインレットポートから高圧流路孔31〜33および燃料流路34、35を通って燃料溜まり室26および燃料流路36に到達する。
一方、高圧流路孔31〜33を流通する高圧燃料の一部は、高圧流路孔32、33間の分岐部より分岐して高圧流路孔37およびインオリフィス孔38を通って制御プレート6の図示上端面に到達する。
このとき、制御バルブ11が低圧ポート16を閉鎖しているので、圧力制御室14から低圧燃料通路を介して燃料系の低圧側への燃料の流出は停止されている。これにより、共用流路孔45および流路隙間48内の燃料圧力(開弁方向油圧力:FO)が、圧力制御室14内の燃料圧力(閉弁方向油圧力:FC)と制御プレートスプリング7の付勢力(閉弁方向付勢力:Fsp)との合力よりも大きくなる。
このとき、インオリフィス孔38および共用流路孔45に到達していた高圧燃料は、インオリフィス孔38および共用流路孔45から流路隙間48内に導入される。そして、流路隙間48内に導入された高圧燃料は、流路隙間48、連通流路49を通って圧力制御室14内に導入されるため、圧力制御室14内の燃料圧力(閉弁方向油圧力:FC)が増加する。
この結果、アクチュエータ3のピエゾ素子積層体に電圧が印加されず、制御バルブ11がバルブスプリング12の付勢力によって低圧シート側に付勢されて、低圧ポート16を閉鎖し、且つ高圧ポート18を開放している時(低圧シート状態の時)には、ニードル1の弁部がノズルボディ2のニードルシート面に着座(シート)するため、燃料溜まり室26と複数の噴孔27とを連通する筒状の燃料流路36が遮断される。
なお、共用流路孔45および流路隙間48内の燃料圧力(開弁方向油圧力:FO)と、圧力制御室14内の燃料圧力(閉弁方向油圧力:FC)とが均衡した段階で、制御プレートスプリング7の有無に関わらず、制御プレート6がノズルシリンダ8のガイド孔でガイドされながら閉弁方向に移動して、オリフィスプレート10のバルブシート面59に着座(シート)する。これにより、制御プレート6の図示上端面とバルブシート面59との間の流路隙間48が無くなる(または最も狭くなる)。つまり制御プレート6が、インジェクタ内燃料経路を第1燃料経路に切り替え、且つ第2導入経路(インオリフィス孔38)を閉じる全閉位置に変位する。
このように、アクチュエータ3のピエゾ素子積層体が伸張変位すると、ピエゾピストン21の移動(変位)に伴って、油密室23の容積が縮小されて油密室23内の燃料圧力(油圧力)が上昇する。そして、油密室23内の油圧力が上昇した場合には、バルブピストン22が、バルブピストンスプリング24の付勢力によるアシストを受けながら、アクチュエータ3の変位方向と略同一方向、つまり制御バルブ11の開弁方向に駆動される。
このため、制御バルブ11がバルブピストン22によって強制的に開弁駆動されるため、制御バルブ11の低圧側弁部71が低圧シート面15より離脱(リフト)し、且つ制御バルブ11の高圧側弁部72が高圧シート面17に着座(シート)する。これにより、低圧ポート16を開放され、且つ高圧ポート18が閉鎖される。
そして、共用流路孔45内に流入した燃料は、バルブボディ9の制御弁室13内に流入する。そして、制御弁室13内に流入した燃料は、低圧ポート16から低圧流路孔54内に流入する。
そして、低圧流路孔54内に流入した燃料は、スプリング収容室55、複数の径方向連通孔56および低圧流路57を通ってアウトレットポートからインジェクタの外部へ流出し、燃料系の低圧側へ排出される。
この結果、ニードル1がニードルシート面より離脱(リフト)するため、ニードル1が開弁状態となり、複数の噴孔27からエンジンの気筒の燃焼室内への燃料噴射が開始される。
そして、このインジェクタ閉弁駆動指令に対応してEDUからピエゾ素子積層体への電圧印加が停止(通電停止OFF)されると、ピエゾ素子積層体から電荷が放電される。これに伴って、ピエゾ素子積層体が収縮変位し、ピエゾピストン21および駆動伝達部材61、62がピエゾスプリング63の付勢力により押し戻される。
したがって、制御バルブ11の低圧側弁部71が低圧シート面15に着座(シート)し、且つ制御バルブ11の高圧側弁部72が高圧シート面17より離脱(リフト)する。これにより、低圧ポート16を閉鎖され、且つ高圧ポート18が開放される。
一方、制御バルブ11の高圧側弁部72が高圧ポート18を開放しているので、インジェタの外部から高圧流路孔31〜33内に導入されている高圧燃料が、高圧連通路41、高圧流路孔42、インオリフィス孔43、高圧ポート18、制御弁室13および共用流路孔45から制御プレート6の図示上端面に到達する。また、高圧流路孔31〜33を流通する高圧燃料の一部は、高圧流路孔32、33間の分岐部より分岐して高圧流路孔37およびインオリフィス孔38を通って制御プレート6の図示上端面に到達する。
これにより、インオリフィス孔38、共用流路孔45および流路隙間48内の燃料圧力(開弁方向油圧力:FO)が、圧力制御室14内の燃料圧力(閉弁方向油圧力:FC)と制御プレートスプリング7の付勢力(閉弁方向付勢力:Fsp)との合力よりも大きくなる。
このとき、インオリフィス孔38および共用流路孔45に到達していた高圧燃料は、共用流路孔45から流路隙間48内に導入される。そして、流路隙間48内に導入された高圧燃料は、流路隙間48、連通流路49を通って圧力制御室14内に導入されるため、圧力制御室14内の燃料圧力(閉弁方向油圧力:FC)が急速に回復していく。
したがって、燃料溜まり室26と複数の噴孔27とを連通する筒状の燃料流路36が遮断されるため、インジェクタの各噴孔27からエンジンの気筒の燃焼室内への燃料噴射が終了する。
以上のように、本実施例のインジェクタにおいては、アクチュエータ3の駆動力によりバルブスプリング12の付勢力に抗して制御バルブ11が高圧シール状態に切り替えられ、制御プレート6が第2導入経路(FL2)を閉じる全閉位置に変位すると、圧力制御室14への燃料の導入が遮断され、圧力制御室14からの燃料の流出が実施される。これにより、圧力制御室14から連通ポート19、制御弁室13、低圧ポート16および低圧燃料通路(54〜57)を経由して燃料系の低圧側へ燃料が流出し、圧力制御室14内の燃料圧力が低下する。そして、圧力制御室14内の燃料圧力、つまりニードル1に対して閉弁方向に作用する燃料圧力がニードル開弁圧まで低下すると、ニードル1が開弁(リフト)してエンジンの気筒の燃焼室内への燃料噴射が開始される。
このとき、ニードル開弁速度は、アウトオリフィス孔52により規定される燃料流量(アウトオリフィス流量)によって設定される。
このとき、ニードル閉弁速度は、インオリフィス孔38およびインオリフィス孔43により規定される燃料流量(メインインオリフィス流量+サブインオリフィス流量)によって設定される。
また、制御プレートを用いた従来のインジェクタに対して、制御プレート6の直上のメインインオリフィス流量を低減できるため、特に近接多段噴射での圧力制御室14内の圧力降下を高速化し、噴射応答性を高めることができ、結果として安定した短インターバルでのマルチ噴射を実現することができる。
油圧制御室の容積が大きくなると、インジェクタの噴射開始指令時に、アクチュエータの変位を利用して制御弁の弁体を押し下げて制御弁の弁体を高圧シートに着座させた際に、油圧制御室内の燃料圧力が燃料噴射圧と同等の高圧力から急激に降下することにより燃料の体積弾性率が大きく変動する。これに伴って燃料の体積が膨張、収縮を繰り返すことにより油圧制御室内に燃料の圧力脈動が発生する。
この結果、ニードル開弁速度を増加することが困難となり、ニードルの開弁応答性を向上させることができなかった。なお、ニードルを高速で開弁させるためには、油圧制御室内の燃料圧力を速やかに減圧することが必要である。
したがって、ニードル開弁動作時にニードル1がうねりながらリフトするのを抑えることができる。これにより、ニードル1の開弁動作が、リフト開始時からフルリフト時まで安定するので、ニードル1の制御性の悪化および噴射量の制御精度の悪化を抑制することができる。
これにより、共用流路孔45から圧力制御室14内へ導入される燃料は、アウトオリフィス孔52を通らないため、ニードル閉弁速度は高圧燃料通路(31〜34、37、38、41〜43)、高圧ポート18、制御弁室13、共用流路孔45を流れる燃料流量(インオリフィス孔43により規定される燃料流量)によって設定される。
したがって、ニードル開弁速度およびニードル閉弁速度を独立して設定することができる。
図4および図5は、本発明の燃料噴射弁を適用したピエゾインジェクタ(実施例2)を示したものである。
ここで、実施例1と同じ符号は、同一の構成または機能を示すものであって、説明を省略する。
アウトオリフィス孔52は、制御弁室13の連通ポート19よりも燃料の流れ方向の上流側で、且つ流路孔51と共用流路孔45との間に設置された第1出口側絞り孔(メインアウトオリフィス孔、第1アウトオリフィス)である。このアウトオリフィス孔52は、流路孔51と共用流路孔45とを連通している。また、アウトオリフィス孔52は、制御プレート6の中心軸線上に形成されている。
ここで、本実施例のインジェクタでは、アウトオリフィス孔52の通過流量(メインアウトオリフィス流量)よりも、アウトオリフィス孔53の通過流量(サブアウトオリフィス流量)の方が多くなるように絞り径が設定されている。
一方、制御バルブ11の低圧側弁部71の直上の低圧ポート16内に一定の圧力を維持することができるので、燃料噴射初期の制御弁室13内の急激な圧力降下を抑制できる。これにより、圧力制御室14の圧力脈動を抑制する効果を備えている。
以上のように、本実施例のインジェクタにおいては、実施例1と同様な効果を奏する。
図6および図7は、本発明の燃料噴射弁を適用したピエゾインジェクタ(実施例3)を示したものである。
ここで、実施例1及び2と同じ符号は、同一の構成または機能を示すものであって、説明を省略する。
なお、オリフィス孔46は、高圧ポート18から制御弁室13、連通ポート19、共用流路孔45、オリフィス孔46、共用流路孔47、流路隙間48、連通流路49を介して、圧力制御室14へ導入される高圧燃料の流量を規制する入口側絞り孔である。また、オリフィス孔46は、圧力制御室14から共用流路孔45、制御弁室13および低圧燃料通路(54〜57)を経て燃料系の低圧側へ流出する燃料の流量を規制する第2出口側絞り孔である。この場合、アウトオリフィス孔52は、第1出口側絞り孔となる。
以上のように、本実施例のインジェクタにおいては、実施例1及び2と同様な効果を奏する。
図8は、本発明の燃料噴射弁を適用したピエゾインジェクタ(実施例4)を示したものである。
ここで、実施例1〜3と同じ符号は、同一の構成または機能を示すものであって、説明を省略する。
バルブボディ9の壁面には、制御弁の制御バルブ11の低圧側弁部71が着座(シート)することが可能な円錐台(テーパ)筒形状の低圧シート面15が形成されている。この低圧シート面15の奥側、つまり制御弁室13の天井面から奥側に延びる凹溝内には、アウトオリフィス孔53を介して低圧流路孔54と連通する低圧ポート16が形成されている。
また、オリフィスプレート10の図示上端面には、制御バルブ11の高圧側弁部72が着座(シート)することが可能な平面形状の高圧シート面17が形成されている。この高圧シート面17の中央部には、インオリフィス孔43を介して高圧流路孔42と連通する高圧ポート18が形成されている。
制御バルブ11は、低圧側弁部71、高圧側弁部72、鍔部74および弁軸部75等を有している。
低圧側弁部71は、低圧シート面15に着座する凸曲面(部分球面)形状の低圧シール面を有している。
高圧側弁部72は、高圧シート面17に着座する平面形状の高圧シール面を有している。
以上のように、本実施例のインジェクタにおいては、実施例1〜3と同様な効果を奏する。
なお、本実施例の制御弁の制御バルブ11の構造および制御弁室13の低圧シート面15の構造を実施例1〜3に組み込んでも構わない。
図9は、本発明の燃料噴射弁を適用したピエゾインジェクタ(実施例5)を示したものである。
ここで、実施例1〜4と同じ符号は、同一の構成または機能を示すものであって、説明を省略する。
バルブボディ9の壁面には、制御弁の制御バルブ11の低圧側弁部71が着座(シート)することが可能な円錐台(テーパ)筒形状の低圧シート面15が形成されている。この低圧シート面15の奥側には、燃料の流れ方向の下流側に向かって流路断面積が徐々に広がるテーパ形状の低圧流路孔54と連通する低圧ポート16が形成されている。
また、オリフィスプレート10の図示上端面には、実施例4と同様な形状の高圧シート面17が形成されている。この高圧シート面17の中央部には、実施例4と同様に高圧ポート18が形成されている。
制御弁の制御バルブ11は、低圧側弁部71、高圧側弁部72、鍔部74および弁軸部75等を有している。
低圧側弁部71は、実施例4と同様な形状の低圧シール面を有している。
高圧側弁部72は、実施例4と同様な形状の高圧シール面を有している。
変位伝達ピン81は、バルブピストン22のピストン軸部(大径軸部)および鍔部66よりも外径が小さい円柱形状の中径軸部と、この中径軸部よりも外径が小さい円柱形状の小径軸部と、中径軸部と小径軸部との間に設けられる円錐台形状の連結部とを備えている。
連結部は、中径軸部と小径軸部とを連結し、中径軸部から小径軸部へ向かって徐々に外径が小さくなる縮径軸部(テーパ軸部)である。
変位伝達ピン81は、バルブボディ9の制御弁室13の低圧ポート16、およびこの低圧ポート16とバルブピストンスプリング24を収容するスプリング収容室55とを連通する円錐台形状の低圧流路孔54内を往復移動可能に収容されている。
以上のように、本実施例のインジェクタにおいては、実施例1〜4と同様な効果を奏する。
なお、本実施例のバルブピストン22の構造および燃料流出流路の構造を実施例1〜4に組み込んでも構わない。
図10ないし図12(a)は、本発明の燃料噴射弁を適用したピエゾインジェクタ(実施例6)を示したものである。
ここで、実施例1〜5と同じ符号は、同一の構成または機能を示すものであって、説明を省略する。
従来例のインジェクタでは、制御室と低圧室との連通を制御バルブよりも燃料の流れ方向の下流側のアウトオリフィスを介して行っていたが、制御室の低圧ポートに対して直角に屈曲するアウトオリフィスを介して低圧室へ燃料を流出させる連通路では、流路断面積(開口面積)が急変(急縮小)したり、燃料の流れ方向が急変(直角に屈曲)したりするため、燃料の流量バラツキ、燃料の流速の変化(増加)や気泡の生成・崩壊によるエロージョン発生が課題となっている。
また、エンジンの気筒に噴射される燃料の噴射圧力を高圧化する場合には、エロージョンに対する懸念が増大すると共に、制御バルブの駆動負荷、すなわち、アクチュエータの駆動負荷が増加し、燃料の噴射量の精度および制御性が悪化するという問題があった。
しかしながら、従来例のインジェクタでは、連通路を形成するために、制御バルブを収容するバルブボディ下端部に連通するための逃がし径を設ける必要がある。
また、バルブシート径を小さくするには、逃がし径および摺動ピン部材の外径の低減を伴う。この結果、摺動ピン部材の駆動力による変形ロスが増大し、アクチュエータの駆動負荷が思ったように低減できないという問題があった。
また、アウトオリフィスを形成するには、逃がし径部に一定の高さが必要なため、必要な摺動長を確保するためには、摺動ピン部材の全長が長くなってしまい、これも摺動ピン部材自体の変形ロスが低減できない要因となっていた。
制御弁の制御バルブ11は、低圧側弁部71、高圧側弁部72、鍔部74および弁軸部75等を有している。
低圧側弁部71は、実施例4及び5と同様な形状の低圧シール面を有している。
高圧側弁部72は、実施例4及び5と同様な形状の高圧シール面を有している。
本実施例のインジェクタは、ノズルボディ2の密着面とインジェクタボディ4の密着面との間に挟み込まれたバルブボディ9およびオリフィスプレート10を備えている。
また、オリフィスプレート10の図示上端面には、実施例4及び5と同様な形状の高圧シート面17が形成されている。この高圧シート面17の中央部には、実施例4及び5と同様に高圧ポート18が形成されている。
スプリング収容室55は、低圧ポート16を介して制御弁室13と連通する低圧室である。このスプリング収容室55は、バルブピストン22の図示下端部(鍔部66を含んだ部分)およびバルブピストンスプリング24を往復移動可能に収容している。
なお、低圧ポート16の詳細は、後述する。
変位伝達ピン65は、特許請求の範囲における「ピン状の伝達部材」に相当し、ヤング率が所定値よりも高い高剛性の材料によって形成されている。この変位伝達ピン65は、アクチュエータ3から駆動力を受ける大径軸部82、この大径軸部82よりも外径が小さく、制御バルブ11に駆動力を伝える小径軸部83、および大径軸部82と小径軸部83との間に設けられる円環状の段差84を備えている。
また、変位伝達ピン65は、バルブボディ9の制御弁室13、およびこの制御弁室13とスプリング収容室55とを連通する低圧ポート16内を往復摺動可能に収容されている。なお、変位伝達ピン65の外周に設けた段差84は、制御弁の低圧シート面(バルブシート)15を流通する燃料の流量バラツキを抑制する等の目的で、低圧シート面15の開口と比較して流路絞り(第2アウトオリフィス)となるようなものに設定されている。
複数の軸方向凹溝95は、収容孔91の軸線方向(燃料の流れ方向)に対して垂直な断面形状が部分円形状を呈する。
低圧ポート16は、複数の軸方向凹溝95の底面と大径軸部82および小径軸部83の外周面との間に形成されている。
変位伝達ピン65の摺動部86は、複数の摺動壁面94にそれぞれ往復摺動する複数の摺動面が設けられている。
なお、複数の軸方向凹溝95および複数の摺動壁面94は、円周方向に所定の間隔(例えば120°間隔)で設けられ、且つ収容孔91の延長方向に真っ直ぐに延びている。また、複数の摺動面は、変位伝達ピン65の外周方向に所定の間隔(例えば120°間隔)で設けられ、且つ変位伝達ピン65の往復移動方向に真っ直ぐに延びている。
その上、本実施例のインジェクタにおいては、図11および図12(a)に示したように、変位伝達ピン65の大径軸部82よりも図示下方に小径軸部83を設けることにより、変位伝達ピン65の図示下端部の外径を絞り部93の孔壁面より逃がしている。そして、インジェクタにおいては、低圧ポート16を構成する複数の連通路92を介して制御弁室13とスプリング収容室55とを連通することにより、制御弁室13から燃料系の低圧側へ燃料を流出する低圧燃料通路への連通部を構成した。
同時に、制御弁室13から流出する燃料は、図11(b)に示したように、図示上下方向に真っ直ぐに延びる低圧ポート16を介してスプリング収容室55内に流れ込むように構成されており、従来のインジェクタと比べて燃料の流れ性が改善している。これにより、低圧シート面15のバルブシート径に対して変位伝達ピン65の図示下端部(小径軸部83)の径差を小さくできる。この結果、変位伝達ピン65の摺動径を拡大し、アクチュエータ3の駆動負荷を低減することができる。
したがって、変位伝達ピン65の周囲に連通路92を形成した構造によって、バルブシート径の低減と変位伝達ピン65自体の変形ロスを低減との両立を図ることができ、且つアクチュエータ3の駆動負荷を低減することができる。
さらに、バルブボディ9の下端径(絞り部93の内径)=変位伝達ピン65の摺動径とすることで、摺動壁面94と小径軸部(逃がし部)83との同軸を確保することができる。この結果、制御弁室13とスプリング収容室55とを連通する低圧ポート16を変位伝達ピン65が往復摺動可能に貫通する構成を採用したインジェクタの製造上も有利である。つまり上記構造のインジェクタの製造が簡易なものとなる。
なお、連通路92中に、連通路92の流路断面積を小さくする絞り部(流路絞り)93を設けなくても良い。
図12(b)および図13は、本発明の燃料噴射弁を適用したピエゾインジェクタ(実施例7)を示したものである。
ここで、実施例1〜6と同じ符号は、同一の構成または機能を示すものであって、説明を省略する。
収容孔91は、図12(b)に示したように、変位伝達ピン65の摺動部86を往復摺動可能に支持する複数の摺動壁面94を有している。
変位伝達ピン65の大径軸部82には、摺動部86の各摺動面から半径方向の内側に向けて凹んだ複数の凹部(以下平面削部)96が設けられている。
低圧ポート16は、複数の摺動壁面94の孔壁面と複数の平面削部96の底面との間に形成されている。
複数の平面削部96は、変位伝達ピン65の外周方向に所定の間隔(例えば120°間隔)で設けられ、且つ変位伝達ピン65の往復移動方向に真っ直ぐに延びている。
このインジェクタの場合、バルブボディ9側の軸方向凹溝95を設けることなく、低圧ポート16を単純なストレート貫通孔(収容孔91)とすることができるため、バルブボディの製造上有利である。
なお、低圧ポート16は、制御弁室13とスプリング収容室55とを連通する連通路92のみを有している。この連通路92は、バルブボディ9の収容孔91の孔壁面と変位伝達ピン65の大径軸部82の外周面との間に形成されている。
以上のように、本実施例のインジェクタにおいては、実施例1〜6と同様な効果を奏する。
図14は、本発明の燃料噴射弁を適用したピエゾインジェクタ(実施例8)を示したものである。
ここで、実施例1〜7と同じ符号は、同一の構成または機能を示すものであって、説明を省略する。
この変位伝達ピン65は、アクチュエータ3から駆動力を受ける大径軸部82、この大径軸部82よりも外径が小さく、制御バルブ11に駆動力を伝える小径軸部83、および大径軸部82と小径軸部83との間に設けられる円錐台形状の連結部85を備えている。 連結部85は、大径軸部82と小径軸部83とを連結し、大径軸部82から小径軸部83へ向かって徐々に外径が小さくなる縮径軸(テーパ軸部)である。
収容孔91は、低圧ポート16の上流側(制御弁室13側)に設けられる径小孔、低圧ポート16の下流側(スプリング収容室55側)に設けられる径大孔、および径小孔と径大孔との間に設けられる円錐台形状の拡径孔を有している。
収容孔91の径大孔には、変位伝達ピン65の大径軸部82を往復摺動可能に支持する複数の摺動壁面94が設けられている。
変位伝達ピン65の大径軸部82には、複数の摺動壁面94にそれぞれ往復摺動する複数の摺動面、およびこれらの摺動部86よりも半径方向の内側に凹み、変位伝達ピン65の往復移動方向に延びる複数の凹部(以下平面削部)96が設けられている。
複数の平面削部96は、変位伝達ピン65の外周方向に所定の間隔(例えば120°間隔)で設けられ、且つ変位伝達ピン65の往復移動方向に真っ直ぐに延びている。
以上のように、本実施例のインジェクタにおいては、実施例1〜7と同様な効果を奏する。
その上、本実施例のインジェクタにおいては、複数の摺動面を有する摺動部86のみ外径を拡大した構造とすることで、変形ロスを更に小さくすることができる。
本実施例では、本発明の開閉弁として、制御プレート6を上下圧力差に応じて開閉動作(切替動作)する制御弁を採用しているが、本発明の開閉弁として、制御プレート6を開閉動作させるアクチュエータを設け、所定の切替タイミングで、エンジン制御ユニット(電子制御装置:ECU)からの切替指令によりアクチュエータの駆動力によって開閉弁を開閉動作させるようにしても良い。
また、内燃機関(エンジン)として、ディーゼルエンジンの代わりに、ガソリンエンジンを用いても良い。
また、本発明の燃料噴射弁を、例えばガソリンエンジン等の内燃機関(エンジン)の気筒内または気筒に連通する吸気ポート内に燃料を噴射するフューエルインジェクタに適用しても良い。
また、いずれの実施例においても、ピン状の伝達部材(変位伝達ピン65)の材質を超鋼のようなヤング率が所定値(例えば200GPa)よりも高い高剛性の材料(例えば超鋼、セラミックス等)によって形成することで、ピン状の伝達部材の体格を変えずに、変形ロスを低減することができる。
3 アクチュエータ
6 制御プレート(開閉弁)
11 制御バルブ(制御弁の弁体)
12 バルブスプリング(制御弁の弾性部材)
13 制御弁室
14 圧力制御室
38 インオリフィス孔(第2インオリフィス、メインインオリフィス)
43 インオリフィス孔(第1インオリフィス、サブインオリフィス)
52 アウトオリフィス孔(メインアウトオリフィス)
Claims (16)
- (a)内燃機関の気筒に燃料噴射を行う噴孔(27)を開閉するニードル(1)と、
(b)このニードル(1)に対して閉弁方向に作用する燃料圧力を蓄える制御室(14)と、
(c)この制御室(14)と常時連通する連通ポート(19)、前記制御室(14)へ導入する高圧燃料が流通する高圧燃料通路(31〜34、37、38、41〜43)と連通する高圧ポート(18)、および前記制御室(14)から燃料を燃料系の低圧側へ流出させる低圧燃料通路(53〜57)と連通する低圧ポート(16)を有する制御弁室(13)と、
(d)この制御弁室(13)内に収容されて、前記高圧ポート(18)または前記低圧ポート(16)と前記連通ポート(19)との連通、遮断を選択的に切り替える弁体(11)を有する制御弁と、
(e)この制御弁の弁体(11)を、前記高圧ポート(18)と前記連通ポート(19)を連通し、且つ前記低圧ポート(16)と前記連通ポート(19)との連通を遮断する低圧シール状態から、前記低圧ポート(16)と前記連通ポート(19)を連通し、且つ前記高圧ポート(18)と前記連通ポート(19)との連通を遮断する高圧シール状態へ切替動作させる駆動力を発生するアクチュエータ(3)と
を備え、
前記制御弁の弁体(11)を切替動作させることで、前記制御室(14)内の燃料圧力を調整して、前記ニードル(1)の開閉動作を制御する燃料噴射弁において、
前記高圧燃料通路(31〜34、37、38、41〜43)は、前記制御室(14)へ導入される燃料の流量を規制する、少なくとも2つの第1、第2インオリフィス(38、43)を有し、
前記燃料噴射弁は、前記第1インオリフィス(43)から前記高圧ポート(18)、前記制御弁室(13)および前記連通ポート(19)を経由して前記制御室(14)へ高圧燃料を導入する第1導入経路(43、18、13、44、45、48、49)と、
前記第2インオリフィス(38)から前記高圧ポート(18)、前記制御弁室(13)および前記連通ポート(19)を迂回して前記制御室(14)へ高圧燃料を導入する第2導入経路(37、38、48、49)と、
この第2導入経路(37、38、48、49)を開く全開位置と前記第2導入経路(37、38、48、49)を閉じる全閉位置との2位置に変位可能な開閉弁(6、7)と
を備えたことを特徴とする燃料噴射弁。 - 請求項1に記載の燃料噴射弁において、
前記燃料噴射弁は、前記第1インオリフィス(43)の通過流量以上に前記第2インオリフィス(38)の通過流量を多く設定していることを特徴とする燃料噴射弁。 - 請求項1に記載の燃料噴射弁において、
前記燃料噴射弁は、前記第1インオリフィス(43)の通過流量以下に前記第2インオリフィス(38)の通過流量を少なく設定していることを特徴とする燃料噴射弁。 - 請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載の燃料噴射弁において、
前記開閉弁は、前記第2インオリフィス(38)と前記制御室(14)とを連通する流路を開閉する圧力作動式の制御プレート(6)を有していることを特徴とする燃料噴射弁。 - 請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載の燃料噴射弁において、
前記燃料噴射弁は、前記制御室(14)から前記制御弁室(13)を介して前記低圧燃料通路(53〜57)へ流出する燃料の流量を規制するアウトオリフィス(52、53)を備えていることを特徴とする燃料噴射弁。 - 請求項5に記載の燃料噴射弁において、
前記燃料噴射弁は、前記アウトオリフィス(52、53)の通過流量よりも、前記第1インオリフィス(43)の方が多くなるように絞り径が設定されていることを特徴とする燃料噴射弁。 - 請求項5または請求項6に記載の燃料噴射弁において、
前記アウトオリフィスは、前記制御弁室(13)よりも燃料の流れ方向の上流側に設置された第1アウトオリフィス(52)、および前記制御弁室(13)よりも燃料の流れ方向の下流側に設置された第2アウトオリフィス(53)を有していることを特徴とする燃料噴射弁。 - 請求項7に記載の燃料噴射弁において、
前記燃料噴射弁は、前記第1アウトオリフィス(52)の通過流量よりも、前記第2アウトオリフィス(53)の通過流量の方が多くなるように絞り径が設定されていることを特徴とする燃料噴射弁。 - 請求項1ないし請求項8のうちのいずれか1つに記載の燃料噴射弁において、
前記制御弁は、前記弁体(11)を、前記高圧シール状態から前記低圧シール状態に切り替える側へ付勢する弾性部材(12)を有していることを特徴とする燃料噴射弁。 - 請求項1ないし請求項9のうちのいずれか1つに記載の燃料噴射弁において、
前記アクチュエータ(3)は、電荷の充放電により伸縮するピエゾ素子積層体を有していることを特徴とする燃料噴射弁。 - 請求項1ないし請求項10のうちのいずれか1つに記載の燃料噴射弁において、
前記燃料噴射弁は、前記アクチュエータ(3)の駆動力を前記弁体(11)に伝えると共に、前記制御弁の弁体(11)の切替動作方向に往復移動可能なピン状の伝達部材(65)を備え、
前記低圧燃料通路は、前記低圧ポート(16)を介して前記制御弁室(13)と連通する低圧室(55)を有し、
前記制御弁は、前記弁体(11)を開閉動作可能に収容し、且つ前記制御弁室(13)および前記低圧ポート(16)を形成するバルブボディ(9)を有し、
前記低圧ポート(16)は、前記伝達部材(65)を往復移動可能に収容する収容孔(91)、およびこの収容孔(91)の孔壁面と前記伝達部材(65)の外周面との間に形成されて、前記制御弁室(13)と前記低圧室(55)とを連通する連通部(92、93)を有していることを特徴とする燃料噴射弁。 - 請求項11に記載の燃料噴射弁において、
前記伝達部材(65)は、ヤング率が所定値よりも高い高剛性の材料によって形成されていることを特徴とする燃料噴射弁。 - 請求項11または請求項12に記載の燃料噴射弁において、
前記伝達部材(65)は、前記アクチュエータ(3)から駆動力を受ける大径軸部(82)、この大径軸部(82)よりも外径が小さく、前記弁体(11)に駆動力を伝える小径軸部(83)、および前記大径軸部(82)と前記小径軸部(83)との間に設けられる環状の段差(84)を有していることを特徴とする燃料噴射弁。 - 請求項11ないし請求項13のうちのいずれか1つに記載の燃料噴射弁において、
前記連通部は、前記制御弁室(13)と前記低圧室(55)とを連通する連通路(92)を有し、
前記連通路(92)は、その流路断面積を絞る絞り部(93)を有していることを特徴とする燃料噴射弁。 - 請求項11ないし請求項14のうちのいずれか1つに記載の燃料噴射弁において、
前記収容孔(91)は、前記伝達部材(65)の摺動部(86)を往復摺動可能に支持する摺動壁面(94)、およびこの摺動壁面(94)から径方向外側に向けて凹んでおり、前記伝達部材(65)の往復移動方向に延びる凹部(95)を有し、
前記低圧ポート(16)は、前記伝達部材(65)の外周面と前記凹部(95)の底面との間に形成されていることを特徴とする燃料噴射弁。 - 請求項11ないし請求項15のうちのいずれか1つに記載の燃料噴射弁において、
前記収容孔(91)は、前記伝達部材(65)の摺動部(86)を往復摺動可能に支持する摺動壁面(94)を有し、
前記伝達部材(65)は、前記摺動部(86)から径方向内側に向けて凹んでおり、前記伝達部材(65)の往復移動方向に延びる凹部(96)を有し、
前記低圧ポート(16)は、前記収容孔(91)の孔壁面または前記摺動壁面(94)と前記凹部(96)の底面との間に形成されていることを特徴とする燃料噴射弁。
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