以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態を用いて説明する。各実施形態で先行する実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付すか、または先行の参照符号に一文字追加し、重複する説明を略する場合がある。また各実施形態にて構成の一部を説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施形態と同様とする。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、図1〜図4を用いて説明する。図1に示す燃料供給システム10には、第1実施形態による燃料噴射装置100が用いられている。燃料供給システム10は、内燃機関であるディーゼル機関20の各燃焼室22に、燃料噴射装置100によって燃料を供給する。燃料供給システム10は、フィードポンプ12、サプライポンプ13、コモンレール14、機関制御装置17、および複数の燃料噴射装置100等から構成されている。
フィードポンプ12は、サプライポンプ13に内蔵された例えばトロコイド式のポンプである。フィードポンプ12は、燃料タンク内に貯留された燃料としての軽油をサプライポンプ13に圧送する。フィードポンプ12は、サプライポンプ13と別体であってもよい。
サプライポンプ13は、ディーゼル機関20の出力軸によって駆動される例えばプランジャ式のポンプである。サプライポンプ13は、燃料配管13aによってコモンレール14と接続されている。サプライポンプ13は、フィードポンプ12から供給された燃料をさらに昇圧し、コモンレール14に供給する。
コモンレール14は、高圧燃料配管14aを介して各燃料噴射装置100と接続されている。コモンレール14は、サプライポンプ13から供給される高圧の燃料を一時的に蓄え、圧力を保持したまま各燃料噴射装置100に分配する。コモンレール14には、減圧弁14bが設けられている。減圧弁14bは、コモンレール14において余剰となった燃料を、燃料タンクに繋がっている余剰燃料配管へ排出する。
機関制御装置17は、プロセッサ、RAM、および書き換え可能な不揮発性の記憶媒体を含むマイクロコンピュータまたはマイクロコントローラを主体に構成された演算回路と、各燃料噴射装置100を駆動する駆動回路とを含む構成である。機関制御装置17は、図1にて破線で示すように、各燃料噴射装置100と電気的に接続されている。機関制御装置17は、ディーゼル機関20の稼動状態に応じて各燃料噴射装置100の作動を制御する。
燃料噴射装置100には、燃焼室22を形成するヘッド部材21の挿入孔に挿入された状態で、ヘッド部材21に取り付けられている。燃料噴射装置100は、高圧燃料配管14aを通じて供給される燃料を、複数の噴孔30から燃焼室22へ向けて直接的に噴射する。燃料噴射装置100は、噴孔30からの燃料の噴射を制御する弁機構を備えている。燃料噴射装置100は、高圧燃料配管14aを通じて供給される燃料の一部を、噴孔30の開閉に使用する。
次に、燃料噴射装置100に関して、図2および図3を用いて説明する。燃料噴射装置100は、図2に示すように、弁ボデー31、ノズルニードル32、駆動部33および切替弁機構36を含んで構成される。切替弁機構36は、第1バルブ35、第2バルブ37および第3バルブ38を有する。
弁ボデー31は、金属材料よって形成されたシリンダ等の複数の部材を組み合わせることによって構成されている。弁ボデー31には、噴孔30、シート部39、高圧流路40、流入流路41、低圧流路42、圧力制御室43、第1バルブ室45および駆動部収容室46が形成されている。
噴孔30は、燃焼室22へ挿入される弁ボデー31において、挿入方向の先端部に形成されている。先端部は、円錐状または半球状に形成されている。噴孔30は、弁ボデー31の内側から外側に向けて放射状に複数設けられている。高圧の燃料は、各噴孔30から燃焼室22へ向けて噴射される。高圧の燃料は、噴孔30を通過することによって霧化され、空気と混合し易い状態となる。シート部39は、弁ボデー31の先端部の内側に、円錐状に形成されている。シート部39は、噴孔30の上流側において高圧流路40に臨んでいる。
高圧流路40は、図1に示す高圧燃料配管14aを通じてコモンレール14から供給される高圧の燃料を、噴孔30に供給する。流入流路41は、高圧流路40と圧力制御室43とを連通させている。流入流路41は、高圧流路40を流通する燃料の一部を圧力制御室43に流入させる。流入流路41には、流入オリフィスとしてインオリフィス48が設けられている。インオリフィス48は、高圧流路40から圧力制御室43に流れる燃料の流量を制限する。
低圧流路42は、弁ボデー31内を高圧流路40に沿って延伸している。低圧流路42は、圧力制御室43の燃料(リーク燃料)を、燃料噴射装置100の外部の低圧側である余剰燃料配管に流出させる流出流路の一部である。流出流路は、低圧流路42および第1バルブ室等によって構成されている。低圧流路42を流通する燃料の圧力は、圧力制御室43の燃料の圧力よりも低くなっている。
圧力制御室43は、弁ボデー31の内部において、ノズルニードル32を挟んで噴孔30の反対側に設けられている。圧力制御室43は、シリンダ49およびノズルニードル32によって区画された円柱状の空間である。圧力制御室43には、流入流路41を通じて高圧の燃料が流入する。圧力制御室43の燃料圧力は、流入流路41からの高圧の燃料の流入と第1バルブ室45への燃料の流出とにより変動する。圧力制御室43における燃料圧力の変動によってノズルニードル32が往復変位する。
第1バルブ室45は、第1バルブ35を収容する円柱状の空間である。第1バルブ室45は、圧力制御室43と連通している。第1バルブ室45は、圧力制御室43と駆動部収容室46との間に位置している。第1バルブ室45の軸方向は、圧力制御室43の軸方向に沿っている。第1バルブ室45および圧力制御室43は、互いに同軸となるように形成されている。第1バルブ室45の容積は、圧力制御室43の容積よりも小さい。第1バルブ室45と駆動部収容室46との間には、下流側連通路53が形成されている。下流側連通路53は、第1バルブ室45から排出された燃料を主に低圧流路42に流通させる。
第1バルブ室45を区画する区画壁には、第1シート部54が形成されている。第1シート部54は、第1バルブ室45の区画壁のうちで、下流側連通路53の開口周囲を囲む円環状の領域である。第1シート部54は、第1バルブ35を着座させる領域となる。
駆動部収容室46は、駆動部33を収容する円柱状の空間である。駆動部収容室46は、第1バルブ室45から排出された燃料の一部によって満たされている。駆動部収容室46の軸方向は、圧力制御室43および第1バルブ室45の各軸方向に沿っている。駆動部収容室46、第1バルブ室45、および圧力制御室43は、互いに同軸となるように設けられている。
ノズルニードル32は、金属材料によって全体として円柱状に形成されている。ノズルニードル32は、弁ボデー31に収容されている。ノズルニードル32は、金属製の線材を螺旋状に巻設したコイル状のノズルスプリング60により、噴孔30側へ向けて付勢されている。ノズルニードル32は、弁受圧面61およびフェース部62を有している。ノズルニードル32は、圧力制御室43の燃料圧力を弁受圧面61に受けることで、円筒状に形成されたシリンダ49の内周壁面に沿って、軸方向に往復変位する。ノズルニードル32は、弁ボデー31に対して相対変位することにより、フェース部62をシート部39に離着座させる。フェース部62は、噴孔30を開閉する主弁部を、シート部39と共に形成している。
駆動部33は、駆動部収容室46に収容されている。駆動部33は、切替弁機構36の第1バルブ35および第3バルブ38を駆動するための駆動力を発生させることで、圧力制御室43と低圧流路42との間を遮断状態から連通状態へと切り替える。駆動部33は、機関制御装置17から出力された駆動信号に基づき、発生させる駆動力の大きさを変更可能であり、後述する第1駆動力または第2駆動力を発生させることができる。第2駆動力は、第1駆動力よりも大きい力である。
駆動部33は、圧電素子積層体63および伝達機構64等によって構成されている。圧電素子積層体63は、例えばPZT(PbZrTiO3)と呼ばれる層と薄い電極層が交互に積まれた積層体である。圧電素子積層体63には、機関制御装置17から出力された入力駆動信号が入力される。圧電素子積層体63は、駆動信号に応じた電圧(以下、「駆動電圧」)に従って、ピエゾ素子の特性である逆圧電効果により、駆動部収容室46の軸方向に沿って伸縮する。
伝達機構64は、圧電素子積層体63の伸縮を伝達する機構である。伝達機構64は、ピストン65、緩衝シリンダ66、ピストンスプリング67、第1伝達ピストン68、第2伝達ピストン69、第1駆動伝達ピン70および第2駆動伝達ピン71を有している。ピストン65は、円柱状に形成されている。ピストン65は、圧電素子積層体63と接している。ピストン65には、伸縮する圧電素子積層体63の動きが入力される。
緩衝シリンダ66は、円筒状に形成されており、ピストン65に外嵌されている。ピストンスプリング67は、軸方向に弾性力を発生させる金属ばねである。ピストンスプリング67は、緩衝シリンダ66に対してピストン65を第1バルブ35へ向けて付勢している。
ピストン65の先端には、第1バルブ室45側へ向かって延びる円柱状の第1駆動伝達ピン70が配置されている。第1駆動伝達ピン70は、下流側連通路53に挿通されている。第1駆動伝達ピン70の先端には、第1バルブ室45側へ向かって延びる円柱状の第1伝達ピストン68が配置されている。第1伝達ピストン68は、下流側連通路53に挿通されている。第1駆動伝達ピン70と第1伝達ピストン68とは、同軸に配置されている。
下流側連通路53は、第1伝達ピストン68と第2伝達ピストン69との間に緩衝油密室72を区画している。緩衝油密室72に充填された燃料により、第1伝達ピストン68の変位は、第2伝達ピストン69に伝達される。第2伝達ピストン69は、円柱状であって、下流側連通路53に挿通されている。第2伝達ピストン69の先端には、第1バルブ室45側へ向かって延びる円柱状の第2駆動伝達ピン71が配置されている。第2駆動伝達ピン71は、下流側連通路53に挿通されている。そして第2駆動伝達ピン71の先端面は、第1バルブ35に接触している。
このように駆動部33は、圧電素子積層体63の伸縮を伝達機構64によって軸方向に沿って伝達することで、第2駆動伝達ピン71を軸方向に往復変位させる。駆動部33に入力される駆動電圧が高くなるほど、第2駆動伝達ピン71から第1バルブ35に入力される駆動力、ひいては第1駆動伝達ピン70および第1バルブ35のリフト量が大きくなる。
切替弁機構36は、第1バルブ35および第3バルブ38の開閉によって流出流路の流路面積を切り替える機構である。駆動部33が第1駆動力および第2駆動力のいずれも発生させていない場合には、切替弁機構36は、流出流路を閉鎖させる。一方、駆動部33が第1駆動力を発生させている場合には、切替弁機構36は、流出流路を第1絞り状態に制限する。さらに、駆動部33が第2駆動力を発生させている場合には、切替弁機構36は、流出流路を第2絞り状態に制限する。
第2バルブ37は、金属材料等によって円盤状に形成されている。第2バルブ37は、圧力制御室43に配置されており、圧力制御室43内を軸方向に沿って変位可能である。また第3バルブ38も圧力制御室43内に配置されている。そして第2バルブ37および第3バルブ38は、圧力制御室43内に直列に配置されている。第2バルブ37の径方向の中央には、第2バルブ37を軸方向に貫通する貫通孔37aが形成されている。第2バルブ37の貫通孔37aには、第3バルブ38の円柱部38aが挿通されており、貫通孔37aの内壁に沿って第3バルブ38の円柱部38aを軸方向に案内する。
第2バルブ37には、上端側当接部37b、下端側当接部37cおよび第2アウトオリフィス37dが設けられている。上端側当接部37bは、第1バルブ室45と対向する第2バルブ37の上端面に形成されている。上端側当接部37bは、平坦な円環状に形成されている。上端側当接部37bは、第3バルブ用スプリング55の弾性力により、第2シート部50に接触する。上端側当接部37bの第2シート部50への着座により、第2バルブ37は閉弁状態となる。第2バルブ37は着座することで、流入流路41のインオリフィス48を閉塞して、圧力制御室43との連通を遮断する。また第2バルブ37は離座することで、流入流路41のインオリフィス48を開放して、圧力制御室43とを連通する。
下端側当接部37cは、第2バルブ37の軸方向の両端面のうちで、第3バルブ38と対向する他方の端面に形成されている。下端側当接部37cは、第3バルブ38の円盤部38bが第3バルブ用スプリング55の弾性力により接触する。
第2アウトオリフィス37dは、第2バルブ37の挿通孔37eの一部を構成する。第2バルブ37の挿通孔37eは、上端側当接部37bと下端側当接部37cとを挿通する。第2アウトオリフィス37dは、圧力制御室43から第1バルブ室45に至る流路面積を絞る構成である。第2アウトオリフィス37dは、第2バルブ37が閉弁状態である場合に、圧力制御室43から第1バルブ室45へ流出する燃料の流量を制限することで、後述する第2絞り状態において流出流路の流路面積を規定する。第2アウトオリフィス37dによって絞られた流路面積(以下、「絞り面積」)は、第3バルブ38に形成される第1アウトオリフィス38cよりも広く規定されている。即ち、第2アウトオリフィス37dは、第1アウトオリフィス38cよりも大径のオリフィスである。
第3バルブ38は、金属材料等により、2段円柱状に形成されている。第2バルブ37および第3バルブ38は、圧力制御室43内に直列に配置されている。第3バルブ38は、円盤部38bおよび円柱部38aを有している。円盤部38bは、第2バルブ37の貫通孔37aよりも大径に形成されている。一方、円柱部38aは、第2バルブ37の貫通孔37aよりも小径に形成されている。円柱部38aは、円盤部38bから軸方向に沿って円柱状に突出している。円柱部38aの軸方向の長さは、第2バルブ37の貫通孔37aの長さよりも長い。円柱部38aは、第2バルブ37の貫通孔37aの内壁によって軸方向に案内され、軸方向に変位可能である。円盤部38bは、第2バルブ37の下端側当接部37cと接触する部分となる。
第3バルブ38は、弁ボデー31の軸方向に沿って往復変位可能な状態で、シリンダ49の内周側に配置されている。第3バルブ38と弁受圧面61との間の空間が、実質的に圧力制御室43となる。第3バルブ38は、第3バルブ用スプリング55により、シリンダ49に対して第1バルブ室45へ向けて付勢されている。第3バルブ38には、第1アウトオリフィス38cが形成されている。第1アウトオリフィス38cは、第3バルブ38の円盤部38bを板厚方向に貫通し、円柱部38aの一部を軸方向に延び、円柱部38aの側面部に延びる挿通孔38eの一部に形成されている。第3バルブ38の挿通孔38eは、圧力制御室43と第1バルブ室45とを連通する通路である。第1アウトオリフィス38cは、第2バルブ37が流入流路41のインオリフィス48を塞いでいる状態において、圧力制御室43から第1バルブ室45へと流通する燃料の流量を制限する。
第1バルブ35は、金属材料等によってお椀状に形成されている。第1バルブ35は、第1バルブ室45に配置されている。第1バルブ35は、第1バルブ室45内を軸方向に沿って変位可能である。第1バルブ35は、コイルばね状に形成された第1バルブ用スプリング56により、第2バルブ37の上端側当接部37bに対して、駆動部収容室46へ向けて付勢されている。
第1バルブ35には、パイロットフェース部73が形成されている。パイロットフェース部73は、下流側連通路53と対向する第1バルブ35の上端面に形成されている。パイロットフェース部73は、平坦な円環状に形成されている。パイロットフェース部73は、第1バルブ用スプリング56の弾性力により、第1シート部54と接触する。第1バルブ用スプリング56の付勢力と、第1バルブ室45および低圧流路42間における燃料圧力差とにより、パイロットフェース部73は、第1シート部54に押し付けられる。パイロットフェース部73の第1シート部54への着座により、第1バルブ35は、閉弁状態となる。
第1バルブ35は、駆動部33が第1駆動力を発生させた場合に軸方向に変位する距離を第1リフト量とし、駆動部33が第2駆動力を発生させた場合に軸方向に変位する距離を第2リフト量とする。第1リフト量は、第2リフト量よりも長い。
第1バルブ35、第2バルブ37および第3バルブ38では、軸方向に沿って圧力制御室43から第1バルブ室45および駆動部収容室46へ向かう方向が閉弁方向となり、軸方向に沿って駆動部収容室46から圧力制御室43へ向かう方向が開弁方向となる。駆動部33が駆動力を発生させていない場合には、第1バルブ35の弁ボデー31への着座により、低圧流路42は閉鎖された状態となる。また、閉弁位置にある第1バルブ35と閉弁位置にある第3バルブ38との間には、開弁ギャップ74が形成されている。開弁ギャップ74は、第1バルブ35のみでの開弁方向への変位を許容する空間として機能する。
次に、燃料噴射装置100の噴射作動の詳細を、図3および図4を用いて説明する。図3に示すように、噴射開始前では、機関制御装置17から駆動部33への駆動電圧の印加は中断されている。故に、駆動部33は、第1駆動力および第2駆動力といった力を実質的に発生させていない。したがって第1バルブ35は、第1バルブ用スプリング56の弾性力により、第1シート部54に押し当てられている。また第2バルブ37は、第3バルブ用スプリング55の弾性力により、流入流路41の開口周囲の壁面に押し当てられている。そのため、第1バルブ35のパイロットフェース部73を第1シート部54に当接させ、第2バルブ37の上端側当接部37bを第2シート部50に当接させた閉弁位置にて静止している。また第1バルブ35と第3バルブ38との間には、開弁ギャップ74が形成されている。第1バルブ35および第2バルブ37が共に閉弁状態にあることで、第1バルブ室45の燃料圧力は、実質的に圧力制御室43の燃料圧力と同程度まで上昇している。以上の状態では、ノズルニードル32は、フェース部62をシート部39に当接させた閉弁位置にて静止している。
まず低速開弁時に関して説明する。図4に示すように、低速開弁時では、機関制御装置17から駆動部33への駆動電圧の印加が開始される。これにより駆動部33は、第1駆動力を発生させる。機関制御装置17は、第1バルブ35の開弁力よりも大きく、かつ、第3バルブ38を変位させないような第1駆動力が第1バルブ35に作用するよう、駆動部33に印加する駆動電圧を制御する。
駆動部33が第1駆動力を発生させている場合、第2駆動伝達ピン71が第1リフト量にわたって変位する。第2駆動伝達ピン71によって押し下げられた第1バルブ35は、第1リフト量にわたる開弁方向への変位により、パイロットフェース部73を第1シート部54から離座させる。そうしたうえで、第1バルブ35は、第3バルブ38を第2バルブ37から離座させないように、第3バルブ38の円柱部38aの先端に当接する。こうした第1バルブ35の開弁方向への変位により、開弁ギャップ74は消失する。
以上の第1バルブ35の開弁により、図4の第1リフト時に示すように、圧力制御室43と低圧流路42との間は、遮断状態から連通状態へと切り替わる。その結果、圧力制御室43の高圧燃料は、第3バルブ38の第1アウトオリフィス38c、第1バルブ室45の順に流通し、低圧流路42へ排出される。
このとき、第1バルブ35のパイロット開口面積よりも狭い第1アウトオリフィス38cの絞り面積により、流出流路の流路面積が規定される。故に、流出流路は、圧力制御室43から低圧流路42への燃料の流出流量が第1アウトオリフィス38cによって制限された第1絞り状態となる。
パイロット開口面積は、第1シート部54およびパイロットフェース部73の間の流路面積である。第1アウトオリフィス38cによる流量制御を可能にするため、開弁ギャップ74は、パイロット開口面積が第1アウトオリフィス38cの絞り面積よりも大きくなるように予め規定されている。
以上の第1絞り状態において、第3バルブ用スプリング55は、第1バルブ35へ向けて第2バルブ37および第3バルブ38を閉弁方向に付勢することにより、この第2バルブ37を弁ボデー31から離座させないようにしている。その結果、第1バルブ35は、第3バルブ38の円柱部38aの先端に押し当てられて、第2駆動伝達ピン71と第1バルブ35とに間に挟持された状態で静止可能となる。加えて、駆動部33の発生させている駆動力が概ね第1駆動力に保たれることにより、第1絞り状態における第2バルブ37の閉弁状態は維持される。
また第1バルブ35がリフトしてから、圧力制御室43から第1バルブ室45に燃料が流出して圧力制御室43の圧力が所定圧力に低下するまで、第2バルブ37は圧力制御室43の圧力によって着座している状態を維持する。換言すると、第1バルブ35が開弁して圧力制御室43の圧力が低下しても、第2バルブ37が開弁するまではタイムラグがある。
第1絞り状態の流出流路を通じた燃料の流出により、第1バルブ室45および圧力制御室43の燃料圧力は、徐々に低下する。その結果、ノズルニードル32は、フェース部62に作用する高圧燃料の圧力により、圧力制御室43へ向けて徐々に加速しつつ開弁方向に変位する。以上による主弁部の開弁により、噴孔30からの燃料噴射が開始される。
第1リフト時の動作を換言すると、第1駆動力によって第1バルブ35が開弁し、第3バルブ38に当接したところで第1バルブ35が停止することで第1バルブ35のみ開弁した状態になる。これにより、第1バルブ室45の燃料は低圧流路42に流出し、第1バルブ室45の圧力の低下に伴なって、圧力制御室43の燃料は第1アウトオリフィス38cを経由して第1バルブ室45に流出する。また、第1バルブ室45の圧力低下により、第2バルブ37および第3バルブ38はそれぞれインオリフィス48および第2アウトオリフィス37dを閉止する側に圧力を受け、それらを閉止する。したがって圧力制御室43への燃料の出入りは、第1アウトオリフィス38cからの流出のみとなり、これにより圧力制御室43の圧力は低下し、ある圧力に達したところでノズルニードル32が開弁する。このとき、開弁速度は第1オリフィスの流量により規定される。
次に、高速開弁時に関して説明する。高速開弁時では、機関制御装置17から駆動部33に印加される駆動電圧が引き上げられる。これにより駆動部33は、第3バルブ38の開弁力を上回る第2駆動力を発生させる。機関制御装置17は、第3バルブ38の開弁力よりも大きい第2駆動力の発生が維持されるように、駆動部33に印加する駆動電圧を制御する。
駆動部33が第2駆動力を発生させている場合、第2駆動伝達ピン71が第2リフト量にわたって変位する。第2駆動伝達ピン71によって押し下げられた第1バルブ35は、第2リフト量にわたる開弁方向への変位により、パイロットフェース部73を第1シート部54から離座させる。さらに第1バルブ35の変位により、第1バルブ35が第3バルブ38の円柱部38aに当接し、第1バルブ35によって第3バルブ38の円柱部38aが押されて開弁方向に変位する。これによって第2バルブ37の下端側当接部37cから第3バルブ38の円盤部38bを離座させる。
以上の第3バルブ38の開弁で、図4の第2リフト時のように、圧力制御室43の燃料は、第2バルブ37の下端側当接部37cと第3バルブ38の円盤部38bとの間のバイパス通路75、第2アウトオリフィス37dおよび第1バルブ室45を順に流通する。また圧力制御室43の高圧燃料は、第3バルブ38の第1アウトオリフィス38c、第1バルブ室45の順にも流通し、低圧流路42へ排出される。その結果、流出流路の流路面積を規定し、かつ、燃料の流出流量を制限する構成は、第1アウトオリフィス38cから第1アウトオリフィス38cおよび第2アウトオリフィス37dへと切り替えられる。第1アウトオリフィス38cよりも第2アウトオリフィス37dの分だけ絞り面積が大きいため、第2絞り状態における流出流路の流路面積は、第1絞り状態よりも大きくなる。その結果、第2絞り状態にて圧力制御室43から流出する燃料の流出流量は、第1絞り状態よりも増加する。
また第1弁体がリフトしてから、同様に、圧力制御室43から第1バルブ室45に燃料が流出して圧力制御室43の圧力が所定圧力に低下するまで、第2弁体は圧力制御室43の圧力によって着座している状態を維持する。
バイパス通路75の開口面積および第1バルブ35のパイロット開口面積は共に、第1アウトオリフィス38cおよび第2アウトオリフィス37dの絞り面積の合計よりも大きくされている。第2絞り状態による流量制御を可能にするため、予め規定されている。
第2アウトオリフィス37dによって流量を制御された燃料の流出により、第1バルブ室45および圧力制御室43の各燃料圧力は、顕著に降下する。その結果、ノズルニードル32は、開弁方向へと加速し、シート部39とフェース部62との間隙を急速に拡大させる。このようにして、噴孔30へ繋がる高圧流路40の流路面積が拡大することで、噴孔30から噴射される燃料噴射量が増加する。その結果、単位時間当たりに噴孔30から噴射される燃料の噴射量(噴射率)の特性に明確な変化が生じる。
第2リフト時の動作を換言すると、第2駆動力によって第1バルブ35が開弁して、さらに第3バルブ38を開弁させ、第2バルブ37の第2アウトオリフィス37dを介して第1バルブ室45と圧力制御室43とが連通する。第2バルブ37は圧力制御室43と第1バルブ室45の圧力差を受けるため、インオリフィス48を閉止している。したがって圧力制御室43からの燃料の出入りは第1アウトオリフィス38cおよび第2アウトオリフィス37dからの流出となり、このときの開弁速度は第1アウトオリフィス38cと第2アウトオリフィス37dとの合計の流量により規定される。これにより、第1駆動力と第2駆動力とを切替制御することにより、開弁速度を切り替えることが可能である。
次に、閉弁動作時に関して説明する。閉弁動作時では、機関制御装置17から駆動部33への駆動電圧の印加が中断される。すると、駆動部33の駆動力は、第1バルブ35および第3バルブ38の各開弁力を下回り、やがて消失する。以上により、第1バルブ35および第3バルブ38は、第1バルブ用スプリング56または第3バルブ用スプリング55の各弾性力と燃料圧力とによって閉弁方向へ向けて変位する。そしてパイロットフェース部73および第3バルブ38の円盤部38bを第1シート部54および第2バルブ37の下端側当接部37cに当接させた閉弁状態に戻る。その結果、圧力制御室43と低圧流路42との間が連通状態から遮断状態へと切り替えられ、流出流路は、閉鎖された状態に戻る。
一方、第1バルブ35がリフトしている状態から弁ボデー31に着座すると、圧力制御室43と流入流路41との圧力差によって第2バルブ37が離座する。換言すると、第2バルブ37は、流入流路41から流入する高圧燃料の燃料圧力によって押し下げられる。これによって圧力制御室43および第1バルブ室45にインオリフィス48を通過した高圧燃料が流入する。これにより、第1バルブ室45および圧力制御室43の各燃料圧力は、一体的に回復する。その結果、ノズルニードル32は、圧力制御室43の燃料圧力によって押し下げられて、閉弁位置にてフェース部62をシート部39に当接させた状態に戻る。以上の主弁部の閉弁により、噴孔30からの燃料噴射は中断される。
閉弁動作を換言すると、第1バルブ35を開弁後、印加電圧を下げると第1バルブ35は第1バルブ用スプリング56により低圧流路42を閉止し、第3バルブ38は第3バルブ用スプリング55により第2アウトオリフィス37dを閉止した状態になる。第1バルブ35および第3バルブ38の閉止直後は第1バルブ室45と圧力制御室43の圧力差により、第2バルブ37および第3バルブ38はそれぞれインオリフィス48および第2アウトオリフィス37dを閉止する。これによって第1アウトオリフィス38cを介して第1バルブ室45に圧力制御室43から燃料が流入する。これにより、第1バルブ室45の圧力が上昇し、第1バルブ室45と圧力制御室43の圧力差が小さくなる。開弁状態において、圧力制御室43の圧力は流入流路41よりも低いため、第1バルブ室45と圧力制御室43の圧力差が小さくなるとインオリフィス48からの高圧により第2バルブ37が開弁し、圧力制御室43に燃料が流入する。これによりノズルニードル32が閉弁する。
ここまで説明した第1実施形態では、第1駆動力から第2駆動力への駆動部33の発生駆動力の増加により、切替弁機構36によって流出流路の流路面積が切り替えられる。以上により、圧力制御室43の圧力降下の態様を変化させることで、ノズルニードル32の変位速度は、明確に変化する。故に、噴孔30に供給される高圧燃料を通過させるフェース部62およびシート部39の間のオリフィス部分について、流路面積の拡大が急速に生じる。その結果、単位時間あたりに噴孔30から噴射される噴射量も、駆動部33による駆動力の切り替えの前後で、明確に変化する。したがって、燃料噴射装置100は、一つの駆動部33によって発生させる駆動力の制御により、燃料噴射の噴射率特性を変化させることが可能になる。
また第1実施形態では、第1バルブ35が第1リフト量の位置にあり、流出流路が第1絞り状態にある場合では、弁ボデー31から離座した第1バルブ35は、第3バルブ38を離座させないように、第3バルブ38に当接した状態とされる。第3バルブ38との当接によって第1バルブ35の位置が保持されるので、第1絞り状態における流出流路の流路面積、ひいては圧力制御室43からの燃料の流出量は、安定的となる。
また第1バルブ35が第2リフト量の位置にあり、流出流路が第2絞り状態にある場合では、第1バルブ35による押圧で第3バルブ38を変位させて、第3バルブ38を第2バルブ37から離座させた状態とされる。このように、第1バルブ35の押圧によって第3バルブ38の位置が保持されるので、第2絞り状態における流出流路の流路面積、ひいては圧力制御室43からの燃料の排出量も安定的となる。
このように切替弁機構36は、第1バルブ35のリフト量を調整することによって、流出流路の流路面積を切り替えることができる。そして第1バルブ35のリフト量は、1つの駆動部33によって制御することができる。したがって駆動部33は、1つの第1バルブ35のリフト量を制御する構成であればよいので、駆動部33が大形化を抑制することができる。
さらに第1実施形態の駆動部33は、第2駆動伝達ピン71のリフト量によってではなく、駆動部33の発生駆動力によって、流出流路の第1絞り状態と第2絞り状態とを切り替えている。以上の形態であれば、第1絞り状態および第2絞り状態にて駆動力がある程度変動しても、第1バルブ35および第3バルブ38の位置は維持され得る。故に、第2駆動伝達ピン71のリフト量の高精度な制御は、必ずしも必要とされないため、駆動部33の制御が簡素化され得る。また、各部材に要求される寸法精度の緩和も可能となる。
加えて第1実施形態では、第1絞り状態および第2絞り状態のそれぞれにおいて、特定の部材に設けられた絞り孔である第1アウトオリフィス38cおよび第2アウトオリフィス37dが、流出流路の流路面積を規定している。このように、複数部材の隙間によって流路面積を規定しない構成であれば、各絞り状態にて流出流路を流通する燃料流量のばらつきは、さらに低減される。
さらに第1実施形態の切替弁機構36には、第1バルブ35の開弁方向へストロークを許容する空間として、開弁ギャップ74が形成されている。故に、燃料噴射装置100は、一つの駆動部33の単純な直線状の作動により、第1バルブ35および第3バルブ38を、異なるタイミングで開弁方向へ変位させることが可能になる。
さらに第1実施形態では、第1バルブ35がリフトしてから、圧力制御室43から第1バルブ室45に燃料が流出して圧力制御室43の圧力が所定圧力に低下するまで、第2バルブ37は圧力制御室43の圧力によって着座している状態を維持する。これによって第1バルブ35がリフトするとただちに、圧力制御室43に高圧の燃料が流入することを防ぐことができる。したがって噴孔30から燃料を噴射する時間を確保することができる。
さらに第1実施形態では、第1バルブ35がリフトしている状態から弁ボデー31に着座すると、圧力制御室43と高圧流路40との圧力差によって第2バルブ37が離座する。これによって噴孔30からの燃料噴射が終了すると、圧力制御室43および第1バルブ室45を高圧の燃料で満たすことができる。したがって次の噴射の準備を迅速に行うことができる。
さらに第1実施形態では、第1バルブ35がリフトを開始して第1リフト量の位置に配置された場合、第1バルブ35がリフトしてから圧力制御室43の圧力が所定圧力に低下するまで、第3バルブ38は圧力制御室43の圧力で第2バルブ37に着座している。これによって第2バルブ37の第2アウトオリフィス37dを閉塞している状態を維持している。第2アウトオリフィス37dを閉塞しているので、第1リフト量の場合に第1絞り状態にすることができる。したがって複雑な駆動をすることなく、第1絞り状態を維持することができる。
さらに第1実施形態では、第2バルブ37および第3バルブ38が圧力制御室43内に配置されている。そして第2バルブ37が第1バルブ室45の一部を区画する構成にしているので、開弁応答に寄与する圧力制御室43の容積および閉弁応答に寄与する第3バルブ38の挿通孔38eと第1バルブ室45を合わせた容積が小さくすることができる。これによって高い応答性を実現することができる。
第1実施形態において、高圧流路40が「供給流路」に相当し、ノズルニードル32が「弁部材」に相当する。また、第1バルブ35が「第1弁体」に相当し、第2バルブ37が「第2弁体」に相当し、第3バルブ38が「第3弁体」に相当する。さらに第1バルブ室45が「切替室」に相当し、第1アウトオリフィス38cは、「第1バルブ35の挿通孔35e」の一部に相当し、第2アウトオリフィス37dは、「第2バルブ37の挿通孔37e」の一部に相当する。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に関して、図5および図6を用いて説明する。本実施形態では、第1バルブ352および第3バルブ382の構成が第1実施形態とは異なる点に特徴を有する。
第1バルブ352は、金属材料等により、2段円柱状に形成されている。第1バルブ352は、円盤部35bおよび円柱部35aを有している。円盤部35bは、第2バルブ37の貫通孔37aよりも大径に形成されている。一方、円柱部35aは、第2バルブ37の貫通孔37aよりも小径に形成されている。円柱部35aは、円盤部35bから軸方向に沿って円柱状に突出している。円柱部35aの軸方向の長さは、第2バルブ37の貫通孔37aの長さよりも長い。円柱部35aは、第2バルブ37の貫通孔37aの内壁によって軸方向に案内され、軸方向に変位可能である。円盤部35bと第2バルブ37の上端側当接部37bとの間に、第1バルブ用スプリング56が配置される。
また第1バルブ352には、第1バルブ室45と圧力制御室43とを連通するための挿通孔35eが形成されている。そして第1バルブ352の挿通孔35eの一部に、第1アウトオリフィス38cが形成されている。第1バルブ352の挿通孔35eは、第1バルブ352の円柱部35aを軸方向に延びる部分と、円柱部35aの径方向に延びる部分とを有する。第1アウトオリフィス38cは、挿通孔35eの軸方向に延びる部分に形成されている。
第3バルブ382は、金属材料等により、円盤状に形成されている。第3バルブ382の外径は、第2バルブ37の貫通孔37aよりも大径に形成されている。また第3バルブ382の径方向の中央には、第3バルブ382を軸方向に貫通する挿通孔38eが形成されている。第3バルブ382の挿通孔38eの内径は、第1バルブ352の円柱部35aの外径よりも小さい。また第3バルブ382の挿通孔38eは、第2バルブ37の貫通孔37aよりも内径が小さい。したがって第3バルブ382の上端側当接部38fが、第1バルブ352の円柱部35aの先端が当接する部分となる。
次に、燃料噴射装置100の噴射作動に関して説明する。図5に示すように、噴射開始前では、第1実施形態と同様に、第1バルブ352のパイロットフェース部73を第1シート部54に当接させ、第2バルブ37の上端側当接部37bを第2シート部50に当接させた閉弁位置にて静止している。また第1バルブ352の円柱部35aと第3バルブ382の上端側当接部38fとの間には、開弁ギャップ74が形成されている。
まず低速開弁時に関して説明する。図6に示すように、低速開弁時では、第1実施形態と同様に、機関制御装置17から駆動部33への駆動電圧の印加が開始される。駆動部33が第1駆動力を発生させている場合、第2駆動伝達ピン71が第1リフト量にわたって変位する。第2駆動伝達ピン71によって押し下げられた第1バルブ352は、第1リフト量にわたる開弁方向への変位により、パイロットフェース部73を第1シート部54から離座させる。そうしたうえで、第1バルブ352の円柱部35aの先端は、第3バルブ382を第2バルブ37から離座させないように、第3バルブ382の上端側当接部38fに当接する。こうした第1バルブ352の開弁方向への変位により、開弁ギャップ74は消失する。
以上の第1バルブ352の開弁により、図6の第1リフト時に示すように、圧力制御室43と低圧流路42との間は、遮断状態から連通状態へと切り替わる。その結果、圧力制御室43の高圧燃料は、第3バルブ382の挿通孔38e、第1バルブ352の第1アウトオリフィス38c、第1バルブ室45の順に流通し、低圧流路42へ排出される。これによって流出流路は、圧力制御室43から低圧流路42への燃料の流出流量が第1アウトオリフィス38cによって制限された第1絞り状態となる。
次に、高速開弁時に関して説明する。高速開弁時では、第1実施形態と同様に駆動部33は、第3バルブ382の開弁力を上回る第2駆動力を発生させる。
駆動部33が第2駆動力を発生させている場合、第2駆動伝達ピン71が第2リフト量にわたって変位する。第2駆動伝達ピン71によって押し下げられた第1バルブ352は、第2リフト量にわたる開弁方向への変位により、パイロットフェース部73を第1シート部54から離座させる。さらに第1バルブ352の変位により、第1バルブ352の円柱部35aが第3バルブ382の上端側当接部38fに当接し、第1バルブ352によって第3バルブ382が押されて開弁方向に変位する。これによって第2バルブ37の下端側当接部37cから第3バルブ382を離座させる。
以上の第3バルブ382の開弁により、図6の第2リフト時のように、圧力制御室43の燃料は、第2バルブ37の下端側当接部37cと第3バルブ382の上端側当接部38fとの間のバイパス通路75、第2バルブ37の第2アウトオリフィス37d、および第1バルブ室45を順に流通する。また圧力制御室43の高圧燃料は、第3バルブ382の挿通孔38e、第1バルブ352の第1アウトオリフィス38c、第1バルブ室45の順にも流通し、低圧流路42へ排出される。その結果、流出流路の流路面積が第1絞り状態よりも拡大された第2絞り状態となる。
次に、閉弁動作時に関して説明する。閉弁動作時では、第1実施形態と同様に、駆動部33の駆動力が消失する。以上により、第1バルブ352および第3バルブ382は、第1バルブ用スプリング56または第3バルブ用スプリング55の各弾性力と燃料圧力とによって閉弁方向へ向けて変位する。これによってパイロットフェース部73および第3バルブ382の上端側当接部38fを第1シート部54および第2バルブ37の下端側当接部37cに当接させた閉弁状態に戻る。その結果、圧力制御室43と低圧流路42との間が連通状態から遮断状態へと切り替えられ、流出流路は、閉鎖された状態に戻る。
このように第1バルブ352に第1アウトオリフィス38cを配置している構成であっても、前述の第1実施形態と同様に、第1絞り状態と第2絞り状態とを切替制御することができる。これによって第1実施形態と同様の作用および効果を奏することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に関して、図7および図8を用いて説明する。本実施形態では、第1バルブ室453の構成が1実施形態とは異なる点に特徴を有する。第1バルブ室453は、弁ボデー31によって区画されている。そして第1バルブ室453を区画する区画壁には、第1シート部54とともに、第1載置部76が形成されている。第1載置部76には、第1バルブ用スプリング56の下端が載置されている。
また弁ボデー31には、圧力制御室43と第1バルブ室453とを連通する連通流路77が形成されている。連通流路77の第1バルブ室453側の端部は、第1バルブ用スプリング56の外側に形成されている。また連通流路77の圧力制御室43側の端部は、第3バルブ38の円柱部38aの端部に対向する位置、すなわち第2バルブ37の貫通孔37aに臨む位置に形成されている。
切替弁機構36は、第3駆動伝達ピン78をさらに備える。第3駆動伝達ピン78は、第1バルブ35と第3バルブ38との間に設けられる。第3駆動伝達ピン78は、円柱状であって、第1バルブ35の下方への変位を、第3バルブ38に伝達する。弁ボデー31には、第3駆動伝達ピン78が挿通して、第3駆動伝達ピン78を案内する案内孔79が形成されている。案内孔79は、圧力制御室43と第1バルブ室453とを連通し、第1バルブ35と同軸になるように形成されている。第3駆動伝達ピン78の外径は、第3バルブ38の円柱部38aの外径よりも小さく、第2バルブ37の貫通孔37a内を変位可能である。
第2バルブ37の挿通孔37eは、下端側当接部37cと第2バルブ37の貫通孔37a内とを連通する。これによって第2バルブ37が第2シート部50に着座している場合であっても、下端側当接部37c側から挿通孔37e内に流入した燃料は、第2バルブ37の貫通孔37a内に流出する。
次に、燃料噴射装置100の噴射作動に関して説明する。図7に示すように、噴射開始前では、第1実施形態と同様に、第1バルブ35のパイロットフェース部73を第1シート部54に当接させ、第2バルブ37の上端側当接部37bを第2シート部50に当接させた閉弁位置にて静止している。また第1バルブ35と第3駆動伝達ピン78との間には、開弁ギャップ74が形成されている。
まず低速開弁時に関して説明する。図8に示すように、低速開弁時では、第1実施形態と同様に、機関制御装置17から駆動部33への駆動電圧の印加が開始される。駆動部33が第1駆動力を発生させている場合、第2駆動伝達ピン71が第1リフト量にわたって変位する。第2駆動伝達ピン71によって押し下げられた第1バルブ35は、第1リフト量にわたる開弁方向への変位により、パイロットフェース部73を第1シート部54から離座させる。そうしたうえで、第1バルブ35は、第3バルブ38を第2バルブ37から離座させないように、第3駆動伝達ピン78に当接する。こうした第1バルブ35の開弁方向への変位により、開弁ギャップ74は消失する。
以上の第1バルブ35の開弁により、図8の第1リフト時に示すように、圧力制御室43と低圧流路42との間は、遮断状態から連通状態へと切り替わる。その結果、圧力制御室43の高圧燃料は、第3バルブ38の第1アウトオリフィス38c、第2バルブ37の貫通孔37a、連通流路77および第1バルブ室453の順に流通し、低圧流路42へ排出される。これによって流出流路は、圧力制御室43から低圧流路42への燃料の流出流量が第1アウトオリフィス38cによって制限された第1絞り状態となる。
次に、高速開弁時に関して説明する。高速開弁時では、第1実施形態と同様に駆動部33は、第3バルブ38の開弁力を上回る第2駆動力を発生させる。
駆動部33が第2駆動力を発生させている場合、第2駆動伝達ピン71が第2リフト量にわたって変位する。第2駆動伝達ピン71によって押し下げられた第1バルブ35は、第2リフト量にわたる開弁方向への変位により、パイロットフェース部73を第1シート部54から離座させる。さらに第1バルブ35の変位により、第1バルブ35が第3駆動伝達ピン78に当接し、第1バルブ35によって第3駆動伝達ピン78とともに第3バルブ38が押されて開弁方向に変位する。これによって第2バルブ37の下端側当接部37cから第3バルブ38を離座させる。
以上の第3バルブ38の開弁により、図8の第2リフト時のように、圧力制御室43の燃料は、第2バルブ37の下端側当接部37cと第3バルブ38の円盤部38bとの間のバイパス通路75、第2バルブ37の第2アウトオリフィス37d、第2バルブ37の貫通孔37a、連通流路77および第1バルブ室453を順に流通する。また圧力制御室43の高圧燃料は、第3バルブ38の第1アウトオリフィス38c、第2バルブ37の貫通孔37a、連通流路77および第1バルブ室453の順にも流通し、低圧流路42へ排出される。その結果、流出流路の流路面積が第1絞り状態よりも拡大された第2絞り状態となる。
次に、閉弁動作時に関して説明する。閉弁動作時では、第1実施形態と同様に、駆動部33の駆動力が消失する。以上により、第1バルブ35および第3バルブ38は、第1バルブ用スプリング56または第3バルブ用スプリング55の各弾性力と燃料圧力とによって閉弁方向へ向けて変位する。これによってパイロットフェース部73および第3バルブ38の円盤部38bを第1シート部54および第2バルブ37の下端側当接部37cに当接させた閉弁状態に戻る。その結果、圧力制御室43と低圧流路42との間が連通状態から遮断状態へと切り替えられ、流出流路は、閉鎖された状態に戻る。
このように第1バルブ室453を弁ボデー31によって区画する構成であっても、前述の第1実施形態と同様に、第1絞り状態と第2絞り状態とを切替制御することができる。これによって第1実施形態と同様の作用および効果を奏することができる。
また第1バルブ用スプリング56が第1載置部76に載置されるので、第1バルブ用スプリング56と第3バルブ用スプリング55との弾性力を独立して設定することができる。これによって第1バルブ用スプリング56および第3バルブ用スプリング55の選択が容易となる。
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
前述の実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
前述の第1実施形態では、各絞り状態での流出流路の流路面積は、孔状に形成された各オリフィスによって規定されていた。しかし、各絞り状態での流出流路の流路面積は、二つの部材の間に設けられた隙間によって規定されてもよい。
前述の第1実施形態では、燃料として軽油を噴射する燃料噴射装置100によって実現されているが、軽油以外の燃料、例えばジメチルエーテル等の液化ガス燃料を噴射する燃料噴射装置にも適用可能である。