JP6284860B2 - 燃料噴射弁 - Google Patents
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Description
従来より、内燃機関(エンジン)の気筒に燃料を噴射する燃料噴射弁の一例として、アクチュエータの変位を利用して制御弁を開閉駆動することで、圧力制御室内の燃料圧力(制御室圧)を調整し、ニードルの開閉動作を制御する燃料噴射弁(以下従来例1のインジェクタ)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この従来例1のインジェクタは、エンジンの気筒内に燃料噴射を行う噴孔を開閉するニードルと、燃料系の高圧側から高圧力の燃料が供給される高圧燃料通路と、この高圧燃料通路とインオリフィスを介して連通する圧力制御室と、この圧力制御室とアウトオリフィスを介して連通する中間燃料通路と、この中間燃料通路の途中に設けられる弁孔を開閉する制御弁と、この制御弁が開弁した際に、圧力制御室内の燃料をアウトオリフィス、中間燃料通路およびオリフィス(弁孔)を介して燃料系の低圧側へ流出させる低圧燃料通路とを備えている。
そして、従来例1のインジェクタでは、制御弁を開弁動作させることで、圧力制御室内の燃料を、アウトオリフィス、中間燃料通路、オリフィス(弁孔)、低圧燃料通路を介して燃料系の低圧側へ排出させている。
これによって、圧力制御室内の燃料圧力を素早く低下させることで、ニードルに作用する閉弁方向の付勢力が低下する。そして、圧力制御室内の燃料圧力がニードル開弁圧まで低下すると、ニードルが開弁動作するため、噴孔からエンジンの気筒内へ向かって燃料が噴射される。
ここで、上記のような燃料噴射弁では、圧力制御室からの燃料排出流量を規制するアウトオリフィス流量を増加させることで、ニードル開弁速度、つまり噴射率の矩形度が向上することが一般に知られている。
ところが、従来例1のインジェクタにおいては、ニードル開弁速度を向上するという目的で、アウトオリフィス流量を増加した場合、制御弁を開弁駆動するアクチュエータに対する指令値、特に微小噴射量時の指令値(通電時間)が極端に小さくなってしまい、アクチュエータの変位を利用して開弁動作を行う制御弁の開弁挙動が不安定となる。これにより、ニードルの開弁動作が不安定となり、エンジンの気筒内へ噴射される燃料の噴射量がばらつくという課題がある。
その後に、制御弁の開弁時に、流路開閉弁を閉弁すると、導入流路から中間室への高圧力の燃料の導入が遮断される。これにより、制御弁の開弁時における中間室内の燃料圧力の降下(低下)速度が速くなるので、制御室内の燃料圧力の降下(低下)速度も速くなる。
また、仮にニードル開弁速度を向上するという目的で、制御弁の開弁時における燃料排出流量を増加した場合であっても、微小噴射量時の指令値の極端な減少を抑制できるので、微小噴射量時における制御弁の開弁挙動を安定化させることができ、最小噴射可能量を低減させることができる。
したがって、ニードルの開弁動作が安定し、内燃機関の気筒へ噴射される燃料の噴射量のばらつきを抑えることができる。
図1ないし図9は、本発明の燃料噴射弁を適用したピエゾインジェクタ(実施例1)を示したものである。
インジェクタは、エンジンの気筒の燃焼室に連通する複数の噴孔(後述する)を有し、これらの噴孔を開閉するニードル1等を内蔵する有底筒状のノズルボディ2と、外部から導入された高圧力の燃料が流通する高圧燃料通路(後述する)を有し、ニードル1の背圧を制御する制御弁、およびこの制御弁の弁体である制御バルブ3を開閉駆動するアクチュエータ4等を内蔵する円筒状のインジェクタボディ5とを備えている。
そして、インジェクタは、アクチュエータ4の伸縮変位を利用して制御バルブ3を開閉駆動することで、圧力制御室内の燃料圧力を調整(増減)し、ニードル1の開閉動作を制御する。これにより、エンジンの気筒の燃焼室内に噴射される燃料噴射量、噴射時期および噴射パターン(噴射率)が制御される。
制御弁は、制御バルブ3が開弁することで、圧力制御室から燃料排出流路(後述する)を介して燃料系の低圧側(例えば燃料タンクまたは燃料供給経路の低圧部等)へ燃料を流出させる圧力制御弁である。
なお、制御弁の詳細は、後述する。
そして、インジェクタは、ノズルボディ2の密着面とインジェクタボディ5の密着面との間にバルブボディ16およびオリフィスプレート17を挟み込んだ状態で、インジェクタボディ5の軸線方向の先端側にノズルボディ2を螺子締結により固定するリテーニングナット18を備えている。
高圧燃料通路は、インジェクタボディ5のインレットポートから導入された高圧力の燃料を燃料溜まり室19を介して複数の噴孔20へ供給する第1高圧導入流路(高圧燃料流路)と、この第1高圧導入流路から分岐して第1弁室21を介して圧力制御室22内へ高圧力の燃料を導入する第2高圧導入流路と、第1高圧導入流路から分岐して第2弁室23を介して中間室(24〜27)内へ高圧力の燃料を導入する第3高圧導入流路(高圧燃料流路)とを備えている。
第1インオリフィス孔38は、第1弁室21を介して、圧力制御室22へ導入される高圧力の燃料の流量を規制する第1入口側絞り孔である。
第2インオリフィス孔43は、第2圧力従動弁の第2バルブ13の内外を第2バルブ13の半径方向に貫通するように設けられて、中間室(24〜27)へ導入される高圧力の燃料の流量を規制する第2入口側絞り孔である。
なお、高圧連通路から中間室(24〜27)内への燃料流入量は、第2インオリフィス孔43の絞り径によって規制されている。
燃料排出流路は、圧力制御室22内に導入された高圧力の燃料を中間室(24〜27)、低圧室44、低圧流路45およびアウトレットポートを介して、燃料系の低圧側へ流出させる燃料戻し経路である。この燃料排出流路は、圧力制御室22と連通する流路孔47、この流路孔47と中間室(24〜27)とを連通する第1アウトオリフィス孔48、および中間室(24〜27)と低圧室44とを連通する第2アウトオリフィス孔49を有している。
なお、第2バルブ13の開弁時には、第2インオリフィス孔43を介して、第3高圧導入流路から中間制御室26、27内に高圧力の燃料が導入される。
第2アウトオリフィス孔49は、中間室(24〜27)から低圧室44へ流出する燃料の流量を規制する第2出口側絞り孔である。
また、ピストン部7とニードル軸方向部(中径部)との間には、環状段差が設けられている。
ノズルシリンダ8は、オリフィスプレート17の結合部に溶接固定により接続されている。このノズルシリンダ8は、オリフィスプレート17の結合部からニードル収容孔6の内部へ突出するように配置されている。
また、ノズルシリンダ8には、オリフィスプレート17の第1バルブシート面91との間に所定の軸方向距離(プレート収容室)を隔てて対向する環状段差が一体的に設けられている。この環状段差は、第1バルブ11がフルリフトした際に、これ以上の移動を規制するための第1バルブストッパを構成している。
ここで、燃料溜まり室19は、ニードル収容孔6の中間部に設けられている。この燃料溜まり室19内に導入される燃料圧力は、ニードル1に対して、ニードル1の開弁方向に付勢する付勢力として作用する開弁方向油圧力(FO)である。
圧力制御室22は、ニードル1の軸方向の上端面(基端側端面)およびニードル1の基端側凹部の底面とノズルシリンダ8の内周面と第1バルブ11とで囲まれた空間である。この圧力制御室22内に導入される燃料圧力は、ニードル1に対して、ニードル1の閉弁方向に付勢する付勢力として作用する閉弁方向油圧力(FC)である。
制御弁は、バルブボディ16のバルブシート面51に接離して第2アウトオリフィス孔49を開閉する制御バルブ3、この制御バルブ3にアクチュエータ4およびピエゾピストン52の変位を伝えるバルブピストン53、および制御バルブ3をその閉弁方向に付勢するバルブスプリング54等を備えている。
バルブスプリング54は、制御バルブ3およびバルブピストン53に対して、制御バルブ3の閉弁方向に付勢する付勢力(弾性力、スプリングセット荷重:Fsp)を発生するコイルスプリングである。このバルブスプリング54は、収容凹部55の奥側に固定された環状のスプリングシート57とバルブピストン53のピストン中径部の端面(スプリング座部)との間で軸線方向に圧縮された状態で配置された圧縮コイルスプリングである。
また、制御バルブ3は、仮にバルブピストン53が傾いても、バルブシート面51に対して垂直な力(バルブスプリング54の付勢力)で自身のシール部がバルブボディ16のバルブシート面51に押し付けられるように、つまりバルブボディ16のバルブシート面51で開口する第2アウトオリフィス孔49を確実に密閉(閉鎖)できるように、制御バルブ3の当接部側が球面形状となっており、シール部側が平面形状となっている。
また、制御弁は、自身が閉弁する、つまりバルブボディ16のバルブシート面51に制御バルブ3が着座することで、圧力制御室22内への高圧力の燃料の導入によって、圧力制御室22内の燃料圧力を上昇させる。これにより、ニードル1が閉弁してエンジンの気筒の燃焼室内への燃料噴射が終了する。
アクチュエータ4は、電荷の充放電により軸線方向に伸縮するピエゾ素子をその軸線方向に多数積層してなるピエゾ素子積層体と、このピエゾ素子積層体を保護する筒状の絶縁スリーブ(ケース)と、ピエゾ素子積層体の軸線方向の両端に設けられる絶縁基板とを備えている。このアクチュエータ4は、一対のピエゾリード端子間に、ピエゾ駆動回路(EDU:図示せず)からピエゾ駆動信号(ピエゾ印加電圧またはピエゾ駆動電流)が印加されるように構成されている。
油密室66は、ピエゾピストン52の先端側環状端面とバルブピストン53の環状段差面とアッパーシリンダ64の先端側周壁(開口端面)とロアシリンダ65の基端面とによって囲まれた環状空間である。
ピエゾピストン52は、駆動伝達部材61、62と一緒に、アクチュエータ4への通電(ON)時に、ピエゾ収容孔10の軸線方向の先端側(噴孔側)へ向けて駆動される。このピエゾピストン52は、アッパーシリンダ64のガイド孔(シリンダ孔)の孔壁面に対して往復摺動可能なピストン大径部が設けられている。
第1圧力従動弁は、ノズルシリンダ8の開口部に設置されている。この第1圧力従動弁は、第1バルブボディとしてのノズルシリンダ8、このノズルシリンダ8の環状段差によって開弁位置(フルリフト量)が規定される第1弁体(第1バルブ11)、この第1バルブ11をその閉弁方向に付勢する第1サポートスプリング12、およびノズルシリンダ8の環状段差との間に第1バルブ11を往復移動可能に収容するプレート収容室を形成するオリフィスプレート17等を有している。
オリフィスプレート17には、第1弁室21に臨み、且つ第1バルブ11が着座可能な第1バルブシート面91が形成されている。
なお、第1インオリフィス孔38の下流端および中間流路孔24の上流端は、オリフィスプレート17の第1バルブシート面91で開口している。また、高圧流路孔42の上流端は、オリフィスプレート17の図示下端面で開口している。また、中間流路孔24の下流端および高圧流路孔42の下流端は、オリフィスプレート17の図示上端面で開口している。
なお、流路孔47の上流端は、第1バルブ11の図示下端面で開口している。また、第1アウトオリフィス孔48の下流端は、第1バルブ11の図示上端面で開口している。
また、圧力制御室22は、第1バルブ11の閉弁側受圧面とニードル1の受圧面との間に形成される容積可変空間である。この圧力制御室22内に導入される燃料圧力は、第1バルブ11に対して、第1バルブ11の閉弁方向に付勢する付勢力として作用する開弁方向油圧力(FC)である。
第1圧力従動弁は、第1バルブ11の開弁側受圧面で受圧する開弁方向油圧力(FU)が、第1バルブ11の閉弁側受圧面で受圧する閉弁方向油圧力(FL)と第1サポートスプリング12の閉弁方向の付勢力(Fsp1)との合力よりも小さい場合、第1バルブ11が、オリフィスプレート17の第1バルブシート面91に着座(密着)して第1インオリフィス孔38を閉鎖する。
第2圧力従動弁は、特許請求の範囲における「流路開閉弁」に相当する。この第2圧力従動弁は、オリフィスプレート17によって開弁位置(フルリフト量)が規定される第2弁体(第2バルブ)13、この第2バルブ13をその開弁方向に付勢する第2サポートスプリング14、およびオリフィスプレート17との間に第2バルブ13と第2サポートスプリング14を往復移動可能に収容するバルブ収容室を形成するバルブボディ16等を有している。
また、第2バルブ13は、オリフィスプレート17の第2バルブストッパ(後述する)に当接可能な円板状の座部(径大部)、この座部のエッジラインから先端へ向かって外径が徐々に縮径する円錐台(凸曲面)形状の弁部71、この弁部71の最小外径部と同一の外径の小径筒部(摺動部)72、およびこの小径筒部72のエッジラインから先端へ向かって外径が徐々に縮径する円錐台筒形状の先端筒部等を有している。
また、第2バルブ13の弁部71と小径筒部72との間には、外周方向に延びる周方向溝を有する括れ筒部73が設けられている。この括れ筒部73には、第2弁室23と中間室(中間制御室26、27)とを連通する第2インオリフィス孔43が形成されている。この第2インオリフィス孔43は、第2バルブ13の括れ筒部73の内周面と外周面とを連通するように貫通形成されている。
また、先端筒部の図示上端面には、環状端面が設けられている。また、第2バルブ13は、その環状端面で開口し、この開口側から奥側の底面まで延びる収容凹部74を有している。この収容凹部74の内部空間は、中間制御室27として機能する。
また、中間室(中間制御室26)は、第2バルブ13の開弁側受圧面(図示上端面)とオリフィスプレート17の上端面との間に形成される容積可変空間である。この中間室(中間制御室26、27)内に導入される燃料圧力は、第1バルブ11に対して、第1バルブ11の閉弁方向に付勢する付勢力として作用する閉弁方向油圧力(FL)である。
また、バルブボディ16には、インジェクタボディ5の高圧流路孔31とオリフィスプレート17の高圧流路孔33、37とを連通する高圧流路孔32、オリフィスプレート17の中間流路孔24と低圧室44とを連通する中間流路孔25、中間制御室26、27および第2アウトオリフィス孔49が形成されている。また、バルブボディ16には、第2弁室23および中間制御室26、27を含むバルブ収容室が形成されている。
なお、中間流路孔25の上流端は、バルブボディ16の図示下端面で開口している。また、第2アウトオリフィス孔49の下流端は、バルブボディ16のバルブシート面55で開口している。また、バルブ収容室は、バルブボディ16の図示下端面で開口し、この開口側から奥側まで延びる凹溝である。
オリフィスプレート17の密着面、特にオリフィスプレート17の中心軸線から偏芯した部位は、第2バルブ13がフルリフトした際に、これ以上の移動を規制するための円形状の第2バルブストッパ75を構成している。このオリフィスプレート17の密着面には、第2バルブストッパ75の周囲を取り囲むように環状凹溝76が設けられている。
環状凹溝76は、オリフィスプレート17の密着面で開口し、この開口側から奥側の底面まで延びる環状凹溝である。そして、第2バルブ13の開弁時には、環状凹溝76の底面と第2バルブ13との間に円環状の第2弁室23が形成される。
次に、本実施例のインジェクタの作用を図1ないし図9に基づいて簡単に説明する。
そして、インジェクタの内部に導入された高圧力の燃料の一部は、インジェクタボディ5のインレットポートから高圧流路孔31〜33、燃料流路34、ニードル収容孔6および燃料流路35を通って燃料溜まり室19および燃料流路36に到達する。
一方、インジェクタの内部に導入される高圧力の燃料の残部は、高圧流路孔32、33間の分岐部より分岐して高圧流路孔37、第1インオリフィス孔38、第1弁室21および連通路を通って圧力制御室22に到達する。
そして、第1インオリフィス孔38から第1弁室21内に導入された高圧力の燃料は、ノズルシリンダ8の内周と第1バルブ11の外周との間に形成された連通路を通って圧力制御室22内に導入されるため、圧力制御室22内の燃料圧力(閉弁方向油圧力:FC)が増加する。
この結果、アクチュエータ4のピエゾ素子積層体に電圧が印加されず、制御バルブ3が閉弁し、第1バルブ11が開弁している時には、ニードル1の弁部がノズルボディ2のニードルシート面に着座するため、複数の噴孔20が閉塞される。
したがって、インジェクタは、ニードル1が閉弁状態を維持するため、エンジンの気筒内への燃料噴射が実施されない。
第1インオリフィス孔38および第1弁室21内の燃料圧力と圧力制御室22内の燃料圧力とが均衡した段階で、第1サポートスプリング12の有無に関わらず、第1バルブ11がノズルシリンダ8のガイド孔でガイドされながら閉弁方向に移動して、オリフィスプレート17の第1バルブシート面91に着座する。これにより、第1バルブ11が、閉弁状態となり、第1インオリフィス孔38を閉鎖する。
なお、Pcは、第2弁室23内の燃料圧力、つまり高圧燃料通路圧である。また、S1は、第2バルブ13の閉弁側受圧面における閉弁方向受圧面積である。
なお、P0は、制御弁の閉弁時中間室圧(=Pc)である。また、S2は、第2バルブ13の開弁側受圧面における開弁方向受圧面積である。また、Fsp2は、第2サポートスプリング14のセット荷重である。
[数1]
Fsp2+P0×S2>Pc×S1
以上により、制御弁の閉弁時には、第2サポートスプリング14の付勢力(Fsp2)と開弁方向油圧力(P0×S2)との合力よりも閉弁方向油圧力(Pc×S1)が上回るため、第2バルブ13の弁部71がバルブボディ16の第2バルブシート面92より離脱(リフト)する。このため、制御弁の閉弁時には、第2圧力従動弁の第2バルブ13が開弁状態にある。
このように、アクチュエータ4のピエゾ素子積層体が伸張変位すると、ピエゾピストン52の移動(変位)に伴って、油密室66の容積が縮小されて油密室66内の燃料圧力(油圧力)が上昇する。そして、油密室66内の油圧力が上昇した場合には、バルブピストン53が、ピエゾピストン52の変位方向とは反対側(アクチュエータ側)、つまり制御バルブ3の開弁方向に駆動される。
このとき、第1バルブ11が閉弁状態を維持しているため、圧力制御室22内に導入される高圧力の燃料は、第1バルブ11の中心軸線上に設けられた流路孔47、第1アウトオリフィス孔48を通って、オリフィスプレート17の中間流路孔24内に流入する。
ここで、第1インオリフィス流量よりも第1アウトオリフィス流量の方が多くなるように構成されているので、圧力制御室22内の燃料圧力は徐々に低下していく。
制御弁の開弁時、つまり第1圧力従動弁の閉弁タイミング(T1)には、制御弁の開弁(アクチュエータ4のピエゾ素子積層体への通電ON)により、中間室(24〜27)内の燃料圧力(中間圧力=中間室圧)が低下するが、制御弁の開弁初期(図3に示したtb時刻)においては、中間室圧が未だP1までしか低下していない。
したがって、第2バルブ13に作用する付勢力は、下記の数式2となる。
[数2]
Fsp2+P1×S2>Pc×S1
以上により、制御弁の開弁初期には、図5に示したように、第2弁室23から第2バルブ13の弁部71と第2バルブシート面92とのクリアランスおよび第2インオリフィス孔43を通って中間室(中間制御室26、27)へ至る燃料経路が形成されており、第2圧力従動弁の第2バルブ13が未だ開弁状態を保持している。
このような構成によって、第2バルブ13の開弁時には、第2弁室23内に導入された高圧力の燃料が、第2弁室23から第2バルブ13の第2インオリフィス孔43を通って中間室(中間制御室26、27)内へ供給されるので、図3に示したように、中間室圧が所定圧力値(P1)以上に保たれ、従来例1のインジェクタと比べて中間室圧降下速度が抑制(遅延)される。
[数3]
Fsp2+P2×S2=Pc×S1
これにより、第2バルブ13が、上下圧力差による油圧力により閉弁方向に付勢され、閉弁方向の移動(リフト)を開始する(図6参照)。
[数4]
Fsp2+P3×S2<Pc×S1
これにより、図7に示したように、第2バルブ13の弁部71がバルブボディ16の第2バルブシート面92に着座(シート)するため、中間室(中間制御室26、27)への高圧力の燃料の供給が遮断される。このとき、第2圧力従動弁の第2バルブ13のバルブリフト量は、L2となる。
上述したように、中間室(中間制御室26、27)への高圧力の燃料の供給が遮断されることで、圧力制御室22内の燃料圧力および中間室(24〜27)内の燃料圧力が急速に低下し、ニードル1の上下圧力差が増加していく。
なお、ニードル1が開弁動作を開始した直後(開弁初期)は、図3に示したように、圧力制御室22内の燃料圧力の低下速度が速いので、噴射率矩形度が良く、噴射率の上昇速度は速い(噴射率波形の傾きが急である)。その後、ニードル1の開弁末期では、図3に示したように、圧力制御室22内の燃料圧力の低下速度が遅くなるので、噴射率の上昇速度は遅くなる(噴射率波形の傾きが緩やかである)。
そして、このインジェクタ閉弁駆動指令に対応してEDUからピエゾ素子積層体への電圧印加が停止(通電停止OFF)されると、ピエゾ素子積層体から電荷が放電される。これに伴って、ピエゾ素子積層体が収縮変位し、ピエゾピストン52および駆動伝達部材61、62がピエゾスプリング63の付勢力により押し戻される。
したがって、バルブピストン53の移動に伴って、制御バルブ3が閉弁動作するため、バルブボディ16のバルブシート面51に着座する。これにより、第2アウトオリフィス孔49が閉鎖される。
以上のように、制御弁の制御バルブ3が第2アウトオリフィス孔49を閉鎖している場合には、圧力制御室22から中間室(24〜27)、低圧室44を介して、燃料系の低圧側への燃料の流出が停止する。これにより、第1弁室21内の燃料圧力(開弁方向油圧力:FO)が、圧力制御室22内の燃料圧力(閉弁方向油圧力:FC)と第1サポートスプリング12の付勢力(閉弁方向付勢力:Fsp1)との合力よりも大きくなる。
これによって、第1圧力従動弁の第1弁体である第1バルブ11が、オリフィスプレート17の第1バルブシート面91よりリフト(離脱)して、第1インオリフィス孔38を開放する。すなわち、第1バルブ11が、ノズルシリンダ8のガイド孔でガイドされながら開弁方向に移動し、開弁する。
ここで、第1インオリフィス孔38の通過流量を従来例1の第1インオリフィス流量よりも多くすることで、圧力制御室22内の燃料圧力が急速に上昇する。
なお、ニードル1が閉弁動作を開始した直後(閉弁初期)は、図3に示したように、圧力制御室22内の燃料圧力の上昇速度が遅いので、噴射率の低下速度は遅い(噴射率波形の傾きが緩やかである)。その後、ニードル1の閉弁中期からは、図3に示したように、圧力制御室22内の燃料圧力の上昇速度が速くなるので、噴射率矩形度が良く、噴射率の低下速度は速くなる(噴射率波形の傾きが急である)。
第1インオリフィス孔38および第1弁室21内の燃料圧力と圧力制御室22内の燃料圧力とが均衡した段階で、第1サポートスプリング12の有無に関わらず、第1バルブ11がノズルシリンダ8のガイド孔でガイドされながら閉弁方向に移動して、オリフィスプレート17の第1バルブシート面91に着座する。これにより、第1バルブ11が、閉弁状態となり、第1インオリフィス孔38を閉鎖する。
そして、アクチュエータ4のピエゾ素子積層体への通電が停止(OFF)され、制御弁が閉弁した後、図3に示したte時刻になると、図8に示したように、中間室(24〜27)内の燃料圧力(中間室圧)が所定圧力値(P4>P3)以上に回復すると、下記の数式5が成立する。
[数5]
Fsp2+P4×S2>Pc×S1
以上により、制御弁が閉弁した直後に、第2バルブ13が開弁するため、中間室(中間制御室26、27)内への高圧力の燃料供給が再開される。
なお、本実施例のインジェクタの場合、図9に示したように、アクチュエータ4へのピエゾ通電時間(噴射量指令値)に対する燃料噴射量が、従来例1のインジェクタよりも少なくなるが、同一のピエゾ通電時間に対する燃料噴射量の減量分は、ECUで算出された燃料噴射量となるように噴射量指令値(ピエゾ通電時間)を従来例1のインジェクタよりも長く設定することで補うことができる。
ところで、エンジンの気筒内に燃料を噴射するインジェクタは、圧力制御室からの燃料排出流量を規制する第1アウトオリフィス流量を増加させることで、ニードル開弁速度を向上する(=噴射率矩形度が向上する)ことが一般に知られている。
ここで、噴射率矩形度向上のメリットとしては等容度の向上による燃焼効率の向上、Soot再燃焼時間の増加による排気エミッション低減等が挙げられる。
したがって、ニードル1の開弁動作が安定し、エンジンの気筒の燃焼室内へ噴射される燃料の噴射量のばらつきを抑えることができる。
したがって、ニードル1の開弁応答を遅延し、且つニードル1の閉弁応答を早期化することができるので、応答性と噴射量制御性とを両立することができる。
図10は、本発明の燃料噴射弁を適用したピエゾインジェクタ(実施例2)を示したものである。
ここで、実施例1と同じ符号は、同一の構成または機能を示すものであって、説明を省略する。
第2バルブ13は、バルブボディ16のバルブ収容室を、第2弁室23と中間室(中間制御室26)とに区画している。
また、第2バルブ13の弁部81と小径軸部82との間には、外周方向に延びる周方向溝を有する括れ軸部83が設けられている。この括れ軸部83には、第2弁室23と中間室(中間制御室26)とを連通する第2インオリフィス孔43および傾斜流路孔84が形成されている。この第2インオリフィス孔43は、第2バルブ13の括れ部の外周面と傾斜流路孔84の孔壁面とを連通するように半径方向に沿うように形成されている。
バルブボディ16には、実施例1と同様に、第2バルブ13の座部および弁部81との間に第2弁室23を形成する収容孔、および第2バルブ13の小径軸部82を往復摺動可能に支持するガイド孔等が設けられている。このバルブボディ16には、第2バルブ13の弁部が着座可能な第2バルブシート面92が形成されている。
図11は、参考例の燃料噴射弁を適用したピエゾインジェクタを示したものである。
ここで、実施例1及び2と同じ符号は、同一の構成または機能を示すものであって、説明を省略する。
小径筒部72には、バルブボディ16のガイド孔との間に、第2弁室23と中間制御室26とを連通する連通路(小径筒部72の軸線方向に延びる連通溝等)を形成する外周面が設けられている。なお、連通溝は、少なくとも1本以上形成されていれば良い。また、連通溝は、バルブボディ16のバルブ収容室の内周壁面に形成されていても良い。
第3サポートスプリング15は、第2バルブ13に対して、第2バルブ13の閉弁方向に付勢する付勢力(Fsp3)を発生する第3弾性部材である。この第3サポートスプリング15は、第2バルブ13の座部の図示下端面(スプリング座部)とオリフィスプレート17のスプリング収容室77の底面(スプリング座部)との間で軸線方向に圧縮された状態で配置された圧縮コイルスプリングである。
オリフィスプレート17は、第2バルブストッパ75の端面で開口し、この開口側から奥側の底面まで真っ直ぐに延びるスプリング収容室77を有している。また、オリフィスプレート17には、高圧連通路41と連通する高圧流路孔42、およびこの高圧流路孔42と第2弁室23とを連通する第2インオリフィス孔43が形成されている。
第2バルブ13は、第2弁室23と中間室(中間制御室26、27)とを区画するようにバルブ収容室内に配されている。
但し、参考例のインジェクタの場合には、第2弁室23と中間室(中間制御室26、27)との燃料圧力がほぼ等しくなるため、第2バルブ13をその閉弁方向に付勢する第3サポートスプリング15を設置する必要があることに加えて、中間室(中間制御室26、27)の容積が増加するため、実施例2と比べて油圧応答性(中間室圧の上昇速度や低下速度)が低下する。
本実施例では、第1圧力従動弁の第1バルブ11を上下圧力差に応じて開閉動作するように構成しているが、第1圧力従動弁の第1バルブ11を開閉駆動する第1アクチュエータを設け、所定の開弁タイミングまたは閉弁タイミングで、エンジン制御ユニット(電子制御装置:ECU)からの開弁指令または閉弁指令により第1アクチュエータの駆動力によって第1圧力従動弁の第1バルブ11を開閉駆動しても良い。
本実施例では、第2圧力従動弁の第2バルブ13を上下圧力差に応じて開閉動作するように構成しているが、第2圧力従動弁の第2バルブ13を開閉駆動する第2アクチュエータを設け、所定の開弁タイミングまたは閉弁タイミングで、エンジン制御ユニット(電子制御装置:ECU)からの開弁指令または閉弁指令により第2アクチュエータの駆動力によって第2圧力従動弁の第2バルブ13を開閉駆動しても良い。
本実施例では、制御弁を、ボールバルブよりなる制御バルブ3、この制御バルブ3と一体移動可能なバルブピストン53、および制御バルブ3をその閉弁方向に付勢するバルブスプリング54等によって構成しているが、制御弁を、バルブピストン53およびバルブスプリング54のみによって構成しても良い。
また、インジェクタの外部で高圧力の燃料を作り、この高圧力の燃料をインジェクタの外部から直接第3高圧導入流路に導入し、この第3高圧導入流路から第2インオリフィス孔43の有無に関わらず、中間室(24〜27)内へ高圧力の燃料を導入するようにしても良い。
また、第2圧力従動弁を複数配置しても良い。
また、内燃機関(エンジン)として、ディーゼルエンジンの代わりに、ガソリンエンジンを用いても良い。
また、本発明の燃料噴射弁を、例えばガソリンエンジン等の内燃機関(エンジン)の気筒内または気筒に連通する吸気ポート内に燃料を噴射するフューエルインジェクタに適用しても良い。
3 制御バルブ(制御弁の弁体)
11 第1バルブ(第1圧力従動弁の弁体)
13 第2バルブ(第2圧力従動弁の弁体)
20 噴孔
21 第1弁室
22 圧力制御室
23 第2弁室
26 中間制御室
27 中間制御室
Claims (3)
- (a)内燃機関の気筒に燃料噴射を行う噴孔(20)を開閉するニードル(1)と、
(b)このニードル(1)に対して閉弁方向に作用する燃料圧力を蓄える制御室(22)と、
(c)自身が開弁することで、前記制御室(22)から低圧室(44)を介して燃料系の低圧側へ燃料を流出させて前記制御室(22)内の燃料圧力を低下させる制御弁(3、53、54)と
を備え、
前記制御弁(3、53、54)を開閉動作させることで、前記制御室(22)内の燃料圧力を調整して、前記ニードル(1)の開閉動作を制御する燃料噴射弁において、
前記燃料噴射弁は、前記制御室(22)と前記低圧室(44)との間に設けられて、前記制御室(22)内の燃料圧力と前記低圧室(44)内の燃料圧力との中間圧力の燃料が流通する中間室(24〜27)と、
前記制御室(22)を迂回して、前記中間室(24〜27)へ高圧力の燃料を導入する導入流路(23、31〜33、41〜43)と、
この導入流路(23、31〜33、41〜43)を開閉する流路開閉弁(13〜16)とを備え、
前記流路開閉弁は、前記中間室(24〜27)内の燃料圧力に対応して、前記導入流路(23、31〜33、41〜43)を開閉する弁体(13)、およびこの弁体(13)に対して開弁方向または閉弁方向に付勢する弾性部材(15、16)を有し、
前記導入流路は、高圧力の燃料が流通する高圧燃料流路(23、31〜33、41、42)、およびこの高圧燃料流路(23、31〜33、41、42)と前記中間室(24〜27)とを連通するインオリフィス(43)を有し、
前記弁体(13)は、前記高圧燃料流路(23、31〜33、41、42)と前記中間室(24〜27)とを区画しており、
前記インオリフィス(43)は、前記弁体(13)に設けられていることを特徴とする燃料噴射弁。 - 請求項1に記載の燃料噴射弁において、
前記燃料噴射弁は、自身の変位を利用して前記制御弁(3、53、54)を開閉駆動するアクチュエータ(4)を備えたことを特徴とする燃料噴射弁。 - 請求項2に記載の燃料噴射弁において、
前記アクチュエータ(4)は、電荷の充放電により伸縮するピエゾ素子積層体を有していることを特徴とする燃料噴射弁。
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