JP2016053205A - 電着塗装装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】小型の自動車部品に電着塗装を施す場合でも、塗装速度を高めつつ平滑性のある塗膜を形成することのできる電着塗装装置を合理的に構成する。
【解決手段】電着塗装液2が収容された電着槽1と、全ての領域を電着塗装液2に浸した状態の被塗装物41が接続される第1電極部4と、電着槽1の内部に配置され、第1電極部4とは対極となる第2電極部5と、被塗装物41を回転させる回転機構6とを備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、電着塗装液を電着槽に流通させながら被塗装物を電着塗装する電着塗装装置に関する。
従来、自動車ボディなどの防錆性を確保するために、複雑な形状を有する部品でも均一な塗膜を形成することが可能なカチオン電着塗装装置が知られている(例えば、特許文献1−2参照)。この電着塗装装置は、自動車ボディ(被塗装物)で構成される陰極と、電着槽内に配置される陽極とに電圧を印加することで、陰極で電気分解された水の陰イオンとカチオン電着塗装液とを反応させて、被塗装物に塗膜を析出させるものである。
特許文献1の電着塗装装置は、自動車ボディの内部にプロペラ攪拌機を配置し、当該内部にある電着塗装液を直接撹拌することで、ボディ内面付近の流速を高めながら、袋状部分は塗膜析出量が極大値付近となる流速に制御するものである。これによって、ボディ内面の膜厚を減少させて袋状部分の膜厚を増加させることができると記載されている。
特許文献2の電着塗装装置は、電着槽の液面直下と側壁とに複数の噴射ノズルなどを設置し、自動車ボディ表面の電着塗装液の流速を高め、膜厚を増加させるものである。また、特許文献2には、流速が変曲点以上になると、陰極で発生する水素ガスのガス抜け作用が促進され、ボディ表面の電気抵抗値が低下して膜厚が増加すると記載されている。
特開平10−237695号公報 特開2000−119897号公報
しかしながら、特許文献1の電着塗装装置は、電着塗装液の流速を高めるためにプロペラ攪拌機を設置する必要があり、装置が大型化してしまう。また、プロペラ攪拌機を被塗装物の内部に設置する技術では、小型の自動車部品に電着塗装を施す場合に設置スペースを確保できない。
一方、特許文献2のように被塗装物の周辺に複数の噴射ノズルを設ける技術では、被塗装物の内部の流速を高めることが難しく、陰極で発生した水素ガスが塗膜に滞留してガスピンホールや塗膜破壊を招いてしまうおそれがある。特に、塗装速度を高めるために印加電圧を大きくした場合、水素ガスが大量に発生して塗膜破壊が発生し易い。その結果、被塗装物に対して所望の防錆性能を発揮することができない。
そこで、本発明は、小型の自動車部品に電着塗装を施す場合でも、塗装速度を高めつつ平滑性のある塗膜を形成することのできる電着塗装装置を合理的に構成することを目的とする。
本発明に係る電着塗装装置の特徴構成は、電着塗装液が収容された電着槽と、全ての領域を前記電着塗装液に浸した状態の被塗装物が接続される第1電極部と、前記電着槽の内部に配置され、前記第1電極部とは対極となる第2電極部と、前記被塗装物を回転させる回転機構とを備えている点にある。
第1電極部では、電着塗装液が水の電気分解で発生するイオン(アニオン電着塗装では陽イオン、カチオン電着塗装では陰イオン)と反応して被塗装物に塗膜が析出される。その際、第1電極部では、気泡(アニオン電着塗装では酸素ガス、カチオン電着塗装では水素ガス)が発生する。この気泡が塗膜に滞留すると、塗膜抵抗が低下して放電することで塗膜が硬化し、焼付後にガスピンホールが形成されてしまう。特に、印加電圧が大きい場合は、塗膜抵抗が低下した部位で水の電気分解が促進されて気泡が大量に発生し、塗膜が破壊され、焼付後に被塗装物の表面にクレータ状の部位が形成される。その結果、平滑性のある塗膜が形成されず、所望の防錆性能を発揮することができない。
本構成によると、電極部に電圧を印加する際、全領域が電着塗装液に浸された被塗装物を回転させる。このとき、被塗装物の電着塗装液に対する相対速度が大きくなり、塗膜に存在する気泡は、電着塗装液によって塗膜の外部に連れ出される。このため、塗膜に気泡が滞留することがなく、ガスピンホールや塗膜破壊の発生を防止することができる。
特に、被塗装物を回転させているので、被塗装物の全ての部位で、電着塗装液に対する相対速度を大きくすることができる。その結果、電着塗装液の流速が高まりにくい袋状部分においても気泡を確実に連れ出すことができ、焼付後における被塗装物の外観は全体的に良好なものとなる。また、従来のように、噴射ノズルを被塗装物の外面や内面周辺に配置する必要がないので、装置構成を簡便化することができる。
しかも、噴射ノズルで電着塗装液の流速を局所的に高める方法ではなく、被塗装物の電着塗装液に対する相対速度を一様に高める方法なので、大きな電圧が印加されても特定部位に気泡が滞留して塗膜を破壊させることがない。つまり、通常、印加電圧が大きいほど早く塗膜が形成される性質上、本構成では、従来に比べて印加電圧を大きくして塗膜速度を高めることが可能となる。このように、本構成を採用することで、塗装速度を高めつつ平滑性のある塗膜を形成することができる電着塗装装置を提供できた。
他の特徴構成は、前記電着槽の内部に前記電着塗装液を補給する導入部が前記電着槽の底部に形成され、前記導入部は、前記被塗装物の回転軸芯に沿って下方から上方に前記電着塗装液を循環させる点にある。
被塗装物の塗膜から連れ出された気泡は上昇して、装置の外部に排出される。このとき、被塗装物から連れ出された気泡が、被塗装物の塗膜に再付着するおそれがある。しかしながら、本構成のように被塗装物の回転軸芯に沿って下方から上方に電着塗装液を循環させることで、気泡の上昇速度を高めて塗膜に気泡が再付着することを防止する。よって、平滑性のある塗膜をより確実に形成することができる。また、電着塗装液を補給する導入部を、被塗装物の回転軸芯方向に沿った電着槽の底部に配置するだけで良いので、装置構成が簡便である。
他の特徴構成は、運転開始時から運転終了時まで、前記第1電極部および前記第2電極部に一定の電圧を印加する点にある。
一般的に、電着塗装装置においては、所望の膜厚が形成されて塗膜抵抗が高まるまで、電圧を徐々に大きく制御したり、被塗装物を第2電極部に徐々に近付けて局所的に電流が集中するのを防止する制御を実行する。一方、上述したように、被塗装物を回転制御すれば、被塗装物の電着塗装液に対する相対速度を一様に大きくすることができるので、局所的に気泡が塗膜に滞留することがない。つまり、本構成のように、運転開始時から最大電圧を印加しても、塗膜の破壊を防止することができる。しかも、局所的に電流集中することがないので、従来に比べて塗膜破壊の生じない最大電圧を大きくすることが可能となる。よって、本構成を採用することで、効率的に塗装速度を高めることができる。
他の特徴構成は、前記第2電極部を、前記第1電極部の側方であって前記被塗装物の回転軸芯に対して直交する方向に一つ備えている点にある。
被塗装物の膜厚を均一にするためには、第1電極部と第2電極部との間の電位勾配を、被塗装物の全周に亘って均一にすることが好ましい。このため、一般的には第2電極部を電着槽の両側に並べて配置する。一方、上述したように被塗装物を回転制御するので、第2電極部の配置や数量の影響を受けることなく、被塗装物の全周に亘って均一な電位勾配を確保することが可能となる。よって、本構成のように第2電極部を第1電極部の側方に対向して一つ配置するだけで被塗装物の膜厚が均一になるので、装置構成をより一層簡便化できる。
本実施形態に係る全体図である。 印加電圧と成膜速度との関係図である。 回転数とガスピンホールが発生する電圧との関係図である。 回転数と塗膜破壊が発生する電圧との関係図である。 本実施例1に係る電圧値および電流値の変化を示す図である。 本実施例2に係る電圧値および電流値の変化を示す図である。 比較例に係る電圧値および電流値の変化を示す図である。 本実施例3に係る回転数と電圧値を変化させた場合の比較図である。 本実施例1に係る被塗装物の外観写真である。 比較例に係る被塗装物の外観写真である。 別実施形態に係る全体図である。 別実施形態に係る印加電圧と成膜速度との関係図である。 別実施形態に係る回転数と塗膜破壊が発生する電圧との関係図である。 本実施例4に係る電圧値および電流値の変化を示す図である。
以下に、本発明に係る電着塗装装置Xの実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、電着塗装装置Xの一例として、ワーク41(被塗装物)を陰極部4としてカチオン電着塗装液2を電着塗装するケースを説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
図1には、電着塗装装置Xの全体図が示される。また、図2〜4には、後述する本実施例1〜2および比較例に示す所定の条件下においてカチオン電着塗装を実施した場合の、電圧−成膜速度の関係、回転数−ガスピンホール発生電圧又は塗膜破壊電圧の関係をプロットした図が示される。
[基本構成]
図1に示すように、電着塗装装置Xは、カチオン電着塗装液2を収容する電着槽1と、この電着槽1にカチオン電着塗装液2を補給する導入部3と、ワーク41に接続される陰極部4(第1電極部の一例)と、陰極部4とは対極となる陽極部5(第2電極部の一例)とを備えている。また、図示しないが、カチオン電着塗装液2の顔料が電着槽1の底部に沈殿しないように、電着槽1の外周部に複数の噴射ノズルを配置している。なお、本実施形態で電着塗装するワーク41としては、例えば座席のガイドレール、パイプ、ディビジョンバー(窓の仕切り部材)などの、防錆性や美観が要求される小型の自動車部品を想定している。
カチオン電着塗装液2は、アクリル樹脂、エポキシ系樹脂やエポキシ−ポリアミド系樹脂などに添加物、溶剤を含む陽イオン電解性樹脂を展色材(ビヒクル)とし、この陽イオン電解性樹脂に顔料を加えたものを水性媒体中に分散させて構成される。
導入部3は、ワーク41の塗装が進みにつれて電着槽1から持ち出される塗料成分を補給するために、電着槽1の底部中央付近に形成される。この導入部3は、ワーク41の回転軸芯Yに沿って下方から上方にカチオン電着塗装液2を循環させる。つまり、ワーク41の内面や外面に沿うようにカチオン電着塗装液2を流動させる。導入部3から補給されるカチオン電着塗装液2は、電着槽1内の浴塗料組成を一定に保つための塗料で、各種成分が適宜調整されたものである。なお、電着槽1から溢れ出た塗料を濾過して、導入部3に循環させても良い。
陰極部4は、導電性のある係止部材42によってワーク41が係止された状態で、直流電源7と接続されている。図1に示すように、ワーク41は、電着槽1に収容されたカチオン電着塗装液2に、すべての領域が浸された状態となっている。
陽極部5は、ステンレスや炭素板などで構成され、陰極部4の周方向に沿って等間隔に四つ配置されている。詳細は後述するが、本実施形態ではワーク41を回転させながら電着塗装するため、陽極部5から発生する陰イオンを陽極部5のワーク41表面に均等に移動させることができる。
ところで、一般的な電着塗装工程において、カチオン電着塗装を施す前に、脱脂してリン酸鉄系の表面処理を行う。次いで、カチオン電着塗装工程でワーク41に塗膜を形成した後、水洗工程を経て焼付工程を実施し、ワーク41の電着塗装が完了する。このカチオン電着塗装は、ワーク41に塗膜が順次形成される性質を有するので、所謂つきまわり性が高く、均一な膜厚を形成して所望の防錆性能を発揮することのできる優れた塗装方法である。
カチオン電着塗装工程において、水性溶媒中の水が電気分解して発生する水酸化物イオンと、陽イオン電解性樹脂中のアミノ基とが反応して、陰極部4のワーク41に水不溶性の塗膜が形成される。図2に示すように、陰極部4および陽極部5への印加電圧を上げれば、上記反応が促進して塗装速度が高まり、より増膜することが知られている。一方、陰極部4では、水素イオンが電荷を受け取り、水素ガスが発生する。このとき、電極部4,5への印加電圧を上げれば、ワーク41の塗膜内に多くの水素ガスが滞留し、塗膜の成長を阻害し易い。このため、塗膜抵抗が低下して放電することで塗膜が硬化し、焼付後にガスピンホールが形成されてしまう。
特に、電極部4,5への印加電圧を高めすぎた場合、水素ガスが大量に発生するので、焼付工程でワーク41の塗膜内に滞留している水素ガスが塗膜を破壊して、ワーク41の表面にクレータ状の部位が形成される。その結果、外観不良となって所望の防錆性能を発揮することができない。
この外観不良は、カチオン電着塗装液2の浴抵抗や電解度、陽極部5の形状や配置、ワーク41の材質や形状などの諸条件で異なるが、図3〜4の回転数0rpmの場合に示すように、概ねガスピンホールは250V付近、塗膜破壊は270V付近で発生する。
そこで、本実施形態における電着塗装装置Xでは、モータMを駆動制御することでワーク41を回転させる回転機構6を備えている。図3〜4に示すように、電極部4,5に電圧を印加する際、ワーク41を回転させることで、ガスピンホールや塗膜破壊が発生しない印加電圧を高めることができる。そこで、本実施形態では、図6〜7に示すように運転開始時から運転終了時まで、陰極部4および陽極部5に一定の高電圧を印加することにしている。
ワーク41を回転させることで、ワーク41のカチオン電着塗装液2に対する相対速度が大きくなり、塗膜内に滞留している水素ガスが、カチオン電着塗装液2によって塗膜の外部に連れ出され易くなる。特に、従来のようにカチオン電着塗装液2の流速を高めるだけでは、ワーク41の外面や内面の流速が高い部位と低い部位とが混在してしまうが、本実施形態では、カチオン電着塗装液2とワーク41との相対速度を、ワーク41の全ての部位で高めることができる。その結果、ワーク41の内面や袋状部分などのようにカチオン電着塗装液2の流速が高まりにくい部位でも、水素ガスを確実に連れ出すことができるので、焼付後のガスピンホールや塗膜破壊が発生し難い。よって、高電圧下による高速塗膜処理が可能となる。
さらに、本実施形態における導入部3は、ワーク41の回転軸芯Yに沿って下方から上方にカチオン電着塗装液2を循環させるので、ワーク41の塗膜から連れ出された水素ガスの上昇速度が高まり、円滑に外部に排出させることができる。よって、一旦連れ出された水素ガスが、ワーク41に再付着してしまうといった不都合を防止することができる。
以下、本実施形態における実施例および比較例を説明する。
実施例1〜2,比較例の前提条件として、ワーク41に奥行き約3cm、幅約5cm、長さ約38cmの断面U字状の冷延鋼板(ガイドレール)、陽極部5に径6mm、長さ540mmである円柱状のステンレス材を用い、陰極部4と陽極部5との極間距離を50mmに設定した。このワーク41の穴を係止部材42の係止爪に引っ掛けた状態で、カチオン電着塗装液2が満たされた電着槽1にワーク41の全領域を浸漬した。なお、実際の電着塗装では、目標とする膜厚に応じて通電時間を決定するが、比較を容易にするため、実施例1〜2,比較例において通電時間を15秒間に統一した。
[実施例1]
本実施例では、ワーク41を300rpmで回転しながら、電着初期から最大電圧300Vを印加して、電着終了時までこの最大電圧を維持した。その場合の電流値および電圧値の変化を示す波形を、図5に示す。
本実施例では、通電開始から1〜2秒後で電流値がピークに達し、その後、塗膜抵抗により電流値が徐々に減少し、約7〜8秒後には電流値が略0Vとなった。つまり、ワーク41を回転することで、電着初期に塗膜がワーク41の表面に一様に形成され、その後は局所的な電流集中が生じることなく、約7〜8秒で塗膜形成が概ね完了することが理解できる。
本実施例で電着塗装したワーク41を焼付けたときの平均膜厚は31.6μmとなり、図9に示すように外観は平滑性を有し、良好な状態であった。よって、通常はガスピンホールや塗膜破壊が発生する300Vの高電圧領域でも、短期間で良好な電着塗装を施すことができることが確認された。
[実施例2]
本実施例では、ワーク41を150rpmで回転しながら、電着初期から最大電圧300Vを印加して、電着終了時までこの最大電圧を維持した。その場合の電流値および電圧値の変化を示す波形を、図6に示す。
本実施例では、通電開始から1〜2秒後で電流値がピークに達し、その後、塗膜抵抗により電流値が徐々に減少し、約15秒後には電流値が略0Vとなった。つまり、ワーク41を回転することで、電着初期に塗膜がワーク41の表面に一様に形成され、その後は局所的な電流集中が生じることないことが理解できる。
本実施例で電着塗装したワーク41を焼付けたときの平均膜厚は53.2μmとなり、外観は若干の肌荒れが見られたが、概ね良好な状態であった。また、本実施例では、実施例1に比べ早い段階で電流値が略0Vに収束することなく、電着期間全般に亘って電流値が徐々に減少し、積算電流値が多くなった結果、より増膜することができた。つまり、印加電圧に応じてガスピンホールや塗膜破壊が発生しない範囲でワーク41の回転数を小さくすれば、膜厚の増大を図ることができることが確認された。
[比較例]
本比較例では、ワーク41を回転せずに、電着初期から最大電圧300Vを印加して、電着終了時までこの最大電圧を維持した。その場合の電流値および電圧値の変化を示す波形を、図7に示す。
本比較例では、通電開始から1〜2秒後で電流値がピークに達し、その後、一旦、塗膜抵抗により電流値が徐々に減少したが、約3〜4秒後には電流値が増加に転じた。つまり、陰極部4で水素ガスが多く発生して、ワーク41の塗膜内に水素ガスが滞留し、塗膜の成長を阻害された結果、局所的に塗膜抵抗が低下して電流が集中していることが理解できる。
本比較例で電着塗装したワーク41を焼付けたときの平均膜厚は40.8μmとなり、図10に示すように外観にはクレータ状の窪みが発生し、特にワーク41のエッジ部分近傍にこの窪みが多く散在していた。また、実施例2に比べて積算電流値が多くなったにも関わらず、ワーク41の膜厚は小さくなった。これは、塗膜内に水素ガスが大量に滞留して局所的に電流が集中し、塗膜を硬化させる放電現象が発生したことが推測される。このように、ワーク41を回転せずに大きな電圧を印加すると、塗膜速度が高まらず、ガスピンホールや塗膜破壊が発生してしまうことが確認された。
上述した実施例1〜2,比較例の結果から、ワーク41を回転させながら電極部4,5に電圧を印加させることで、ガスピンホールや塗膜破壊の発生しない最大電圧を大きくすることのできることが検証された。また、ワーク41の回転数を変化させることで、塗膜速度や焼付後の膜厚を制御することができることが分かった。よって、ワーク41の膜厚をより均一にしたい場合は、電着初期の回転数を小さくして初期膜厚を確保した後、電流値が減少に転じるタイミング又は所定のタイミングで回転数を増加させる制御を実行しても良い。これによって、初期膜厚を十分確保した上で、回転数を高めて水素ガスの連れ出しを促進させることができるので、ワーク41の膜厚を大きくしながらもガスピンホールや塗膜破壊を効果的に抑制することができる。なお、所定のタイミングは、目標とする膜厚に応じて適宜決定すれば良い。
一方、上述したように水素ガスの大量発生は、塗膜抵抗が小さな部位で起こりやすい。つまり、カチオン電着塗装液2の行き亘り難い袋状部分に水素ガスが発生し易く、この袋状部分から水素ガスを完全に連れ出すことは容易ではない。このため、回転機構6の回転数の増加、減少を反復させる回転変化を設けて、塗膜の形成と水素ガスの連れ出しとを交互に繰り返す制御を実行しても良い。その結果、カチオン電着塗装液2とワーク41との相対速度に変化が生じ、袋状部分に滞留した水素ガスはあらゆる方向からカチオン電着塗装液2に接触するので、水素ガスを確実に連れ出すことができる。
なお、回転機構6の回転数の変化態様は上述したものに限定されず、例えば、電着初期の回転数を大きくして、電流値が減少に転じるタイミング又は所定のタイミングで回転数を減少させる制御を実行しても良い。
[実施例3]
本実施例において、実施例1〜2、比較例と異なるのは、奥行き約3cm、幅約5cm、長さ約38cmの断面U字状の亜鉛メッキ鋼板を用いた点であり、その他の前提条件は同様である。ワーク41の回転数と電極部4,5の印加電圧とを変化させて、ガスピンホールや塗膜破壊の発生の有無を検証した。
図8に示すように、ワーク41を回転しない場合、印加電圧が250V以上になると、ガスピンホールが発生し、300V以上になると塗膜が破壊された。一方、回転数が100rpmの場合、印加電圧を275Vより小さな値に設定することで、ガスピンホールや塗膜破壊が発生しなかった。また、回転数が200rpmの場合、印加電圧を300Vより小さな値に設定することで、ガスピンホールや塗膜破壊が発生しなかった。回転数が300rpmの場合、印加電圧を300Vとしても、ガスピンホールや塗膜破壊が発生しなかった。つまり、印加電圧を300Vに設定した場合、ワーク41の回転数は200rpmより大きく設定することが好ましい。
一般的に亜鉛メッキ鋼板は、水素ガスの放電電圧が鉄鋼板より低いとされており、ガスピンホールの原因となる火花放電が発生し易い。しかしながら、ワーク41の回転数は200rpmより大きく設定すれば、印加電圧を約300Vまで高めることができることが確認できた。上述した実験結果から、実施例1〜2のような冷延鋼板においては、図3に示すように、ワーク41の回転数を150rpmより大きく設定し、実施例3のような亜鉛メッキ鋼板においては、図8に示すように、ワーク41の回転数を200rpmより大きく設定することで、印加電圧を約300Vにして電着塗装速度を高めつつガスピンホールや塗膜破壊の発生を抑制することができる。
[別実施形態]
以下、本発明に係る別実施形態について、図面の理解を容易にするため、同じ部材名称及び符号を用いて説明する。図11に示すように、本実施形態では、上述した実施形態と異なる点として、陽極部5を、ワーク41の側方であって、ワーク41の回転軸芯Yに対して直交する方向に一つ備えたことにある。
図12〜13には、上述した実施例1〜2および比較例における陽極部5の数を四つから一つに変更した点を除いて、同様の条件下でカチオン電着塗装を実施した場合の、電圧−成膜速度の関係、回転数−塗膜破壊電圧の関係をプロットした図が示される。
図12に示されるように、陽極部5の数を一つにした場合であっても、陽極部5の数を四つにした場合の図2と比べて、印加電圧に対する成膜速度が同等であることが理解される。また、図13に示すように、本実施形態における塗膜破壊電圧は、陽極部5の数を四つにした場合の図4と比べて、同等又はやや向上していることが理解される。つまり、本実施形態のように陽極部5の数を少なくしても、陽極部5の数を四つにした場合と同等の性能を確保することができる。
さらに、上述したようにワーク41を回転させることで、ワーク41の全周に亘って陽極部5との間の電位勾配を均一に確保することができる。このため、本実施形態のように、陽極部5を一つにしてもワーク41の塗膜は均一に形成される。よって、従来のように、ワーク41の全周に亘って均一な電位勾配を確保すべく、ワーク41の両側に陽極部5を設ける必要がないので、装置構成が簡便なものとなる。
[実施例4]
実施例4は、実施例1〜2における陽極部5の数を四つから一つに変更した点を除いて、前提条件を同様に設定した。本実施例では、ワーク41を300rpmで回転しながら、電着初期から最大電圧300Vを印加して、電着終了時までこの最大電圧を維持した。その場合の電流値および電圧値の変化を示す波形を、図14に示す。
本実施例では、通電開始から1〜2秒後で電流値がピークに達し、その後、塗膜抵抗により電流値が徐々に減少し、約15秒後には電流値が略0Vとなった。つまり、ワーク41を回転することで、電着初期に塗膜がワーク41の表面に形成され、その後は局所的な電流集中が生じていないことが分かる。
本実施例においても、外観は平滑性を有し、良好な状態であった。よって、別実施形態のように陽極部5の数を一つにした場合でも、ワーク41の全周に亘って均一な電位勾配が確保された結果、良好な電着塗装を施すことができることが確認された。
[その他の実施形態]
(1)上述した実施形態では、カチオン電着塗装を一例として挙げたが、電着塗装装置Xをアニオン電着塗装に使用しても良い。この場合、第1電極部4が陽極部、第2電極部5が陰極部で構成され、陽極部でアニオン電着塗装が施されると共に酸素ガスが発生する。このアニオン電着塗装においても、回転機構6によってワーク41の塗膜内に滞留する酸素ガスが効果的に連れ出されるので、ガスピンホールや塗膜破壊の発生を防止することができる。
(2)第1電極部4に接続されるワーク41の数量は一つに限定されず、複数設けても良い。この場合、ワーク41を電着塗装する際の生産効率を高めることができる。
(3)上述した実施形態では、第2電極部5を、ワーク41の周方向に沿って等間隔に四つまたはワーク41の側方に一つ備えたが、特に限定されず、第2電極部5は一つ以上あれば良く、どのような配置であっても良い。
(4)上述した実施形態では、第2電極部5を第1電極部4の周方向に沿って配置したが、第1電極部4を第2電極部5の周方向に沿って一つ又は複数配置しても良い。この場合、第1電極部4を回転機構6によって自転させるだけでなく、第2電極部5の周りに公転させる制御を実行しても良い。このとき、第1電極部4を複数配置しつつ自転させれば、生産効率を高めることができる。さらに、第1電極部4を公転させることで、第1電極部4自体を撹拌装置として機能させ、電着槽1に沈殿した顔料を撹拌したり、カチオン電着塗装液2の流速を高めたりすることが可能となる。
(5)上述した実施例における第2電極部5の形状は一例にすぎず、例えば多角柱状に形成するなどどのようなものであっても良い。また、ワーク41を第1電極部4に係合固定する形態は、例えば挟持部材でワーク41を保持するなどどのような形態であっても良い。
(6)電着槽1に収容されたカチオン電着塗装液2の温度やpHを一定に制御する温度制御部やpH制御部を備えても良い。この場合、カチオン電着塗装液2の固化や設備の腐食を防止する効果が期待できる。
本発明は、車両部品などを電着塗装する電着塗装装置に利用可能である。
1 電着槽
2 カチオン電着塗装液(電着塗装液)
3 導入部
4 陰極部(第1電極部)
41 ワーク(被塗装物)
5 陽極部(第2電極部)
6 回転機構

Claims (4)

  1. 電着塗装液が収容された電着槽と、
    全ての領域を前記電着塗装液に浸した状態の被塗装物が接続される第1電極部と、
    前記電着槽の内部に配置され、前記第1電極部とは対極となる第2電極部と、
    前記被塗装物を回転させる回転機構とを備えている電着塗装装置。
  2. 前記電着槽の内部に前記電着塗装液を補給する導入部が前記電着槽の底部に形成され、
    前記導入部は、前記被塗装物の回転軸芯に沿って下方から上方に前記電着塗装液を循環させる請求項1に記載の電着塗装装置。
  3. 運転開始時から運転終了時まで、前記第1電極部および前記第2電極部に一定の電圧を印加する請求項1又は2に記載の電着塗装装置。
  4. 前記第2電極部を、前記第1電極部の側方であって前記被塗装物の回転軸芯に対して直交する方向に一つ備えている請求項1から3のいずれか一項に記載の電着塗装装置。
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