JP2016053156A - 高度不飽和脂肪酸結合型リン脂質の製造方法 - Google Patents

高度不飽和脂肪酸結合型リン脂質の製造方法 Download PDF

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瑞恵 伊藤
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節子 原
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Abstract

【課題】グリセロール骨格の2位に高度不飽和脂肪酸が結合したリン脂質を効率よく製造する方法の提供。
【解決手段】水と相分離する溶媒中で、ランダム型リパーゼの存在下にリン脂質と高度不飽和脂肪酸とを反応させることを含む、高度不飽和脂肪酸結合型リン脂質の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、高度不飽和脂肪酸結合型リン脂質の製造方法に関する。
α−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸(AA)などの高度不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acid:PUFA)は様々な生理活性を有することが知られており、例えば、DHAは、抗肥満作用や抗腫瘍作用を有することが知られている。
しかし、PUFAは二重結合を有していて非常に酸化されやすく、有害な過酸化脂質を生成したり、また酸化によって生理活性の消失や、異味異臭、変色を起こすなどの問題を生じていた。PUFAの酸化防止のため、α−トコフェロールやアスコルビン酸等の抗酸化剤が用いられているがその効果は限定的であった。
リン脂質は、グリセロリン酸骨格において、グリセロール骨格の1位と2位に脂溶性の脂肪酸がエステル結合し、3位にはリン酸を介して塩基が結合している両親媒性の分子である。リン脂質は、生体内では細胞膜の構成脂質として大量に含まれているほか、乳化剤として医薬品や食品、化粧品に配合されて使用されている。また、リン脂質は、脳機能改善、コレステロール低下、脂質代謝機能改善などの様々な生理活性を有することも明らかになっている。
上記のようなPUFAとリン脂質の生理活性を併せ持つ分子として、PUFAを構成脂肪酸とするリン脂質(PUFA−リン脂質)が提案されている。PUFA−リン脂質は、トリグリセリド型や脂肪酸型のPUFAに比べ、安定性が高く、生体への吸収性が良いことが明らかになっている。さらに、リン脂質のグリセロール骨格の2位にPUFAが結合したもの(2位結合型PUFA−リン脂質)は、酸化安定性が高く、PUFAの生理活性の発現に重要であることが知られている(特許文献1〜2)。
PUFA−リン脂質の製造方法としては、リン脂質と脂肪酸または脂肪酸エステルにリパーゼなどの酵素を作用させて改質する方法(特許文献3)が知られている。しかしながら、リパーゼを用いた従来の方法では、グリセロール骨格の1位に選択的にPUFAが結合するため、2位結合型PUFA−リン脂質を効率よく製造することができない。2位結合型PUFA−リン脂質の製造方法としては、カラム精製した1−アルケニル−2−リゾリン脂質を触媒下でPUFAと反応させる方法(特許文献1)、リゾリン脂質にホスホリパーゼA2を用いて、2位選択的にPUFAを導入する方法(特許文献2)などが知られている。しかし、特許文献1や2の方法は原料としてリゾリン脂質を用意する必要があり、また、特許文献2の方法は高価なホスホリパーゼA2を用いるため、コストが非常に高いという問題がある。
特開2003−3190号公報 特許第4978751号公報 特開平4−148691号公報
本発明の課題は、リン脂質のグリセロール骨格の2位に特定のPUFAが結合した2位結合型PUFA−リン脂質を効率よく生産する方法を提供することである。
多くのリパーゼは、膵臓リパーゼに代表されるように、グリセロール骨格の1位と3位のアシル基の結合を、2位に比べて優位に触媒するという特異性があり、一方ホスホリパーゼA2は、グリセロール骨格の2位のアシル基の結合を特異的に触媒する。一方、リパーゼの中には、基質に対する位置特異性がなく、グリセロール骨格のどの位置のアシル基も同じように触媒するランダム型のリパーゼが存在する。従来、2位結合型PUFA−リン脂質を得る方法としては、2位に特異性を有するホスホリパーゼA2を用いて、リン脂質の2位アシル残基とPUFAを直接エステル交換する方法が主に提案されてきた。しかし、ホスホリパーゼA2では期待するほどの2位結合型PUFA−リン脂質が得られないことや、取扱いに難点があることが報告されている。
そこで本発明者らは鋭意研究を行った結果、水と相分離する溶媒中で、ランダム型のリパーゼの存在下、リン脂質とPUFAとのエステル交換反応を行うと、意外なことに、リン脂質のグリセロール骨格の2位に高効率にPUFAが導入され、簡便に高い収量で2位結合型PUFA−リン脂質が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、水と相分離する溶媒中で、ランダム型リパーゼの存在下にリン脂質と高度不飽和脂肪酸とを反応させることを含む、高度不飽和脂肪酸結合型リン脂質の製造方法を提供する。
本発明によれば、生理活性が高い2位結合型PUFA−リン脂質を効率よく生産することができる。
リン脂質は、一般的に、グリセロール骨格を有するグリセロリン脂質と、スフィンゴシンを骨格とするスフィンゴリン脂質とに大別される。本明細書において、単に「リン脂質」という場合は、グリセロリン脂質を指す。グリセロリン脂質は、グリセロール骨格の1位と2位に脂溶性の脂肪酸がエステル結合し、3位にはリン酸を介して塩基が結合している両親媒性の分子である。
本明細書において、「高度不飽和脂肪酸」(PUFA)とは、炭素数が16以上、より好ましくは18以上、さらに好ましくは20以上であり、かつ不飽和結合数が3以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上である長鎖脂肪酸をいう。PUFAの例としては、アラキドン酸(AA,20:4)、エイコサテトラエン酸(ETA、20:4)、エイコサペンタエン酸(EPA、20:5)、ドコサペンタエン酸(DHA、22:5)、ドコサヘキサエン酸(DHA、22:6)などが挙げられる。
本明細書において、「高度不飽和脂肪酸結合型リン脂質(またはPUFA−リン脂質)」とは、リン脂質のグリセロール骨格に高度不飽和脂肪酸(PUFA)が結合したリン脂質をいう。また本明細書において「2位結合型PUFA−リン脂質」とは、PUFAがグリセロール骨格の2位に結合しているPUFA−リン脂質をいう。
本発明の高度不飽和脂肪酸結合型リン脂質の製造方法では、ランダム型リパーゼの触媒作用の下でリン脂質とPUFAとをエステル交換反応させ、2位結合型PUFA−リン脂質を優位に製造する。
本発明の方法において、PUFA−リン脂質の原料となるリン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、レシチンなどの公知のリン脂質を用いることができる。本発明の方法において、これらのリン脂質は、いずれか単独で、または複数を混合して用いることができる。さらに、原料入手の容易性の観点から、本発明の方法で使用されるリン脂質は、精製されたリン脂質の形態で供給されてもよいが、リン脂質とともにトリグリセリドや脂肪酸などの他の成分を含む組成物の形態で供給されてもよい。したがって、本発明の方法で使用されるリン脂質供給源としては、合成されたリン脂質や、天然物等から抽出されたリン脂質がいずれも利用でき、または市販品のリン脂質を用いてもよい。好適には、大豆由来のリン脂質、菜種由来のリン脂質などが挙げられる。また好ましくは、本発明の方法で使用されるリン脂質供給源は、リン脂質を60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上含む組成物である。
リン脂質は吸湿しやすい性質を有している。そのため、本発明の方法で使用されるリン脂質中に微量の水分が含まれて、それがPUFAとのエステル交換反応に影響することがある。したがって、本発明の方法で使用されるリン脂質は、予め脱水されていることが好ましい。リン脂質の脱水の方法としては、アセトン、ジエチルエーテル等の脱水用溶媒を用いる方法、加熱して脱水する方法、有機溶媒とともにモレキュラーシーブス、ゼオライト等を用いる方法等の公知の方法を採用できる。これらの中では、アセトンを用いて脱水する方法が好ましい。
本発明の方法において、PUFA−リン脂質の原料となるPUFAとしては、特に限定されないが、生体に対する生理活性を有するPUFAが好ましい。本発明の方法で使用されるPUFAの好ましい例としては、EPA(20:5)およびDHA(22:6)が挙げられる。本発明の方法において、上記に挙げたPUFAは、いずれか単独でまたは複数を混合して用いることができる。
本発明の方法において、上記PUFAは、遊離脂肪酸の形態で用いることもできるが、低級アルコールとのアルキルエステル形態で用いてもよく、グリセリンと結合したグリセリド(モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドいずれも含む)の形態で用いてもよく、あるいはそれらの混合物であってもよい。PUFAのアルキルエステル化のための低級アルコールとしては、炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状のアルコールが挙げられ、好ましくはエタノールであり、また好ましいアルキルエステル形態としては、メチルエステルおよびエチルエステルが挙げられる。さらに、原料入手の容易性の観点から、本発明での方法で使用されるPUFAの供給源は、動物または植物由来のトリグリセリドや脂肪酸の混合物のように、目的とするPUFAとともに、それ以外の脂肪酸や、それらを構成脂肪酸とするトリグリセリドなどが混合された組成物(例えば、植物油、魚油、または市販のPUFA高含有油脂)であってもよい。
あるいは、本発明の方法で使用されるPUFA供給源は、遊離脂肪酸、脂肪酸アルキルエステル、または脂肪酸グリセリドを含む油脂組成物であり得る。好ましくは、該油脂組成物は、上述したPUFAを、遊離脂肪酸換算で50質量%以上、より好ましくは60質量%以上含む。さらに好ましくは、該油脂組成物は、遊離脂肪酸換算で、EPAおよびDHAを合計で50質量%以上、なお好ましくは60質量%以上含む。当該油脂組成物中において、PUFAは、好ましくはアルキルエステル形態、さらに好ましくはエチルエステル形態で存在している。
本発明の方法で用いる酵素は、リン脂質に対して位置特異性のないエステル交換が可能なランダム型リパーゼである。本発明の方法で用いることができるランダム型リパーゼの例としては、キャンディダ・ルゴサ(Candida rugosa)またはキャンディダ・シリンドラセ(Candida cylindracea)等のキャンディダ属に属する菌類由来のランダム型リパーゼ、ゲオトリカム・キャンディダム(Geotrichum candidum)等のゲオトリカム属に属する菌類由来のランダム型リパーゼなどを例示できる。ランダム型リパーゼは市販されており、例えば、キャンディダ・ルゴサ(またはキャンディダ・シリンドラセ)由来の「リパーゼOF」(名糖産業(株)製、)、ならびにキャンディダ・ルゴサ(またはキャンディダ・シリンドラセ)由来の「リパーゼAY」(天野製薬(株)製)などを利用できる。
本発明の方法において、上記のリン脂質とPUFAと酵素を用いたエステル交換反応は、水と相分離する溶媒中で行う。水と相分離する溶媒とは、水と混合しても自発的に2層に分離する溶媒をいう。そのような溶媒としては、ペンタン、ヘキサン等の炭化水素、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル等のエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられ、好ましくは、ヘキサンおよびジエチルエーテルが挙げられる。
本発明の方法において、上記エステル交換反応のための反応液には、水は添加されていない。あるいは水が混入している場合でも、通常は、上記の水と相分離する溶媒の存在により、混入した水は反応液中から分離されるため、酵素反応へ悪影響を及ぼすことはほとんどない。しかし、反応液中に混在する微量の水分が酵素反応に影響することがある。例えば、高温多湿の雰囲気条件で反応を行う場合は相分離しないほど極微量の水分が溶媒中に混在し、それが酵素反応に影響することがある。したがって好ましくは、上記水と相分離する溶媒は、予めモレキュラーシーブや活性炭などを用いて水分を除去されているとよい。
本明細書において、エステル交換反応の反応液中における、リン脂質に含まれるアシル基数に対するPUFAに含まれるアシル基(または脂肪酸)数の比を、「アシル基比」という。グリセロール骨格の1位と2位にアシル基が結合したリン脂質1分子のアシル基数は2であり、PUFAが遊離脂肪酸形態の場合、脂肪酸数は1、PUFAがトリグリセリド形態の場合、アシル基数は3である。すなわち、原料リン脂質とPUFAを共に1分子ずつ反応させた場合において、PUFAが遊離脂肪酸形態またはエステル形態の場合は、アシル基比=1/2であり、PUFAがトリグリセリド形態の場合は、アシル基比=3/2である。
本発明の方法において、上記エステル交換反応における好ましいアシル基比は、原料のリン脂質の種類、PUFAの種類、形態(遊離脂肪酸、エステル、トリグリセリド)によっても異なるが、1〜15程度、好ましくは3〜10程度である。
本発明の方法において、上記エステル交換反応における反応条件としては、用いる原料、溶媒、リパーゼの種類などによって好ましい条件を適宜設定することができるが、リパーゼの至適pHおよび至適温度を考慮して設定することが好ましい。しかしながら、上述したとおり、水の存在は酵素反応に影響を及ぼすため、水分の添加を要するpH調整は行わなくてもよい。
例えば、本発明の反応は、原料のリン脂質とPUFA、あるいは上述したそれらの供給源をフラスコや反応槽等に入れ、そこに水と相分離する溶媒を投入して原料を溶解させる。その後、ランダム型リパーゼを投入して、反応液の温度およびpHを適宜調整し、1〜100時間、好ましくは3〜48時間反応させる。反応終了後はメタノール等の酵素失活剤を加えてリパーゼを失活させた後、ろ別し、次いで溶媒を除去することにより反応物を得る。得られた反応物から、さらに各種溶媒による分液手段、蒸留手段、クロマトグラム手段等を用いてリン脂質画分を精製してもよい。
本発明の製造方法で得られた生成物は、PUFA−リン脂質を豊富に含み、特に、有用な2位結合型PUFA−リン脂質を多く含む。具体的には、本発明の製造方法で得られる生成物は、グリセロール骨格の2位に結合した構成脂肪酸の50%(脂肪酸組成比%、本段落において以下同じ)以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上がPUFAであるリン脂質である。また好ましくは、本発明の製造方法で得られる生成物は、グリセロール骨格の2位に結合した構成脂肪酸の40%以上、好ましくは50%以上がEPAまたはDHAあるリン脂質である。本発明により製造されたPUFA−リン脂質は、医薬品の薬理成分として利用することもでき、または各種生理活性のための有効成分として、各種の健康食品や飼料等に配合することもできる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(参考例1:脂肪酸組成分析)
原料のリン脂質、PUFA、および製造したリン脂質の脂肪酸組成は、構成脂肪酸を予めメチルエステル化した後、ガスクロマトグラフィーにかけて定量分析した。
メチルエステル化では、各測定試料を20倍量の0.5M水酸化カリウム−メタノール溶液に懸濁し、100℃、5分間加熱した。ここに塩酸:メタノール=4:1(v/v)を0.5M水酸化カリウム−メタノール溶液の約半量加え、100℃で15分間加熱した。加熱後、イオン交換水とヘキサンをそれぞれ測定試料の40倍量加え、撹拌後、2層に分離するまで静置した。水層を除去し、さらに数回油層をイオン交換水で洗浄し、最後に無水硫酸ナトリウムで油層を脱水した。
油層に含まれる各種脂肪酸のメチルエステルを、下記条件でガスクロマトグラフィーに供し、脂肪酸組成を分析した。
(ガスクロマトグラフィー条件)
カラム:HR-SS-10結合型キャピラリ―カラム
カラム温度(DHAの場合):125℃→170℃→186℃→200℃
キャリアーガス:ヘリウム
注入口温度:250℃
検出器:水素炎イオン検出器(FID)
(参考例2:位置特異的脂肪酸組成分析)
生成したリン脂質の2位に結合する脂肪酸を同定した。ホスホリパーゼA2を用いて、生成したリン脂質の2位の脂肪酸を選択的に加水分解し、次いで得られた脂肪酸を参考例1記載の手順でガスクロマトグラフィーに供することで、リン脂質の2位に結合する脂肪酸を同定した。さらに、加水分解後の残りのリゾリン脂質の1位の脂肪酸の組成を、参考例1記載の脂肪酸組成分析の手順に従って分析した。なお、ホスホリパーゼA2の加水分解の効率に起因して、脂肪酸組成分析の手法で得られる分析値と、ホスホリパーゼA2による加水分解後の分析値に若干の変動があった。
(実施例1)
原料リン脂質として大豆リン脂質(ベイシスLS−60:日清オイリオ製;アシル基の脂肪酸組成:エイコサペンタエン酸(EPA)0%、ヘンイコサペンタエン酸(HPA)0%、ドコサペンタエン酸(DPA)0%、ドコサヘキサエン酸(DHA)0%,パルミチン酸22.8%、ステアリン酸2.9%、オレイン酸10.8%、リノール酸57.3%、リノレン酸6.1%)を用いた。
原料PUFAとして、DHA高含有油(トリグリセリド形態、PUFA組成:EPA純度11.7%、DHA純度33.3%)、DHAエチルエステル(エステル形態、PUFA組成:EPA純度13.8%、HPA純度7.6%、DPA純度10.1%、DHA純度68.5%)、または遊離DHA(遊離脂肪酸形態、PUFA組成:EPA純度11.7%、HPA純度8.1%、DPA純度9.2%、DHA純度71.0%)を用いた。
リパーゼとしては、ランダム型リパーゼであるリパーゼOF(名糖産業製;キャンディダ・シリンドラセ由来、360000U/g、至適pH6〜7、至適温度45〜50℃)を用いた。
大豆リン脂質と、PUFAとしてDHA高含有油、DHAエチルエステルまたはDHAを用いて、エステル交換反応を行った。すなわち、フラスコ中に、大豆リン脂質2.0ミリモルと各形態のPUFAのいずれかをアシル基比3になる量で添加し、次にヘキサン13mLとリパーゼOF 2.2×105Uを加え、得られた溶液を恒温槽で37℃に維持しながら、マグネチックスターラーを用いて500rpmで攪拌しつつ6時間反応させた。反応終了後、反応液にクロロホルム:メタノール=2:1(v/v)を15mL加え、リパーゼをろ別した。減圧下で溶媒を除去し、原料と生成物の混合物を得た。これを薄層クロマトグラフィーで展開し、リン脂質画分を分取した。
(実施例2)
アシル基比を5にした以外は、実施例1と同様の手順で反応を行い、リン脂質画分を分取した。
(実施例3)
アシル基比を7にした以外は、実施例1と同様の手順で反応を行い、リン脂質画分を分取した。
(実施例4)
大豆リン脂質としてアセトンにより脱水処理したものを用いた以外は、実施例2と同様にして反応を行い、リン脂質画分を分取した。なお、大豆リン脂質の脱水処理は次のように行った:大豆リン脂質20gを少量のヘキサンに分散し、200mLの冷アセトンを加えて0.5℃の氷浴で1時間静置した後、溶媒を除去し、真空乾燥機で2日間乾燥した。
(試験例1)
参考例1に記載の手順で、実施例1〜4で製造したリン脂質の脂肪酸組成分析を行い、DHAの組成比を算出した。算出した組成比を、リン脂質へのDHA導入率(PUFA(DHA)−リン脂質生成率)とした。実施例1〜4のリン脂質におけるDHA導入率を表1に示す。反応時間6時間では、PUFA原料としてDHA高含有油とDHAエチルエステルを用いた場合、アシル基比が増加するほどDHA導入率も増加することがわかった。逆に、PUFA原料としてDHAを用いた場合、アシル基比が増加するほどDHA導入率は低下した。また、脱水処理をしたリン脂質を用いると、導入率が向上した。
Figure 2016053156
(実施例5〜13)
リン脂質として脱水処理大豆リン脂質を、PUFAとしてDHAエチルエステルを用い、アシル基比を6、7または8、反応時間を24時間、48時間または72時間とした以外は、実施例1と同様にして反応を行い、リン脂質画分を分取した。
(試験例2)
参考例1に記載の手順で、実施例5〜13で製造したリン脂質の脂肪酸組成分析を行い、EPA、HPA、DPA、DHAそれぞれのPUFAについて組成比を算出した。算出した組成比を、リン脂質への各PUFAの導入率(各PUFA−リン脂質生成率)とした。結果を表2に示す。PUFAとしてエチルエステルを用いた場合、反応時間の延長とともに、脂肪酸導入率が向上した。一方、アシル基比については、アシル基比6に比べて7では脂肪酸導入率が向上したが、アシル基比7と8では導入率に大きな差はなかった。したがって、PUFAとしてエチルエステルを用い、アシル基比を5〜7、好ましくは6〜7とし、反応時間を24時間以上、好ましくは48時間以上とすることで、非常に効率よく多くのPUFAをリン脂質に導入できることがわかった。
Figure 2016053156
(試験例3)
参考例2に記載の手順に従って、実施例10で得られたリン脂質の2位に結合している脂肪酸と1位に結合している脂肪酸の組成を調べた。参考として、天然のPUFA−リン脂質源として知られるオキアミ油リン脂質の脂肪酸組成を同様の手順で調べた。結果を表3に示す。実施例10のリン脂質は、2位結合型PUFA−リン脂質を多く含み、かつ天然に存在するオキアミ油リン脂質に比べても2位選択的かつ高含有量でPUFAを有するものであった。この結果から、本発明の製造方法によれば、リン脂質の2位に対して極めて選択的に、PUFAを導入することができることがわかった。
Figure 2016053156
(比較例1)
実施例1と同様の手順で、ただし、リパーゼとしてランダム型リパーゼに代えて、リン脂質の2位の脂肪酸を選択的に加水分解するリパーゼであるホスホリパーゼA2(ナガセケムテックス(株)製;110810U/g、至適pH9、至適温度50℃)を用いて、エステル交換反応を行った。
大豆リン脂質には、実施例4記載の方法により調製したアセトンによる脱水処理を施した大豆リン脂質を用いた。原料PUFAとしては、PUFA高含有油(トリグリセリド形態、PUFA組成:EPA純度22.9%、DHA純度14.1%)、PUFAエチルエステル(エステル形態、PUFA組成:EPA純度8.9%、HPA純度7.4%、DPA純度11.3%、DHA純度72.4%)、または遊離PUFA(遊離脂肪酸形態、PUFA組成:EPA純度10.2%、HPA純度7.6%、DPA純度11.7%、DHA純度70.4%)のいずれかをアシル基比6になる量で添加した。
エステル交換反応を6時間または24時間行い、リン脂質画分を分取した。次いで、参考例1の方法に従い、製造したリン脂質の脂肪酸組成分析を行い、EPA、HPA、DPA、DHAのそれぞれについて組成比を算出した。算出した組成比の合計を、リン脂質へのPUFA導入率(PUFA−リン脂質生成率)とした。リン脂質中のPUFAの組成比とPUFA導入率を表4に示す。リパーゼとしてホスホリパーゼA2を用いた場合は、ランダム型のリパーゼを使用した場合に比してリン脂質へのPUFA導入率は低かった。またホスホリパーゼA2を用いた場合、反応時間を24時間まで延長してもPUFA導入率は向上しなかった。
Figure 2016053156

Claims (11)

  1. 水と相分離する溶媒中で、ランダム型リパーゼの存在下にリン脂質と高度不飽和脂肪酸とを反応させることを含む、高度不飽和脂肪酸結合型リン脂質の製造方法。
  2. 上記高度不飽和脂肪酸が、遊離脂肪酸、アルキルエステルもしくはグリセリドの形態であるか、またはそれらの混合物である、請求項1記載の方法。
  3. 前記高度不飽和脂肪酸が、炭素数16以上の高度不飽和脂肪酸を遊離脂肪酸換算で50質量%以上含む組成物である、請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記リン脂質が脱水処理されたリン脂質である、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  5. 前記反応におけるアシル基比が1〜15である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
  6. 前記反応の反応時間が1〜100時間である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  7. 前記水と相分離する溶媒がヘキサンまたはジエチルエーテルである、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
  8. 前記ランダム型リパーゼがキャンディダ属に属する菌類由来のランダム型リパーゼである、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
  9. 前記キャンディダ属に属する菌類がキャンディダ・ルゴサまたはキャンディダ・シリンドラセである、請求項8記載の方法。
  10. 前記反応で得られた生成物が、グリセロール骨格の2位に結合した構成脂肪酸の50%が高度不飽和脂肪酸であるリン脂質である、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
  11. グリセロール骨格の2位に結合した構成脂肪酸の50%が高度不飽和脂肪酸であるリン脂質。
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