以下、各実施形態について図面を用いて説明するが、その前に、各実施形態に関連する構成や動作などの概要を述べる。
図12は各実施形態に関連する電力変換装置の構成を示す模式図である。図示するように、単相の交流電源に直列にHブリッジのインバータ、トランス、インダクタ及びLC高調波フィルタが接続される。トランスの2次側は2巻線が出ており、整流回路を介して平滑コンデンサCoutと負荷に接続されている。Hブリッジの平滑コンデンサCDCには交流電源電圧VACを昇圧した電圧が充電される。Hブリッジはスイッチングにより交流の出力電圧Vabを出力する。LC高調波フィルタ(Lf,Cf)は、Hブリッジで発生する高周波の第1インダクタ電流IL1が交流電源へ流れないように設置されたフィルタ回路である。第1インダクタL1は、LC高調波フィルタのキャパシタCfとの共振によりHブリッジのソフトスイッチングを行うために設けられている。
次に、このような電力変換装置のAC−DC変換原理について述べる。図12に示す電力変換装置は、1つのHブリッジインバータで交流電源電流を制御するPFC動作とトランスの2次側への電力伝送の制御を実現する。図13(a)乃至図13(f)は、交流電源電圧、交流電源電流とインバータが出力する電圧・電流波形を示している。インバータは交流電源に同期した出力電圧Vabを出力し、1次側回路には、トランス1次側の電流IL1が流れる。電流IL1は、交流電源電流IACにインバータのキャリア周波数成分が重畳している。2次側の電流IT2は、励磁電流Imと巻き数n2,n1を用いて(1)〜(3)式で表せる。巻数n2のトランス2次巻線は2つが直列に接続され、電流IT2が整流されるため、IT2は常に正側のみに流れる。キャリア周波数成分のリプルを含んだ電流IT2はコンデンサCoutで平滑される。コンデンサCoutは、一定の出力電圧Voutを出力する。
図14(a)に上記電力変換装置の交流電源周波数(50Hz)における等価回路を示し、図14(b)に上記電力変換装置のキャリア周波数(数10kHz〜数100kHz)における等価回路を示す。
図14(a)において、トランス2次側の負荷は可変インピーダンスZとして置き換えている。Hブリッジインバータは、50Hzの正弦波状に変調制御され、インバータ出力電圧Vabと交流電源電圧VACとの差分電圧と負荷インピーダンスZによって交流電源電流IACが流れる。この交流電源電流IACが交流電源電圧VACと同位相になるように制御することでPFC動作が実現される。PFC、すなわち、有効電流のみを流すように制御することで交流電源電圧VACからHブリッジキャパシタCDCへの充電も実現される。
一方、図14(b)は、キャリア周波数成分の等価回路であり、高周波の第1インダクタ電流IL1は高調波フィルタのキャパシタCfを通り、トランスで2次側へ伝達される。インバータが出力する電圧Vabは、従来のLLCコンバータと異なり、正弦波変調されているため、交流電源電圧のゼロクロス付近とボトム(ピーク)でオン比率が異なる。ゼロクロス付近では50%パルスとなり、ボトム(ピーク)では太く(細く)なる。トランスで伝達される電力は印加電圧の高調波実効値と考えられるため、同じキャリア周波数、同じ直流電圧VDCの場合、ゼロクロス付近では高調波最大(電力伝送最大)、ボトム(ピーク)では高調波最小(電力伝送最小)となる。
次に、上記電力変換装置のゼロ・ボルト・スイッチング(ZVS)動作原理について説明する。図15及び図16にインバータのキャリア周期における各部の電圧・電流波形を示す。図15(a)乃至図15(f)は交流電源電圧VACのゼロクロス点における波形を示し、図16(a)乃至図16(f)は交流電源電圧VACのボトム点における波形を示す。図中の任意の時間tにおける第1インダクタ電流IL1は(4)式により表される。
VLfは(5)式で表される。LC高調波フィルタが交流電源への高調波の流出を十分防止できるようにLf,Cfのカットオフ周波数を設計した場合、dIAC がdIL1に比べ非常に小さくなるため、VLf ≒0として簡略化できる。図15(e)及び図16(e)に示すVL1 は、簡略化して示している。
ここで、HブリッジインバータのZVS動作を述べる。いま、Vab >0、すなわち、b相ハイ側スイッチS3 がオンしている状況では、Hブリッジ出力電流である第1インダクタ電流IL1<0 の場合、S3 がオフすると、IL1はデッドタイム期間中にS3の寄生ダイオードを流れる。この後、ロウ側スイッチS4 がオンすると、ZVSを達成できずにS3 寄生ダイオードの逆回復時間中に大きなリカバリ損失が発生してしまう。これに対し、Vab >0 印加中にIL1 が正まで増加すればS3 オフ後のデッドタイム期間中にS4 を流れるため、その後のS4 オン時にZVSが達成できる。図15及び図16に照らし合わせるとVab >0 は時間t0 からt2 であり、この期間にIL1 が負にならなければ良い。すなわち(4)式の2段目においてt=t2 時のIL1(t2)が正となる(6)式が条件の1つとなる。同様にVab <0 印加中を考えると(7)式が条件となり、(6),(7)式が同時に成立するとき、ZVSが常に成立する。
(6),(7)式は従来のLLCコンバータと比較すると、交流電源電圧VAC と時間t0 〜t4 を規定するHブリッジインバータの変調率が常に0(=パルス幅50%)ではない点が異なる。
次に、上記電力変換装置の制御構成について図17を用いて述べる。具体的には、交流電源電流の制御部と直流の出力電圧を制御する部分について説明する。
図17中、破線Control for PFC で囲った部分が交流電源電流IACの位相を交流電源電圧VACに一致させるPFC動作を実現する制御部である。VDC_refは、Hブリッジのキャパシタ電圧の指令値であり、検出したキャパシタ電圧VDC と比較し、PI演算により交流電源電流の振幅指令値IAC_amp_ref を生成する。また、交流電源電圧VACからPLL(phase-locked loop)により交流電源電圧位相ωtを検出し、IAC_amp_ref とsin ωtを乗じ、交流電源電流指令値IAC_ref を演算する。IAC_ref は検出した交流電源電流IAC と比較され、PI演算によりHブリッジ出力電圧指令値Vab_refを生成する。Hブリッジ出力電圧指令値Vab_refは、Hブリッジキャパシタ電圧VDC で割ることで変調指令値Dとなる。変調指令値Dは、三角波キャリアと比較され、PWMのパルスを生成する。A相とB相のパルスはハイとロウが逆の同じ信号である。
キャパシタ電圧VDC を一定指令値となるように交流電源電圧VACと同位相の交流電源電流指令値IAC_refを生成することで有効電流を制御し、PFC動作が実現される。
一方、図17中、破線Control for DC-DC で囲った部分が直流の出力電圧Voutを一定指令値に制御する制御部となる。トランス2次側の出力電圧Vout を検出し、出力電圧指令値Vout_ref と比較しPI演算する。PI演算の結果はキャリア周波数fcとなる。
(8)式は、図14(b)に示した高周波成分等価回路におけるインバータ出力電圧Vab に対するVout の伝達関数G(s)である。
出力負荷の抵抗は巻数n1,n2 を乗じて1次側換算値としている。
式(8)の周波数−ゲイン特性を図18に示す。各定数は、Lf =1.5mH,Cf =0.45mF,L1 =200uH,Lm =200uH,n1/n2 =5.5,R=5.76Wとしている。(8)式および図18では50Hzの交流電源電圧VACの変動が考慮されないため、交流電源電圧VACのゼロクロス時の特性となっている点には注意が必要である。図18に示すLC共振特性において、上記電力変換装置では共振点より右側(高周波側)のみを用いる。このため、想定する最大出力Pmaxで最小周波数fc_min となるように各部の定数を選定する必要がある。そして、負荷電流の大小によってキャリア周波数fc を調整し、出力電圧Voutを一定に保つ。なお、トランス2次側へ現れる電力量は、Hブリッジインバータの出力する高調波の大きさVDC、キャリア周波数fc に基づく(8)式のゲイン特性、そして高調波実効割合α で決まる。高調波実効割合α は、インバータの変調率に関係し、パルス幅が50%となる変調率0の点で最大となり、変調率が1あるいは−1に近づくほど減少する。交流電源電流IACの制御により変調率は ω=50Hzで変動するため、前述の高調波実効割合α は2倍周波数の2ω=100Hzで変動する。さらに、キャパシタ電圧VDC は交流電源電流に実効値IACrmsの正弦波有効電流を流すとき、平均値VDC_avg を中心に2ωのリプルを持つ。
すなわち、キャリア周波数fc を一定とした場合、出力電圧Vout は、キャパシタ電圧VDCおよび高調波実効割合α の2つの影響を受け、2ωのリプルが発生する。出力電圧制御部は、これら2ωのリプルを抑制するように周波数変調することで一定の出力電圧Vout を出力する。
次に、上記電力変換装置の実験例の構成について述べる。
図19に実験条件を示し、図20にキャパシタ、インダクタとトランスの定数を示す。定数は、第1実験例と第2実験例との2種類について示す。入力は単相100Vrms とし、出力は最大100Wとした。動作スイッチング周波数は最小25kHz、最大100kHzとしている。Hブリッジの各スイッチは、RON =50mWのSiC−MOSFETを用い、2次側の整流素子は、Vf =0.4V程度のSBD(Schottky Barrier Diode)ダイオードNTSJ30U100CTGを用いた。実験例はZVS条件を確立する前であったため、SiCを用いたが、実際には、大きなQrr を持つ耐圧600V程度のSuper Junction−MOSFETを用いることが可能である。同様にインダクタ・トランスについても50mmの大きなコアを用いている。
次に、PFC動作及び出力電圧制御の特性について述べる。図21に第1実験例の定数を用いた定常時の上記電力変換装置の各部の電圧・電流波形を示す。交流電源電圧VAC に対し、交流電源電流IAC の位相が一致しており歪みも少ないことがわかる。また出力電圧Vout は指令値24Vに制御されているが、1Vp-p 程度2ωのリプルが残っていることも確認できる。これは出力電圧のキャリア周波数制御のゲインが低いためと考えられる。
次に、ZVS特性について述べる。図22及び図23に、第1実験例の定数を用いたキャリア周期におけるHブリッジ出力電圧Vab,トランス励磁電圧Vm ,交流電源電流VAC,第1インダクタ電流IL1 の波形を示す。
図22は図15で説明した交流電源電圧・電流のゼロクロス時を示し、図23は図16で説明したボトム付近を示している。ゼロクロス時は、第1インダクタ電流IL1 が正負均等に流れ、一般的なLLCコンバータと同じZVS動作になっていることがわかる。
一方、交流電源電圧ボトム付近では、負側への電流リプルが大きくなり、正側は減少している。しかし、Hブリッジ出力電圧Vab が正電圧を出力している間にIL1 >0 となっており、(6)式で述べたZVS条件を満たしている。すなわち、Hブリッジ出力電圧Vab の正電圧印加中にIL1 が負から正に変化し、負電圧印加中に正から負に変化できており、いずれのスイッチングでもブリッジを構成する4素子がZVS動作している。
次に、効率と損失分析について述べる。
図24は、図19及び図20の実験パラメータ時の上記電力変換装置の出力電力に対する効率及び周波数の特性を示している。第1及び第2実験例の結果を比較すると、効率は、第2実験例の方が最高92%と高い。
また動作キャリア周波数も上がっている。パワーデバイスはZVS動作であるため、キャリア周波数の違いは主に磁性部品の損失に影響していると推測される。
図25は、実験例における出力100W時の上記電力変換装置の損失の内訳を示している。各損失は各部の電圧・電流を測定し、パワーデバイスのオン抵抗仕様値、コアの磁束密度に対する鉄損仕様、表皮・近接効果を含む高周波抵抗の測定値から算出している。1段での変換であるため、1次側のHブリッジ(パワーデバイス)の損失割合は非常に小さい。磁性部品ではインダクタの損失が大きく異なる。主要要因は鉄損の違いである。インダクタの磁束密度は式(10)で表されるが、第1実験例は第2実験例よりもインダクタンスL1 が高い。また第1インダクタ電流IL1 の実効値は(11)式で示されるように励磁電流Im が同じ場合、出力Pout,出力電圧Vout,とトランス巻数比n1 /n2 で決まるため、同程度となる。さらに第1及び第2実験例では、コア断面積Sは、ほぼ同等であるが、L1 のターン数nL1 は第1実験例のコアの方が大きい。
この結果、第1実験例の磁束密度Bが第2実験例の磁束密度Bよりも高くなり、両実験例のコア体積が同等程度であるため、第1実験例の鉄損が増加したと考えられる。
一方、2次側の整流素子であるSBDの損失は4%超と大きな割合を占めており、整流器を低圧MOSFETに置き換え、同期整流化し、磁性部品を最適設計することで96%程度まで効率を上げられると考えられる。
まとめると、上記電力変換装置によれば、従来多段構成で変換していたAC−DC変換を1段で行うと共に、全てのスイッチをZVS(Zero Volt Switching)動作することができる。ここで、上記電力変換装置は、PFC制御とDC−DC変換を1段で行うが、各々の制御の分離方式については上述した通りである。そして、実験例により1段でのPFCを備えた電力変換装置によるAC−DC変換動作におけるZVS動作を実証した。変換効率は最大92%が得られることを確認し、損失分析の結果、2次側整流素子の損失が大半を占めていることがわかった。
これについては、2次側を同期整流化することに加え、磁性部品と動作キャリア周波数の最適化を図ることにより、変換効率の向上を期待することができる。
以上が各実施形態に関連する電力変換装置の構成や動作などの概要である。続いて、各実施形態に係る電力変換装置について具体的に説明する。
<第1の実施形態>
図1は第1の実施形態に係る電力変換装置及びその周辺構成を示す模式図である。電力変換装置100は、交流電源V1から得られる交流電源電圧VACを直流電圧Voutに変換して負荷5に電力を供給する主回路部と、主回路部に接続された制御部200とを備えている。
主回路部は、ローパスフィルタ(Lf,Cf)、第1インダクタL1、Hブリッジ(S1〜S4、D1〜D4、CDC)、トランス(Tn1,Tn2)、ダイオードD5,D6、キャパシタCout、入力電圧検出部1、電源電流検出部2、キャパシタ電圧検出部3及び出力電圧検出部4を備えている。
ローパスフィルタは、交流電源V1に直列に接続された(フィルタ用)インダクタLfと、当該インダクタLfと交流電源V1との間に直列に接続された(フィルタ用)キャパシタCfとを備えている。すなわち、インダクタLf及びキャパシタCfは、交流電源V1に直列に接続されて閉ループを形成する。なお、「フィルタ用」の語は、請求項内でトランス1次側の第1インダクタL1やHブリッジ内のキャパシタCDCと区別するための便宜的な修飾語であり、省略又は他の修飾語(例、「第0」又は「第1」など)に変更してもよい。
第1インダクタL1は、一端がインダクタLf及びキャパシタCfの接続点に接続され、他端がHブリッジの接続点M1に接続されている。
トランスは、交流電源V1とキャパシタCfとの接続点に一端が接続されたトランス1次巻線Tn1と、トランス1次巻線Tn1に電磁的に結合したトランス2次巻線Tn2とを有する。
Hブリッジは、第1インダクタL1の他端を介して第1スイッチS1と第2スイッチS2とを直列に接続するとともに、トランス1次巻線Tn1の他端を介して第3スイッチS3と第4スイッチS4とを直列に接続し、第1スイッチS1と第3スイッチS3及び第2スイッチS2と第4スイッチS4をそれぞれ接続して閉ループを形成し、第3スイッチS3と第4スイッチS4の両端に(平滑用)キャパシタCDCを接続してなる。なお、「平滑用」の語は、請求項内でローパスフィルタのキャパシタCfと区別するための便宜的な修飾語であり、省略又は他の修飾語(例、「第2」など)に変更してもよい。
詳しくは、Hブリッジは、互いに直列に接続された第1及び第2スイッチS1,S2と、キャパシタCDCと、互いに直接に接続された第3及び第4スイッチS3,S4とが互いに並列に接続されている。
各スイッチS1〜S4は、自己消弧型のスイッチング素子であり、ここではN型電界効果トランジスタ(MOSFET)を用いている。また、各スイッチS1〜S4と逆並列に接続されるダイオードD1〜D4は、MOSFET等のボディーダイオードで代用してもよい。各スイッチS1〜S4のゲート端子は、制御部200に接続されている。
第1スイッチS1のソース端子は接続点M1を介して第2スイッチS2のドレイン端子に接続される。
第3スイッチS3のソース端子は接続点M2を介して第4スイッチS4のドレイン端子に接続される。
第1スイッチS1のドレイン端子は、キャパシタCDCの一端と、第3スイッチS3のドレイン端子とに接続される。
第2スイッチS2のソース端子は、キャパシタCDCの他端と、第4スイッチS4のソース端子とに接続される。
このようなHブリッジは、キャパシタCDCに充電されている電圧VDCを元に各スイッチS1〜S4をスイッチングすることで、キャパシタ電圧VDCを上限とする任意の電圧(Vab)を出力できる。スイッチングにより電圧を出力する方法としては、公知であるPWM(Pulse Width Modulation)やPDM(Pulse Density Modulation)等が適宜、使用可能となっている。また、PWM、PDMの生成法は、キャリア比較やヒステリシスコンパレータ等、種々の公知の手法が適用可能である。なお、HブリッジのキャパシタCDCへの充電方法及びその電圧制御方法については後述するが、交流電源電圧VACを利用してキャパシタCDCへの充電および制御が可能である。
このようなHブリッジの出力は、直列接続された第1及び第2スイッチS1, S2の接続点M1と、直列接続された第3及び第4スイッチS3, S4の接続点M2との間の電圧Vabとして得られる。以下、この電圧VabをHブリッジ出力電圧Vabともいう。
Hブリッジの接続点M2と、キャパシタCf及び交流電源V1の接続点との間には、トランスの1次巻線Tn1が直列に接続される。
トランスの2次巻線Tn2の両端には、それぞれ第5ダイオードD5及び第6ダイオードD6の各アノード端子が接続される。第5ダイオードD5及び第6ダイオードD6の各カソード端子は互いに接続される。各カソード端子の接続点と、トランスの2次巻線Tn2の中点との間には、キャパシタCoutが接続される。これら各ダイオードD5,D6及びキャパシタCoutは整流平滑回路(第1整流手段)を構成する。キャパシタCoutの両端には、負荷5が並列に接続される。
入力電圧検出部1は、交流電源V1の両端に並列接続され、交流電源V1から主回路部に入力される交流電源電圧VACを検出し、VACの瞬時値を示すVAC検出値を制御部200に出力する。入力電圧検出部1は、交流電源V1の交流電源電圧VACを検出する電源電圧検出手段を構成している。
電源電流検出部2は、交流電源V1とローパスフィルタのインダクタLfとの間に直列接続され、交流電源V1に流す交流電源電流IACを検出し、IACの瞬時値を示すIAC検出値を制御部200に出力する。電源電流検出部2は、交流電源V1に流す交流電源電流IACを検出する電源電流検出手段を構成している。
キャパシタ電圧検出部3は、HブリッジのキャパシタCDCの両端に並列接続され、キャパシタCDCの電圧VDCを検出し、VDCの瞬時値を示すVDC検出値を制御部200に出力する。キャパシタ電圧検出部3は、(平滑用)キャパシタCDCのキャパシタ電圧VDCを検出するキャパシタ電圧検出手段を構成している。
出力電圧検出部4は、負荷5側のキャパシタCoutの両端に並列接続され、キャパシタCoutの出力電圧Voutを検出し、Voutの瞬時値を示すVout検出値を制御部200に出力する。出力電圧検出部4は、第1整流手段(D5,D6,Coutからなる整流平滑回路))から負荷5に出力される出力電圧Voutを検出する出力電圧検出手段を構成している。
制御部200は、交流電源電圧VACの検出値、交流電源電流IACの検出値、及びキャパシタ電圧VDCの検出値に基づいて、交流電源電圧VACに同期した交流電源電流IACを流すように、且つ出力電圧Voutの検出値に基づいて、出力電圧Voutに対する出力電圧指令値Vout_refとの偏差Vout_difを解消するように、第1スイッチS1と第4スイッチS4の組と、第2スイッチS2と第3スイッチS3の組とを交互に開閉するためのスイッチング信号S1_PWM〜S4_PWMを、第1スイッチS1乃至第4スイッチS4に供給する制御手段を構成している。
具体的には、制御部200は、各検出部1〜4から受けた検出値に基づいて、例えば図17の各破線(Control for PFC, Control for DC-DC)に囲まれた部分に示す機能により、主回路部を制御するためのスイッチング信号S1_PWM〜S4_PWMを生成する。スイッチング信号S1_PWM〜S4_PWMは、制御部200から各スイッチS1〜S4のゲート端子に個別に出力される。第1及び第4スイッチS1,S4は、ゲート端子にスイッチング信号S1_PWM,S4_PWMが供給されている間、導通する。第2及び第3スイッチS2,S3は、ゲート端子にスイッチング信号S2_PWM,S3_PWMが供給されている間、導通する。
ここで、制御部200は、図2に示すように、VDC_ref設定部201、減算部202、電圧制御器(AVR)203、交流指令値計算部204、減算部205、電流制御器(ACR)206、除算部207及びスイッチング信号生成部208を備えている。
VDC_ref設定部201は、予め設定されたキャパシタCDCの電圧指令値VDC_refを減算部202に出力する。
減算部202は、キャパシタ電圧検出部3から受けたVDC検出値から、VDC_ref設定部201から受けた電圧指令値VDC_refを減算し、得られた偏差VDC_dif(=VDC−VDC_ref)を電圧制御器(AVR)203に出力する。
電圧制御器(AVR)203は、減算部202から受けた偏差VDC_difに基づいて、図17に示す如きPI演算により、交流電源電流IACの振幅指令値IAC_amp_refを生成し、振幅指令値IAC_amp_refを交流指令値計算部204に出力する。
交流指令値計算部204は、電圧制御器(AVR)203から受けた振幅指令値IAC_amp_refと、入力電圧検出部1から受けたVAC検出値とに基づいて、インダクタLfに関する電流指令値IAC_refを生成する。
例えば図3に示すように、交流指令値計算部204は、VAC検出値からPLL211により、VACの電源電圧位相ωtを検出し、正弦波生成部212により、電源電圧位相ωtと同位相の正弦波sin ωtを生成する。しかる後、交流指令値計算部204は、乗算部213により、振幅指令値IAC_amp_refと正弦波sin ωtを乗じて、、VACと同位相の電流指令値IAC_refを計算する。ここで、例えば図4に示すように、定数乗算部210により、VAC検出値(例、振幅200V)に定数K(例、1/200)を乗じて、得られたK・VAC検出値(例、振幅1V)をPLL211に送出するようにしてもよい。
いずれにしても、交流指令値計算部204は、図5に示すように、振幅指令値IAC_amp_refに、VACと同位相の正弦波sin ωtを乗じることにより、VACと同位相の電流指令値IAC_refを計算する。しかる後、交流指令値計算部204は、この電流指令値IAC_refを減算部205に出力する。
減算部205は、交流指令値計算部204から受けた電流指令値IAC_refから、電源電流検出部2から受けたIAC検出値を減算し、得られた偏差IAC_dif(=IAC_ref−IAC)を電流制御器(ACR)206に出力する。
電流制御器(ACR)206は、減算部205から受けた偏差IAC_difに基づいて、図17に示す如きPI演算により、Hブリッジ出力電圧指令値Vab_refを生成し、Hブリッジ出力電圧指令値Vab_refを除算部207に出力する。
除算部207は、電流制御器(ACR)206から受けたHブリッジ出力電圧指令値Vab_refを、キャパシタ電圧検出部3から受けたVDC検出値で除算し、得られた変調指令値D(=Vab_ref/VDC)をスイッチング信号生成部208に出力する。なお、「変調指令値D」は、「電圧比率D」と呼んでもよい。「除算部」は「比率計算部」と呼んでもよい。
スイッチング信号生成部208は、除算部207から受けた変調指令値Dと、出力電圧検出部4から受けたVout検出値とに基づいて、主回路部を制御するためのスイッチング信号S1_PWM〜S4_PWMを生成する。
ここで、スイッチング信号生成部208は、出力電圧Voutの検出値に基づいて出力電圧指令値Vout_refとの偏差Vout_difの大きさに基づいてスイッチング周波数を決定し、そのスイッチング周波数に応じたスイッチング信号S1_PWM〜S4_PWMを生成する信号生成手段を構成している。なお、スイッチング周波数は、偏差Vout_difを解消するように決定される。
この信号生成手段は、出力電圧Voutの検出値に基づいて、出力電圧指令値Vout_refとの偏差Vout_difの大きさに基づいてキャリア周波数fcを計算する周波数計算手段と、キャリア周波数fcを有するキャリア信号Scarを生成するキャリア生成手段と、キャリア信号Scarに基づいて、スイッチング信号S1_PWM〜S4_PWMを生成する第1生成手段とを備えている。
具体的には、スイッチング信号生成部208は、例えば図17の破線(Control for DC-DC)に囲まれた部分に示す機能により、スイッチング信号S1_PWM〜S4_PWMを生成する。例えば、スイッチング信号生成部208は、予め設定された出力電圧指令値Vout_ref をVout検出値から減算し、得られた偏差Vout_dif(=Vout−Vout_ref)に基づいて、図17に示す如きPI演算により、キャリア周波数fcを得る。なお、キャリア周波数fcは、偏差Vout_difを解消するように決定される。また、キャリア周波数fcの値は、スイッチング周波数の値に対応する。そのため、キャリア周波数fcを決定することは、スイッチング周波数を決定することに等しい。
また、スイッチング信号生成部208は、得られたキャリア周波数fcをもつ三角波キャリアのキャリア信号Scarを生成し、このキャリア信号Scarと変調指令値Dとを比較する。
比較結果がScar<Dのとき、スイッチング信号生成部208は、点弧用の「1」のスイッチング信号S1_PWM,S4_PWMと、消弧用の「0」のスイッチング信号S2_PWM,S3_PWMとを生成する。スイッチング信号S2_PWM,S3_PWMは、スイッチング信号S1_PWM又はS4_PWMの反転信号である。
比較結果がScar>Dのとき、スイッチング信号生成部208は、消弧用の「0」のスイッチング信号S1_PWM,S4_PWMと、点弧用の「1」のスイッチング信号S2_PWM,S3_PWMとを生成する。
スイッチング信号S1_PWM〜S4_PWMは、スイッチング信号生成部208から各スイッチS1〜S4のゲート端子に個別に出力される。
次に、以上のように構成された電力変換装置の動作について説明する。
回路構成は、図1に示した通り、交流電源V1、インダクタLf、第1インダクタL1、Hブリッジの接続点M1,M2、トランス1次巻線Tn1を直列接続した構成である。また、キャパシタCfが交流電源V1とインダクタLfに並列に接続される。インダクタLf及びキャパシタCfがローパスフィルタを構成する。
従って、図6に示すように、Hブリッジと交流電源V1とに直列接続されるインダクタLf、第1インダクタL1及びトランス1次巻線Tn1には、Hブリッジ出力電圧Vabと交流電源電圧VACとの差分が印加される。
このとき、Hブリッジから交流電源電圧VACを打ち消す方向に、交流電源電圧VAC相当の交流の出力電圧Vabを出力した場合について述べる。
Hブリッジ出力電圧Vabには、スイッチングによる高調波成分と、出力する電圧の50Hzや60Hzの低周波成分が含まれる。Hブリッジ出力電圧Vabの低周波成分は、交流電源V1と同一な50Hzや60Hzの周波数をもつが、各スイッチS1〜S4のスイッチング周波数はそれよりも十分高い数十〜数百キロHzの周波数を用いる。
直列接続されるインダクタLf、第1インダクタL1及びトランス1次巻線Tn1には、交流電源電圧VACとHブリッジ出力電圧Vabとの差分が印加される。但し、HブリッジとインダクタLfの間にはキャパシタCfが接続される。
インダクタLfに対しては、Hブリッジ出力電圧Vabの高周波成分がキャパシタCfにより減衰するため、Hブリッジ出力電圧Vabに含まれる50Hzや60Hzの低周波成分と交流電源電圧VACとの差分が印加される。なお、インダクタLfは、第1インダクタL1及びトランス1次巻線Tn1にあらわれる励磁インダクタンスよりも十倍以上の十分大きな値のインダクタンスとするため、低周波成分の大部分がインダクタLfに印加される。
インダクタLfに印加されるHブリッジ出力電圧Vabの低周波成分と交流電源電圧VACとの差分の大きさは、Hブリッジ出力電圧Vabを調整することで任意に操作可能である。そのためインダクタLfに流れる交流電源電流IAC、すなわち交流電源V1から電力変換装置100に流入する電流の大きさを、Hブリッジ出力電圧VAbの低周波成分を操作することで制御可能となる。
制御部200は、この特性を利用して主回路部に整流器およびPFC動作をさせるため、交流電源電圧VACに同期した交流電源電流IACを流すように、スイッチング信号S1_PWM〜S4_PWMを各スイッチS1〜S4に供給する。
一方、第1インダクタL1とトランス1次巻線Tn1にも同様に、交流電源電圧VACとHブリッジ出力電圧Vabの差分が印加される。但し、Hブリッジは交流電源電圧VACを打ち消す大きさの交流の出力電圧Vabを出力する。
このため、第1インダクタL1とトランス1次巻線Tn1には、Hブリッジ出力電圧Vabの高周波成分が印加される。トランス1次巻線Tn1に印加される高周波成分は、トランス2次巻線Tn2に励起電圧を生じさせる。この励起電圧はダイオードD5,D6及びキャパシタCoutによって整流及び平滑され、直流の出力電圧Voutとして負荷5に供給される。このように、電力変換装置100は、交流直流変換の電源装置として動作する。なお、「電力変換装置」は「電源装置」と呼んでもよい。
ここで、トランス2次巻線Tn2に生じる励起電圧は、トランス1次巻線Tn1に印加される高周波成分の大きさによって決まる。Hブリッジ出力電圧Vabの高周波成分は、トランス1次巻線Tn1と第1インダクタL1それぞれに印加される。このため、トランス1次巻線Tn1に印加される高調波成分は第1インダクタL1により分圧された電圧となる。
第1インダクタL1及びトランス1次巻線Tn1に印加される高周波成分は、Hブリッジのスイッチングにより生じる高周波電圧であるため、この高周波電圧の周波数は、各スイッチS1〜S4のスイッチング周波数によって変化する。
第1インダクタL1は、一定のインダクタンスを有しているため、印加される電圧の周波数によってインピーダンスが変化する特性をもつ。
制御部200は、この特性を利用し、スイッチング周波数の制御により、第1インダクタL1に印加される電圧VL1を加減してトランス1次巻線Tn1に印加される電圧を調整し、出力電圧指令値Vout_refとの偏差を解消するように出力電圧Voutを制御する。
まとめると、制御部200は、交流電源電圧VACの検出値、交流電源電流IACの検出値、及びキャパシタ電圧VDCの検出値に基づいて、交流電源電圧VACに同期した交流電源電流IACを流すように、且つ出力電圧Voutの検出値に基づいて、出力電圧Voutに対する出力電圧指令値Vout_refとの偏差Vout_difを解消するように、第1スイッチS1と第4スイッチS4の組と、第2スイッチS2と第3スイッチS3の組とを交互に開閉するためのスイッチング信号S1_PWM〜S4_PWMを、第1スイッチS1乃至第4スイッチS4に供給する。
これにより、制御部200は、交流電源電圧VACに同期した交流電源電流IACを流すように、整流器およびPFC動作を行うと共に、出力電圧指令値Vout_refとの偏差Vout_difを解消するように、出力電圧Voutを制御する。
ここで、HブリッジのキャパシタCDCへの充電及びその電圧制御方法について補足的に説明する。
起動時には、キャパシタCDCは全く充電されていない状態である。
この状態で電力変換装置100へ交流電源V1を接続すると、インダクタLf,L1等を介してHブリッジ出力に交流電源電圧VACが印加される。キャパシタ電圧VDCが全くない状態なので、印加される交流電源電圧VACにより各スイッチS1〜S4に並列に接続されるダイオードD1〜D4が点弧し、キャパシタCDCに対して各ダイオードD1〜D4が全波整流回路として動作する。
これにより、キャパシタCDCは、交流電源電圧VACのピーク値程度まで充電される。キャパシタCDCが交流電源電圧VACまで充電されると、Hブリッジは、交流電源電圧VAC相当の出力電圧Vabを出力可能となる。前述した通り、Hブリッジ出力電圧Vabを操作してインダクタLfに流れる交流電源電流IACを制御可能であるため、交流電源電圧VACと同位相になるように交流電源電流IACを制御することで、電力変換装置100に対して有効電力を供給できる。
ここで、インダクタLfは、電力変換装置100の定格容量に対して、数%のインピーダンスしか持たない。このため、交流電源電流IACを制御するためにインダクタLfに印加する電圧は、交流電源電圧VACの数%程度である。
Hブリッジ出力電圧Vabは、交流電源電圧VACを打ち消す成分と、インダクタLfに印加する電圧とを含む。インダクタLfに印加する電圧が交流電源電圧VACの数%程度のため、Hブリッジ出力電圧Vabの大部分は、交流電源電圧VACを打ち消す成分となり、交流電源電圧VACに近似した正弦波電圧となる。
そのため、交流電源電圧VACと同位相の交流電源電流IACを電力変換装置100に流入するように制御して得られる有効電力の大部分は、Hブリッジへ供給される。よって、交流電源V1からHブリッジへ電力を与える方向に交流電源電流IACを流した場合、Hブリッジのキャパシタ電圧VDCは上昇する。
一方、Hブリッジから交流電源V1へ電力を与える方向に交流電源電流IACを流した場合、Hブリッジのキャパシタ電圧VDCは下降する。
このように、交流電源電圧VACと同位相の交流電源電流IACを制御することにより、HブリッジのキャパシタCDCへの充電及びキャパシタ電圧VDCを制御する。
上述したように本実施形態によれば、交流電源電圧VACの検出値、交流電源電流IACの検出値、及びキャパシタ電圧VDCの検出値に基づいて、交流電源電圧VACに同期した交流電源電流IACを流すように、且つ出力電圧Voutの検出値に基づいて、出力電圧指令値Vout_refとの偏差を解消するように、スイッチング信号S1_PWM〜S4_PWMを、各スイッチS1〜S4に供給する。このとき、出力電圧Voutの検出値に基づいて出力電圧指令値Vout_refとの偏差の大きさに基づいてスイッチング周波数を決定し、そのスイッチング周波数に応じたスイッチング信号S1_PWM〜S4_PWMを生成する。
これにより、整流回路、PFC回路及びDC/DC変換回路の各機能を持ちつつ、装置全体の変換効率を向上することができる。
補足すると、交流電源V1とインダクタLf,L1、Hブリッジ、トランスを直列接続する構成とすることで、Hブリッジ出力電圧Vabの低周波成分を操作することで交流電源電流IACを制御してPFC回路の機能を実現でき、また、交流電源電流IACを利用してHブリッジのキャパシタ電圧VDCを制御でき、整流回路の機能を実現できる。
またHブリッジのスイッチング周波数を可変することで、負荷5に供給する出力電圧Voutを制御でき、DC/DC変換回路の機能を実現できる。
このように本実施形態は、従来の整流回路、PFC回路、DC/DC変換回路といった3つの回路機能を1つの回路段数(Hブリッジ)で実現でき、低損失、変換効率の向上、部品点数の低減を実現することができる。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る電力変換装置について図1及び図6を参照しながら説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態のうち、スイッチング周波数の制御により、負荷5に供給する出力電圧Voutを制御する部分を詳細に述べるものである。以下、第1の実施形態と異なる部分について主に述べる。
前述した通り、第1インダクタL1及びトランス1次巻線Tn1に印加される電圧は、Hブリッジのスイッチングにより生じる高周波電圧であり、この高周波電圧の周波数は、各スイッチS1〜S4のスイッチング周波数によって変化する。
第1インダクタL1は、一定のインダクタンスを有しているため、印加される電圧の周波数によってインピーダンスが変化する。そのため、Hブリッジのスイッチング周波数が変化すると、第1インダクタL1のインピーダンスも変化する。
一方、トランス1次巻線Tn1には励磁インダクタンスLmが現れるために、第1インダクタL1同様に周波数特性がある。しかしながら、トランス2次巻線Tn2に抵抗負荷が接続されるため、トランス1次巻線Tn1から見たときのトランスのインピーダンスは、トランス1次巻線Tn1に印加される電圧の周波数によってそれほど変化しない。これは、スイッチング周波数における励磁インダクタンスLmのインピーダンスに比べ、負荷抵抗が十分小さいからである。
このため、スイッチング周波数を上げると、第1インダクタL1のインピーダンスがトランスのインピーダンスよりも相対的に大きくなり、トランス1次巻線Tn1に印加される高周波電圧が低下する。
逆に、スイッチング周波数を下げると、第1インダクタL1のインピーダンスが相対的に小さくなり、トランス1次巻線Tn1に印加される高周波電圧が上昇する。
従って、Hブリッジのスイッチング周波数を可変して、トランス1次巻線Tn1に印加される高周波電圧を調整することにより、負荷5に供給する出力電圧Voutを制御することができる。
上述したように本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
<第3の実施形態>
図7は、第3の実施形態に係る電力変換装置に適用されたスイッチング信号生成部の構成を示す模式図である。
第3の実施形態は、第1又は第2の実施形態の具体例又は変形例であり、スイッチング信号生成部208に関する部分を詳細に述べるものである。以下、第1又は第2の実施形態と異なる部分について主に述べる。
ここで、スイッチング信号生成部208は、Vout_ref設定部221、減算部222、電圧制御器(AVR)223、キャリア生成部224、コンパレータ225、NOT回路226、定数乗算部227、コンパレータ228及びNOT回路229を備えている。
ここで、Vout_ref設定部221は、予め設定されたキャパシタCoutの電圧指令値Vout_refを減算部222に出力する。
減算部222は、出力電圧検出部4から受けたVout検出値から、Vout_ref設定部221から受けた電圧指令値Vout_refを減算し、得られた偏差Vout_dif(=Vout−Vout_ref)を電圧制御器(AVR)223に出力する。
電圧制御器(AVR)223は、減算部222から受けた偏差Vout_difに基づいて、図17に示す如きPI演算により、キャリア周波数fcを生成し、キャリア周波数fcをキャリア生成部224に出力する。
キャリア生成部224は、電圧制御器(AVR)223から受けたキャリア周波数fcをもつ三角波キャリアのキャリア信号Scarを生成し、このキャリア信号Scarを各コンパレータ225,228の反転入力端子に出力する。
コンパレータ225は、除算部207から非反転入力端子に受けた変調指令値Dと、キャリア生成部から反転入力端子に受けたキャリア信号Scarとを比較し、比較結果に応じて「1」又は「0」の値をもつスイッチング信号S1_PWMを第1スイッチS1及びNOT回路226に出力する。
NOT回路226は、コンパレータ225から受けたスイッチング信号S1_PWMを反転させてスイッチング信号S2を生成し、このスイッチング信号S2_PWMを第2スイッチS2に出力する。
定数乗算部227は、除算部207から受けた変調指令値Dに定数「−1」を乗じて、得られた変調指令値「−D」をコンパレータ228の非反転入力端子に出力する。
コンパレータ228は、定数乗算部227から非反転入力端子に受けた変調指令値「−D」と、キャリア生成部から反転入力端子に受けたキャリア信号Scarとを比較し、比較結果に応じて「0」又は「1」の値をもつスイッチング信号S3_PWMを第3スイッチS3及びNOT回路229に出力する。
NOT回路229は、コンパレータ228から受けたスイッチング信号S3_PWMを反転させてスイッチング信号S4を生成し、このスイッチング信号S4_PWMを第4スイッチS4に出力する。
次に、以上のように構成されたスイッチング信号生成部208により、Hブリッジの出力に所望の電圧を得るための方法について述べる。
前述した通り、Hブリッジ出力電圧Vabは、キャパシタ電圧VDCを電源として得られる。そこで、制御部200においては、Hブリッジ出力電圧指令値Vab_refを、キャパシタ電圧検出部3から受けたVDC検出値で除算し、得られた変調指令値D(=Vab_ref/VDC)をスイッチング信号生成部208に出力している。
スイッチング信号生成部208では、変調指令値Dからパルス波のスイッチング信号を得る方法として、キャリア比較方式を用いている。例えば図7に示した構成により、−1〜+1の範囲で周期的に変化する三角波キャリアからなるキャリア信号Scarを生成し、キャリア信号Scarと変調指令値Dとをコンパレータ225,228で比較する。
キャリア信号Scarよりも変調指令値Dが大きければ、「1」の値をもつスイッチング信号S1_PWM,S4_PWMを出力すると共に、「0」の値をもつスイッチング信号S2_PWM,S3_PWMを出力する。
キャリア信号Scarよりも変調指令値Dが小さければ、「0」の値をもつスイッチング信号S1_PWM,S4_PWMを出力すると共に、「1」の値をもつスイッチング信号S2_PWM,S3_PWMを出力する。
電力変換装置100では、このスイッチング信号S1_PWM〜S4_PWMに応じて、Hブリッジの各スイッチS1〜S4を「1」で点弧し、「0」で消弧することで、所望のHブリッジ出力電圧Vabを得ている。
また、このキャリア信号Scarの周期(=1/fc)を変化させることで、各スイッチS1〜S4のスイッチング周波数を可変することができる。
キャリア周波数fcだけを変化させる場合、Hブリッジ出力電圧Vabには影響がない。そのため、キャリア周波数fcを可変することで、Hブリッジ出力電圧Vabの低周波成分(すなわち、交流電源電流IACに対応する成分)に影響を与えることなく、スイッチング周波数を可変でき、負荷側の出力電圧Voutを制御することができる。
上述したように本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
<第4の実施形態>
図8は、第4の実施形態に係る電力変換装置及びその周辺構成を示す模式図である。
第4の実施形態は、第1〜第3の各実施形態の変形例であり、第1インダクタL1に流れる第1インダクタ電流IL1に基づいて、各スイッチS1〜S4をスイッチングする形態である。
ここで、電力変換装置200aは、図1に示した構成のうち、交流電源電流IACを検出する電源電流検出部2(電源電流検出手段)に代えて、第1インダクタL1に流れる第1インダクタ電流IL1を検出する回路電流検出部2a(第1電流検出手段)を備えている。なお、回路電流検出部2aは、第1インダクタL1と接続点M1との間に直列に接続され、第1インダクタL1に流れる第1インダクタ電流IL1を検出し、IL1検出値を制御部200aに出力する。
これに伴い、制御部200aは、IAC検出値に代えて、IL1検出値に基づく制御を実行する。
このような制御部200aは、例えば図9に示すように、VDC_ref設定部201、減算部202、電圧制御器(AVR)203、交流指令値計算部204、VDC_ref設定部231、差動増幅部232、幅調整部233、コンパレータ234,235、SR-F/F236及びNOT回路237を備えている。
ここで、VDC_ref設定部201、減算部202、電圧制御器(AVR)203及び交流指令値計算部204は、前述同様の機能をもっている。但し、交流指令値計算部204により得られた電流指令値IAC_refの出力先は、幅調整部233である。なお、VDC_ref設定部201、減算部202及び電圧制御器(AVR)203は、キャパシタ電圧VDCの検出値に基づいて、交流電源電流IACの振幅指令値IAC_amp_refを計算する振幅指令値計算手段を構成している。交流指令値計算部204のうち、例えば図3に示したPLL211及び正弦波生成部212は、交流電源電圧VACの検出値に基づいて、交流電源電圧VACと同位相の正弦波sin ωtを生成する正弦波生成手段を構成している。また、交流指令値計算部204のうち、例えば図3に示した乗算部213は、振幅指令値IAC_amp_ref及び正弦波sin ωtに基づいて、交流電源電流の電流指令値IAC_refを計算する電流指令値計算手段を構成している。
Vout_ref設定部231は、予め設定されたキャパシタCoutの電圧指令値Vout_refを差動増幅部232に出力する。
差動増幅部(幅送出手段)232は、Vout_ref設定部231から受けた電圧指令値Vout_refと、出力電圧検出部4から受けたVout検出値との偏差を検出し、偏差に応じた値を幅dif1として幅調整部233に出力する。
幅調整部233は、電流指令値IAC_refに幅dif1を持たせて消弧指令値envUP及び点弧指令値envDNを生成する指令値生成手段を構成している。
具体的には、幅調整部233は、図10に示すように、交流指令値計算部204から受けた電流指令値IAC_refに、差動増幅部232から受けた幅dif1を加算及び減算して、消弧指令値及び点弧指令値を生成する。消弧指令値は、電流指令値IAC_refに幅dif1を加算した値envUPとし、点弧指令値は、電流指令値IAC_refに幅dif1を減算した値envDNとする。
envUP=IAC_ref+dif1
envDN=IAC_ref−dif1
幅調整部233は、点弧指令値envDNをコンパレータ234の非反転入力端子に出力し、消弧指令値envUPをコンパレータ235の反転入力端子に出力する。
コンパレータ234,235は、交流電源電流IACの検出値に代えて第1インダクタ電流IL1の検出値を用い、第1インダクタ電流IL1の検出値が消弧指令値envUPと点弧指令値envDNとの範囲内に収まるか否かを判定する判定手段を構成している。
具体的には、コンパレータ234は、幅調整部233から非反転入力端子に受けた点弧指令値envDNと、回路電流検出部2aから反転入力端子に受けたIL1検出値とを比較し、IL1検出値が点弧指令値envDNより低いとき、「1」の値をもつセット信号S_setをSR-F/F236に出力する。具体的には、IL1<envDNのとき、「1」のセット信号S_setが出力され、IL1>envDNのとき、「0」のセット信号S_setが出力される。
コンパレータ235は、幅調整部233から反転入力端子に受けた消弧指令値envUPと、回路電流検出部2aから非反転入力端子に受けたIL1検出値とを比較し、IL1検出値が消弧指令値envUPより高いとき、「1」の値をもつリセット信号R_resetをSR-F/F236に出力する。具体的には、IL1>envUPのとき、「1」のリセット信号R_resetが出力され、IL1<envUPのとき、「0」のリセット信号R_resetが出力される。
SR-F/F236及びNOT回路237は、判定手段(234,235)による判定の結果に応じて、第1インダクタ電流IL1の検出値が範囲内(envUP≦IL1≦envDN)から外れるタイミングで開閉を切り替えるようにスイッチング信号S1_PWM〜S4_PWMを生成する第2生成手段を構成している。
具体的には、SR-F/F236は、各コンパレータ234,235から受けた信号S_set,R_resetに応じてスイッチング信号S2_PWM,S3_PWMをNOT回路237並びに第2及び第3スイッチS2,S3に出力する。
具体的には、S_set=0、R_reset=0のとき、スイッチング信号S2_PWM,S3_PWMの状態を変化させない。
S_set=1、R_reset=0のとき、「1」のスイッチング信号S2_PWM,S3_PWMを出力する。
S_set=0、R_reset=1のとき、「0」のスイッチング信号S2_PWM,S3_PWMを出力する。
NOT回路237は、SR-F/F236から受けたスイッチング信号S2_PWM,S3_PWMを反転させてスイッチング信号S1_PWM,S4_PWMを生成し、このスイッチング信号S1_PWM,S4_PWMを第1及び第4スイッチS1,S4に出力する。
次に、以上のように構成された電力変換装置の動作について説明する。
前述した通り、交流電源電圧VACとHブリッジ出力電圧Vabの差分が第1インダクタL1やトランス1次巻線Tn1に印加される。すなわち、Hブリッジ出力電圧Vabに応じて第1インダクタL1に印加される電圧VL1が変化し、その結果第1インダクタL1に流れる第1インダクタ電流IL1が変化する。ここでは、その第1インダクタ電流IL1の変化に応じてHブリッジの各スイッチS1〜S4をスイッチングさせる方法について述べる。
スイッチング信号S1_PWM〜S4_PWMを生成するために、Hブリッジに直列接続した第1インダクタL1に流れる第1インダクタ電流IL1の瞬時値を示すIL1検出値を用いる。第1インダクタ電流IL1の検出値は、交流電源V1からHブリッジに向かって流れる方向を正とする。その第1インダクタ電流検出値と、第1インダクタL1に流したい電流、すなわち電力変換装置100へ流れ込む交流電源電流IACの電流指令値IAC_refとを比較する。そして、電流指令値IAC_refに対して第1インダクタL1の第1インダクタ電流IL1が小さければ、第1インダクタ電流IL1が増える方向にHブリッジをスイッチングする。
図8を例にすると、第2及び第3スイッチS2,S3を点弧し、第1及び第4スイッチS1,S4を消弧する。そして、第1インダクタ電流値IL1が電流指令値IAC_refに達したら第2及び第3スイッチS2,S3を消弧し、第1及び第4スイッチS1,S4を点弧し、第1インダクタ電流IL1を減らす方向にスイッチングする。
しかしながら、一つの電流指令値IAC_refと、第1インダクタ電流IL1の検出値IL1とを比較してスイッチング動作を判定すると、連続的なスイッチング動作が生じ、発振してしまう。
そこで、制御部200aでは、第2及び第3スイッチS2,S3を点弧するための点弧指令値envDNと、消弧するための消弧指令値envUPとを用意し、第1インダクタ電流IL1の検出値とそれぞれ比較することでスイッチの点弧と消弧のタイミングに幅を持たせている。
ここで、点弧指令値envDNと消弧指令値envUPは、入力電流指令値IAC_refに対して偏差dif1を持たせた値とする。これは、いわゆるヒステリシスコンパレータの構成である。
ヒステリシスコンパレータの構成を用いることで、図10に示す第1インダクタ電流IL1は、電流指令値IAC_refに追従しながら2つの指令値envUP、envDNの間を折り返すようにスイッチング制御される。このような第1インダクタ電流IL1は、電流指令値IAC_refの低周波成分と、折り返しによる高周波成分とを含む。
制御部200aは、各指令値envUP、envDNとIL1検出値とを常に比較し、例えば、IL1検出値が消弧指令値envUPより外側に出たことを検出したら4つのスイッチS1〜S4の状態を反転させ、第1インダクタ電流IL1の傾きを反転させる。
また、制御部200aは、IL1検出値が点弧指令値envDNより外に出たことを検出したら再び4つのスイッチS1〜S4の状態を反転させ、第1インダクタ電流IL1の傾きを再び反転させる。
従って、制御部200aは、電流指令値IAC_refに追従するようにHブリッジのスイッチング信号S1_PWM〜S4_PWMを生成してHブリッジ出力電圧Vabを制御できる。このとき、点弧指令値envDNと、消弧指令値envUPのそれぞれ偏差dif1を調整することでスイッチング周波数を加減でき、出力電圧Voutを制御できる。
上述したように本実施形態によれば、第1インダクタL1に流れる第1インダクタ電流IL1に基づいて、各スイッチS1〜S4をスイッチングする構成としても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
<第5の実施形態>
図11は第5の実施形態に係る電力変換装置及びその周辺構成を示す模式図である。
第5の実施形態は、第1〜第3の実施形態の変形例であり、キャパシタCDCの出力電圧VDCを検出する出力電圧検出部4に代えて、トランスに設けられた電圧検出用の回路(第2電圧検出手段)を備えている。なお、第5の実施形態は、第4の実施形態の変形例としてもよいが、ここでは第1〜第3の実施形態の変形例の場合を例に挙げて述べる。
ここで、電圧検出用の回路は、トランス1次巻線Tn1に電磁的に結合したトランス3次巻線Tn3と、トランス3次巻線Tn3に接続された第2整流手段(D7,D8,Cdet)と、、第2整流手段の出力電圧(Vout’)を第1整流手段(D5,D6,Cout)の出力電圧Voutとして検出する出力電圧検出部4a(第2電圧検出部)とを備えている。
具体的には、トランス3次巻線Tn3の両端には、それぞれ第7ダイオードD7及び第8ダイオードD8の各アノード端子が接続される。第7ダイオードD7及び第8ダイオードD8の各カソード端子は互いに接続される。各カソード端子の接続点と、第8ダイオードD8のアノード端子との間には、キャパシタCoutが接続される。キャパシタCdetの両端には、キャパシタCdetの電圧Vout’を検出する出力電圧検出部4aが並列に接続される。
出力電圧検出部4aは、キャパシタCdetの電圧Vout’を検出し、Vout’検出値を制御部200に出力する。制御部200は、Vout’検出値を定数乗算部(図示せず)などによりVout検出値に換算し、得られたVout検出値に基づいて、前述同様に動作する。なお、制御部200は、トランスに設けられた電圧検出用の回路の設計値によっては、Vout’検出値をVout検出値として入力し、このVout検出値に基づいて、前述同様に動作することも可能である。
以上のような構成によれば、トランス3次巻線Tn3の電圧を整流して得られる電圧Vout’を制御部200にフィードバックしてスイッチング周波数を可変し、負荷5に供給される出力電圧Voutを制御する。トランスの2次側及び3次側に現れる電圧は、トランス1次側に印加される電圧によって決まる。そのため、トランスの2次側及び3次側に現れる各々の電圧は同様の挙動を示す。
よって、トランス3次巻線Tn3の電圧を整流及び平滑して得られた電圧Vout’を検出することにより、2次側の負荷5に供給する出力電圧Voutを間接的に検出することが可能となる。
上述したように本実施形態によれば、キャパシタCDCの出力電圧VDCを検出する出力電圧検出部4に代えて、トランスに設けられた電圧検出用の回路を備えたとしても、第1〜第4の各実施形態と同様の効果を得ることができる。
これに加え、一般に、制御部は、1次側の電位を基準として構成されることが多いため、2次側の電圧Voutを検出するには絶縁アンプ等の部品が必要となる。これに対し、本実施形態では、トランス3次巻線Tn3を追加して電圧Vout’を検出し、Vout’検出値を制御部200に入力する。
従って、本実施形態によれば、絶縁アンプ等の追加部品なしで、第1〜第3の各実施形態と同様の制御を実現することができる。
なお、本実施形態は、第1〜第3の実施形態に限らず、第4の実施形態に適用する場合も同様に実施でき、この場合も同様の作用効果を得ることができる。
<他の実施形態>
各実施形態では、単相の交流電源V1を用いたが、交流電源V1は単相に限定するものではない。三相あるいはそれ以上の多相の交流電源を用いることも可能である。
また、各実施形態ではスイッチとしてFET(電界効果トランジスタ)S1〜S4を用いたが、これに限定されるものではない。例えば、バイポーラトランジスタ、IGBT、GaN、SiC等の半導体素子を用いても良い。あるいはリレーのような機械式スイッチとダイオードの組み合わせで、HブリッジのスイッチS1〜S4を構成してもよい。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。