JP2016044154A - アンギオテンシン変換酵素(ace)の阻害剤、これを含む食品および薬剤、並びにそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
[1] 霊芝(Ganoderma lingzhi)から有機溶媒を含有する溶媒(有機系溶媒)で抽出することにより得られるトリペノイド類を有効成分として含むことを特徴とするACE阻害剤。
(2)ガノデリックアシッドN(Ganoderic acid N)、
(8)ガノデリックアシッドA(Ganoderic acid A)、
(9)ガノデリックアシッドAM1(Ganoderic acid AM1)、
(10)ガノデリックアシッドB(Ganoderic acid B)、
(23)ガノデリックアシッドC1(Ganoderic acid C1)、
(24)ガノデリックアシッドC2(Ganoderic acid C2)、
(25)ガノデリックアシッドC6(Ganoderic acid C6)、
(26)ガノデリックアシッドH(Ganoderic acid H)、
(27)ガノデリックアシッドK(Ganoderic acid K)、
(28)ガノデリックアシッドTR(Ganoderic acid TR)、
(29)ガノデリン酸A(Ganoderenic acid A)、
(30)ガノデリン酸C(Ganoderenic acid C)、
(31)ガノデリン酸D(Ganoderenic acid D)、
(32)ガノデリン酸F(Ganoderenic acid F)、
(33)ガノデリン酸H(Ganoderenic acid H)、からなる群から選択された1種または2種以上の化合物であることを特徴とする、[1]に記載のACE阻害剤(なお、附番(2)、(8)〜(10)、(23)〜(33)は本発明の説明の便宜上付与した。)。
以下、ACE阻害剤とその製法、このACE阻害剤に含まれる霊芝トリペノイド化合物とその物性、効果、用途等について説明する。
(抽出)
抽出素材としての霊芝(Ganoderma lingzhi)は、採取した霊芝をそのまま原料として用いてもよいが、抽出効率等の点からは、好ましくは採取した天然物(霊芝)を乾燥、破砕等の加工処理に供して調製したものを挙げることができる。抽出素材を粉砕する場合、ロール式粉砕機、フードプロセッサー、ボールミル粉砕機、ハンマー式粉砕機等による粉砕が例示できる。
霊芝(Ganoderma lingzhi)から、上記有機系溶媒で抽出することにより得られる成分(霊芝有機系溶媒抽出物)として下記トリペノイド類(1)〜(33)が含まれる。なお、以下の説明では、トリペノイド(2)、(8)〜(10)、(23)〜(33)をまとめて「トリペノイド(2)等」「トリペノイド類(2)等」「ACE阻害剤(2)等」ともいう。化合物(1)〜(33)をまとめて「化合物(1)等」という。
本発明においては、抽出した化合物(1)〜(33)をアルコールと反応させてエステル化したり、または塩基と反応させて塩を形成しても良い。これら化合物(1)等のエステルとして、メチルエステル等、炭素数1〜11を有する直鎖または分岐状のアルキルエステルを挙げることができる。これら化合物(1)等の塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩;アンモニウム塩等を挙げることができる。
当該ACE阻害剤に含まれる有効成分(化合物(1)等のいずれか1種または2種以上の合計)の濃度は、ACEに対して結合し、ACE活性を阻害する作用を発揮することを限度として特に制限されず、例えば、10〜500μg/mLとなるように、ACE阻害剤100重量%中、剤型、用法、用量に合わせて0.1〜100重量%の範囲から適宜設定することができる。
従来、カプトプリル、リシノプリル、エナラプリラート(エナラプリル)等のACE阻害剤が存在するが、カプトプリルは下記化学構造(A1)、リシノプリルは下記化学構造(A2)、エナラプリラート(エナラプリル)は下記化学構造(A3)を有する。また、アンギオテンシンIは下記化学構造(A4)を有する。
以下、本発明に係るACE阻害剤の阻害率について説明する。上述したようにトリテルペノイドの化合物(2)等は、従来公知で有名なカプトプリル等のACE阻害剤による拮抗阻害とは異なり、不拮抗阻害、非競合的阻害またはこれらの混合型の阻害によりACEを阻害する。したがって、トリテルペノイドの化合物(2)等を有効成分とする本発明に係るACE阻害剤は、従来公知のカプトプリル等のACE阻害剤による拮抗阻害の阻害率と異なり、不拮抗阻害、非競合的阻害またはこれらの混合型の阻害における阻害率という位置付けとなる。
本発明に係るACE阻害剤のACE阻害率は、従来公知の方法、例えば、ドージンニュース(http://www.dojindo.co.jp/letterj/124/commercial/04.html)等に記載の方法により測定することができる。
阻害率(%)=[(Ac−As)/(Ac−Ab)]×100・・・(I)
ACE阻害活性の測定手順の具体例として、以下の1’)〜8’)が挙げられる。
1’)霊芝(Ganoderma lingzhi)由来のトリテルペノイド(化合物(1)等)を0μg/mLで含むサンプル溶液D1、62.5μg/mLで含むサンプル溶液D2、125μg/mLで含むサンプル溶液D3、250μg/mLで含むサンプル溶液D4をそれぞれ調製する。このサンプル溶液D1〜D4を96ウェルプレートの第1〜4番目のウェルにそれぞれ20μL加える。また、第5番目と第6番目の各ウェルに純水を20μL入れる(blank1,blank2)。さらに第1〜6番目のウェルにそれぞれ120μLの純水を加える。
3’)blank2用の第6番目のウェルに純水を100μL加える。
4’)第1〜6番目の各ウェルに10μLの0.3U/mLのACE(ウサギ肺由来、シグマ製)、50mMホウ酸緩衝液(pH8.3)を加える。
5’)37℃で60分間インキュベート(静置)する。
6’)250μLの1N塩酸を加えて反応を停止する。
7’)1.5mLの酢酸エチルを加えて攪拌し、遠心分離後、1mLの酢酸エチル層を遠心濃縮乾固し、1mLの超純水に溶解して、228nmの吸光度を測定する。ACE阻害率は、次式で表される。
8’)ACE阻害活性値(阻害率%)を下記式により求める.
(ACE阻害活性値(阻害率〔%〕))
=〔(Abs.blank1−Abs.sample)/(Abs.blank1−Abs. blank2)×100〔%〕
ACE阻害活性は、ACEの阻害剤が全く存在しない場合に最終産物として生成される発色体の量を100%とした場合に、該発色体の量を50%とするのに必要なACE阻害剤の量(すなわち、IC50)として評価することができる。
したがって、本発明に係るACE阻害剤として、好ましくは、化合物(2),(8)〜(10)、(23)〜(33)のいずれか1種または2種以上を含有するものが挙げられる。本発明に係るACE阻害剤として、さらに好ましくは、IC50が200μg/mL未満となる化合物(8)、(9)、(24)、(28)および(29)のいずれか1種または2種以上を含有するものが挙げられる。
霊芝由来のトリテルペノイド類としては、上記式(a)、(b)の他に(c)で示すようなACE阻害活性に影響を与える特定の構造を有しているか否かにより、上記(a)、(b)及び(c)を含めた3つのグループに分けることができる。
上記式(b)に示すように、第2のグループ(b)は、テトラサイクリック環の第7番目と第8番目の炭素、および第9番目と第11番目の炭素の間に二重結合(Δ7,8、Δ9,11)を有し、分岐鎖がカルボキシル基を有するものである。ACE阻害活性が高い(IC50≦500μg/mL、好ましくは100μg/mL≦IC50≦500μg/mL、より好ましくは168μg/mL≦IC50≦500μg/mL)、ごく一部のトリテルペノイド類(例:(28)ガノデリックアシッドTR(Ganoderic acid TR))がこの第2のグループに属する。
上記式(c)に示すように、第3のグループ(c)は、テトラサイクリック環の第7番目と第8番目の炭素、および第9番目と第11番目の炭素の間に二重結合(Δ7,8、Δ9,11)を有し、分岐鎖がカルボキシル基を有しないものである。ACE阻害活性がそれほど高くない(IC50>500μg/mLの)トリテルペノイド類の殆どがこの第3のグループ(c)に属する。第3グループについては、第1,2グループとは異なり、骨格構造中にカルボキシル基を有していないことから、高いACE阻害活性(100μg/mL≦IC50≦500μg/mL)を有するためには、少なくとも骨格構造中にカルボキシル基が必要と考えられる。
本発明者らは、ACEと、上記式(a)、(b)または(c)で示され霊芝中に含まれる化合物とのドッキングシミュレーションを「CLC Drug Discovery Workbench」(CLC Bio, Aarhus, Denmark社製)により行った。
アンギオテンシン変換酵素(ACE)は、生理的には,肺の血管内皮細胞によって産生・放出され、血圧調節に関与している酵素である。したがって、この肺の血管内皮細胞に特異的にACE阻害剤を送達することができれば、より効率的にACE阻害を引き起こすことができる。例えば、CD31等は細胞表面に存在するタンパク質で、血管内皮細胞であることを示す細胞マーカーであるので、これを利用して本発明に係るACE阻害剤を血管内皮細胞に特異的に送達してもよい。
本発明に係るACE阻害剤は、食品(サプリメント、食品添加物等)、化粧料(ミスト等)、医薬品、研究試薬等として用いることができる。これらは、上記の有機溶媒系抽出物、好ましくはトリペノイド化合物(1)〜(33)のいずれか1種または2種以上、より好ましくは化合物(2)等のいずれか1種または2種以上を含有しているものである。
本発明に係る食品は、霊芝の溶媒(例:クロロホルム,エタノール)抽出物に高濃度で含まれるACE阻害剤としての上記有機溶媒系抽出物、好ましくは有効成分の化合物(1)〜(33)のいずれか1種または2種以上、より好ましくは化合物(2)等のいずれか1種または2種以上を含有するものである。
公知のACE阻害剤のうち、例えばカプトプリル(分子量:217.29g/mol)のIC50値は23nM(約5μg/L)である。そのため、カプトプリル等は非常に強力なACE阻害活性を示す。これに対して、トリテルペノイド類によりACEを阻害する場合、そのIC50値は約200μM(約100mg/L)〜950μM(500mg/L)の範囲であり、カプトプリル等と比較してACE阻害効果が緩やかである。このことから、上述したトリテルペノイド類を食品添加物やサプリメントに血圧降下作用の有効成分として含有させる場合に成分量を安全な濃度範囲で調節しやすく、食品添加物等としてACE阻害効果を安全に得やすい観点から好ましい。また、カプトプリルが0.1mg/kg体重/日〜100mg/kg体重/日で経口投与される例があることを考慮すると、同等の作用を得るためには、例えばトリテルペノイド(例;ガノデリックアシッドA)を約2mg〜20mg/kg体重/日で経口投与することが考えられるが、それより低濃度、例えば0.1mg〜20mg/kg体重の濃度範囲となるように調節して、食品(1日の食量分)に添加することで高血圧の予防、軽減等の効果を得るようにしてもよい。
本発明に係るACE阻害剤はサプリメントに用いることができる。サプリメントとする場合は、例えば、好ましくは化合物(1)〜(33)のいずれか1種または2種以上、より好ましくは化合物(2)等のいずれか1種または2種以上を原料とするか、または霊芝から上記有機系溶媒で抽出した抽出物を原料とし、公知の賦形剤を用いて常法により顆粒状・粉末状・ゲル状・カプセル状・ペースト状または錠剤にしたものをサプリメントとして用いることができる。このうち、ペースト状にする場合、本発明に係るACE阻害剤をサイクロデキストリンに内包させても良い。また、上記原料には、他のトリテルペノイドを任意に含有してもよい。
有機系溶媒抽出物、化合物(1)〜(33)、あるいは化合物(2)等は、強い苦味を呈することから、食品添加物(苦味料)として苦味が許容される清涼飲料水、酒精飲料等に用いることができる。有機系溶媒抽出物、化合物(1)〜(33)、あるいは化合物(2)等は、基本的にセスキテルペン等の公知の苦味料と同様に取り扱うことが可能である。逆に、これらの苦味を抑えて用いることも可能であり、その場合は、苦味マスキング剤(花王「ベネコート BMI−40」等)により苦味をマスキングすることができる。
化合物(1)〜(33)は、その化学構造の相違によりACE阻害活性や阻害の仕方(不拮抗的阻害(Uncompetitive inhibition)か非競合的阻害(Non-competitive Inhibition))が相違するため、各化合物(1)〜(33)はそれぞれアンギオテンシン変換酵素(ACE)との結合の態様及びアンギオテンシン変換酵素の活性発現機構(各化合物(1)〜(33)がACEに結合した後のACEのコンフォーメーション(立体配座))がそれぞれの化合物間で異なると考えられる。しかしながら、その詳細は現在不明である。したがって、ACE阻害活性の程度が異なる各化合物(1)〜(33)、特にACE阻害活性の高い化合物(2)等を、アンギオテンシン変換酵素(ACE)の活性阻害の機構を解明するための研究試薬として用いることができる。また、これら化合物(1)〜(33)のACEに対する結合態様の解析に基づいて、さらに高活性のACE活性阻害剤を開発することも可能であり、このための研究試薬としても用いることができる。
試験例1では、以下のようにアンギオテンシン転換酵素の阻害アッセイを行った。
(材料と方法)
霊芝(Ganoderma lingzhi)由来の32種類のトリテルペノイド(純度>98%)(化合物(1)〜(33))は、Chemfaces社(武漢市、湖北省、中国)およびPhytochemicals社(LLC,ニュージャージー州、アメリカ合衆国)から購入した。全てのトリテルペノイドは、さらなる精製をすることなく使用した。ACEテストキット「ACEキットWSTA502」は、同仁化学研究所(熊本、日本)から購入した。ドッキングソフトウェア「CLC Drug Discovery」は、CLCバイオ社(オーフス、デンマーク)から購入した。
「ACEキットWSTA502」(同仁同化学研究所社)と96ウェルプレートとを用いて、前記キットの製品説明書の手順に従い、若干の変更を加えて阻害活性アッセイを行った。
1)霊芝(Ganoderma lingzhi)由来のトリテルペノイド(化合物(2))を、0μg/mLで含むサンプル溶液C1、62.5μg/mLで含むサンプル溶液C2、125μg/mLで含むサンプル溶液C3、250μg/mLで含むサンプル溶液C4をそれぞれ調製した。このサンプル溶液C1〜C4を96ウェルプレートの第1〜4番目のウェルにそれぞれ20μL加えた。また、第5番目と第6番目の各ウェルに純水を20μL入れた(blank1,blank2)。
3)96ウェルのプレートのblank2用の第6番目のウェルに純水を20μL加えた。
4)第1〜6番目のウェルにEnzyme working solution 20μLずつ加えた。
なお、Enzyme working solutionを加えるとすぐに3-Hyderoxybutyric acid(3HB)の生成が始まるため、ウェル間のタイムラグをできるだけ少なくするためにマルチチャンネルのピペットを使った。
5)37℃で60分間インキュベート(静置)した。
6)各ウェルにIndicator working solutionを200μLずつ加えた。
7)室温で10分間インキュベートした。
8)プレートリーダーで各ウェルの反応溶液の450nmの吸光度を測定した。
9)ACE阻害活性値(阻害率%)を下記式により求めた.
(ACE阻害活性値(阻害率〔%〕))
=〔(Abs.blank1−Abs.sample)/(Abs.blank1−Abs. blank2)×100〔%〕
上記の通りに化合物(1)〜(33)(ガノデリックアシッドD(化合物(11))を除く。以下、同様。)のそれぞれについて5段階の濃度別に測定・算出した阻害率(%)の値を「用量−反応曲線」のグラフとしてプロットした(横軸:各化合物の濃度、縦軸:ACE阻害率〔%〕)(不図示)。この「用量−反応曲線」のグラフからIC50を算出した(表4〜6)。すなわち、阻害剤が全く存在しない条件下におけるACEの活性を100%(阻害率=0〔%〕)とした場合に、ACEの活性が50%(阻害率=50〔%〕)となる上記化合物の濃度〔μM〕をIC50として算出した。なお、阻害率(%)の測定・算出は3回行った(n=3)。
(分子モデリング)
各化合物(トリテルペノイド)(1)〜(33)の化学構造の3Dモデルをソフトウェア「MarvinSketch」(ChemAxon社,ブダペスト、ハンガリー)により作成し、これをアンギオテンシン変換酵素の活性部位を含む半径13オングストローム(Å)の球状空間内にドッキングさせるドッキングシミュレーションを行った。なお、このドッキングシミュレーションは、ソフトウェア「CLC Drug Discovery Workbench」(CLC Bio, Aarhus, Denmark社製)により行った。
上記ドッキングシミュレーションの結果、ほぼ全ての場合で化合物がACEに衝突していることを示すプラスのドッキングスコアとなった(上記表1〜表3)。上記ドッキングスコアがプラスであることから、化合物(1)〜(33)が、アンギオテンシン変換酵素(ACE)の上記結合部位の中に上手く入り込んでおらず、各化合物(1)〜(33)とアンギオテンシン変換酵素(ACE)との間に何らかの物理衝突があることを示す。この結果は、霊芝由来のトリテルペノイド(化合物)(1)〜(33)がACEの結合部位のポケットに入り込むには分子サイズが大き過ぎることを示している。
アンギオテンシン変換酵素(ACE)の活性部位のポケットに化合物(1)〜(33)が入り込むには分子サイズが大き過ぎるという上記推論を明らかにするために、本発明者らは、ガノデリックアシッドA(ACEに対する阻害活性が最も高い化合物)の3Dモデルを利用して、アンギオテンシン変換酵素(ACE)の前記ポケットの中において、ガノデリックアシッドAの分子がとると予想される配置を調べた。すなわち、ACEの活性部位と各化合物(1)〜(33)とのエネルギー(Docking Score(kcal/mol))が最小となる位置を特定した。この結果を図2および表1〜表3に示す。
アンギオテンシン変換酵素(ACE)と、公知のACE阻害剤として知られている「カプトプリル」、「リシノプリル」または「エナラプリル(エナラプリラート)」との各複合体に由来する蛋白質の立体形状(3つ)をそれぞれターゲットとして利用した。
(ACE阻害活性の測定)
霊芝(Ganoderma lingzhi)由来の33のランタノイド(化合物(1)〜(33))がアンギオテンシン変換酵素(ACE)の阻害試験に供された。2つのアルデヒド、5つのアルコール、および26のランタノイド誘導体が存在するが、構造活性相関解析(Streucute-activity relationship analysis)を可能とするために、それらの化合物(ランタノイド)を、テトラサイクリック環部分およびそれらの環に結合している分岐鎖に基づいてグループ分けした。
第1のグループは、テトラサイクリック環に二重結合(ΔC8,9)を含み、カルボキシル基に分岐を有している化合物である。
第2のグループは、テトラサイクリック環に2つの二重結合(ΔC7,8,Δ9,11)を含み、カルボキシル基に分岐を有している化合物である。
第3のグループは、第2のグループのサイクリック環と似ているものを有しているが、化合物の分岐鎖がカルボキシル基末端を有していないものである。
霊芝由来の、調べた化合物(1)〜(33)の中で、15個の化合物(2)、(8)〜(10)、(23)〜(33)がエタノールの終濃度5%における測定可能なIC50値を示した。すなわち、霊芝(Ganoderma lingzhi)由来の一部のトリペノイドについては、特に優れたACE阻害能が確認された。これらの化合物(1)〜(33)のうち、IC50の範囲が100.1〜499.5の範囲であるところの最も高いACE阻害活性を有するものは、ガノデリックアシッドAであった(表4〜表6を対比して参照)。IC50値を測定可能なグループの中で最も低いACE阻害活性を示したものは、ガノデリックアシッドNであった(表4〜表6を対比して参照)。IC50値の測定可能な化合物の殆どは、第1のグループ(式(a))であり、これらの化合物と第2のグループ(式(b))に属するたった1つの化合物(ガノデリックアシッドTR(28))が、IC50値=168.1μg/mLという、かなり高いACE阻害活性を示した。
ガノデリックアシッドAおよびガノデリン酸Aは、C20,22の箇所の二重結合のみが異なっているが、これらの化合物は阻害活性の低減が少なく、IC50についてみれば、「100.1μg/mL」→「125.9μg/mL」に変化する程度である。これに対して、ガノデリックアシッドC1とガノデリックアシッドLM2とは、C24,25の箇所にある二重結合のみが異なっているが、IC50の変動は、「383.6μg/mL」→「>500μg/mL」と鋭い低減を示した。
各化合物(1)〜(33)がいずれの阻害様式によってアンギオテンシン変換酵素(ACE)を阻害しているか調べるために、試験例1で使用したACEテストキット「ACEキットWSTA502」等を用いて下記阻害様式のそれぞれに含まれるパラメータ値を実測する試験を行い、Dixonプロットによる阻害様式の判定を行った。
《競合的阻害》
試験例1で用いたキットを使用して、阻害剤(化合物(1)〜(33))存在下でのACE活性の測定(ACEの酵素反応速度vの測定、等)を行った。
使用した上記キットのACE基質溶液の容量(10μL、15μL、20μL、25μL)とし、ACE基質溶液のそれぞれに対して、所定の濃度でトリテルペノイド(ガノリックアシッドA、ガノデリックアシッドC2)およびACEを含む溶液20μLをそれぞれ混合した後、最終的なサンプルの容量を60μLに調整した。
(1)上述した各サンプル(ガノデリックアシッドA,C2等の各化合物を阻害剤として含むサンプル溶液)について、試験例1で述べたように行いACE活性を測定して吸光度を得た。なお、60分間のインキュベーション(静置)により、ACEによるアンギオテンシンを変換する反応が収束していると考えられる。
図4にガノデリックアシッドAを阻害剤として用いた場合の結果(Dixonプロット、縦軸:1/v(分/abs.(450nm)))、横軸[I](μg/mL))を示す。
図5にガノデリックアシッドC2を阻害剤として用いた場合の結果(Dixonプロット、縦軸:1/v(min/abs.)、横軸[I](μg/mL))を示す。
(ガノデリックアシッドA)
図4は、横軸に阻害剤としてのガノデリックアシッドAの濃度(μg/mL)、縦軸にACE酵素の反応速度v(abs. / 分)の逆数を取ったものである。
図5は、横軸に阻害剤としてのガノデリックアシッドC2の濃度(μg/mL)、縦軸にACE酵素の反応速度(分/abs.)を取ったものである。
本発明によれば、霊芝(Ganoderma lingzhi)由来のトリテルペノイドがACEに対して緩やかな阻害活性を示すことが実証された。また、構造活性相関解析(Streucute-activity relationship analysis)により活性に影響を与える重要な部位が明らかとなった。分子モデリングの解析により、トリテルペノイドの阻害活性が競合阻害ではない代わりに、不拮抗阻害または非競合的阻害であり、従来のACE阻害剤(例:カプトプリル、リシノプリル、エナラプリル)と併用でき、その結果としての相乗効果が期待できる。
Claims (8)
- 霊芝(Ganoderma lingzhi)から有機溶媒を含有する溶媒(有機系溶媒)で抽出することにより得られるトリペノイド類を有効成分として含むことを特徴とするACE阻害剤。
- 前記トリペノイド類が、
(2)ガノデリックアシッドN(Ganoderic acid N)、(8)ガノデリックアシッドA(Ganoderic acid A)、(9)ガノデリックアシッドAM1(Ganoderic acid AM1)、(10)ガノデリックアシッドB(Ganoderic acid B)、(23)ガノデリックアシッドC1(Ganoderic acid C1)、(24)ガノデリックアシッドC2(Ganoderic acid C2)、(25)ガノデリックアシッドC6(Ganoderic acid C6)、(26)ガノデリックアシッドH(Ganoderic acid H)、(27)ガノデリックアシッドK(Ganoderic acid K)、(28)ガノデリックアシッドTR(Ganoderic acid TR)、(29)ガノデリン酸A(Ganoderenic acid A)、(30)ガノデリン酸C(Ganoderenic acid C)、(31)ガノデリン酸D(Ganoderenic acid D)、(32)ガノデリン酸F(Ganoderenic acid F)、(33)ガノデリン酸H(Ganoderenic acid H)、からなる群から選択された1種または2種以上の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のACE阻害剤。 - (2)ガノデリックアシッドN(Ganoderic acid N)、(8)ガノデリックアシッドA(Ganoderic acid A)、(9)ガノデリックアシッドAM1(Ganoderic acid AM1)、(10)ガノデリックアシッドB(Ganoderic acid B)、(23)ガノデリックアシッドC1(Ganoderic acid C1)、(24)ガノデリックアシッドC2(Ganoderic acid C2)、(25)ガノデリックアシッドC6(Ganoderic acid C6)、(26)ガノデリックアシッドH(Ganoderic acid H)、(27)ガノデリックアシッドK(Ganoderic acid K)、(28)ガノデリックアシッドTR(Ganoderic acid TR)、(29)ガノデリン酸A(Ganoderenic acid A)、(30)ガノデリン酸C(Ganoderenic acid C)、(31)ガノデリン酸D(Ganoderenic acid D)、(32)ガノデリン酸F(Ganoderenic acid F)、(33)ガノデリン酸H(Ganoderenic acid H)からなる群から選択された1種または2種以上のトリテルペノイド類を含むACE阻害剤。
- 前記抽出用の溶媒が、クロロホルム、アルコールまたは含水アルコールであることを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載のACE阻害剤。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のACE阻害剤を有効成分とする、ACEに関連する疾患の予防あるいは軽減のための食品(健康補助食品)、化粧料、研究試薬または医薬品。
- 前記疾患が、高血圧症、高血圧により引き起こされる動脈硬化に起因する動脈硬化症、脳梗塞(ラグナ梗塞、アテローム血栓性梗塞、脳塞栓)、脳出血、くも膜下出血、心肥大、狭心症、心筋梗塞、腎障害である請求項5に記載の食品(健康補助食品)、研究試薬または医薬品。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のACE阻害剤を有効成分とする、苦味料。
- 霊芝(Ganoderma lingzhi)から、有機溶媒を含有する溶媒(有機系溶媒)を用いて、ACE阻害作用を有する成分を抽出処理する工程を含むことを特徴とする、ACE阻害剤の製造方法。
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