JP2016044094A - 非極性または半極性GaN基板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】室温下においておもて面11が凹面でない、円盤形の非極性または半極性GaN基板10。室温下でおもて面11は凸面であってもよく、直径が4.5〜5.5cmであり、室温下におけるおもて面11のSORI値(基板の反りの程度を定量化するための指標で、基板のおもて面の最小二乗平面を高さの基準面としたときの、おもて面上の最高点と基準面との間の距離と、おもて面上の最低点と基準面との間の距離とを合計した値)が20μm未満であり、おもて面11の法線とm軸との間の角度は0〜20°以下であるGaN基板10。半極性GaN基板10は、アルカリ金属濃度が1×1015cm−3未満かつ450nmにおける吸収係数が2cm-1以下のGaN結晶からなるGaN基板10。
【選択図】図1
Description
非極性GaN基板の中で特に注目されているのは、(10−10)基板、すなわちM面基板である。半極性GaN基板の中で特に注目されているのは、(20−21)基板、(20−2−1)基板、(30−31)基板および(30−3−1)基板である。
MOVPE法では、通常、コールドウォール型のリアクターが用いられ、基板はサセプターを介して加熱される。以下の説明で「サセプター」に言及する場合、特に断らない限り、MOVPE法等による窒化物半導体薄膜の成長に用いられる気相成長装置が備える、基板載置部材である「サセプター」を意味する。
サセプター上に置かれた基板のうち、サセプターに接触するのは裏面(エピタキシャル成長に利用しない側の面)であり、対するおもて面は高速のガス流に曝される。従って、常温でサセプター上に設置された基板は、結晶成長温度に達するまでの間に、おもて面と裏面との間で発生する温度差によって変形する。
裏面の方がおもて面より高温となることから、常温で扁平な基板の場合であれば、裏面が凸状となるように反り変形が生じる。常温下で裏面が凸面になっている基板の場合には、サセプター上で加熱されたとき、その裏面が極度な凸状となる。
例えば、窒化物半導体発光素子では、発光効率および発光波長が、発光層を構成するInGaN層のIn組成により敏感に影響を受ける。そのInGaN層のIn組成は、その成長温度に応じて敏感に変化する。従って、窒化物半導体発光素子用のエピタキシャル層を成長させる際に、基板温度の面内均一性は極めて重要である。
(2)室温下でおもて面が凸面である、(1)に記載のGaN基板。
(3)直径が4.5cm以上5.5cm以下であり、室温下におけるおもて面のSORI値が20μm未満である、(1)または(2)に記載のGaN基板。
(4)おもて面の法線とm軸との間の角度が0°以上20°以下である、(1)〜(3)のいずれかに記載のGaN基板。
(5)AFMで測定したおもて面のRMS粗さが、測定範囲10μm×10μmにおいて5nm未満である、(1)〜(4)のいずれかに記載のGaN基板。
(6)フォトルミネッセンス測定によって得られるおもて面および裏面の発光スペクトルの各々において、GaNのバンドギャップに対応する波長におけるピークの強度に対する、イエローバンドの強度の比率が1/5未満である、(1)〜(5)のいずれかに記載のGaN基板。
(7)裏面がマット面である、(6)に記載のGaN基板。
(8)各々がおもて面と裏面の両方に露出する複数の結晶領域を有している、(1)〜(7)のいずれかに記載のGaN基板。
(9)アルカリ金属濃度が1×1015cm-3未満かつ450nmにおける吸収係数が2cm-1以下のGaN結晶からなる、(1)〜(8)のいずれかに記載のGaN基板。
以下において、結晶軸、結晶面、結晶方位等に言及する場合には、特に断らない限り、GaN結晶の結晶軸、結晶面、結晶方位等を意味するものとする。
例えば、おもて面と平行または最も平行に近い低指数面がM面すなわち(10−10)であるGaN基板は、M面基板または(10−10)基板と呼ばれる。通常は、ミラー指数(hkml)における整数h、k、mおよびlの絶対値がいずれも3以下である結晶面が、低指数面とされる。
本発明の実施形態にかかるGaN基板を図1に示す。図1(a)は斜視図であり、図1(b)は側面図である。
GaN基板10は、GaN結晶のみで構成された自立基板であり、おもて面11と、その反対側の裏面12と、側面13とを有している。GaN基板10は円盤形であり、故に、おもて面11および裏面12は円形である。
GaN基板10の直径は特に限定されないが、例えば4.5〜5.5cmであり、5cm(2インチ)であってもよい。
おもて面の法線とm軸との間の角度が0°以上20°以下であるとは、換言すれば、おもて面が、M面に平行またはM面から20度以下の角度で傾斜した結晶面と平行ということである。
例えば、[10−10]、[20−21]、[20−2−1]、[30−31]および[30−3−1]は、いずれも、m軸との間でなす角度が0°以上20°以下の範囲内にある。従って、(10−10)基板、(20−21)基板、(20−2−1)基板、(30−31)基板および(30−3−1)基板は、おもて面の法線とm軸との間の角度が0°以上20°以下のGaN基板に包含される。
GaN基板10には、結晶の方位を表示するオリエンテーション・フラットを設けることができる他、おもて面11と裏面12との識別を可能にするためにインデックス・フラット等のマーキングを設けることができる。
従って、GaN基板10において、おもて面11は室温下において凹面でなければよい。おもて面11は、凸面であってもよいが、限定されるものではない。
ここで、おもて面が凹面であるとは、おもて面の等高線が多重環状をなし、かつ、より内側に位置する等高線の方が、指し示す高さが低い場合をいう。反対に、おもて面が凸面であるとは、おもて面の等高線が多重環状をなし、かつ、より内側に位置する等高線の方が、指し示す高さが高い場合をいう。ここで、おもて面上における高さの基準面は、該おもて面の最小二乗平面である。
多重環状とは同心円状よりも上位の概念である。多重環状をなす等高線の各々は、環状であればよく、必ずしも円であることを要さない。更に、環状の等高線は、内側に向かって凸となった部分を有していてもよい。
GaN基板のおもて面の等高線は、レーザー斜入射干渉計のような測定機器を用いて測定することができる。次に述べるSORI値も同様である。
おもて面が凹面でなくても、そのSORI値が大き過ぎる場合には、裏面とサセプターの接触面積が小さくなり、サセプターを介して加熱したときの、温度の面内均一性が悪くなり得る。従って、GaN基板10の直径が45〜55mmの場合であれば、おもて面11の室温におけるSORI値は、好ましくは20μm未満、より好ましくは15μm未満、最も好ましくは10μm未満である。
SORI値を求める際には、おもて面の周辺部3mmは除外するものとする。なぜなら、基板の外周部では、端部処理等のために、おもて面と裏面とが平行でない場合があるからである。
おもて面11からは、機械研磨により形成されたダメージ層が除去されている。
ダメージ層の残留は、フォトルミネッセンス測定によって得られる主表面の発光スペクトルから知ることができる。ダメージ層が残留するとき、該発光スペクトルは可視波長域にブロードなピークを有するものとなる。このブロードな発光ピークは、イエローバンドとも呼ばれ、黄色光に対応する波長(550〜580nm)を含む波長域に現われる。
ダメージ層が除去されると、上記発光スペクトルにおいて、GaNのバンドギャップに対応する波長におけるピークの強度に対する、イエローバンドの強度の比率が下がる。該比率は、好ましくは1/5未満、より好ましくは1/10未満である。
裏面13においても、機械加工により形成されたダメージ層が除去されている。機械研磨で平坦化したGaN表面は、CMP仕上げすることにより、ダメージ層の無い鏡面とすることができる。粗い機械研磨を施したGaN表面あるいはアズスライスのGaN表面は、ドライエッチング処理することによって、ダメージ層の無いマット面とすることができる。
タイリング法で製造されたGaN結晶から切り出されるGaN基板を第1世代基板とすると、GaN基板10は、該第1世代基板をシードに用いて成長されるGaN結晶から製造される、第2世代基板であり得る。かかる第2世代基板は、第1世代基板の結晶方位を引き継ぐために、第1世代基板と同様に、各々がおもて面と裏面の両方に露出する複数の結晶領域を有することになる。
本発明実施形態に係るGaN基板の、典型的な製造方法について説明する。
2.1.タイリング法のためのシード基板の作製
タイリング法で用いるシード基板は、次の手順により作製することができる。
(i)HVPE法で成長されたGaN結晶(一次GaN結晶)からなる、C面基板を準備する。
(ii)上記ステップ(i)で準備したC面GaN基板をシードに用いて、アモノサーマル法により二次GaN結晶を成長させ、その二次GaN結晶からM面基板を作製する。
(iii)上記ステップ(ii)で作製したM面GaN基板をシードに用いて、アモノサーマル法により三次GaN結晶を成長させる。
(iv)上記ステップ(iii)で成長させた三次GaN結晶から、タイリング法用のシード基板を作製する。
(i)C面GaN基板の準備
サファイア基板、GaAs基板等をシードに用いて、HVPE法でバルクGaN結晶を成長させ、そのバルクGaN結晶を加工することにより、C面GaN基板を作製することができる。
好ましくは、2インチより大きな直径のシードを用いて、2インチ以上の直径を有するC面GaN基板を作製する。
HVPE法で使用する結晶成長装置や成長条件は、当業者にはよく知られているところである。例えば、GaAs基板上にHVPE法でバルクGaN結晶を成長させるための技法については、国際公開WO99/023693号公報(または、対応する米国特許第6693021号公報)等を参照することができる。また、サファイア基板上にHVPE法でバルクGaN結晶を成長させるための技法については、特開2003−178984号公報(または、対応する米国特許公開2002/0197825号公報)や、特開2007−277077号公報(または、対応する米国特許公開2009/0081110号公報)等を参照することができる。
C面GaN基板のN極性表面は、CMP(Chemical Mechanical Polishing)仕上げして、平坦化とダメージ層の除去を行う。
C面GaN基板の形状は円盤に限られるものではなく、角板等であってもよい。
前記ステップ(i)で準備したC面GaN基板の、N極性表面上に、結晶成長が可能な領域を限定するための成長マスクを形成する。
図2は、成長マスクが形成されたC面GaN基板を例示する模式5である。C面GaN基板1001は矩形のN極性表面1001aを有し、その上には、幅WOが50〜100μm程度の線状開口部を有する、a軸に平行なストライプパターン(ライン&スペースパターン)の成長マスク1002が配置されている。ストライプ周期PSは、1mmより大きくすることが好ましく、かつ、10mm以下とすることが好ましい。
C面GaN基板のa軸方向の側面1001bおよびm軸方向の側面1001cは、成長マスクで覆わないようにする必要がある。一例においては、更に、N極性表面の外周部を、基板側面から数mm以内の範囲で露出させてもよい。
成長マスクは、アモノサーマル法によるGaN結晶の成長中に溶解または分解しない金属、例えば、Al、W、Mo、Ti、Pt、Ir、Ag、Au、Ta、Ru、Nb、Pd、やそれらの合金で形成する。
使用される成長容器は、内部に原料溶解ゾーンと結晶成長ゾーンが設けられた密閉圧力容器である。結晶成長時において、成長容器内の圧力は、好ましくは200〜220MPaであり、成長容器内の温度は、好ましくは590〜630℃である。原料溶解ゾーンと結晶成長ゾーンの間の温度差は、好ましくは5〜20℃である。原料溶解ゾーンは、結晶成長ゾーンよりも高温とする。
二次GaN結晶1003とC面GaN基板1001との界面は、成長マスク1002に設けられた細長い開口部内に限られるので、該界面で生じる応力が二次GaN結晶の成長に与える影響を抑えることができる。
C面GaN基板のa軸方向の端部1001bから成長するGaN結晶は、[000−1]方向に延びて、傾斜した外面を有する壁1004を形成する。二次GaN結晶のa軸方向の端部1003bは、この壁1004の内面とつながる。
C面GaN基板のm軸方向の端部1001cから成長するGaN結晶も、[000−1]方向に延びて、傾斜した外面を有する壁1005を形成する。壁1004と壁1005は互いにつながって、二次GaN結晶1003を取り囲む周壁構造を形成する。
二次GaN結晶の外周部を切断して形を整えるとともに、ラッピングとCMPにより両方の主表面を平坦化することにより、M面GaN基板を作製することができる。
タイリング法用のシード基板の素材となる三次GaN結晶を、前記ステップ(ii)で作製したM面GaN基板をシードに用いて、アモノサーマル法により成長させる。
GaN結晶の積層欠陥は、結晶の成長方向とc軸との平行度が低い程、発生し易い。これは気相成長に限らず、アモノサーマル法においても同様である。
しかし、三次GaN結晶は、成長方向とc軸との平行度が高くないにも拘わらず、積層欠陥密度が非常に低いものとなる。なぜなら、歪みが極めて少ない二次GaN結晶から作製されるM面GaN基板を、シードに用いて成長されるからである。
三次GaN結晶の成長では、前記ステップ(ii)と同様、酸性鉱化剤を好ましく用いることができる。好ましい結晶成長条件についても前記ステップ(ii)と同様である。
三次GaN結晶はM面GaN基板の表面全体を覆うように成長するが、タイリング法用のシード基板の素材として好ましく使用し得るのは、M面GaN基板の主表面上に形成されるM面成長部である。
三次GaN結晶を成長させる際に、特に推奨されるのは、フッ化アンモニウムのような、フッ素を含む酸性鉱化剤の使用である。この鉱化剤は、GaN結晶のM面成長のレートを著しく高める作用を有している。塩基性鉱化剤に関しては、今のところ、GaN結晶を実用的なレートでM面成長させ得るものは開発されていない。
フッ素を含む酸性鉱化剤を用いてアモノサーマル的に成長されたGaN結晶は、フッ素を含有するものとなり、その濃度は通常1×1015cm-3を超える。
タイリング法用のシード基板は、図5に示すシード基板100のように角板形状に形成し、その[0001]側(+c)側と[000−1]側(−c側)に、それぞれ、+C端面と−C端面を設ける。+C端面と−C端面は、互いに平行となるように、かつ、それぞれが主表面上におけるc軸の正射影と90°±10°の範囲内、好ましくは90°±5°の範囲内、より好ましくは90°±1°の範囲内の角度で交わるようにする。
シード基板の主表面のサイズは、+C端面と主表面との交線に平行な方向に55mm以上、該交線と直交する方向に15mm以上であることが好ましい。シード基板の厚さは、好ましくは250μm以上である。
(a)スライシング
通常のワイヤソー・スライサーを使用して、三次GaN結晶から、主表面の法線とM軸との間の角が0度以上20度以下であるプレ基板を切り出す。スライシング方向は、X線回折装置を用いて確認する。
(b)端面の形成
ダイシング・ソーを用いてプレ基板の縁部を切り落とし、主表面が四角形となるようにする。この工程で形成される切断面が、シード基板の端面となる。
端面の形成が完了した後、順次行うラッピングとCMP(化学機械研磨)によって、シード基板の主表面を平坦化する。ラッピングに代えて、またはラッピングに加えて、グラインディングを行ってもよい。CMPには、平坦化に加えて、スライシングおよびラッピングで形成されたダメージ層を除去する目的もある。
上述の方法で作製したシード基板を複数並べてなる集合シード上に、GaN結晶を気相成長させる。好ましい気相成長方法は、HVPE法である。
HVPE法によるGaN結晶の成長には、石英製の反応容器を備えた一般的なホットウォール型成長装置を好ましく使用することができる。
HVPE法によるGaN結晶の成長においては、反応容器内に供給するキャリアガスの99〜100体積%を窒素ガス(N2)とすると、極めて歪みの少ないGaN結晶が得られる。本発明者等は、キャリアガスに占める窒素ガスの比率を92体積%(N2:H2比が92:8)とした場合に比べ、100体積%とした場合に、成長するGaN結晶の歪が有意に低減したことを確認している。
図6は、図5に示す角板形状のシード基板100を、気相成長装置のサセプター上に、そのように並べたところを示す平面図である。図6中の矢印は、それぞれ、各シード基板100の主表面上における[0001]の正射影を示している。
図6に示す4つのシード基板100の全てにおいて、+C端面と−C端面は、設計方位からのズレが0.1°以内となるように形成されている。それ故に、+C端面と−C端面が接するように配置したときの、シード基板間の結晶方位のズレが小さい。
4つのシード基板100の間に、僅かではあるが、結晶方位の違いがあることに起因して、GaN結晶200中には4つの結晶領域200a、200b、200cおよび200dが形成されている(点線は結晶領域間の境界を表している)。
図7(a)および(b)中の4つの矢印は、それぞれ、GaN結晶200の厚さ方向(成長方向)と直交する仮想平面上における、GaN結晶200の[0001]の正射影を表している。4つの結晶領域200a、200b、200cおよび200dの間の結晶方位の違いは僅かであるため、4つの矢印は略平行である。
ひとつには、HVPE法で成長されたGaN結晶は、アルカリ金属濃度が低いことが挙げられる。例えば、フラックス法では、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)およびカリウム(K)を合わせたアルカリ金属濃度が1×1015cm-3未満のGaN結晶を得ることは難しい(特開2009−18961号公報)。このことは、アルカリ金属を鉱化剤に用いたアモノサーマル法においても同じである(特開2011−523931号公報)。それに対し、HVPE法で成長させたGaN結晶は、通常、アルカリ金属濃度が1×1015cm-3未満となる。
アルカリ金属濃度が低い結晶の使用は、基板上に形成する半導体デバイスの信頼性の向上にとって有利である。
その他、フラックス法やアモノサーマル法に比べて、HVPE法ではドーパント濃度の制御が容易なため、キャリア濃度や導電率が精密に制御されたGaN結晶を得ることができる。
タイリング法で成長させたバルクGaN結晶を加工して、円盤形のGaN基板にする。
バルクGaN結晶が基板2枚分以上の厚さを有する場合には、これを円筒研削またはコアドリリングによって円筒形に加工したうえでスライスすることができる。スライス方向は、シード基板の主表面と平行としてもよいし、非平行としてもよい。
別の方法では、バルクGaN結晶を角板状に加工した後、外周加工により円盤形に整形することもできる。
図8(a)は、4枚のシード基板からなる集合シードと、その上にエピタキシャル成長したバルクGaN結晶を示している。バルクGaN結晶の成長方向は、図中の矢印が示す方向、すなわち、シード基板から遠ざかる方向である。
図8(b)は、バルクGaN結晶がスライスされた状態を示している。この例では、スライス方向は、シード基板の主表面と非平行である。
GaN基板が有する2つの主表面のうち、おもて面に選ばれるのは、図8(b)に示すように、その基板を構成するGaN結晶の成長方向を向いた主表面である。
ダメージ層の除去は、好ましくは、CMPにより行うことができる。
機械研磨されたままの基板表面のカソードルミネッセンス像には、転位に対応する多数の暗点が観察される。かかる基板表面にCMPを施すと、初めはCMP量が増加するにつれ暗点密度が減少する。ダメージ層が十分に除去された後は、CMP量を増やしても暗点密度は変わらなくなる。
ダメージ層の除去は、CMPの他に、塩素、フッ素、臭素等のハロゲン元素を含有するエッチングガスを用いたRIE(反応性イオンエッチング)によって行うことができる。
GaN基板の裏面のダメージ層は、好ましくはRIEによって除去する。
非極性または半極性GaN基板、とりわけ、おもて面の法線とm軸との間の角度が0°以上20°以下であるGaN基板においては、主表面の化学的安定性が、極性基板におけるGa極性表面と同程度に高いために、ウェットエッチングでダメージ層を除去する場合には、過酷な条件を用いる必要がある。
本発明のGaN基板は、各種の半導体デバイスの製造に使用することができる。通常は、本発明のGaN基板のおもて面上に一種以上の窒化物半導体を気相エピタキシャル成長させて、デバイス構造を形成する。エピタキシャル成長法として、薄膜の形成に適したMOCVD法、MBE法、パルス蒸着法などを好ましく用いることができる。
半導体デバイスの具体例としては、発光ダイオード、レーザダイオードなどの発光デバイス、整流器、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ、HEMT(High Electron Mobility Transistor)などの電子デバイス、温度センサ、圧力センサ、放射線センサ、可視−紫外光検出器などの半導体センサ、SAW(Surface Acoustic Wave)デバイス、振動子、共振子、発振器、MEMS(Micro Electro Mechanical System)部品、電圧アクチュエータなどがある。
本発明のGaN基板は、人工光合成セル用の電極にも使用し得ると考えられる。
5.1.実験1
以下の手順にて、円盤形の2インチM面GaN基板を作製した。
[1]C面GaN基板の作製
C面サファイア基板の表面にMOVPE法でGaN層をエピタキシャル成長させてなるGaNテンプレート上に、HVPE法でc軸配向したGaN結晶層を成長させた。このGaN結晶層をスライスしてC面GaN基板を作製した。次の工程でエピタキシャル成長の下地面として用いるために、C面GaN基板のN極性表面をラッピングおよびCMPにより平坦化した。
上記[1]で作製したC面GaN基板のN極性表面上に、幅100μmのライン形開口部を有するストライプパターンの成長マスクをTiW合金で形成した。開口部の長手方向、すなわちストライプ方向は、GaNのa軸に平行とした。このマスクパターンを形成したC面GaN基板のN極性表面上に、アモノサーマル法によりGaN結晶を成長させた。
原料には多結晶GaNを用い、鉱化剤にはフッ化アンモニウム(NH4F)およびヨウ化水素(HI)を用いた。
NH4FおよびHIの仕込み量は、NH3に対するフッ素原子のモル比が0.5〜1.5%、NH3に対するヨウ素原子のモル比が1.5〜3.5%となるように、かつ、ヨウ素原子に対するフッ素原子のモル比が0.2〜0.5となるように決定した。
成長条件は、成長容器内の平均温度(結晶成長ゾーンと原料溶解ゾーンの温度の平均値)を590〜630℃、結晶成長ゾーンと原料溶解ゾーンの温度差を5〜20℃、成長容器内の圧力を200〜220MPaとした。
例えば、3回の成長を繰り返すことにより、成長時間をトータルで100日間とした場合、成長マスクの開口部上には、GaN結晶が[000−1]方向に20mm成長した。
このGaN結晶の外形を整え、両方の主表面の平坦化およびCMP仕上げを行うことによって、M面GaN基板を作製した。その主表面のサイズは、大きなものでは、a軸方向62mm、c軸方向17mmであった。
シード基板の端面は、ダイシング・ソーを用いてGaN結晶を切断することにより形成した。シード基板の主表面は、長辺がa軸に平行、短辺がc軸に平行な長方形とした。そのサイズは、大きなものでは、a軸方向52mm、c軸方向15mmであった。
端面形成に続いて、各シード基板の両面をラッピングとCMPにより平坦化した。こうして作製したシード基板の、ポリッシュされた主表面をSEM−CLで調べたところ、略全ての箇所において、基底面転位の存在を示す暗点は90μm×120μmの視野中に認められなかった。
上記の手順で作製した4枚のシード基板を、+C端面と−C端面とが接するようにして、HVPE装置のサセプター上に一列に並べ、集合シードとした。
次いで、加熱した金属ガリウムに塩化水素を接触させて発生させた塩化ガリウムと、アンモニアガスとを、この4枚のシード基板からなる集合シード上に供給し、GaN結晶をエピタキシャル成長させた。成長温度は1050℃、成長時間は80時間とした。成長中に反応炉内に供給するキャリアガスは窒素ガスのみとした。
集合シード上にHVPE法でエピタキシャル成長させたバルクGaN結晶を加工して、直径2インチ(5cm)、厚さ約280μmの円盤形M面GaN基板を作製した。
詳しくいうと、バルクGaN結晶をスライスして得たアズスライス基板の主表面のうち、GaN結晶の成長方向を向いた主表面をおもて面と定め、グラインディング、ラッピングおよびCMPを順次施し、平坦化した。CMP工程では、ダメージ層が十分除去されるように、CMP量を設定した。
得られたM面GaN基板には、4枚のシード基板に対応する4個の結晶領域が含まれていた。
このM面GaN基板のおもて面の等高線およびSORI値を、(株)ニデック製の斜入射干渉法フラットネステスターFT−17を用いて測定した結果、おもて面は凸面であり、そのSORI値は7.9μmであった。
付言すると、裏面のRIE処理の代わりに、KOH水溶液を用いて120℃、10分間のウェットエッチングを行った場合には、裏面が凸状のGaN基板しか得られなかった。エッチング時間を20時間に延ばすと、おもて面が凸状となったことから、裏面のダメージ層が反りに関係していることが推測される。
実験1で用いたタイリング法用のシード基板と同様の方法で作製された、M面GaN基板を準備した。主表面は実質的に長方形で、サイズは、a軸方向52mm、c軸方向31mmであった。
このM面GaN基板をシードに用いて、HVPE法でGaN結晶をエピタキシャル成長させた。
次いで、成長させたバルクGaN結晶をスライスして、タイリング法用のシード基板2枚を作製した。この2枚のシード基板を、一方の+C端面と他方の−C端面とが接するようにして並べ、集合シードとした。該集合シード上に、HVPE法でGaN結晶を約5mmの厚さに成長させた。
詳しくいうと、実験1と同様に、バルクGaN結晶をスライスして得たアズスライス基板の主表面のうち、GaN結晶の成長方向を向いた主表面をおもて面と定め、グラインディング、ラッピングおよびCMPを順次施し、平坦化した。CMP工程では、ダメージ層が十分除去されるように、CMP量を設定した。反対側の主表面(裏面)のダメージ層は、実験1と同じく、塩素ガスをエッチングガスに用いたRIEにより除去した。
得られたM面GaN基板には、2枚のシード基板に対応する2個の結晶領域が含まれていた。
タイリング法を用いたGaN結晶の成長において、c軸方向のサイズが比較的小さいシード基板を6枚並べて集合シードとしたことを除き、実験1と同様にして、直径2インチ(5cm)の円盤形M面GaN基板を作製した。得られたM面GaN基板には、6枚のシード基板に対応する6個の結晶領域が含まれていた。
このM面GaN基板のおもて面の等高線およびSORI値を、実験1と同様にして測定した結果、おもて面は凸面であり、そのSORI値は15.7μmであった。
タイリング法を用いたGaN結晶の成長において、c軸方向のサイズが比較的小さいシード基板を5枚並べて集合シードとしたことを除き、実験1と同様にして、直径2インチ(5cm)の円盤形M面GaN基板を作製した。得られたM面GaN基板には、5枚のシード基板に対応する5個の結晶領域が含まれていた。
このM面GaN基板のおもて面の等高線およびSORI値を、実験1と同様にして測定した結果、おもて面は凸面であり、そのSORI値は16.5μmであった。
実験4で作製したM面GaN基板をシードに用いて、HVPE法でバルクGaN結晶を成長させた。すなわち、該M面GaN基板のおもて面上に、HVPE法で厚さ約5mmのGaN結晶層を成長させた。このバルクGaN結晶を、実験1と同様にして加工し、直径2インチ(5cm)の第2世代M面GaN基板を作製した。
得られた第2世代M面GaN基板には、シードに含まれていた5個の結晶領域に対応する、5個の結晶領域が含まれていた。
この第2世代M面GaN基板のおもて面の等高線およびSORI値を、実験1と同様にして測定した結果、おもて面は凸面であり、そのSORI値は12.3μmであった。
実験5で作製した第2世代M面GaN基板をシードに用いて、HVPE法でバルクGaN結晶を成長させた。すなわち、該M面GaN基板のおもて面上に、HVPE法で厚さ約5mmのGaN結晶層を成長させた。このバルクGaN結晶を、実験1と同様にして加工し、直径2インチ(5cm)の第3世代M面GaN基板を作製した。
得られた第3世代M面GaN基板には、シードに含まれていた5個の結晶領域に対応する、5個の結晶領域が含まれていた。
この第3世代M面GaN基板のおもて面の等高線およびSORI値を、実験1と同様にして測定した結果、おもて面は凸面であり、そのSORI値は11.5μmであった。
11 おもて面
12 側面
13 裏面
Claims (9)
- 室温下でおもて面が凹面でない、円盤形の非極性または半極性GaN基板。
- 室温下でおもて面が凸面である、請求項1に記載のGaN基板。
- 直径が4.5cm以上5.5cm以下であり、室温下におけるおもて面のSORI値が20μm未満である、請求項1または2に記載のGaN基板。
- おもて面の法線とm軸との間の角度が0°以上20°以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のGaN基板。
- AFMで測定したおもて面のRMS粗さが、測定範囲10μm×10μmにおいて5nm未満である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のGaN基板。
- フォトルミネッセンス測定によって得られるおもて面および裏面の発光スペクトルの各々において、GaNのバンドギャップに対応する波長におけるピークの強度に対する、イエローバンドの強度の比率が1/5未満である、請求項1〜5のいずれかに記載のGaN基板。
- 裏面がマット面である、請求項6に記載のGaN基板。
- 各々がおもて面と裏面の両方に露出する複数の結晶領域を有している、請求項1〜7のいずれか一項に記載のGaN基板。
- アルカリ金属濃度が1×1015cm-3未満かつ450nmにおける吸収係数が2cm-1以下のGaN結晶からなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のGaN基板。
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