JP2016041800A - 炭素繊維強化ポリエステル樹脂およびその射出成型体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、それらのポリエステルは、更にガラス繊維または炭素繊維を混合して熱可塑性複合材にする事に依り、機械的強度や耐熱性等の諸特性が改善され、一層高級な用途に使用されて来ている。
特に、ガラス繊維が安価であるので、これで強化されたPET複合材、PBT複合材、PC複合材が大量に使用されている。一方、炭素繊維は高強度であるがあまりにも高価格であるために、これらのポリエステル複合材は、特殊用途に少量にしか使用されて来なかった。
ポリエステルに、炭素繊維を機械的に混合して炭素繊維強化熱可塑性樹脂複合材料(CFRTP)として、その機械的強度および導電性を上げることは公知である。ただし、これら炭素繊維は、一般にポリアクリルニトリル(PAN)系の高分子繊維を超高温の焼成法で製造されるので表面にカルボキシル基や水酸基はあまり存在しないので、樹脂にはマクロ的には分散する。しかしながら、樹脂に溶融しない異物であるので、応力や衝撃がかかると両者の界面が剥離し、この複合材組成物を脆化させ、逆に強度を低下させることがある。その改善には、一般的に特殊なエポキシ系樹脂で炭素繊維表面を被覆して樹脂との親和性を高めてその複合材料の強度等を改善している。
また一方、本発明者は、特許文献4に示される様に、ポリエチレンテレフタレート(PET)にカーボンナノチューブ(CNT)を含む気相法炭素繊維10重量部をエポキシ樹脂系結合剤(鎖延長剤)および触媒の存在下に二軸押出機で反応押出法にて混合して、その複合材組成物の引張強度を15−20%および導電性を画期的に改善している。
最近公開された特許文献5の実施例によれば、炭素繊維強化熱硬化性樹脂複合材料(CFRP)を400℃にて熱硬化性樹脂のみを焼成して得た炭素繊維集合体を、更にアルカリ電解浴の陽極酸化により開繊して再生炭素繊維を回収した。この再生炭素繊維の5%で強化された熱硬化性樹脂複合材料(CFRP)の引張強度は、殆ど改善されなかった。しかし、サイジング剤で処理したこの再生炭素繊維を5%で強化された熱硬化性樹脂複合材料(CFRP)の引張強度は、約20%改善された。他方、炭素繊維強化炭素(C/Cコンポジット)からは、酸性電解浴の陽極酸化により開繊して再生炭素繊維が回収された。しかしながら、再生炭素繊維のカルボキシル基の存在および炭素繊維強化熱可塑性樹脂複合材料(CFRTP)についての記載は見当たらない。
非特許文献1によれば、過熱水蒸気法により500−700℃でCFRPから回収された再生炭素繊維(長繊維)をBoehm法で分析したところ、主にフェノール性水酸基が約0.1等量/Kgと多く、ラクトン基が約0.05等量/Kgと少なく、カルボキシル基は極微量にしか存在していない。
尚、本発明のエポキシ樹脂系結合剤(鎖延長剤)および触媒は、カルボキシル基にのみに高速度で反応し、水酸基およびラクトン基には殆ど反応しない。
また、本発明者は、特許文献6に示される様に、ポリエチレンテレフタレート(PET)に再生炭素繊維・2−5cm長の10重量部および再生炭素繊維・粉体の15−40重量部をエポキシ樹脂系結合剤(鎖延長剤)および触媒の存在下に二軸押出機で反応押出法にて混合して、それらの共重合の引張強度を約2倍および導電性を改善している。
本発明は、第1に(A)成分のポリエステル100重量部、(B)成分の炭素繊維5〜150重量部、(C)成分の結合剤として該分子内に2個以上のエポキシ基を含有する多官能エポキシ化合物0.1〜2重量部、(D)成分の結合反応触媒0.01〜1重量部から構成される組成物を、該ポリエステルの融点以上の温度で加熱して高溶融粘度の複合体とし、次いで射出成形体とすることを特徴とする炭素繊維強化ポリエステル樹脂およびその射出成形体の製造方法を提供するものである。
次に炭素繊維の表面に存在するカルボキシル基とポリエステルの分子末端のカルボキシル基とを、触媒の存在下に結合剤としての多官能性エポキシ樹脂のエポキシ環の開裂を伴う化学反応で新たにヒドロキシ基を含むエステル結合を形成させて巨大分子量のポリエステル・炭素繊維共重合体とすることが出来る。この結合反応は、2軸押出装置を使用して反応押出法に依って高速度に実行出来る。これらの結合反応ポリエステルとポリエステル・炭素繊維共重合体は、巨大分子量であり、長鎖分岐構造体であるので、その分子鎖の「絡み合い」効果により溶融粘度が増大し、従来の水飴状から柔らかい餅状になり、射出成形性が画期的に改善される。
従って、従来のポリエステル・炭素繊維組成物(ブレンド)の分子間親和力よりも、本発明のポリエステル・炭素繊維結合反応体のエステル鎖の結合力が圧倒的に大きいので、特に機械的強度が改善される。また、炭素繊維の導入に依り、更に耐食性、耐候性、導電性、放熱性、伝熱性、耐熱性、耐油性のその他の性能も大幅に改善される。
本発明では、安価な回収炭素繊維、航空機端材の炭素繊維強化複合材(CFRP)からの再生炭素繊維などが原料として好適に使用する事が出来る。
[(A)成分のポリエステル]
本発明における主原料としての(A)成分のポリエステルは、芳香族飽和ポリエステルであり、ジカルボン酸成分とグリコール成分とから合成される系列のものが使用出来る。ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタール酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の芳香族、脂環族ジカルボン酸等を挙げることができる。これらの中で、芳香族ジカルボン酸、特にテレフタル酸、イソフタール酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。
グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。これらの中で、エチレングリコールおよびテトラメチレングリコール(1,4−ブタンジオール)が特に好ましい。
この系列のポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、イソフタール酸を少量共重合した低融点PET、エチレングリコールとシクロヘキサンジメタノールとテレフタル酸の共重合体(PETG)、ポリテトラメチレンテレフタレート(ポリブチレンテレフタレート、PBT)、ポリエチレンー2,6−ナフタレート(PEN)等が挙げられる。ポリブチレンテレフタレート(PBT)が好ましい。大量生産され極めて安価なポリエチレンテレフタレート(PET)が、特に好ましい。
また、本発明において主原料としての(A)成分のポリエステルは、他の系列のものとしてビスフェノールAを主原料とするポリカーボネート(PC;ポリ−4,4‘−イソプロピレンジフェニルカーボネート)が使用出来る。
本発明における(B)成分の炭素繊維は、カルボキシル基を保有するものが好ましい。カルボキシル基を保有する炭素繊維は、第一系列としてカルボキシル基を保有するPAN系工業製品を使用する事ができる。例えば、東レ(株)の高性能炭素繊維「トレカ」カットファイバーのT008シリーズ、T010シリーズ、TS12−006(カット長3−12mm)、または「トレカ」ミルドファイバーのMLDシリーズ(繊維長30−150μm)などが素原料として使用できる。また、一般的にこれらの炭素繊維工業製品は、カルボキシル基の含有量が比較的に少ないので、特許文献5の記載方法に準じた電解酸化処理に依り炭素繊維の表面にカルボキシル基、水酸基およびアセチル基等を導入することに依り、本発明の目的に合わせて使用することが出来る。
第二系列として(株)クレハおよび大阪ガスケミカル(株)のピッチ系炭素繊維の工業製品も使用することが出来る。これらは比較的にカルボキシル基の含有量が多いが、強度がやや小さい(等方性の利点をもつ)。
その他、航空機機体などの製造時に半端品として回収されるボビン巻の長繊維のカットファイバー(カット長3−12mm)も良好に使用できる。
再生炭素繊維は、実施例の製造例1に例示される様に、特許文献5の杉山法の記載方法に準じて反応条件の制御下で電解酸化処理する事に依り、多数のカルボキシル基を導入した物を特に好適に使用することが出来る。本発明の再生炭素繊維のカルボキシル基量は、通常、0.01−0.20m mol/gの範囲を含有する。好ましく使用できる範囲は、0.02−0.15m mol/gである。
再生炭素繊維の繊維長は、航空機等のCFRP製端材の寸法および組立時のボーリングによる切粉の大きさに従属する。本発明では、繊維長として長繊維(100mm以上)、中繊維(3−100mm)または粉末状繊維(3mm以下)と呼称する。いずれも、本発明で好ましく使用できる。
本発明の(C)成分の結合剤は、重量平均分子量が1,000〜300,000であることが好ましく、該分子内に2〜100個のエポキシ基を含有する高分子型多官能エポキシ化合物を単独または2種類以上の混合体として使用することができる。高分子量の骨格を形成する樹脂にエポキシ環を含むグリシジル基をペンダント状に吊下げたものや分子内にエポキシ基を含むものの市販品、例えば、日油(株)の「マープルーフ」シリーズ、BASFジャパン(株)の「ジョンクリルADR」シリーズを使用することができる。骨格となる樹脂は、アクリル樹脂系やスチレンアクリル樹脂系がポリオレフィン系(PP、PS、PE)よりも好ましい。何故ならば、樹脂の溶解度パラメーターは、原料PET 10.7、エポキシ樹脂10.8、ポリアクリル酸メチル10.2、ポリアクリル酸エチル9.4、ポリプロピレン(PP)9.3、ポリメタクリル酸エチル9.0、ポリス散れ(PS)8.9、ポリエチレン(PE)8.0であり、数値が近いほど混合性が良いからである。
なお、ポリオレフィン系は1−2%の混合でも、PET系樹脂のフィルム・シートを白濁させるので、成形品が透明性を必要とする場合には適さない。しかしながら、発泡体とパイプあるいは220℃耐熱・耐油性容器などは白色であるので、それら透明性を必要としない用途と本発明の黒色成形体には使用出来る。
本発明における(D)成分としての結合反応触媒は、(1)アルカリ金属の有機酸塩、炭酸塩および炭酸水素塩、(2)アルカリ土類金属の有機酸塩、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群から選ばれた少なくとも一種類以上を含有する触媒である。有機酸塩としては、カルボン酸塩、酢酸塩等が使用できるが、カルボン酸塩の中で特にステアリン酸塩が好ましい。カルボン酸の金属塩を形成する金属としては、リチウム、ナトリウムおよびカリウムのようなアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムのようなアルカリ土類金属を使用できる。
この結合反応触媒としてのカルボン酸塩の配合量は(A)成分のポリエステル100重量部に対して0.01〜1重量部である。特に、0.1〜0.5重量部であることが好ましい。0.01重量部未満では触媒効果が小さく、共重合反応が未達となって分子量が充分増大しないことがある。1重量部を超えると局部反応によるゲル生成や加水分解の促進による溶融粘度の急上昇による押出成形機内のトラブルなどを惹起させる。
次に、本発明のポリエステル樹脂を配合する方法に付いて説明する。(A)成分のポリエステルは、通常のバージンペレット、回収したフレーク、粒状物、粉末、チップ等の任意形状のものが使用し得る。一般的には、主成分のポリエステルを乾燥する方が好ましい。各成分をタンブラーやヘンシェルミキサー等の混合機で混和させてから、トップフィード法として押出装置に供給する。炭素繊維が粉体状の場合に適する。加熱溶融する温度は、ポリエステルの融点の250度以上で300度以下であることが反応押出法の観点から望ましい。特に、280℃以下が好ましく、特に好ましくは265℃である。300℃を越えるとポリエステルの変色や熱分解が生じるおそれがある。
上記の同時に混合する方法以外に、サイドフィード法として二軸押出装置に(A)成分のポリエステルと(C)成分の結合剤と(D)成分の触媒を供給して反応押出をしながら、二軸押出装置の出口部分に(B)成分の炭素繊維を注入して、炭素繊維の切断を防いで複合材を生産することが出来る。炭素繊維が短繊維の場合に適する。
反応押出装置としては、単軸押出機、二軸押出機、それらの組合せの二段押出機等を使用することができる。単軸押出機は、安価であり、炭素繊維が粉体状の場合に適する。二軸押出機は、高価であるが、炭素繊維が短繊維の場合に適する。
(1)PET等の固有粘度(IV値)の測定法
1,1,2,2ーテトラクロロエタンとフェノールの等重量の混合溶媒を使用し、キャノンフエンスケ粘度計で25℃にて測定した。または、メーカーのカタログ値を採用した。
(2)メルトフローレート(MFR)の測定法
JIS K7210の条件20に従い、温度280℃、荷重2.16kgの条件で測定した。但し、樹脂は予め120℃×12時間または140℃×4時間で、熱風乾燥または真空乾燥されたものを使用した。
(3)比重の測定法
JIS K7112のA法(水中置換法)に従い、樹脂ペレットについてアルコールを液体として測定した。または、JIS K7222の寸法測定法で測定した。
(4)機械的強度の測定法
試験片の作成:住友重機械工業(株)製の射出成形機SE18DUZ(型締め圧18トン、スクリュー径16mm)を使用し、成形温度270℃、金型温度35℃、冷却時間15−20秒の条件で成形した。
試験片の形状:引張試験片 JIS K7162 5A型(厚み2mm)
曲げ試験片 短冊型 80mm×10mm(厚み4mm)
引張試験:引張強度は、試験速度2mm/分にて実施し、3−5点の平均値で評価した。ヤング率は、最大荷重の25%と75%の直線回帰により算出した(JIS K7073ほか)。
曲げ試験:曲げ強度は、3点曲げを試験速度5mm/分にて実施し、3−5点の平均値で評価した。曲げ弾性率は、最大荷重の25%と75%の直線回帰により算出した(JIS K7074ほか)。
(5)カルボキシル基等の測定法
JIS K 0070に準じ、Boehm法で測定した。炭素繊維またはポリエステルのサンプルに水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムを個々に加え、電位差自動測定装置を使用して塩酸溶液を用いて逆滴定をした。全酸性官能基量(全酸量)を水酸化ナトリウム添加後の塩酸溶液による逆滴定で、また強酸性官能基量(カルボキシル基量)を炭酸水素ナトリウム添加後の塩酸溶液による逆滴定で測定した。なお、弱酸性官能基量(フェノール系水酸基量)は、全酸量−カルボキシル基量から求めた。例えば、カルボキシル基量は、電池負極のカーボン材の表面では0.01−0.15mmol/g、PET樹脂で0.04以下mmol/gである。
[カルボキシル基を含有する再生炭素繊維のアルカリ液の電解酸化に依る製造例と分析例]
特許文献7(特開2013−249386号)に準じて、航空機組立時に副生したCFRPの端材約30Kgを10cm角以下に裁断し、電気炉で400−500℃にて熱硬化性エポキシ樹脂部分を焼成除去して再生炭素繊維(集結体)約15Kgを得た。
再生炭素繊維(集結体)5gを500ccのビーカーに入れ、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液200mLに浸漬させた。再生炭素繊維集結体側を陽極とし、陰極側をチタニウム電極として、3V×0.5Aにて直流電解反応を1時間実施した。この電解酸化処理に依り開繊した再生炭素繊維を中性になるまで水洗し、乾燥してから保管した。これを3回繰り返した。
再生炭素繊維1gを各200ccの三角フラスコに秤量し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液または炭酸水素ナトリウム水溶液の各50mLに浸漬させた。栓をしてからその2体を24時間浸透機にかけた。各容器の上澄み液5mLを0.05mol/L塩酸水溶液で滴定し、全酸量とカルボキシル基量とを同定した。このBoehm法に依る分析を焼成後の再生炭素繊維と新品炭素繊維についても実施し、その結果を比較して以下に示す。
カルボキシル基は、新品炭素繊維には極めて微量にしか存在しないが、本発明の焼成後の再生炭素繊維には0.03−0.05mmol/gも存在し、電解酸化後の再生炭素繊維にはその2−3倍の0.10mmol/g にまで増加していた。尚、PET樹脂では0.04以下mmol/gであるので、本発明の再生炭素繊維のカルボキシル基量は共重合させるに充分である。
[(C)成分および(D)成分のPETG基体に使用した改質剤マスターバッチの製造例]
改質剤マスターバッチは、通常(C)成分の結合剤マスターバッチおよび(D)成分の触媒マスターバッチについて、それらペレットの1対1の配合から構成される。
[1](C)成分の結合剤マスターバッチの製造例
結合剤として、分子内に2個以上のエポキシ基を含有する多官能エポキシ化合物の代表例として日油(株)の「マープルーフ G−0130SP」(エポキシ数 10個/数平均分子量、数平均分子量5,500、エポキシ等量530g/eq.)を採用し、基体樹脂としてイーストマン社の非結晶性コポリエステル「Eastar PETG 6763」を使用した。
まず、(C)成分の結合剤としてマープルーフG−0130SPの15重量部(15Kg、白色粉末)、基体樹脂としてPETG 6763の粉砕された白色粉末50重量部(50Kg)、PETG 6763の透明ペレット50重量部(50Kg)および展着剤としての流動パラフィン0.1重量部(0.10Kg)の配合物115.1Kgをヘンシェルミキサーで混合した。これを押出機上のホッパーに移納した
東芝機械(株)製の同方向2軸押出機(スクリュー口径70mm、L/D=32、2ベント式)を使用し、シリンダ−とダイスの設定温度を100−220℃およびスクリュー回転数 160rpmとし、配合物115Kgをホッパーから容量フィーダーを経てトップフィードした。ストランド金型の樹脂圧力は4.9−5.0MPaで、金型出口から水盤中へのストランドは直線状で安定し、吐出速度は117Kg/hであった。
この温かい白色ペレットA剤((C)成分の結合剤マスターバッチ)を直ちに70℃のホッぱーに移送して一夜流動乾燥して後に、紙・アルミ・ポリエチレンの三層防湿袋に貯蔵した。収量は107Kgであった。
結合反応用触媒の代表例としてのステアリン酸カルシウム50%、ステアリン酸リチウム25%およびステアリン酸ナトリウム25%から成る複合触媒10重量部(10Kg)、基体樹脂としてPETG 6763の粉砕された白色粉末50重量部(50Kg)、PETG 6763の透明ペレット50重量部(50Kg)および展着剤としての流動パラフィン0.2重量部(0.20Kg)の配合物110.2Kgをヘンシェルミキサーで混合した。これを押出機上のホッパーに移納した。前記とほぼ同様操作にて押出を実施した。ストランド金型の樹脂圧力は7.1−9.6MPaで、金型出口から水盤中への白色ストランドは直線状で安定し、吐出速度は200Kg/hであった。
この温かい白色ペレットB剤((D)成分の触媒マスターバッチ)を直ちに70℃のホッぱーに移送して一夜流動乾燥して後に、紙・アルミ・ポリエチレンの三層防湿袋に貯蔵した。収量は102Kgであった。
この(C)成分の結合剤マスターバッチA剤100Kgおよび(D)成分の触媒マスターバッチB剤100Kgの白色ペレットを1対1に配合し、改質剤マスターバッチ200Kgを製造した。
A成分のポリエステルとして市販ペット(PET)樹脂(汎用ボトルグレード:IV値0.80のペレット)100重量部(120Kg;120℃・12時間での熱風乾燥後の水分含有率 約100ppm)と改質剤マスターバッチ(MB:PETG基体)6重量部(7.2Kg;C成分の結合体として多官能エポキシ樹脂0.45重量部、D成分の結合反応触媒0.30重量部)とをタンブラーを使用して、30rpm×10分間にわたり混合した。これらを第1ホッパーに納入した。
B成分の炭素繊維として回収炭素繊維チョップ(ボビン巻のPAN系炭素繊維の回収品を集めて、6mm長に裁断したもの。40Kg)を第2ホッパーに納入した。
ドイツ・ベルストルフ社製の同方向2軸押出機(ZE40E:スクリュー口径42mm、L/D=38)を使用し、この押出機の10ブロックから成るシリンダーとダイスの設定温度を150−270℃およびスクリュー回転数100rpmとし、回収炭素繊維チョップを第5ブロックに連続的に注入した。
重量式計量単軸フィーダーを使用し、第1ホッパーからA成分とC成分とD成分の混合樹脂ペレットを18.02Kg/hの速度で、また第2ホッパーから回収炭素繊維チョップを3.0Kg/h(炭素繊維の含有量14.3%)の速度で押出機に投入した。
ストランドを口径3mmの斜め下方向のノズルから三本を水中に連続的に押出し、引取り速度20m/分にて、回転カッタ−で切断して黒色樹脂ペレットR1を製造した。ストランド金型の樹脂圧力は0.90−1.2MPaで、金型出口から水盤中へのストランドは直線状であり溶融張力が増加していた。
この温かい黒色樹脂ペレットR1を直ちに120℃一夜熱風乾燥して後に、紙・アルミ・ポリエチレンの三層防湿袋に貯蔵した。収量は20.6Kgであった。その形状は、円柱状で直径約2.5mm×長さ約4.5mmであった。また、MFR(280℃、荷重2.16Kg)は、35g/10分であった。
射出成形体の形状:引張試験片用 JIS K7162 5A型(厚み2mm)
また、同じ成形装置を使用し、ほぼ同様条件ではあるが、射出圧力115−123MPaおよび冷却時間20秒の条件にて、下記の射出成形体を成形する事が出来た。
射出成形体の形状:曲げ試験片用の短冊型 長さ80mm×巾10mm(厚み4mm)
両者共、バリの副生が無くて良好な射出成型性を示した。
尚、この炭素繊維強化ペット樹脂ペレットP1は、引張強度120MPa、ヤング率4.0GPaおよび曲げ強さ194MPa、曲げ弾性率8.1GPaであった。
比較例1のPET樹脂のみの透明ペレットP1に比べると、本例R1での炭素繊維約15%の混合効果は、引張強さ2.0倍、ヤング率2.1倍、曲げ強さ2.3倍、曲げ弾性率3.9倍であった。機械的強度に大幅の改善された射出成形体が得られた。
実施例1とほぼ同一条件にて、ペレットR2の製造を実施した。但し、回収炭素維繊チョップの含有量を約30%にする為にその供給速度を2倍にし、ペット樹脂の供給速度を低下させた。
即ち、A成分のポリエステルとして市販ペット(PET)樹脂(汎用ボトルグレード:IV値0.80のペレット)100重量部(120Kg;120℃・12時間での熱風乾燥後の水分含有率約100ppm)と改質剤マスターバッチ(MB:PETG基体)6重量部(7.2Kg;C成分の結合体として多官能エポキシ樹脂0.45重量部、D成分の結合反応触媒0.30重量部)とをタンブラーを使用して、30rpm×10分間にわたり混合した。これらを第1ホッパーに納入した。B成分の炭素繊維として回収炭素繊維チョップ(ボビン巻のPAN系炭素繊維の回収品を集めて、6mm長に裁断したもの。40Kg)を第2ホッパーに納入した。
ドイツ・ベルストルフ社製の同方向2軸押出機(ZE40E:スクリュー口径42mm、L/D=38)を使用し、この押出機の10ブロックから成るシリンダ−とダイスの設定温度を150−270℃およびスクリュー回転数150rpmとし、回収炭素繊維チョップを第5ブロックに連続的に注入した。
重量式計量単軸フィーダーを使用し、第1ホッパーからA成分とC成分とD成分の混合樹脂ペレットを14.84Kg/hの速度で、また第2ホッパーから回収炭素繊維チョップを6.0Kg/h(炭素繊維の含有量28.8%)の速度で押出機に投入した。
ストランドを口径3mmの斜め下方向のノズルから三本を水中に連続的に押出し、引取り速度20m/分にて、回転カッタ−で切断して黒色樹脂ペレットR2を製造した。ストランド金型の樹脂圧力は1.1−1.2MPaで、金型出口から水盤中へのストランドは直線状であり溶融張力が増加していた。
この温かい黒色樹脂ペレットR2を直ちに120℃一夜熱風乾燥して後に、紙・アルミ・ポリエチレンの三層防湿袋に貯蔵した。収量は、65Kgであった。その形状は、円柱状で直径約3mm×長さ約5mmであった。また、MFR(280℃、荷重2.16Kg)は、25g/10分であった。
射出成形体の形状:引張試験片用 JIS K7162 5A型(厚み2mm)
また、同じ成形装置を使用し、実施例1とほぼ同様条件ではあるが、射出圧力120−12▲4▼MPaの条件にて、下記の射出成形体を成形する事が出来た。
射出成形体の形状:曲げ試験片用の短冊型 長さ80mm×巾10mm(厚み4mm)
両者共、バリの副生が無くて良好な射出成型性を示した。
尚、この炭素繊維強化ペット樹脂ペレットP2は、引張強度144MPa、ヤング率9.5GPaおよび曲げ強さ232MPa、曲げ弾性率14.2GPaであった。
比較例1のPET樹脂のみの透明ペレットP1に比べると、本例R2での炭素繊維約30%の混合効果は、引張強さ2.4倍、ヤング率5.0倍、曲げ強さ2.8倍、曲げ弾性率6.8倍であった。機械的強度が更に大幅に改善された射出成形体が得られた。
A成分のPET樹脂(ペットボトル用市販汎用品のペレット:IV値0.80、MFR 35g/10分)100重量部(3Kg)のみを使用し、実施例1とほぼ同様な押出条件にてペレットP1を製造し、透明ペレット2.9Kgを得た。ストランドは、金型出口から水面までに弓状に垂れ、水盤中では蛇行して溶融張力が小さいことを示した。この透明ペレットP1は、円柱状で直径約3mm×長さ約5mmであった。また、MFR(280℃、荷重2.16Kg)は、57g/10分であった。この溶融粘度は、射出成形に適しない。
このPET樹脂のみのペレットP1を、射出成形して引張試験片および曲げ試験片を成形した引張強さ59MPa、ヤング率1.9GPaおよび曲げ強さ84MPa、曲げ弾性率2.1GPaであった。
実施例2の乾燥された炭素繊維強化ペット樹脂の黒色ペレットR2を、日精樹脂工業(株)製のハイブリッド式射出成形機FNX140(型締め圧140トン)を使用し、成形温度280℃、金型温度135−145℃、射出ピ−ク圧力24MPa、充填速度30mm/秒、スクリュー回転数60rpmおよび冷却時間32秒(67−68秒/サイクル)の条件にて、下記の厚板状射出成形体を成形する事が出来た。
射出成形体:厚板 縦15cm×横15cm、厚み5mm、40枚
尚、この炭素繊維強化ペット樹脂からの厚板の機械的強度を測定するために、厚板の中心部について樹脂の流れ方向(MD方向)とその直角方向(TD方向)に裁断し、巾10mm×長さ120mm(厚み5mm)の試験片を製作した。厚板の裁断性は極めて良好で、バリの副生も無く、冷却用の空気、水または油などを全く必要としなかった。
MD方向/TD方向について、引張強度95/68MPa、ヤング率4.2/3.6GPaおよび曲げ強さ223/109MPa、曲げ弾性率16.4/9.4GPaであった。また、これら厚板の平均的比重は、1.43であった。
東レ(株)のカタログによれば、「トレカ」のカットファイバーの原糸の特性は、繊維直径7μm、比重1.76、引張強度3,530MPa、引張弾性率230GPaである。
本発明は、当面は土木・建築資材の用途を対象とする。近い将来は自動車産業、新幹線車両業、航空宇宙産業、リニヤーモーターカー等の先端産業分野に於ける内装材料や構成材料の強度改善による一層の軽量化・省エネルギー化の用途を対象とする。また、電波吸収性、導電性、耐熱性、放熱性等の一層の性能改善ができるので、この機能性材料分野の利用可能性が大きい。
Claims (7)
- (A)成分のポリエステル100重量部、(B)成分の炭素繊維5〜150重量部、(C)成分の結合剤として該分子内に2個以上のエポキシ基を含有する多官能エポキシ化合物0.1〜2重量部、(D)成分の結合反応触媒0.01〜1重量部から構成される組成物を、該ポリエステルの融点以上の温度で加熱して高溶融粘度の複合体とし、次いで射出成形体とすることを特徴とする炭素繊維強化ポリエステル樹脂およびその射出成形体の製造方法。
- (A)成分のポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネートまたはそれらの回収された成形品の再循環物のいずれか一種類以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維強化ポリエステル樹脂およびその射出成形体の製造方法。
- (B)成分の炭素繊維が、回収された炭素繊維の短繊維または粉末状繊維、再生された炭素繊維の短繊維または粉末状繊維からなる群のいずれか一種類以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維強化ポリエステル樹脂およびその射出成形体の製造方法。
- (B)成分の炭素繊維が、工業製品の炭素繊維の短繊維または粉末状繊維、電気化学的に酸化処理された工業製品の炭素繊維の短繊維または粉末状繊維または化学的酸化処理された工業製品の炭素繊維の短繊維または粉末状繊維のいずれか一種類以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維強化ポリエステル樹脂およびその射出成形体の製造方法。
- (C)成分の結合剤が、該分子内に2個以上のエポキシ基を保有する多官能エポキシ化合物を、単独または2種類以上混合使用することを特教とする請求項1に記載の炭素繊維強化ポリエステル樹脂およびその射出成形体の製造方法。
- (D)成分の結合反応触媒が、アルカリ金属のカルボン酸塩、アルカリ土類金属のカルボン酸塩、アルカリ金属の炭酸塩または炭酸水素塩、またはアルカリ土類金属の炭酸塩または炭酸水素塩からなる群のいずれか一種類以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維強化ポリエステル樹脂およびその射出成形体の製造方法。
- (C)成分の結合剤および(D)成分の結合反応触媒が、非結晶性ポリエステルまたはポリオレフィンからなる群のいずれか一種類以上を含有する樹脂を基体とするマスターバッチの形態で使用されることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維強化ポリエステル樹脂およびその射出成形体の製造方法。
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