JP2016041735A - 合成オリゴサッカリドを含有する医薬経口剤形 - Google Patents

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Abstract

【課題】抗血栓活性等の医薬特性を有するヘパリン関連ペンタサッカライド等を経口的にできる消化性が良く経時安定性が高い合成オリゴサッカリド製剤の提供。【解決手段】1〜18個のモノサッカリド単位を含む合成オリゴサッカリドを総重量に対して5重量%迄と、脂肪酸のトリグリセリドからなる親油性相を50〜80重量%と、ポリオールと脂肪酸との部分エステルからなり、HLBが7よりも低い少なくとも1つの親油性界面活性剤を10〜30重量%と、HLBが7よりも高い少なくとも1つの親水性界面活性剤を20重量%迄と、化学的及び/又は物理的安定化剤を0〜30重量%迄と、を含む、逆相エマルジョン又はマイクロエマルジョンの形態の医薬製剤。前記親油性相が中鎖脂肪酸のトリグリセリド、特に、カプリル酸のトリグリセリドからなり、少なくとも親水性溶媒(E)を含有する場合、前記物理的安定剤は存在しかつ、二酸化ケイ素である、医薬製剤。【選択図】なし

Description

本発明は、治療活性を有する合成オリゴサッカリドを含有する経口投与を意図した医薬製剤に関する。
合成オリゴサッカリド、特に、ヘパリン関連ペンタサッカリドは、抗血栓活性などの医薬特性を有する公知の化合物である。しかし、それらは、腸バリアを通過することができないため、静脈内または皮下投与しかできない。このことは、これらの臨床使用を大きく制限している。従って、これらのオリゴサッカリドの全てを経口による吸収可能とすることができれば非常に望ましい。
米国特許第4656161号に示されるように、非イオン性界面活性剤のみを用いることによって腸内吸収性を高める試みが行われてきた。しかし、界面活性剤が高すぎる量で存在することは、患者にとって毒性となり得る。さらに、ヘパリンに代えて合成オリゴサッカリドを用いる場合、本発明者らは、驚くべきことに、界面活性剤の性質が、腸内吸収性にあまり関係がないこと、およびラットにおける腸内吸収性、従って経口吸収性を高める目的で界面活性剤を単独で用いることができないことを見出した。
米国特許第5714477号は、体膜を通してのヘパリンの吸収を高める目的で、脂肪酸のグリセロールエステルの使用を開示している。特に、モノおよびジグリセリドは、トリグリセリドと比較して特に好ましい(段落3、行25〜31、および実施例1)。
米国特許第5626869号は、ヘパリンを経口、直腸内、または経皮投与するための定められた脂質系を含有する医薬組成物を開示しており、この場合、脂質成分の少なくとも1つは、両親媒性および極性であり、1つは非極性である。特に、極性脂質は、ホスファチジルコリンであり、非極性脂質は、モノグリセリドである。
国際公開第02/053100号は、少なくとも1つの親水性もしくは疎水性界面活性剤またはこれらの混合物、胆汁酸塩または胆汁酸、および遅延放出のための手段を含む低分子量ヘパリン製剤を開示している。特に、この組成物は、光学的に透明であり、実質的にトリグリセリドを含まない。
しかし、本発明者らは、驚くべきことに、合成オリゴサッカリドの腸内吸収性、および従って経口吸収性を改善するためには、ポリオールおよび脂肪酸の部分エステルとの混合物として特定の量のトリグリセリドが存在することが必要であることを見出した。
Kim S.K. et al. (2005)は、マウスおよびサルにおける低分子量ヘパリン接合体の経口送達のためのマイクロエマルジョンを開発した。LMWHは、腸内吸収を促進するためにデオキシコール酸(DOCA)と化学的に結合され、トリグリセリド、水、および非イオン性界面活性剤と混合される。しかし、本発明者らは、そのような界面活性剤は、特定の量を超えて存在する場合、製剤の消化性に悪影響を与え得ることを見出した。加えて、本発明者らの観察によると、合成オリゴサッカリドの量が多いことは、オリゴサッカリドの物理的な経口による生体利用度に悪影響を与えることから、望ましいものではない。
米国特許第6761903号は、ヘパリンなどの共投与された治療剤の生体吸収の速度および/または度合いを上昇させることができる特定の医薬組成物を開示している。そのような組成物は、トリグリセリドを含むキャリア、および1つが親水性であり他の1つが疎水性である少なくとも2つの界面活性剤を含有する。これらの界面活性剤の長いリストがこの文書に示されているが、特定の混合物を特に指し示してはいない。この組成物のその他の唯一の重要な特徴は、透明である必要があるということであり、すなわち、特定の吸光特性を有する必要がある。
しかし、本発明者らは、驚くべきことに、吸光特性は経口送達後の吸収の度合いに影響を与えないこと、および特定の量の特定の疎水性界面活性剤のみが、良好な経口による生体利用度を有する合成オリゴサッカリド含有医薬組成物を得るために使用可能であることを見出した。
Lyons K.C. et al. (2000)は、非ヘパリンオリゴサッカリド(GMDP)の経口による生体利用度を高めるための逆相マイクロエマルジョン(reverse microemulsion)を開発した。このマイクロエマルジョンは、水相、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸のモノおよびジグリセリド、ならびにポリオキシエチレン‐ソルビタンモノオレエートを含有する。しかし、この製剤は、ラットに対して十二指腸内投与されただけであり、経口投与はされなかった。加えて、GMDP化合物の生体利用度は、短い時間にわたって評価されただけであり(6時間)、マイクロエマルジョンの経時安定性は評価されていない。驚くべきことに、本発明者らは、これらの製剤にオリゴサッカリドを添加すると、エマルジョンの液滴サイズが変化し、これは続いてエマルジョンの安定性に影響を与え、従って、オリゴサッカリドの適切な投与が阻害されることを見出した。この問題を回避するために、本発明者らは、本発明のエマルジョンに特定の安定化剤を添加した。前記エマルジョンは、経時安定性が特に高く、これは、これらのエマルジョンの粒子サイズ分布が、ポリエチレンキャップで閉じたガラスビン中に40℃、湿度75%で保存した後、最大3ヶ月までは上昇しないという意味である。
まとめると、本発明者らは、驚くべきことに、腸内吸収性の向上にとって重要なことは、消化性が良く経時安定性が高い製剤を用いることであることを見出した。従って、消化性が良く経時安定性が高い合成オリゴサッカリドの製剤を得るためには、製剤の成分およびそれらの量を特別に選択する必要がある。加えて、本製剤は、工業的スケールでの生産に適する。
従って、本発明は、1から18個のモノサッカリド単位を含み、治療活性を有する合成オリゴサッカリド、またはその薬理学的に許容される付加塩もしくは溶媒和物を含有する、経口投与を意図した医薬製剤に関し、ここで、この製剤は:
a)製剤の総重量に対して5重量%まで、有利には、製剤の総重量に対して1重量%までの量の合成オリゴサッカリド(A)、
b)製剤の総重量に対して50から80重量%、有利には、製剤の総重量に対して50から70重量%の量の、脂肪酸のトリグリセリドからなる親油性相(B)、
c)製剤の総重量に対して10から30重量%、有利には、製剤の総重量に対して15から30重量%の量の、ポリオールと脂肪酸との部分エステルからなり、HLBが7よりも低い少なくとも1つの親油性界面活性剤(C)、
d)製剤の総重量に対して20重量%まで、有利には、製剤の総重量に対して15重量%までの量の、HLBが7よりも高い少なくとも1つの親水性界面活性剤(D)、
e)所望により含有してもよい(optionally)、製剤の総重量に対して15重量%まで、有利には、製剤の総重量に対して10重量%までの量の、少なくとも1つの親水性溶媒(E)、
f)製剤の総重量に対して0から30重量%、有利には、製剤の総重量に対して0から20重量%の化学的および/または物理的安定化剤(F)、
を含有し、ここで、製剤が、逆相エマルジョン(reverse emulsion)またはマイクロエマルジョンの形態であり、少なくとも1つの親水性溶媒(E)を含有する場合、物理的安定化剤は存在し、それは二酸化ケイ素である。
本発明の意味において、「1から18個のモノサッカリド単位を含む合成オリゴサッカリド」とは、天然には存在せず、共有結合を介して一緒に連結した1から18個のモノサッカリド単位を含むいずれのオリゴサッカリドまたはオリゴサッカリド誘導体をも意味することを意図するものである。
本発明の合成オリゴサッカリドは、従って、「従来の」オリゴサッカリド(1から10個のモノサッカリド単位を有するサッカリド)に限定されず、18個までのモノサッカリド単位を有するポリサッカリド(少なくとも10個のモノサッカリド単位を有するサッカリド)も含む。
有利には、本発明の合成オリゴサッカリドは、3から18個のモノサッカリド単位を含み、より有利には、3から10個の単位、なおさらにより有利には、3から5個の単位を含む。
特に、モノサッカリド単位を連結する共有結合は、グリコシド結合である。それはまた、オリゴサッカリド二量体を形成するためのリンカーでもあり得る。本発明で用いられる適切なモノサッカリド単位は、得られるオリゴサッカリドが合成物である限りにおいて、天然および合成モノサッカリドの両方を含む。特に、本発明のモノサッカリド単位は、少なくとも5個の炭素原子を含有する。より詳細には、それは、最大で9個の炭素原子を含有する。そのようなモノサッカリド単位としては、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、ならびにそれらのデオキシおよびデオキシアミノ誘導体などのペントース;アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロースなどのヘキソース;フルクトース、およびソルボース、ならびにそれらのデオキシおよびデオキシアミノ誘導体などのケトースが挙げられる。特に有利な態様によれば、モノサッカリド単位はヘキソースである。
Figure 2016041735
モノサッカリド単位は、別のモノサッカリド単位のC、C、C、C、C、およびC位(上記で示す)へ、アノマー炭素としても知られるそのC炭素原子を介して連結されて、本発明のグリコシド結合およびオリゴサッカリドを形成してよい。特定の態様によれば、モノサッカリド単位のアノマー炭素は、酸素原子を介して別のモノサッカリド単位のC位へ結合している。本発明で用いることができるオリゴサッカリドとしては:ジサッカリド、トリサッカリド、テトラサッカリド、ペンタサッカリド、ヘキササッカリド、へプタサッカリド、オクタサッカリド、ノナサッカリド、デカサッカリド、ウンデカサッカリド、およびドデカサッカリドが挙げられる。
有利には、本発明のオリゴサッカリドとしては、トリサッカリド、テトラサッカリド、ペンタサッカリド、ヘキササッカリド、へプタサッカリド、オクタサッカリド、ノナサッカリド、およびデカサッカリド、ウンデカサッカリド、およびドデカサッカリドが挙げられる。さらにより有利には、本発明のオリゴサッカリドとしては、ペンタサッカリドが挙げられる。
サッカリドの立体異性体は、アノマー炭素の立体配置のみが異なっている場合があり、アルファおよびベータアノマーを発生させる。例として、グルコースの2つの環状形態であるα‐D‐グルコピラノースおよびβ‐D‐グルコピラノースを以下に示す。L‐サッカリドの場合、アルファおよびベータアノマーは、逆向きである。
Figure 2016041735
本発明のモノサッカリド単位環は、開環または閉環した形態で存在してよく、閉環した形態を本明細書にて示すが、開環した形態も本発明に包含される。同様に、例えば、互変異性体、配座異性体、エナンチオマーも包含される。
「オリゴサッカリド誘導体」とは、天然の官能基(ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシレート基など)のいくつかが、非天然置換基で置換されたか、またはそれを有しているオリゴサッカリドを意味する。
例えば、ヒドロキシル基が水素原子で置換されて、デオキシ糖が生成されてよい。それが置換されて、エステルまたはエーテルが形成されてよい。より高度な変形では、それは、受容体アンタゴニストまたは酵素阻害剤(以下で示すように)のような薬理活性である付属物質(appendage)によって置換されていてよい。有利には、本発明の非天然置換基は、デオキシコール酸(DOCA)を含まない。
本発明の化合物の荷電形態を相殺する対イオンは、水素、または典型的には、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびカリウムを含むアルカリもしくはアルカリ土類金属イオンなどの薬理学的に許容される対イオンである。薬理学的に許容される有機化合物の塩、特にアミン誘導塩も包含される。薬理学的に許容される塩のリストは、J. Pharm. Sci., 66, 1977, 1-19、またはInt. J. Pharm., 33, 1986, 201-217に記載されている。
本発明のオリゴサッカリドは、国際公開第2007/042470号に記載のものなどの受容体アンタゴニストのような、または国際公開第01/42262号に記載のものなどの酵素阻害剤のような小分子薬物と結合してよく、それらはまた、ビオチンまたはビオチン誘導体と、特に、欧州特許第1 322 673号または国際公開第2006/067173号または国際公開第2007/042469号に記載のものなどのリンカーを用いることで、結合していてもよい。
本発明のオリゴサッカリドは、その治療剤としての使用を可能とする薬理活性を示す。
例えば、それらは、静脈血栓塞栓症(静脈炎、深部静脈血栓症、肺塞栓症)および/または血液凝固障害に関連する病状の予防ならびに治療に用いることができる。それらはまた、動脈血栓症(急性冠症候群、心筋梗塞、脳卒中(stroke))の予防ならびに治療にも用いることができる。
特に、本発明のオリゴサッカリドは、ヘパリン関連オリゴサッカリドであり、より詳細には、ヘパリン関連ペンタサッカリドである。有利には、本発明のオリゴサッカリドは、以下から選択される:
‐フォンダパリヌクス、特に、以下の式のフォンダパリヌクスのナトリウム塩:
Figure 2016041735
(分子式:C31H43N3Na10O49S8;分子量:1728.0891)、および、本明細書にて以下でフォンダパリヌクスベンザチンと称する、式CCHNHCHCHNHCHのプロトン化ベンザチンで上記ナトリウムイオンが置換された、フォンダパリヌクスのベンザチン塩、および、米国特許第4,818,816号に記載のオリゴサッカリド、
‐化合物675、特に以下の式のそのナトリウム塩の形態:
Figure 2016041735
(分子量:2469.19;分子式:C79H117N7Na8O56S7)、および、国際公開第01/42262号に記載のオリゴサッカリド;
‐化合物609、特に以下の式のそのナトリウム塩の形態:
Figure 2016041735
(分子量:2823.67、分子式:C95H143N11Na8O59S8)、および、国際公開第2006/067173号に記載のオリゴサッカリド、
‐化合物122、特に以下の式のそのナトリウム塩の形態:
Figure 2016041735
(分子量:1734.36;分子式:C46H71NNa8O45S6)、および、以下の式のそのビオチン化対応物:
Figure 2016041735
‐ならびに、化合物147、特に以下の式のそのナトリウム塩の形態:
Figure 2016041735
(分子量:1826.41;分子式:C48H75NNa8O49S6)、および、以下の式のそのビオチン化対応物:
Figure 2016041735
および、国際公開第2008/041131号に記載のオリゴサッカリド。
イオン性基は、本明細書にて上記の式で示される中性の形態で存在してよく、または、例えばpHに応じて、荷電形態で存在してもよいことは理解されるであろう。従って、カルボキシレート基は、中性のカルボキシレート基の単なる代表であるCOOHとして示される場合がある。本発明はまた、その他の荷電形態(すなわち、COO)も包含する。
同様に、本明細書においてカチオン性およびアニオン性基への言及は、生理学的条件下にてその基上に存在する荷電を意味するものと理解されるべきであり、例えば、サルフェート基O−SOHが脱プロトン化されてアニオン性のO−SO 基となる場合、この脱プロトン化は、生理学的pHで発生するものである。加えて、カルボキシル基COOHが脱プロトン化されてアニオン性のCOO基となる場合、この脱プロトン化は、生理学的pHで発生し得るものである。さらに、本発明の分子の荷電塩も包含される。
特に、合成オリゴサッカリドは、そのナトリウム塩の形態である。
本発明の合成オリゴサッカリド(A)は、製剤の総重量に対して5重量%以下、有利には、製剤の総重量に対して1重量%以下の量で本発明の製剤中に存在する。特に、合成オリゴサッカリドは、製剤の総重量に対して少なくとも0.1重量%、より好ましくは、少なくとも0.5%の量で本発明の製剤中に存在し、より詳細にはオリゴサッカリドがヘパリン関連ペンタサッカリドの場合である。
本発明の製剤は、製剤の総重量に対して50から80重量%、有利には、製剤の総重量に対して50から70重量%、より有利には、製剤の総重量に対して55から65重量%、さらにより有利には、製剤の総重量に対して58から64重量%の量の、脂肪酸のトリグリセリドからなる親油性相(B)を含有する。製剤を消化可能とするために、製剤の総重量に対して少なくとも50重量%のトリグリセリドの存在が必要である。これは、GI液中の膵臓リパーゼによって、グリセリドが2‐モノグリセリドおよび遊離脂肪酸に脱エステル化されることを意味している。
本発明の合成オリゴサッカリドは、トリグリセリド中に易溶性ではなく、および合成オリゴサッカリドの製剤を得るには、他の成分も製剤中に含める必要があることから、製剤は、80重量%を超えるトリグリセリドを含有することはできない。
本発明の意味において、「脂肪酸のトリグリセリド」の用語は、薬理学的におよび経口的に許容される飽和または不飽和脂肪酸のいずれのトリグリセリドも意味することを意図している。特に、それらは、以下の式:
Figure 2016041735
を有し、ここで、R1、R2、およびR3は、互いに独立して、親脂肪酸のアルキルまたはアルケニル基を表す。
脂肪酸は、飽和であっても、または不飽和であってもよい。特に、不飽和脂肪酸は、消化反応速度が遅く、消化割合が低いことから、脂肪酸は、飽和である。
最も一般的な飽和脂肪酸を、以下の表1に示す:
Figure 2016041735
従って、有利には、R1、R2、およびR3は、直鎖状または分岐鎖状、特には直鎖状の、C‐C23アルキルまたはアルケニル基、より有利にはアルキル基、特にはC‐C13アルキルまたはアルケニル基、有利にはアルキル基、さらにより有利には、C‐Cアルキルまたはアルケニル基、特にはアルキル基を表す。特に、脂肪酸は、飽和脂肪酸であり、中鎖脂肪酸である。従って、親油性相(B)は、長鎖(例えば、大豆油および魚油など)、中鎖、または短鎖(例えば、三酢酸グリセリルなど)脂肪酸のトリグリセリド、特に、中鎖脂肪酸のトリグリセリド、より詳細には、カプリル酸、カプリン酸、またはこれらの混合物のトリグリセリド(例えば、市販品であるMygliol 812(登録商標)、Captex 355(登録商標)、Estasan(登録商標)、Neobee M5(登録商標)、およびLabrafac CC(登録商標)など、特にMygliol 812(登録商標))、さらにより詳細にはカプリン酸のトリグリセリド(例えば、市販品のCaptex 1000(登録商標))からなる。
すべてのトリグリセリドの中で、中鎖脂肪酸(すなわち、C‐C12脂肪酸)のトリグリセリドが最も消化性が良く、特に、カプリル酸および/またはカプリン酸のトリグリセリド、より詳細には、カプリン酸のトリグリセリドである。しかし、驚くべきことに、本発明者らは、C‐C10脂肪酸がより良好な生体利用度(biodisponibility)を有することを見出した。従って、C‐C10脂肪酸のトリグリセリドが、本発明の製剤において最も有利なものである。
本発明の製剤は、製剤の総重量に対して10から30重量%、有利には、製剤の総重量に対して15から30重量%、さらにより有利には、製剤の総重量に対して15から27重量%、なおさらにより有利には、製剤の総重量に対して16から26重量%の量の、ポリオールと脂肪酸との部分エステルからなり、HLBが7よりも低い親油性界面活性剤(C)の少なくとも1つ(または有利な方法では、混合物)を含有する。
HLB値(親水性‐親油性バランス)は、非イオン性界面活性剤の相対的な親水性および疎水性を特定するために当業者によって一般的に用いられる実験的パラメータである。
7よりも小さいHLB値を有する界面活性剤は、より疎水性であり、油中での溶解性が高く、一方7よりも大きいHLB値を有する界面活性剤は、より親水性であり、水性媒体中での溶解性が高い。界面活性剤のHLB値の特定には、分子の異なる領域の値を算出することによる、当業者に公知の方法が用いられる。
親油性(C)界面活性剤は、合成オリゴサッカリドの消化性の向上に関与する。所望により、それは、均質な系の形成に関与する場合もある。
合成オリゴサッカリド(A)および親油性相(B)の両方を含有する製剤を得るためには、製剤の総重量に対して少なくとも10重量%の量の親油性界面活性剤(C)が必要である。
本発明の製剤は、製剤の総重量に対して30重量%を超えて本発明の親油性界面活性剤(C)を含有しないことが有利であり、それは、そうでなければ、製剤の消化性が低下するからである。
本発明の意味において、「ポリオールと脂肪酸との部分エステル」の用語は、薬理学的におよび経口的に許容される、ポリオールと飽和または不飽和脂肪酸との、特には飽和脂肪酸とのエステル化によって得られるいずれの部分エステルも意味することを意図している。
最も一般的な飽和脂肪酸を、上記の表1に示す。有利には、脂肪酸は、C‐C12脂肪酸などの中鎖脂肪酸、特にカプリル酸および/またはカプリン酸、より詳細には、カプリン酸である。ポリオールは、例えば、プロピレングリコールおよびグリセロールからなる群より選択されるものであってよい。例えば、ポリオールと脂肪酸との部分エステルは、脂肪酸のプロピレングリコールモノ‐および/もしくはジ‐エステル(Lauroglycol(登録商標)の商品名で販売されているプロピレングリコールモノラウレート、Mirpyl(登録商標)の商品名で販売されているプロピレングリコールモノミリステート、またはCaptex 200(登録商標)、Miglyol 840(登録商標)、もしくはNeobee M‐20(登録商標)の商品名で販売されているプロピレングリコールジカプリレート/ジカプレートなど)、ならびに/または脂肪酸のポリグリセロールエステル(Plurol oleique(登録商標)もしくはDrewpol 10.10.10(登録商標)の商品名で販売されているポリグリセリルオレエート、またはCaprol ET(登録商標)の商品名で販売されているポリグリセリル混合脂肪酸エステルなど)であってよい。
特に、親油性界面活性剤(C)は、プロピレングリコールと脂肪酸の部分エステルから成っていてよい(例えば、市販品であるCapryol PGMC(登録商標)およびCapmul PG‐8(登録商標)など)。有利には、親油性界面活性剤(C)は、脂肪酸のモノおよびジグリセリドの混合物からなり、より有利には、中鎖脂肪酸のモノおよびジグリセリドの混合物であり、さらにより有利には、カプリル酸および/またはカプリン酸のモノおよびジグリセリドの混合物(例えば、市販品であるCapmul MCM(登録商標)およびCapmul MCM C8(登録商標)、Imwitor 988(登録商標)、Imwitor 742(登録商標)など)であり、なおさらにより詳細には、カプリン酸のモノおよびジグリセリドの混合物(例えば、市販品であるCapmul MCM C10(登録商標)またはImwitor 308(登録商標)など)である。
本発明者らは、驚くべきことに、ポリオールと脂肪酸との部分エステルの全ての中で、中鎖飽和脂肪酸(すなわち、C‐C12脂肪酸)のモノおよびジグリセリドの混合物、特に、カプリル酸および/またはカプリン酸のモノおよびジグリセリドの混合物、より詳細には、カプリン酸のモノおよびジグリセリドの混合物が、最も良好な消化性を有することを見出した。
本発明の製剤は、製剤の総重量に対して20重量%まで、有利には、製剤の総重量に対して15重量%まで、より有利には、製剤の総重量に対して少なくとも3重量%、さらにより有利には、製剤の総重量に対して少なくとも5重量%、なおさらにより有利には、製剤の総重量に対して少なくとも9重量%、特には、製剤の総重量に対して10重量%まで、の量の、少なくとも1つの(または、有利な方法では、混合物としての)HLB値が7よりも高い親水性界面活性剤(D)を含有する。
親水性界面活性剤の存在は、本発明の親油性相(B)での合成オリゴサッカリドの溶解性の向上、および製剤の分散性の改善のために必要である。しかし、親水性界面活性剤が特定の度合いを超えると、製剤の消化性に悪影響を与える。従って、その量は、製剤の総重量に対して20重量%を超えてはならない。
本発明の意味において、「親水性界面活性剤」の用語は、7より高い、有利には10より高いHLB値を有する、薬理学的におよび経口的に許容されるいずれの親水性界面活性剤をも意味することを意図している。
有利には、親水性界面活性剤は:
− リン脂質、特にレシチン、例えばダイズレシチン;
− ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸誘導体、例えば、ポリオキシエチレン(20)モノラウレート(Tween 20(登録商標)の商品名で市販)、ポリオキシエチレン(20)モノオレエート(Tween 80(登録商標)および/またはCrillet 4(登録商標)の商品名で市販)、またはポリオキシエチレン(20)モノパルミテート(Montanox 40(登録商標)の商品名で市販)など;
− HLB値が10よりも高い、ヒマシ油または硬化ヒマシ油エトキシレート、例えばポリオキシエチレン(35)ヒマシ油(Cremophor EL(登録商標)の商品名で市販)、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油(Cremophor RH40(登録商標)の商品名で市販)、ポリオキシエチレン(40)ヒマシ油(Etocas 40(登録商標)の商品名で市販)、またはポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油(Nikkol HCO‐60(登録商標)の商品名で市販)など;
− HLB値が10よりも高い、脂肪酸エトキシレート、例えばポリオキシエチレン(8)ステアレート(Myrj 45(登録商標)の商品名で市販)、ポリオキシエチレン(30)モノラウレート(Tagat L(登録商標)の商品名で市販)、ポリオキシエチレン(20)ステアレート(Marlosol 1820(登録商標)の商品名で市販)、またはポリオキシエチレン(15)オレエート(Marlosol OL15(登録商標)の商品名で市販)など;
− HLB値が10よりも高い、アルコールエトキシレート、例えばポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル(Bril 96(登録商標)の商品名で市販)、ポリオキシエチレン(15)オレイルエーテル(Volpo 015(登録商標)の商品名で市販)、ポリオキシエチレン(30)オレイルエーテル(Marlowet OA30(登録商標)の商品名で市販)、またはポリオキシエチレン(20)C12‐C14脂肪エーテル(Marlowet IMA20(登録商標)の商品名で市販)など;
− HLB値が10よりも高い、ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレンコポリマーおよびブロックコポリマー、例えばHLB値=16である商品名Syperonic PE L44(登録商標)で市販されている製品、またはHLB値=22である商品名Syperonic F127(登録商標)で市販されている製品など;
− アニオン性界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、またはジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなど、または、
− HLB値が10よりも高い、アルキルフェノール界面活性剤、例えばポリオキシエチレン(9‐10)ノニルフェノール(Triton N‐101(登録商標)の商品名で市販)またはポリオキシエチレン(9)ノニルフェノール(Synperonic NP9(登録商標)の商品名で市販)など;
− ビタミンE;
− D‐アルファ‐トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート(TPGS)、または、
− PEG15ヒドロキシステアレート(Solutol HS 15(登録商標)の商品名で市販)、
であってよい。
有利には、親水性界面活性剤は、ポリエトキシル化界面活性剤であり、より有利には、それは、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ならびにグリセロールおよび脂肪酸のポリオキシエチレンエステルなどの脂肪酸のポリオキシエチレンエステルからなる群より選択される。
有利には、脂肪酸は、飽和または不飽和である。最も一般的な飽和脂肪酸を、上記の表1に示す。有利には、脂肪酸は、C‐C12脂肪酸、特にラウリン酸、カプリル酸、および/またはカプリン酸などの中鎖脂肪酸である。
有利には、界面活性剤中のエチレンオキシド基ユニットの数は、4から20までより選択される。有利には、親水性界面活性剤(D)は、ポリオキシエチレン(20)モノオレエート(例えば、市販品Tween 80(登録商標)など)、PEG8カプリル/カプリン酸グリセリド(例えば、市販品Labrasol(登録商標)など)、PEG6カプリル/カプリン酸グリセリド(例えば、市販品Softigen 767(登録商標)など)、ポリ(オキシエチレン)(4)ラウリルエーテル(例えば、市販品Brij 30(登録商標)など)、およびこれらの混合物からなる群より選択される。
本発明の製剤は、所望により、少なくとも1つの(または、有利な方法では、混合物としての)親水性溶媒(E)を、製剤の総重量に対して15重量%まで、有利には、製剤の総重量に対して10重量%までの量で含有してよい。本発明の製剤に親水性溶媒が存在する場合、その最少含有量は、有利には、製剤の総重量に対して1重量%、さらにより有利には、製剤の総重量に対して1.5重量%である。
親水性溶媒は、合成オリゴサッカリドに関して、そのようなオリゴサッカリドが特に水溶性、および/または(B)、(C)、および(D)の混合物中で不溶性である場合に、その可溶化を可能とする。
本発明の意味において、「親水性溶媒」の用語は、本発明の合成オリゴサッカリドの可溶化を可能とするいかなる溶媒をも意味することを意図している。特に、それは、プロピレングリコール、PEG 400、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセロールトリアセテート、エタノール、グリセロール、ジメチルイソソルビド、N‐メチル‐2‐ピロリドン、ポロキサマー、水、およびこれらの混合物からなる群より選択され、有利には、プロピレングリコール、PEG 400、エタノール、水、およびこれらの混合物からなる群より選択される。
本発明の製剤は、製剤の総重量に対して0から30重量%、有利には、0から20重量%の化学的および/または物理的安定化剤(F)を含有してよい。
特に、製剤が逆相エマルジョンまたはマイクロエマルジョンの形態であり、少なくとも1つの親水性溶媒(E)を含有する場合、物理的安定化剤は存在し、それは二酸化ケイ素である。
本発明の意味において、「化学的および/または物理的安定化剤」の用語は、2006年6月2日発行、ICH調和三極ガイドライン(ICH Harmonized Tripartite Guidelin)
ICH Q3B(新規医薬品の不純物(Impurities In new drug products))の最新のステップ4バージョンの要求事項に適合させるために製剤中のオリゴサッカリドの化学的安定性を改善し、ならびに均質な製剤を得るためにオリゴサッカリド製剤の物理的安定性を改善するいずれの医薬成分をも意味することを意図している。
特に、製剤が親水性溶媒(E)を含有し、製剤が、逆相エマルジョンまたはマイクロエマルジョンの形態である場合、化学的安定化剤は、以下のものなどの親油性界面活性剤であってよい:
− 脂肪酸のモノ‐および/またはジ‐グリセリドの酢酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、および/または酒石酸エステル、例えば、蒸留アセチル化モノグリセリド(商品名Myvacet 9‐45(登録商標)で市販)、カプリル酸/カプリン酸ジグリセリルスクシネート(商品名Miglyol 829(登録商標)で市販)、モノ/ジ‐スクシニル化モノグリセリド(商品名Myverol SMG(登録商標)で市販)、グリセリルステアレートシトレート(商品名Imwitor 370(登録商標)で市販)、グリセリルモノステアレート/シトレート/ラクテート(商品名Imwitor 375(登録商標)で市販)、またはモノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(diacetyl tartaric asters of monoglycerides)(商品名Cordatem T22(登録商標)で市販)など;
− エチレンオキシドを脂肪酸または脂肪酸のグリセロールエステルと反応させることで形成される、HLB値が10より低い酸エステルエトキシレート、例えば、ポリオキシエチレン(4)ラウリン酸(商品名Crodet 04(登録商標)で市販)、ポリオキシエチレン(2)ステアリン酸(商品名Cithrol 2MS(登録商標)で市販)、ポリオキシエチレン(3)ステアリン酸(商品名Marlosol 183(登録商標)で市販)、またはグリセリル 12 EO ジオレエート(商品名Marlowet G12DO(登録商標)で市販)など;
− 脂肪酸のソルビタンエステル、例えば、ソルビタンモノラウレート(商品名Span 20(登録商標)またはCrill 1(登録商標)で市販)、またはソルビタンモノオレエート(商品名Crill 4(登録商標)で市販)など、
− HLB値が10よりも低い、天然もしくは硬化植物油トリグリセリドおよびポリアルキレンポリオールのエステル交換生成物、例えば、ポリオキシエチル化杏仁油(商品名Labrafl M1944CS(登録商標)で市販)、ポリオキシエチル化トウモロコシ油(商品名Labrafl M2125CS(登録商標)で市販)、またはポリオキシエチル化硬化油(商品名Gelucire 37/06(登録商標)で市販)など、または、
− HLB値が10よりも低いアルコールエトキシレート、例えば、ポリオキシエチル化(3)オレイルエーテル(商品名Volpo N3(登録商標)で市販)、ポリオキシエチル化(2)オレイルエーテル(商品名Brij 93(登録商標)で市販)、またはポリオキシエチル化(4)ラウリルエーテル(商品名Marlowet LA4(登録商標)で市販)など。
特に、製剤が親水性溶媒(E)を含有し、製剤が、逆相エマルジョンまたはマイクロエマルジョンの形態である場合、物理的安定化剤は、二酸化ケイ素(商品名Aerosil
A300(登録商標)またはR972(登録商標)で市販)などの固体基材であってよい。
化学的安定化剤は:
− オリゴサッカリドおよび逆相エマルジョンを安定化させるための緩衝剤(クエン酸、リン酸、または酢酸バッファー)および/または、
− 部分硬化油、硬化油、不飽和もしくは飽和脂肪酸のモノエステルなどの逆相エマルジョン安定性を安定化させるための増粘剤、
であってよい。
特定の態様によれば、本発明の製剤は、液体であり、特に、溶液の形態を有する。
別の特定の態様によれば、親水性溶媒(E)が存在する場合、本発明の製剤は、逆相マイクロエマルジョン(例:油中水型)、または逆相エマルジョン(例:油中水型)、または油中ミセル溶液の形態である。この場合、合成オリゴサッカリドは、マイクロエマルジョンもしくはエマルジョンの親水性相、またはミセル溶液のミセルに存在する。逆相エマルジョンの安定化に必要とされるいずれの安定化剤(F)を添加してもよい。これには、上述のように、増粘剤、ポリマー、界面での立体障害を発生させる粒子(二酸化ケイ素など)が含まれるが、これらに限定されない。
物理剤が二酸化ケイ素である特定の場合、前記二酸化ケイ素は、有利には、製剤の総重量に対して5〜20重量%の量で、より有利には、6〜18%の量で、さらにより有利には、7〜16%、8〜14%、または9〜12%の量で存在する。
本製剤における二酸化ケイ素は、コロイド状二酸化ケイ素である。コロイド状二酸化ケイ素は、ヒュームド二酸化ケイ素、シリカヒューム、または発熱性シリカとしても知られる。そのような二酸化ケイ素は、Aerosil(登録商標)(エボニックインダストリーズ(Evonik industries))、Cab‐O‐Sil(登録商標)(キャボットコーポレーション(Cabot Corporation))、およびWacker HDK(登録商標)(ワッカー‐ケミー社(Waccker-Chemie GmbH))の商品名で市販されている。
本製剤における二酸化ケイ素は、親水性または疎水性であってよい。親水性二酸化ケイ素は、通常、水素‐酸素炎を用いて、クロロシランを1800℃で加水分解することで調製することができる。冷却直後に、疎水性二酸化ケイ素を調製する目的で、親水性二酸化ケイ素を、流動床反応器内にて有機ケイ素化合物でさらに処理してよい。このような有機ケイ素化合物としては、これらに限定されないが、D4(オクタメチルシクロテトラシロキサン)、DDS(ジメチルジクロロシラン)、DMPS(ポリジメチルシロキサン)、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)、HMDSおよびAS(ヘキサメチルジシラザンおよびアミノシラン)、メタクリルシラン、オクチルシラン、ならびにヘキサデシルシランが挙げられる。疎水性二酸化ケイ素の炭素含有量は、好ましくは、前記二酸化ケイ素の総重量の0.5から6.5重量%の量である。有利には、炭素含有量は、前記二酸化ケイ素の総重量の0.5から5.5%、0.5から4.5%、0.5から3.5%、0.5から2.5%、0.5から1.5%の量である。より好ましくは、疎水性二酸化ケイ素の炭素含有量は、前記二酸化ケイ素の総重量の0.5から1.5%の量である。
疎水性処理を通して、nmあたりのシラノール基の密度が、親水性二酸化ケイ素のおよそ2SiOH/nmから疎水性物の0.75SiOH/nmまで減少する。
本製剤における二酸化ケイ素は、好ましくは、疎水性であり、DDS(ジメチルジクロロシラン)による処理後に疎水性であることがより好ましい。有利には、本発明の疎水性二酸化ケイ素のシラノール基密度は、0.75SiOH/nmである。特に、本発明の疎水性二酸化ケイ素は、Aerosil R972(登録商標)の品名で、より詳細には、Aerosil R972(登録商標)Pharmaの品名で市販されている。
本製剤における二酸化ケイ素の平均一次粒子サイズは、7から40nmまで、有利には、7から20nmまで、より有利には、7から10、10から13、13から16、または16から20までを含んでよい。
本製剤における二酸化ケイ素の比表面積は、BET法に従って測定した場合、50から450m/gまでを含んでよい。有利には、前記比表面積は、90から450m/gまで、有利には、90から400m/gまで、90から350m/gまで、90から300m/gまで、または90から250m/gまで、90から200m/gまで、さらにより有利には、90から150m/gまでを含む。
本製剤における二酸化ケイ素のタップ密度は、0.04から0.28g/cmまでを含んでよい(DIN EN ISO 787/11、aug 1983)。有利には、前記密度は、約0.04g/cm、0.05g/cm、0.06g/cm、0.07g/cm、0.08g/cm、0.09g/cm、0.1g/cm、および0.2g/cmである。より有利には、前記密度は、約0.05g/cmである。
物理剤が二酸化ケイ素であり、親水性溶媒(E)が存在する特定の場合、二酸化ケイ素の役割は、製剤を安定化し、オリゴサッカリド(A)の生体利用度の変動を低減することであり、特に前記製剤がイヌに投与される場合である。
有利には、本発明の製剤は、均質である。特に、製剤は、オリゴサッカリドが親水性相に含まれている、逆相マイクロエマルジョン、逆相エマルジョン、またはミセル溶液からなる均質製剤であってよい。
本発明の意味において、「均質医薬製剤」は、1999年8月3日発行の、産業界のためのFDAガイダンス ANDAS:ブレンドの均一性(FDA Guidance for Industry ANDAS:Blend Uniformity)に適合する大量の充填用製剤の製造、および/もしくは含量均一性試験基準(質量変動の評価は除く − 欧州薬局方 投与単位の均一性(Uniformity of Dosage Units)2.9.40、USP ジェネラルチャプター<905>、および日本薬局方 6.02 製剤均一性試験法)に適合する使用可能な最終医薬剤形の製造に用いることができ、ならびに/または製造プロセス全体を通して採取された層化抽出サンプルに対して、安定な薬物含有率の結果を順守することができる、いかなる単一または複数相製剤をも意味することを意図している。
本発明の製剤は、以下のプロセスに従って調製することができる:
まず、工程1として、合成オリゴサッカリド(A)を、完全に溶解するまで親水性溶媒(E)と混合する。所望により、親水性界面活性剤(D)および/または疎水性界面活性剤(B)を添加してもよい。溶解の継続時間は、バッチサイズに応じた時間間隔で目視および顕微鏡での観察を実施することによるプロセスコントロールによって完全溶解が達成されるまでとして設定される。混合速度は、バッチサイズおよび装置形状に応じて異なる。このプロセスは、室温、または融点の最も高い成分の融点よりも5℃高い温度にて実施する。溶解の速度は、温度を上昇させることで改善することができる。通常、オリゴサッカリドの溶解は、親水性相にて、標準的な低せん断ミキサーを用い、室温で5から15分以内に達成することができる。
工程2では、親油性相(B)、残りの成分、および工程1で得られた前記のオリゴサッカリド溶液を混合し、本発明の製剤を得る。逆相エマルジョン、マイクロエマルジョンの場合、安定化剤(F)を前もって添加するか、または続いて添加してもよい。
親水性溶媒(E)が存在する場合、工程2の親油性相との混合は、油中水型逆相エマルジョン、油中水型逆相マイクロエマルジョン、または油中ミセル溶液を得るために、当業者に公知の方法により高せん断混合を適用して、または適用せずに実施してよい。
本発明の製剤は、消化可能である。これは、GI(胃腸)液中の膵臓リパーゼによって、グリセリドが2‐モノグリセリドおよび遊離脂肪酸に脱エステル化されることを意味している。コリパーゼの存在下における膵臓リパーゼは、乳化油の脂肪分解(加水分解または脱エステル化とも称される)を触媒し、これは、脂肪酸の生成をもたらすプロセスである。脂肪酸生成の速度、従って脂肪分解速度の測定は、実施例2で述べるように、pH‐スタットによる連続滴定によって追跡することができる。有利には、乾燥粉末1ミリグラムあたり約8トリブチリンユニット(TBU)の活性を有するパンクレアチン抽出物を用量250mg/mlで含有する蒸留水によるパンクレアチン溶液中、37.5℃±0.5℃での60分後の消化度合い(実施例2に示す試験に従う)(従って、消化速度)は、本発明の製剤1gあたり少なくとも1mmolの全遊離脂肪酸が放出されるものであり、より有利には、本発明の製剤1gあたり少なくとも1.5mmolの全遊離脂肪酸が放出され、さらにより有利には、本発明の製剤1gあたり少なくとも1.7mmolの全遊離脂肪酸が放出されるものである。
別の有利な態様によれば、CPSモデルでの60分後の消化度合い(従って、消化速度)は、本発明の製剤1gあたり少なくとも0.4mmolのC10遊離脂肪酸(すなわち、カプリン酸)が放出されるものであり、より有利には、本発明の製剤1gあたり少なくとも0.6mmolのC10遊離脂肪酸が放出され、さらにより有利には、本発明の製剤1gあたり少なくとも0.7mmolのC10遊離脂肪酸が放出されるものである。
本発明の製剤は、液体または半固体(すなわち、室温よりも高い融点範囲を示す)であり、当業者に公知の医薬剤形を用いて、それを必要とする患者に経口投与することができる。特に、そのような医薬剤形は、ハードシェルカプセルまたはソフトジェルカプセルであってよい。そのようなカプセルには、ハードゼラチンカプセルおよびソフトゼラチンカプセルが含まれる。この製剤はまた、吸着、ホットメルト顆粒化/コーティングなどの当業者に公知の技術により、ならびに/または選択されたキャリア、希釈剤、添加剤、および/もしくは結合剤により、従来の固体剤形へ変換してもよい。
合成オリゴサッカリドの吸収部位は、腸内である。従って、製剤((B)、(C)、(D)、ならびに所望により(E)および(F)を含有)および合成オリゴサッカリドを、その吸収部位および製剤が消化される部位へ共送達することは有利である。この場合、胃の中で製剤が希釈されることは避ける必要がある。従って、医薬剤形の特定の態様によれば、本発明の製剤を含有する腸溶剤形である。
当業者であれば、腸溶剤形を得る目的での種々の薬物送達システムを想定することができる。種々の物質から、腸溶効果を得ることができる。このような物質を用いて、マトリックスの形態(カナダ特許第2439366号)またはコーティングされた形態を得ることができる。最も良好な腸溶および保護の結果は、コーティングされた剤形を用いることで得られている。
腸溶剤形を製造するために用いることができる様々な種類の物質は、以下の通りである:
− エステラーゼおよびリパーゼなどの腸内酵素に対する感受性を有するポリマー(例えば、サロール、シェラック、脂質化合物(ステアリン酸、部分グリセリド)、カルナウバワックス、硬化ヒマシ油)、またはプロテアーゼに対するもの(例えば、ケラチン、グルテン、ゼイン)
− 腸内pHにて可溶性であるポリマー
このオプションは、製薬業界で最も広く用いられている。これらのポリマーは、以下のものであってよい:
・ セルロースおよびデンプン誘導体。例えば、セルロースアセトフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセトヘミスクシネート、デンプンおよびアミロースアセトフタレート
・ ビニル誘導体。例えば、ポリビニルアセテート、ポリビニルアセトフタレート
・ アクリル誘導体。例えば、Eudragit L
・ マレイン酸コポリマー
有利には、腸溶医薬剤形は、pH依存性であり、従って、腸内pHで可溶性であるポリマーを用いている。有利には、腸溶医薬剤形は、腸溶コーティングされたカプセル、特に、腸溶コーティングされたソフトゼラチンカプセル、より詳細には、腸溶コーティングされたオーバルソフトゼラチンカプセル、さらにより詳細には、腸溶コーティングされた7.5オーバルソフトゼラチンカプセルである。有利には、ゼラチンカプセルは、以下に示す試験に従う8から12Nの硬度を有し、特に9.5Nである。
腸溶コーティングされた7.5オーバルソフトゼラチンカプセル製剤の製造は、当業者に公知であり、以下の通りであってよい:
ソフトゼラチンカプセル製造
ゼラチン調製
必要量のグリセロールおよび精製水をゼラチン溶解槽に加え、混合しながら加熱する。
必要量のゼラチンを添加し、加熱および真空下での混合を続け、溶融ゼラチンの、溶融、ブレンド、および脱気を行う。溶融ゼラチンの透明性を確認し、次に加熱した保存容器へ移す。カプセル化の前およびその過程にて、溶融ゼラチンを50〜65℃に維持する。必要量の乳白剤および着色剤を溶融ゼラチンへ添加し、不透明色が均一となるまで混合する。次に色を確認する。7.5オーバルカプセル製造のために適用されるシェル組成は、ゼラチン/グリセロール/精製水(43.85/22.02/34.13)である。
カプセル化
ソフトゼラチンカプセルは、回転ダイスプロセスによって調製される。加熱したゼラチンは、カプセル化装置に供給され、そこでゼラチンは、2つのスプレッダボックスに入り、これがゼラチンを冷却ドラム上へキャストし、それによって2つのゼラチンリボンが形成される。各ゼラチンリボンは、内側は中鎖トリグリセリド(MCT)により、外側は0.3重量/重量%のレシチンを含有するMCTにより潤滑化される。MCTは、ゼラチンが装置に付着することを防ぐ働きをする。レシチンは、製造後、乾燥前のカプセルが互いに付着してしまうことを防ぐ働きをする。次に、リボンは、カプセル化ローラーへと運ばれる。カプセルを形成するように設計されたダイスのキャビティ(この場合は、7.5オーバル)は、回転してゼラチンリボンをその間でプレスする2つの隣接するローラーの外周上に位置する。充填溶液(この場合は、本発明の製剤)がゼラチンリボン間に注入され、それがリボンを押し広げ、ダイスキャビティが充填される。カプセルは、充填されるに従い、カプセル化ローラーによって同時に成形され、シールされ、ゼラチンリボンから切断される。カプセルの充填、シェル重量、およびシール厚についての試験が行われる。
乾燥
充填されたカプセルは、回転乾燥バスケットへ移される。カプセルは、各バスケット内でタンブル乾燥されて、取り扱い性を改善するのに十分な量の水分が除去される。次にカプセルは、トレイに移され、トレイは重ねられ、重ねられたトレイは乾燥トンネルへ入れられる。硬度試験を行って取り出すタイミングを判断し、乾燥トンネルからカプセルが取り出される。有利には、カプセルは、およそ9.5Nの硬度で取り出される(推奨:8から12N)。カプセル硬度は、ある時間にわたってカプセルを圧縮することによって発生した力である。試験機は、スクリュー機構に取り付けられた可動ステージおよび歪みゲージに取り付けられた上側平表面パンチから構成される。制御されたスクリューの回転により、可動ステージがカプセルへ連続的に増加する力を加える。カプセルは、可動ステージとパンチとの間に配置される。可動ステージは、カプセルがステージおよび上側パンチ表面の両方と接触するまで、手動にて調節される。試験機が作動され、ステージは、1秒あたり0.1mmの速度、合計20秒間にわたるスクリューの回転により、増加する力を加える。得られた力は、パンチに取り付けられた歪みゲージによって測定される。得られた力は、ニュートンの単位にて、±0.1ニュートンの精度で測定され、作動範囲は0から20ニュートンである。
カプセルは、エタノールで溶剤洗浄し、過剰の潤滑剤の除去、および乾燥後のコーティングの緩和(ease-up)を行ってもよい。
検査
カプセルは、乾燥の完了後、漏れおよび外観不良について検査される。不良カプセルはすべて除去される。乾燥トレイ上で充填溶液が漏れたカプセルにすぐ隣接するカプセルは分離され、廃棄される。次に選別が行われ、包装の前に過大および過小カプセルが確実に除去される。カプセルは、高密度ポリエチレン(HDPE)容器に入れてよい。大きさによる分級の操作を行ってもよい。
バルク(Bulk)包装
ソフトゼラチンカプセルは、ポリエチレン袋(所望により、アルミニウム袋でもよい)にばら包装され、これは次に、段ボール箱に入れられ、オフサイトで行われる場合の腸溶コーティング用として輸送される。
腸溶コーティング
スプレー溶液の調製
必要量のクエン酸トリエチル、タルク、および精製水が、Ultra Turraxミキサーにより少なくとも5分間ホモジナイズされ、次にプロペラ攪拌器で緩やかに攪拌しながらEudragit(登録商標)L30 D‐55分散液中に注ぎ入れられる。最後に、出来上がったスプレー懸濁液は、355μmの篩いを通流される。7.5オーバルソフトゼラチンカプセル製造に適用されるスプレー懸濁液は、Eudragit(登録商標)L30 D‐55、タルク、クエン酸トリエチル、精製水(133.3/10.00/8.00/156.4)である。
コーティング
コーティングプロセスの間、スプレー懸濁液は連続的に攪拌される。コーティングは、10L IMAコーティングパンを用いて行われる。ソフトゼラチンカプセル床(およそ10,000個のソフトゼラチンカプセル)は、32から24℃に維持され、流入空気温度は61から62℃、空気流量は125〜135m/時間、パンの回転速度は18rpmである。所望されるコーティングレベルを得るためのスプレー速度は、118から235分間にわたる(ノズルおよび管の詰まりを回避するのに効率的な時間)およそ14から17g/分である。コーティングされたカプセルについては、この生成物の一晩の静置は行われたが、特定の硬化工程は行われなかった。
腸溶コーティングは、通常、スプレー法によって適用され、例えば、パンコーティングまたは流動空気床コーティング法(fluidized air bed coating technique)である。
最終的な腸溶医薬剤形は、一体型であっても多粒子型であってもよい。このことは、最終的な剤形(ハードシェルカプセル、ソフトジェルカプセル)および中間生成物(ペレットなど)の両方のコーティングが可能であることを意味している。特定の剤形は、一個一個の間のばらつきを最小限に抑える目的で、多粒子型の剤形である(ハードシェルカプセルに充填されたコーティングペレット)。
アクリル誘導体(Eudragit Lなど)を伴っていてよい腸溶コーティングのための可塑剤の例は以下の通りである:グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、ソルビトール/ソルビタンブレンド、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジブチルセバケート、トリエチルシトレート、トリアセチン、アセチル化モノグリセリド 9‐45、ポリエチレングリコールなど。
本発明の製剤は、そこに含有されるオリゴサッカリド(A)と同じ治療活性を有する。
従って、本発明はまた、薬物として使用するための、本発明の製剤、または本発明の腸溶医薬剤形にも関する。
合成オリゴサッカリド(A)がヘパリン関連オリゴサッカリド、特にヘパリン関連ペンタサッカリドである場合、本発明はまた、静脈血栓塞栓症(静脈炎、深部静脈血栓症、肺塞栓症)および/もしくは血液凝固障害に関連する病状の予防ならびに/または治療に、さらには、動脈血栓症(急性冠症候群、心筋梗塞、脳卒中)の予防ならびに/または治療のための、本発明の製剤、または本発明の腸溶医薬剤形にも関する。
本発明はまた、本発明の製剤、または本発明の腸溶医薬剤形の効果量を、それを必要とする患者に経口投与することを含む、静脈血栓塞栓症(静脈炎、深部静脈血栓症、肺塞栓症)および/もしくは血液凝固障害に関連する病状の予防ならびに/または治療のための、さらには、動脈血栓症(急性冠症候群、心筋梗塞、脳卒中)の予防ならびに/または治療のための方法にも関する。
最後に、本発明は、静脈血栓塞栓症(静脈炎、深部静脈血栓症、肺塞栓症)および/もしくは血液凝固障害に関連する病状の予防ならびに/または治療、さらには、動脈血栓症(急性冠症候群、心筋梗塞、脳卒中)の予防ならびに/または治療を意図した薬物の製造のための、本発明の製剤、または本発明の腸溶医薬剤形の使用に関する。
本明細書で用いる場合、「治療効果量」の用語は、標的とする疾患状態の治療、寛解、もしくは予防、または検出可能な治療もしくは予防効果の提示に必要である、本発明の剤の量を意味する。一般的に、治療効果用量は、ヒトにおけるこの生成物の非経口投与に関して入手可能であるデータに基づいて算出することができる。
本発明の化合物の効果用量は、従来の方法によって確認することができる。いずれの特定の患者に対しても、必要とされる具体的な用量レベルは、治療される病状の重篤度、患者の一般的健康状態(すなわち、年齢、体重、および食事)、患者の性別、投与の時間および頻度、ならびに治療法に対する許容度/応答性を含む数多くの因子に依存する。しかし、一般的に、一日量(単一用量として、または分割用量として投与されるかに関わらず)は、1日あたり1から1000mgの範囲であり、最も一般的には、1日あたり5から200mgである。別の選択肢として、用量は、単位体重に従って投与してよく、この場合、典型的な用量は、0.01μg/kgから50mg/kgであり、特には、10μg/kgから10mg/kgであり、50μg/kgから2mg/kgである。
本発明の化合物の利点は、その投与を、週または月に1、2、3、または4回に制限することが可能となることである。
本発明のいずれかの1つの態様に関連して上述した、所望により選択してよいいずれの特徴も、本発明のその他のいずれの態様にも適用可能であり得ることは理解される。
実施例1:本発明の製剤
本発明の製剤の組成を、以下の表2に示す:
Figure 2016041735
Figure 2016041735
製剤A、F003、F005、F006、F007、F008、F009、F010、F011、F016、F018、F029、およびF032に従って、フォンダパリヌクスナトリウムを製剤した。製剤Aに従って、フォンダパリヌクスベンザチンを製剤した。
製剤F001、F002、F002 bis、およびF008に従って、化合物122のナトリウム塩を製剤した。製剤F003に従って、化合物147のナトリウム塩を製剤した。製剤F003、F004、F005、F006、およびF008に従って、化合物675のナトリウム塩を製剤した。製剤F003、F005、F008、およびF029に従って、化合物609のナトリウム塩を製剤した。
製剤は、活性主成分を、攪拌(強制ボルテックス攪拌)しながら室温にて蒸留水中へ分散させることで調製する。完全に溶解後、予め混合しておいた製剤のその他の成分を室温で添加し、均質エマルジョンを得る。二酸化ケイ素が製剤中に存在する場合、前記二酸化ケイ素は、活性成分の前または後に製剤のその他の成分に添加する。次に、強制ボルテックス攪拌下および/またはPolytron(登録商標)ホモジナイザーを用いて、エマルジョンを5から15分間攪拌する。
実施例2:本発明の製剤の消化性
コリパーゼの存在下における膵臓リパーゼは、乳化油の脂肪分解(加水分解または脱エステル化とも称される)を触媒し、これは、脂肪酸の生成をもたらすプロセスである。脂肪酸生成の速度、従って脂肪分解速度の測定は、以下で述べるように、pH‐スタットによる連続滴定によって追跡することができる。
pH‐スタットは、例えば、pHメーター、自動ビュレット、および自動滴定ユニットを含むべきである。これらの機器は、メットラー‐トレド社;アナリティカル(Mettler-Toledo GmbH; Analytical),シュバルツェンバッハ(Schwerzenbach);スイス、より、製品番号9301;ID 007612;DL50として入手可能である。pHメーターは、pH‐スタット滴定に適する電極に取り付けられているべきである(例:メットラー‐トレド社製カロメルおよびガラス電極;DG 115‐SC)。加えて、攪拌器(例:メットラー‐トレド社の攪拌器コード 101229)を備えたMettler Toledo DL50 Titration Assemblyなどの高せん断攪拌器を有する滴定アセンブリユニットが必要である。pH‐スタットは、製造元の説明書に従って設定および運転が行われるべきであり、較正は、使用直前に、認定バッファー標準により37.5℃±0.5℃で行われるべきである。
反応は、37.5℃±0.5℃に維持されたガラス製の自動調温容器内で行うべきである。この容器は、内径およそ5cm、高さおよそ9cmを有するべきである。実験中、反応容器は、pH電極および攪拌器の先端がすべて、液面よりも少なくとも1cm下となるように、滴定アセンブリユニット下に配置するべきである。また、実験の過程において、反応容器の内容物が、漏れまたは飛散によって外へ出ないことを確実にする必要もある。
脂肪分解試験を実施するためには、以下の物質が必要である:
− 塩化カルシウム
− 塩化ナトリウム
− 水酸化ナトリウムペレット
− トリス‐マレイン酸バッファー(例:シグマアルドリッチ,フランス、からのTRIZMA MALEATE)
− 水酸化ナトリウム標準溶液(例:VMR,フランス、からの1.0M(N)、AVS TITRINORM滴定液)
− 酵素活性源としてのパンクレアチン(USP規格)
− タウロコール酸ナトリウム(ナトリウム塩、およそ98%)
− 乾燥卵黄からのL‐α‐ホスファチジルコリン(L‐α‐レシチン)タイプ X‐E
脂肪分解試験は、以下のようにして調製したpH6.50のモデル腸液で実施すべきである:
まず、50mM トリス‐マレイン酸、5mM CaCl・HO、および150mM NaClを含有するpHが約6.5のバッファー1Lを、以下の物質を1Lのメスフラスコに秤量して蒸留水で標線まで合わせることで調製する:
− 0.74g CaCl・H
− 8.77g NaCl
− 11.87g トリス‐マレイン酸
− 1.59g NaOH
約0.42gのタウロコール酸ナトリウムを、上述のpH6.5バッファー100mLに添加する。胆汁酸塩を確実に完全に溶解させるには、緩やかな攪拌で十分である。得られた溶液を約50℃まで加熱し(マグネティックスターラー/ホットプレートユニットにより)、攪拌を続けながら約0.12gの固体レシチンを添加する。加熱(優先的には37℃)および攪拌は、レシチンが完全に溶解するまで維持するべきであり、通常は約30分間である。
製剤をpH‐スタット反応容器へ入れ、上述のモデル腸液50mLをpH‐スタット反応容器へ添加する。
系の温度は、脂肪分解試験を通して、37.5℃±0.5℃で一定に維持するべきである。これは、例えば、適切な温度調節器の補助の下、水浴からの水を循環させることによって行ってよい。
pH‐スタット反応容器を滴定アセンブリの下の位置に動かす。十分なシールが成されていること、および反応混合物が容器から外へ出る可能性がないことを確認する。
37.5℃±0.5℃で30分間攪拌を続ける。この間にpHが0.1単位を超えて変化する場合、装置または設定手順に不具合が存在するということであり、問題点が修正されるまで実験を実施してはならない。
pHが上述のように安定に維持された場合は、実験手順を以下のようにして継続してよい:
30分の時点にて、pHを正確に6.50まで滴定する(例:1.0M NaOHにより自動滴定器を用いて)。自動滴定器は、投入された滴定液の体積を記録し、滴定液の表示を再度ゼロに合わせる。
次に、0.5mLのパンクレアチン溶液を、pH‐スタット反応容器中の製剤およびモデル腸液に添加する(パンクレアチンは、使用の20分前に調製してよい;詳細は後述の記載を参照)。終点を6.50に設定した滴定システムをすぐに起動させる。同時にタイマーを再度ゼロに合わせ、再度時間の計測を開始する。
滴定速度を制御するpH‐スタットの設定は(例:滴定速度、比例帯)、pHが目標とする終点(すなわち、6.50)から±0.05pH単位を超えて変化することのないように調整してよい。60分の時点(すなわち、パンクレアチン溶液の添加および滴定開始の60分後)にて、投入された滴定液の体積を記録する。
親油性相(B)は、およそ0.5gの重量であるべきであり、その他の製剤化合物は、定められた製剤に比例して添加するべきである。pH‐スタット反応容器へ添加された各成分の正確な重量は、記録するべきである。滴定液(例:1.0M NaOH)のモル濃度は、一次標準へトレーサブルであるべきである。
パンクレアチン溶液の調製:
脂肪分解試験に用いられるパンクレアチン抽出物は、乾燥粉末1ミリグラムあたり約8トリブチリンユニット(TBU)の活性を有するべきである[トリブチリンユニットは、例えば、Patton et al. (Food Microstructure, Vol.4, 1985, p.29-41)によって定義され、その測定方法が記述されている]。しかし、パンクレアチン(USP規格、シグマアルドリッチ,フランス、より)は、通常、8TBU/mg乾燥粉末のリパーゼ活性を有する。
リパーゼ溶液の調製は、乾燥粉末(例:500mg)を蒸留水(例:2mL)と混合して250mg/mLの溶液を調製することで行うことができる。不溶性物質を含有するこのような溶液の調製は、小型のガラスバイアル(例:容量5mL)中で行い、使用前に37.5℃±0.5℃に20分間保持するべきである。この20分間のインキュベーション時間の経過後、溶液を少し再混合し、0.5mLを取り出し、反応混合物へ添加するべきである。
結果を以下の表3に示し、これは、フォンダパリヌクスのナトリウム塩を含有する製剤について得られたものである:
Figure 2016041735
実施例3:本発明の投与用製剤に含有されるオリゴサッカリドの、ラットにおける直接十二指腸内注入(DIDI)による投与後の生体利用度
直接十二指腸内注入後の薬物動態研究:
直接十二指腸内注入(DIDI)を、空腹状態の雌Wistar Hanラット(175〜250g)に実施し、本発明の製剤中のオリゴサッカリド化合物の腸バリアを通過する能力について調べた。
動物を密閉した誘導チャンバー内でイソフルランガスによって麻酔し、実験の最後に屠殺を行うまで、麻酔状態(3%イソフルランおよび流速2.4L/分)を維持した。剪毛後、開腹を行い、十二指腸を露出させた。高温焼灼器の細い先端部を用いて、胆管の上側に十二指腸への小孔を形成した。フレキシブルカテーテルをその孔から十二指腸内腔へ挿入し、十二指腸上部を閉じ、鉗子ではさむことでカテーテルを固定した。本発明の製剤を以下に示すように希釈して入れたシリンジを、フレキシブルカテーテルに取り付け、シリンジのプランジャをゆっくり押し下げて内容物を十二指腸内へ放出した。その直後に、0.9% NaCl溶液を注入し(50μL)、確実に化合物の投与を完了させた。この段階にて、ラットの腹腔および皮膚を、シルク縫合糸を用いて閉じた。
投与される本発明のオリゴサッカリド化合物の用量は、2mg/kg体重または4mg/kg体重である。従って、各ラットは、周囲温度にて注射用水により即時希釈した総投与体積500μLにより、この用量に対応する製剤の量を受けた(すなわち、2mg/kg体重の用量に対しては、200gのラットあたり0.4mg、オリゴサッカリド1重量%を含有する製剤の場合、製剤40mgに対応する)。
製剤の希釈を最適化するために、場合によっては、まず製剤を37℃にて15分間、攪拌下で加熱することが有利であり得る。
血液サンプルをある時間にわたって採取し(一般的には、0.25;0.5;1;1.5;2;2.5時間)、血漿を以下で述べるようにして分析した。
血漿中の化合物の定量:
合成オリゴサッカリドの血漿中濃度(μg化合物/mL血漿)を、アンチトロンビン(AT)の存在下での化合物の第Xa因子阻害活性に基づくバイオアッセイを用いて測定した。まず、ATを血漿サンプルに過剰に添加し、1/1のオリゴサッカリド/AT複合体を形成させた。次に、第Xa因子を過剰に添加し、残った活性第Xa因子を、基質として発色性試薬を用いた405nmにおける吸光分光分析によって測定した。ラット血漿中の定量すべき各化合物について、用量‐応答曲線を作成した。
静脈内投与後の薬物動態研究:
オリゴサッカリドの薬物動態パラメータを決定し、DIDI実験後のその生体利用度の算出を可能とするために、研究されたオリゴサッカリドの静脈注射後の薬物動態を調べた。
外頚静脈にカテーテルを挿入した雌Wistar Hanラット(175〜200g)を用いた。21Gシリンジを用いた単一ボーラス投与として化合物を注射し(2mg/kg)、続いてその直後に、0.9% NaCl(150μL)を流して、確実に化合物の投与を完了させた。
次にラットを、密閉した誘導チャンバー内で麻酔し(3%イソフルラン、2.4L/分)、実験の最後まで麻酔状態(1.8%イソフルラン、2.4L/分)を維持した。各時間点にて(0.083;0.25;0.5;1;2;4;8時間)尾側の静脈から血液(200μL)を採取し、3.2%クエン酸チューブに保存した(最終クエン酸濃度0.36%)。遠心分離後(3600g、10分間、4℃)に血漿が得られ、これを化合物投与まで−20℃で保存した。
生体利用度(bioavailability)の算出:
各化合物の生体利用度を2時間にわたって算出した。t=0からt=2時間までの曲線下面積(AUC0‐2)を、「マイクロソフト エクセル用PK Functions」ソフトウェアを用いて評価した。生体利用度(F)は、以下の式を用いて算出した:
F(%)=100*(AUC0‐2 DIDI投与の場合の血漿中濃度)/(AUC0‐2 静脈内投与の場合の血漿中濃度)
結果:
結果を以下の表に示す。
500mg中5mgから開始して1250mg中5mgまで下げることにより、主として製剤中のフォンダパリヌクスNa濃度を低下させた様々な調節を行った製剤Aベースを調製した。これらの変動させた製剤を、種々の用量/kgでラットに投与した。
Figure 2016041735
結果は、フォンダパリヌクスNaの腸内吸収が、本発明の製剤を用いることで劇的に増加したことを示している(化合物単独の3%から44%へ)。さらに、固定量の活性物質に対して送達される成分の量を特定の含有量を超えて増加させても、ラットモデルにおける吸収は改善しない。
Figure 2016041735
本発明の製剤は、用いたフォンダパリヌクスの塩がベンザチン(化合物単独の2%から30%まで)またはナトリウム(化合物単独の3%から44%まで)であるかどうかに関係なく、フォンダパリヌクスの腸内吸収を促進することができた。
Figure 2016041735
本発明の製剤は、国際公開第2008/041131号に従うオリゴサッカリドの腸内吸収を促進することができた(それぞれ、化合物単独の2.5%または1%から60%または41%まで)。
Figure 2016041735
本発明の製剤は、国際公開第01/42262号に従うオリゴサッカリドの腸内吸収を促進することができた(化合物単独の1%から57%まで)。
Figure 2016041735
本発明の製剤は、国際公開第2006/067173号に従うオリゴサッカリドの腸内吸収を促進することができた(化合物単独の0%から51%まで)。
実施例4:比較例および結果
比較製剤の組成を、以下の表に示す。
Figure 2016041735
フォンダパリヌクスのナトリウム塩を、製剤C、F019、F021、およびF022に従って製剤した。
製剤Cの消化性を、実施例2に示した手順に従って試験し、フォンダパリヌクスのナトリウム塩を含有する本発明の製剤AおよびF008と比較した。
Figure 2016041735
本発明の製剤のみが消化可能であり、従って、経口での使用が可能であった。このことは、実施例3に示した手順に従うラットにおける直接十二指腸内注入(DIDI)投与後の製剤Cの生体利用度評価結果が0であることによって確認される。
吸光度試験を製剤CおよびF019について行い、得られた結果を、フォンダパリヌクスのナトリウム塩を含有する本発明の製剤AおよびF008について得られた結果と比較した。
吸光度試験は、室温にて、分光光度計 UV‐可視Varian CARY 3Eの機器で行った。吸光度は、蒸留水で100倍または1000倍に希釈したプラセボ製剤について400nmの波長λで測定した。
結果は以下の通りである:
Figure 2016041735
製剤F019は、米国特許第6761903号の実施例66、表25(56ページ、30行目)に対応している。
これらの結果は、本発明の製剤に類似の成分であるが、米国特許第6761903号の製剤の吸光特性に適合させるために異なる量でそれらを含有する製剤からなる製剤Cが、消化可能ではなく、従って経口での使用ができないことを示している(実施例3に示した方法を用いたラットにおける直接十二指腸内注入(DIDI)投与後のCの生体利用度は0%)。対照的に、消化性が高く、ラットにおける直接十二指腸内注入(DIDI)投与後の生体利用度が良好である、本発明の製剤AおよびF008は、米国特許第6761903号において必要であるとして示されている吸光特性に適合しない。
最後に、製剤F019は、米国特許第6761903号の製剤の吸光特性に適合するが、実施例3に示した方法を用いたラットにおける直接十二指腸内注入(DIDI)投与後の生体利用度は低い(3±1)。
これらの結果は、製剤の効果を支配している可能性のある2つのパラメータ:分散性(米国特許第6761903号で評価)および消化性の中で、唯一消化性のパラメータのみが、オリゴサッカリドの吸収における役割を有していることを明らかに示している。
製剤F022およびF021の生体利用度を、実施例3に示した手順に従うラットにおける直接十二指腸内注入(DIDI)投与後に評価し、本発明の製剤F008と比較した。
結果を以下の表に示す:
Figure 2016041735
製剤F002は、米国特許第4656161号の実施例2hに従う製剤に対応する。実施例2を選択したのは、これが、フォンダパリヌクスのMwに最も近い3000のMwを有するヘパリンが関与する実施例1dに対応するからである。バージョンhを選択したのは、この界面活性剤(Brij 78P)が容易に入手可能であったからである。
結果は、良好なDIDI生体利用度を有し、従って経口投与が可能である製剤を得るためには、非イオン性界面活性剤の存在では十分ではないことを明らかに示している。
製剤F021は、純粋なモノグリセリドの代わりにCapmul MCM C10が用いられた米国特許第5714477号の実施例2に対応している。実際、純粋なモノグリセリドは、商業的な用途に対する商業的に実現可能な選択肢ではなく、入手可能ではなく、Capmul MCM C10にもジおよびトリグリセリドが一部存在することが記載されている(56.3% モノ−38.2% ジ、5.5% トリ)。さらに、薬物物質に対するCapmul MCM C10の比率を同じとした。しかし、製剤の最初の水による希釈度は少なかったが、ラットあたりおよそ0.4mgの活性成分が送達されるラットあたり500μLの体積で投与を完了した(2mg/kg)。実際、フォンダパリヌクスのナトリウム塩は、Fragmin(登録商標)(16から115mg)と比較してより低い用量で効力を有することから、活性成分の用量を下げて送達した。従って、最終的な製剤は、特許の実施例では50mg/mLが言及されているが、水による希釈度を上げて、0.8mg/mLとした。
結果は、米国特許第5714477号で示唆されている内容とは対照的に、トリグリセリドが存在しないことが、製剤のDIDI生体利用度に大きな影響を与えることを明らかに示している。従って、製剤は、経口投与するためには、モノグリセリドのみを、またはモノおよびジグリセリドの混合物を含有することはできない。
実施例5:イヌにおける経口投与(Per Os)後の本発明の二酸化ケイ素含有製剤(F029)中に含まれるオリゴサッカリドの生体利用度
イヌにおける経口投与後の薬物動態研究
無処置の雄ビーグルイヌ(6.5〜8kg)へ経口投与を行い、本発明の製剤(すなわち、F029およびF032)で送達された場合のオリゴサッカリド化合物の生体利用度を調べた。
これを行うために、二酸化ケイ素を含んで、または含まずに、本発明の逆相エマルジョンを含有する7.5ソフトゼラチンカプセル(333mg)を製造し、ページ26から29に記載の手順に従ってEudragit(登録商標)L 30D‐55により腸溶コーティングした。各カプセルは、約3mg±0.5のフォンダパリヌクスナトリウム含有していた。上記で詳述した2つのカプセルを、6体のイヌのグループに対して、動物の喉の奥に入れることで個々に投与した。カプセルの嚥下は、各動物に対して少量の水道水を与えることで促した。投与されるオリゴサッカリドの用量は従って、動物の体重1kgあたり約0.8mgであった。
種々の時間点(投与前;投与後0.25、0.5、1、2、3、4、6、8、12、24、36、および48時間)にわたって1mLの血液サンプルを、非麻酔下の動物の伏在または橈側皮静脈からクエン酸ナトリウムチューブへ採取した。サンプルの遠心分離後(10分間、3000g、+4℃)に血漿を回収し、分析まで−20℃で保存した。
静脈内投与後の薬物動態研究
経口投与後のその薬物動態パラメータおよび生体利用度の算出のために、研究されたオリゴサッカリドの静脈注射後の薬物動態を調べた。
イヌを、各静脈内投与の前に14時間空腹状態とし、投与の6時間後に食事を与えた(動態測定中)。
静脈内投与については、本発明の製剤(二酸化ケイ素を含んで、または含まない)を、投与前にオリゴサッカリドのアリコートで予めリンスしたプラスチックシリンジを用い、末梢静脈(伏在または橈側皮静脈)へ単一のボーラス注射として投与した。
投与するオリゴサッカリド化合物の用量は、投与当日に測定した各イヌの体重に対して調節し、各イヌが、動物の体重1kgあたり0.712μmolのオリゴサッカリド(フォンダパリヌクスナトリウム)を受けるようにした。
種々の時間点(投与前;投与後0.083、0.166、0.25、0.5、1、2、3、4、6、8、12、および24時間)にわたって1mLの血液サンプルを、非麻酔下の動物の伏在または橈側皮静脈からクエン酸ナトリウムチューブへ採取した。血漿サンプルを、上記で詳述したようにして調製した(遠心分離、およびさらなる分析まで−20℃で保存)。
血漿中のオリゴサッカリド化合物の定量:
オリゴサッカリド化合物の血漿中濃度(μg化合物/mL血漿)を、Stachrom
HPキット(ダイアグノスティカスタゴ(Diagnostica Stago)を用いてオリゴサッカリドの抗第Xa因子活性を測定することで調べた。手順は、37ページの実施例3に詳細に開示している。
生体利用度の算出:
オリゴサッカリド化合物の生体利用度を24時間にわたって算出した。t=0からt=24時間までの曲線下面積(AUC0‐24)を、「マイクロソフト エクセル用PK Functions」ソフトウェアを用いて評価した。生体利用度(F)は、次の式を用いて算出した:
F(%)=100*(AUC0‐24 経口投与の場合の血漿中濃度)/(AUC0‐24 静脈内投与の場合の血漿中濃度)
結果:
Figure 2016041735
Figure 2016041735
結果は、親水性溶媒を含有する製剤へ二酸化ケイ素(Aerosil R972(登録商標)Pharma)を添加した場合、フォンダパリヌクスナトリウムの経口による生体利用度が大きく改善されることを示している。実際、二酸化ケイ素がカプセル化エマルジョン中に存在する場合、生体利用度のばらつきは、50%超低減されている(37%±29対39%±12)。
コロイド状二酸化ケイ素を含む、または含まない本発明の製剤のスケールアップ
コロイド状二酸化ケイ素を含む、または含まない、本発明の逆相エマルジョンを含有する7.5オーバルソフトゼラチンカプセル(444mg)のスケールアップした生産を行った。カプセルは、最初フォンダパリヌクスナトリウムを約4mg含有しており、Eudragit(登録商標)L 30D‐55で腸溶コーティングを施した。
Figure 2016041735
各バッチのフォンダパリヌクスナトリウム含有率を、質量分析と組み合わせた逆相高速液体クロマトグラフィを用いて測定した。含有率値は、カプセルの充填に用いた製剤中に存在するオリゴサッカリドの初期量に基づいて算出した(オリゴサッカリド 4mg=100%)。
フォンダパリヌクスナトリウム含有率値を定量するために、カプセル化開始時およびカプセル化終了時にて、各バッチにおいて単一のカプセルに対してサンプル調製を行った。
これを行うために、オリゴサッカリドを水溶液中へ抽出した。作業溶液中の最終フォンダパリヌクスナトリウム濃度は0.8μg/mLであった。サンプル溶液中のフォンダパリヌクスナトリウム濃度0.2から1.4μg/mLの濃度範囲のフォンダパリヌクスナトリウム標準溶液を用いた外部較正によって定量した。
クロマトグラフィ分析は、長さ150mm、内径4.6mm、および粒子サイズ3μmのODS固定相カラムクロマトグラフィ上で実施した。ペンチルアミン 15mM/アセトニトリルの勾配を用いてフォンダパリヌクスナトリウムを溶出した。フォンダパリヌクスは、FTMS Orbitrap Exactive質量分析器をESI陰イオンモードで用いて検出した。
結果は、二酸化ケイ素を含まない製剤(F008)は、カプセル化プロセスの過程で安定ではなく、一方二酸化ケイ素を含む製剤(F029)は安定であることを示している。
実際、バッチE09523からのカプセルのフォンダパリヌクスナトリウム含有率値は、カプセル化開始時において僅かに7.6%であり、カプセル化プロセスの終了時は、0.1%の値となっている。このような低い含有率値は、この製剤中で相分離が、しかも非常に迅速に発生したことを示している。他方、バッチE09573からのカプセルのフォンダパリヌクスナトリウム含有率値は、カプセル化プロセス全体を通して100%に近い一定の値に維持されている。
カプセル化の前に、各製剤を、カプセルの充填を可能とする容積式定量ポンプ(positive displacement volumetric pump)と連結した中間保存タンク中にて周囲温度で保存する。カプセル化プロセスの過程にて(72時間まで継続し得る)、製剤は定量ポンプによるせん断速度に掛けられる。非安定化エマルジョンは、保存している間に不均質となり、次に、カプセル化プロセスの過程で適用されるせん断速度に起因して、さらに不安定化される。このことから、カプセル化プロセスの開始時および終了時の両方においてバッチE09523で観察された低い含有率値が説明される。この現象は、バッチE09573では見られず;実際、二酸化ケイ素の添加により、相分離の形成が阻止され、従って、カプセル化プロセス全体にわたってエマルジョンが安定化された。
従って、二酸化ケイ素の存在は、本発明の均質な製剤を工業的に生産するために必要である。
実施例6:種々の量の合成オリゴサッカリドを含む本発明の二酸化ケイ素含有製剤の粒子サイズ分布
二酸化ケイ素および種々の量のフォンダパリヌクスナトリウムを含有する製剤の粒子サイズ分布(PSD)を、Morphology G2の機器を用いて光学顕微鏡によって評価した。これらの製剤の組成を以下の表に示す:
Figure 2016041735
各製剤の液滴を顕微鏡スライド(76×26mm)上に載せ、周囲30×26mm、厚さ1mmでカバーした。エマルジョン液滴の自動分析を、morphology G2ソフトウェア(バージョン6.00、ATAサイエンティフィック(ATA Scientific))を用いて以下のパラメータを設定することで行った:
− レンズの選択:×20
− スキャン面積:15mm
− 閾値:150から160
− フィルター:真円度≦0.5および伸長度≦0.2
この方法により、粒子の直径(μm)ならびにサンプル中でのその分布を測定することができる:
d(v;0.1)、d(v;0.5)、d(v;0.9)の値を測定し、ここで、d=粒子直径(ミクロン)であり、v=サンプル体積である。8.5μmであるd(v;0.9)値は、総サンプル体積の90%が直径≦8.5μmの粒子を含むことを意味する。
ndは、粒子サイズが1μm未満であることを意味しており、従って、マイクロエマルジョンを意味する。
Figure 2016041735
第一に、このデータは、逆相マイクロエマルジョンの水相に少量のフォンダパリヌクスナトリウムを添加することにより、マイクロエマルジョンがエマルジョンに変換されることを示している。第二に、フォンダパリヌクスナトリウム濃度の増加は、エマルジョンの粒子サイズ分布(PSD)の上昇をもたらし、これは続いて製剤の経時安定性に影響を与え得る。
実際、PSDが高いほど、エマルジョン液滴の凝集が速く、これらの液滴の「合着」が引き起こされる。この合着は、すぐにエマルジョンの相分離を引き起こす。非均質製剤は、USP規格(±10%)および欧州作業標準(standard European practices)(±5%)に適合して正確な目標用量(4mg)を送達するための最終剤形への均質な充填ができないことから、望ましいものではない。
二酸化ケイ素がカプセル化プロセス全体を通してエマルジョンを安定化させることが実証されたことから(実施例6)、この剤がより長い期間にわたってこれらの製剤も安定化することができ、従ってフォンダパリヌクスナトリウムの存在に起因する相分離を阻止することができるかどうかについてさらに評価を行った(実施例7)。
実施例7:本発明の二酸化ケイ素含有製剤(F029D)の物理的安定性
本発明の二酸化ケイ素含有製剤の粒子サイズ分布を、エマルジョンに「経時劣化」処理を施した後に評価した。基本的には、ポリエチレンキャップで閉じたガラスビンに製剤を保存し、様々な温度および湿度の条件に付した。この方法により、エマルジョンの実際の「経時劣化」状態を、その不安定化プロセスを促進することでモデル化することができ、従ってその保存安定性を予測することができる。
基本的に、40℃および湿度75%での3ヶ月間の保存が、6ヶ月間のエマルジョンの自然の経時劣化プロセスにおおよそ相当する。
F029に類似の製剤(F029D)を、室温での保存、30℃および湿度65%での保存、ならびに40℃および湿度75%での保存に付した。この製剤は、F029と同じ含有物を有するが、フォンダパリヌクスナトリウム(水に溶解)をその他の成分(すなわち、Captex 355、Capmul MCM、Tween80、およびAerosil R972(登録商標)Pharma)の混合後に添加し、続いてポリトロン下にて15分間攪拌した(10000rpmから25000rpm)という点が異なっている。
Figure 2016041735
Figure 2016041735
Figure 2016041735
粒子サイズ分布データに経時で変化がないことが報告されている。実際、PSDは、湿度65%における30℃、または湿度75%における40℃での3ヶ月の保存後も変動していない。これらの結果は、本発明のコロイド状二酸化ケイ素含有製剤が、経時で物理的に安定であることを示している。この安定な製剤は、従って、製造プロセス全体を通して、最終剤形へ均質に充填することができる。
実施例8:種々の物理的安定化剤を含有する製剤の物理的安定性
疎水性二酸化ケイ素以外の安定化剤を用いて製剤を調製した。このような製剤は以下を含有していた:
− 約60% Captex 355;
− 約20% Capmul MCM;
− 約10% Tween 80;および、
− 約10% 物理的安定化剤;
オリゴサッカリドの添加が製剤の粒子サイズ分布に、従ってその安定性に影響を与えることを考慮して、これらの製剤は、最初、オリゴサッカリドが存在しない状態で試験した。このことにより、種々の典型的な脂質ベースのソフトゲル製剤の増粘剤、すなわち、Aerosil 300(登録商標)、Akosoft 36(登録商標)(硬化ココ‐グリセリド)、およびHVO タイプII(硬化植物油)の物理的安定化能を直接評価することができた。
これらの物理剤は、高融点範囲を有し、製剤プロセスの過程で融解および冷却される際に、核生成および結晶成長フェーズを経て、脂質系内にネットワークを形成する。このネットワークの形成により、粒子の適切な懸濁が可能となり、従ってこれが均質エマルジョンをもたらす。
結果は、これらの剤が、Aerosil 300(登録商標)を除いて、この製剤中にてネットワークを形成することができないことを示した。
次に、本発明の製剤中にてAkosoft 36(登録商標)およびHVOの濃度を下げて(3%)試験した。これらの製剤は、ネットワークを形成せず、液体性が高く、従ってヘパリンまたはその誘導体などの合成オリゴサッカリドの経口送達には望ましくなかった。これらの結果を考慮して、Akosoft 36(登録商標)またはHVOを含む製剤に関するさらなる開発は行わなかった。他方、Aerosil 300(登録商標)を含有する製剤はネットワークを形成した。従って、3%および6%の水をこの製剤にさらに添加し、経時劣化処理(湿度75%における40℃での保存)を施された場合のその安定性を評価した。
この製剤は、製剤F029よりも低い安定性を示した。Aerosil 300(登録商標)は、親水性コロイド状二酸化ケイ素であり、一方、製剤F029に用いたAerosil R972(登録商標)Pharmaは、疎水性である。ヘパリンなどの合成オリゴサッカリドを本発明の製剤で経口送達するのに最適な安定化剤は、従って、疎水性コロイド状二酸化ケイ素である。

Claims (13)

  1. 1から18個のモノサッカリド単位を含みかつ治療活性を有する合成オリゴサッカリド、またはその薬理学的に許容される付加塩もしくは溶媒和物を含有する、経口投与を意図した医薬製剤であって、該製剤は、
    a)前記製剤の総重量に対して5重量%まで、有利には、前記製剤の総重量に対して1重量%までの量の合成オリゴサッカリド(A)、
    b)前記製剤の総重量に対して50から80重量%、有利には、前記製剤の総重量に対して50から70重量%の量の、脂肪酸のトリグリセリドからなる親油性相(B)、
    c)前記製剤の総重量に対して10から30重量%、有利には、前記製剤の総重量に対して15から30重量%の量の、ポリオールと脂肪酸との部分エステルからなり、HLBが7よりも低い、少なくとも1つの親油性界面活性剤(C)、
    d)前記製剤の総重量に対して20重量%まで、有利には、前記製剤の総重量に対して15重量%までの量の、HLBが7よりも高い、少なくとも1つの親水性界面活性剤(D)、
    e)所望により含有してもよい、前記製剤の総重量に対して15重量%まで、有利には、前記製剤の総重量に対して10重量%までの量の、少なくとも1つの親水性溶媒(E)、
    f)前記製剤の総重量に対して0から30重量%、有利には、前記製剤の総重量に対して0から20重量%の化学的および/または物理的安定化剤(F)を含有し、
    ここで、前記製剤が、逆相エマルジョンまたはマイクロエマルジョンの形態であり、少なくとも1つの親水性溶媒(E)を含有する場合、前記物理的安定化剤は存在しかつ二酸化ケイ素である、医薬製剤。
  2. 前記親油性相(B)が、中鎖脂肪酸のトリグリセリド、特に、カプリル酸、カプリン酸、またはこれらの混合物のトリグリセリド、より詳細にはカプリン酸のトリグリセリドからなる、請求項1に記載の製剤。
  3. 前記親水性界面活性剤(D)が、ポリオキシエチレン(20)モノオレエート、PEG8カプリル/カプリン酸グリセリド、PEG6カプリル/カプリン酸グリセリド、ポリ(オキシエチレン)(4)ラウリルエーテル、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1または2のいずれか一項に記載の製剤。
  4. 前記親水性溶媒(E)が、プロピレングリコール、PEG 400、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセロールトリアセテート、エタノール、グリセロール、ジメチルイソソルビド、N‐メチル‐2‐ピロリドン、ポロキサマー、水、およびこれらの混合物からなる群より選択され、有利には、プロピレングリコール、水、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製剤。
  5. 前記親油性界面活性剤(C)が、中鎖脂肪酸のモノおよびジグリセリドの混合物からなり、有利には、カプリル酸および/またはカプリン酸のモノおよびジグリセリドの混合物からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製剤。
  6. 前記親水性溶媒(E)を含有し、逆相マイクロエマルジョン、逆相エマルジョン、または油中ミセル溶液の形態である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製剤。
  7. 乾燥粉末1ミリグラムあたり約8トリブチリンユニット(TBU)の活性を有するパンクレアチン抽出物を蒸留水中用量250mg/mLで含有するパンクレアチン溶液における37.5℃±0.5℃での60分後の消化度合いが、前記製剤1gあたり少なくとも1mmolの全遊離脂肪酸が放出されるものである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製剤。
  8. 前記製剤が均質である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製剤。
  9. 前記オリゴサッカリドが、ペンタサッカリドであり、有利には、そのナトリウム塩の形態である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製剤。
  10. 前記ペンタサッカリドが、ヘパリン関連ペンタサッカリドである、請求項9に記載の製剤。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の製剤を含有する腸溶医薬剤形であって、有利には、前記腸溶剤形はpH依存性である、腸溶医薬剤形。
  12. 薬物として使用するための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の製剤、または請求項11に記載の腸溶医薬剤形。
  13. 静脈炎、深部静脈血栓症もしくは肺塞栓症などの静脈血栓塞栓症および/または血液凝固障害に関連する病状の治療および/または予防、ならびに/または、動脈血栓症、特には急性冠症候群、心筋梗塞および脳卒中から選択される動脈血栓症の予防および/または治療のための、請求項10に記載の製剤、または請求項10に記載の製剤を含有する請求項11に記載の腸溶医薬組成物。
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