JP2016036985A - 素子基板、液体吐出ヘッド、及び記録装置 - Google Patents

素子基板、液体吐出ヘッド、及び記録装置 Download PDF

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Abstract

【課題】封止材で切断面に露出した配線部をカバーしていても、長時間記録を行った場合には、そのカバーの絶縁が破れ、電位差を有する配線間でショートが発生することを防止することができる素子基板を提供する。
【解決手段】シリコンウェハに半導体製造工程によって形成され、その後、シリコンウェハを切断することにより得られる矩形の素子基板100を、素子基板に実装される回路の検査のために、素子基板の外部に設けられた複数の検査用の電極パッド103a、103b、103cに接続され、複数の検査用の電極パッドに電圧を印加する複数の配線111a、111b、111cを備える。素子基板がシリコンウェハから切断される際に、複数の配線が切断される複数の切断点112a、112b、112cを、切断点それぞれに印加される電圧と隣接する切断点に印加される電圧との間の電位差が大きいほど隣接する切断点との間の距離が大きくなるように設ける。
【選択図】図4

Description

本発明は素子基板、液体吐出ヘッド、及び記録装置に関し、特に、複数の素子とその駆動回路を実装した素子基板、液体吐出ヘッド、及び、その液体吐出ヘッドをインクジェット記録ヘッドとして用い記録媒体に画像を記録する記録装置に関する。
従来、インクジェット記録装置に搭載される記録ヘッドのヒータ(記録素子)とヒータを選択的に駆動するためのトランジスタ等の半導体素子からなる駆動素子とを含む駆動回路とその配線は、半導体プロセス技術を用いて同一基板上に形成されている。この基板は素子基板と呼ばれている。
図10はシリコンウェハと素子基板との関係を示す図である。
図10に示すように、半導体プロセス技術を用いて、1枚のシリコン(Si)ウェハ200上に、インクジェット記録装置に搭載される記録ヘッドの複数個分に相当する素子基板が形成される。その素子基板は、Siウェハ200上に基板の切断領域201、202と共に形成される。図10に示すSiウェハ200の領域Aからは4枚の素子基板が切り取られる。
図11は6枚の素子基板100が形成されている様子を示すSi基板の一部の拡大図である。
図11(a)から分かるように、各素子基板100の中央部には複数のヒータ(記録素子)101が2列形成される。一方、各素子基板100の上下両辺それぞれには複数の電極パッド102が形成される。これらの電極により素子基板は基板外部と電気的に接続される。これに加えて、各素子基板100の左右両辺それぞれの一部には、複数の電極パッド102とは別に、検査用の複数の電極パッド103が形成される。複数の電極パッド103は、Siウェハに素子基板が形成された際に各種回路素子の検査のために用いられる。
図11(b)は、素子基板にインク吐出口H1101やインク流路を形成するノズル部材H1100を接合して、ヘッド基板H1000が形成される様子を示している。次に、Siウェハから切断領域201、202をそれぞれ切断分離する工程を経ることで、1つのヘッド基板H1000は形成される。
図12はヘッド基板の構成を示す部分破断斜視図である。
図12に示すように、ヘッド基板H1000は素子基板100の上にノズル部材H1100を接合することにより作成される。複数のヒータ101は、素子基板100の主平面上を貫通するインク供給口120を挟んだ両側に配列される。
図13は記録ヘッドの底面図である。
図10〜図12に示す過程を経て作成されたヘッド基板H1000は、図13に示すように、電極パッド102とヘッド基板外部に電気的に接続されるフレキシブルフィルム配線基板H1200の電極リードH1201とが電気接合される。その後、封止樹脂H1300によって、電極リードH1201の周辺部を覆う工程を経て、記録素子ユニットH2000が形成される。そして、インク供給ユニット(不図示)と接合されることで、記録ヘッドが作成される。
近年のインクジェット記録装置では、高画質の画像を高速に得るため、記録ヘッドに複数のヒータを高密度で集積した素子基板を用いるのが主流である。そのため、素子基板上のヒータやその駆動回路、電極パッド数の増加により、素子基板のサイズが大型化するので、1枚のSiウェハから取り出すことができる素子基板の個数が減少する。これは、製造コストの増加に繋がる。
製造コストを抑えるために、特許文献1は、基板の切断分離工程後に不要となる電極パッドを基板外部の切断領域に設け、切断面に露出した配線部を封止することで基板サイズの拡大を抑えつつ、大気中の水分による配線の腐食を防止する構成を開示している。
また、基板サイズを小型化した際のキャッピング信頼性確保と更なる製造コスト削減の為、特許文献2は、電極パッドの周囲にのみ封止樹脂を充填した構成を開示している。また、特許文献3は、基板内の電極パッド側の切断領域に、同領域内に設けられた回路を検査する為の電極パッドを配列させ、切断分離工程後の基板断面に残る金属層の残渣による腐食を防止する構成を開示している。
特開平9−252034号公報 特開2009−000904号公報 特開2006−224527号公報
特許文献1〜3に開示するような従来のヘッド基板では、そのサイズの小型化と基板内部の電極パッドや配線等の高密度化を図っているので、Siウェハからの切断分離後のヘッド基板の断面に残る配線(配線端面部)も高密度に配列されている。このようなヘッド基板を用いた記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置において、長期間にわたって記録を行った際、封止樹脂で配線端面部を完全に封止しているにも関わらず、配線端面部間で回路がショートするという問題が生じている。
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、サイズの増大や製造工程の追加を招くことなく、長期使用後においても回路が短絡しない高信頼性の素子基板、液体吐出ヘッド、及び、そのヘッドを記録ヘッドとして用いる記録装置とを提供すること目的とする。
上記目的を達成するために本発明の素子基板は次のような構成からなる。
即ち、シリコンウェハに半導体製造工程によって形成され、該形成の後、前記シリコンウェハを切断することにより得られる矩形の素子基板であって、前記素子基板に実装される回路の検査のために、前記素子基板の外部に設けられた複数の検査用の電極パッドに接続され、前記複数の検査用の電極パッドに印加されるのと同じ電圧が印加される複数の配線を有し、前記素子基板が前記シリコンウェハから切断される際に、前記複数の配線が切断される複数の切断点は、前記素子基板の端部において、該複数の切断点それぞれに印加される電圧と隣接する切断点に印加される電圧との間の電位差が大きいほど前記隣接する切断点との間の距離が大きくなるように設けることを特徴とする。
また本発明を別の側面から見れば、上記構成の素子基板と、複数のヒータと、外部から供給される液体の供給路と、前記複数のヒータそれぞれに対応した液体を吐出する複数の吐出口とを有することを特徴とする液体吐出ヘッドを備える。
さらに本発明を別の側面から見れば、上記の液体吐出ヘッドを記録ヘッドとして用い、インクジェット方式に従って、前記記録ヘッドからインクを記録媒体に吐出して記録を行う記録装置を備える。
従って本発明によれば、回路の検査に用いる外部の電極パッドに接続する複数の配線の切断点を、隣接する切断点に印加される電圧との電位差が大きいなら隣接する切断点間の距離を大きくするように配置する。従って、素子基板の長時間使用による部材の劣化に伴って各配線に印加される電圧の電位差によって切断点間の短絡することが抑止される。
このために、特別な構成や製造工程が必要ではないので、素子基板のサイズが大きくなったり、製造工程が複雑になることもないという利点がある。
本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録装置の構成の概要を示す外観斜視図である。 図1に示したインクジェット記録装置の制御構成を示すブロック図である。 本発明の実施例1に従う半導体製造工程により6枚の素子基板100が形成されている様子を示すSi基板の一部の拡大図とヘッド基板の構成を示す部分破断斜視図である。 切断分離前の素子基板の右下端の拡大平面図である。 素子基板100に形成される駆動回路や論理回路を示す図である。 比較例1の記録ヘッドに用いられる素子基板の一部の領域の拡大図である。 比較例2の記録ヘッドに用いられる素子基板の一部の領域の拡大図である。 実施例2に従う切断分離前の素子基板の右下端の拡大平面図である。 実施例3に従う切断分離前の素子基板の右下端の拡大平面図である。 シリコンウェハと素子基板との関係を示す図である。 6枚の素子基板が形成されている様子を示すSi基板の一部の拡大図である。 ヘッド基板の構成を示す部分破断斜視図である。 記録ヘッドの底面図である。
以下に、図面を参照しながら本発明の実施例について詳細に説明する。なお、この明細書において、「記録」(以下、「プリント」とも称する)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も表すものとする。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
また、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いはインクの処理に供され得る液体を表すものとする。インクの処理としては、例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固又は不溶化させることが挙げられる。
またさらに、「記録要素」とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
またさらに、「記録素子(又はノズル)」とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
以下に用いる記録ヘッド用基板(ヘッド基板)とは、シリコン半導体からなる単なる基体を指し示すものではなく、各素子や配線等が設けられた構成を差し示すものである。
さらに、基板上とは、単に素子基板の上を指し示すだけでなく、素子基板の表面、表面近傍の素子基板内部側をも示すものである。また、本発明でいう「作り込み(built-in)」とは、別体の各素子を単に基体表面上に別体として配置することを指し示している言葉ではなく、各素子を半導体回路の製造工程等によって素子板上に一体的に形成、製造することを示すものである。
<記録装置の概要説明(図1〜図2)>
図1は本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)を用いて記録を行なう記録装置の構成の概要を示す外観斜視図である。
図1に示すようにインクジェット記録装置(以下、記録装置)1はインクジェット方式に従ってインクを吐出して記録を行なうインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)3をキャリッジ2に搭載し、キャリッジ2を矢印A方向に往復移動させて記録を行う。記録紙などの記録媒体Pを給紙機構5を介して給紙し、記録位置まで搬送し、その記録位置において記録ヘッド3から記録媒体Pにインクを吐出することで記録を行なう。
記録装置1のキャリッジ2には記録ヘッド3を搭載するのみならず、記録ヘッド3に供給するインクを貯留するインクタンク6を装着する。インクタンク6はキャリッジ2に対して着脱自在になっている。
図1に示した記録装置1はカラー記録が可能であり、そのためにキャリッジ2にはマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロ(Y)、ブラック(K)のインクを夫々、収容した4つのインクカートリッジを搭載している。これら4つのインクカートリッジは夫々独立に着脱可能である。
この実施例の記録ヘッド3は、熱エネルギを利用してインクを吐出するインクジェット方式を採用している。このため、電気熱変換体を備えている。この電気熱変換体は各吐出口のそれぞれに対応して設けられ、記録信号に応じて対応する電気熱変換体にパルス電圧を印加することによって対応する吐出口からインクを吐出する。なお、記録装置は、上述したシリアルタイプの記録装置に限定するものではなく、記録媒体の幅方向に吐出口を配列した記録ヘッド(ラインヘッド)を記録媒体の搬送方向に配置するいわゆるフルラインタイプの記録装置にも適用できる。
図2は図1に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
図2に示すように、コントローラ600は、MPU601、ROM602、特殊用途集積回路(ASIC)603、RAM604、システムバス605、A/D変換器606などで構成される。ここで、ROM602は後述する制御シーケンスに対応したプログラム、所要のテーブル、その他の固定データを格納する。ASIC603は、キャリッジモータM1の制御、搬送モータM2の制御、及び、記録ヘッド3の制御のための制御信号を生成する。RAM604は、画像データの展開領域やプログラム実行のための作業用領域等として用いられる。システムバス605は、MPU601、ASIC603、RAM604を相互に接続してデータの授受を行う。A/D変換器606は以下に説明するセンサ群からのアナログ信号を入力してA/D変換し、デジタル信号をMPU601に供給する。
また、図2において、610は画像データの供給源となる図1に示したホストやMFPに対応するホスト装置である。ホスト装置610と記録装置1との間ではインタフェース(I/F)611を介して画像データ、コマンド、ステータス等をパケット通信により送受信する。このパケット通信については後で説明する。なお、インタフェース611としてUSBインタフェースをネットワークインタフェースとは別にさらに備え、ホストからシリアル転送されるビットデータやラスタデータを受信できるようにしても良い。
さらに、620はスイッチ群であり、電源スイッチ621、プリントスイッチ622、回復スイッチ623などから構成される。
630は装置状態を検出するためのセンサ群であり、位置センサ631、温度センサ632等から構成される。この実施例では、この他にもインク残量を検出するフォトセンサが設けられる。このフォトセンサの詳細について後述する。
さらに、640はキャリッジ2を矢印A方向に往復走査させるためのキャリッジモータM1を駆動させるキャリッジモータドライバ、642は記録媒体Pを搬送するための搬送モータM2を駆動させる搬送モータドライバである。
ASIC603は、記録ヘッド3による記録走査の際に、RAM604の記憶領域に直接アクセスしながら記録ヘッドに対して記録素子(吐出用のヒータ)を駆動するためのデータを転送する。加えて、この記録装置には、ユーザインタフェースとしてLCDやLEDで構成される表示部が備えられている。
次に、以上の構成の記録装置に記録ヘッドとして用いられる液体吐出ヘッドを構成するヘッド基板の実施例について説明する。
図3は実施例1に従う半導体製造工程により6枚の素子基板100が形成されている様子を示すSi基板の一部の拡大図と実施例1に従うヘッド基板の構成を示す部分破断斜視図である。なお、図11(a)と図12において既に説明したのと同じ構成要素には同じ参照番号を付し、その説明は省略する。
図3(a)〜図3(b)から分かるように、各素子基板は矩形状の形状をしており、各素子基板の短辺(上辺とした下辺)には複数の電極パッド102が設けられる。また、その長辺(右辺と左辺)の方向には、記録ヘッドに実装した際にインク供給口120として用いられる矩形領域が形成される。
図3(a)はSiウェハ上に形成された素子基板の平面図である。図3(a)に示されるように、この実施例では、各素子基板100の上下辺それぞれの複数の電極パッド102が形成される領域のさらに外側の領域の切断領域202に、複数の電極パッド102の配列と並行に検査用の複数の電極パッド103が形成される。
図3(b)はノズルやインク流路を形成するノズル部材H1100を接合後にSiウェアの切断領域201、202を切断分離することで形成したヘッド基板H1000の部分破断斜視図である。
図3(b)に示されるように、複数の電極パッド102の配列方向と平行な素子基板の切断面には、複数の電極パッド103と素子基板100の内部の回路を結合していた配線が切断領域202に切断されて露出し、切断点112a〜112cが形成される。
素子基板100に形成される複数のヒータ101のヒータ列の両端には、素子基板のサイズを小型化するため、一辺の長さが140μmの正方形の電極パッド102が複数、150μmピッチという高密度で配列される。そして、複数の電極パッド102の配列方向の素子基板の幅に対して余分な空間を極力排するよう、最端部の電極パッドから電極パッド102の配列方向と垂直な素子基板の右辺までの最短距離が35μmとなるように形成されている。
図4は切断分離前の素子基板の右下端の拡大平面図である。
図4に示されるように、電極パッド103と素子基板の内部回路を結合する配線は、素子基板100の電源回路に接続される配線111aと、GNDに接続された配線111bと、ヒータ駆動を制御する論理回路に接続された配線111cとを含む。これらの配線は素子基板の内部を半導体製造工程を用いて安定して製造できる最小の配線幅5μm、最小配線間隔を5μmとし、最端部の電極パッド102eと素子基板の右辺との間の領域を並行して通過するように配置される。
そして、電極パッド102の配列方向と平行な素子基板100の下辺付近において配線111aと配線111bとの一部が素子基板100の下辺と平行に配設し、配線111cは素子基板100の右辺に平行になるように配設する。そして、配線111a、111b、111cはそれぞれ、切断分離工程において切断される切断点112a、112b、112cを経て検査用の電極パッド103a、103b、103cに接続される。また、切断点112aと112bとの間の距離D1は40μm、切断点112bと112cとの間の距離D0は10μmとなるように、配線111a、111b、111cは配設される。
ここで、記録装置の記録動作実行時には、ヒータを駆動する為の駆動回路に接続される配線111aには12Vの電位、GNDに接続された配線111bには0Vの電位、ヒータの駆動を制御する論理回路に接続された配線111cには3Vの電位が印加される。このため、切断点112a、112b、112cにもそれぞれ、12V、0V、3Vの電位が印加され、切断点112aと112bと間の12V(=V1)、切断点112bと112cとの間には3V(=V0)の電位差が生じる。
このように、この実施例では、記録動作時に切断点の間に生じる電位差が大きい程、その配線間隔を大きく離間して配設している。
なお、素子基板100上にパターニングされる配線111a、111b、111cや、電極パッド102、電極パッド103の材質はAlとCuの合金で作成され、電極パッド103の表面は金メッキが施されている。
次に、インク吐出口H1101やインク流路(不図示)を形成するノズル部材H1100を接合し、その後、切断領域201と202を切断して、ヘッド基板H1000を分離する。そして、従来技術で説明したように、ヘッド基板H1000上の電極パッド102とヘッド基板外部に電気的に接続されるフレキシブルフィルム配線基板の電極リードとを電気接合する。
この工程後、素子基板100の切断点に露出した配線111a、111b、111cがインクに晒されないよう、複数の電極パッド102と素子基板100の切断面を含む封止領域にエポキシ樹脂による封止樹脂を塗布する。このようにして、図11に示したような記録素子ユニットH2000が形成される。その後、インク供給ユニット(不図示)と接合し、記録ヘッドが完成する。
なお、この実施例では、電極パッド103の端から素子基板100の内側方向の距離が50μmとなるように、封止樹脂を塗布している。
図5は素子基板100に形成される駆動回路や論理回路を示す図である。
図5に示されるように、インクを吐出するための熱を発生するヒータ(電気熱変換素子)101には、ヒータ駆動用電源端子VHと駆動回路140とが接続されている。駆動回路140は、ヒータ101に所望の電流を供給するための駆動素子(パワートランジスタ)140aと、パワートランジスタ140aにゲート電圧を印加するレベルコンバータ140bからなる。レベルコンバータ140bには、パワートランジスタ駆動用電源端子VHTから駆動電圧発生回路144を介して降圧された第2の駆動電圧が供給される。
また、論理回路は、インク吐出口H1101からインクを吐出するか否かを決定する画像データ信号を一時的に格納するシフトレジスタ143と画像データ信号を各ヒータ毎に保持するためのラッチ回路142とAND回路141とを含む。シフトレジスタ143には、転送クロック信号CLKの入力端子と、画像データ信号をシリアルに入力する画像データ信号DATAの入力端子とが設けられている。ラッチ回路142にはシフトレジスタ143から出力される信号を入力し、ラッチタイミングを制御するためのラッチ信号(LT)を入力する入力端子が設けられている。AND回路141は、ラッチ回路142から出力される信号と、ヒータ101に電流を供給するタイミングを決定するヒートイネーブル信号(HE)とを入力してAND演算を実行する。AND回路141から出力される駆動信号はレベルコンバータ140bを介して昇圧された後、パワートランジスタ140aのゲートに入力される。
なお、ヒータ駆動用電源端子VHやラッチ信号LTの入力端子や転送クロック信号CLKの入力端子は電極パッド102に配置されている。
さて、検査用の電極パッド103aは、駆動回路140と検査用の配線111aを介して電気的に接続されている。検査用の電極パッド103bは、ヒータ101のGND端子(GNDH)に接続されるGND配線と検査用の配線111bを介して電気的に接続されている。検査用の電極パッド103cはシフトレジスタ143に検査用の配線111cを介して電気的に接続されている。
これら検査用の電極パッドは、各回路素子と電気的に接続されている為、ヒータ101を駆動した際、電極パッド103aにはパワートランジスタの駆動電圧12Vが印加される。また、電極パッド103cにはシフトレジスタ143から出力される論理電圧3.3Vが印加される。
次に、この実施例の効果を確認するために、比較例1、2としての記録ヘッドとこの実施例に従う記録ヘッドとを長時間動作させて、これらの電気特性を評価する。
図6は比較例1の記録ヘッドに用いられる素子基板の一部の領域の拡大図である。
図6と図4とを比較すると分かるように、図6に示す領域は図4に示す領域、即ち、図3(a)の素子基板100の領域Bと同じ領域であり、電極パッド102の最端部近傍の領域である。
比較例1では、一律5μmの幅で、配線111a〜111cが最端部の電極パッド102eの横から素子基板の右辺までの領域に並行して配置し、切断点112a、112b、112cの隣接間隔が配線間隔と同じD0=D1=5μmとなるようにしている。その他の構成は、図4で説明したのと同じなので、その説明は省略する。
図7は比較例2の記録ヘッドに用いられる素子基板の一部の領域の拡大図である。
図7と図4とを比較すると分かるように、図7に示す領域は図4に示す領域、即ち、図3(a)の素子基板100の領域Bと同じ領域であり、電極パッド102の最端部近傍の領域である。
比較例2の比較例1と異なる点は、配線111a〜111cの間隔を素子基板の下辺近傍で少し広げ、切断点112a、112b、112cの隣接間隔がD0=D1=10μmとした点であり、その他の構成は比較例1と同じである。
表1は比較例1、2、及び実施例1に従う素子基板を実装した記録ヘッドをインクジェット記録装置に搭載して長期間の記録動作試験を行い、各切断点間の電気特性評価を行った結果を示す表である。
[表1]
・−−−−−・−−−−−−−−−・−−−−−−・−−−−−−−・−−−・−−−・
|記録ヘッド| 切断点間 | 電位差 | 距離 |(1)|(2)|
・−−−−−・−−−−−−−−−・−−−−−−・−−−−−−−・−−−・−−−・
| |112a−112b|V0= 3V|D0= 5μm| ○ | × |
|比較例1 ・−−−−−−−−−・−−−−−−・−−−−−−−・−−−・−−−・
| |112b−112c|V1=12V|D1= 5μm| × | × |
・−−−−−・−−−−−−−−−・−−−−−−・−−−−−−−・−−−・−−−・
| |112a−112b|V0= 3V|D0=10μm| ○ | ○ |
|比較例2 ・−−−−−−−−−・−−−−−−・−−−−−−−・−−−・−−−・
| |112b−112c|V1=12V|D1=10μm| ○ | × |
・−−−−−・−−−−−−−−−・−−−−−−・−−−−−−−・−−−・−−−・
| |112a−112b|V0= 3V|D0=10μm| ○ | ○ |
|実施例1 ・−−−−−−−−−・−−−−−−・−−−−−−−・−−−・−−−・
| |112b−112c|V1=12V|D0=40μm| ○ | ○ |
・−−−−−・−−−−−−−−−・−−−−−−・−−−−−−−・−−−・−−−・
(1)1000時間記録動作後
(2)2000時間記録動作後
○:正常動作(ショートは発生せず)
×:ショート発生
表1に示す結果から、比較例1の記録ヘッドでは、1000時間記録を行うと、12Vの電位差が生じる切断点間112b−112c(配線111b−111c)にショート(リーク電流)が発生することが分かる。さらに、2000時間記録を行うと3Vの電位差が生じる切断点間112a−112b(配線111a−111b)にもショートが発生する。比較例2の記録ヘッドでは、2000時間記録を行うと3Vの電位差が生じる切断点間112a−112b(配線111a−111b)ではショートが発生しないが、12Vの電位差が生じる切断点間112b−112cではショートが発生した。
これに対して、実施例1に従う記録ヘッドでは、2000時間記録を行っても、ショートは発生しない。
以上の結果より、素子基板の切断分離後に、その切断面に露出する切断点間の距離(D0,D1)が小さい程、電位差(V0,V1)が大きい程、ショートが発生しやすいという相関関係があることが分かる。
この原因は、電極パッドと切断点とを被覆している封止樹脂への水分透過があり、封止樹脂によって被覆保護されている切断点の間に発生した電位差により、配線の切断面の金属がイオンとして溶出して封止樹脂内を移動してショートに至ったと推定される。いわゆるイオンマイグレーションは発生したと考えられる。この現象は、従来の半導体集積回路では想定されていなかったが、素子基板がインクに接しながら使用される記録ヘッドに実装されるというインクジェット記録装置固有の動作環境が要因となって発生したものと考えられる。
また、この現象は、導体表面の種類、被覆材料の種類、使用条件等の様々な諸条件により、発生程度が異なる。このため、ショートが発生する切断点間の距離と電位差の境界値も上記諸条件により変動する。
しかしながら以上説明した実施例に従えば、最短距離にある2つの切断点間の電位差が大きい程、その切断点間の距離も大きくしているので、たとえ長時間にわたり記録動作を行ったとしても部材の劣化などによりショート(短絡)の発生を抑えることができる。また、この構成は余分のスペースを必要することもないので、素子基板のサイズを大きくすることなく、検査用の電極パッドまでの配線を引き回すことができる。これにより、たとえ、検査用の電極パッドの数が更に増加したとしても、素子基板の小型化がなされた場合においても、高信頼性の素子基板を形成することが可能となる。
図8は実施例2に従う切断分離前の素子基板の右下端の拡大平面図であり、図3(a)の領域Bを拡大したものである。なお、図8において、実施例1において図4を参照して説明したのと同じ構成要素には同じ参照番号を付し、その説明は省略する。
実施例1と異なる点は、図5に示したヒータ駆動用電源端子(VH)と等電位にある配線に接続される検査用の電極パッド103d、配線111d、切断点112dが追加された点、切断点112dが素子基板100の右辺に設置されるようにした点である。なお、ヒータ駆動用電源端子(VH)には記録動作時に24Vの電位が印加され、これにより、電極パッド103d、配線111d、切断点112dにも24Vの電位が印加される。
この素子基板を実装した記録ヘッドを搭載して記録装置が記録動作する時は、配線111a、111b、111c、111d及び切断点112a、112b、112c、112dにはそれぞれ、12V、3V、0V、24Vの電位が印加される。この内、配線111a〜111cは最端部の電極パッド102eと素子基板の右辺との間を通過し、切断点112a〜112cは素子基板の下辺に実施例1と同様に電位差の大きさに応じてD0=10μm、D1=30μmの距離を設けて配置される。
これに対して、切断点112dは素子基板100の右下端から右辺に沿って切断点112dまでの距離がD2=200μmの長さとなるように設けられる。図8から分かるように、電極パッド103dから切断点112dまでの配線は、素子基板100の右辺に沿った外側、即ち、シリコンウェハ200の切断領域201を通って配置される。なお、切断点112dも他の切断点112a〜112cと同様に封止樹脂により被覆保護される。
この素子基板を実施例1と同様に記録ヘッドに実装して、インクジェット記録装置に搭載して長時間の記録動作の試験を行い、各切断点間の電気特性の評価を行った。
表2は実施例2に従う素子基板を実装した記録ヘッドをインクジェット記録装置に搭載して長期間の記録動作試験を行い、各切断点間の電気特性評価を行った結果を示す表である。
[表2]
・−−−−−−−−−・−−−−−−・−−−−−−−−・−−−・−−−・
| 切断点間 | 電位差 | 距離 |(1)|(2)|
・−−−−−−−−−・−−−−−−・−−−−−−−−・−−−・−−−・
|112b−112c|V0= 3V|D0= 10μm| ○ | ○ |
|112a−112b|V1= 9V|D1= 30μm| ○ | ○ |
|112c−112d|V2=24V|D2=200μm| ○ | ○ |
・−−−−−−−−−・−−−−−−・−−−−−−−−・−−−・−−−・
(1)1000時間記録動作後
(2)2000時間記録動作後
○:正常動作(ショートは発生せず)
表2に示す結果から、この実施例によれば、2000時間の記録を行っても、ショートは発生しなかったことが分かる。
ここで、最端部の電極パッド102eと素子基板の右辺までの幅は、実施例1、その比較例1、2と変わらず30μmである。このように、異なる電位が印加される4本の検査用の電極パッドを設けられる場合でも、この実施例のようにそれらに対する配線を配設することで素子基板を大きくすることなく信頼性を確保することが可能となる。
また、切断点112dは、図8に示されているように、切断点112a、112b、112cに対して、一辺の長さが140μmの正方形の電極パッド102を挟んだ位置に設けられるため、他の3つの切断点からは必然的に大きく離間される。このため、素子基板の右辺側に配設する切断点と最短距離にある素子基板の下辺に設けられる切断点のそれぞれに印加される電圧の電位差は最も大きくなるように検査用の電極パッドを配置することが望ましい。図8に示す例では、電極パッド103c、103d、及び配線111c、111dにはそれぞれ、0V、24Vの電圧が印加されるので、その電位差は24V、切断点112cと112dとの距離は200μmとなっている。
図9は実施例3に従う切断分離前の素子基板の右下端の拡大平面図であり、図3(a)の領域Bを拡大したものである。なお、図9において、実施例1、2において図4、図8をそれぞれ参照して説明したのと同じ構成要素には同じ参照番号を付し、その説明は省略する。
実施例2と異なる点は、ヒータや駆動電圧発生回路の増加等により、記録動作時に12Vと24Vの電位が印加される検査用の電極パッド、配線、切断点がそれぞれ1つずつ追加された点である。即ち、動作時に同電位となる複数の検査用の電極パッド、配線、切断点が混在している点である。動作時に印加される電位が等しい2つの切断点間には電位差が発生しないためマイグレーションによるショートは発生しない。
このため、この実施例では図9に示すように、動作時に印加される電位が等しい2つの切断点112aと112a’(12Vが印加)と、切断点112dと112d’(24Vが印加)とがそれぞれ、最小配線間隔5μmで隣接するように配設している。
この素子基板を実施例1と同様に記録ヘッドに実装して、インクジェット記録装置に搭載して長時間の記録動作の試験を行い、各切断点間の電気特性の評価を行った。
表3は実施例3に従う素子基板を実装した記録ヘッドをインクジェット記録装置に搭載して長期間の記録動作試験を行い、各切断点間の電気特性評価を行った結果を示す表である。
[表3]
・−−−−−−−−−−−・−−−−−−・−−−−−−−−・−−−・−−−・
| 切断点間 | 電位差 | 距離 |(1)|(2)|
・−−−−−−−−−−−・−−−−−−・−−−−−−−−・−−−・−−−・
|112a −112a’|V0= 0V|D0= 5μm| ○ | ○ |
|112d −112d’| | | | |
・−−−−−−−−−−−・−−−−−−・−−−−−−−−・−−−・−−−・
|112b −112c |V1= 3V|D1= 10μm| ○ | ○ |
・−−−−−−−−−−−・−−−−−−・−−−−−−−−・−−−・−−−・
|112a −112b |V2= 9V|D2= 30μm| ○ | ○ |
・−−−−−−−−−−−・−−−−−−・−−−−−−−−・−−−・−−−・
|112c −112d |V3=24V|D3=200μm| ○ | ○ |
・−−−−−−−−−−−・−−−−−−・−−−−−−−−・−−−・−−−・
(1)1000時間記録動作後
(2)2000時間記録動作後
○:正常動作(ショートは発生せず)
表3に示す結果から、この実施例によれば、2000時間の記録を行っても、ショートは発生しなかったことが分かる。
以上のようにこの実施例に従えば、動作時に同電位となる複数の検査用の電極パッド、配線、切断点が混在している場合は、同電位となる切断点を束ね互いに可能な限り小さい配線間隔で配設する。これにより配線のための余分なスペースを増加させることなく、検査用の電極パッドからの配線を引き回すことができる。従って、更なる検査用の電極パッドの増加や素子基板の小型化がなされても高信頼性を確保した素子基板を形成することが可能となる。
100 素子基板、101 ヒータ、102 電極パッド、102a 塗布領域、
103a、103a’103b、103c、103d、103d’ 電極パッド、
111a、111a’、111b、111c、111d、111d’ 配線、
112a、112a’、112b、112c、112d、112d’ 切断点、
120 インク供給口、140 駆動回路、
140a 駆動素子(パワートランジスタ)、
140b レベルコンバータ、141 AND回路、142 ラッチ回路、
143 シフトレジスタ、144 駆動電圧発生回路、
200 シリコンウェハ(Siウェハ)、201〜202 切断領域、
H1000 ヘッド基板、H2000 記録素子ユニット

Claims (11)

  1. シリコンウェハに半導体製造工程によって形成され、該形成の後、前記シリコンウェハを切断することにより得られる矩形の素子基板であって、
    前記素子基板に実装される回路の検査のために、前記素子基板の外部に設けられた複数の検査用の電極パッドに接続され、前記複数の検査用の電極パッドに印加されるのと同じ電圧が印加される複数の配線を有し、
    前記素子基板が前記シリコンウェハから切断される際に、前記複数の配線が切断される複数の切断点は、前記素子基板の端部において、該複数の切断点それぞれに印加される電圧と隣接する切断点に印加される電圧との間の電位差が大きいほど前記隣接する切断点との間の距離が大きくなるように設けることを特徴とする素子基板。
  2. 前記素子基板に実装される回路を動作させるために電圧を印加する複数の電極パッドをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の素子基板。
  3. 前記複数の切断点は、前記素子基板の前記複数のパッドが設けられた側に設けられることを特徴とする請求項2に記載の素子基板。
  4. 前記複数の切断点の一部が前記素子基板の前記複数のパッドが設けられた側に設けられ、
    前記複数の切断点の残りが前記素子基板の前記複数のパッドが設けられていない側に設けられることを特徴とする請求項2に記載の素子基板。
  5. 前記複数の切断点のうち、同じ電圧が印加される切断点は隣接して設けることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の素子基板。
  6. 前記複数の切断点は、樹脂によって封止されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の素子基板。
  7. 複数のヒータと、
    前記複数のヒータを駆動する複数の駆動素子とをさらに有し、
    前記回路は、
    前記複数の駆動素子を駆動させる駆動回路と、
    前記駆動回路の駆動を制御する論理回路とを含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の素子基板。
  8. 前記論理回路は、
    外部からデータ信号を入力して一時的に格納するシフトレジスタと、
    前記シフトレジスタに格納されたデータ信号をラッチするラッチ回路と、
    前記ヒータに電流を供給するタイミングを決定するヒートイネーブル信号を外部から入力して、前記ラッチ回路によりラッチされたデータ信号とのAND演算を行うAND回路とを含むことを特徴とする請求項7に記載の素子基板。
  9. 前記駆動回路は、
    前記AND回路からの信号を昇圧するレベルコンバータと、
    前記レベルコンバータからの信号により駆動される前記駆動素子として動作するトランジスタとを含むことを特徴とする請求項8に記載の素子基板。
  10. 請求項7乃至9のいずれか1項に記載の素子基板と、
    外部から供給される液体の供給口と、
    前記複数のヒータそれぞれに対応した液体を吐出する複数の吐出口とを有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
  11. 請求項10に記載の液体吐出ヘッドを記録ヘッドとして用い、インクジェット方式に従って、前記記録ヘッドからインクを記録媒体に吐出して記録を行う記録装置。
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