JP2016035814A - スラリーの製造方法 - Google Patents

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Shinichi Okuoka
晋一 奥岡
米原 宏司
Koji Yonehara
宏司 米原
博信 小野
Hironobu Ono
博信 小野
裕大 勝山
Yuudai Katsuyama
裕大 勝山
貴之 小畠
Takayuki Obata
貴之 小畠
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Yasutaka Sumita
康隆 住田
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Abstract

【課題】スラリーの発熱、ゲル化を抑制することができ、得られるスラリーの塗布性にも優れるスラリーの製造方法を提供する。【解決手段】蓄電デバイスの正極を形成するために用いられるスラリーを製造する方法であって、上記製造方法は、活物質、結着剤、及び、溶剤を混練してスラリーを得る工程を含み、上記活物質は、アルカリ金属原子と酸素原子とを含み、アルカリ金属原子の含有割合が活物質全体に対して26〜75質量%であるアルカリ金属含有化合物を含み、上記溶剤は、鎖状分子構造の化合物を含むスラリーの製造方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、スラリーの製造方法に関する。より詳しくは、蓄電デバイスの正極を得るために好適に用いられるスラリーの製造方法に関する。
昨今、環境問題への関心の高まりを背景に、様々な産業分野で石油や石炭から電気へとエネルギー源の転換が進んでおり、携帯電話やノートパソコン等の電子機器だけでなく、自動車や航空機等の分野をはじめ、様々な分野で電池やキャパシタ等の蓄電デバイスの使用が広がりをみせている。このような背景の下、これら蓄電デバイスに用いられる材料について、活発に研究開発が行われている。
蓄電デバイスの中で、現在最も広く普及しているのがリチウムイオン電池であり、携帯電話やノートパソコンのバッテリー等として使用されている。しかしながら、リチウムイオン電池は充放電容量が充分とはいえないため、より充放電容量の大きい新たな蓄電デバイスの開発が求められており、近年では、リチウムイオン電池よりも理論容量の大きいリチウム空気電池が注目を集めてきている。リチウム空気電池については、有機系の電解質を用いる方式が報告されている(非特許文献1参照)。
小久見善八編著、「革新型蓄電池のすべて」、工業調査会、2010年、59−61頁
しかしながら、リチウム空気電池では、大きな理論エネルギー密度を有するが、実際の電池ではこれよりはるかに小さなエネルギー密度しか実現出来ていない。その主たる要因は、正極における放電生成物(Li又はLiO)が多孔性正極(空気電極)の気孔を塞ぎ酸素の供給を妨げるためである。生成物による気孔の閉塞は、充電時に生成する酸素の外界への放出を妨げ、十分な充電を困難にするという妨害効果も示す。また、リチウム空気電池のような金属空気電池には、信頼性や取扱上の難点がある。それは、外界と酸素をやりとりする空気電極を用いるので、原理的に密閉出来ないことによる。
本発明者らは、上記現状に鑑み、鋭意検討をおこない、高い理論電圧、理論容量を有し、充放電を繰り返し行うことができる新たな蓄電デバイスを研究・開発している。本発明者らは、このような蓄電デバイスとして、アルカリ金属の含有割合が高いアルカリ金属含有化合物を正極活物質とする蓄電デバイスとすると、高い理論電圧、理論容量を有し、充放電を繰り返し行うことができることを見出した。この蓄電デバイスは、リチウムイオン電池よりも理論容量が大幅に大きく、また、酸素分子を介さない充放電が可能であるため蓄電デバイスを密閉することが可能であって、上述したリチウム空気電池のような空気(酸素)の供給阻害の問題も発生しない。
ここで、上記の新たな蓄電デバイスを広く普及させるためには、湿式法により効率的に生産することができ、塗布性にも優れるスラリー(正極合剤ともいう。)が極めて重要となる。しかし、溶剤として一般に使用されるN−メチルピロリドンを用いると、アルカリ金属の含有割合が高い活物質を含むスラリーが激しく発熱し、ゲル化してしまい、正極を好適に形成できないという課題があることが明らかとなった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、スラリーの発熱、ゲル化を抑制することができ、得られるスラリーの塗布性にも優れるスラリーの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の種々の特徴を有する新たな蓄電デバイスの正極を効率的に製造するために、上記正極活物質及び結着剤を溶剤と共に混練してスラリーを調製する手法を種々検討した。そして、本発明者らは、溶剤として、N−メチルピロリドンの代わりに、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の鎖状分子構造の化合物を用いることにより、スラリーの発熱・ゲル化を充分に抑制し、スラリーの集電体上への塗工性にも優れることになり、正極を好適に形成できるという意外な効果が発揮されることを見いだし、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、蓄電デバイスの正極を形成するために用いられるスラリーを製造する方法であって、上記製造方法は、活物質、結着剤、及び、溶剤を混練してスラリーを得る工程を含み、上記活物質は、アルカリ金属原子と酸素原子とを含み、アルカリ金属原子の含有割合が活物質全体に対して26〜75質量%であるアルカリ金属含有化合物を含み、上記溶剤は、鎖状分子構造の化合物を含むスラリーの製造方法である。
本発明はまた、蓄電デバイスに用いられる正極を製造する方法であって、上記製造方法は、活物質、結着剤、及び、溶剤を混練してスラリーを得る工程、並びに、上記スラリーを集電体上に塗工して正極を得る工程を含み、上記活物質は、アルカリ金属原子と酸素原子とを含み、アルカリ金属原子の含有割合が活物質全体に対して26〜75質量%であるアルカリ金属含有化合物を含み、上記溶剤は、鎖状分子構造の化合物を含む正極の製造方法である。
本発明は更に、蓄電デバイスを製造する方法であって、上記製造方法は、活物質、結着剤、及び、溶剤を混練してスラリーを得る工程、上記スラリーを集電体上に塗工して正極を得る工程、並びに、上記正極、負極、及び、電解質を用いて蓄電デバイスを構成する工程を含み、上記活物質は、アルカリ金属原子と酸素原子とを含み、アルカリ金属原子の含有割合が活物質全体に対して26〜75質量%であるアルカリ金属含有化合物を含み、上記溶剤は、鎖状分子構造の化合物を含む蓄電デバイスの製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
<スラリーの製造方法>
本発明のスラリーの製造方法は、蓄電デバイスの正極を形成するために用いられるスラリーを製造する方法であって、上記製造方法は、アルカリ金属原子と酸素原子とを含み、アルカリ金属原子の含有割合が活物質全体に対して26〜75質量%である活物質、結着剤、及び、鎖状分子構造の化合物を含む溶剤を混練してスラリーを得る工程を含むことを特徴とする。
上記スラリーを得る工程において、上記混練には、ミキサー、ブレンダー、ニーダー、ビーズミル、ボールミル、メカニカルミル等のいずれか1つ又は複数の機器を使用して行うことができる。これらの中でも、本発明の効果がより好適に得られる観点から、ミキサー、ビーズミル、ボールミルを使用することが好ましい。
上記ミキサーは、具体的には、自転・公転ミキサーや遠心ディスクミキサーのいずれか1つ又は複数の機器が挙げられる。これらの中でも、自転・公転ミキサーがより好ましい。
上記ミキサーを使用して混練を行う場合、その回転数は、100〜50000rpmであることが好ましい。該回転数は、より好ましくは、200rpm以上であり、更に好ましくは、500rpm以上であり、特に好ましくは、1000rpm以上である。また、該回転数は、より好ましくは、30000rpm以下であり、更に好ましくは、10000rpm以下であり、特に好ましくは、3000rpm以下である。
上記混練を行う雰囲気は特に制限されないが、露点が−40℃以下の低湿度雰囲気下で行うことが好ましい。また、上記雰囲気は、空気下、不活性ガス下等、いずれの雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、ヘリウム、窒素、アルゴン等を用いることができる。
上記混練を行う温度は特に制限されず、例えば0℃〜90℃の範囲で行うことができ、10℃〜40℃の範囲で行うことが好ましい。
上記混練を行う時間は、0.1〜100000000分が好ましく、0.2〜10000000分がより好ましく、0.3〜100000分が更に好ましく、0.4〜1000分が一層好ましく、0.5〜100分が特に好ましい。
上記スラリーを得る工程では、上記活物質、結着剤、及び、鎖状分子構造の化合物を含む溶剤がともに混練される限り、これら各成分を混練用機器等に添加する時期は特に限定されないが、簡便性の観点から、上記混練は、活物質、結着剤、及び、鎖状分子構造の化合物を同時に混練用機器に添加して行うことが好ましい。
なお、活物質粒子等を所望の粒子径に揃えるために、混練操作の前後でふるいにかける等の操作を行ってもよい。
次に、本発明のスラリーの製造方法において混練される上記鎖状分子構造の化合物、活物質、及び、結着剤について説明する。
(鎖状分子構造の化合物)
本発明のスラリーの製造方法における上記鎖状分子構造の化合物とは、ラクタム構造等の環状構造を有さない化合物を意味する。
上記溶剤が鎖状分子構造の化合物を含むことにより、スラリーの発熱・ゲル化を抑制し、アルカリ金属原子の含有割合が高い正極を形成するためのスラリーを湿式法にて効率的に生産することが可能となり、また、スラリーの集電体上への塗工性を非常に良好なものとすることができる。
上記溶剤が鎖状分子構造の化合物を含むことにより、スラリーの発熱・ゲル化を抑制する効果を発揮できるメカニズムは明らかではないが、従来の電極合剤の溶剤であるN−メチルピロリドンを用いた場合、上記活物質及び結着剤との混練の際にN−メチルピロリドンの開環反応が起こり、発熱反応が生じると思われる。一方、本発明に係る溶剤は鎖状分子構造の化合物を含むものであり、該鎖状分子構造の化合物の開環反応はそもそも起こらないため、スラリーの発熱・ゲル化を抑制する効果を発揮できると思われる。
上記鎖状分子構造の化合物は、炭素数が好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上である。また、該炭素数は、好ましくは18以下であり、より好ましくは12以下であり、更に好ましくは6以下であり、特に好ましくは4以下である。
上記鎖状分子構造の化合物は、窒素原子及び/又は酸素原子を有することが好ましく、窒素原子及び酸素原子を有することがより好ましい。
上記鎖状分子構造の化合物は、カルボン酸エステル基、水酸基、カルボキシル基、アミド基、エーテル基、アルコキシシラン基、スルホキシド基等の官能基を有していても良く、アミド基及び/又はスルホキシド基を有することが好ましい。中でも、上記鎖状分子構造の化合物は、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及び、ジメチルスルホキシドからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。これらの化合物は、結着剤として用いられる化合物の溶解性も高いことから、結着剤を加えたスラリーの作成にも好適に用いることができる。
上記鎖状分子構造の化合物は、N,N−ジメチルホルムアミド及び/又はN,N−ジメチルアセトアミドを含むことが更に好ましい。
上記鎖状分子構造の化合物は、1種用いてもよく、2種以上用いてもよい。
上記混練における溶剤の好ましい使用量は、活物質の使用量100質量部に対して、0.0001〜10000000質量部であることが好ましい。より好ましくは、0.001〜1000000質量部である。
上記溶剤は、水等の溶剤を含んでいても良いが、上記溶剤中における鎖状分子構造の化合物の含有量は、溶剤100質量%中、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上であり、一層好ましくは80質量%以上であり、更に一層好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは実質的に100質量%である。
(活物質)
本発明のスラリーの製造方法における上記活物質を構成するアルカリ金属原子としては、アルカリ金属に分類されるいずれの金属の原子であってもよく、1種又は2種以上を用いることができるが、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウムのいずれかであり、より好ましくはリチウム、ナトリウムのいずれかである。上記活物質が電極材料としてより好適なものとなる観点では、リチウムが特に好ましい。元素戦略性の観点では、ナトリウムが特に好ましい。
上記アルカリ金属含有化合物は、アルカリ金属原子の含有割合が活物質全体に対して26〜75質量%と高い割合で含むことを特徴とする。該含有割合は、好ましくは26〜72質量%であり、より好ましくは26〜70質量%である。
なお、上記アルカリ金属含有化合物は、アルカリ金属と空気中の酸素を反応させる、又は、アルカリ金属を空気中で加熱し反応させることにより、比較的温和な条件で安全に調製することができる。このように調製したアルカリ金属化合物の代わりに市販のアルカリ金属含有化合物を用いてもよい。
上記アルカリ金属含有化合物は、更に、アルカリ金属原子と酸素原子以外の第三成分原子を含むことが好ましい。アルカリ金属含有化合物が第三成分原子を含む場合、第三成分原子を1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
第三成分原子は、好ましくは周期表の第7〜11族に属する遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の原子であることが好ましい。
アルカリ金属の含有割合が高い活物質を含むスラリーを製造する際に、従来の電極合剤の溶剤であるN−メチルピロリドンを用いた場合、第三成分原子が周期表の第7〜11族に属する遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の原子であると、当該遷移金属元素を含むアルカリ金属含有化合物がN−メチルピロリドンの開環反応を促進する触媒として作用して、スラリーの発熱やゲル化がより生じやすくなるおそれがあると考えられる。なお、例えば、イリジウム又はニッケルとイリジウムのコアシェル型ナノ粒子が開環反応の優れた触媒として知られている(ワイリー・サイエンスカフェ、[平成26年5月7日検索]、インターネット<URL:http://www.wiley.co.jp/blog/pse/?p=26278>)。
これに対し、本発明に係る鎖状分子構造の化合物を溶剤として用いると、該鎖状分子構造の化合物の開環反応がそもそも起こらないため、これに伴う発熱反応や、ゲル化を生じることなくスラリーを作成することができ、本発明の効果が顕著に発揮されると考えられる。
上記第三成分原子は、より好ましくは周期表の第7〜10族に属する遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の原子であり、更に好ましくはMn、Fe、Co、Rh、Ni、又は、Pdであり、一層好ましくはFe、Co、又は、Rhであり、特に好ましくはFe又はCoである。
上記アルカリ金属含有化合物が第三成分原子を含む場合、アルカリ金属原子の数と第三成分原子の数との比(第三成分原子数/アルカリ金属原子数)は、0.00001〜0.6であることが好ましい。このような範囲であると、本発明の製造方法を用いた結果得られる蓄電デバイスが、より高い容量を有する。該比は、より好ましくは0.0001〜0.4であり、更に好ましくは0.001〜0.3である。
上記アルカリ金属含有化合物が第三成分原子を含む場合、第三成分原子の存在する形態としては特に制限されず、第三成分原子がアルカリ金属原子、酸素原子とともに複合酸化物を構成している形態、アルカリ金属酸化物の結晶構造内に第三成分原子が固溶した形態、第三成分原子の単体及び/又は化合物が触媒として含まれる形態のいずれの形態であってもよく、これらが混在していてもよい。
ここで、複合酸化物の形態とは、アルカリ金属酸化物の結晶構造内に第三成分原子が一定の割合で規則的に配列した構造となっている形態であり、アルカリ金属酸化物の結晶構造内に第三成分原子が固溶した形態とは、アルカリ金属酸化物の結晶構造内に第三成分原子がランダムに入りこんだ構造となっている形態である。
複合酸化物の場合、アルカリ金属酸化物の結晶構造内に規則的に配列した第三成分原子の影響により、結晶構造内にもとのアルカリ金属酸化物の結晶とは全く別の反射面が生まれ、その結果、XRDパターンはもとのアルカリ金属酸化物とは全く異なるものとなる。これに対し、アルカリ金属酸化物の結晶構造内に第三成分原子が固溶したものは、アモルファス化しつつ、第三成分原子が固溶する前のアルカリ金属酸化物のXRDパターンを保持している。また、アルカリ金属酸化物の結晶構造内に第三成分原子が固溶したものでは、アルカリ金属に対する固溶する第三成分原子の割合は決まっておらず、任意の割合で固溶し得る点も、複合酸化物とは異なっている。アルカリ金属酸化物の結晶構造内に第三成分原子が固溶した構造は、アルカリ金属酸化物の結晶構造内に第三成分原子がドーピングした構造ともいうことができる。上記第三成分原子の化合物が触媒として含まれる形態の場合、第三成分原子の化合物としては、第三成分原子の酸化物、硫化物、ハロゲン化物、窒化物、炭化物等が挙げられる。
上記アルカリ金属含有化合物が第三成分原子を含む場合、第三成分原子が存在する形態としては、上記のものの中でも、アルカリ金属酸化物の結晶構造内に第三成分原子が固溶した形態が好ましい。アルカリ金属酸化物の結晶構造内に第三成分原子が固溶した形態のアルカリ金属含有化合物を正極活物質として用いると、低い電圧で酸化容量が発現し、充電が可能となる。
上記アルカリ金属酸化物を電極材料として用いた場合に、低い電圧で酸化容量が発現する理由は明らかではないが、以下のように推定される。
アルカリ金属酸化物中に遷移金属原子が固溶した場合、電荷補償による格子欠陥が生じると推察される。アルカリ金属としてリチウム、遷移金属として鉄を用いた場合を例にとると、以下のとおりである。
(1)Fe/Li=0.2のとき
LiO + 0.2Fe → 1.6(Li1.25Fe0.250.5)O
(2)Fe/Li=0.1のとき
LiO + 0.1Fe → 1.3(Li1.54Fe0.1540.31)O
□:格子欠陥
このようにアルカリ金属酸化物の結晶構造中に、多価金属である遷移金属を固溶させることで格子欠陥が生成し、この格子欠陥によって導電性が向上し低い過電圧で酸化電流が流れる、と推定される。
上記結晶構造内に第三成分原子が固溶したアルカリ金属酸化物(第三成分原子固溶アルカリ金属酸化物)は、下記式(1);
[A2−x]O (1)
(式中、Aは、アルカリ金属原子を表す。Bは、第三成分原子を表す。xは、0<x<2の数を表す。)で表されるものであることが好ましい。第三成分原子固溶アルカリ金属酸化物は、逆蛍石構造のアルカリ金属酸化物のアルカリ金属サイトが第三成分原子で置換された構造のものであることが好ましく、そのような構造の金属酸化物は、上記式(1)で表すことができる。
上記式(1)においてAで表されるアルカリ金属原子、Bで表される第三成分原子は、1種の原子であってもよく、2種以上の原子であってもよい。Aで表されるアルカリ金属原子、Bで表される第三成分原子の具体例及び好ましい原子は、上述したアルカリ金属原子や第三成分原子の具体例及び好ましい原子と同様である。
上記式(1)におけるxは、0.00002〜0.75であることが好ましい。より好ましくは、0.0002〜0.57であり、更に好ましくは0.002〜0.46である。
上記第三成分原子固溶アルカリ金属酸化物を製造する方法は特に制限されないが、メカノケミカル処理によりアルカリ金属酸化物の結晶構造内に第三成分原子を固溶させる工程を含む製造方法が好ましい。
上記メカノケミカル処理の具体的な方法は、メカノケミカル反応を起こす方法であれば特に制限されず、遊星ボールミル処理、ビーズミル処理、ボールミル処理やカッターミル処理、ディスクミル処理、スタンプミル処理、ハンマーミル処理、ジェットミル処理等のメカノケミカル反応を起こしうるミリング操作のいずれか1つ又は複数の方法が挙げられる。これらの中でも、メカノケミカル処理を充分に行う点から、遊星ボールミル処理が特に好ましい。
上記メカノケミカル処理の具体的な方法は、メカノケミカル反応を起こす方法であれば特に制限されず、遊星ボールミル処理、ビーズミル処理、ボールミル処理やカッターミル処理、ディスクミル処理、スタンプミル処理、ハンマーミル処理、ジェットミル処理等のメカノケミカル反応を起こしうるミリング操作のいずれか1つ又は複数の方法が挙げられる。これらの中でも、メカノケミカル処理を充分に行う点から、遊星ボールミル処理が特に好ましい。
上記メカノケミカル処理を遊星ボールミル処理により行う場合、湿式、乾式のいずれで行ってもよいが、乾式で行うことが好ましい。
また、遊星ボールミル処理に用いる粉砕メディアは、質量の大きいものを用いることが好ましく、具体的には、0.00001g以上のものが好ましい。より好ましくは、0.001g以上のものであり、更に好ましくは、0.1g以上のものである。また、粉砕メディアは、通常、50000g以下のものを用いる。
粉砕メディアとしては、0.01〜500mmφの、ジルコニアボール、メノウボール、アルミナボール、タングステンカーバイドボール、鉄球、ステンレス球等を用いることができる。
遊星ボールミル処理に用いる粉砕メディアは、遊星ボールミル処理に用いる容器の体積と遊星ボールミルに供される化合物の量を考慮し、メカノケミカル処理が充分に行われるよう、適宜最適な数を選択して用いればよい。
更に、遊星ボールミル処理の回転数は、高いほうが好ましく、具体的には、10rpm以上の回転数が好ましい。より好ましくは、50rpm以上の回転数であり、更に好ましくは、100rpm以上の回転数である。また、遊星ボールミル処理の回転数は、通常、100000rpm以下で行われる。
このように、質量の大きい粉砕メディアを用い、高回転数で遊星ボールミル処理を行うことにより、メカノケミカル処理を充分に進めることができ、第三成分原子固溶アルカリ金属酸化物をより高い収率で得ることができる。
上記ミリング操作を行う雰囲気は特に制限されず、空気下、不活性ガス下等、いずれの雰囲気下で行ってもよいが、不活性ガス雰囲気下で行うことが不純物生成抑制の点から好ましい。不活性ガスとしては、ヘリウム、窒素、アルゴン等を用いることができる。
上記ミリング操作を行う時間は、0.1〜100000000時間が好ましい。より好ましくは、0.2〜10000000時間であり、更に好ましくは、0.3〜100000時間である。
上記メカノケミカル処理工程に供されるアルカリ金属成分、第三成分原子の成分は、それぞれ金属の単体であってもよく、酸化物等の化合物であってもよいが、アルカリ金属成分、第三成分原子の成分ともに酸化物が好ましい。すなわち、上記メカノケミカル処理工程は、アルカリ金属酸化物と第三成分原子の酸化物とをメカノケミカル処理する工程であることが好ましい。アルカリ金属酸化物と第三成分原子の酸化物とを用いることで、アルカリ金属酸化物の結晶構造内に第三成分原子が固溶した構造の化合物をより高い収率で製造することができる。
上記メカノケミカル処理工程に供するアルカリ金属成分と第三成分原子の成分との割合は、アルカリ金属成分に含まれるアルカリ金属原子数と第三成分原子の成分に含まれる第三成分原子の数との比(第三成分原子数/アルカリ金属原子数)が、0.00001〜0.6となるような割合であることが好ましい。このような割合とすることで、アルカリ金属酸化物の結晶構造内に第三成分原子が好ましい割合で固溶した構造の金属酸化物を得ることができる。より好ましくは、上記比が0.0001〜0.4となるような割合であることであり、更に好ましくは、0.001〜0.3となるような割合であることである。
本発明に係る活物質は、上記アルカリ金属含有化合物を含む限り、その他の正極活物質を含んでいてもよいが、本発明の蓄電デバイスの正極が含む正極活物質全体100質量%に対して、上記アルカリ金属含有化合物が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であること、すなわち、本発明の蓄電デバイスの正極が正極活物質として上記アルカリ金属含有化合物のみを含むことであることが最も好ましい。
その他の正極活物質としては、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウムが挙げられる。
上記混練における活物質の使用量は、活物質及び結着剤の合計量100質量%中、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。また、該使用量は、99.99質量%以下であることが好ましく、99.9質量%以下であることがより好ましい。
(結着剤)
上記結着剤は、活物質粒子同士や活物質粒子と集電体とを結着させる作用を有するものであればよく、更に活物質粒子を効果的に分散させる分散剤として働くものであってもよい。該結着剤は、有機化合物を含むことが好ましく、実質的に有機化合物だけから構成されることがより好ましい。
上記有機化合物は、有機化合物塩も包含する概念であり、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸含有ポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸塩含有ポリマー、ポリアクリロニトリル含有ポリマー、ポリアクリルアミド含有ポリマー、ポリビニルアルコール含有ポリマー、ポリエチレンオキシド含有ポリマー、ポリプロピレンオキシド含有ポリマー、ポリブテンオキシド含有ポリマー、ポリエチレン含有ポリマー、ポリプロピレン含有ポリマー、ポリブテン含有ポリマー、ポリヘキセン含有ポリマー、ポリオクテン含有ポリマー、ポリブタジエン含有ポリマー、ポリイソプレン含有ポリマー、ハロゲン含有ポリマー、アナルゲン、ベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、トルエン、ピペロンアルデヒド、カーボワックス、カルバゾール、セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリアセチレン含有ポリマー、ポリエチレンイミン含有ポリマー、ポリアミド含有ポリマー、ポリスチレン含有ポリマー、ポリ(無水)マレイン酸含有ポリマー、ポリマレイン酸塩含有ポリマー、ポリ(無水)イタコン酸含有ポリマー、ポリイタコン酸塩含有ポリマー、陽イオン・陰イオン交換膜等に使用されるイオン交換性重合体、環化重合体、スルホン酸塩、スルホン酸塩含有ポリマー、第四級アンモニウム塩、第四級アンモニウム塩含有ポリマー、第四級ホスホニウム塩、第四級ホスホニウム塩アンモニウムポリマー等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。
なお、上記有機化合物、有機化合物塩がポリマーの場合には、ポリマーの構成単位に該当するモノマーより、ラジカル重合、ラジカル(交互)共重合、アニオン重合、アニオン(交互)共重合、カチオン(交互)重合、カチオン(交互)共重合、電解重合等により得ることができる。
上記有機化合物としては、好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸塩含有ポリマー、ポリビニルアルコール含有ポリマー、ポリエチレンオキシド含有ポリマー、ポリプロピレンオキシド含有ポリマー、ポリブテンオキシド含有ポリマー、ハロゲン含有ポリマー、セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリマレイン酸塩含有ポリマー、ポリイタコン酸塩含有ポリマー、イオン交換膜性重合体、スルホン酸塩含有ポリマー、第四級アンモニウム塩含有ポリマー、第四級ホスホニウム塩ポリマーが挙げられ、より好ましくは、ハロゲン含有ポリマーが挙げられる。
上記ハロゲン含有ポリマーは、例えば、ポリ塩化ビニル含有ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン含有ポリマー、ポリフッ化ビニリデン含有ポリマー、ポリペンタフルオロエチレン含有ポリマーが更に好ましいものとして挙げられ、中でもポリテトラフルオロエチレン含有ポリマー、ポリフッ化ビニリデン含有ポリマー、ポリペンタフルオロエチレン含有ポリマーが一層好ましく、ポリフッ化ビニリデン含有ポリマーが特に好ましい。
上記結着剤(好ましくは有機化合物)の配合量としては、活物質及び結着剤の合計量100質量%中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。該配合量は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下であり、更に好ましくは40質量%以下である。
次に、本発明のスラリーの製造方法において上記溶剤、活物質、結着剤とともに混練することができる導電助剤について説明する。導電助剤は、上記溶剤、活物質、結着剤と同時に混練されることが簡便性の観点から好ましいが、その混練のタイミングは特に限定されない。
(導電助剤)
上記導電助剤としては、電子材料となり得る導電性を有し、電極における導電性を向上させる作用を有するものであればよく、具体的には、金属、導電性セラミックス、炭素材料(導電性カーボン)が挙げられる。該金属としては、ニッケル粉、アルミニウム粉、亜鉛粉(金属亜鉛)、金粉、メソポーラス金等が挙げられる。該炭素材料としては、黒鉛、アモルファス炭素、カーボンナノフォーム、活性炭、グラフェン、ナノグラフェン、グラフェンナノリボン、フラーレン、カーボンブラック、ファイバー状カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、炭素繊維、気相成長炭素繊維等が挙げられ、中でも、グラフェン、ファイバー状カーボン、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、炭素繊維、気相成長炭素繊維が好ましい。上記導電助剤は、より好ましくは、亜鉛粉、金粉、メソポーラス金、グラフェン、ファイバー状カーボン、カーボンナノチューブ、アセチレンブラックである。
上記導電助剤は、1種又は2種以上を用いることが出来る。上記アルカリ金属化合物をカーボンコートすることにより、導電性を向上させてもよい。
上記導電助剤の配合量としては、活物質の使用量100質量部に対して、0.001〜90質量部であることが好ましい。導電助剤の配合量がこのような範囲であると、正極がより良好な性能を発揮することとなる。より好ましくは0.01〜70質量部であり、更に好ましくは0.05〜55質量部であり、特に好ましくは0.05〜50質量部である。
本発明のスラリーの製造方法において、溶剤、活物質、結着剤、導電助剤以外の成分を必要に応じて混練してもよく、その場合、その配合量は、活物質の使用量100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.05〜7質量%であり、更に好ましくは0.1〜5質量%である。なお、該成分は、上記溶剤、活物質、結着剤等と同時に混練されることが簡便性の観点から好ましいが、その混練のタイミングは特に限定されない。
<正極の製造方法>
本発明の正極の製造方法は、蓄電デバイスに用いられる正極を製造する方法であって、上記製造方法は、アルカリ金属原子と酸素原子とを含み、アルカリ金属原子の含有割合が活物質全体に対して26〜75質量%である活物質、結着剤、及び、鎖状分子構造の化合物を含む溶剤を混練してスラリーを得る工程、並びに、該スラリーを集電体上に塗工して正極を得る工程を含むことを特徴とする。
本発明の正極の製造方法を構成する工程のうち、上記スラリーを得る工程は、上述した本発明のスラリーの製造方法におけるスラリーを得る工程と同様である。
上記スラリーを集電体上に塗工して正極を得る工程は、本発明のスラリーの製造方法により得られたスラリーを用いる限り特に限定されず、通常の方法にて行うことができ、例えば、上記スラリーを、アルミ箔等の金属箔やニッケルメッシュ等の金属メッシュ上に、できる限り膜厚が一定になるように塗工して乾燥する方法にて行うことができる。
なお、本発明の製造方法により得られる正極は、正極、負極、及び、電解質が密閉されている蓄電デバイスにも適用できる。正極、負極、及び、電解質が密閉されているとは、蓄電デバイスの外部への放電や蓄電デバイスへの充電の際に外部と接続する正極、負極の一部分を除き、正極、負極の残りの部分、及び、電解質が外気と接触しない状態にあることをいう。
<蓄電デバイスの製造方法>
本発明の蓄電デバイスの製造方法は、蓄電デバイスを製造する方法であって、上記製造方法は、アルカリ金属原子と酸素原子とを含み、アルカリ金属原子の含有割合が活物質全体に対して26〜75質量%である活物質、結着剤、及び、鎖状分子構造の化合物を含む溶剤を混練してスラリーを得る工程、該スラリーを集電体上に塗工して正極を得る工程、並びに、該正極、負極、及び、電解質を用いて蓄電デバイスを構成する工程を含むことを特徴とする。
本発明の蓄電デバイスの製造方法を構成する工程のうち、上記スラリーを得る工程は、上述した本発明のスラリーの製造方法におけるスラリーを得る工程と同様であり、上記正極を得る工程は、上述した本発明の正極の製造方法における正極を得る工程と同様である。
上記蓄電デバイスを構成する工程は、上記正極を得る工程により得られた正極、負極、及び、電解質を用いる限り特に限定されず、通常の方法にて行うことができる。負極及び電解質について後述する。
(負極)
上記負極は、負極活物質として炭素材料を含むことが好ましい。炭素材料としては、例えば、黒鉛、アモルファス炭素、カーボンナノフォーム、活性炭、グラフェン、ナノグラフェン、グラフェンナノリボン、フラーレン、カーボンブラック、ファイバー状カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、炭素繊維、気相成長炭素繊維等が挙げられる。これらの中でも、黒鉛、グラフェン、ファイバー状カーボン、カーボンナノチューブ、アセチレンブラックがより好ましく、黒鉛、グラフェン、ファイバー状カーボン、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、炭素繊維、気相成長炭素繊維が更に好ましい。炭素材料としては、これらの1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
上記負極は、負極活物質として炭素材料を含む場合、その他の負極活物質を含んでいてもよいが、上記負極が含む負極活物質全体100質量%に対して、炭素材料が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であること、すなわち、上記負極が負極活物質として炭素材料のみを含むことが最も好ましい。
その他の負極活物質としては、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアルカリ金属やアルカリ土類金属を含有する化合物、あるいはアルミニウムやアルミニウム含有化合物、錫、チタン、ホウ素、窒素、ケイ素が挙げられる。
上記負極は、炭素材料を必須成分とし、必要に応じて導電助剤、結着剤を含んで構成される負極合剤から形成されることが好ましい。結着剤としては、上述した正極合剤の結着剤と同様のものが用いられる。
導電助剤としては、上記で挙げた正極合剤の導電助剤と同じものが挙げられる。
負極合剤中の導電助剤、結着剤の割合は、上述した正極合剤におけるこれらの割合と同様であることが好ましく、負極の製造方法も、上述した正極の製造方法と同様の方法を用いることができる。
(電解質)
上記電解質としては、特に制限されないが、例えば、有機溶剤系電解液としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルホラン、フッ素基含有カーボネート、フッ素基含有エーテル、イオン性液体、ゲル化合物含有電解液、ポリマー含有電解液等が好ましく、水系電解液としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液等が挙げられる。電解質は、上記1種又は2種以上使用してもよい。また、上記電解質として無機固体電解質を使用してもよい。
本発明に係る蓄電デバイスを構成する電解質としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiN(SOF)、LiN(SOCF、LiN(SO、Li(BC)、LiF、LiB(CN)等が挙げられる。
上記蓄電デバイスを構成する工程は、更に、セパレーターを用いて蓄電デバイスを構成するものであってもよい。
上記セパレーターとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、セロファン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ビニロン、ポリ(メタ)アクリル酸等のマイクロポアを有する高分子量体やそれら共重合体、ゲル化合物、イオン交換膜性重合体やそれら共重合体、環化重合体やそれら共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸塩含有ポリマーやそれら共重合体、スルホン酸塩含有ポリマーやそれら共重合体、第四級アンモニウム塩含有ポリマーやそれら共重合体、第四級ホスホニウム塩含有ポリマーやそれら共重合体等を用いることができる。
上述したように、本発明の製造方法により得られる蓄電デバイスは、酸素分子を介さない充放電が可能であるためデバイスを密閉することが可能であって、密閉された蓄電デバイスは、リチウム空気電池に比べて信頼性の高い蓄電デバイスである。このように、本発明の製造方法により得られる蓄電デバイスが密閉されたものであることは本発明の製造方法の好適な実施形態の1つである。
本発明のスラリーの製造方法は、上述の構成よりなり、スラリーの発熱、ゲル化を抑制することができ、得られるスラリーの塗布性にも優れるため、アルカリ金属原子の含有割合が高い正極を備え、高い理論電圧、理論容量を有し、充放電を繰り返し行うことができる蓄電デバイスを製造する際に好適に用いることができる。
調製例1で調製した固体粉末のXRD測定結果の図である。 実施例1の充放電試験の結果(実線:1サイクル目 点線:5サイクル目)を示した図である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
調製例1
[正極活物質の作製]
酸化リチウム(株式会社高純度化学研究所製)2.19gと酸化コバルト(Co、和光純薬工業社製)1.16gとを遊星ボールミル用のポットに入れ、遊星ボールミル混合(混合条件;10mmφのジルコニアボール25個を用いて回転数600rpmにて100時間処理)を行った。作業は全てアルゴン置換された水分濃度1ppm以下のグローブボックス中で行った。得られた固体粉末のXRD測定を下記の条件で行ったところ、図1に示すように、得られた固体粉末中、酸化コバルトに帰属されるピークは観測されなかった。一方でコバルト固溶LiOとLiCoOの存在を確認し、本粉末を以後Co−LiOと記載する。
(XRD測定)
XRD測定は、全自動水平型X線回折装置(リガク社製、SMART LAB)を用いて、以下の条件により行った。
CuKα1線:0.15406nm
走査範囲:10°−90°
X線出力設定:45kV−200mA
ステップサイズ:0.020°
スキャン速度:0.5°min−1−4°min−1
なお、XRD測定は、試料をグローブボックス中にて気密試料台に装填することにより、不活性雰囲気を保った状態で行った。
調製例2
[PVdF溶液の調整]
50mLのナスフラスコにPVdF粉末(アルケマ社製、KYNAR HSV900)4gとN,N−ジメチルホルムアミド(DMF、有機合成用超脱水グレード、和光純薬工業株式会社製)46gを加え、オイルバスで50℃に加熱し18時間撹拌を続けた。溶液を室温まで冷却し、8質量%PVdF/DMF溶液を得た。
上記手法にてDMFの代わりにN,N−ジメチルアセトアミド(DMA、脱水グレード、関東化学株式会社製)を使用し、8質量%PVdF/DMA溶液を得た。
また上記手法にてDMFの代わりにN−メチルピロリドン(NMP、電池グレード、キシダ化学株式会社製)を使用し、8質量%PVdF/N−メチルピロリドン溶液を得た。
実施例1
露点−40℃以下のドライルームにて、上記作製したCo−LiO正極、上記PVdF/DMA溶液、アセチレンブラック(粒状品、電気化学工業製)、を固形分重量比90:5:5の割合とし、固形分濃度が46%となるようにDMAを追加して、自公転式混練脱泡装置(Thinky製)で2000rpm×5分混練し、流動性の良いスラリー組成物を得た。
得られたスラリーをアプリケータを用いてアルミ集電体上に塗工し、90℃×30分オーブンで乾燥させ、合材電極を得た。
実施例2
上記8質量%PVdF/DMA溶液の代わりに上記8質量%PVdF/DMF溶液を用い、DMAの代わりにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF、有機合成用超脱水グレード、和光純薬工業株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様にして流動性の良いスラリー組成物を得、得られたスラリーを用いて合材電極を得た。
比較例1
上記8質量%PVdF/DMA溶液の代わりに上記8質量%PVdF/N−メチルピロリドン溶液を用い、DMAの代わりにN−メチルピロリドン(NMP、電池グレード、キシダ化学株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様にしたが、混練時に発熱が起こり、スラリーがゲル化し、塗膜を得ることができなかった。
[負極の作製]
負極活物質として球状化人造黒鉛(日立化成工業製、SMG)100部と、1%CMC水溶液(ダイセルファインケム製、C2200)を固形分重量比100:1の割合となるようにして、プラネタリーミキサーを用いて室温で30分練合した。次に固形分濃度が44%となるように水を加えてさらに室温で15分練合した。
上記混合液に、SBRエマルション(メーカー非開示)を1.8部(固形分基準)入れ、さらに10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して流動性の良い負極用スラリー組成物を得た。
得られたスラリーをアプリケータを用いて銅集電体上に塗工し、80℃×30分オーブンで乾燥させ、負極を得た。
[非水電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC、キシダ化学株式会社製)、ジエチルカーボネート(DEC、キシダ化学株式会社製)を、体積比1:1で混合した非水溶媒に、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF、キシダ化学株式会社製)の濃度が1.0Mとなるように溶解させて非水電解液を調整した。
[コインセル型リチウムイオン二次電池の作製]
実施例1で得た合材電極(正極)、上記負極、及び、ポリエチレン製セパレーターを、それぞれ円形(正極φ12mm、負極φ14mm、セパレーターφ16mm)に打ち抜いた。宝泉株式会社より購入したCR2032コイン型電池用部品(正極ケース(アルミクラッドSUS304L製)、負極キャップ(SUS316L製)、スペーサー(1mm厚、SUS316L製)、ウェーブワッシャー(SUS316L製)、ガスケット(ポリプロピレン製))を用いてコイン型リチウム電池を作製した。具体的には、ガスケットを装着した負極キャップ、ウェーブワッシャー、スペーサー、負極シート(負極の銅箔側がスペーサーと対向するように設置)、セパレーターをこの順で重ねた後、上記非水電解液70μLをポリエチレン製のセパレーターに含浸させた。次いで、正極合剤塗布面が負極活物質層側と対向するように正極シートを設置し、その上に正極ケースを重ね、カシメ機でかしめることによりコインセル型リチウムイオン二次電池を作製した。
[電池評価(充放電試験)]
上記コインセル型リチウムイオン二次電池について、温度25℃の環境下、充放電試験装置(ACD−01、アスカ電子株式会社製)を使用し、所定の充電条件(1/15C、定電流モード15時間カット、SOC=100%で180mAh/g)及び放電条件(1/15C、終止電圧2.0V、定電流モード)にて、各充放電時には10分の充放電休止時間を設けて計5回の充放電を行った。表1に結果を示す。さらに、図2に1サイクル目と5サイクル目の充放電曲線を示す。
Figure 2016035814
実施例1、2の結果から、本発明のスラリーの製造方法により、スラリーの発熱、ゲル化を充分に抑制でき、効率的にスラリーが得られるとともに、得られるスラリーの集電体上への塗工性にも優れることが明らかとなった。また、実施例1より、密閉系であるコイン型電池をセルに用い、本発明の製造方法により得られたスラリーを用いて形成した正極を備える蓄電デバイスが、安定的に高い容量を維持したまま充放電できることが明らかとなった。
以上の結果より、アルカリ金属の含有割合が高いアルカリ金属含有化合物を含む蓄電デバイスは、高い理論電圧、理論容量を有し、密閉系で充放電が可能であり安全性に優れた蓄電デバイスとなるところ、当該正極活物質を本発明の製造方法により効率的に得られたスラリーを用いて好適に形成できることが分かる。

Claims (8)

  1. 蓄電デバイスの正極を形成するために用いられるスラリーを製造する方法であって、
    該製造方法は、活物質、結着剤、及び、溶剤を混練してスラリーを得る工程を含み、
    該活物質は、アルカリ金属原子と酸素原子とを含み、アルカリ金属原子の含有割合が活物質全体に対して26〜75質量%であるアルカリ金属含有化合物を含み、
    該溶剤は、鎖状分子構造の化合物を含む
    ことを特徴とするスラリーの製造方法。
  2. 前記アルカリ金属含有化合物は、更に、アルカリ金属原子と酸素原子以外の第三成分原子を含む
    ことを特徴とする請求項1に記載のスラリーの製造方法。
  3. 前記第三成分原子は、周期表の第7〜11族に属する遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の原子である
    ことを特徴とする請求項2に記載のスラリーの製造方法。
  4. 前記結着剤は、有機化合物を含む
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスラリーの製造方法。
  5. 前記有機化合物は、ハロゲン含有ポリマーである
    ことを特徴とする請求項4に記載のスラリーの製造方法。
  6. 前記鎖状分子構造の化合物は、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及び、ジメチルスルホキシドからなる群より選択される少なくとも1種を含む
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のスラリーの製造方法。
  7. 蓄電デバイスに用いられる正極を製造する方法であって、
    該製造方法は、活物質、結着剤、及び、溶剤を混練してスラリーを得る工程、並びに、
    該スラリーを集電体上に塗工して正極を得る工程を含み、
    該活物質は、アルカリ金属原子と酸素原子とを含み、アルカリ金属原子の含有割合が活物質全体に対して26〜75質量%であるアルカリ金属含有化合物を含み、
    該溶剤は、鎖状分子構造の化合物を含む
    ことを特徴とする正極の製造方法。
  8. 蓄電デバイスを製造する方法であって、
    該製造方法は、活物質、結着剤、及び、溶剤を混練してスラリーを得る工程、
    該スラリーを集電体上に塗工して正極を得る工程、並びに、
    該正極、負極、及び、電解質を用いて蓄電デバイスを構成する工程を含み、
    該活物質は、アルカリ金属原子と酸素原子とを含み、アルカリ金属原子の含有割合が活物質全体に対して26〜75質量%であるアルカリ金属含有化合物を含み、
    該溶剤は、鎖状分子構造の化合物を含む
    ことを特徴とする蓄電デバイスの製造方法。
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