JP2009283307A - Si/C複合体型負極活物質の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、不可逆容量の発生を抑制したSi/C複合体型負極活物質を得ることができるSi/C複合体型負極活物質の製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、Si材料および炭素材料を機械的エネルギー付与手段により混合し、原料組成物を得る混合工程と、上記原料組成物を焼成し、Si相を有する複合体を合成するSi相含有複合体合成工程と、上記複合体を、Li含有エッチング剤を用いて化学エッチングし、焼成することにより、上記複合体に含まれるSiOx相を消失させるSiOx相消失工程と、を有することを特徴とするSi/C複合体型負極活物質の製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1
【解決手段】本発明は、Si材料および炭素材料を機械的エネルギー付与手段により混合し、原料組成物を得る混合工程と、上記原料組成物を焼成し、Si相を有する複合体を合成するSi相含有複合体合成工程と、上記複合体を、Li含有エッチング剤を用いて化学エッチングし、焼成することにより、上記複合体に含まれるSiOx相を消失させるSiOx相消失工程と、を有することを特徴とするSi/C複合体型負極活物質の製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1
Description
本発明は、不可逆容量の発生を抑制したSi/C複合体型負極活物質を得ることができるSi/C複合体型負極活物質の製造方法に関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出力かつ高容量の電池の開発が進められている。現在、種々の電池の中でも、エネルギー密度が高いという観点から、リチウム二次電池が注目を浴びている。
リチウム二次電池に用いられる負極は、通常、負極集電体と、その負極集電体上に形成された負極層とを有する。負極集電体には、例えばCu箔等の金属集電体が用いられる。一方、負極層は、通常、負極活物質を含有するものである。負極活物質としては、例えばカーボン系負極活物質および金属系負極活物質等が知られている。一般的に、金属系負極活物質は、カーボン系負極活物質と比較して、理論容量が大きいという利点を有する。その反面、Liの挿入・脱離に伴う体積変化が大きいため、負極層の割れ、負極活物質の滑落や微粉化等が生じやすく、サイクル特性が悪いという問題があった。
このような問題に対して、金属および炭素の複合体を負極活物質として用いることが知られている。例えば特許文献1においては、SiO粒子をケイ素Siとケイ素酸化物SiOX(0<X≦2)とに不均化して得られた複合粒子の表面に、炭素材料を被覆することにより得られた負極活物質が開示されている。これは、複合体に用いられるSiO粒子をアルゴンイオンエッチングすることにより、複合体の比表面積を制御し、反応性活性面を低下させることで、電池反応に伴う発熱を抑える等して、サイクル特性の低下を抑制することができるものである。
しかしながら、上述したSiO粒子を、ケイ素Siとケイ素酸化物SiOX(0<X≦2)とに不均化して得られた複合粒子の表面に、炭素材料を被覆することにより得られた負極活物質を用いた場合には、次のような問題がある。すなわち、複合粒子に含まれるケイ素Siは、負極活物質としてLiと可逆的に反応するものの、SiOxは下記式(1)のようにLiと不可逆的に反応するという問題がある(下記式(1)において、化学量論比は考慮しないものとする)。
SiOx(0<x≦2)+Li → Si+Li2O …式(1)
Li2Oが可逆性を有しないため、SiOxによる不可逆容量が発生し、充放電効率が低くなるという問題がある。
SiOx(0<x≦2)+Li → Si+Li2O …式(1)
Li2Oが可逆性を有しないため、SiOxによる不可逆容量が発生し、充放電効率が低くなるという問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、不可逆容量の発生を抑制したSi/C複合体型負極活物質を得ることができるSi/C複合体型負極活物質の製造方法を提供することを主目的とする。
上記目的を達成するために、本発明においては、Si材料および炭素材料を機械的エネルギー付与手段により混合し、原料組成物を得る混合工程と、上記原料組成物を焼成し、Si相を有する複合体を合成するSi相含有複合体合成工程と、上記複合体を、Li含有エッチング剤を用いて化学エッチングし、焼成することにより、上記複合体に含まれるSiOx相を消失させるSiOx相消失工程と、を有することを特徴とするSi/C複合体型負極活物質の製造方法を提供する。
本発明によれば、Li含有エッチング剤を用いて化学エッチングし、焼成することにより、SiOx相を消失させるため、SiOxによる不可逆反応の発生を抑制したSi/C複合体型負極活物質を得ることができる。このSi/C複合体型負極活物質を用いることにより、特に初回の充放電効率に優れたリチウム二次電池等を得ることができる。
上記発明においては、上記Si材料が、SiOであることが好ましい。Si相およびSiOx層の量的関係を好ましい比率とすることができるからである。
上記発明においては、上記Li含有エッチング剤が、LiOHであることが好ましい。焼成時に不要な副反応生成物が生じにくいからである。
上記発明においては、上記機械的エネルギー付与手段が、ボールミルであることが好ましい。汎用的であり、Si材料および炭素材料をより分散・複合化することができるからである。
本発明においては、SiOxによる不可逆容量の発生を抑制することができ、特に初回の充放電効率に優れたSi/C複合体型負極活物質を得ることができるという効果を奏する。
本発明のSi/C複合体型負極活物質の製造方法について、以下詳細に説明する。
本発明のSi/C複合体型負極活物質の製造方法は、Si材料および炭素材料を機械的エネルギー付与手段により混合し、原料組成物を得る混合工程と、上記原料組成物を焼成し、Si相を有する複合体を合成するSi相含有複合体合成工程と、上記複合体を、Li含有エッチング剤を用いて化学エッチングし、焼成することにより、上記複合体に含まれるSiOx相を消失させるSiOx相消失工程と、を有することを特徴とするものである。
本発明のSi/C複合体型負極活物質の製造方法は、Si材料および炭素材料を機械的エネルギー付与手段により混合し、原料組成物を得る混合工程と、上記原料組成物を焼成し、Si相を有する複合体を合成するSi相含有複合体合成工程と、上記複合体を、Li含有エッチング剤を用いて化学エッチングし、焼成することにより、上記複合体に含まれるSiOx相を消失させるSiOx相消失工程と、を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、Li含有エッチング剤を用いて化学エッチングし、焼成することにより、SiOx相を消失させるため、SiOxによる不可逆反応の発生を抑制したSi/C複合体型負極活物質を得ることができる。このSi/C複合体型負極活物質を用いることにより、特に初回の充放電効率に優れたリチウム二次電池等を得ることができる。
図1は、本発明のSi/C複合体型負極活物質の製造方法の一例を説明するフローチャートである。図1に示されるSi/C複合体型負極活物質の製造方法においては、まずSiO(一酸化ケイ素、Si材料)およびC(グラファイト、炭素材料)を用意し、SiOおよびCを遊星ボールミルにより混合し、原料組成物を得る(混合工程)。この原料組成物は、SiOおよびCが分散・複合化したものである。次に、原料組成物を焼成し、Si相およびSiOx相が炭素質物に分散した複合体を合成する(Si相含有複合体形成工程)。なお、原料であるSiOは、焼成による不均化反応により、下記式(2)のように、SiおよびSiOxに変化する(下記式(2)において、化学量論比は考慮しないものとする)。
2SiO → Si+SiOx(0<x≦2) …式(2)
次に、複合体を、LiOH(水酸化リチウム、Li含有エッチング剤)を用いて化学エッチングし、焼成することにより、複合体に含まれるSiOx相を消失させる(SiOx相消失工程)。これにより、Si/C複合体型負極活物質が得られる。ここで、SiOx相が消失する理由は、未だ定かではないが、以下の理由によるものと推定することができる。すなわち、化学エッチングおよび焼成により、下記式(3)〜(7)のような反応が起こる。
2LiOH → Li2O+H2O …式(3)
C+H2O → H2+CO …式(4)
CO+H2O → H2+CO2 …式(5)
Li2O+CO2 → Li2CO3 …式(6)
Li2O+H2 → 2Li+H2O …式(7)
上記式(3)〜(5)に示される反応は化学エッチング時に起こっているものと考えられ、このような反応により、LiがSiOx相内に導入されるものと推定される。また、上記式(6)および(7)に示される反応は、焼成時に起こっているものと考えられ、このような反応により、Liが安定化するものと推定される。
本発明においては、焼成中に、上記反応式に示されるLi2CO3、Li2O等とSiOxとが反応することにより、Si−Li−Oの非晶質ネットワークが形成されると考えられる。このような非晶質ネットワークが形成されることによりSiOxが消失し、上記式(1)の反応が生じなくなることで、不可逆容量の発生を抑制することができるものと考えられる。
以下、本発明のSi/C複合体型負極活物質の製造方法について、工程ごとに説明する。
2SiO → Si+SiOx(0<x≦2) …式(2)
次に、複合体を、LiOH(水酸化リチウム、Li含有エッチング剤)を用いて化学エッチングし、焼成することにより、複合体に含まれるSiOx相を消失させる(SiOx相消失工程)。これにより、Si/C複合体型負極活物質が得られる。ここで、SiOx相が消失する理由は、未だ定かではないが、以下の理由によるものと推定することができる。すなわち、化学エッチングおよび焼成により、下記式(3)〜(7)のような反応が起こる。
2LiOH → Li2O+H2O …式(3)
C+H2O → H2+CO …式(4)
CO+H2O → H2+CO2 …式(5)
Li2O+CO2 → Li2CO3 …式(6)
Li2O+H2 → 2Li+H2O …式(7)
上記式(3)〜(5)に示される反応は化学エッチング時に起こっているものと考えられ、このような反応により、LiがSiOx相内に導入されるものと推定される。また、上記式(6)および(7)に示される反応は、焼成時に起こっているものと考えられ、このような反応により、Liが安定化するものと推定される。
本発明においては、焼成中に、上記反応式に示されるLi2CO3、Li2O等とSiOxとが反応することにより、Si−Li−Oの非晶質ネットワークが形成されると考えられる。このような非晶質ネットワークが形成されることによりSiOxが消失し、上記式(1)の反応が生じなくなることで、不可逆容量の発生を抑制することができるものと考えられる。
以下、本発明のSi/C複合体型負極活物質の製造方法について、工程ごとに説明する。
(1)混合工程
本発明における混合工程は、Si材料および炭素材料を機械的エネルギー付与手段により混合し、原料組成物を得る工程である。本工程により得られる原料組成物は、Si材料および炭素材料が分散・複合化したものである。
本発明における混合工程は、Si材料および炭素材料を機械的エネルギー付与手段により混合し、原料組成物を得る工程である。本工程により得られる原料組成物は、Si材料および炭素材料が分散・複合化したものである。
本発明に用いられるSi材料としては、Si元素を含有し、焼成によりSi相を形成可能なものであれば特に限定されるものではない。中でも、本発明においては、Si材料が、不均化反応によってSi相を形成するものであることが好ましい。負極活物質として機能するSi相を容易に形成することができるからである。Si材料としては、具体的にはSiOw(0.8≦w≦1.5)を挙げることができ、中でもSiOが好ましい。
Si材料の形状としては、例えば粉末状および塊状等を挙げることができ、中でも粉末状が好ましい。Si材料がより分散した原料組成物を得ることができるからである。Si材料が粉末状である場合、その平均粒径は、例えば1μm〜30μmの範囲内、中でも1μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。
本発明に用いられる炭素材料としては、導電性を有する炭素質物を形成可能なものであれば特に限定されるものではない。炭素材料としては、具体的にはグラファイト(黒鉛)、コークス、低温焼成炭、ピッチ、およびこれらの前駆体等を挙げることができ、中でもグラファイトおよびコークスが好ましい。焼成時の取扱い性に優れているからである。特に、本発明においては、炭素材料がグラファイトであることが好ましい。導電性に優れているからである。炭素材料が粉末状である場合、その平均粒径は、例えば1μm〜20μmの範囲内、中でも1μm〜5μmの範囲内であることが好ましい。
炭素材料の添加量は、炭素材料の種類等により異なるものであるが、Si材料を100重量部とした場合に、炭素材料の添加量は、例えば2.5重量部〜90重量部の範囲内、中でも10重量部〜30重量部の範囲内であることが好ましい。炭素材料の添加量が少なすぎると、負極活物質内部の導電性が低くなる可能性があり、炭素材料の添加量が多すぎると、負極活物質としての容量が小さくなる可能性があるからである。
本発明においては、Si材料および炭素材料を機械的エネルギー付与手段により混合する。機械的エネルギー付与手段としては、Si材料および炭素材料を分散・複合化することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えばボールミル、ターボミル、メカノフュージョン、ディスクミル等を挙げることができ、中でもボールミルが好ましく、特に遊星ボールミルが好ましい。汎用的であり、Si材料および炭素材料をより分散・複合化することができるからである。
本発明において、機械的エネルギー付与手段による混合の各種条件は、Si材料および炭素材料が充分に分散・複合化できる程度に設定することが好ましく、機械的エネルギー付与手段の種類に応じて適宜設定することが好ましい。なお、機械的エネルギー付与手段による混合を過度に行うと、Liの挿入反応に不活性なSiCが生成することが予想されるため、SiCの生成が生じない程度に、機械的エネルギー付与手段による混合を行うことが好ましい。
機械的エネルギー付与手段がボールミルである場合、通常、ポット内に、Si材料、炭素材料および粉砕用ボールを加え、所定の回転数および時間でボールミルを行う。ポットおよび粉砕用ボールに用いられる材料としては、例えば窒化ケイ素、ジルコニア、アルミナ、ステンレス等を挙げることができる。また、ボールミルを行う際の回転数としては、例えば50rpm〜500rpmの範囲内、中でも100rpm〜300rpmの範囲内であることが好ましい。ボールミルを行う際の処理時間としては、例えば1時間〜50時間の範囲内、中でも、1時間〜20時間の範囲内であることが好ましい。
(2)Si相含有複合体合成工程
次に、本発明におけるSi相含有複合体合成工程について説明する。本発明におけるSi相含有複合体合成工程は、上記原料組成物を焼成し、Si相を有する複合体を合成する工程である。通常、本工程においては、Si相およびSiOx相が炭素質物に分散した複合体が得られる。
次に、本発明におけるSi相含有複合体合成工程について説明する。本発明におけるSi相含有複合体合成工程は、上記原料組成物を焼成し、Si相を有する複合体を合成する工程である。通常、本工程においては、Si相およびSiOx相が炭素質物に分散した複合体が得られる。
本工程における焼成条件は、所望の複合体を得ることができる条件であれば特に限定されるものではない。焼成温度は、Si材料の不均化反応が生じる程度の温度であることが好ましい。具体的には800℃〜1300℃の範囲内、中でも850℃〜1100℃の範囲内、特に900℃〜1000℃の範囲内であることが好ましい。焼成温度が低すぎると、Si材料の不均化反応が生じない可能性があり、焼成温度が高すぎると、Liの挿入反応に不活性なSiCが生成する可能性や生成したSiが溶融する可能性があるからである。また、焼成時間は、通常1時間〜12時間の範囲内である。焼成を行う方法としては、例えば焼成炉を用いる方法等を挙げることができる。
本工程における焼成は、通常、非酸化性雰囲気下で行われる。炭素材料の酸化を防止するためである。非酸化性雰囲気としては、具体的には不活性ガス雰囲気および還元性雰囲気を挙げることができる。不活性ガス雰囲気で焼成を行う方法としては、例えばAr等の不活性ガスを流通させながら焼成を行う方法等を挙げることができる。
また、本発明においては、原料組成物の焼成を行う前に、原料組成物をモノマーに分散させる分散処理、および上記モノマーを重合し上記原料組成物を分散状態で固定化する重合処理を行っても良い。分散処理および重合処理を行うことにより、焼成により得られる複合体の表面に上記ポリマーに由来する炭素被膜を形成することができる。この炭素被膜を形成することにより、初回充電時に負極活物質の表面で起こる副反応を抑制すること、および導電性のさらなる向上を図ることができる。ここで、上記モノマーとしては、原料組成物を分散させ、焼成により炭化されるポリマーを形成可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えばフルフリルアルコール等を挙げることができる。モノマーとしてフルフリルアルコールを用いる場合、例えばフルフリルアルコールおよびエタノールの混合溶媒に、上述した原料組成物を添加し分散させ、脱水重合を開始させる希塩酸を添加することで、原料組成物が分散・固定化されたポリマーを得ることができる。
上述したように、本工程においては、Si相およびSiOx相が炭素質物に分散した複合体が得られる。Si相は、負極活物質として機能するものであり、非晶質であっても良く、結晶質であっても良い。Si相の大きさは、例えば数nm〜300nmの範囲であることが好ましい。またSi相は、複合体の内部に均一に分散していることが好ましい。一方、SiOx相は、Si相を包含または保持するように形成されていることが好ましく、非晶質であっても良く、結晶質であっても良い。またSiOx相は、Si相と同様に、複合体の内部に均一に分散していることが好ましい。炭素質物は、上記のSi相およびSiOx相を包含または保持するように形成されていることが好ましい。本発明においては、このような複合体が得られる程度に、焼成の条件を選択することが好ましい。また、本発明においては、得られた複合体に対して、粉砕処理、分級処理等を行うことにより、粒径や比表面積等を調整しても良い。
(3)SiOx相消失工程
次に、本発明におけるSiOx相消失工程について説明する。本発明におけるSiOx相消失工程は、上記複合体を、Li含有エッチング剤を用いて化学エッチングし、焼成することにより上記複合体に含まれるSiOx相を消失させる工程である。
次に、本発明におけるSiOx相消失工程について説明する。本発明におけるSiOx相消失工程は、上記複合体を、Li含有エッチング剤を用いて化学エッチングし、焼成することにより上記複合体に含まれるSiOx相を消失させる工程である。
本発明に用いられる上記Li含有エッチング剤としては、少なくともLi元素を含有し、化学エッチングし、焼成することにより上記複合体に含まれるSiOx相を消失させることができるものであれば特に限定されるものではない。このようなLi含有エッチング剤としては、例えばLiOH(水酸化リチウム)が好ましい。水酸化リチウムは、本工程における焼成時に不要な副反応生成物が生じにくいという利点を有するからである。
上記Li含有エッチング剤は、通常、溶媒に溶解させる等して、エッチング溶液として使用される。このようなエッチング溶液に用いられる上記溶媒としては、所望の上記化学エッチングをすることが可能であり、焼成することにより所望の上記Si/C複合体型負極活物質を得ることができるものであれば特に限定されるものではない。例えば、水等を挙げることができる。
また、上記エッチング溶液中のLi含有エッチング剤の濃度としては、上記エッチング溶液中のLi含有エッチング剤の種類等により変化するものであり、上述したようにLiを上記複合体中のSiOx相内に導入することができる濃度であれば、特に限定されるものではない。例えば、上記エッチング溶液が、LiOH(Li含有エッチング剤)と水(溶媒)とからなるものである場合は、上記エッチング溶液中のLiOH濃度が、具体的には、0.01〜10mol/Lの範囲内であることが好ましい。
また、本発明においては、必要に応じて、上記エッチング溶液中に、Li含有エッチング剤以外のその他のエッチング剤を添加しても良い。
本工程における、上記化学エッチングの具体的な方法としては、上記Li含有エッチング剤を用いて化学エッチングし、焼成することにより上記複合体に含まれるSiOx相を消失させることができる方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、Li含有エッチング剤を用いて水等の溶媒に溶解させるなどしてエッチング溶液を調製した後、上記エッチング溶液中に上記複合体を浸漬させて、所定の温度で所定の時間、エッチングする方法、上記エッチング溶液をスプレー等により上記複合体に噴霧するなどして、エッチングする方法等を挙げることができる。中でも、上記エッチング溶液中に上記複合体を浸漬させて、所定の温度で所定の時間、エッチングする方法が好ましい。
上記エッチング溶液中に上記複合体を浸漬させて上記化学エッチングする際の温度としては、上記エッチング溶液中のLi含有エッチング剤の種類等により変化するものであり、上述したようにLiを上記複合体中のSiOx相内に導入することができる温度であれば、特に限定されるものではない。例えば、上記エッチング溶液が、LiOH(Li含有エッチング剤)と水(溶媒)とからなるものである場合は、具体的には、40℃〜80℃の範囲内、中でも、60℃〜80℃の範囲内であることが好ましい。上記温度より低いと、LiをSiOx相内に導入することができないおそれがあり、上記温度より高いと、上記複合体が過剰にエッチングされ、所望のSi/C複合体型負極活物質を得ることができないおそれがあるからである。
また、上記エッチング溶液中に上記複合体を浸漬させて上記化学エッチングする際の時間としては、上記エッチング溶液中のLi含有エッチング剤の種類等により変化するものであり、上述したようにLiを上記複合体中のSiOx相内に導入することができる時間であれば、特に限定されるものではない。例えば、上記エッチング溶液が、LiOH(Li含有エッチング剤)と水(溶媒)とからなるものである場合は、具体的には、1〜50時間の範囲内であることが好ましい。
本発明においては、上述したようなLi含有エッチング剤の効果によりSiOx相の少なくとも一部が消失すれば良いが、不可逆容量の発生を抑制する観点から、より多くのSiOx相が消失することが好ましく、全てのSiOx相が消失することがさらに好ましい。
本工程においては、上記複合体を上記化学エッチングした後、通常、水洗しながらろ過し、乾燥等行う。次に、仮焼成し、この後本焼成することにより上記複合体に含まれるSiOx相を消失させる。
本工程における上記仮焼成を行う仮焼成条件は、上記式(3)で生成したH2O等を消失させることができる程度の条件であれば良く、仮焼成時の仮焼成温度、仮焼成時間等については、特に限定されるものではない。仮焼成を行う方法としては、例えば焼成炉を用いる方法等を挙げることができる。
本工程における上記仮焼成を行う仮焼成条件は、上記式(3)で生成したH2O等を消失させることができる程度の条件であれば良く、仮焼成時の仮焼成温度、仮焼成時間等については、特に限定されるものではない。仮焼成を行う方法としては、例えば焼成炉を用いる方法等を挙げることができる。
本工程における本焼成を行う本焼成条件は、SiOx相を消失させることができる条件であれば特に限定されるものではない。本焼成時の本焼成温度は、上述したように、本焼成時にLi2O、Li2CO3等がSiOxと反応できる程度の温度であることが好ましく、具体的には950℃〜1200℃の範囲内、中でも950℃〜1100℃の範囲内、特に950℃〜1000℃の範囲内であることが好ましい。また、本焼成時の本焼成時間は、通常1時間〜12時間の範囲内である。本焼成を行う方法としては、例えば焼成炉を用いる方法等を挙げることができる。
本工程における上記仮焼成および上記本焼成はいずれも、通常、非酸化性雰囲気下で行われる。炭素材料の酸化を防止するためである。非酸化性雰囲気としては、具体的には不活性ガス雰囲気および還元性雰囲気を挙げることができる。中でも、本発明においては、不活性雰囲気下で焼成を行うことが好ましい。不要な副反応を抑制することができるからである。不活性ガス雰囲気で焼成を行う方法としては、例えばAr等の不活性ガスを流通させながら焼成を行う方法等を挙げることができる。
また、本発明においては、得られたSi/C複合体型負極活物質に対して、粉砕処理等を行うことにより、粒径や比表面積等を調整しても良い。Si/C複合体型負極活物質の平均粒径は、例えば5μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。また、Si/C複合体型負極活物質の比表面積は、例えば0.5m2/g〜10m2/gの範囲内であることが好ましい。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
遊星ボールミルにSiO(Aldrich社製)を10g、C(黒鉛)を10g添加し、200rpmで18時間混合処理を行った。その後、得られた試料に対して、1000℃、6時間、不活性雰囲気の条件で焼成を行った。これにより、Si相およびSiOx相を有するSi/C複合体を得た。これを100Meshの篩を用いて分級してSi/C複合体サンプルを得た。
次に、濃度0.1mol/LのLiOH水溶液を調製し、このエッチング液に分級した後のSi/C複合体サンプルを浸漬し、80℃で24時間エッチングし、次に、水洗しながらろ過し、その後、乾燥させた。
その後、まず、乾燥して得られた試料を用いて、350℃で1時間の仮焼成する、次に、700℃で3時間の本焼成を、いずれも不活性雰囲気の条件で行った。これにより、Si/C複合体に含まれるSiOx相を消失させた、Si/C複合体型負極活物質を得た。
[実施例1]
遊星ボールミルにSiO(Aldrich社製)を10g、C(黒鉛)を10g添加し、200rpmで18時間混合処理を行った。その後、得られた試料に対して、1000℃、6時間、不活性雰囲気の条件で焼成を行った。これにより、Si相およびSiOx相を有するSi/C複合体を得た。これを100Meshの篩を用いて分級してSi/C複合体サンプルを得た。
次に、濃度0.1mol/LのLiOH水溶液を調製し、このエッチング液に分級した後のSi/C複合体サンプルを浸漬し、80℃で24時間エッチングし、次に、水洗しながらろ過し、その後、乾燥させた。
その後、まず、乾燥して得られた試料を用いて、350℃で1時間の仮焼成する、次に、700℃で3時間の本焼成を、いずれも不活性雰囲気の条件で行った。これにより、Si/C複合体に含まれるSiOx相を消失させた、Si/C複合体型負極活物質を得た。
[実施例2]
遊星ボールミルにSiO(Aldrich社製)を10g、C(黒鉛)を10g添加し、200rpmで18時間混合処理を行った。その後、フルフリルアルコール/エタノール/イオン交換水(5.0g/12.5g/0.38g)の混合溶液に、ボールミル処理後の試料を入れ、希塩酸(0.3M)を1g添加し、脱水重合が完了するまで撹拌した。その後、得られた試料に対して、1000℃、6時間、不活性雰囲気の条件で還元焼成を行った。これにより、Si相およびSiOx相を有するSi/C複合体と、そのSi/C複合体の表面の一部に形成された炭素被膜とを有するものを得た。これを100Meshの篩を用いて分級してSi/C複合体サンプルを得た。
次に、濃度0.1mol/LのLiOH水溶液を調製し、このエッチング液に分級した後のSi/C複合体サンプルを、60℃で0.5時間エッチングした後、水洗しながらろ過し、乾燥させた。
その後、まず、乾燥して得られた試料を用いて、350℃で1時間の仮焼成する、次に、700℃で3時間の本焼成を、いずれも不活性雰囲気の条件で行った。これにより、Si/C複合体に含まれるSiOx相を消失させた、Si/C複合体型負極活物質を得た。
遊星ボールミルにSiO(Aldrich社製)を10g、C(黒鉛)を10g添加し、200rpmで18時間混合処理を行った。その後、フルフリルアルコール/エタノール/イオン交換水(5.0g/12.5g/0.38g)の混合溶液に、ボールミル処理後の試料を入れ、希塩酸(0.3M)を1g添加し、脱水重合が完了するまで撹拌した。その後、得られた試料に対して、1000℃、6時間、不活性雰囲気の条件で還元焼成を行った。これにより、Si相およびSiOx相を有するSi/C複合体と、そのSi/C複合体の表面の一部に形成された炭素被膜とを有するものを得た。これを100Meshの篩を用いて分級してSi/C複合体サンプルを得た。
次に、濃度0.1mol/LのLiOH水溶液を調製し、このエッチング液に分級した後のSi/C複合体サンプルを、60℃で0.5時間エッチングした後、水洗しながらろ過し、乾燥させた。
その後、まず、乾燥して得られた試料を用いて、350℃で1時間の仮焼成する、次に、700℃で3時間の本焼成を、いずれも不活性雰囲気の条件で行った。これにより、Si/C複合体に含まれるSiOx相を消失させた、Si/C複合体型負極活物質を得た。
[比較例]
エッチング処理、エッチング処理後の焼成を行わないこと以外は、実施例2と同様にして、Si相およびSiOx相を有するSi/C複合体と、そのSi/C複合体の表面の一部に形成された炭素被膜とを有する負極活物質を得た。
エッチング処理、エッチング処理後の焼成を行わないこと以外は、実施例2と同様にして、Si相およびSiOx相を有するSi/C複合体と、そのSi/C複合体の表面の一部に形成された炭素被膜とを有する負極活物質を得た。
[評価]
(1)評価用リチウム二次電池の作製
実施例1、実施例2、および比較例で得られたSi/C複合体型負極活物質または負極活物質を用いて評価用リチウム二次電池(2032型コインセル、外径20mm、厚み2.3mm)を作製した。まず、Si/C複合体型負極活物質または負極活物質42.5wt%、導電化材である黒鉛42.5wt%、結着材であるPVDF15wt%を、N−メチルピロリドン中で混合して負極層形成用組成物を作製した。その後、その組成物を、負極集電体であるCu箔(厚さ10μm、日本製箔社製)に塗布し乾燥させ、次に、電極密度が1.2mg/cm2程度となるようにプレスし、次に、φ16mmの円形に打ち抜き、負極電極体を得た。この負極電極体を用いて、図2に示すような評価用リチウム二次電池を作製した。
(1)評価用リチウム二次電池の作製
実施例1、実施例2、および比較例で得られたSi/C複合体型負極活物質または負極活物質を用いて評価用リチウム二次電池(2032型コインセル、外径20mm、厚み2.3mm)を作製した。まず、Si/C複合体型負極活物質または負極活物質42.5wt%、導電化材である黒鉛42.5wt%、結着材であるPVDF15wt%を、N−メチルピロリドン中で混合して負極層形成用組成物を作製した。その後、その組成物を、負極集電体であるCu箔(厚さ10μm、日本製箔社製)に塗布し乾燥させ、次に、電極密度が1.2mg/cm2程度となるようにプレスし、次に、φ16mmの円形に打ち抜き、負極電極体を得た。この負極電極体を用いて、図2に示すような評価用リチウム二次電池を作製した。
まず、電池ケースの下蓋1bに、φ19mmの円形に打ち抜いたLiメタル2を配置した。次に、Liメタル2の上にガスケット3を配置し、Liメタル2を固定した。次に、Liメタル2上であって、ガスケット3の内周部である位置に、φ19mmのポリエチレン(PE)製のセパレータ4を2枚配置した。次に、セパレータ4上であって、ガスケット3の内周部である位置に、上述した負極層5および負極集電体6を有する負極電極体を配置した。次に、EC(エチレンカーボネート)およびDEC(ジエチルカーボネート)を体積比3:7で混合した溶媒に、LiPF6を濃度1Mで溶解させた電解液を2cc添加した。次に、負極集電体6の上に、スペーサー7を配置し、軽く押すことで電解液から気泡を除去した。次に、SUS製の板バネ8を配置し、その上から電池ケースの上蓋1aを配置し、最後に、かしめ機でかしめることにより、評価用リチウム二次電池を得た。
(2)電気化学特性評価
得られた評価用リチウム二次電池の電気化学特性を評価した。電気化学特性は、0.2C(なお、1Cは1時間で満充電できる電気量である。)で0.01VまでLiを挿入し、その後1.2VまでLiを脱離する操作を行い、このときのLi挿入容量/初回のLi挿入容量×100によりクーロン効率を導出し、これにより評価した。その結果を表1に示す。
得られた評価用リチウム二次電池の電気化学特性を評価した。電気化学特性は、0.2C(なお、1Cは1時間で満充電できる電気量である。)で0.01VまでLiを挿入し、その後1.2VまでLiを脱離する操作を行い、このときのLi挿入容量/初回のLi挿入容量×100によりクーロン効率を導出し、これにより評価した。その結果を表1に示す。
表1に示されるように、実施例1は、比較例と比べて、充放電効率が向上することが確認できた。これは、SiOxが、焼成時に、化学エッチングした後の複合体内等に残存するLiOHから生成するLi2O、Li2CO3等と反応することにより、Si−Li−Oの非晶質ネットワークを形成して消失し、SiOxによる不可逆反応の発生が抑制されたためであると考えられた。さらに、実施例2は、実施例1と比べて、充放電効率が向上した。これは、混合処理し、次に脱水重合し、この後不活性雰囲気の条件で還元焼成を行うことにより、Si/C複合体の表面の一部に炭素被膜を形成し、この炭素被膜を形成することにより、初回充電時に負極活物質の表面で起こる副反応を抑制すること、および導電性のさらなる向上を図ることができたためであると考えられた。
1a … 電池ケースの上蓋
1b … 電池ケースの下蓋
2 … Liメタル
3 … ガスケット
4 … セパレータ
5 … 負極層
6 … 負極集電体
7 … スペーサー
8 … 板バネ
1b … 電池ケースの下蓋
2 … Liメタル
3 … ガスケット
4 … セパレータ
5 … 負極層
6 … 負極集電体
7 … スペーサー
8 … 板バネ
Claims (4)
- Si材料および炭素材料を機械的エネルギー付与手段により混合し、原料組成物を得る混合工程と、
前記原料組成物を焼成し、Si相を有する複合体を合成するSi相含有複合体合成工程と、
前記複合体を、Li含有エッチング剤を用いて化学エッチングし、焼成することにより、前記複合体に含まれるSiOx相を消失させるSiOx相消失工程と、
を有することを特徴とするSi/C複合体型負極活物質の製造方法。 - 前記Si材料が、SiOであることを特徴とする請求項1に記載のSi/C複合体型負極活物質の製造方法。
- 前記Li含有エッチング剤が、LiOHであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のSi/C複合体型負極活物質の製造方法。
- 前記機械的エネルギー付与手段が、ボールミルであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のSi/C複合体型負極活物質の製造方法。
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-
2008
- 2008-05-22 JP JP2008134518A patent/JP2009283307A/ja active Pending
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