JP2016033185A - 波長変換材料及び光エネルギーデバイス - Google Patents
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Abstract
Description
一方、例えば、非特許文献1には、担持体に有機分子を固着させることで有機分子同士を近接させた波長変換材料が提案されている。
また、本発明は、励起光を照射した際に高い変換効率で該励起光より波長の短い光に変換して活用する光エネルギーデバイスの提供を課題とする。
上記の波長変換材料では、第一の波長の光が照射されると、第一の物質が第一の波長の光を吸収して基底状態から励起状態になる。或いは第一の物質は、第一の物質同士で励起エネルギーの移動が生じることにより、少なくとも一つの第一の物質が励起状態になる。第二の物質は、励起状態にある第一の物質から、励起エネルギーを受け取り、基底状態から励起状態になる。
さらに、励起状態にある第二の物質同士で、エネルギー移動が生じ、隣り合う第二の物質が励起状態となる。この時、一方の第二の物質から他方の第二の物質に励起エネルギーが移動し、他方の第二の物質がより高いエネルギーの励起状態になる。この後、他方の第二の物質の電子が励起状態から基底状態に戻る際に、第二の波長の光が発せられる。
隣り合う二つ以上の第二の物質のうち、一つ以上の第二の物質の近傍に第一の物質が少なくとも一つ、担持体の表面に化学結合している。これにより、第一及び第二の物質間のエネルギー移動が行われやすい各物質の配置が安定的に保持されるので、第二の物質の過度な凝集が抑えられ、第二の物質同士による光吸収(再吸収)が抑制され、第一及び第二の物質間のエネルギー移動が円滑に行われる。その結果、第一の波長の光が高い変換効率で第二の波長の光に変換され、第二の波長の光が波長変換材料の外方に向けて放出される。
上記の波長変換材料では、部分的に電子密度の違いが生じることで反応活性点が生じるので、波長変換物質と担持体とが化学結合によって、より強固に連結する。従って、波長変換物質の凝集がより抑制される。
また、本発明の波長変換材料においては、前記第一及び第二の物質が、カルボン酸塩、リン酸塩、アミン塩、スルホン酸塩からなる群より選ばれた一種であることが好ましい。
上記の波長変換材料では、第一及び第二の物質の担持体表面への吸着量の制御が容易になり、第一及び第二の物質の凝集状態を調整することが可能となる。
上記の波長変換材料において、担持体が無機酸化物である場合、該無機酸化物は第一及び第二の物質よりも大きな体積且つ剛直な形状とすることが容易であり、第一及び第二の物質のより好適な担持体となる。さらに、一般的な無機酸化物の表面に存在するOH基(水酸基)もしくは金属と第一もしくは第二の物質の官能基とが化学結合することができるので、第一及び第二の物質の担持体に対する吸着量の制御が容易になる。また、無機酸化物の組成を選択することで、担持体が波長変換に該当する第一及び第二の波長の光に対して吸収特性を持たないようにさせ、波長変換効率の低下を抑制することができる。
上記の波長変換材料において、担持体が有機高分子である場合、高分子鎖に反応活性点を導入することで、第一及び第二の物質と化学結合でき、吸着量の制御が容易になる。また、有機高分子の組成を適宜選択することで、担持体が波長変換に該当する第一及び第二の波長の光に対して吸収特性を持たないようにさせ、波長変換効率の低下を抑制することができる。
上記の波長変換材料では、担持体が粒子状である場合、平均粒径が10nm以上100μm以下の微粒子の表面の少なくとも一部に上記波長変換物質が連結している。これにより、波長変換材料の取り扱い及び製造が容易になる。
上記の波長変換材料では、担持体に多数の細孔があるので、第一及び第二の物質が細孔にも存在するため、好ましい。多孔質の担持体では、予め担持体を剛直に形成した上で、表面に第一及び第二の物質を担持させることで、第一及び第二の物質の吸着量の制御が容易になる。
上記の光エネルギーデバイスでは、波長変換材料の存在している位置に第一の波長の光が照射されると、上述のように波長変換材料の第一の物質が励起状態になり、上記説明したエネルギー移動が生じ、第一の波長の光が第二の波長の光に効率よく変換され、第二の物質から第二の波長の光が発せられる。第二の波長の光はそのまま光エネルギーデバイスの外部に出力されるか、光エネルギーデバイスで電流・電圧等に変換されて出力される、或いは機械等を作動させるエネルギー源になる。従って、照射された第一の波長の光が光エネルギーデバイス内で効率よく活用され、光エネルギーデバイスの出力が増大する。
上記の光エネルギーデバイスでは、透明基材の外方から光エネルギーデバイスの内部に向けて第一の波長の光が照射された際に、波長変換材料から高い強度の第二の波長の光が発せられ、光電極に照射されるので、光電極からより多くの電子が放出され、光エネルギーデバイスが効率よく作動する。
上記の光エネルギーデバイスでは、透明電極又は対向電極の外方から光エネルギーデバイスの内部に向かって第一の波長の光が照射された際に、波長変換材料から高い強度の第二の波長の光が発せられ、半導体素子に照射されるので、半導体素子における電子及び正孔の移動量が増加し、光エネルギーデバイスが効率よく作動する。
また、本発明によれば、励起光を照射した際に高い変換効率で該励起光より波長の短い光に変換して活用する光エネルギーデバイスが提供される。
波長変換材料10は、波長λ1(第一の波長)の光を吸収し、波長λ1より短い波長λ2(第二の波長)の光を発する材料であって、波長変換物質6,7と担持体3から構成されている。隣り合う二つ以上の波長変換物質7(第二の物質)のうち、一つ以上の波長変換物質7に、波長変換物質6(第一の物質)が少なくとも一つ隣接している。個々の波長変換物質6,7は、担持体3の表面3sに化学結合によって連結している。図1には、隣り合う二つの波長変換物質7のそれぞれに、波長変換物質6が一つ隣接している配置を例示しているが、隣り合う波長変換物質7は二つに限定されず、二つ以上であってよく、偶数個であることが好ましい。また、隣り合う二つ以上の波長変換物質7のうち一つ以上の波長変換物質7に隣接する波長変換物質6も一つに限定されず、二つ以上であってもよい。また、前記化学結合としては、特に制限されないが、例えば共有結合、配位結合、イオン結合、水素結合等の結合が挙げられる。
以下、各構成要素について順次説明する。
図4は、アップコンバージョンの構成における光吸収と発光の原理を説明するための概略図である。図4に示すように、二つの波長変換物質6,6(図4におけるD体(1),(2))に波長λ1且つエネルギーhνの光が入射すると、波長変換物質6のそれぞれの電子(図示略)がエネルギーE1の基底準位からエネルギーE3の励起準位に遷移する。このとき、エネルギーhνは、基底準位と励起準位のエネルギー差(E3−E1)より大きい。電子は、より安定になるべく、エネルギーE2の励起準位に遷移する。なお、このときE1<E2<E3の関係が成り立つ。続いて、励起エネルギーが隣接する波長変換物質7に移動する。
なお、本実施形態において、波長変換物質6の吸収波長λ1及び波長変換物質7の発光波長λ2は、λ1>λ2の関係が成立すれば、特に制限されない。
同観点から、波長変換物質6,7は、カルボン酸塩、リン酸塩、アミン塩、スルホン酸塩からなる群より選ばれた一種であることが好ましい。
第一の製造方法として、先ず波長変換物質6,7及び担持体3の各原料を所定の濃度の適当な溶媒に溶かして撹拌する。なお、波長変換物質6,7の溶液の濃度は、波長変換物質7に対して波長変換物質6が0.001%以上10%以下となるように適宜設定することが好ましい。これにより、表面3sに、波長変換物質7に対して波長変換物質6が0.001〜10%の範囲で存在する可能性が高まる。また、上記説明した好適な条件をふまえて分子設計或いは配位設計された波長変換物質6,7を用いることで、一つの担持体3に対し、図1に例示した配置を含む、二つ以上の波長変換物質7を隣接させ、且つ隣り合う二つ以上の波長変換物質7のうち、一つ以上の波長変換物質7に波長変換物質6を少なくとも一つ隣接させた配置で、表面3sの少なくとも一部に、波長変換物質6,7がそれぞれ化学結合によって連結する。これにより、前記溶液中に波長変換材料10が形成される。この後、遠心分離機等を用いて溶媒から波長変換材料10を分離し、必要に応じて洗浄する。
図2は、本実施形態の光エネルギーデバイス20を示す模式図である。
なお、図2には、波長変換材料10が電解質23に含まれている光エネルギーデバイス20の構成を例示しているが、波長変換材料10は光電極27の一部に適用されていてもよい。
先ず、ヨウ化リチウムとヨウ素とが混合されてなる溶液等の酸化還元対を含む材料に、予め、波長変換材料10を溶かして撹拌し、電解質23とする。波長変換材料10を作用電極21の一部に適用する場合、光電極粒子を製膜した後、波長変換材料10を適当な方法で塗布する。
この後、上記得られた電解質23を用い、公知の色素増感型太陽電池の製造方法と同様の作業を行う。これにより、光エネルギーデバイス20が完成する。
図3は、本実施形態の光エネルギーデバイス30を示す模式図である。
透明電極32及び対向電極37は、後述する半導体35,36における電子が移動するための源となる波長λ2の光よりも長い波長λ1の光の少なくとも一部を透過することができるものである。
一方、半導体36は、N型半導体から構成されている。N型半導体としては、例えばヒ素(As)やリン(P)等の五価の元素が微量にドープされたケイ素(Si)が挙げられる。
半導体39(図示略)は、真性半導体から構成され、例えばドープのないケイ素で構成されている。
公知のシリコン半導体型太陽電池の製造方法と同様の作業を行い、半導体36の上に対向電極37を形成する前に、印刷法等により半導体36の上に波長変換材料10を成膜する。そして、波長変換材料10の上に対向電極37を形成する。これにより、光エネルギーデバイス30が完成する。
これにより、波長変換物質6,7間のエネルギー移動が行われやすい波長変換物質6,7の配置が安定的に形成及び保持されるので、波長変換物質7の過度な凝集が抑えられ、波長変換物質7同士による光吸収(再吸収)が抑制される。その結果、波長変換物質6,7間のエネルギー移動が円滑に行われ、波長λ1の光が高い変換効率で波長λ2の光に変換され、波長λ2の光が波長変換材料10の外方に向けて放出される。
上記構成により、部分的に電子密度の違いが生じることで反応活性点が生じるので、波長変換物質6,7と担持体3とが化学結合によって、より強固に連結する。従って、波長変換物質の凝集がより抑制される。従って、波長λ2の光を波長変換材料10の外方に向けて効率よく放出させることができる。
また、波長変換材料10においては、波長変換物質6,7が、カルボン酸塩、リン酸塩、アミン塩、スルホン酸塩からなる群より選ばれた一種であることが好ましい。
上記構成により、波長変換物質6,7の表面3sへの吸着量の制御が容易になり、波長変換物質6,7の凝集状態を調整することが可能となる。従って、波長λ2の光を波長変換材料10の外方に向けて効率よく放出させることができる。
担持体が無機酸化物である場合、無機酸化物は波長変換物質6,7よりも大きな体積且つ剛直な形状とすることが容易であり、波長変換物質6,7のより好適な担持体となる。さらに、一般的な無機酸化物の表面に存在するOH基もしくは金属と波長変換物質6もしくは波長変換物質7の官能基とが化学結合できるため、波長変換物質6,7の担持体3に対する吸着量の制御が容易になる。また、無機酸化物の組成を選択することで、担持体3が波長変換に該当する波長λ1,λ2の光に対して吸収特性を持たないようにさせ、波長変換効率の低下を抑制すると共に、波長λ2の光を効率よく取り出すことができる。
担持体3が有機高分子である場合、高分子鎖に反応活性点を導入することで、波長変換物質6,7と化学結合でき、吸着量の制御が容易になる。また、有機高分子の組成を適宜選択することで、担持体3が波長変換に該当する波長λ1,λ2の光に対して吸収特性を持たないようにさせ、波長変換効率の低下を抑制すると共に、波長λ2の光を効率よく取り出すことができる。
この構成により、平均粒径が10nm以上100μm以下の微粒子の表面の少なくとも一部に波長変換物質6,7が連結している状態になるので、波長変換材料10の取り扱い及び製造が容易になる。
上記構成により、担持体3に多数の細孔があるので、波長変換物質6,7が細孔にも存在する。このような多孔質の担持体3では、予め担持体3を剛直に形成した上で、表面3sに波長変換物質6,7を担持させることで、波長変換物質6,7の吸着量の制御が容易になる。従って、波長λ2の光を波長変換材料10の外方に向けて効率よく放出させることができる。
波長変換物質6としてのPtTCPPyの濃度が0.05mMであり、波長変換物質7としてのBBAの濃度が5mMのアセトニトリル溶液10mlに、担持体としての平均粒径1μmのシリカ微粒子を2g添加し、30分間撹拌した。得られた複合微粒子を遠心分離で溶媒から分離し、アセトニトリルで洗浄した。その後、10mlのトルエンに5gの前記複合微粒子を混合し、ガラス基板上にキャストし、膜厚5μmの複合膜を形成した。
シリカ微粒子の代わりに平均粒径1μmの酸化チタン微粒子を用いること以外は実施例1と同様にして、複合膜を形成した。
担持体としての平均粒径20nmのシリカ微粒子をエチルセルロース、ターピネオールに混合し、スクリーン印刷にてガラス基板上に塗布した後、520℃で30分間焼成した。その後、ガラス基板を波長変換物質6としてのPtTCPPyの濃度が0.05mMであり、波長変換物質7としてのBBAの濃度が5mMのアセトニトリル溶液に、30℃の環境下で5時間浸漬して複合膜を形成した。
シリカ微粒子の代わりに平均粒径20nmの酸化チタン微粒子を用いること以外は実施例3と同様にして、複合膜を形成した。
PtTCPPyの代わりにPtTPPyを用いること以外は実施例1と同様にして、複合膜を形成した。なお、PtTPPyは、前記化学式(1)におけるRを水素(H)としたものである。
BBAの代わりにDPAを用いること以外は比較例1と同様にして、複合膜を形成した。なお、DPAは、前記化学式(4)におけるRを水素(H)としたものである。
PtTCPPyの濃度が0.05mM、BBAの濃度が5mMのアセトニトリル溶液をガラス基板上にキャストし、膜厚5μmの複合膜を形成した。
実施例1〜4及び比較例1〜3で形成した複合膜を水に浸漬させ、窒素(N2)でバブリングを行いながら、波長532nmの光を照射し、分光器を用いて発光スペクトルを計測することで、発光スペクトルのピーク強度を比較し、4段階で評価した。発光スペクトルのピーク波長は435nmであった。
各複合膜からの発光スペクトルのピーク強度に関する評価結果を表1に示す。なお、表1において、各評価結果はそれぞれ、
4・・・複合膜の発光スペクトルのピーク強度が比較例3の複合膜の発光スペクトルのピーク強度より10%以上増加した場合、
3・・・複合膜の発光スペクトルのピーク強度が比較例3の複合膜の発光スペクトルのピーク強度より2%以上10%未満増加した場合、
2・・・複合膜の発光スペクトルのピーク強度が比較例3の複合膜の発光スペクトルのピーク強度より2%未満増加或いは減少した場合、
1・・・複合膜の発光スペクトルのピーク強度が比較例3の複合膜の発光スペクトルのピーク強度より2%以上減少した場合、
であることを示す。
従って、本発明を適用した波長変換材料に波長532nmの光を照射した際に、波長変換材料から、照射した光の波長よりも短い波長435nmの光が発せられ、且つ発光強度が大きくなり、本発明の有効性が実証された。
Claims (10)
- 前記第一の波長の光を吸収する第一の物質と、前記第一の波長よりも短い前記第二の波長の光を発する第二の物質と、担持体とを備え、
隣り合う二つ以上の前記第二の物質のうち、少なくとも二つの前記第二の物質のそれぞれに前記第一の物質が少なくとも一つ隣接し、
前記第一の物質及び前記第二の物質がそれぞれ、前記担持体の表面の少なくとも一部に化学結合によって連結していることを特徴とする波長変換材料。 - 前記第一及び第二の物質が官能基を少なくとも一つ以上有し、
前記官能基が前記担持体と前記化学結合によって連結するヘテロ元素を含有していることを特徴とする請求項1に記載の波長変換材料。 - 前記官能基が、カルボン酸基、シリル基、ヒドロキシ基、リン酸基、アルデヒド基、アミノ基、アミド基、チオール基、スルホン基からなる群より選ばれた一種であることを特徴とする請求項2に記載の波長変換材料。
- 前記第一及び第二の物質が、カルボン酸塩、リン酸塩、アミン塩、スルホン酸塩からなる群より選ばれた一種であることを特徴とする請求項3に記載の波長変換材料。
- 前記担持体が無機酸化物又は有機高分子であることを特徴とする請求項1〜4のうち何れか一項に記載の波長変換材料。
- 前記担持体は平均粒径が10nm以上100μm以下の微粒子であることを特徴とする請求項1〜5のうち何れか一項に記載の波長変換材料。
- 前記担持体が多孔質であることを特徴とする請求項1〜6のうち何れか一項に記載の波長変換材料。
- 請求項1〜7のうち何れか一項に記載の波長変換材料が用いられていることを特徴とする光エネルギーデバイス。
- 透明基材と、透明電極と、前記第二の波長の光が照射された際に電子を放出可能な光電極と、電解質と、対向電極と、対向基材とを備え、
前記透明基材、前記透明電極、前記光電極、前記電解質、前記対向電極、前記対向基材のうち少なくとも何れかが請求項1〜7のうち何れか一項に記載の前記波長変換材料を有していることを特徴とする光エネルギーデバイス。 - 透明電極と、半導体素子と、対向電極とを備え、
前記透明電極、前記半導体素子、前記対向電極のうち少なくとも何れかが請求項1〜7のうち何れか一項に記載の前記波長変換材料を有していることを特徴とする光エネルギーデバイス。
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