JP4260765B2 - ブルー銅モデル錯体を酸化還元対に用いた色素増感型太陽電池 - Google Patents

ブルー銅モデル錯体を酸化還元対に用いた色素増感型太陽電池 Download PDF

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Description

本発明は、色素増感型太陽電池に関する。
地球の環境問題や化石エネルギー資源枯渇問題などを考慮して、クリーンなエネルギー源として、太陽光を利用する太陽電池が古くから研究されている。
1990年代になって、スイスのローザイス工科大学のグレツェル教授らにより開発されたナノ結晶性色素増感型太陽電池(DSSC)が報告され、従来のp−n接合型太陽電池に替わる安価な太陽電池として脚光を浴びている。この色素増感型太陽電池では、I /I酸化還元対が最良の電子移動媒体として現在まで使用されている(非特許文献1〜9)。しかしながら、このI /I酸化還元対は、以下の望ましくない化学的性質を有している。第1に、良好な性能を達成するのに必要とされる濃度のI は、相当量の可視光を吸収してしまう。第2に、Iは腐食性であり、第3に、Iは相当な蒸気圧を有するので、厳重に密封しないと電池から散逸してしまう。従って、I /I酸化還元対以外の電子移動媒体を見出すべく様々な試みがされてきた。I /Iの代替品として用いられた媒体のうちのいくつかは、I /Iよりも有利な酸化還元電位を有していたが、今まで、I /Iに匹敵するような電池の開放電圧を得ることができておらず、光電変換特性においていずれもI /Iよりも著しく劣るものであった(非特許文献10〜15)。
このため、結局、上述したI /Iの欠点が知られながらも、I /Iが最良の酸化還元対として使用され続けている。
他方、銅に配位化合物を配位させて得られる各種の銅錯体化合物が従来から研究されてきたが、色素増感型太陽電池の酸化還元対としては、上述したとおり、もっぱらI /Iが用いられており、銅錯体化合物が色素増感型太陽電池に利用できるとは考えられていなかった。
このように、次世代太陽電池として期待される色素増感型太陽電池には、一般に、電解液としてヨウ化物イオンが酸化還元対として使用されている。ヨウ化物イオンは対極である白金を腐食し、また、昇華性があるため電池寿命を低下させ、結果として色素増感型太陽電池を長期間使用することを妨げている。
O’Regan,B.;Gratzel,M.Nature,1991,353,737. Gratzel,M.Nature 2001,414,338. Hagfeldt,A.;Gratzel,M.Chem.Rev.1995,95,49. Hagfeldt,A.;Gratzel,M.Acc.Chem.Res.2000,33,269. Gratzel,M.Pure Appl.Chem.2001,73,459. Nazeeruddin,M.K.;Pechy,P.;Renouard,T.;Zakeeruddin,S.M.;Humphry−Baker,R.;Comte,P.;Liska,P.;Cevey,L.;Costa,E.;Shklover,V.;Spiccia,L.;Deacon,G.B.;Bignozzi,C.A.;Gratzel,M.J.Am.Chem.Soc.2001,123,1613. Wang,P.;Klein,C.;Humphry−Baker,R.;Zakeeruddin,S.M.;Gratzel,M.J.Am.Chem.Soc.2005,127,808. Gratzel,M.;Moser,J.−E.In Electron Transfer in Chemistry;Balzani,V.Ed.;Wiley−VCH:Weinheim,Germany,2001;Vol.V;pp 589−644. Hara,K.;Arakawa,H. in Handbook of Photovoltaic Science and Engineering;Luque,A.,Hegedus,S.Eds.;John Wiley & Sons Ltd.:Chichester,UK,2003;pp 663−700. Nusbaumer,H.;Moser,J.−E.;Zakkeruddin,S.M.;Gratzel,M.J.Phys.Chem.B 2001,105,10461. Nusbaumer,H.;Zakeeruddin,S.M.;Moser,J.−E.;Gratzel,M.Chem.Eur.J.2003,9,3756. Oskam,G.;Bergeron,B,.V.;Meyer,G.J.;Searson,P.C.J.Phys.Chem.B 2001,105,6867. Gregg,B.A.;Pichot,F.;Ferrere,S.;Fields,C.L.J.Phys.Chem.B 2001,105,1422. Sapp,S.A.;Elliott,M.;Contado,C.;Caramori,S.;Bignozzi,C.A.J.Am.Chem.Soc.2002,124,11215. Cameron,P.J.;Peter,L.M.;Zakeeruddin,S.M.;Gratzel,M.Coord.Chem.Rev.2004,248,1447.
本発明は、上記問題点の解決を意図するものであり、上記課題を解決する太陽電池用電解液組成物を提供すること、およびそれを用いた太陽電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、銅錯体の中に酸化還元対として適したものがあることを見出し、これに基づいて本発明を完成させた。
具体的には、本発明によれば、以下の組成物および太陽電池が提供される。
(項1)
色素増感型太陽電池に使用される電解液組成物であって、
該組成物は、溶媒を含み、
さらに該組成物は、一価の銅錯体、二価の銅錯体、または該一価の銅錯体と該二価の銅錯体との混合物を含み、
該一価の銅錯体は以下の一般式1で示され、該二価の銅錯体は以下の一般式2で示され、
一般式1: Cu(L)(L
一般式2: CuII(L)(L
ここで、LおよびLは同一であってもよく、または異なってもよく、銅原子に配位結合する配位化合物であり、LおよびLが銅原子との間に合計4つの配位結合を形成しているか、
あるいは、LおよびLは互いに結合して1つの配位化合物L12となって、該1つの配位化合物L12が銅原子との間に4つの配位結合を形成して一般式1の銅錯体が一般式1Aの銅錯体となり、一般式2の銅錯体が一般式2Aの銅錯体となっている、
一般式1A: Cu(L12
一般式2A: CuII(L12
組成物。
(項2)
上記項1に記載の組成物であって、ここで、
およびLは、互いに独立した配位化合物であり、
およびLは、それぞれの分子が銅原子との間に2つの配位結合を形成している、
組成物。
(項3)
上記項1に記載の組成物であって、前記一価の銅錯体および二価の銅錯体が四面体配位構造を有する、組成物。
(項4)
上記項1に記載の組成物であって、前記一価の銅錯体および二価の銅錯体がねじれた四面体配位構造を有する、組成物。
(項5)
上記項2に記載の組成物であって、前記一価の銅錯体が二価の銅錯体に変化する際の銅錯体の立体構造の変化、および前記二価の銅錯体が一価の銅錯体に変化する際の銅錯体の立体構造の変化が、LおよびLの立体構造によって抑制されている、組成物。
(項6)
上記項2に記載の組成物であって、LおよびLが同一である、組成物。
(項7)
上記項2に記載の組成物であって、前記一価の銅錯体および二価の銅錯体が以下からなる群から選択される、組成物。
(項8)
上記項7に記載の組成物であって、前記一価の銅錯体および二価の銅錯体がCu(SP)(mmt)またはCu(dmp)である、組成物。
(項9)
上記項7に記載の組成物であって、前記一価の銅錯体および二価の銅錯体がCu(dmp)である、組成物。
(項10)
上記項2に記載の組成物であって、前記一価の銅錯体の濃度と、前記二価の同錯体の濃度との比が、CuII/(Cu+CuII)=0.1〜0.6となる範囲内である、組成物。
(項11)
上記項2に記載の組成物であって、前記溶媒がニトリル化合物系溶媒である、組成物。
(項12)
上記項11に記載の組成物であって、溶媒がメトキシアセトニトリルである、組成物。
(項13)
上記項12に記載の組成物であって、さらに、LiClOおよびtert−ブチルピリジンを含む、組成物。
(項14)
色素増感型太陽電池であって、増感色素を吸着させた半導体電極と、対極と、上記項1に記載の電解液組成物とを含む、太陽電池。
(項15)
上記項14に記載の太陽電池であって、前記対極が白金対極である、太陽電池。
(項16)
上記項14に記載の太陽電池であって、前記増感色素がルテニウム色素であり、前記半導体電極がTiO電極であり、前記対極が白金対極である、太陽電池。
本発明によれば、酸化還元対として従来用いられているI /Iに劣らない電子移動特性を有し、かつヨウ素のような昇華性がなく、また白金対極を腐食させる問題がない酸化還元対が提供される。本発明の電解液組成物を用いれば、I /Iを用いる場合にほぼ匹敵する開放電圧またはI /Iを用いる場合を超える開放電圧を得ることができる。また、ねじれた四面体構造をもつ銅錯体を用いる場合には、同時に、高い光電変換特性を得ることもできる。
以下、本発明を詳細に説明する。
(本発明の概要)
[(−)−スパルテイン−N,N’](マレオニトリルジチオラト−S,S’)銅 ([Cu(SP)(mmt)])0/−、ビス(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)銅 ([Cu(dmp)2+/+)、およびビス(1,10−フェナントロリン)銅 ([Cu(phen)2+/+)の銅錯体の電子自己交換速度定数を、電子移動のマーカス理論に照らして、類似した系列のフェロセン誘導体から銅(II)錯体への電子移動の速度定数から決定した。得られる電子自己交換速度定数は以下の順序で増大した:
[Cu(phen)2+/+ < [Cu(SP)(mmt)]0/−
[Cu(SP)(mmt)]0/− < [Cu(dmp)2+/+
この大きくなる順序は、歪んだ四面体配位構造のために銅(II)錯体と銅(I)錯体との間での構造変化がより小さくなる順序と一致する。銅錯体を酸化還元対として用いて、色素増感型太陽電池(DSSC)を作製し、その光電気化学的応答を、従来のI /I酸化還元対の光電気化学的応答と比較した。太陽光照射(100mW/cm)をシミュレーションする照明下において、[Cu(phen)2+/+、[Cu(dmp)2+/+および[Cu(SP)(mmt)]0/−を用いた色素増感型太陽電池の光エネルギー変換効率(η)値は、それぞれ、0.1、1.4、および1.3%と記録された。最大のη値(2.2%)は、[Cu(dmp)2+/+酸化還元対を用いた色素増感型太陽電池について光照射強度20mW/cmにおいて得られ、従来のI /I酸化還元対の開放電圧よりも高い開放電圧が達成された。
(銅錯体)
本発明の組成物に用いられる銅錯体は、以下の一般式1で示される一価の銅錯体または一般式2で示される二価の銅錯体あるいはそれらの混合物を含む。
一般式1: Cu(L)(L
一般式2: CuII(L)(L
ここで、LおよびLは銅原子に配位結合している配位化合物である。
およびLは同一であってもよく、また異なってもよい。同一である場合には、銅錯体の合成が容易であるという利点がある。
およびLはそれぞれ、その分子内に、銅原子と配位結合を形成し得る部位を2箇所以上有する化合物であり、それぞれ、2箇所において銅原子と配位結合を形成している。銅原子と配位結合を形成し得る部位は、例えば、非共有電子対を有する窒素原子、硫黄原子、酸素原子などが例示され、非共有電子対を有する窒素原子または硫黄原子が好ましい。LおよびLのそれぞれにおいて、銅原子と配位結合を形成する2つの原子の間には、1〜5個の炭素鎖が存在することが好ましく、より好ましくは2〜3個の炭素鎖である。銅原子と配位結合を形成する2つの原子の間の距離が長すぎる場合または短すぎる場合には、銅錯体を合成することが難しい。炭素鎖は脂肪族の炭素鎖であってもよく、芳香族の炭素鎖であってもよい。炭素鎖の炭素原子と炭素原子とは単結合で連結されていてもよく、不飽和結合(二重結合または三重結合)で連結されていてもよい。炭素−炭素二重結合が含まれる場合には、その二重結合は、エチレン性二重結合であってもよく、芳香族性の二重結合であってもよい。
すなわち、LおよびLは、その分子内に一般式3で示される部分構造を有する化合物として記載することができる。
一般式3: A−R−A
ここで、AおよびAは、それぞれ銅原子と配位結合を形成する原子であり、Rは、AおよびAを連結する基である。
好ましくは、LおよびLは、一般式4の化合物として記載される配位化合物である。
一般式4: R−A−R−A−R
ここで、AおよびAは、それぞれ銅原子と配位結合を形成する原子であり、Rは、AおよびAを連結する基であり、RおよびRは、銅錯体が四面体配位構造を有するようにLおよびLの立体構造上の位置を規制する基である。R、RおよびRは、互いに結合されていてもよい。
なお、本明細書中で価数の記述なしに単に「銅錯体」と記載する場合には、上記一価の銅錯体および二価の銅錯体を総称する意味である。同様に価数の記述なしに単に「銅」もしくは「Cu」と記載する場合には、一価の銅および二価の銅の両者を総称する意味である。
好ましい実施形態では、銅錯体は、四面体構造を有するものである。なお、本明細書中で、四面体構造との用語は、正四面体構造に限定されず、歪んだ四面体構造をも含む意味で使用される。また四面体構造はいうまでもなく平面構造を含まない。四面体構造であっても、平面構造に近いものは、好ましくない。例えば、銅原子に配位する第1の原子および第2の原子と銅原子とで規定される平面に対する、銅原子に配位する第3の原子と銅原子との結合の角度および銅原子に配位する第4の原子と銅原子との結合の角度がともに10°以上であることが好ましく、ともに20°以上であることがより好ましく、ともに30°以上であることがさらに好ましい。
好ましい実施形態では、銅錯体は、歪んだ四面体構造を有するものである。このような構造は、ねじれた配位構造とも呼ばれ、銅に配位する化合物の立体構造を選択することにより、そのような構造の錯体を形成することができる。四面体構造におけるいずれかの二面角が68°以上になることが好ましい。いずれかの二面角が70°以上になることがより好ましい。いずれかの二面角が75°以上になることが特に好ましい。二面角の上限は特にないが、四面体構造におけるいずれの二面角も90°を超えないようにすることが好ましく、四面体構造におけるいずれの二面角も80°を超えないようにすることがより好ましい。二面角が大きすぎる場合には、安定な錯体を合成することが困難になる場合がある。
好ましい実施形態では、前記一価の銅錯体が二価の銅錯体に変化する際の銅錯体の立体構造の変化、および前記二価の銅錯体が一価の銅錯体に変化する際の銅錯体の立体構造の変化が、LおよびLの立体構造またはL12の立体構造によって抑制される。
すなわち、一般に、一価の銅錯体は四面体配位構造をとりやすく、二価の銅錯体は平面的四辺形配位構造をとりやすい傾向がある。このため、酸化還元反応により銅が一価から二価に、あるいは二価から一価に変化する際に銅錯体の立体的な配位構造が大きく変化しやすい。ここで、配位化合物L、L、およびL12中の配位結合を形成する原子(例えば、S、Nなど)の周囲に置換基を導入することにより、銅錯体の立体構造を限定することが可能であり、そのことにより、銅が一価から二価に、あるいは二価から一価に変化する際の立体的な配位構造の変化を抑制することができる。一価および二価の両方において銅錯体が平面的四辺形配位構造をとるようにL、L、およびL12の構造を設計してもよく、一価および二価の両方において銅錯体が四面体配位構造をとるようにL、L、およびL12の構造を設計してもよい。好ましくは、一価および二価の両方において銅錯体が歪んだ四面体配位構造をとるようにL、L、およびL12の構造が設計される。
本発明において使用される好ましい銅錯体の具体例としては、例えば、以下の銅錯体が例示される。
上記銅錯体の具体例のうち、[Cu(phen)](CFSO (phen=1,10−フェナントロリン)は、4つのN−供与性原子がほぼ共平面にあると推定されている。
また、[Cu(SP)(mmt)][(−)−スパルテイン−N,N’](マレオニトリルジチオラト−S,S’)銅 ([Cu(SP)(mmt)])は、歪んだ四面体構造を有する銅錯体であり、ブルー銅(II)タンパクの活性中心に特徴的なS→Cu(II)の電子移動(CT)バンドとして帰属される500〜1000nmの領域の強いバンドを有する。
上記銅錯体の具体例のうち、ビス(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)銅([Cu(dmp)](CFSO)については、フェナントロリンリガンドの2位および9位にメチル基を導入することにより、2つのメチル基により提供される立体障害の結果として、歪んだ四面体配位構造が得られる。
1つの実施形態において銅錯体は、ブルー銅タンパク質であってもよい。ブルー銅タンパク質は、ポリペプチド鎖のうちの4ヶ所が銅原子に配位結合した構造を有し、そのポリペプチドの立体構造により、銅錯体の配位構造が規制されている。
ブルー銅タンパク質の例としては、プラストシアニンが挙げられる。プラストシアニンは、タイプIブルー銅タンパク質に分類され、歪んだ四面体配位構造を有し、平面的四角形の配位構造を有する銅錯体に比べて約600nmで強力な吸収波長を有する。
電解液中の銅錯体濃度は、0.01mol/L以上が好ましく、0.05mol/L以上がより好ましく、0.1mol/L以上がさらに好ましい。また、2mol/L以下が好ましく、1mol/L以下がより好ましく、0.5mol/L以下がさらに好ましい。
電解液中の銅錯体(I)濃度と銅錯体(II)濃度との比は、CuII/(Cu+CuII)のモル比の値として、0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.2以上がさらに好ましい。また、0.8以下が好ましく、0.6以下がより好ましく、0.5以下がさらに好ましい。
(その他の酸化還元対)
必要であれば、電解液には、上記銅錯体以外の酸化還元対(例えば、I /I)を併用してもよいが、上記銅錯体以外の酸化還元対が多すぎる場合には、本発明の効果が得られにくくなるので、上記銅錯体以外の酸化還元対の使用量は少量とすることが好ましい。具体的には、例えば、重量を基準として、上記銅錯体以外の酸化還元対の使用量は、上記銅錯体の使用量100重量部に対して、100重量部以下とすることが好ましく、50重量部以下とすることがより好ましく、25重量部以下とすることがさらに好ましく、10重量部以下とすることがいっそう好ましく、5重量部以下とすることがひときわ好ましく、1重量部以下とすることが特に好ましい。上記銅錯体以外の酸化還元対を使用しないことが最も好ましい。
(溶媒)
電解液には、上記銅錯体を適切な溶媒に溶解して得ることができる。溶媒としては、銅錯体を溶解し得る任意の溶媒が使用可能であり、従来色素増感型太陽電池に用いられていた任意の溶媒を用いることができる。
具体的には、例えば、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、カーボネート系溶媒、ニトリル化合物系溶媒などが挙げられる。
ニトリル化合物系の溶媒の具体例としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、アジポニトリルなどが挙げられる。
エーテル系の溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテルなどが挙げられる。
アルコール系の溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
カーボネート系の溶媒の具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。
ニトリル化合物系溶媒が好ましく、アセトニトリルまたはメトキシアセトニトリルがより好ましく、メトキシアセトニトリルがより好ましい。
溶媒としては、必要に応じて水を用いることも可能であるが、水が存在する場合には、色素の寿命が短くなりやすいという欠点がある。従って、水を用いないことが好ましい。用いる場合であっても電解液全体のうちの5%以下とすることが好ましく、1%以下とすることがより好ましい。
(支持電解質)
電解液には、また、必要に応じて、従来公知の任意の支持電解質を用いることができる。支持電解質としては、リチウムイオンなどの陽イオンを生成するもの(例えば、リチウム塩)や、塩素イオンなどの陰イオンを生成するもの(例えば、塩化物)などが挙げられる。リチウム塩が好ましい。中でもLiClOが好ましい。
支持電解質の電解液中の濃度は、0.01mol/L以上が好ましく、0.05mol/L以上がより好ましく、0.1mol/L以上がさらに好ましい。また、5mol/L以下が好ましく、1mol/L以下がより好ましい。
(その他の添加剤)
電解液には、また、必要に応じて、各種の添加剤などを適宜用いることができる。
例えば、余分な増感色素を除去するなどのために、アミン類を添加することができる。具体的には例えば、ピリジン、tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンなどが例示される。tert−ブチルピリジンが好ましい。
このようなアミン化合物の電解液中の濃度は、0.01mol/L以上が好ましく、0.05mol/L以上がより好ましく、0.1mol/L以上がさらに好ましい。また、5mol/L以下が好ましく、1mol/L以下がより好ましい。
好ましい実施形態において、本発明の電解液組成物は、メトキシアセトニトリルを溶媒として用い、添加剤としてLiClOおよびtert−ブチルピリジンが添加される。
(太陽電池)
本発明の太陽電池は、色素増感型太陽電池であって、増感色素を吸着させた半導体電極と、対極と、上記電解液組成物とを含む。
(増感色素)
増感色素としては、従来から色素増感型太陽電池に用いられていた任意の色素を用いることができる。ルテニウムビピリジン系色素、ポルフィリン系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、アゾ系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、キノン系色素、キナクリドン系色素、キサンテン系色素、ペリレン系色素、キノンイミン系色素、インジゴ系色素など各種の色素が使用可能である。ルテニウムビピリジン系色素が好ましい。特に好ましくは、シス−ジチオシアネート−N,N’−ビス(4−カルボキシレート−4−テトラブチルアンモニウムカルボキシレート−2,2’−ビピリジン)ルテニウム(II) (N719)である。
(半導体電極)
半導体電極材料としては、光を透過し、かつ導電性を有する任意の材料を使用することができる。従来から色素増感型太陽電池に用いられていた任意の半導体電極材料を用いることができる。酸化チタンを焼き付ける製造工程を考慮して、耐熱性のある材料が好ましい。例えば、ITO(インジウムドープ酸化スズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)またはATO(アンチモンドープ酸化スズ)などの導電性物質を薄膜としてガラス、プラスチックなどの透明基材の表面に積層したものが使用可能である。導電性物質としてはITOが好ましい。透明基材としてはガラスが好ましい。より具体的には例えば、95%酸化インジウムと5%酸化スズからなるITOをガラス板に薄く蒸着した電極などが挙げられる。
(透明電極)
電極には、通常、多孔質酸化チタンの透明層が積層され、その上に前述した色素が積層される。多孔質酸化チタンとしては、従来から色素増感型太陽電池に用いられていた任意の多孔質酸化チタンを用いることができる。
酸化チタンの透明層の厚みは、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは2μm以上であり、さらに好ましくは3μm以上であり、特に好ましくは4μm以上である。また、10μm以下であることが好ましく、より好ましくは8μm以下であり、さらに好ましくは7μm以下であり、特に好ましくは5μm以下である。
1つの実施形態において、酸化チタンの透明層の上に、酸化チタンの散乱層を設けることができる。
(対極)
対極としては、従来から色素増感型太陽電池に用いられていた任意の対極用材料を用いることができる。例えば、ITO薄膜を積層したガラスに、さらに白金を蒸着したものが使用可能である。
本発明の組成物は、対極に白金を使用しても白金を腐食させることが実質的にないため、対極に白金を使用する場合に本発明は特に有用である。
(太陽電池の製造方法)
本発明の太陽電池は、上述した電解液組成物を用いること以外は、従来公知の方法を用いて製造することができる。すなわち、色素が付与された電極を形成し、その電極と対極との間に電解液組成物を充填することにより色素増感型太陽電池が得られる。より具体的には例えば、導電性基盤(例えば、OTE)の上に、酸化チタンの多孔質膜を設け、酸化チタン表面に色素(例えば、ルテニウム色素)を吸着させ、対極をつけ、その隙間に電解液を注入し、必要に応じて電解液が漏れないように密封することにより電池が得られる。
銅錯体分子として銅錯体Cu(SP)(mmt)および銅錯体Cu(dmp)などを合成した。色素増感型太陽電池は透明電極(OTE)上に酸化チタン(P25)膜を形成させ(OTE/TiO)、ルテニウム色素(N719)を吸着させて電極(OTE/TiO/N719)とし、対極として白金を使用して銅錯体とLiClOとtert−ブチルピリジンを含むメトキシアセトニトリル溶液を電解液として用いて作製した。以下にその詳細を説明する。
(材料)
[Cu(SP)(mmt)]、[Cu(dmp)](CFSO、[Cu(dmp)](CFSO)、[Cu(phen)](CFSOおよび[Cu(phen)](CFSO)を、以下の文献に記載された方法により製造し、特徴付けした。
Kim,Y.−J.;Kim,S.−O.;Kim,T.−I.;Choi,S.−N.Inorg.Chem.2001,40,4481。
Hoffmann,S.K.;Corvan,P.J.;Singh,P.;Sethulekshmi,C.N.;Metzger,R.M.;Hatfield,W.E.J.Am.Chem.Soc.1983,105,4608。
Pawlowski,V.;Kunkely,H.Zabel,M.;Vogler,A.Inorg.Chem.Acta 2004,357,824。
Liu,S.−J.;Huang,C.−H.;Chang,C.−C.Mater.Chem.Phys.2003,82,551。
Tran,D.;Skelton,B.W.;White,A.H.;Laverman,L.E.;Ford,P.C.Inorg.Chem.1998,37,2505。
NaSCN水溶液を用いる[Cu(SP)(mmt)]の還元により[Cu(SP)(mmt)]Naを調製した。
Ru色素、シス−ジチオシアネート−N,N’−ビス(4−カルボキシレート−4−テトラブチルアンモニウムカルボキシレート−2,2’−ビピリジン)ルテニウム(II) (N719)は、シス−ジチオシアネート−N,N’−ビス(4,4’−ジカルボキシレート−2,2’−ビピリジン)−ルテニウム(II)から、文献(Nazeeruddin,M.K.;Zakeeruddin,S.M.;Humphry−Baker,R.;Liska,J.P.;Shklover,N.V.;Fischer,C.−H.;Gratzel,M.Inorg.Chem.1999,38,6298)に記載の方法によって合成した。ジメチルフェロセン([Fe(CMe)])、ベンゾイルフェロセン([Fe(C)(CCOOBzl)])およびデカメチルフェロセン(Fe(CMe)を、和光純薬工業株式会社から購入した。すべての溶媒および化学薬品は、試薬グレードの品質のものを用い、そして、特に示さない限り、購入したものをさらなる精製を行わずに使用した。
(銅錯体の電子移動動力学)
フェロセン誘導体から銅(II)錯体への電子移動の動力学測定を、UNISOKU RSP−601ストップトフロー高速走査分光計を用いて、脱気したアセトニトリル中、298Kで行った。それぞれの場合において、少なくとも5つの独立した測定からの電子移動の速度定数(ket)が実験誤差±5%の範囲内で一致することを確認した。マッキントッシュパーソナルコンピューターを用いて、最小2乗法近似により擬似1次速度定数kを決定した。ln(A−A)対時間の擬似1次プロットは、3半減期以上にわたって直線状であり、相関係数ρは>0.999であった。2次速度定数は、k対過剰な基質の濃度の傾きから、最小2乗法により決定された。
(電気化学的測定)
電気化学的測定は、BAS 100 W電気化学的分析機により、0.10M NBu ClOを支持電解質として含む脱気したアセトニトリル中、298Kで行った。従来の3電極電池を白金作用電極(表面積0.3mm)とともに用い、そして白金ワイヤーを対極として使用した。作用電極は、BAS研磨用アルミナ懸濁液で磨き、そしてアセトンですすいだ後に使用した。対極は白金ワイヤーであった。Ag/AgNO(0.01M)参照電極に対して測定された電位を記録し、そして0.29Vを加えることにより対SCEに変換した(Mann,C.K.;Barnes,K.K.Electrochemical Reactions in Nonaqueous Systems;Marcel Dekker:New York,1970)。
(色素増感型太陽電池のための作用電極の調製)
ナノ多孔質TiO電極は、3重層構造を有するTiOフィルムから構成された。コーティングされたTiOの稠密なブロッキング下層を、光学的に透明な電極(OTE)(日本板ガラス社製、SnO:F、8Ω/スクエア上に堆積させた。エタノール−水混合溶媒中のチタンテトライソプロポキシドの溶液をOTEの表面にスピンコートした。得られた電極を、空気中450℃で30分間アニールした。スペーサーとしてのガラスロッドおよび粘着テープを用いて、TiOナノ粒子(P25、d=21nm、日本エアロジル社製)のコロイド状懸濁液をOTE上に滴下して拡げることにより、透明層を調製した。得られた電極(OTE/TiO)を空気中、450℃で30分間アニールした。電極の厚みをプロファイラーにより測定したところ、4〜5μの範囲であった。次いで、文献に記載の方法でTiClの水溶液で後処理を行った((a)Nusbaumer,H.;Moser,J.−E.;Zakkeruddin,S.M.;Gratzel,M.J.Phys.Chem.B 2001,105,10461.(b)Nusbaumer,H.;Zakeeruddin,S.M.;Moser,J.−E.;Gratzel,M.Chem.Eur.J.2003,9,3756.)。TiOナノ粒子(d=400nm、日本触媒)を用い、上記と同じ実験条件下で、散乱層を調製した。
このTiO表面のRu色素(N719)による染色(Nazeeruddin,M.K.;Zakeeruddin,S.M.;Humphry−Baker,R.;Liska,J.P.;Shklover,N.V.;Fischer,C.−H.;Gratzel,M.Inorg.Chem.1999,38,6298)は、3.0×10−4MのN719を含むtert−ブチルアルコール−アセトニトリル(1:1)混合物中にフィルム(依然として熱いもの、すなわち、80〜100℃)を12時間浸漬することにより行った。色素吸着の完了後、電極を溶液から取り出し、アセトニトリルで洗浄し、そして乾燥させた。
銅錯体酸化還元媒体(0.2M、CuII/Cu=0.4)、tert−ブチルピリジン(0.5M)、およびLiClO(0.5M)を無水メトキシアセトニトリルに溶解することにより、電解質溶液を調製した。
(光電気化学的測定)
AM(エアマス)1.5をシミュレーションする光源(山下電装社製、YSS−80)の下に、電圧/電流発生器・校正器(アドバンテスト社製、R6246)を用いて、太陽電池の光電流−電圧特性を測定した。入射フォトンから光電流への効率(IPCE)の測定は、IPCE測定用セット(PV−25色素、ジャスコ社製)を用いて、5mW/cm単色光照射の下に行った。Ptがスパッタリングされた光学的に透明な電極(F−ドーピングされたSnOシート、抵抗10Ω/スクエア、旭硝子社製)を色素コーティングされたTiOフィルムの上に配置することにより、太陽電池を作製した。電解質を対極上に作製された穴から注入した。多孔質色素コーティングされたTiO電極とPtがスパッタリングされた対極との間の隙間を、数十マイクロメートルに調節し、そして熱接着性フィルム(HIMILAN 1652:三井−デュポン高分子化学ポリケミカル社製)を用いてシールした。そして、熱により電極をシールした。カバーガラス(イワキガラス社製)、HIMILANフィルムおよびエポキシ樹脂(Torr seal:ヴァリアンヴァキュームプロダクツ社製)によって、注入孔をシールした。
[結果および考察]
(フェロセン誘導体から銅錯体への電子移動の動力学)
本研究で用いた銅錯体のすべての電子移動反応性を比較するために、銅錯体のフェロセン誘導体による還元の動力学研究を行った。[Cu(SP)(mmt)]、[Cu(dmp)](CFSOおよび[Cu(phen)](CFSOのアセトニトリル(MeCN)中での1電子還元電位(E red vs SCE)は、それぞれ、0.29V、0.66V、および−0.10Vであると決定された(図9参照)。したがって、銅錯体のE red値よりも低い正の酸化電位を有するフェロセン誘導体を、フェロセン誘導体から銅錯体への電子移動の動力学を試験するための還元剤として選択した:[Cu(SP)(mmt)]、[Cu(dmp)](CFSOおよび[Cu(phen)](CFSOの電子移動還元について、それぞれ、[Fe(CMe)](E red=0.26V)、[Fe(C)(CCOOBz)] (E red=0.57V)、および[Fe(CMe] (E red=−0.08V)。
図2に示されるように、[Cu(SP)(mmt)]、[Cu(dmp)](CFSOおよび[Cu(phen)](CFSOの還元を、738nmにおけるCuII吸収バンドの減少、456nmにおけるCu吸収バンドの増大および438nmにおけるCu吸収バンドの増大をそれぞれモニターすることにより測定した。 フェロセン誘導体の濃度が銅錯体の20倍過剰よりも多かったこの実験条件下で、速度は、擬一次則に従った。
この擬一次速度定数(k)は、フェロセン誘導体の濃度が増大するにつれて直線的に増大する(図3a−c)。したがって、配位構造変化が律速段階となりkがフェロセン誘導体の濃度の増加に対して飽和する現象(Rorabacher,D.B.Chem.Rev.2004,104,651。Koshino,N.;Kuchiyama,Y.;Funahashi,S.;Takagi,H.D.Chem.Phys.Lett.1999,306,291.)は見られない。[Fe(CMe] (−0.08V vs SCE)から[Cu(phen)](CFSO (−0.10V vs SCE)への電子移動の場合、298Kにおいて、電子移動反応が可逆的(平衡状態)である時には電子移動の自由エネルギー変化は、わずかに正である(ΔG et=+0.02eV)。このような場合、kは、等式(1)で表される。

= k21 + k12[Fc] (1)

この式において、k12およびk21はそれぞれ、正反応および逆反応の電子移動速度定数である。傾きおよび切片からk12およびk21の値が決定され、k12およびk21の値から電子移動平衡定数K(=k12/k21)の値310M−1が得られた。この値は、独立して吸収スペクトル滴定により決定されたK値(320M−1)(図10を参照)と一致した。k12の値は、プロットの傾きから得られた。[Cu(SP)(mmt)]、[Cu(dmp)](CFSOおよび[Cu(phen)](CFSOのk12の値を表1に列挙する。
表1:銅錯体の電子自己交換速度定数(k22
フェロセン誘導体から銅(II)錯体への電子移動の自由エネルギー変化。
フェロセン誘導体から銅錯体への電子移動の速度定数(k12)。

(銅錯体の電子自己交換速度定数)
[Cu(phen)2+(CFSOおよび[Cu(dmp)2+(CFSOの電子自己交換速度定数は以前に報告されている。(Doine,H.;Yano,Y.;Swaddle.T.W.Inorg.Chem.1989,28,2319)(Lee,C.−W.;Anson,F.C.Inorg.Chem.1984,23,837.)。しかし、NMR分析による銅錯体の自己交換速度定数の決定は、その実験条件により非常に影響を受けやすいので、銅錯体の自己交換速度定数には疑義がある。(Rorabacher,D.B.Chem.Rev.2004,104,651)
本願発明において、本発明者は、銅錯体の電子移動反応性を同一の実験条件下で、類似の系列のフェロセン誘導体を用いて比較した。フェロセン誘導体は、外圏型機構によりさまざまな電子移動過程において、とりわけ無機酸化剤と反応することが知られている。((a)Pladziewicz,J.R.;Espenson,J.H.;J.Am.Chem.Soc.1973,95,56.(b)Pelizzetti,E.Inorg.Chem.1979,18,1386.(c)Borchardt,D.;Pool,K.;Wherland,S.Inorg.Chem.1982,21,93.(d)Borchardt,D.;Wherland,S.Inorg.Chem.1986,25,901)。銅錯体の電子移動特性についての定量的な議論は、観察された外圏電子移動の速度を外圏型電子移動反応の速度についてのマーカス理論により予想される値と比較することにより達成することができる。還元剤から酸化剤への電子移動の速度定数についてのマーカス理論式は、等式(2)で与えられる。

12 = (k112212f)1/2 (2)

式中、k11およびk22は、対応する自己交換の速度定数であり、そしてK12は、電子移動反応の平衡定数である。K12値は、還元剤の酸化電位、Eox および酸化剤の還元電位、Ered から、等式(2)を用いて得られる。等式(2)のパラメーターfは、等式(4)で与えられ、ここで頻度因子Zは、1x1011−1−1であるとみなされる。((a)Marcus,R.A.;Eyring,H.Annu.Rev.Phys.Chem.1964,15,155.(b)Marcus,R.A.;Sutin,N.Biochim.Biophys.Acta 1985,811,265):

log K12 = [F/(−2.3RT)](Eox − Ered ) (3)
log f = (log K12/[4log(k1122/Z)] (4)

[Fe(CMe)] (8.3×10−1−1)、[Fe(CMe] (3.8×10−1−1)について報告された自己交換速度定数(k11)の値は、マーカス理論式(等式(2)〜等式(4))に照らして考えた際に、実験における動力学データを説明するための充分な根拠となる。[Fe(C)(CCOOBzl)]の電子自己交換速度定数(k11)は、[Fe(C]のそれ(5.3×10−1−1)とみなされた。[Cu(SP)(mmt)]の[Fe(CH Bu)]による還元 (k11=4.9×10−1−1)も調べ、[Cu(SP)(mmt)]と[Cu(SP)(mmt)]との間の電子自己交換についてのk22値が決定された(図11を参照)。[Fe(CMe)]から[Cu(SP)(mmt)]への電子移動から決定された[Cu(SP)(mmt)]/[Cu(SP)(mmt)]のk22値(7.7M−1−1)は、[Fe(CH Bu)]から[Cu(SP)(mmt)]への電子移動から独立して決定された値(10.7M−1−1)に一致する。この一致は、銅錯体とフェロセン誘導体との間の電子移動が、外圏型機構によって進行することを実証する。
表1に、本研究で測定された銅錯体のk22値を列挙する。銅錯体、[Cu(SP)](mmt)]の自己交換速度定数は、銅錯体、[Cu(phen)](CFSOの自己交換速度定数よりも40倍大きかった。[Cu(dmp)](CFSOのk22はさらに大きく、[Cu(phen)](CFSOの自己交換速度定数の100倍大きい。このことは、銅のSリガンドは銅錯体の効率的な電子移動特性を達成するのに本質的ではないことを示している。本研究で見出されたk22の順序は、銅(I)と銅(II)(後述)との配位構造の相違を反映している。[Cu(SP)](mmt)]および[Cu(dmp)2+/+のX線結晶構造は以前に報告されている。(Kim,Y.−J.;Kim,S.−O.;Kim,T.−I.;Choi,S.−N.Inorg.Chem.2001,40,4481.、Pawlowski,V.;Kunkely,H.Zabel,M.;Vogler,A.Inorg.Chem.Acta 2004,357,824.、Khazraji,A.C.;Hotchandani,S.;as,S.;Kamat P.V.J.Phys.Chem.B 1999,103,4693.)。[Cu(SP)](mmt)]のCu原子は、歪んだ正四面体構造を有し、ここで、NCu面とSCu面との二面の間の角度は68°である。(Kim,Y.−J.;Kim,S.−O.;Kim,T.−I.;Choi,S.−N.Inorg.Chem.2001,40,4481.) [Cu(SP)(mmt)]のCu原子は、通常の四面体構造を採用し得る。他方、[Cu(dmp)2+/+のCuII原子およびCu原子はともに、歪んだ四面体構造を有し、ここで、二面角は、それぞれ、70°および78°である(Pawlowski,V.;Kunkely,H.Zabel,M.;Vogler,A.Inorg.Chem.Acta 2004,357,824)(Tran,D.;Skelton,B.W.;White,A.H.;Laverman,L.E.;Ford,P.C.Inorg.Chem.1998,37,2505.)。従って、[Cu(dmp)2+/+のCuIIおよびCuの間の配位構造の変化は、確かに、[Cu(SP)(mmt)]0/−のそれよりも小さく、結果として、[Cu(dmp)2+/+のk22値については、[Cu(SP)(mmt)]0/−のk22値よりも大きいk22値となる。
(銅錯体を酸化還元対として用いる色素増感型太陽電池)
0.2M 銅錯体、0.5M tert−ブチルピリジン、および0.5M LiClOをメトキシアセトニトリルに溶解することにより電解質溶液を調製した。CuII/(Cu+CuII)比を変化させて実験を行い、最適な比が0.4であると決定した(Cu:0.12MおよびCuII:0.08M、図12を参照)。
本発明者は、3層構造を有するTiOフィルムを用いた。グレッツェルの報告書(Nusbaumer,H.;Zakeeruddin,S.M.;Moser,J.−E.;Gratzel,M.Chem.Eur.J.2003,9,3756)と同様に、その第1の層は稠密なブロッキング下層であり、第2の層は透明層(P25)であり、そして第3の層は散乱層であった。稠密なブロッキング下層および散乱層は、光電流生成に、それぞれ、良好な効果を奏した(図13および図14を参照)。さらに、透明層のフィルム厚みを4〜5μmに最適化した(図15を参照)。
一連の光電流作用スペクトルを記録して、銅錯体を用いる色素増感型太陽電池の光電気化学的応答を評価した。単色入射フォトン対光電流変換効率(IPCE)は、光により生成する外部回路の電子の数を入射フォトンで除したものとして定義され、以下の等式(5)を用いて決定される。

IPCE(%)=
100×1240×Isc(mA/cm)/[λ(nm)×Pin(mW/cm)]
(5)

式中、Iscは、単色光により生成した短絡光電流であり、λは、入射単色光の波長であり、その光強度がPinである。
図4は、[Cu(SP)(mmt)]0/−、[Cu(dmp)2+/+および[Cu(phen)2+/+を用いたDSSCの光電流作用スペクトルを示す。色素増感型太陽電池のIPCE値は、以下の順序で増大する:
[Cu(phen)2+/+ を用いた色素増感型太陽電池
< [Cu(dmp)2+/+ を用いた色素増感型太陽電池
< [Cu(SP)(mmt)]0/− を用いた色素増感型太陽電池。
[Cu(SP)(mmt)]0/−を用いた色素増感型太陽電池の場合の最大のIPCE値は、40%に達した。
銅錯体を用いた色素増感型太陽電池の電流−電圧(I−V)特性を、薄層サンドイッチタイプの太陽電池を用いてAM1.5の太陽光をシミュレーションする照射(100mW/cm、Xeランプ)の下で試験し、光エネルギー変換効率(η)を決定した。作用電極としての色素でコーティングされたTiOフィルムを直接、対極としてのOTEの上に配置し、その上にPtをスパッタリングにより積層した。銅錯体を含む酸化還元電解質を対極に作られた穴から電極内の空間に注入した。この太陽電池に、導電性ガラス基材を通して正面から光を照射した。光エネルギー変換効率ηは等式(6)により計算される((a) Kamat,P.V.;Barazzouk,S.;Thomas,K.G.;Hotchandani,S.J.Phys.Chem.B 2000,104,4014. (b) Sudeep P.K.;Ipe,B.I.;Thomas,K.G.;George,M.V.;Barazzouk,S.;Hotchandani,S.;Kamat,P.V.Nano Lett.2002,2,29.(c) Kamat,P.V.;Barazzouk,S.;Hotchandani,S.Thomas,K.G.Chem.Eur.J.2000,6,3914):

η = FF × Isc × Voc/Pin (6)

式中、フィルファクター(FF)は、以下の式で定義される:

FF = [IV]max/ Iscoc

式中、Vocは開放電圧であり、そしてIscは、短絡電流である。
図5は、銅錯体を用いた色素増感型太陽電池のI−V特性を示す。短絡電流(Isc)、開放電圧、およびフィルファクター(FF)ならびに等式(6)を用いて決定された光エネルギー変換効率(η)を表2にまとめて示す。銅錯体のVoc値は、以下の順に増大する:
[Cu(phen)2+/+ (0.57V)
[Cu(SP)(mmt)]0/− (0.66V)
[Cu(dmp)2+/+ (0.79V)

この順序は、銅錯体の酸化還元電位の順序と一致する。[Cu(phen)2+/+、[Cu(dmp)2+/+および[Cu(SP)(mmt)]0/−を用いた色素増感型太陽電池のη値は、それぞれ、0.1、1.4、および1.3%であると決定された。
このようにして、Cu(SP)(mmt)とCu(dmp)の一価および二価錯体をそれぞれ合成し、一価と二価の酸化還元対を色素増感型太陽電池に用いた。作成した色素増感型太陽電池のI−V曲線を測定した結果、それぞれ良好なI−V特性が得られ、Cu(SP)(mmt)を酸化還元対として用いた場合では短絡電流ISC=4.45mA/cm、開放電圧VOC=0.656V、フィルファクターFF=0.445、エネルギー変換効率η=1.30%であった。また同様にCu(dmp)を酸化還元対として用いた場合ではISC=3.18mA/cm、VOC=0.789V、FF=0.551、η=1.38%であった。
表2に示すとおり、各種銅錯体において、I /Iを酸化還元対として用いる電解液にほぼ匹敵する開放電圧が得られた。また歪んだ四面体構造を有する銅錯体においては、開放電圧が優れる上に光電変換効率が優れることがわかった。

表2.銅錯体を用いた色素増感型太陽電池の白色光照明下での性能、入力電力:100mW/cm
異なる銅錯体を用いる色素増感型太陽電池の光化学的性質の相違は、色素増感型太陽電池の光電流生成における[Cu(SP)(mmt)]0/−、[Cu(dmp)2+/+および[Cu(phen)2+/+の電子移動過程の熱力学および動力学の両方の結果であり得る。
最初に、励起状態のN719色素が電子をTiOの導電バンドに注入して、色素カチオンを生成する。生成したN719色素カチオンはCu錯体により還元されてCuII錯体を形成し、これはPt対極により還元されて、光電流生成を導く。[Cu(phen)2+/+媒体(最低のIscおよびVoc)における最も低い光電圧特性は確かに[Cu(phen)2+/+の最も遅い電子自己交換速度および最も低い酸化還元電位(−0.10V vs SCE)の結果である。[Cu(SP)(mmt)]0/−の非常に速い電子自己交換速度およびより高い酸化還元電位(0.29V)のために、Isc値およびVoc値の両方が、[Cu(SP)(mmt)]0/−を用いた色素増感型太陽電池において改良された。[Cu(SP)(mmt)]0/−よりも速い電子自己交換速度にかかわらず、[Cu(dmp)2+/+の場合、Isc値は、[Cu(SP)(mmt)]0/−の場合よりも小さい。おそらく、これは、[Cu(dmp)2+/+からその色素カチオンへの電子移動のドライビングフォースが、[Cu(SP)(mmt)]0/−と比較して顕著に小さいからであろう。しかしながら、この欠点は、[Cu(dmp)2+/+の[Cu(SP)(mmt)]0/−よりも高い酸化還元電位(0.66V)に起因するより高いVoc値により補償される。したがって、増感剤の酸化還元対(S/S)と媒体との間の電位のミスマッチは、[Cu(dmp)2+/+において最小である。
様々な電力の光の照射下においても光電圧測定を行った。図6は、様々な入力電力についてのいくつかIsc値を示す。[Cu(SP)(mmt)]0/−および[Cu(dmp)2+/+を用いる色素増感型太陽電池のIsc値は、入力光電力が増大するにつれて増大する。対照的に、[Cu(phen)2+/+を用いる色素増感型太陽電池のIsc値は、同じ実験条件下で、一定値に到達する。このことは、[Cu(phen).からの遅い電子移動のために10mW/cmを超える高光電力領域において、TiOから色素カチオンへの逆流電子移動が[Cu(phen)から色素カチオンへの電子移動よりも速くなることを示す。
η値の入力光電力への依存性を図7に示す。最大のη値(2.3%)は、光照射強度20mW/cmの下で、[Cu(dmp)2+/+を用いる色素増感型太陽電池について達成される。[Cu(SP)(mmt)]0/−および[Cu(dmp)2+/+酸化還元対を用いる色素増感型太陽電池の光電気化学的応答を、対応する、I /I酸化還元対を用いる色素増感型太陽電池と比較する。[Cu(SP)(mmt)]0/−、[Cu(dmp)2+/+、およびI /Iを酸化還元対として用いる色素増感型太陽電池の510nmにおけるIPCE値は、それぞれ、40%、31%、60%であると得られた(図16を参照)。[Cu(SP)(mmt)]0/−、[Cu(dmp)2+/+、およびI /Iを酸化還元対として用いる色素増感型太陽電池の光エネルギー変換効率は、AM 1.5太陽光をシミュレーションする弱い照明下(20mW/cm、Xeランプ)で、それぞれ、1.9、2.2、および4.3%であると決定された(図8)。
(考察)
本発明者は、電子移動のマーカス理論に照らして、[Cu(SP)(mmt)]0/−、[Cu(dmp)2+/+および[Cu(phen)2+/+の電子自己交換速度定数を、類似した系列のフェロセン誘導体から銅(II)錯体への電子移動反応に基づいて評価した。得られた電子自己交換速度定数(k22)は、以下の順序で増大した:
[Cu(phen)2+/+ < [Cu(SP)(mmt)]0/−
[Cu(SP)(mmt)]0/− < [Cu(dmp)2+/+
この順序は、銅(II)錯体と銅(I)錯体との間の構造変化が小さくなる順序と一致する。次いで、本発明者は、これらの銅錯体を酸化還元対として用いた色素増感型太陽電池(DSSC)を作製して、光電気化学的応答を、従来のI /I酸化還元対の光電気化学的応答と比較した。20mW/cmという弱い太陽光照射強度の下で、[Cu(dmp)2+/+を用いた色素増感型太陽電池において、最大η値として、2.2%が得られた。I /I酸化還元対を用いた場合よりも高いVoc値が、色素増感型太陽電池[Cu(dmp)2+/+を用いる色素増感型太陽電池において初めて得られた。
このことは極めて重要である。なぜなら、このdmpリガンドは、市販されており、そして[Cu(dmp)2+/+錯体は容易に1工程で製造されるからである。歪んだ四面体の配位構造を有する銅錯体の使用により、銅(I)と銅(II)との間の構造的変化が最小化され、効率的でかつ低コストの色素増感型太陽電池の開発が可能になる。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本発明によれば、銅錯体を用いることにより、従来のI /Iを用いる電解液の欠点を改良する色素増感型太陽電池用の電解液組成物および色素増感型太陽電池が提供される。本発明によれば、I /Iを用いる電解液に匹敵する開放電圧またはI /Iを用いる電解液よりも高い開放電圧を得ることができる。また、歪んだ四面体配位構造を有する銅錯体を用いる場合には、高いエネルギー変換効率を得ることができる。
図1は、本発明の1例のメカニズムを示す模式図である。 図2は、アセトニトリル(MeCN)中、298Kにおける、(a) [Cu(SP)(mmt)]に起因する738nmにおける吸収の減少によりモニターされた[Fe(CMe)] (6.0×10−4M)による[Cu(SP)(mmt)] (3.0×10−5M)の還元についての動力学曲線、(b) [Cu(dmp)に起因する456nmにおける吸収の増大によりモニターされた、[Fe(C)(CCOOBzl)] (2.5×10−5M)による、[Cu(dmp)](CFSO (1.25×10−6M)の還元についての動力学曲線、および(c) [Cu(phen)に起因する438nmにおける吸収の増大によりモニターされた[Fe(CMe] (1.0×10−3M)による、[Cu(phen)](CFSO (5.0×10−5M)の還元についての動力学曲線を示す。 図3は、アセトニトリル中、298Kにおける、擬似1次速度定数k対(a)[Cu(SP)(mmt)]の還元についての[Fe(CMe)]、(b)[Cu(dmp)](CFSOの還元についての[Fe(C)(CCOOBzl)]、および(c)[Cu(phen)](CFSOの還元についての[Fe(CMe]の濃度のプロットである。 図4は、(a)[Cu(SP)(mmt)]0/−、(b)[Cu(dmp)2+/+、および(c)[Cu(phen)2+/+を酸化還元対として含む色素増感型太陽電池の光電流作用スペクトル(IPCE値)の比較を示す。 図5は、(a)[Cu(SP)(mmt)]0/−、(b)[Cu(dmp)2+/+、および(c)[Cu(phen)2+/+を酸化還元対として含む色素増感型太陽電池の光電流−光電圧曲線である。入力電力:100mW/cm 図6は、(a)[Cu(SP)(mmt)]0/−、(b)[Cu(dmp)2+/+および(c)[Cu(phen)2+/+を酸化還元対として含む色素増感型太陽電池における光強度と短絡電流との関係を示す。 図7は、(a)[Cu(SP)(mmt)]0/−、(b)[Cu(dmp)2+/+、および(c)[Cu(phen)2+/+を酸化還元対として含む色素増感型太陽電池における、光強度とエネルギー変換効率との関係を示す。 図8は、(a)[Cu(SP)(mmt)]0/−、(b)[Cu(dmp)2+/+、および(c)I /Iを酸化還元対として用い、0.5M tert−ブチルピリジンを含む色素増感型太陽電池のI−V曲線を示す。入力電力:20mW/cm。I /I:0.5M LiI、0.05M I、0.3M 1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、溶媒:メトキシアセトニトリル。 図9は、(a)[Cu(SP)(mmt)]、(b)[Cu(dmp)](CFSOおよび(c)[Cu(phen)](CFSOのアセトニトリル中でのサイクリックボルタンモグラムを示す。銅錯体の濃度:1.0×10−3M、走査速度:100mV/s。 図10は、過剰の[Fe(CMe]による[Cu(phen)](CFSOの吸収スペクトル滴定を示す。アセトニトリル中、298Kにおける、[Cu(phen)](CFSO(1.5×10−4M)の778nmにおける吸収 対 [Fe(CMe]の濃度のプロットが示されている。 図11は、298Kにおける、擬似1次速度定数k 対 アセトニトリル中における[Fe(C Bu)]による[Cu(SP)(mmt)]の還元についての[Fe(C Bu)]の濃度 のプロットを示す。 図12は、エネルギー変換効率(η)値 対 [Cu(SP)(mmt)]0/−を酸化還元対として用いる色素増感型太陽電池のCuII/(Cu+CuII)濃度比 のプロットを示す。入力電力:100mW/cm 図13は、(a)稠密なブロッキング下層がある場合、および(b)稠密なブロッキング下層がない場合、における、[Cu(SP)(mmt)]0/−を酸化還元対として用いる色素増感型太陽電池のI−V曲線を示す。入力電力:100mW/cm 図14は、(a)散乱層がある場合、および(b)散乱層がない場合、における[Cu(SP)(mmt)]0/−を酸化還元対として用いる色素増感型太陽電池のI−V曲線を示す。入力電力:100mW/cm 図15は、[Cu(SP)(mmt)]0/−を酸化還元対として用いる色素増感型太陽電池の(a)短絡電流(Isc)対透明層フィルム厚みのプロットおよび(b)エネルギー変換効率(η)対透明層フィルム厚みのプロットを示す。入力電力:20mW/cm 図16は、(a)[Cu(SP)(mmt)]0/−、(b)[Cu(dmp)2+/+、(c)I /Iを酸化還元対として用い、0.5M tert−ブチルピリジンを含む色素増感型太陽電池の光電流作用スペクトル(IPCE値対波長)を示す。入力電力:20mW/cm。I /I:0.5M LiI、0.05M I、0.3M 1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、溶媒:メトキシアセトニトリル。

Claims (10)

  1. 色素増感型太陽電池に使用される電解液組成物であって、
    該組成物は、溶媒を含み、
    さらに該組成物は、一価の銅錯体、二価の銅錯体、または該一価の銅錯体と該二価の銅錯体との混合物を含み、
    該一価の銅錯体および該二価の銅錯体は以下からなる群から選択される、組成物。
  2. 請求項に記載の組成物であって、前記一価の銅錯体および二価の銅錯体がCu(SP)(mmt)またはCu(dmp)である、組成物。
  3. 請求項に記載の組成物であって、前記一価の銅錯体および二価の銅錯体がCu(dmp)である、組成物。
  4. 請求項2に記載の組成物であって、前記一価の銅錯体の濃度と、前記二価の同錯体の濃度との比が、CuII/(Cu+CuII)=0.1〜0.6となる範囲内である、組成物。
  5. 請求項1に記載の組成物であって、前記溶媒がニトリル化合物系溶媒である、組成物。
  6. 請求項に記載の組成物であって、溶媒がメトキシアセトニトリルである、組成物。
  7. 請求項に記載の組成物であって、さらに、LiClOおよびtert−ブチルピリジンを含む、組成物。
  8. 色素増感型太陽電池であって、増感色素を吸着させた半導体電極と、対極と、請求項1に記載の電解液組成物とを含む、太陽電池。
  9. 請求項に記載の太陽電池であって、前記対極が白金対極である、太陽電池。
  10. 請求項に記載の太陽電池であって、前記増感色素がルテニウム色素であり、前記半導体電極がTiO電極であり、前記対極が白金対極である、太陽電池。
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