JP6738313B2 - 電解質、太陽電池及び太陽電池モジュール - Google Patents

電解質、太陽電池及び太陽電池モジュール Download PDF

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Description

本明細書では、電解質、太陽電池及び太陽電池モジュールを開示する。
従来、太陽電池としては、銅錯体を酸化還元対に用いた色素増感太陽電池が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この太陽電池では、一価及び二価の銅錯体を含むことにより白金対極を腐食することなく且つ良好な光電変換特性を有するとしている。また、太陽電池としては、銅(I)ビス(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)や銅(II)ビス(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)の銅錯体を固体電解質として用いた色素増感型太陽電池が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。この太陽電池では、発電効率を高めることができるとしている。
特開2006−302849号公報
Energy Environ.Sci.,2015,8,2634−2637
上述の非特許文献1では、銅錯体の価電子帯(VBM)の位置が一般的な電解質に比して深いため、光電極の伝導帯準位(CBM)との差が大きくなり、理論上の開放電圧(Voc)が高くなるものの、実際に太陽電池を構成すると、長時間の使用やより高い温度などにおける耐久性に課題があった。
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、太陽電池特性をより向上し、且つ耐久性をより高めることができる電解質、太陽電池及び太陽電池モジュールを提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、特定の複素環式化合物と価数変化可能な銅錯体とを複合化し、アルカリ金属塩を共存させると、出力密度をより向上し、且つ連続使用や高温での耐久性をより向上することができることを見いだし、本開示を完成するに至った。
即ち、本明細書で開示する電解質は、
光吸収層を有する光電極と、前記光電極に向かい合うように配置された対極とを備えた太陽電池の前記光電極と前記対極との間に介在して用いられる電解質であって、
有機配位子を有し銅が複数の価数を有する銅錯体と、窒素を1以上含み2環以上を有する複素環式化合物及び窒素を2以上有する単環の複素環式化合物のうち1以上の環式化合物と、アルカリ金属塩とを含むものである。
本明細書で開示する太陽電池は、
光吸収層を有する光電極と、
前記光電極に向かい合うように配置された対極と、
前記光電極と前記対極との間に介在する上述の電解質と、
を備えたものである。
本明細書で開示する太陽電池モジュールは、上述した太陽電池を複数備えているものである。
この電解質、太陽電池及び太陽電池モジュールは、太陽電池特性をより向上し、且つ耐久性をより高めることができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推測される。例えば、銅錯体のみでは、光電極と銅錯体が直接接触することにより電解質への逆電子移動などが生じて電圧が損失するが、窒素を1以上含み2環以上を有する複素環式化合物及び窒素を2以上有する単環の複素環式化合物のうち1以上の環式化合物が複合化することによって、この逆電子移動が抑制され、例えば開放電圧Vocが高くなり出力密度が向上するなど、太陽電池特性をより向上することができるものと推察される。また、銅錯体に複素環式化合物が複合化することにより、電解質の電気特性を改善し、低抵抗化する効果により、太陽電池の出力特性が向上すると考えられる。更に、アルカリ金属塩が共存するため、このアルカリ金属塩が環式化合物と相互作用し、光吸収層への悪影響を低減することにより、連続使用や高温などの耐久性をより高めることができるものと推察される。
n型半導体層、有機色素、電解質のエネルギー準位の説明図。 太陽電池モジュール10の構成の概略の一例を示す断面図。 太陽電池40の構成の概略の一例を示す断面図。 太陽電池モジュール10Bの構成の概略の一例を示す断面図。 太陽電池40Bの構成の概略の一例を示す断面図。 試験例5、6の外観写真。 試験例1〜6のイオン化ポテンシャルの測定結果。 実験例1〜9の太陽電池の初期の相対出力密度の測定結果。 実験例1〜9の暗所高温耐久後の出力密度維持率の測定結果。 実験例1〜9の暗所高温耐久後の短絡電流密度Jsc維持率の測定結果。 実験例1〜9の暗所高温耐久後の形状因子FF維持率の測定結果。 実験例1〜9の暗所高温耐久後の開放電圧Voc維持率の測定結果。 Li塩の濃度を変えた場合のNBBIの1H−NMRスペクトル。
(電解質)
本開示の電解質は、光吸収層を有する光電極と、光電極に向かい合うように配置された対極とを備えた太陽電池の光電極と対極との間に介在して用いられるものである。この電解質は、銅が複数の価数を有する銅錯体と、窒素を1以上含み2環以上を有する複素環式化合物及び窒素を2以上有する単環の複素環式化合物のうち1以上の環式化合物(以下、単に環式化合物とも称する)と、アルカリ金属塩とを含むものである。図1は、n型半導体層、有機色素、電解質のエネルギー準位の説明図である。銅錯体は、価電子帯の位置が従来の無機系p型半導体(例えばCuI)に比べてかなり深いため、n型半導体層である酸化チタンの伝導帯下端CBMと電解質の価電子端上端VBMとの差で決定される理論上の開放電圧(Voc)が高くなる利点がある。但し、銅錯体のみで太陽電池を構成すると、エネルギー障壁が存在すると推察され、出力が低下する(例えば0.3mW/m2など)。ここで、環式化合物と銅錯体とを複合化すると、このエネルギー障壁が解消され、出力が向上する(例えば610mW/m2など)。また、アルカリ金属塩が共存すると、環式化合物に相互作用し、太陽電池の耐久性が向上する。
銅錯体は、例えば、有機配位子を有し、銅が価数変化するものである。この銅錯体は、化学式(1)〜(10)のうちいずれか1以上の構造を有するものとしてもよい。有機配位子としては、例えば、窒素を1又は2以上を有する複素環構造を有するものとしてもよい。この有機配位子としては、例えば、2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン(dmp、化学式(1))や、1,1−ビス(2−ピリジル)エタン(bpye、化学式(2))、4,4’,6,6’−テトラメチル−2,2’−ビピリジン(tmby、化学式(3))、6,6’−ジメチル−2,2’−ビピリジン(dmby、化学式(4))などが挙げられる。また、この有機配位子としては、例えば、1,10−フェナントロリン(phen、化学式(5))、[(−)−スパルテイン−N,N’](SP、化学式(6))、2,6−ビス(ベンズイミダゾール−2’−イルチオメチル)ピリジン(bbtmp、化学式(7))、N,N−ビス(ベンズイミダゾール−2’−イルチオメチル)メチルアミン(bbtma、化学式(8))、2,6−ビス(ベンズイミダゾール−2’−イル)ピリジン(bzmpy、化学式(9))、2,6−ビス(エチルチオメチル)ピリジン(betmp、化学式(10))などが挙げられる。また、銅錯体は、他の配位子、例えば、1座配位子(1価のアニオン配位子)を1以上有するものとしてもよい。この配位子は、複数ある場合は、それぞれが同じ配位子であってもよいし、異なる配位子としてもよい。このうち、これらの配位子はすべて同じものとすることがより好ましい。この配位子は、例えば、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−CN、−SCN、−NCSから選択される1以上であるものとしてもよい。このうち、−SCN及び−NCSが好ましく、−NCSがより好ましい。この銅錯体は、有機配位子を有し銅を含むカチオンと、アニオンからなるものとしてもよい。アニオンとしては、例えば、トリフルオロメチルスルホン酸(CF3SO3)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(TFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、ヘキサフルオロリン酸(PF6)などが挙げられる。
このような銅錯体の具体例としては、例えば、銅(I)ビス(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド(Cu(dmp)2TFSI)、銅(II)ビス(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)ビス[ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド](Cu(dmp)2(TFSI)2)、銅(I)ビス(1,10−フェナントロリン)ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド(Cu(phen)2TFSI)、銅(II)ビス(1,10−フェナントロリン)ビス[ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド](Cu(phen)2(TFSI)2)、[(−)−スパルテイン−N,N’](マレオニトリルジチオラト−S,S’)銅([Cu(SP)(mmt)])、2,6−ビス(ベンズイミダゾール−2’−イルチオメチル)ピリジン硝酸塩([Cu(bbtmp)(NO3)]NO3)などが挙げられる。
この銅錯体は、銅(1価+2価)の全体に対する2価の銅のモル比率X(CuII/(CuI+CuII)が0≦X≦0.2の範囲内にあることが好ましい。モル比率Xがこの範囲では、2価の銅錯体の存在が少ないことにより、環式化合物の添加効果をより顕著なものとすることができる。このモル比率Xは、より少なければ少ないほどよく、0.2未満であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましく、0.1以下であることが更に好ましく、0.05以下であることが特に好ましい。
環式化合物は、イミダゾール構造、ピリジン構造、ピリミジン構造、オキサゾール構造及びチアゾール構造のうち1以上を有するものとしてもよい。この環式化合物は、塩基性を有することが好ましい。したがって、これらの構造では、塩基性が高いことから、イミダゾール構造が好ましい。この環式化合物は、使用温度範囲(例えば室温近傍10℃〜40℃など)において、液体であるものとしてもよいし、固体であるものとしてもよい。この環式化合物が液体である場合電解質は電解液であるものとしてもよく、環式化合物が固体である場合、固体電解質であるものとしてもよい。環式化合物は、環構造を1以上含むが、2以上の環構造が炭素鎖により接合した構造としてもよいし、縮合した環構造としてもよいが縮合した環構造を有することが好ましい。この環式化合物は、窒素を1以上含むが、2以上含むことが好ましい。また、環式化合物は、環構造を1以上含むが、2以上含むことが好ましい。複素環には、窒素のほか、酸素、硫黄などを含むものとしてもよい。また、環式化合物は、その構造中に置換基、ヘテロ原子を有してもよい。例えば、水素基、水素基を置換したアルキル基などを有してもよい。アルキル基としては、炭素数1以上6以下の範囲が好ましい。
具体的には、環式化合物は、化学式(11)〜(18)のうちいずれか1以上であるものとしてもよい。この式において、Rは水素(H)及び炭素数1〜6のアルキル基であるものとしてもよい。アルキル基は、直鎖状でもよいし、分岐鎖を有していてもよい。化学式(11)〜(15)は、窒素を1以上含み2環以上を有する複素環式化合物である。化学式(11)は、ベンズイミダゾール及びその誘導体であり、例えば、N−メチルベンズイミダゾールやN−ブチルベンゾイミダゾールなどが挙げられる。化学式(12)は、ピリミジン塩基であり、例えば、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジンや、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−1−メチル−2H−ピリミド[1,2a]ピリミジンなどが挙げられる。化学式(13)は、キノリンであり、その誘導体であってもよい。化学式(14)は、ベンゾオキサゾールであり、その誘導体であってもよい。化学式(15)は、ベンゾチアゾールであり、その誘導体であってもよい。化学式(16)〜(18)は、窒素を2以上有する単環の複素環式化合物である。化学式(16)は、イミダゾール及びその誘導体である。化学式(17)は、ピラゾール及びその誘導体である。化学式(18)は、イミダゾリン及びその誘導体である。
環式化合物は、銅錯体のモル数Mcに対する環式化合物のモル数Mbの比率であるモル比率Y(Mb/Mc)が0.4≦Y≦4の範囲内で電解質に含まれることが好ましい。この範囲では、環式化合物の添加効果を十分発揮することができ、好ましい。このモル比率Yは、0.8以上であるものとしてもよいし、1.0以上であるものとしてもよい。あるいは、このモル比率Yは、3.0以下であるものとしてもよいし、2.0以下であるものとしてもよい。
アルカリ金属塩は、アルカリ金属カチオンとアニオンとを含むものである。アルカリ金属カチオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンのうち1以上が挙げられる。また、アニオンとしては、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(TFSI)やビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、ヘキサフルオロリン酸(PF6)、テトラフルオロホウ酸(BF4)などのうち1以上が挙げられる。具体的には、アルカリ金属塩としては、LiTFSIやLiFSI、LiPF6、LiBF4、NaTFSI、NaFSI、NaPF6、NaBF4、KTFSI、KFSI、KPF6、KBF4などが挙げられる。このアルカリ金属塩は、銅錯体のモル数Mcに対するアルカリ金属塩のモル数Maのモル比率Z(Ma/Mc)が0<Z≦2.5の範囲内で電解質中に含まれていることが好ましい。この範囲では、アルカリ金属塩の添加効果、例えば耐久性を向上させるのに好ましい。このモル比率Zは、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.4以上が更に好ましく、0.8以上が特に好ましい。また、このモル比率Zは、2.0以下であることが好ましく、1.5以下としてもよい。特に、このモル比率Zは、0.8≦Z≦2.0の範囲内であるときに、連続使用や高温などの耐久性を更に高めることができる。
この電解質には、溶媒や添加剤が含まれていてもよい。溶媒としては、アセトニトリル(AcCN)やバレロニトリル(VaCN)などのニトリル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテルなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのアルコール系溶媒などが挙げられる。これらは、単独で、あるいは複数を混合して用いることができる。添加剤としては、例えば、TiO2などの光電極材料の伝導帯下端(CBM)を下げて色素からTiO2への電子注入効率を向上させ短絡電流密度Jscを増加させるものとして、グアニジンチオシアネートなどが挙げられる。
(太陽電池)
本開示の太陽電池は、光吸収層を有する光電極と、光電極に向かい合うように配置された対極と、光電極と対極との間に介在する上述したいずれかの電解質と、を備えたものである。この光電極は、光吸収層で被覆されたn型半導体層(電子輸送層)を光透過導電性基板上に備えているものとしてもよい。図2は、太陽電池モジュール10の構成の概略の一例を示す断面図である。図2に示すように、本開示の太陽電池モジュール10は、光透過導電性基板14に複数の太陽電池40(以下セルとも称する)が順次配列した構成となっている。これらのセルは直列に接続されている。この太陽電池モジュール10では、各セルの間を埋めるように、シール材32が形成されており、光透過導電性基板14とは反対側のシール材32の面に平板状の保護部材34が形成されている。太陽電池40は、光吸収層とn型半導体層とを含む電子輸送層24を下地層22を介して光透過導電性基板14上に備えた光電極20と、光電極20に向かい合うように配置された対極30と、光電極20と対極30との間に介在する電解質層26と、セパレータ29とを備えている。光電極20は、光が透過する光透過基板11の表面に光が透過する光透過導電膜12が形成されている光透過導電性基板14と、光透過導電膜12に形成された電子輸送層24と、を備えている。電子輸送層24は、光透過基板11の受光面13の反対側の面に分離形成された光透過導電膜12に配設され受光に伴い電子を放出する層である。この太陽電池40は、電子輸送層24には、光を吸収する光吸収材が配設されている。
光透過導電性基板14は、光透過基板11と光透過導電膜12とにより構成され、光透過性及び導電性を有するものである。具体的には、フッ素ドープSnO2コートガラス、ITOコートガラス、ZnO:Alコートガラス、アンチモンドープ酸化スズ(SnO2−Sb)コートガラス等が挙げられる。また、酸化スズや酸化インジウムに原子価の異なる陽イオン若しくは陰イオンをドープした光透過電極、メッシュ状、ストライプ状など光が透過できる構造にした金属電極をガラス基板等の基板上に設けたものも使用できる。この光透過導電性基板14の光透過導電膜12側の両端には、集電電極16,17が設けられており、この集電電極16,17を介して太陽電池40で発電した電力を利用することができる。
光透過基板11としては、例えば、透明ガラス、透明プラスチック板、透明プラスチック膜、無機物透明結晶体などが挙げられ、このうち、透明ガラスが好ましい。この光透過基板11は、透明なガラス基板、ガラス基板表面を適当に荒らすなどして光の反射を防止したもの、すりガラス状の半透明のガラス基板など光を透過するものなどとしてもよい。光透過導電膜12は、例えば、光透過基板11上に酸化スズを付着させることにより形成することができる。特に、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)等の金属酸化物を用いれば、好適な光透過導電膜12を形成することができる。光透過導電膜12は、所定の間隔に溝18が形成されており、この溝18の幅に相当する間隔を隔てて複数の光透過導電膜12の領域が分離形成されている。
下地層22は、光透過導電性基板14から電解質層26へのリーク電流(逆電子移動)を抑制もしくは防止する層であり、例えば、透光性及び導電性のある材料が好ましく、例えば、酸化チタンや酸化亜鉛、酸化スズなどのn型半導体などが挙げられ、このうち酸化チタンがより好ましい。酸化チタンは、リーク電流を抑制・防止し、且つ電子輸送層24から光透過導電性基板14へ電子を流しやすいからである。下地層22では、電子輸送層24に比してより緻密な材料とすることが好ましい。なお、この下地層22を形成しないものとしても太陽電池40として十分機能することから、この下地層22を省略しても構わない。
電子輸送層24は、光吸収材と、光吸収材を含む多孔質のn型半導体層とにより形成されている。n型半導体としては、金属酸化物半導体や金属硫化物半導体などが適しており、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化カドミウム(CdS)、硫化亜鉛(ZnS)のうち少なくとも1以上であることが好ましく、このうち多孔質の酸化チタンがより好ましい。これらの半導体材料を微結晶又は多結晶状態にして薄膜化することにより、良好な多孔質のn型半導体層を形成することができる。特に、多孔質の酸化チタン層は、光電極20のn型半導体層として好適である。また、酸化チタンとしては、伝導帯の下端のエネルギー準位がより高く、開放電圧がより高いことから、ルチル型TiO2よりもアナターゼ型TiO2が好ましい。
光吸収層には、有機色素、金属錯体及び有機ハロゲン化金属化合物のうち1以上の光吸収材が含まれるものとしてもよい。この光吸収材は、有機色素としてもよい。有機色素は、例えば、BODIPY系色素(BODIPY−FLなど)、インドリン系色素(D131,D149,D205,D358など)、カルバゾール系色素(MK2など)、クマリン系色素(C343,NKX−2587,NKX−2677など)及びスクワリリウム系色素(SQ2など)などのうち1以上であるものとしてもよい。また、有機色素として、芳香族アミンをドナーに、π共役系分子を介してシアノカルボン酸アンカー基を持つものとしてもよい。このような色素としては、例えば、3-[6-[4-[bis(2',4'-dibutyloxybiphenyl-4yl)amino-]phenyl]-4,4-dihexyl-cyclopenta-[2,1-b;3,4-b']dithiophene-2-yl]-2-cyanoacylic acid色素(化学式(19))などが挙げられ、この色素を用いることが好ましい。また、光吸収材は、金属錯体であるものとしてもよい。金属錯体に含まれる金属は、例えば、Zn,Cu,Fe,Pd,Pt,Ni,Co,Ruなどが挙げられる。このうち、Ru錯体(Ruthenizer470(Ru470),N719,Z907など)、金属ポルフィリン系色素(PtTPTBP,PdTPTBP、DTBCなど)、金属フタロシアニン系色素(CuPc,ZnPcなど)及び金属ナフタロシアニン系色素(CuNc,ZnNcなど)などのうち1以上であるものとしてもよい。このうち、色素としては、Ru錯体化合物(Z907、N719)、Znポルフィリン化合物(DTBC)、カルバゾール系色素(MK2)、及びインドリンダブルロダニン化合物(D149及びD358)などが好ましい。また、光吸収材としての有機ハロゲン化金属化合物としては、CH3NH3PbI3などのペロブスカイト結晶などが挙げられる。例示した化合物の構造式を下記の化学式に示す。なお、下記の化学式には示さなかったが、PdTPTBPはPtTPTBPのPtがPdになったもの、ZnPcはCuPcのCuがZnになったもの、ZnNcはCuNcのCuがZnになったものである。これらの光吸収材は、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
電解質層26は、光電極20に隣接して形成されている。この電解質層26は、上述した電解質のいずれかが含まれている。電解質層26が固体であるときに、この太陽電池モジュール10の構造を採用することができる。
セパレータ29は、下地層22、電子輸送層24が積層された光電極20及び電解質層26の1つの側面に隣接するように断面I字状に形成されている。セパレータ29の一端は光透過導電性基板14上の溝18と接触している。これにより、光電極20と対極30との直接接触が回避される。セパレータ29は、絶縁性の材料からなり、例えば、ガラスビーズ、二酸化ケイ素(シリカ)及びルチル型の酸化チタンなどで形成されていてもよい。このセパレータ29としては、シリカ粒子を焼結した絶縁体が好ましい。シリカ粒子は、屈折率が低く光散乱が小さく、良好な透明性を有するため、セパレータに好ましい。このセパレータ29は、良好な透明性を確保する観点から、平均粒径が5〜200nmであることが好ましい。また、セパレータは、空気や空気層としてもよい。
対極30は、セパレータ29の外面と電解質層26の裏面27とに接触するよう、断面L字状に形成されている。この対極30は、一端が電解質層26の裏面27に接続されていると共に、他端が接続部21を介して隣側の光透過導電膜12に接続されている。この対極30の裏面27と接触する面は、光電極20に対して所定の間隔を隔てて対向している。対極30としては、導電性及び電解質層26との接合性を有するものであれば特に限定されず、例えば、Pt,Au,カーボンなどが挙げられ、このうちカーボンが好ましい。
シール材32は、絶縁性の部材であれば特に限定されずに用いることができる。このシール材32としては、例えば、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂フィルム、あるいはエポキシ系接着剤を使用することができる。
保護部材34は、太陽電池40の保護を図る部材であり、例えば、防湿フィルムや保護ガラスなどとすることができる。
この太陽電池40に対して、光透過基板11の受光面13側から光を照射すると、光透過導電膜12の受光面15及び下地層22の受光面23を介して光が電子輸送層24へ到達し、光吸収材が光を吸収して電子が発生する。発生した電子は光電極20から光透過導電膜12、接続部21を経由して隣の対極30へ移動する。太陽電池40では、この電子の移動により起電力が発生し、電池の発電作用が得られる。この太陽電池モジュール10では、電解質層26に、窒素を1以上含み2環以上を有する複素環式化合物及び窒素を2以上有する単環の複素環式化合物のうち1以上の環式化合物と、銅が複数の価数を有する銅錯体とを含むため、出力密度や開放電圧Vocが向上するなど、太陽電池特性をより向上することができる。この理由は、例えば、以下のように推察される。銅錯体のみでは、光電極と銅錯体が直接接触することにより電解質への逆電子移動などが生じて電圧が損失するが、窒素を1以上含み2環以上を有する複素環式化合物及び窒素を2以上有する単環の複素環式化合物のうち1以上の環式化合物が複合化することによって、この逆電子移動が抑制され、例えば開放電圧Vocが高くなり出力密度が向上するなど、太陽電池特性をより向上することができるものと推察される。また、銅錯体に複素環式化合物が複合化することにより、電解質の電気特性を改善し、低抵抗化する効果により、太陽電池の出力特性が向上すると考えられる。更に、電解質にアルカリ金属塩が共存するため、このアルカリ金属塩が環式化合物と相互作用し、光吸収層への悪影響を低減することにより、連続使用や高温などの耐久性をより高めることができるものと推察される。更にまた、複数の価数を有する銅錯体において2価の銅のモル比率Xが0≦X<0.2の範囲内にあり、2価の銅をより低減することにより、環式化合物の添加効果がより顕著になるため、連続使用や高温などの耐久性がより向上するものと推察される。
この太陽電池モジュール10は、製造方法として、基板作製工程、電子輸送層形成工程、電解質層形成工程、セパレータ形成工程、対極形成工程及び保護部材形成工程を経て製造することができる。基板作製工程では、複数の光透過導電膜12の間に溝18を形成しつつ光透過導電膜12を光透過基板11上に形成する。電子輸送層形成工程では、光透過導電膜12上に下地層22を介してn型半導体層を形成し、光吸収材をn型半導体層に形成させ、電子輸送層24を形成する。n型半導体層として、多孔質の酸化チタンを用いるものとしてもよい。次に、電解質層形成工程では、電子輸送層24の裏面25へ上述した電解質層を供給し、その後乾燥させて電解質層26を形成してもよい。ここでは、電解質層として、上述した環式化合物と銅錯体とアルカリ金属塩とを含む材料を用いるものとした。また、用いる銅錯体は、2価の銅錯体のモル比率Xを0.2以下(20mol%以下)とすることが好ましく、0.2未満や0.15以下であることがより好ましく、0.1以下であることが更に好ましい。また、銅錯体に対する環式化合物のモル比率Yを0.4以上4以下の範囲内とする。また、銅錯体に対するアルカリ金属塩のモル比率Zを0<Z≦2.5の範囲内とする。続いて、セパレータ形成工程では、溝18に合わせて光電極20の側面にセパレータ29を形成する。対極形成工程では、セパレータ29と電解質層26とに接するように対極30を形成する。対極30は、例えばカーボンとしてもよい。保護部材形成工程では、各セルを覆うようにシール材32を形成すると共にシール材32に保護部材34を形成する。このようにして発電特性が向上した太陽電池40及び太陽電池モジュール10を作製することができる。
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば上述した実施形態では、太陽電池モジュール10としたが、特にこれに限定されず、図3に示す、太陽電池40としてもよい。図3は、太陽電池40の構成の概略の一例を示す断面図である。図3では、図2で説明した構成と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。図3に示すように、太陽電池40を単体とする場合は、対極30の断面をL字状ではなく平板状に形成するものとしてもよい。また、セパレータ29を省略するものとしてもよい。また、対極30は、例えば光透過導電性基板14と同じ構成を有するものを用いるものとしてもよいし、光透過導電膜12に白金を付着させたものや、白金などの金属薄膜などとしてもよい。
上述した実施形態では、電解質層26が固体である場合について説明したが、特にこれに限定されず、図4に示すように、電解液を含む電解質層26Bとしてもよい。図4は、太陽電池モジュール10Bの構成の概略の一例を示す断面図である。この太陽電池モジュール10Bは、電解質層26Bを有する太陽電池40Bを複数備えている。なお、図4では、下地層22及びセパレータ29を省略したものを示した。電解質層26Bは、液状またはゲル状の電解質を含むものであり、例えば、多孔質体に電解液を含む層とすることが好ましい。この多孔質体は、電解液を保持可能であり、電子伝導性を有さない多孔体であれば特に限定されず、例えば、多孔質体として、ルチル型の酸化チタン粒子により形成した多孔体を使用してもよい。多孔質体は、電子輸送層24の裏面25を覆う部分と、電子輸送層24のうち裏面25に隣接する側面に密着する顎状の縁部分とを有し、断面L字状に形成されている。この鍔状の縁部分は、光透過基板11の表面が露出される深さの溝18に挿入され、光透過基板11に直接、接触している。なお、電解質層26Bにおいて、多孔質体を省略し、光電極20と対極30Bとの間の空間に電解液を収容するものとしてもよい。
電解質層26Bに含まれる電解液は、上述した、窒素を1以上含み2環以上を有する複素環式化合物及び窒素を2以上有する単環の複素環式化合物のうち1以上の環式化合物と、銅錯体と、アルカリ金属塩とを含むものとすればよい。また、銅錯体は、2価の銅錯体のモル比率Xを0.2以下とする。電解液に含まれる環式化合物の濃度は、例えば、0.01mol/L以上5.0mol/L以下の範囲であることが好ましい。電解液に含まれる銅錯体の濃度は、例えば、0.01mol/L以上5.0mol/L以下の範囲であることが好ましい。電解液に含まれるアルカリ金属塩の濃度は、例えば、0.01mol/L以上5.0mol/L以下の範囲であることが好ましい。電解液に含まれる溶媒は、上述した溶媒を用いることができる。対極30Bは、電解質層26Bの裏面27及び鍔状の縁部分とに接触するよう、鍔状の縁部分を有する断面L字状に形成されている。この対極30Bは、電解質層26の裏面に接続されていると共に、鍔状の縁部分が接続部21を介して隣側の光透過導電膜12に接続されている。電解質層26Bの裏面27と接触するこの対極30Bの面は、光電極20に対して所定の間隔を隔てて対向している。対極30Bとしては、導電性及び電解質層26Bとの接合性を有するものであれば特に限定されず、例えば、Pt,Au,カーボンなどが挙げられ、このうちカーボンが好ましい。この対極30Bは、例えば、カーボンブラック粒子と、グラファイト粒子と、アナターゼ型の酸化チタン粒子等の導電性酸化物粒子とを構成材料として形成された多孔質の炭素電極としてもよい。なお、この対極30Bには、例えば、電極反応の速度をより速やかに進行させる観点から、Pt微粒子などの触媒微粒子が分散担持されていてもよい。このように形成された太陽電池モジュール10Bにおいても、上述した実施形態と同様に、電解質層26Bに環式化合物と銅錯体とアルカリ金属塩とを含むため、開放電圧Vocや出力密度が向上するなど、太陽電池特性をより向上することができ、更に、連続使用や高温などの耐久性をより高めることができる。
上述した実施形態では、太陽電池モジュール10Bとしたが、特にこれに限定されず、太陽電池40Bとしてもよい。図5は、太陽電池40Bの構成の概略の一例を示す断面図である。図5では、図2〜4で説明した構成と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。図5に示すように、太陽電池40Bの単体では、電解質層26Bや対極30Bを断面をL字状ではなく、鍔状の縁部分を省略して平板状に形成するものとしてもよい。また、対極30Bは、例えば光透過導電性基板14と同じ構成を有するものを用いるものとしてもよいし、光透過導電膜12に白金を付着させたものや、白金などの金属薄膜などとしてもよい。更に、電解質層26Bは、多孔質体を省略し、光電極20と対極30との空間に電解液を収容したものとしてもよい。こうしても、電解質層26に環式化合物と銅錯体とを含むため、開放電圧Vocや変換効率Effが向上するなど、太陽電池特性をより向上することができる。
以下には、本開示の電解質及び太陽電池を具体的に作製した例を実験例として説明する。以下の実施例においては、実験例1〜7が実施例に相当し、実験例8、9が比較例に相当する。
まず、イオン化ポテンシャル測定(光電子分光測定)を用いた銅錯体と添加剤とによるイオン化ポテンシャル(IP)変化について検討した。グローブボックス中(窒素雰囲気)で、1価の銅錯体(化学式(1))のCu(I)(dmp)2ビス(トリフルオロメチ
ルスルホニル)イミド(TFSI))と、N−ブチルベンズイミダゾール(NBBI)と、リチウム塩(リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI))とを、以下の組合せでアセトニトリル(AcCN)に溶解し、得られた溶液をFTO基板上に滴下して、窒素中、大気圧で30分程度乾燥した(図6A)。基本的な配合比率は、銅錯体:NBBI:LiTFSIをモル比で0.25M:0.5M:0.2Mとし、溶媒0.5mLを加えた。作製した基板について、大気圧でのIP測定を行った。べき乗は0.3で測定した。また比較として銅錯体のみの粉末も測定した。試験例1は、銅錯体の粉末を95mgとした。試験例2は、銅錯体の粉末95mgを溶媒に溶解させて滴下した。試験例3は、銅錯体(95mg)にNBBI(43.7mg)を加えたものとした。試験例4は、銅錯体(95mg)とNBBI(43.7mg)とLi塩(28.7mg)とを含むものとした。
次に、有機色素を形成した光電極基板を用いた大気圧での光電子分光測定を行った。光電極基板は、FTO基板にTiO2を形成し、400℃で熱処理したのちTiCl4で処理し、赤色色素(化学式(19))を吸着させたものとした。これに、NBBIおよびLiTFSIを以下の組合せでアセトニトリルに溶解した溶液を滴下して、窒素中、大気圧で30分程度乾燥した。NBBIの0.5M溶液(43.7mg)を滴下したものを試験例5とした。また、NBBIの0.5M溶液(43.7mg)とLiTFSIの0.2M溶液(28.7mg)とを滴下したものを試験例6とした。作製した基板について、外観観察を行い、大気中での光電子分光測定を行った。べき乗は0.5で測定した。測定は3回繰り返して行った。
図6は、試験例5、6の外観写真であり、図6Aが試験例5の溶液を20μL滴下したものであり、図6Bが試験例5の溶液を2μLずつ4回滴下したものであり、図6Cが試験例6の溶液を20μL滴下したものである。また、図6Dが図6Aの基板を60℃、1時間加熱したものであり、図6Eが図6Cの基板を60℃、1時間加熱したものである。図6に示すように、試験例5では、TiO2上に吸着した色素がNBBIによって溶け出すことが観察された。これは、NBBIが有機塩基であり、色素のアンカー基(カルボキシ基)に作用するためであると推察された。一方、LiTFSIを添加した試験例6では、TiO2上に吸着した色素がNBBIによって溶け出すことがなく、溶出抑制効果を発揮することが明らかとなった。
図7は、試験例1〜6のイオン化ポテンシャルの測定結果である。図7に示すように、色素/TiO2のIPは−5.1eVであり、Cu(I)の−5.7eVに対しエネルギー障壁が有ることがわかった。一方、Cu(I)と環式化合物であるNBBIの混合系溶液では−5.58eVまで浅くなった。また、色素/TiO2基板にNBBIを添加したものではIPが−5.55eVまで深くなり、Cu(I)と色素/TiO2基板との間のエネルギー障壁がなくなることがわかった。このように、環式化合物であるNBBIを添加すると、エネルギー障壁が解消されることがわかった。更に、環式化合物であるNBBIを添加すると、色素のHOMOが深くなるため、光電極の電圧が高くなることがわかった(図1参照)。なお、環式化合物としてNメチルベンゾイミイダゾール(NMBI)を用いた場合も、NBBIと同様に色素の溶出抑制効果と電圧向上効果が得られた。
次に、電解質を用いた色素増感型太陽電池を作製し、評価した。
[電解質]
溶媒としてアセトニトリル(AcCN)を用いた。この溶媒に、銅錯体と、アルカリ金属塩としてのリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)又はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)と、環式化合物としてN−ブチルベンズイミダゾール(NBBI)又は4−tert−ブチルピリジン(TBP)とを所定のモル比率となるようを加え、電解質(電解液)を得た。銅錯体は、1価の銅錯体として、銅(I)ビス(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド(Cu(dmp)2TFSI)を用い、2価の銅錯体として、銅(II)ビス(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)ビス[ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド](Cu(dmp)2(TFSI)2)を用い、銅全体に対する2価の銅のモル比率Xが0≦X≦0.2の範囲、且つ全体で0.25Mとなるように溶媒へ加えた。また、銅錯体のモル数に対する環式化合物のモル数であるモル比率Yが0.2となるように環式化合物を溶媒へ加えた。また、銅錯体のモル数に対するアルカリ金属塩のモル数であるモル比率Zが0≦Z≦0.2となるようにアルカリ金属塩を溶媒へ加えた。
[色素増感型太陽電池の作製]
透明導電膜(SnO2)の電極上に、原子層堆積法で緻密TiO2膜(10nm)を形成し、酸化チタン粒子(粒子径:数10nm〜400nm)を印刷し、500℃で焼結後、チタン化合物(四塩化チタン水溶液)中に浸漬させ、更に500℃で加熱することによりTiO2電極(光電極)を作製した。ルチル型TiO2層のセパレータを印刷後、その上に炭素電極を積層し、シールで固定させ、3層構造電極を得た。また、赤色系有機色素(化学式(19)の色素)を光電極に吸着させ、上記作製した電解質を充填させ、溶媒を除去することにより、3層構造型の色素増感型太陽電池を作製した。
[実験例1〜4]
銅錯体における銅全体に対する2価の銅のモル比率X(2価/(1価+2価))を0とし、NBBIを用い銅錯体のモル数Mcに対する環式化合物のモル数Mbの比率であるモル比率Y(Mb/Mc)を2.0とし、LiTFSIを用い銅錯体のモル数Mcに対するアルカリ金属塩のモル数Maの比率であるモル比率Z(Ma/Mc)を0.2としたセルを実験例1とした。また、モル比率Zを0.4とした以外は実験例1と同様に作製したセルを実験例2とした。また、モル比率Zを0.8とした以外は実験例1と同様に作製したセルを実験例3とした。また、モル比率Zを2.0とした以外は実験例1と同様に作製したセルを実験例4とした。
[実験例5、6]
アルカリ金属塩としてLiFSIを用いた以外は実験例2と同様に作製したセルを実験例5とした。また、モル比率Zを0.8とした以外は実験例5と同様に作製したセルを実験例6とした。
[実験例7]
モル比率Xを0.2とした以外は実験例2と同様に作製したセルを実験例7とした。
[実験例8、9]
環式化合物としてTBPを用いた以外は実験例2と同様に作製したセルを実験例8とした。また、アルカリ金属塩を用いずモル比率Zを0とした以外は実験例1と同様に作製したセルを実験例9とした。
(太陽電池の評価:暗所高温耐久)
光を照射しない暗所60℃で保持した太陽電池の太陽電池特性を評価した。暗所での放置は、実験例1〜9を用いて1000hまで行った。測定結果は、暗所高温耐久後の測定値を初期値で除算して100を乗算し、維持率として求めた。
(結果と考察)
図8は、実験例1〜9の太陽電池の初期の相対出力密度の測定結果である。初期の相対出力密度は、実験例8を100%に規格化した結果を示した。図9は、実験例1〜9の60℃での暗所高温耐久後の出力密度維持率(%)の測定結果である。図10は、実験例1〜9の60℃での暗所高温耐久後の短絡電流密度Jsc維持率(%)の測定結果である。図11は、実験例1〜9の60℃での暗所高温耐久後の形状因子FF維持率(%)の測定結果である。図12は、実験例1〜9の60℃での暗所高温耐久後の開放電圧Voc維持率(%)の測定結果である。また、実験例1〜9の銅錯体のモル比率X、環式化合物のモル比率Y、アルカリ金属塩のモル比率Z、初期相対出力密度、60℃暗所耐久後の出力維持率(%)、Jsc維持率(%)、FF維持率(%)、Voc維持率(%)を表1にまとめた。
図8〜12、表1に示すように、環式化合物としてTBPを用いた実験例8の太陽電池では、60℃暗所での耐久後において短絡電流密度Jscと形状因子FFが低下し、その結果、出力密度が低下することがわかった。これに対し、環式化合物としてNBBIを用いた太陽電池では、60℃暗所での耐久後において出力密度の維持率が高い結果を示した。更に、銅錯体に含まれる2価の銅をより低減させ、NBBIを用い、且つアルカリ金属塩(Li塩)であるLiTFSIやLiFSIのモル比率Zを0.8以上などに増やすと、短絡電流密度Jscの低下を大きく抑制することができることがわかった。また、このような系では、更に形状因子FFの低下も抑制されたことから、60℃暗所での耐久後において、出力密度の維持率を大きく向上することができた。
図13は、LiTFSIの濃度を変えた場合のNBBIの1H−NMRスペクトルの測定結果である。この測定は、日本電子社製、超伝導フーリエ変換核磁気共鳴装置を用い、500MHzの条件で行った。測定試料は、0.5MのNBBI/アセトニトリル溶液に、0M、0.05M、0.2M、0.5MのLiTFSIを加えたもののスペクトルを測定した。図14に示すように、LiTFSIを加えてもNBBIのブチル基に由来するピークに顕著な変化はなかったが、イミダゾール側に由来するものにピークシフトがみられた。即ち、有機塩基であるNBBIの塩基にLiTFSIが相互作用するものと推察された。このため、電解質にNBBIとLiTFSIとが存在すると、色素に与える影響が低減され、高温や長時間の耐久後にも太陽電池特性が低下しにくくなるものと推察された。
以上の結果より、銅が複数の価数を有する銅錯体を含む電解質に、窒素を1以上含み2環以上を有する複素環式化合物及び窒素を2以上有する単環の複素環式化合物のうち1以上の環式化合物を添加すると、より高い出力密度を示すものと推察された。また、電解質に環式化合物を添加する際は、銅全体に対する2価の銅のモル比率Xをより低減させるものとすると、より高い出力密度を示し、高温状態など、耐久性をより高めることができることがわかった。この理由は、例えば、2価の銅錯体が存在しないことにより、環式化合物の添加効果がより顕著になるためであると推察された。また、この2価の銅のモル比率Xは、0.2未満が好ましく、0.15以下がより好ましく、0.10以下、更には0.05以下であることが好ましいと推察された。また、銅錯体のモル数に対する環式化合物のモル数の比率であるモル比率Yは、0.4〜4.0の範囲が好ましいことがわかった。環式化合物としては、例えば、化学式(11)〜(18)のようなものも同様の効果が得られると推察された。更に、Li塩などのアルカリ金属塩を電解質に共存させると、例えば、有機色素のn型半導体層への結合力の低下をより抑制でき、耐久性をより高めることができることがわかった。アルカリ金属塩は、銅錯体に対するモル比率Zが2.5以下の範囲で好ましく、0.1以上、好ましくは、0.4以上、より好ましくは0.8以上であることがわかった。このアルカリ金属塩は、Li、Na、KなどのカチオンとTFSIやFSIなどのアニオンの組合せが好ましいと推察された。
本開示は、太陽電池及び太陽電池モジュールに好適に利用可能である。
10,10B 太陽電池モジュール、11 光透過基板、12 光透過導電膜、13 受光面、14 光透過導電性基板、15 受光面、16,17 集電電極、18 溝、20 光電極、21 接続部、22 下地層、23 受光面、24 電子輸送層、25 裏面、26,26B 電解質層、27 裏面、29 セパレータ、30,30B 対極、32 シール材、34 保護部材、40,40B 太陽電池

Claims (10)

  1. 光吸収層を有する光電極と、前記光電極に向かい合うように配置された対極とを備えた太陽電池の前記光電極と前記対極との間に介在して用いられる電解質であって、
    有機配位子を有し銅が複数の価数を有する銅錯体と、窒素を1以上含み2環以上を有する複素環式化合物及び窒素を2以上有する単環の複素環式化合物のうち1以上の環式化合物と、アルカリ金属塩とを含み、
    前記アルカリ金属塩は、前記銅錯体のモル数に対する該アルカリ金属塩のモル数であるモル比率Zが0.8≦Z≦2.0の範囲内にあり、
    前記アルカリ金属塩は、カチオンとしてリチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンのうち1以上を含み、アニオンとしてビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド及びビス(フルオロスルホニル)イミド、ヘキサフルオロリン酸及びテトラフルオロホウ酸のうち1以上を含む、電解質。
  2. 前記銅錯体は、化学式(1)〜(10)のうちいずれか1以上である、請求項1に記載の電解質。
  3. 前記銅錯体は、銅全体に対する2価の銅のモル比率Xが0≦X<0.2の範囲内にある、請求項1又は2に記載の電解質。
  4. 前記銅錯体に対する前記環式化合物のモル比率Yが0.4≦Y≦4の範囲内である、請求項1〜のいずれか1項に記載の電解質。
  5. 前記環式化合物は、イミダゾール構造、ピリジン構造、ピリミジン構造、オキサゾール構造及びチアゾール構造のうち1以上を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の電解質。
  6. 前記環式化合物は、化学式(11)〜(18)のうちいずれか1以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の電解質。
  7. 光吸収層を有する光電極と、
    前記光電極に向かい合うように配置された対極と、
    前記光電極と前記対極との間に介在する請求項1〜のいずれか1項に記載の電解質と、
    を備えた太陽電池。
  8. 前記光電極は、有機色素、金属錯体及び有機ハロゲン化金属化合物のうち1以上を含む前記光吸収層を有する、請求項に記載の太陽電池。
  9. 前記光電極は、前記光吸収層で被覆されたn型半導体層を光透過導電性基板上に備えている、請求項又はに記載の太陽電池。
  10. 請求項のいずれか1項に記載の太陽電池を複数備えている、太陽電池モジュール。
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