JP2016030785A - 熱硬化性粉体塗料、熱硬化性粉体塗料の製造方法、塗装品、及び塗装品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】表面調整剤を含有する島部と熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含有する海部とからなる海島構造を有する芯部、並びに、前記芯部の表面を被覆する樹脂被覆部を有する粉体粒子、を含む熱硬化性粉体塗料である。
【選択図】なし
Description
表面調整剤を含有する島部と熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含有する海部とからなる海島構造を有する芯部、並びに、前記芯部の表面を被覆する樹脂被覆部を有する粉体粒子、を含む熱硬化性粉体塗料である。
前記表面調整剤が、ポリシロキサン化合物及びワックスからなる群より選択される1種である請求項1に記載の熱硬化性粉体塗料である。
請求項3に係る発明は、
前記表面調整剤が長鎖アルキル基含有シリコーンオイルである請求項1又は請求項2に記載の熱硬化性粉体塗料である。
請求項4に係る発明は、
前記粉体粒子の体積粒度分布指標GSDvが1.50以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の熱硬化性粉体塗料である。
請求項5に係る発明は、
前記粉体粒子の芯部における表面調整剤を含む島部の径が、0.01μm以上0.5μm以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の熱硬化性粉体塗料である。
請求項6に係る発明は、
前記熱硬化剤が、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、及びブロックイソシアネート基からなる群より選択される1種の官能基を有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の熱硬化性粉体塗料である。
前記粉体粒子が、
表面調整剤の乳化分散粒子、熱硬化性樹脂を含む第1樹脂粒子、及び熱硬化剤が分散された分散液中で、前記表面調整剤の乳化分散粒子と前記第1樹脂粒子と前記熱硬化剤とを凝集して、又は、表面調整剤、熱硬化性樹脂、及び熱硬化剤を含む複合粒子が分散された分散液中で、前記複合粒子を凝集して、前記芯部となる第1凝集粒子を形成する工程と、
前記第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液と、樹脂を含む第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液とを混合し、前記第1凝集粒子の表面に前記第2樹脂粒子を凝集し、前記樹脂被覆部となる前記第2樹脂粒子が前記第1凝集粒子の表面に付着した第2凝集粒子を形成する工程と、
前記第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱し、前記第2凝集粒子を融合及び合一する工程と、
を経て得られたものである請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の熱硬化性粉体塗料である。
表面調整剤の乳化分散粒子、熱硬化性樹脂を含む第1樹脂粒子、及び熱硬化剤が分散された分散液中で、前記表面調整剤の乳化分散粒子と前記第1樹脂粒子と前記熱硬化剤とを凝集して、又は、表面調整剤、熱硬化性樹脂、及び熱硬化剤を含む複合粒子が分散された分散液中で、前記複合粒子を凝集して、第1凝集粒子を形成する工程と、
前記第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液と、樹脂を含む第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液とを混合し、前記第1凝集粒子の表面に前記第2樹脂粒子を凝集し、前記第2樹脂粒子が前記第1凝集粒子の表面に付着した第2凝集粒子を形成する工程と、
前記第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱し、前記第2凝集粒子を融合及び合一する工程と、
を経て粉体粒子を製造する工程を有する、熱硬化性粉体塗料の製造方法である。
被塗装物の表面に、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の熱硬化性粉体塗料により形成された塗装膜を有する塗装品である。
被塗装物の表面に、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の熱硬化性粉体塗料により塗装膜を形成する塗装品の製造方法である。
請求項3に係る発明によれば、メタクリル基含有シリコーンオイル、フェニル基含有シリコーンオイル、又はジメチルシリコーンオイルを用いた場合に比べ、平滑性の高い塗装膜を形成しうる熱硬化性粉体塗料が提供される。
請求項4に係る発明によれば、体積粒度分布指標GSDvが1.50を超えた粉体粒子を含む場合に比べて、高い保管性を有し、平滑性に優れた塗装膜が得られる熱硬化性粉体塗料が提供される。
請求項5に係る発明によれば、芯部における表面調整剤を含む島部の径が前記範囲外である場合に比べて、高い保管性を有し、平滑性に優れた塗装膜が得られる熱硬化性粉体塗料が提供される。
請求項6に係る発明によれば、熱硬化剤がエポキシ基、カルボキシル基、水酸基、及びブロックイソシアネート基からなる群より選択される1種の官能基を有する場合であっても、粉体粒子を小径化しても、少量で平滑性の高い塗装膜を形成する熱硬化性粉体塗料が提供される。
請求項7に係る発明によれば、混練粉砕法により得られた粉体粒子を有する場合に比べ、粉体粒子を小径化しても、少量で平滑性の高い塗装膜を形成する熱硬化性粉体塗料が提供される。
本実施形態に係る熱硬化性粉体塗料(以下、「粉体塗料」とも称する)は、表面調整剤を含有する島部と熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含有する海部とからなる海島構造を有する芯部、並びに、前記芯部の表面を被覆する樹脂被覆部を有する粉体粒子、を含む熱硬化性粉体塗料である。
そのためには、粉体塗料を構成する粉体粒子に表面調整剤を含有させる手法がある。
しかし、混練粉砕法により粉体粒子を作製する際には、固形であり、且つ、混練時に装置内ですべりを起こさない表面調整剤を用いる必要があることから、粉体粒子内での表面調整剤の形状を制御することは困難である。また、粉体粒子製造後に、後から表面調整剤を添加する場合も、粉体粒子内での表面調整剤の形状を制御することは困難となる。
粉体粒子内での表面調整剤の形状によっては、表面調整剤が粉体粒子表面に析出する現象(以下「ブリード」とも称する。なお、粉体粒子中の内包物(熱硬化剤、及び熱硬化剤以外に必要に応じて添加される着色剤、他の添加剤等)が粉体粒子の表面に析出する現象も同様に、「ブリード」と称する。)が生じ易くなる。また、粉体粒子内での表面調整剤の形状によっては、塗装膜を形成する際に平滑性に機能し難くなることもある。
そこで、表面調整剤が機能を発揮して、平滑性に優れた塗装膜を得るためには、更なる改良が望まれている。
つまり、この粉体粒子は、表面調整剤を海島構造の島部として芯部中に存在させ、その芯部の表面を樹脂被覆部にて被覆した構造を有する。この構造により、粉体塗料の保管時であっても、表面調整剤による島部の形態の変化が起き難い。また、表面調整剤が海島構造の島部として存在することで、塗装膜の形成時、つまり、塗装時及び焼き付け時に、表面調整剤が被塗装物の表面上に広がり、溶融している塗料の表面張力を極端に低下させることにより、平滑性に優れた塗装膜が得られる。
更に、本実施形態に係る粉体塗料は、芯材の内包物のブリードを抑制しうることから、保管性にも優れることになり、その結果、塗装後に、被塗装面に付着しなかった粉体塗料を再利用したときでも、同様に、平滑性に優れた塗装膜の形成が実現される。このため、本実施形態に係る粉体塗料は、高い耐久性も有する。
また、本実施形態に係る粉体塗料は、高い保管性を有することから、搬送効率及び塗装効率も高く、塗装作業性に優れる。
粉体塗料は、必要に応じて、流動性を高める点から、粉体粒子の表面に付着する外部添加剤を含んでいてもよい。
粉体粒子は、芯部と、芯部の表面に付着して樹脂被覆部と、を有する。つまり、粉体粒子は、所謂コア・シェル構造を有する粒子である。
芯部は、表面調整剤、熱硬化性樹脂、及び熱硬化剤を含有して構成される。芯部は、必要に応じて、着色剤等のその他添加剤を含有してもよい。
まず、芯部を構成する成分について説明する。
表面調整剤は、粉体塗料にて使用する公知の表面調整剤が挙げられる。
表面調整剤として、具体的には、ポリシロキサン化合物、ワックス、アクリル系オリゴマー類等が挙げられる。
更に、表面調整剤による塗装膜の平滑性の向上の点、被塗装物への濡れ性の点から、表面調整剤としては、常温(25℃)において液体であるものが好ましい。
本実施形態において、ポリシロキサン化合物とは、シロキサン結合を複数有する化合物であって、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等が挙げられる。
中でも、表面張力低下の性能と主樹脂である熱硬化性樹脂との相溶性の点から、シリコーンオイルが好ましい。
シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイル及び変性シリコーンオイルのいずれもが用いられるが、島部の形成性の点から、粉体粒子中で併存する熱硬化性樹脂等の樹脂成分と反応しない非反応性シリコーンオイルが好ましい。
これらのシリコーンオイルは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
ワックスとしては、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。
これらの中でも、熱硬化性樹脂との相溶性の点から、炭化水素系ワックスが好ましい。
表面調整剤は、前述のように、芯材中で、熱硬化性樹脂を含有する海部の中に島部を形成している状態である。
このような海島構造を形成し易くなるため、表面調整剤は熱硬化性樹脂との間に相分離が生じ易い組み合わせを選択することが好ましい。
例えば、熱硬化性樹脂のSP値に対し、表面調整剤のSP値は、3.0以上離れていることが好ましく、2.0以上2.5以下の範囲で異なることがより好ましい。
例えば、芯部の海部を形成する熱硬化性樹脂が熱硬化性ポリエステル樹脂であって、SP値が10.0であれば、7.0以上13.0以下の範囲のSP値を有する表面調整剤を用いることが好ましい。
この方法は、凝集エネルギー密度が置換基の種類及び数に依存しているとの仮説に従い、置換基毎に定められた凝集エネルギー値をもとに、高分子のSP値をセグメント単位で計算する。そして、この方法で計算された凝集エネルギーを物質のモル容積で割り、平方根を取ったものがSP値とされる(参考文献:SP値 基礎・応用と計算方法、山本秀樹著、株式会社情報機構 2005年出版)。
この方法で求められたSP値は、慣行としてその単位がcal1/2/cm3/2とされ、且つ、無次元で表記される。これに加えて、本明細書においては、2つの化合物間におけるSP値の相対的な差が意義を持つため、本明細書においては、上記した慣行に従い求められた値を用い、無次元で表記することとしている。なお、参考までに、この方法で求めたSP値をSI単位(J1/2/m3/2)に換算する場合、この方法で求められたSP値に2046を乗ずればよい。
ここで、島部の径とは、表面調整剤による島部の長軸径の平均値を指す。
粉体粒子中の島部の径は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)による粉体粒子断面の画像を画像解析することにより行う。
具体的には、まず、測定対象となる粉体粒子をエポキシ樹脂に包埋した後、エポキシ樹脂を固化する。この固化物をミクロトームによって厚さ100nmに切片化する。切片の粉体粒子断面を四酸化ルテニウム0.5%水溶液によりルテニウム染色した後、走査透過型電子顕微鏡(STEM)により、粉体粒子断面のSTEM画像を得る。SETM画像中、白く見える部分が表面調整剤の島部(ドメイン)である。得られたSTEM画像を画像解析することにより、表面調整剤の島部の長軸径を計測する。具体的には、走査透過型電子顕微鏡(STEM)にて観察した画像を電子化し、三谷商事株式会社製の画像解析ソフト(Wim ROOF)に取り込み、例えば次のような手順で表面調整剤の島部の長軸径を求める。
1個の粉体粒子断面領域を選択対象として選択後、「2値化処理」コマンドの「自動2値化−判別分析法」を用い、2値化処理を行ない、抽出された表面調整剤の島部1つ1つに対し、計測項目「絶対最大長」解析により、表面調整剤の島部の長軸径を計測する。
写真の撮影濃度やノイズなどにより、自動2値化が正常に行なえない場合は「フィルタ−メディアン」処理やエッジ抽出処理を行なうことにより画像を鮮明化したり、手動の2値化コマンドにおいて画像を確認しながら手動で敷位置を設定してから、表面調整剤の島部の長軸径を計測してもよい。
そして、表面調整剤の島部の長軸径の値は、粉体粒子100個の平均値を採用する。
熱硬化性樹脂は、熱熱硬化反応性基を有する樹脂である。熱硬化性樹脂としては、従来、粉体塗料の粉体粒子で使用する様々な種類の樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂は、非水溶性(疎水性)の樹脂であることがよい。熱硬化性樹脂として非水溶性(疎水性)の樹脂を適用すると、粉体塗料(粉体粒子)の帯電特性の環境依存性が低減される。また、粉体粒子を凝集合一法で作製する場合、水性媒体中で乳化分散を実現する点からも、熱硬化性樹脂は、非水溶性(疎水性)の樹脂であることがよい。なお、非水溶性(疎水性)とは、25℃の水100質量部に対する対象物質の溶解量が5質量部未満であることを意味する。
熱硬化性(メタ)アクリル樹脂は、熱硬化反応性基を有する(メタ)アクリル樹脂である。熱硬化性(メタ)アクリル樹脂への熱硬化反応性基の導入は、熱硬化反応性基を有するビニル単量体を用いることがよい。熱硬化反応性基を有するビニル単量体は、(メタ)アクリル単量体((メタ)アクリロイル基を有する単量体)であってもよいし、(メタ)アクリル単量体以外のビニル単量体であってもよい。
他のビニル単量体としては、各種のα−オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、ブテン−1等)、フルオロオレフィンを除く各種のハロゲン化オレフィン(例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、各種の芳香族ビニル単量体(例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等)、各種の不飽和ジカルボン酸と炭素数1以上18以下の1価アルコールとのジエステル(例えばフマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸ジオクチル等)、各種の酸無水基含有単量体(例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水(メタ)アクリル酸、無水テトラヒドロフタル酸等)、各種の燐酸ステル基含有単量体(例えばジエチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジブチル−2−(メタ)アクリロイルオキシブチルフォスフェート、ジオクチル−2−(メアクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等)、各種の加水分解性シリル基含有単量体(例えばγ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等)、各種の脂肪族カルボン酸ビニル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、炭素原子数9以上11以下の分岐状脂肪族カルボン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等)、環状構造を有するカルボン酸の各種のビニルエステル(例えばシクロヘキサンカルボン酸ビニル、メチルシクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、p−tert−ブチル安息香酸ビニル等)などが挙げられる。
硬化性反応性基を有さないアクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルオクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等)、各種の(メタ)アクリル酸アリールエステル(例えば(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等)、各種のアルキルカルビトール(メタ)アクリレート(例えばエチルカルビトール(メタ)アクリレート等)、他の各種の(メタ)アクリル酸エステル(例えばイソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等)、各種のアミノ基含有アミド系不飽和単量体(例えばN−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等)、各種のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等)、各種のアミノ基含有単量体(例えばtert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピロリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピペリジニルエチル(メタ)アクリレート等)。
数平均分子量を上記範囲内にすると、塗装膜の平滑性及び機械的物性が向上しやすくなる。
熱硬化性ポリエステル樹脂は、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを少なくとも重縮合した重縮合体である。熱硬化性ポリエステル樹脂の熱硬化反応性基の導入は、多塩基酸と多価アルコールとの使用量を調整することにより行う。この調整により、熱硬化反応性基として、カルボキシル基、及び水酸基の少なくとも一方を有する熱硬化性ポリエステル樹脂が得られる。
他の単量体としては、例えば、1分子中にカルボキシル基と水酸基とを併せ有する化合物(例えばジメタノールプロピオン酸、ヒドロキシピバレート等)、モノエポキシ化合物(例えば「カージュラE10(シェル社製)」等の分岐脂肪族カルボン酸のグリシジルエステル)など)、種々の1価アルコール(例えばメタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等)、種々の1価の塩基酸(例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸等)、種々の脂肪酸(例えばひまし油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸の等)等が挙げられる。
酸価と水酸基価との合計を上記範囲内にすると、塗装膜の平滑性及び機械的物性が向上しやすくなる。数平均分子量を上記範囲内にすると、塗装膜の平滑性及び機械的物性が向上すると共に、粉体塗料の貯蔵安定性も向上しやすくなる。
なお、樹脂被覆部の樹脂として、熱硬化性樹脂を適用する場合、熱硬化性樹脂の含有量は、芯部及び樹脂被覆部の全熱硬化性樹脂の含有量を意味する。
熱硬化剤は、熱硬化性樹脂の熱硬化反応性基の種類に応じて選択する。
ここで、熱硬化剤とは、熱硬化性樹脂の末端基である熱硬化反応性基に対して、反応可能な官能基を有している化合物を意味する。
具体的には、熱硬化性樹脂の熱硬化反応性基がエポキシ基の場合、熱硬化剤としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の酸;これら酸の無水物;これらの酸のウレタン変性物などが挙げられる。これらの中でも、熱硬化剤としては、塗装膜物性、及び貯蔵安定性の点から、脂肪族二塩基酸が好ましく、塗装膜物性の点から、ドデカン二酸が特に好ましい。
なお、樹脂被覆部の樹脂として、熱硬化性樹脂を適用する場合、熱硬化剤の含有量は、芯部及び樹脂被覆部の全熱硬化性樹脂に対する含有量を意味する。
着色剤としては、例えば、顔料が挙げられる。着色剤は、顔料と共に染料を併用してもよい。
顔料としては、例えば、酸化鉄(例えばベンガラ等)、酸化チタン、チタン黄、亜鉛華、鉛白、硫化亜鉛、リトポン、酸化アンチモン、コバルトブルー、カーボンブラック等の無機顔料;キナクリドンレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、パーマネントレッド、ハンザイエロー、インダンスレンブルー、ブリリアントファーストスカーレット、ベンツイミダゾロンイエロー等の有機顔料などが挙げられる。
顔料としては、その他、光輝性顔料も挙げられる。光輝性顔料としては、例えば、パール顔料、アルミニウム粉、ステンレス鋼粉等の金属粉;金属フレーク;ガラスビーズ;ガラスフレーク;雲母;リン片状酸化鉄(MIO)等が挙げられる。
その他添加剤としては、粉体塗料に使用される各種の添加剤が挙げられる。具体的には、その他添加剤としては、例えば、発泡(ワキ)防止剤(例えば、ベンゾイン、ベンゾイン誘導体等)、硬化促進剤(アミン化合物、イミダゾール化合物、カチオン重合触媒等)、可塑剤、帯電制御剤、酸化防止剤、顔料分散剤、難燃剤、流動付与剤等が挙げられる。
樹脂被覆部は、樹脂を含む。
樹脂被覆部は、樹脂のみで構成されていてもよいし、他の添加剤(芯部を構成する成分として説明した熱硬化剤、その他の添加剤等)を含んでいてもよい。
但し、粉体粒子の内包物のブリードをより低減する点から、樹脂被覆部は、樹脂のみで構成されていることがよい。なお、樹脂被覆部が他の添加剤を含む場合でも、樹脂は樹脂被覆部全体の90質量%以上(好ましくは95質量%以上)を占めることがよい。
なお、樹脂被覆部の樹脂として、非硬化性樹脂を適用する場合、非硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。
樹脂被覆部の被覆率は、粉体粒子表面の樹脂被覆部の被覆率はXPS(X線光電子分光)測定により求められた値である。
具体的には、XPS測定は、測定装置として日本電子社製、JPS−9000MXを使用し、X線源としてMgKα線を用い、加速電圧を10kV、エミッション電流を30mAに設定して実施する。
上記条件で得られたスペクトルから、粉体粒子表面の芯部の材料に起因する成分と被覆樹脂部の材料に起因する成分をピーク分離することによって、粉体粒子表面の樹脂被覆部の被覆率を定量する。ピーク分離は、測定されたスペクトルを、最小二乗法によるカーブフィッティングを用いて各成分に分離する。
分離のベースとなる成分スペクトルは、粉体粒子の作製に用いた熱硬化性樹脂、硬化剤、顔料、添加剤、被覆用樹脂を単独に測定して得られたスペクトルを用いる。そして、粉体粒子で得られた全スペクトル強度の総和に対しての被覆用樹脂に起因するスペクトル強度の比率から、被覆率を求める。
樹脂被覆部の厚さは、次の方法により測定された値である。粉体粒子をエポキシ樹脂などに包埋し、ダイヤモンドナイフなどで切削することで薄切片を作製する。この薄切片を透過型電子顕微鏡(TEM)などで観察、複数の粉体粒子の断面画像を撮影する。粉体粒子の断面画像から樹脂被覆部の厚みを20か所測定して、その平均値を採用する。クリア粉体塗料などで断面画像において樹脂被覆部の観察が難しい場合は、染色を行って観察することで、測定を容易にすることもできる。
粉体粒子には、2価以上の金属イオン(以下、単に「金属イオン」とも称する)を含むことがよい。この金属イオンは、粉体粒子の芯部及び樹脂被覆部のいずれにも含まれる成分である。粉体粒子に2価以上の金属イオンを含むと、粉体粒子で金属イオンによるイオン架橋を形成する。例えば、芯部の熱硬化性樹脂及び樹脂被覆部の樹脂として、ポリエステル樹脂を適用した場合、ポリエステル樹脂のカルボキシル基又は水酸基と金属イオンとが相互作用し、イオン架橋を形成する。このイオン架橋により、粉体粒子のブリードが抑制され、保管性が高まりやすくなる。また、このイオン架橋は、粉体塗料の塗装後、熱硬化をするときの加熱により、イオン架橋の結合が切れることで、粉体粒子の溶融粘度が低下し、平滑性の高い塗装膜を形成しやすくなる。
金属塩としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化鉄(II)、塩化亜鉛、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
無機金属塩重合体としては、例えば、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、ポリ硫酸鉄(II)、多硫化カルシウム等が挙げられる。
金属錯体としては、例えば、アミノカルボン酸の金属塩等が挙げられる。金属錯体として、具体的には、例えば、エチレンジアミン4酢酸、プロパンジアミン4酢酸、ニトリル3酢酸、トリエチレンテトラミン6酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸等の公知のキレートをベースにした金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、アルミニウム塩等)などが挙げられる。
金属イオンの含有量を0.002質量%以上とすると、金属イオンによる適度なイオン架橋が形成され、粉体粒子のブリードを抑え、塗装塗料の保管性が高まるやすくなる。一方、金属イオンの含有量を0.2質量%以下とすると、金属イオンによる過剰なイオン架橋の形成を抑え、塗装膜の平滑性が高まりやすくなる。
−体積粒度分布指標GSDv−
本実施形態において、塗装膜の平滑性、及び粉体塗料の保管性の点で、粉体粒子の体積粒度分布指標GSDvは1.50以下であることが好ましく、1.40以下がより好ましく、1.30以下が更に好ましい。
また、粉体粒子の体積平均粒径D50vは、少量で平滑性の高い塗装膜を形成する点から、1μm以上25μm以下が好ましく、2μm以上20μm以下がより好ましく、3μm以上15μm以下が更に好ましい。
更に、粉体粒子の平均円形度は、塗装膜の平滑性、及び粉体塗料の保管性の点で、0.96以上であることが好ましく、0.97以上がより好ましく、0.98以上が更に好ましい。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積84%となる粒径を体積粒径D84vと定義する。
そして、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2として算出される。
本実施形態に係る粉体塗料は、粉体粒子の表面に外部添加剤を添加することで、粉体粒子間の凝集の発生が抑制され、少量で平滑性の高い塗装膜が形成される。
外部添加剤の具体例としては、例えば、無機粒子が挙げられる。
無機粒子として、SiO2、TiO2、Al2O3、CuO、ZnO、SnO2、CeO2、Fe2O3、MgO、BaO、CaO、K2O、Na2O、ZrO2、CaO・SiO2、K2O・(TiO2)n、Al2O3・2SiO2、CaCO3、MgCO3、BaSO4、MgSO4等の粒子が挙げられる。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部である。
次に、本実施形態に係る粉体塗料の製造方法について説明する。
本実施形態に係る粉体塗料は、粉体粒子を製造後、必要に応じて、粉体粒子に対して、外部添加剤を外添することで得られる。
表面調整剤の乳化分散粒子、熱硬化性樹脂を含む第1樹脂粒子、及び熱硬化剤が分散された分散液中で、前記表面調整剤の乳化分散粒子と前記第1樹脂粒子と前記熱硬化剤とを凝集して、又は、表面調整剤、熱硬化性樹脂、及び熱硬化剤を含む複合粒子が分散された分散液中で、前記複合粒子を凝集して、第1凝集粒子を形成する工程と、
前記第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液と、樹脂を含む第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液とを混合し、前記第1凝集粒子の表面に前記第2樹脂粒子を凝集し、前記第2樹脂粒子が前記第1凝集粒子の表面に付着した第2凝集粒子を形成する工程と、
前記第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱し、前記第2凝集粒子を融合及び合一する工程と、
を経て、粉体粒子を製造することが好ましい。
なお、この凝集合一法により製造された粉体粒子は、第1凝集粒子が融合合一した部分が芯部となり、第1凝集粒子の表面に付着した第2樹脂粒子が融合合一した部分が樹脂被覆部となる。
なお、以下の説明では、着色剤を含む粉体粒子の製造方法について説明するが、着色剤は必要に応じて含有するものである。
まず、凝集合一法で使用する各分散液を準備する。
具体的には、表面調整剤を乳化分散した表面調整剤分散液、芯部の熱硬化性樹脂を含む第1樹脂粒子が分散された第1樹脂粒子分散液、熱硬化剤が分散された熱硬化剤分散液、着色剤が分散された着色剤分散液、樹脂被覆部の樹脂を含む第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液を準備する。
また、表面調整剤分散液、第1樹脂粒子分散液、及び熱硬化剤分散液に代えて、芯部用の、表面調整剤、熱硬化性樹脂、及び熱硬化剤を含む複合粒子が分散された複合粒子分散液を準備する。
なお、粉体塗料の製造方法の各工程において、第1樹脂粒子、第2樹脂粒子、及び複合粒子を、総じて「樹脂粒子」と称し、これらの樹脂粒子の分散液を「樹脂粒子分散液」と称して説明する。
水性媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水;アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水性媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を水性媒体中に粒子状に分散する方法である。
例えば、樹脂粒子分散液が、アクリル樹脂粒子が分散されたアクリル樹脂粒子分散液の場合、かかるアクリル樹脂粒子分散液は、原料単量体を水性媒体中に乳化し、水溶性開始剤、必要に応じて、分子量制御のために連鎖移動剤を加え加熱し、乳化重合することによって得られる。
また、樹脂粒子分散液が、ポリエステル樹脂粒子が分散されたポリエステル樹脂粒子分散液の場合、かかるポリエステル樹脂粒子分散液は、原料単量体を加熱溶融及び減圧下重縮合した後、得られた重縮合体を、溶剤(例えば酢酸エチル等)を加えて溶解し、更に、得られた溶解物に弱アルカリ性水溶液を加えながら撹拌、及び転相乳化することによって得られる。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
この乳化分散粒子の体積平均粒径も、上記の樹脂粒子の体積平均粒径と同様にして、測定される。
次に、表面調整剤分散液と、第1樹脂粒子分散液と、熱硬化剤分散液と、着色剤分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、表面調整剤分散液と第1樹脂粒子と熱硬化剤と着色剤とをヘテロ凝集させ、目的とする粉体粒子の径に近い径を持つ、表面調整剤分散液と第1樹脂粒子と熱硬化剤と着色剤とを含む第1凝集粒子を形成する。
なお、凝集終了後、凝集剤の金属イオンと錯体又は類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。このキレート剤の添加により、凝集剤を過剰に添加した場合、粉体粒子の金属イオンの含有量の調整が実現される。
キレート剤の添加量としては、例えば、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下がよく、0.1質量部以上3.0質量部未満が好ましい。
次に、得られた第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液と、第2樹脂粒子分散液とを混合する。
なお、第2樹脂粒子は第1樹脂粒子と同種であってもよいし、異種であってもよい。
そして、混合分散液のpHを、例えば6.5以上8.5以下程度の範囲にすることにより、凝集の進行を停止させる。
次に、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して、例えば、第1及び第2樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば第1及び第2樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、第2凝集粒子を融合合一し、粉体粒子を形成する。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、気流式乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディーゲミキサー等によって行うことがよい。
更に、必要に応じて、振動師分機、風力師分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
本実施形態に係る塗装品は、被塗装物の表面に、本実施形態に係る粉体塗料により形成された塗装膜を有する塗装品である。そして、本実施形態に係る塗装品の製造方法は、被塗装物の表面に、本実施形態に係る粉体塗料により塗装膜を形成する塗装品の製造方法である。
加熱温度(焼付温度)は、例えば、90℃以上250℃以下が好ましく、100℃以上220℃以下がより好ましく、120℃以上200℃以下が更に好ましい。なお、加熱時間(焼付時間)は、加熱温度(焼付温度)に応じて調節する。
なお、粉体塗料の塗装、及び加熱(焼付)は、一括して行ってもよい。
・スチレン 320部
・n−ブチルアクリレート 80部
・アクリル酸 10部
・ドデカンチオール 10部
・非イオン性界面活性剤(三洋化成社製ノニポール400) 6部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製ネオゲンR) 10部
・イオン交換水 550部
上記の材料をフラスコ中に入れて分散し乳化し、10分間ゆっくりと攪拌混合しながら、過硫酸アンモニウム4部を溶解したイオン交換水50部を投入した。その後、フラスコ内を窒素で置換し、攪拌しながらオイルバスで系内が70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、第1の樹脂粒子分散液(1)を得た。
この分散液について、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所社製LA−700)で樹脂粒子の体積平均粒子径(D50)を測定したところ155nmであり、示差走査熱量計(島津製作所社製DSC−50)を用いて昇温速度10℃/minで樹脂のガラス転移温度を測定したところ54℃であり、分子量測定器(東ソー社製HLC−8020)を用いてテトラヒドロフラン(THF)を溶媒として重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ33000であった。
・スチレン 80部
・n−ブチルアクリレート 20部
・アクリル酸 2.5部
・ドデカンチオール 2.5部
・非イオン性界面活性剤(三洋化成社製ノニポール400) 1.5部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製ネオゲンR) 1.5部
・イオン交換水 150部
上記の材料をフラスコ中に入れて分散し乳化し、10分間ゆっくりと攪拌混合しながら、過硫酸アンモニウム1.0部を溶解したイオン交換水50部を投入した。その後、フラスコ内を窒素で置換し、攪拌しながらオイルバスで系内が70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、第2の樹脂粒子分散液(2)を得た。
この分散液について、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所社製LA−700)で樹脂粒子の体積平均粒子径(D50)を測定したところ155nmであり、示差走査熱量計(島津製作所社製DSC−50)を用いて昇温速度10℃/minで樹脂のガラス転移温度を測定したところ54℃であり、分子量測定器(東ソー社製HLC−8020)を用いてTHFを溶媒として重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ31000であった。
・カーボンブラック(テグサ社製Nipx35) 50部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製ネオゲンR) 5部
・イオン交換水 200部
上記の材料を混合し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー(スギノマシン社製HJP30006)を用いて1時間分散処理を行い、着色剤分散液(K)を得た。着色剤分散液(K)は、着色剤粒子の平均粒径190nm、固形分量20%であった。
<粉体粒子(1)の作製>
・第1の樹脂粒子分散液(1) 260部
・熱硬化剤(ヒュルス社製ベスタゴンB1530) 20部
・シリコーンオイルエマルジョン(固形分53%) 25部
(信越化学工業社製X−52−8048:長鎖アルキル基含有シリコーンオイルのエマルジョン)
・着色剤分散液(K) 32.7部
・カチオン性界面活性剤(花王社製サニゾールB50) 1.5部
・ポリ塩化アルミニウム 0.36部
・イオン交換水 1000部
上記の材料を丸型ステンレス製フラスコに収容して、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて混合し分散した後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を攪拌しながら48℃まで加熱した。48℃で30分保持した後、光学顕微鏡にて凝集粒子が形成されていることを確認した。
ここに第2の樹脂粒子分散液(2)を130部追加した。その後、濃度0.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液で液のpHを8.0に調整した後、フラスコを密閉し、攪拌軸のシールを磁力シールして攪拌を継続しながら90℃まで加熱し、更に3時間保持した。
反応終了後、冷却し、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。固形分を30℃のイオン交換水1000部に再分散し、攪拌翼によって300rpmで15分間攪拌し、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。この再分散と吸引濾過を繰り返し、濾液が電気伝導度10.0μS/cmt以下となったところで洗浄を終了した。
次いで真空乾燥機に仕込んで12時間継続して乾燥し、粉体粒子(1)を得た。
また、粉体粒子(1)の体積平均粒径D50vは5.8μmであり、体積平均粒度分布指標GSDvは1.25であり、平均円形度は0.97であった。
更に、粉体粒子(1)のアルミニウムイオンの含有量は、0.01質量%であった。
粉体粒子(1)をエポキシ樹脂に包埋し後、切削し、粒子の断面像を透過型電子顕微鏡で観察したところ、粉体粒子表面が被覆樹脂部で被覆されていることが確認された。
得られた粉体粒子(1)100質量部に対して0.5質量部の疎水性チタニア粒子(一次粒径50nm)を外部添加剤として混合して、粉体塗料(1)を得た。
実施例1にて用いたシリコーンオイルエマルジョンを、以下のようにして調製した「メタクリル基含有シリコーンオイル(信越化学工業社製X−22−2426)のエマルジョン」に変更し、添加量は実施例1と同様にした以外は、実施例1と同様にして粉体粒子(2)を得た。
・メタクリル基含有シリコーンオイル 480部
(信越化学工業社製X−22−2426)
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製ネオゲンRK) 50部
・イオン交換水 520部
以上の成分の混合液を30℃に調整して、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴ−リン社)で分散処理してシリコーンオイルエマルジョン(固形分48%)を調製した。
また、粉体粒子(2)の体積平均粒径D50vは5.6μmであり、体積平均粒度分布指標GSDvは1.21であり、平均円形度は0.98であった。
更に、粉体粒子(2)のアルミニウムイオンの含有量は、0.005質量%であった。
そして、この粉体粒子(2)を用いた以外は実施例1と同様にして、粉体塗料(2)を得た。
実施例1にて用いたシリコーンオイルエマルジョンを「メタクリル基含有シリコーンオイルのエマルジョン(固形分48%):信越化学工業社製X−52−8164A」に変更し、添加量は実施例1と同様にした以外は、実施例1と同様にして粉体粒子(3)を得た。
得られた粉体粒子(3)の芯部は、海島構造を有しており、シリコーンオイルによる島部の径は0.02μmであった。
また、粉体粒子(3)の体積平均粒径D50vは5.5μmであり、体積平均粒度分布指標GSDvは1.23であり、平均円形度は0.96であった。
更に、粉体粒子(3)のアルミニウムイオンの含有量は、0.02質量%であった。
そして、この粉体粒子(3)を用いた以外は実施例1と同様にして、粉体塗料(3)を得た。
実施例1にて用いたシリコーンオイルエマルジョンを「フェニル基含有シリコーンオイルのエマルジョン(固形分30%):信越化学工業社製KM−9739」に変更し、添加量は実施例1と同様にした以外は、実施例1と同様にして粉体粒子(4)を得た。
得られた粉体粒子(4)の芯部は、海島構造を有しており、シリコーンオイルによる島部の径は0.05μmであった。
また、粉体粒子(4)の体積平均粒径D50vは5.8μmであり、体積平均粒度分布指標GSDvは1.22であり、平均円形度は0.96であった。
更に、粉体粒子(4)のアルミニウムイオンの含有量は、0.007質量%であった。
そして、この粉体粒子(4)を用いた以外は実施例1と同様にして、粉体塗料(4)を得た。
実施例1にて用いたシリコーンオイルエマルジョンを、以下のようにして調製した「ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製KF-96-1000cs)のエマルジョン」に変更し、添加量は実施例1と同様にした以外は、実施例1と同様にして粉体粒子(5)を得た。
・ジメチルシリコーンオイル 480部
(信越化学工業社製:KF-96-1000cs)
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製ネオゲンRK) 50部
・イオン交換水 520部
以上の成分の混合液を30℃に調整して、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴ−リン社)で分散処理してシリコーンオイルエマルジョン(固形分48%)を調製した。
また、粉体粒子(5)の体積平均粒径D50vは5.7μmであり、体積平均粒度分布指標GSDvは1.24であり、平均円形度は0.98であった。
更に、粉体粒子(5)のアルミニウムイオンの含有量は、0.01質量%であった。
そして、この粉体粒子(5)を用いた以外は実施例1と同様にして、粉体塗料(5)を得た。
比較例1として、特開2010−090355号公報の実施例1で得られたコア−シェル型の樹脂粒子(E1)を使用した。
この樹脂粒子(E1)では、ワックスなどの表面平滑剤によるドメイン構造(島部)は確認できず、着色剤のみが確認された。
この樹脂粒子(E1)を用いた以外は実施例1と同様にして、粉体塗料を得た。
(粉体塗料の塗装膜試料の作製)
静電塗装法等により、各例で得られた粉体塗料をリン酸亜鉛処理鋼板のテストパネルに塗装後、加熱温度180℃、加熱時間1時間で加熱(焼付け)を行って、厚みが30μmの塗装膜試料を得た。
塗装膜試料の表面に対して、表面粗さ測定器(SURFCOM 1400A(株)東京精密)を用いて、中心線平均粗さ(以下、「Ra」と記す。単位:μm)を測定した。Raの数字が大きいほど表面平滑性が低いことを示す。
評価基準は以下の通りである。評価結果を表1に示す。
G1(○):Raが0.4μm以下である
G2(△):Raが0.4μmを超え0.5μm以下である
NG(×):Raが0.5μmを超える
各例で得られた粉体塗料を、温度50℃、湿度50RH%に制御した恒温恒湿槽に17時間保管した後、振動篩を用いて篩い200メッシュ(目開き75ミクロン(μm))通過量を調べて、下記基準により評価した。評価結果を表1に示す。
G1(○):通過量が90%以上
NG(×):通過量が90%未満
また、本実施例の粉体塗料は、耐保管性にも優れることが分かる。
Claims (10)
- 表面調整剤を含有する島部と熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含有する海部とからなる海島構造を有する芯部、並びに、前記芯部の表面を被覆する樹脂被覆部を有する粉体粒子、を含む熱硬化性粉体塗料。
- 前記表面調整剤が、ポリシロキサン化合物及びワックスからなる群より選択される1種である請求項1に記載の熱硬化性粉体塗料。
- 前記表面調整剤が長鎖アルキル基含有シリコーンオイルである請求項1又は請求項2に記載の熱硬化性粉体塗料。
- 前記粉体粒子の体積粒度分布指標GSDvが1.50以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の熱硬化性粉体塗料。
- 前記粉体粒子の芯部における表面調整剤を含む島部の径が、0.01μm以上0.5μm以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の熱硬化性粉体塗料。
- 前記熱硬化剤が、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、及びブロックイソシアネート基からなる群より選択される1種の官能基を有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の熱硬化性粉体塗料。
- 前記粉体粒子が、
表面調整剤の乳化分散粒子、熱硬化性樹脂を含む第1樹脂粒子、及び熱硬化剤が分散された分散液中で、前記表面調整剤の乳化分散粒子と前記第1樹脂粒子と前記熱硬化剤とを凝集して、又は、表面調整剤、熱硬化性樹脂、及び熱硬化剤を含む複合粒子が分散された分散液中で、前記複合粒子を凝集して、前記芯部となる第1凝集粒子を形成する工程と、
前記第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液と、樹脂を含む第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液とを混合し、前記第1凝集粒子の表面に前記第2樹脂粒子を凝集し、前記樹脂被覆部となる前記第2樹脂粒子が前記第1凝集粒子の表面に付着した第2凝集粒子を形成する工程と、
前記第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱し、前記第2凝集粒子を融合及び合一する工程と、
を経て得られたものである請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の熱硬化性粉体塗料。 - 表面調整剤の乳化分散粒子、熱硬化性樹脂を含む第1樹脂粒子、及び熱硬化剤が分散された分散液中で、前記表面調整剤の乳化分散粒子と前記第1樹脂粒子と前記熱硬化剤とを凝集して、又は、表面調整剤、熱硬化性樹脂、及び熱硬化剤を含む複合粒子が分散された分散液中で、前記複合粒子を凝集して、第1凝集粒子を形成する工程と、
前記第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液と、樹脂を含む第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液とを混合し、前記第1凝集粒子の表面に前記第2樹脂粒子を凝集し、前記第2樹脂粒子が前記第1凝集粒子の表面に付着した第2凝集粒子を形成する工程と、
前記第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱し、前記第2凝集粒子を融合及び合一する工程と、
を経て粉体粒子を製造する工程を有する、熱硬化性粉体塗料の製造方法。 - 被塗装物の表面に、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の熱硬化性粉体塗料により形成された塗装膜を有する塗装品。
- 被塗装物の表面に、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の熱硬化性粉体塗料により塗装膜を形成する塗装品の製造方法。
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