JP2016026877A - アーク溶接品質判定システム - Google Patents
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Abstract
【課題】溶接電流や溶接電圧が予め設定したしきい値を超えたことでアーク溶接の品質判定を行う従来技術では、溶接電流や溶接電圧の変化がビード形状にどのように影響するのか正確にはわからないために、適正なしきい値を設定することが難しい。【解決手段】アーク溶接品質判定システムは、形成された溶接ビードの断面の物理量を推定する物理量推定部と、物理量に基づいて、形成された溶接ビードの品質を判定する品質判定部とを備えている。物理量は、例えば、脚長、溶接ビード幅、余盛り高さ、溶接ビード深さ、および溶接ビード断面積のうちのいずれかである。形成された溶接ビードの品質を判定するパラメータとして、溶接ビードの断面の物理量を用いるようにしたので、溶接電流や溶接電圧と比べてより適切なしきい値を設定することができる。【選択図】図2
Description
本発明は、アーク溶接品質判定システムに関する。
溶接ロボットを使用した生産現場において、安定生産を阻害する主な要因の1つとして、溶接不良が挙げられる。溶接不良の1つであるビード形成不足は、例えば、以下に示したような要因で発生し得る。例えば、施工するワークに対して適正なビード形状となるように溶接条件が事前に設定されていたとしても、実際の施工時にワークの位置ずれによって突き出し長さが変動することがある。この場合に、突き出し長さの変動に伴って溶接電流が変動し、その結果、ビード形成不足が発生し得る。また、例えば、溶接ワイヤに給電するコンタクトチップが摩耗し、コンタクトチップの摩耗に伴って給電不足が発生することがある。この場合に、給電不足によって溶接電流が低下し、その結果、ビード形成不足が発生し得る。また、例えば、ワイヤ送給装置内に溶接ワイヤの削り屑が詰まることがある。この場合に、ワイヤ送給不良によるアーク切れが発生し、その結果、溶接ビード欠けなどのビード形成不良が発生し得る。また、例えば、パルス溶接での磁気吹き現象に起因して、ビード形成不足が発生し得る。
そのため、従来から、溶接不良そのものを低減する技術や、溶接不良をより正確に検出する技術が開発されている。溶接不良をより正確に検出する技術として、例えば、下記の特許文献1,2が提案されている。特許文献1では、アーク溶接中の溶接電流もしくは溶接電圧の移動平均値が、あらかじめ設定された範囲を逸脱した場合に、溶接不良が発生したと判定する技術が提案されている。特許文献2では、アーク溶接中の溶接電流および溶接電圧に異常があるときに、異常と判定された箇所をロボットの動作軌跡と関連づけてディスプレイ上に表示する技術が提案されている。
しかし、溶接電流や溶接電圧の変化がビード形状にどのように影響するのか、正確にはわからない。そのため、上記特許文献1,2に記載の発明では、溶接電流や溶接電圧に対する適切なしきい値を設定することは容易ではない。上記特許文献1,2に記載の発明では、溶接に異常があるとの判定がなされた場合であっても、実際にはビード形成不良には至っていない場合も起こり得る。この場合は、稼働しているロボットを不必要に停止することになるので、生産効率が低下してしまう。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、溶接電流や溶接電圧と比べてより適切なしきい値を設定することの可能なアーク溶接品質判定システムを提供することにある。
本発明のアーク溶接品質判定システムは、形成された溶接ビードの断面の第1物理量または断面と相関のある第2物理量を推定する物理量推定部と、第1物理量または第2物理量に基づいて、形成された溶接ビードの品質を判定する品質判定部とを備えている。
本発明のアーク溶接品質判定システムでは、形成された溶接ビードの品質を判定するパラメータとして、溶接ビードの断面の第1物理量または断面と相関のある第2物理量が用いられる。上記第1物理量は、例えば、脚長、溶接ビード幅、余盛り高さ、溶接ビード深さ、および溶接ビード断面積のうちのいずれかである。また、上記第1物理量は、例えば、溶接ビードのうち、溶接電極の先端部分よりも溶接方向の前方の部分の長さに相当する前方溶接ビード長である。また、上記第2物理量は、例えば、溶接電極の先端部分が溶接ビードの先端部分に到達するまでに要する時間に相当する。上記第1物理量または上記第2物理量の変化の、ビード形状への影響については、溶接電流や溶接電圧の、ビード形状への影響と比べて、直観的にわかりやすい。なお、上記第1物理量および上記第2物理量として例示した脚長等は、溶接電流、溶接電圧、ワイヤ送給速度および溶接速度のうち、少なくとも溶接電流および溶接電圧を計測することにより得られた計測値を用いて導出することが可能なパラメータである。
本発明のアーク溶接品質判定システムによれば、形成された溶接ビードの品質を判定するパラメータとして、溶接ビードの断面の第1物理量または断面と相関のある第2物理量を用いるようにしたので、溶接電流や溶接電圧と比べてより適切なしきい値を設定することができる。これにより、稼働しているロボットを不必要に停止する頻度を低くすることができ、生産効率を向上させることが可能である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.実施の形態
品質判定に用いる物理量として、脚長、溶接ビード幅、余盛り高さ、
溶接ビード深さ、および溶接ビード断面積のうちのいずれかを用いた例
2.変形例
変形例A:品質判定に用いる物理量として、前方溶接ビード長を用いた例
変形例B:品質判定に用いる物理量として、到達時間またはアーク切れ検出時間を
用いた例
1.実施の形態
品質判定に用いる物理量として、脚長、溶接ビード幅、余盛り高さ、
溶接ビード深さ、および溶接ビード断面積のうちのいずれかを用いた例
2.変形例
変形例A:品質判定に用いる物理量として、前方溶接ビード長を用いた例
変形例B:品質判定に用いる物理量として、到達時間またはアーク切れ検出時間を
用いた例
<1.実施の形態>
[構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係るアーク溶接品質判定システムを備えた溶接ロボットシステム1の概略構成の一例を表したものである。図2は、図1の溶接ロボットシステム1の機能ブロックの一例を表したものである。溶接ロボットシステム1は、プログラム制御された多関節ロボットによってワークWにアーク溶接を行うものである。溶接ロボットシステム1は、マニピュレータ10と、ロボット制御装置20と、ティーチペンダント30と、溶接機40とを備えている。ロボット制御装置20、ティーチペンダント30および溶接機40からなるシステムが、本発明の「アーク溶接品質判定システム」の一具体例に相当する。なお、ロボット制御装置20およびティーチペンダント30は、互いに一体に構成されていてもよいし、図1に示したように互いに別体で構成されていてもよい。
[構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係るアーク溶接品質判定システムを備えた溶接ロボットシステム1の概略構成の一例を表したものである。図2は、図1の溶接ロボットシステム1の機能ブロックの一例を表したものである。溶接ロボットシステム1は、プログラム制御された多関節ロボットによってワークWにアーク溶接を行うものである。溶接ロボットシステム1は、マニピュレータ10と、ロボット制御装置20と、ティーチペンダント30と、溶接機40とを備えている。ロボット制御装置20、ティーチペンダント30および溶接機40からなるシステムが、本発明の「アーク溶接品質判定システム」の一具体例に相当する。なお、ロボット制御装置20およびティーチペンダント30は、互いに一体に構成されていてもよいし、図1に示したように互いに別体で構成されていてもよい。
溶接ロボットシステム1は、例えば、ロボット制御装置20と各種装置とを互いに接続するケーブルL1〜L6を備えている。ケーブルL1は、ロボット制御装置20とマニピュレータ10との間で通信するための通信ケーブルであり、ロボット制御装置20およびマニピュレータ10に接続されている。ケーブルL2は、ロボット制御装置20とティーチペンダント30との間で通信するための通信ケーブルであり、ロボット制御装置20およびティーチペンダント30に接続されている。ケーブルL3は、ロボット制御装置20と溶接機40との間で通信するための通信ケーブルであり、ロボット制御装置20および溶接機40に接続されている。ケーブルL4は、溶接機40と後述のワイヤ送給装置14との間で通信するための通信ケーブルであり、溶接機40およびワイヤ送給装置14に接続されている。ケーブルL5,L6は、後述の溶接ワイヤ14とワークWとの間に高電圧の溶接電圧Vsを供給するための電源ケーブルである。ケーブルL5は、溶接機40および後述の作業台15に接続されており、ケーブルL6は、溶接機40および後述の溶接トーチ13に接続されている。
(マニピュレータ10)
マニピュレータ10は、ロボット制御装置20、ティーチペンダント30および溶接機40による制御によってワークWにアーク溶接を行うものである。マニピュレータ10は、フロア等に固定されるベース部材11と、ベース部材11上に設けられた多関節アーム部12と、多関節アーム部12の先端に連結された溶接トーチ13と、多関節アーム部12等に固定されたワイヤ送給装置14と、作業台15とを有している。
マニピュレータ10は、ロボット制御装置20、ティーチペンダント30および溶接機40による制御によってワークWにアーク溶接を行うものである。マニピュレータ10は、フロア等に固定されるベース部材11と、ベース部材11上に設けられた多関節アーム部12と、多関節アーム部12の先端に連結された溶接トーチ13と、多関節アーム部12等に固定されたワイヤ送給装置14と、作業台15とを有している。
多関節アーム部12は、例えば、複数のアーム12Aと、2つのアーム12A同士を回動可能に連結する関節軸(図示せず)とを有している。多関節アーム部12は、さらに、例えば、アーム12Aごとに1つずつ設けられ、対応するアーム12Aを駆動する複数の駆動モータ(図示せず)と、各駆動モータに連結され、各アーム12Aの現在位置を検出するエンコーダ(図示せず)とを有している。各駆動モータは、ケーブルL1を介してロボット制御装置20から入力される制御信号によって駆動される。このようにして各駆動モータが駆動されることにより、各アーム12Aが変位し、結果的に溶接トーチ13が上下前後左右に移動する。エンコーダは、検出した各アーム12Aの現在位置(以下、「位置情報」と称する。)を、ケーブルL1を介してロボット制御装置20に出力するようになっている。
多関節アーム部12の一端(先端)が溶接トーチ13に連結されており、多関節アーム部12の他端がベース部材11に連結されている。溶接トーチ13の先端には、溶加材としての溶接ワイヤ14が露出している。溶接トーチ13は、溶接ワイヤ14の先端とワークWとの間にアークを発生させ、そのアークの熱で溶接ワイヤ14およびワークWを溶融させることにより、ワークWに対してアーク溶接を行うものである。溶接トーチ13は、ケーブルL4に電気的に接続されたコンタクトチップ(図示せず)を有している。コンタクトチップは、ケーブルL4から供給される溶接電圧Vsを溶接ワイヤ14に供給するように構成されている。
ワイヤ送給装置14は、溶接ワイヤ14を溶接トーチ13に供給するものである。ワイヤ送給装置14は、例えば、溶接ワイヤ14を保持すると共に送給可能に構成された一対のロール(図示せず)と、一方のロールを回転駆動するモータ(図示せず)とを有している。一対のロールは、溶接ワイヤ14を挟み込むと共に、上記モータによる回転駆動で発生する摩擦力で溶接ワイヤ14をワイヤリール(図示せず)から引っ張り出すように構成されている。上記モータは、例えば、エンコーダ付きサーボモータで構成されている。上記モータは、ケーブルL4を介して溶接機40から入力される制御信号によって駆動される。上記モータは、例えば、上記エンコーダからフィードバックされるパルスを、ケーブルL4を介して溶接機40に出力するように構成されている。このパルスは、溶接ワイヤ14の送給速度の算出に好適に利用可能である。なお、上記モータは、上記のパルスの代わる何らかの信号を生成し、出力するようになっていてもよい。
作業台15は、フロア等に固定されており、ワークWを設置する台座として使用される。作業台15は、ワークWに対するトーチ姿勢を最適に維持するためのポジショナであってもよい。作業台15が上述のポジショナである場合には、ロボット制御装置20によってポジショナの軸が駆動制御される。作業台15は、ケーブルL5を介して溶接機40に接続されており、作業台15に設置されるワークWとケーブルL5とを互いに電気的に接続するように構成されている。
(ロボット制御装置20)
図3は、ロボット制御装置20の概略構成の一例を表したものである。ロボット制御装置20は、ティーチペンダント30からの指示に従って多関節アーム部12および溶接機40を制御するものである。ロボット制御装置20は、さらに、溶接ワイヤ14の先端とワークWとの間にアークを発生させることにより形成される溶接ビードの品質を判定するようにもなっている。ロボット制御装置20は、制御部21と、サーボ制御部22と、通信部23と、記憶部24とを有している。以下では、記憶部24、サーボ制御部22、通信部23、制御部21の順に説明する。サーボ制御部22が、本発明の「計測部」の一具体例に相当する。
図3は、ロボット制御装置20の概略構成の一例を表したものである。ロボット制御装置20は、ティーチペンダント30からの指示に従って多関節アーム部12および溶接機40を制御するものである。ロボット制御装置20は、さらに、溶接ワイヤ14の先端とワークWとの間にアークを発生させることにより形成される溶接ビードの品質を判定するようにもなっている。ロボット制御装置20は、制御部21と、サーボ制御部22と、通信部23と、記憶部24とを有している。以下では、記憶部24、サーボ制御部22、通信部23、制御部21の順に説明する。サーボ制御部22が、本発明の「計測部」の一具体例に相当する。
記憶部24は、各種プログラムや各種データファイルを記憶可能となっている。記憶部24は、多関節アーム12の動作を制御する制御プログラム22Aを記憶している。制御プログラム22Aは、例えば、ROM(read only memory)に格納されている。記憶部24は、さらに、マニピュレータ10の溶接作業の手順が教示された1または複数の作業プログラム22Bと、溶接ビードの品質を判定するアーク溶接品質判定プログラム22Cと、各種設定値が記述された設定ファイル22Dとを記憶している。1または複数の作業プログラム22B、アーク溶接品質判定プログラム22Cおよび設定ファイル22Dは、例えば、ハードディスクに格納されている。
設定ファイル22Dには、例えば、溶接電流Is、溶接電圧Vs、ワイヤ送給速度Vfおよび溶接速度Vwのそれぞれの設定値、物理量Pwの目標値(目標物理量Pwo)、ならびに物理量Pwとして許容される上限値Pw_maxおよび下限値Pw_minが記述されている。物理量Pwが、アーク溶接品質判定プログラム22Cにおいて溶接不良の有無を判定するパラメータとして使用される。また、上限値Pw_maxおよび下限値Pw_minが、上記パラメータの閾値として使用される。物理量Pwについては、後に詳述するものとする。物理量Pwが、本発明の「第1物理量」の一具体例に相当する。アーク溶接品質判定プログラム22Cについても、後に詳述するものとする。
目標物理量Pwoは、例えば、上限値Pw_maxと、下限値Pw_minとの中間値に相当する。目標物理量Pwoは、アーク溶接開始直後やアーク溶接終了間際を除いた期間においては、概ね一定値となっていることが多いが、ワークWの仕様などによっては、アーク溶接期間の中途において不連続に大きい値もしくは小さい値に変化し得る。このとき、上限値Pw_maxおよび下限値Pw_minについても、目標物理量Pwoの変化に追従して不連続に大きい値もしくは小さい値に変化し得る。つまり、目標物理量Pwo、上限値Pw_maxおよび下限値Pw_minは、ワークWの仕様などによって、ダイナミックに変化し得る。
記憶部24は、さらに、アーク溶接品質判定プログラム22Cが実行されることにより生成される各種データファイルを記憶可能となっている。そのようなデータファイルとしては、例えば、溶接電流ファイル22E、溶接電圧ファイル22F、ワイヤ送給速度ファイル22G、溶接速度ファイル22H、物理量ファイル22Iおよび判定結果ファイル22Jが挙げられる。これらのファイルは、例えば、RAM(Random Access Memory)に格納される。
溶接電流ファイル22Eは、溶接電流Isの計測値が記述されたファイルである。溶接電圧ファイル22Fは、溶接機40から得られる溶接電圧Vsの計測値が記述されたファイルである。ワイヤ送給速度ファイル22Gは、ワイヤ送給速度Vfの計測値が記述されたファイルである。溶接速度ファイル22Hは、溶接速度Vwの計測値が記述されたファイルである。物理量ファイル22Iは、物理量Pwが記述されたファイルである。判定結果ファイル22Jは、アーク溶接品質判定プログラム22Cによって判定された結果が記述されたファイルである。
サーボ制御部22は、マニピュレータ10の各駆動モータを制御するものである。サーボ制御部22は、作業プログラム22Bに記載の移動命令と、マニピュレータ10のエンコーダからの位置情報とに基づいて、マニピュレータ10の各駆動モータを制御するようになっている。移動命令には、例えば、移動開始命令、移動停止命令、作業経路(教示点)、およびトーチ姿勢などが含まれ得る。また、サーボ制御部22は、マニピュレータ10のエンコーダからの位置情報に基づいて溶接速度Vwを導出(計測)するようになっている。サーボ制御部22は、溶接速度Vwを制御部21に出力するようになっている。
通信部23は、ケーブルL2を介してティーチペンダント30と通信を行ったり、ケーブルL3を介して溶接機40と通信を行ったりするものである。通信部23は、ティーチペンダント30からの作業指令を受信して、制御部21に出力するようになっている。作業指令には、例えば、作業者が選択した作業プログラム22Bの番号などが含まれ得る。通信部23は、制御部21からの監視情報を、ティーチペンダント30に送信するようになっている。監視情報には、例えば、溶接電流Isおよび溶接電圧Vsのそれぞれの計測値、ワイヤ送給速度Vfの計測値もしくは設定値、溶接速度Vwの計測値もしくは設定値、物理量Pw、ならびに後述の判定結果などが含まれ得る。
通信部23は、制御部21からの溶接命令を、溶接機40に送信するようになっている。溶接命令には、例えば、アーク溶接の開始命令、アーク溶接の終了命令、溶接電流Isの設定値、溶接電圧Vsの設定値、ワイヤ送給の開始命令、ワイヤ送給の停止命令、およびワイヤ送給速度Vfの設定値などが含まれ得る。通信部23は、溶接機40からのモニタ情報(例えば、各種計測値または通知情報)を受信して、制御部21に出力するようになっている。各種計測値には、例えば、溶接電流Is、溶接電圧Vsおよびワイヤ送給速度Vfの計測値が含まれ得る。通知情報には、例えば、アーク発生通知などが含まれ得る。
制御部21は、ティーチペンダント30から入力された作業指令に基づいて、作業プログラム22Bやアーク溶接品質判定プログラム22Cを読み出し、その内容を解析する解析部211を有している(図2参照)。解析部211は、解析部211での解析結果に基づいて、これらのプログラムに記載の指示に対応する命令通知を生成するようになっている。制御部21は、解析部211で生成された命令通知の内容に応じて、移動命令や溶接命令を出力する実行部212を有している(図2参照)。
制御部21は、実行部212で生成された溶接命令を、通信部23を介して溶接機40に出力する溶接制御部213を有している(図2参照)。溶接制御部213は、例えば、通信部23を介して溶接機40から入力されたモニタ情報(例えば、アーク発生通知)に応じて、アーク溶接品質判定プログラム22Cに基づく監視を開始する通知(監視開始通知)を生成するようになっている。また、溶接制御部213は、例えば、溶接距離Wpに応じて、アーク溶接品質判定プログラム22Cに基づく監視を終了する通知(監視終了通知)を生成するようになっている。溶接距離Wpは、例えば、溶接速度Vw×アーク時間Atにより導出される。溶接制御部213は、サーボ制御部22から入力された溶接速度Vwと、アーク発生通知を受け取ってからの時間(アーク時間)とを用いて溶接距離Wpを導出するようになっている。
制御部21は、溶接制御部213からの監視開始通知に従って、アーク溶接品質判定プログラム22Cを実行する物理量推定部214を有している(図2参照)。物理量推定部214は、具体的には、形成された溶接ビードの断面の物理量(物理量Pw)を推定するようになっている。物理量推定部214は、溶接電流Is、溶接電圧Vs、ワイヤ送給速度Vfおよび溶接速度Vwのうち、少なくとも溶接電流Isおよび溶接電圧Vsを計測することにより得られた計測値を用いて、物理量Pwを推定するようになっている。ここで、計測値は、瞬時値であってもよいが、閾値の設定し易さという観点からは、移動平均値であることが好ましい。
物理量推定部214は、溶接電流Is、溶接電圧Vsおよびワイヤ送給速度Vfのうち、少なくとも溶接電流Isおよび溶接電圧Vsについては、通信部23を介して物理量推定部214に入力された計測値を物理量Pwの推定に用いるようになっている。つまり、物理量推定部214は、ワイヤ送給速度Vfについては、必要に応じて、通信部23を介して物理量推定部214に入力された計測値、および設定ファイル22Dから読み出した設定値のうちのいずれかを物理量Pwの推定に用いるようになっている。また、物理量推定部214は、溶接速度Vwについても、必要に応じて、サーボ制御部22から物理量推定部214に入力された計測値、および設定ファイル22Dから読み出した設定値のうちのいずれかを物理量Pwの推定に用いるようになっている。
物理量推定部214は、溶接電流Is、溶接電圧Vs、ワイヤ送給速度Vfおよび溶接速度Vwの計測値を、溶接距離Wpおよびアーク時間Atの少なくとも一方と関連付けて、溶接電流ファイル22E、溶接電圧ファイル22F、ワイヤ送給速度ファイル22Gおよび溶接速度ファイル22Hに格納するようになっている。物理量推定部214は、物理量Pwを、溶接距離Wpおよびアーク時間Atの少なくとも一方と関連付けて、物理量ファイル22Iに格納するようになっている。物理量推定部214は、溶接制御部213からの監視終了通知に従って、アーク溶接品質判定プログラム22Cの実行を終了するようになっている。
制御部21は、物理量推定部214で推定された物理量Pwに基づいて、形成された溶接ビードの品質を判定する品質判定部215を有している。品質判定部215は、物理量Pwが、設定ファイル22Dから読み出した上限値Pw_maxと下限値Pw_minとの範囲にあるときは溶接不良無しと判定し、物理量Pwが上記範囲外にあるときは溶接不良ありと判定するようになっている。監視情報生成部216は、上記判定結果を、溶接距離Wpおよびアーク時間Atの少なくとも一方と関連付けて、判定結果ファイル22Jに格納するようになっている。
制御部21は、記憶部24内の各種ファイル(22D〜22J)に格納されたデータを監視情報として、通信部23を介してティーチペンダント30に出力する監視情報生成部216を有している。上記各種データとしては、例えば、物理量Pwの目標値(目標物理量Pwo)、物理量Pwとして許容される上限値Pw_maxおよび下限値Pw_minが挙げられる。
制御部21は、通信部23を介して溶接機40と通信をすることにより、溶接機40と同期をとり、例えば、アーク溶接の開始や終了、溶接電圧Vsの設定、または、ワイヤ送給速度Vfの設定を指示するようになっている。また、制御部21は、溶接機40にワイヤ送給装置14の制御を指示し、溶接機40からワイヤ送給装置14に対して溶接ワイヤ14を、例えば、アーク溶接の開始や終了、または、溶接電圧Vs等の設定を指示するようになっている。
(ティーチペンダント30)
図4は、ティーチペンダント30の概略構成の一例を表したものである。ティーチペンダント30は、作業者がマニピュレータ10の動作を教示するものである。ティーチペンダント30は、例えば、制御部31、表示部32、入力部33、通信部34および記憶部35を有している。
図4は、ティーチペンダント30の概略構成の一例を表したものである。ティーチペンダント30は、作業者がマニピュレータ10の動作を教示するものである。ティーチペンダント30は、例えば、制御部31、表示部32、入力部33、通信部34および記憶部35を有している。
表示部32は、映像信号に基づく映像を表示するものである。表示部は、映像を表示する表示面を有する表示パネルと、映像信号に基づいて表示パネルを駆動する駆動部とを有している。入力部33は、作業者からの教示を受け付けるものである。入力部33は、例えば、複数のキーを有しており、各キーの操作に応じて入力信号を生成し、制御部31に出力するようになっている。通信部34は、ケーブルL2を介してロボット制御装置20と通信を行うものである。通信部34は、制御部31からの作業指令を、ロボット制御装置20に送信するようになっている。通信部34は、ロボット制御装置20からの監視情報を受信して、制御部31に出力するようになっている。記憶部35は、各種のモードで種々の表示や作業指示を可能にする教示プログラム35Aを記憶する。教示プログラム35Aは、例えば、ROMに格納されている。
制御部31は、映像信号を生成し、表示部32に出力すると共に、必要に応じて作業指令を生成し、通信部34に出力するものである。制御部31は、読み出した教示プログラム35Aに従って映像信号を生成したり、必要に応じて作業指令を生成したりするようになっている。例えば、入力部33から入力された入力信号が、加工作業を実施する再生モードの選択信号であった場合、制御部31は、教示プログラム35Aに従って、記憶部24に格納されている1または複数の作業プログラム22Bのリストを表示するための映像信号を生成するようになっている。さらに、例えば、再生モードが選択されている場合に、再生する1つの作業プログラム22Bが選択されたときには、制御部31は、教示プログラム35Aに従って、再生する作業プログラム22Bの番号等を含む作業指令を生成するようになっている。さらに、例えば、再生モードが選択されている場合に、制御部31は、通信部34から監視情報を取得したときには、取得した監視情報を表示するための映像信号を生成するようになっている。
図5、図6、図7、図8は、ティーチペンダント30の表示面におけるグラフィック表示の一例を表したものである。表示部32は、監視情報を表示するための映像信号に基づいて、計測により得られた物理量Pwと溶接距離Wpとの関係を、例えば、図5に示したように、物理量Pwの目標値(目標物理量Pwo)や、物理量Pwとして許容される上限値Pw_maxおよび下限値Pw_minとともにグラフィック表示するようになっている。
表示部32は、例えば、図5に示したように、正常値の物理量Pwが、上限値Pw_maxと下限値Pw_minとの範囲に配置されるようにグラフィック表示することが好ましい。また、表示部32は、例えば、図6に示したように、ある区間において異常値となっている物理量Pwが、その区間において、上限値Pw_maxと下限値Pw_minとの範囲外となるようにグラフィック表示することが好ましい。
表示部32は、判定結果を用いて、物理量Pwが上限値Pw_maxと下限値Pw_minとの範囲外にある区間に対して、例えば、マーカを表示したり、色を変えたりしてもよい。また、表示部32は、例えば、図7に示したように、溶接距離Wpに代えて、アーク時間Atとしてもよい。
表示部32は、溶接電流Is、溶接電圧Vs、ワイヤ送給速度Vfおよび溶接速度Vwのうち少なくとも1つを、物理量Pwと並べてグラフィック表示するようになっていてもよい。表示部32は、例えば、図8に示したように、溶接電流Isおよび溶接電圧Vsを、物理量Pwと並べてグラフィック表示するようになっていてもよい。図8中の溶接電流Isは、瞬時溶接電流の移動平均値である。図8中の溶接電圧Vsは、瞬時溶接電圧の移動平均値である。なお、溶接電流Isおよび溶接電圧Vsの代わりに、瞬時溶接電流および瞬時溶接電圧がグラフィック表示されてもよい。
また、表示部32は、図5〜図8に示したような2次元表示を行う代わりに、3次元表示を行うようにしてもよい。このとき、表示部32は、物理量Pwと溶接距離Wpもしくはアーク時間Atとの関係を、ワークWの開先形状と共に表示するようにしてもよい。このように、表示部32が3次元表示を行うようにした場合には、表示部32は、形成される溶接ビードをよりリアルに表現することが可能となる。そこで、例えば、形成される溶接ビードが曲線となっている場合には、表示部32は、形成される溶接ビードの形状を忠実に曲線で表現することが可能となる。
(溶接機40)
図9は、溶接機40の概略構成の一例を表したものである。溶接機40は、ロボット制御装置20による制御に基づいて、溶接電流Is、溶接電圧Vsおよびワイヤ送給速度Vf等を緻密に制御することにより、溶接ワイヤ14の先端とワークWとの間にアークを発生させるものである。溶接機40は、制御部41、通信部42、溶接制御部43、溶接電源44、電流・電圧計測部45および記憶部46を有している。溶接制御部43が、本発明の「計測部」の一具体例に相当する。電流・電圧計測部45が、本発明の「計測部」の一具体例に相当する。
図9は、溶接機40の概略構成の一例を表したものである。溶接機40は、ロボット制御装置20による制御に基づいて、溶接電流Is、溶接電圧Vsおよびワイヤ送給速度Vf等を緻密に制御することにより、溶接ワイヤ14の先端とワークWとの間にアークを発生させるものである。溶接機40は、制御部41、通信部42、溶接制御部43、溶接電源44、電流・電圧計測部45および記憶部46を有している。溶接制御部43が、本発明の「計測部」の一具体例に相当する。電流・電圧計測部45が、本発明の「計測部」の一具体例に相当する。
記憶部46は、溶接制御部43および溶接電源44の動作を制御する制御プログラム46Aを記憶している。制御プログラム46Aは、例えば、ROMに格納されている。制御部41は、溶接機40の各部を制御すると共に、読み出した制御プログラム46Aに従って、溶接制御部43および溶接電源44の動作を制御するものである。通信部42は、ケーブルL3を介してロボット制御装置20と通信を行うものである。通信部42は、ロボット制御装置20からの溶接指令を受信し、制御部41に出力するようになっている。通信部42は、制御部41からのモニタ情報(例えば、各種計測値または通知情報)をロボット制御装置20に出力するようになっている。
溶接制御部43は、制御プログラム46Aと、ロボット制御装置20からの溶接命令とに基づく制御部41からの指示に従って、ワイヤ送給装置14の動作を制御するものである。ロボット制御装置20からの溶接命令には、例えば、ワイヤ送給の開始命令、ワイヤ送給の停止命令、およびワイヤ送給速度Vfの設定値などが含まれ得る。また、溶接制御部43は、ワイヤ送給装置14のモータから出力されたパルス(または、上記のパルスの代わる何らかの信号)に基づいて、ワイヤ送給速度Vfを計測するようになっている。溶接制御部43は、ワイヤ送給速度Vfの計測値を制御部41に出力するようになっている。
溶接電源44は、例えば、デジタルインバータ回路を有しており、外部から入力される商用電源(例えば3相200V)をインバータ制御回路によって高速応答で精密な溶接電流波形制御を行うようになっている。すなわち、溶接電源44は、ケーブルL5,L6を介して溶接トーチ13とワークWとの間に高電圧の溶接電圧Vsを供給するようになっている。溶接電源44は、制御プログラム46Aと、ロボット制御装置20からの溶接命令に従って、溶接電流Isおよび溶接電圧Vsを制御するものである。ロボット制御装置20からの溶接命令には、例えば、アーク溶接の開始命令、アーク溶接の終了命令、溶接電流Isの設定値、溶接電圧Vsの設定値などが含まれ得る。電流・電圧計測部45は、溶接トーチ13とワークWとの間に流れる溶接電流Isや、溶接トーチ13とワークWとの間の溶接電圧Vsを計測するものである。電流・電圧計測部45は、溶接電流Isおよび溶接電圧Vsのそれぞれの計測値を制御部41に出力するようになっている。
(物理量Pw)
次に、物理量Pwについて説明する。図10A、図11Aは、溶接ロボットシステム1を用いたアーク溶接の様子の一例を表したものである。図10Bは、図10AのA−A線における断面構成の一例を表したものである。図11Bは、図11AのA−A線における断面構成の一例を表したものである。図10A,図10Bには、ワークWとして、2枚の母材110が互いに直交するように、2枚の母材110の端部同士が互いに接触しているものが示されている。図10A,図10Bでは、いわゆるすみ肉溶接の様子が例示されている。一方、図11A,図11Bには、ワークWとして、2枚の母材110によって鋭角が形成されるように、2枚の母材110の端部同士が互いに接触しているものが示されている。図11A,図11Bでは、いわゆるV型溶接の様子が例示されている。なお、図11Aでは、V型溶接の様子を見やすくするために、母材110の一部を切り欠いて表現した。
次に、物理量Pwについて説明する。図10A、図11Aは、溶接ロボットシステム1を用いたアーク溶接の様子の一例を表したものである。図10Bは、図10AのA−A線における断面構成の一例を表したものである。図11Bは、図11AのA−A線における断面構成の一例を表したものである。図10A,図10Bには、ワークWとして、2枚の母材110が互いに直交するように、2枚の母材110の端部同士が互いに接触しているものが示されている。図10A,図10Bでは、いわゆるすみ肉溶接の様子が例示されている。一方、図11A,図11Bには、ワークWとして、2枚の母材110によって鋭角が形成されるように、2枚の母材110の端部同士が互いに接触しているものが示されている。図11A,図11Bでは、いわゆるV型溶接の様子が例示されている。なお、図11Aでは、V型溶接の様子を見やすくするために、母材110の一部を切り欠いて表現した。
物理量Pwとは、例えば、上述したすみ肉溶接や、V型溶接によって形成された溶接ビード120の断面の物理量を指している。物理量Pwは、例えば、脚長Bw、溶接ビード幅Ww、余盛り高さTw、溶接ビード深さDw、および溶接ビード断面積Fwのいずれかである。なお、物理量Pwは、上述したすみ肉溶接や、V型溶接によって形成された溶接ビード120の断面の物理量に限定されるものではなく、他の方式によって形成された溶接ビード120の断面の物理量であってもよい。
次に、物理量Pwの推定方法について説明する。以下では、物理量Pwの1つである脚長Bwの推定方法について説明する。
脚長Bwは、以下の式(1),(2)を用いて推定することができる。以下の式(1),(2)において、溶接電流Is、溶接電圧Vs、ワイヤ送給速度Vfおよび溶接速度Vwのうち、少なくとも溶接電流Isおよび溶接電圧Vsが計測値(移動平均値)である。
Bw=(Vf×Fs)/(Wf×Bs×Vw)…(1)
Bs=Ks/(Is×Vs)…(2)
Vf:ワイヤ送給速度
Fs:ワイヤ断面積
Wf:板厚
Bs:断面係数
Vw:溶接速度
Ks:ワイヤ種別ごとの係数
Is:溶接電流
Vs:溶接電圧
Bs=Ks/(Is×Vs)…(2)
Vf:ワイヤ送給速度
Fs:ワイヤ断面積
Wf:板厚
Bs:断面係数
Vw:溶接速度
Ks:ワイヤ種別ごとの係数
Is:溶接電流
Vs:溶接電圧
溶接距離Wpは、以下の式(3)を用いて導出することができる。
Wp=At×Vw…(3)
At:アーク時間
At:アーク時間
なお、脚長Bw、溶接ビード幅Ww、余盛り高さTw、溶接ビード深さDw、および溶接ビード断面積Fwのいずれかを算出する際に、例えば、特許5426076号明細書に記載のシミュレーション装置を用いてもよい。このシミュレーション装置は、アークから溶融池への入熱量を算出する熱源モデルと、この入熱量に基づいて溶融池形状を熱伝導計算によって算出して溶接ビード形状を推定する溶融地モデルとを備えている。このシミュレーション装置では、入熱量の算出に際して溶接電流および溶接電圧が時々刻々変動する変数として扱われており、ワイヤ送給速度および溶接速度については設定値が用いられている。つまり、このシミュレーション装置を用いる場合には、溶接電流Isおよび溶接電圧Vsについては計測値を用い、ワイヤ送給速度Vfおよび溶接速度Vwについては設定値を用いることにより、溶接ビード形状を推定することができる。このようにして推定した溶接ビード形状から、脚長Bw、溶接ビード幅Ww、余盛り高さTw、溶接ビード深さDw、および溶接ビード断面積Fwのいずれかを導出することができる。
[品質判定]
次に、図12を参照して、溶接ロボットシステム1におけるアーク溶接品質判定手順について説明する。図12は、アーク溶接品質判定手順の一例を表したものである。
次に、図12を参照して、溶接ロボットシステム1におけるアーク溶接品質判定手順について説明する。図12は、アーク溶接品質判定手順の一例を表したものである。
まず、ロボット制御装置20(制御部21)が、溶接機40に対して、溶接電流Is、溶接電圧Vsおよびワイヤ送給速度Vfのサンプリングを指示する。すると、溶接機40は、制御部21からの指示に従って、溶接電流Is、溶接電圧Vsおよびワイヤ送給速度Vfのサンプリングを行い、これらの計測値を制御部21に出力する。制御部21は、溶接機40からの、溶接電流Is、溶接電圧Vsおよびワイヤ送給速度Vfの計測値を取得する(ステップS101)。
制御部21は、また、サーボ制御部22に対して、溶接速度Vwのサンプリングを指示する。すると、サーボ制御部22は、制御部21からの指示に従って、溶接速度Vwのサンプリングを行い、溶接速度Vwの計測値を制御部21に出力する。制御部21は、制御部21からの、溶接速度Vwの計測値を取得する(ステップS102)。
次に、制御部21は、計測開始時(または再計算開始時)から現在までの経過期間が、移動平均値の算出に必要な期間(算出期間)を超えているか否か判定する(ステップS103)。算出期間は、例えば、少なくとも10μs程度である。制御部21は、経過期間が算出期間を超えていない場合には、上記ステップS101に戻る。制御部21は、経過期間が算出期間を超えている場合には、溶接電流Is、溶接電圧Vs、ワイヤ送給速度Vfおよび溶接速度Vwの移動平均値を算出する(ステップS104)。
次に、制御部21は、形成された溶接ビードの断面の物理量Pwを推定する(ステップS105)。続いて、物理量Pwに基づいて、形成された溶接ビードの品質を判定する。具体的には、物理量Pwが上限値Pw_maxと下限値Pw_minとの範囲にあるか否か判定する(ステップS106)。制御部21は、物理量Pwが上記範囲内にある場合には、溶接不良無しと判定し(ステップS107)、上記のステップS101に戻る。制御部21は、物理量Pwが上記範囲外にある場合には、溶接不良ありと判定し(ステップS108)、品質判定を終了する。
なお、制御部21は、溶接不良ありと判定した場合に、品質判定を終了せずに(つまり、溶接作業を止めずに)、上記のステップS101に戻って溶接作業を最後まで遂行させつつ、品質判定を継続してもよい。
また、上記品質判定プロセスにおいて、制御部21は、溶接機40に対して、溶接電流Isおよび溶接電圧Vsだけのサンプリングを指示してもよい。このとき、制御部21は、例えば、設定ファイル22Dに記述された、ワイヤ送給速度Vfおよび溶接速度Vwのそれぞれの設定値を、ワイヤ送給速度Vfおよび溶接速度Vwのそれぞれの計測値の代わりに用いてもよい。
また、上記品質判定プロセスにおいて、制御部21は、溶接速度Vwについてだけ、設定ファイル22Dに記述された、溶接速度Vwの設定値を用い、溶接電流Is、溶接電圧Vsおよびワイヤ送給速度Vfについては計測値を用いてもよい。
[効果]
次に、溶接ロボットシステム1におけるアーク溶接品質判定システムの効果について説明する。
次に、溶接ロボットシステム1におけるアーク溶接品質判定システムの効果について説明する。
一般に、溶接電流Isや溶接電圧Vsの変化がビード形状にどのように影響するのか、正確にはわからない。そのため、溶接電流Isや溶接電圧Vsに対する適切なしきい値を設定することは容易ではない。作業者がアーク溶接の知識を持っていたとしても、しきい値の適切な値を即座に判断するには非常に難しい。従って、溶接電流Isや溶接電圧Vsに閾値を設定した場合には、溶接に異常があるとの判定がなされたときであっても、実際にはビード形成不良には至っていない場合も起こり得る。この場合は、稼働しているロボットを不必要に停止することになるので、生産効率が低下してしまう。
一方、本実施の形態では、形成された溶接ビードの品質を判定するパラメータとして、溶接ビードの断面の物理量が用いられる。この物理量は、上述したように、例えば、脚長Bw、溶接ビード幅Ww、余盛り高さTw、溶接ビード深さDw、および溶接ビード断面積Fwのうちのいずれかである。物理量Pwの変化の、ビード形状への影響については、溶接電流Isや溶接電圧Vsの、ビード形状への影響と比べて、直観的にわかりやすい。なお、物理量Pwとして例示した脚長Bw等は、溶接電流Is、溶接電圧Vs、ワイヤ送給速度Vfおよび溶接速度Vwのうち、少なくとも溶接電流Isおよび溶接電圧Vsを計測することにより得られた計測値を用いて導出することが可能なパラメータである。
このように、本実施の形態では、ビード形状への影響が直感的にわかりやすい物理量Pwが、溶接ビードの品質判定用のパラメータに用いられる。従って、溶接電流Isや溶接電圧Vsと比べてより適切なしきい値を設定することができる。その結果、稼働しているロボットを不必要に停止する頻度を低くすることができ、生産効率を向上させることが可能である。
また、本実施の形態では、カメラなどの高価な検査システムを用いる必要がない。従って、安価なシステムで溶接ビードの品質管理を行うことができる。
また、本実施の形態において、例えば、図5、図6、図8に示したように、計測により得られた物理量Pwと溶接距離Wpとの関係が、目標物理量Pwoや、上限値Pw_maxおよび下限値Pw_minとともにグラフィック表示されている場合には、作業者は、異常個所の表示と、実際の異常個所とを直感的に対応付けることができる。
一方で、計測により得られた物理量Pwをアーク時間Atと対応付けて表示した場合には、溶接ビードのどこに異常が発生したかを直感的に把握することが難しい。特に、溶接速度Vwが途中で大きく変化するようなプロセスが採用されている場合には、溶接ビードのどこに異常が発生したかを直感的に把握することは極めて難しい。
その点、本実施の形態において、計測により得られた物理量Pwが、溶接距離Wpとの関係でグラフィック表示されている場合には、作業者は、プロセス中の溶接速度Vwの変化を考慮して表示内容を視認する必要がない。そのため、溶接速度Vwが途中で大きく変化するようなプロセスが採用されていた時であっても、作業者は、異常個所の表示と、実際の異常個所とを直感的に対応付けることができる。
また、本実施の形態において、判定結果を用いて、物理量Pwが上限値Pw_maxと下限値Pw_minとの範囲外にある区間に対して、例えば、マーカを表示したり、色を変えたりした場合には、作業者は、異常の有無を視覚的に容易に把握することができる。
<2.変形例>
以下に、上記実施の形態の溶接ロボットシステム1の変形例について説明する。なお、以下では、上記実施の形態と共通の構成要素に対しては、上記実施の形態で付されていた符号と同一の符号が付される。また、上記実施の形態と異なる構成要素の説明を主に行い、上記実施の形態と共通の構成要素の説明については、適宜、省略するものとする。
以下に、上記実施の形態の溶接ロボットシステム1の変形例について説明する。なお、以下では、上記実施の形態と共通の構成要素に対しては、上記実施の形態で付されていた符号と同一の符号が付される。また、上記実施の形態と異なる構成要素の説明を主に行い、上記実施の形態と共通の構成要素の説明については、適宜、省略するものとする。
[変形例A]
上記実施の形態では、品質判定に用いる物理量Pwとして、脚長Bw、溶接ビード幅Ww、余盛り高さTw、溶接ビード深さDw、および溶接ビード断面積Fwのいずれかが用いられていた。しかし、物理量Pwとして、前方溶接ビード長Rwが用いられてもよい。物理量Pwが、本発明の「第1物理量」の一具体例に相当する。前方溶接ビード長Rwは、例えば、図13に模式的に示したように、溶接ビード120のうち、溶接ワイヤ14(溶接電極)の先端部分よりも溶接方向の前方の部分の長さに相当する。図13は、溶接ロボットシステム1を用いたアーク溶接の様子の一例を表したものである。溶接ワイヤ14が、本発明の「溶接電極」の一具体例に相当する。
上記実施の形態では、品質判定に用いる物理量Pwとして、脚長Bw、溶接ビード幅Ww、余盛り高さTw、溶接ビード深さDw、および溶接ビード断面積Fwのいずれかが用いられていた。しかし、物理量Pwとして、前方溶接ビード長Rwが用いられてもよい。物理量Pwが、本発明の「第1物理量」の一具体例に相当する。前方溶接ビード長Rwは、例えば、図13に模式的に示したように、溶接ビード120のうち、溶接ワイヤ14(溶接電極)の先端部分よりも溶接方向の前方の部分の長さに相当する。図13は、溶接ロボットシステム1を用いたアーク溶接の様子の一例を表したものである。溶接ワイヤ14が、本発明の「溶接電極」の一具体例に相当する。
本変形例では、品質判定部215は、物理量Pwが、設定ファイル22Dから読み出した上限値Pw_maxを超えないときは溶接不良無しと判定し、物理量Pwが上限値Pw_maxを超えたときは溶接不良ありと判定するようになっている。監視情報生成部216は、上記判定結果を、溶接距離Wpおよびアーク時間Atの少なくとも一方と関連付けて、判定結果ファイル22Jに格納するようになっている。
図14、図15、図16、図17は、ティーチペンダント30の表示面におけるグラフィック表示の一例を表したものである。表示部32は、監視情報を表示するための映像信号に基づいて、計測により得られた物理量Pwと溶接距離Wpとの関係を、例えば、図14に示したように、物理量Pwとして許容される上限値Pw_maxとともにグラフィック表示するようになっている。
表示部32は、例えば、図14に示したように、正常値の物理量Pwを、上限値Pw_maxよりも下の領域にグラフィック表示することが好ましい。また、表示部32は、例えば、図15に示したように、ある区間において異常値となっている物理量Pwを、その区間において、上限値Pw_maxよりの上の領域にグラフィック表示することが好ましい。表示部32は、判定結果を用いて、物理量Pwが上限値Pw_maxを超えている区間に対して、例えば、マーカを表示したり、色を変えたりしてもよい。また、表示部32は、例えば、図16に示したように、溶接距離Wpに代えて、アーク時間Atとしてもよい。
表示部32は、溶接電流Is、溶接電圧Vs、ワイヤ送給速度Vfおよび溶接速度Vwのうち少なくとも1つを、物理量Pwと並べてグラフィック表示するようになっていてもよい。表示部32は、例えば、図17に示したように、溶接電流Isおよび溶接電圧Vsを、物理量Pwと並べてグラフィック表示するようになっていてもよい。図17中の溶接電流Isは、瞬時溶接電流の移動平均値である。図17中の溶接電圧Vsは、瞬時溶接電圧の移動平均値である。なお、溶接電流Isおよび溶接電圧Vsの代わりに、瞬時溶接電流および瞬時溶接電圧がグラフィック表示されてもよい。
また、表示部32は、図14〜図17に示したような2次元表示を行う代わりに、3次元表示を行うようにしてもよい。このとき、表示部32は、物理量Pwと溶接距離Wpもしくはアーク時間Atとの関係を、ワークWの開先形状と共に表示するようにしてもよい。このように、表示部32が3次元表示を行うようにした場合には、表示部32は、形成される溶接ビードをよりリアルに表現することが可能となる。そこで、例えば、形成される溶接ビードが曲線となっている場合には、表示部32は、形成される溶接ビードの形状を忠実に曲線で表現することが可能となる。
次に、前方溶接ビード長Rwの推定方法について説明する。前方溶接ビード長Rwは、例えば、以下の式(4)を用いて推定される。前方溶接ビード長Rwは、例えば、以下の式(5)を用いて推定されてもよい。
Rw=Bw…式(4)
Rw=Ms×Bw…式(5)
Ms…係数
Rw=Bw…式(4)
Rw=Ms×Bw…式(5)
Ms…係数
なお、前方溶接ビード長Rwは、式(4)および式(5)以外の関数を用いて推定されてもよい。前方溶接ビード長Rwは、例えば、溶接電流Is、溶接電圧Vsおよびワイヤ送給速度Vfのうち、少なくとも溶接電流Isおよび溶接電圧Vsをパラメータとする関数を用いて推定されてもよい。なお、前方溶接ビード長Rwを算出する際に、例えば、特許5426076号明細書に記載のシミュレーション装置が用いられてもよい。
次に、図18を参照して、本変形例の溶接ロボットシステム1におけるアーク溶接品質判定手順について説明する。図18は、本変形例におけるアーク溶接品質判定手順の一例を表したものである。
まず、ロボット制御装置20(制御部21)が、溶接機40に対して、溶接電流Is、溶接電圧Vsおよびワイヤ送給速度Vfのサンプリングを指示する。すると、溶接機40は、制御部21からの指示に従って、溶接電流Is、溶接電圧Vsおよびワイヤ送給速度Vfのサンプリングを行い、これらの計測値を制御部21に出力する。制御部21は、溶接機40からの、溶接電流Is、溶接電圧Vsおよびワイヤ送給速度Vfの計測値を取得する(ステップS201)。
制御部21は、また、サーボ制御部22に対して、溶接速度Vwのサンプリングを指示する。すると、サーボ制御部22は、制御部21からの指示に従って、溶接速度Vwのサンプリングを行い、溶接速度Vwの計測値を制御部21に出力する。制御部21は、制御部21からの、溶接速度Vwの計測値を取得する(ステップS202)。
次に、制御部21は、計測開始時(または再計算開始時)から現在までの経過期間が、移動平均値の算出に必要な期間(算出期間)を超えているか否か判定する(ステップS203)。算出期間は、例えば、少なくとも10μs程度である。制御部21は、経過期間が算出期間を超えていない場合には、上記ステップS201に戻る。制御部21は、経過期間が算出期間を超えている場合には、溶接電流Is、溶接電圧Vs、ワイヤ送給速度Vfおよび溶接速度Vwの移動平均値を算出する(ステップS204)。
次に、制御部21は、アーク切れが発生したか否か判定する(ステップS205)。具体的には、制御部21は、例えば、溶接電圧Vsが、設定された上限値を超えるか否か判定する。制御部21は、例えば、溶接電圧Vsが、設定された上限値を超えていない(上限値以下となっている)場合には、アーク切れ無しと判定し、ステップS201に戻る。制御部21は、例えば、溶接電圧Vsが、設定された上限値を超えている(上限値よりも大きい)場合には、アーク切れ在りと判定する。
なお、アークが切れたときに、溶接電源44が、溶接電圧Vsの印加を停止するようになっている場合には、制御部21は、例えば、溶接電圧Vsが、設定された下限値を超えているか否か判定してもよい。このとき、制御部21は、例えば、溶接電圧Vsが、設定された下限値を超えている(下限値よりも大きい)場合には、アーク切れ無しと判定し、ステップS201に戻る。制御部21は、例えば、溶接電圧Vsが、設定された下限値を超えていない(下限値以下となっている)場合には、アーク切れ在りと判定する。
制御部21は、例えば、溶接電流Isが、設定された下限値を超えるか否か判定してもよい。この場合に、制御部21は、例えば、溶接電流Isが、設定された下限値を超えている(下限値よりも大きい)ときには、アーク切れ無しと判定し、ステップS201に戻る。制御部21は、例えば、溶接電流Isが、設定された下限値を超えていない(下限値以下となっている)ときには、アーク切れ在りと判定する。
制御部21は、アーク切れ在りと判定した場合には、形成された溶接ビード120の断面の物理量Pwを推定する(ステップS206)。具体的には、制御部21は、物理量Pwとして、形成された溶接ビード120の前方溶接ビード長Rwを推定する。続いて、制御部21は、物理量Pwに基づいて、形成された溶接ビード120の品質を判定する。具体的には、制御部21は、物理量Pwが上限値Pw_maxを超えているか否か判定する(ステップS207)。制御部21は、物理量Pwが上限値Pw_maxを超えていない(上限値Pw_max以下となっている)場合には、溶接不良無しと判定し(ステップS208)、ステップS205に戻る。制御部21は、物理量Pwが上限値Pw_maxを超えている(上限値Pw_maxよりも大きい)場合には、溶接不良ありと判定し(ステップS209)、品質判定を終了する。
なお、制御部21は、溶接不良ありと判定した場合に、品質判定を終了せずに(つまり、溶接作業を止めずに)、上記のステップS201に戻って溶接作業を最後まで遂行させつつ、品質判定を継続してもよい。
また、上記品質判定プロセスにおいて、制御部21は、溶接機40に対して、溶接電流Isおよび溶接電圧Vsだけのサンプリングを指示してもよい。このとき、制御部21は、例えば、設定ファイル22Dに記述された、ワイヤ送給速度Vfおよび溶接速度Vwのそれぞれの設定値を、ワイヤ送給速度Vfおよび溶接速度Vwのそれぞれの計測値の代わりに用いてもよい。
また、上記品質判定プロセスにおいて、制御部21は、溶接速度Vwについてだけ、設定ファイル22Dに記述された、溶接速度Vwの設定値を用い、溶接電流Is、溶接電圧Vsおよびワイヤ送給速度Vfについては計測値を用いてもよい。
次に、本変形例の溶接ロボットシステム1の効果について説明する。
本変形例では、上記実施の形態と同様、ビード形状への影響が直感的にわかりやすい物理量Pwが、溶接ビードの品質判定用のパラメータに用いられる。従って、溶接電流Isや溶接電圧Vsと比べてより適切なしきい値を設定することができる。その結果、稼働しているロボットを不必要に停止する頻度を低くすることができ、生産効率を向上させることが可能である。
また、本変形例では、カメラなどの高価な検査システムを用いる必要がない。従って、安価なシステムで溶接ビードの品質管理を行うことができる。
また、本変形例において、例えば、図14、図15、図17に示したように、計測により得られた物理量Pwと溶接距離Wpとの関係が、上限値Pw_maxとともにグラフィック表示されている場合には、作業者は、異常個所の表示と、実際の異常個所とを直感的に対応付けることができる。
ところで、アーク切れが発生した時、溶接トーチ13の進行方向に対して、溶接ビード120は一定量、形成されている。そのため、即座にアークが復帰した場合には、ビード形成に問題がないことがある。また、溶接開始直後にアーク切れが発生した場合と、溶接が継続して行われている最中にアーク切れが発生した場合とでは、アーク切れが溶接ビードの形状に及ぼす影響が大きく異なる。しかし、例えば、特開昭63−60077等に記載の発明では、それらが考慮されていない。
また、アーク切れが溶接ビードの形状に及ぼす影響は、溶接条件によって大きく異なる。そのため、アーク切れによる溶接不良を判定するための閾値として、アーク切れ検出時間を一意に設定してしまうと、実際にはビード形成不良ではない場合にも、溶接ロボットシステム1がビード形成不良と判定してしまう可能性がある。その逆に、実際にビード形成不良となっている場合であっても、溶接ロボットシステム1がビード形成不良無しと判定してしまう可能性がある。従って、アーク切れによる溶接不良を判定するための閾値として、アーク切れ検出時間を一意に設定することは非常に難しい。
一方、本変形例では、溶接不良を判定する物理量Pwとして、前方溶接ビード長Rwが用いられる。前方溶接ビード長Rwは、上述したように、溶接ビード120のうち、溶接トーチ13の進行方向に対して、一定量、形成される部分の長さに相当する。また、前方溶接ビード長Rwは、上述したように、溶接電流Is、溶接電圧Vsおよびワイヤ送給速度Vfのうち、少なくとも溶接電流Isおよび溶接電圧Vsを用いて導出される。つまり、前方溶接ビード長Rwは、溶接開始直後や、溶接が継続して行われている最中など、状況に応じて変化するパラメータである。従って、様々な溶接条件において、アーク切れに起因する溶接不良を的確に判定することができる。また、アーク切れ検出時間が一意に設定される場合と比べて、溶接不良の誤判定を低減することができる。
[変形例B]
上記変形例Aでは、品質判定に用いる物理量Pwとして、前方溶接ビード長Rwが用いられていた。しかし、物理量Pwとして、到達時間Rtが用いられてもよい。物理量Pwが、本発明の「第2物理量」の一具体例に相当する。到達時間Rtは、例えば、図19に模式的に示したように、アーク切れが起こった瞬間から、溶接ワイヤ14の先端部分が溶接ビード120の先端部分に到達するまでに要する時間に相当する。図19は、溶接ロボットシステム1を用いたアーク溶接の様子の一例を表したものである。本変形例において、ティーチペンダント30の表示面におけるグラフィック表示は、上記変形例Aと同様である。
上記変形例Aでは、品質判定に用いる物理量Pwとして、前方溶接ビード長Rwが用いられていた。しかし、物理量Pwとして、到達時間Rtが用いられてもよい。物理量Pwが、本発明の「第2物理量」の一具体例に相当する。到達時間Rtは、例えば、図19に模式的に示したように、アーク切れが起こった瞬間から、溶接ワイヤ14の先端部分が溶接ビード120の先端部分に到達するまでに要する時間に相当する。図19は、溶接ロボットシステム1を用いたアーク溶接の様子の一例を表したものである。本変形例において、ティーチペンダント30の表示面におけるグラフィック表示は、上記変形例Aと同様である。
次に、到達時間Rtの推定方法について説明する。到達時間Rtは、例えば、以下の式(6)を用いて推定される。前方溶接ビード長Rwは、例えば、式(4)を用いて推定される。前方溶接ビード長Rwは、例えば、式(5)を用いて推定されてもよい。前方溶接ビード長Rwは、上記変形例と同様、式(4)および式(5)以外の関数を用いて推定されてもよい。
Rt=Rw/Vw…式(6)
Rt=Rw/Vw…式(6)
なお、わずかなアーク切れによって溶接ビード120の表面にできる凹みが大きい場合などに、その凹みの大きさに応じて溶接不良を判定したいこともある。そのような場合には、到達時間Rtの代わりに、例えば、以下の式(7)で算出されるアーク切れ検出時間Rt’が用いられてもよい。アーク切れ検出時間Rt’は、アーク切れの継続する時間として許容できる時間に相当するものであり、到達時間Rtと所定の相関関係を有するものである。アーク切れ検出時間Rt’は、到達時間Rtよりも短い時間である。従って、式(7)のStは、0<St<1の範囲内の値をとる。
Rt’=St×Rt…式(7)
Rt’=St×Rt…式(7)
本変形例の溶接ロボットシステム1におけるアーク溶接品質判定手順は、上記変形例Aと同様である。なお、本変形例では、ステップS206において、制御部21は、物理量Pwとして、到達時間Rtまたはアーク切れ検出時間Rt’を推定する。
次に、本変形例の溶接ロボットシステム1の効果について説明する。
本変形例では、上記実施の形態と同様、ビード形状への影響が直感的にわかりやすい物理量Pwが、溶接ビードの品質判定用のパラメータに用いられる。従って、溶接電流Isや溶接電圧Vsと比べてより適切なしきい値を設定することができる。その結果、稼働しているロボットを不必要に停止する頻度を低くすることができ、生産効率を向上させることが可能である。
また、本変形例では、カメラなどの高価な検査システムを用いる必要がない。従って、安価なシステムで溶接ビードの品質管理を行うことができる。
また、本変形例において、例えば、図14、図15、図17に示したように、計測により得られた物理量Pwと溶接距離Wpとの関係が、上限値Pw_maxとともにグラフィック表示されている場合には、作業者は、異常個所の表示と、実際の異常個所とを直感的に対応付けることができる。
また、本変形例では、溶接不良を判定する物理量Pwとして、到達時間Rtまたはアーク切れ検出時間Rt’が用いられる。到達時間Rtおよびアーク切れ検出時間Rt’は、前方溶接ビード長Rwと相関を有する物理量である。到達時間Rtおよびアーク切れ検出時間Rt’は、前方溶接ビード長Rwと同様、溶接開始直後や、溶接が継続して行われている最中など、状況に応じて変化するパラメータである。従って、様々な溶接条件において、アーク切れに起因する溶接不良を的確に判定することができる。また、アーク切れ検出時間が一意に設定される場合と比べて、溶接不良の誤判定を低減することができる。
1…溶接ロボットシステム、10…マニピュレータ、11…ベース部材、12…多関節アーム部、12A…アーム、13…溶接トーチ、14…溶接ワイヤ、15…作業台、20…ロボット制御装置、21…制御部、22…サーボ制御部、22A…制御プログラム、22B…作業プログラム、22C…アーク溶接品質判定プログラム、22D…設定ファイル、22E…溶接電源ファイル、22F…溶接電圧ファイル、22G…ワイヤ送給速度ファイル、22H…溶接速度ファイル、22I…物理量ファイル、22J…判定結果ファイル、23…通信部、30…ティーチペンダント、31…制御部、32…表示部、33…入力部、34…通信部、35…記憶部、35A…教示プログラム、40…溶接機、41…制御部、42…通信部、43…溶接制御部、44…溶接電源、45…電流・電圧計測部、46…記憶部、46A…制御プログラム、110…母材、120…溶接ビード、211…解析部、212…実行部、213…溶接制御部、214…物理量推定部、215…品質判定部、216…監視情報生成部、At…アーク時間、Bw…脚長、Dw…溶接ビード深さ、Fw…溶接ビード断面積、Is…溶接電流、L1〜L6…ケーブル、Ms,St…係数、Pw…物理量、Pw_max…上限値、Pw_min…下限値、Pwo…目標物理量、Rt…到達時間、Rt’…アーク切れ検出時間、Rw…前方溶接ビード長、Tw…余盛り高さ、Vf…ワイヤ送給速度、Vs…溶接電圧、Vw…溶接速度、Wp…溶接距離、Ww…溶接ビード幅、W…ワーク。
Claims (11)
- 形成された溶接ビードの断面の第1物理量または前記断面と相関のある第2物理量を推定する物理量推定部と、
前記第1物理量または前記第2物理量に基づいて、形成された溶接ビードの品質を判定する品質判定部と
を備えた
アーク溶接品質判定システム。 - 前記品質判定部は、前記第1物理量が上限値と下限値との範囲にあるときは溶接不良無しと判定し、前記第1物理量が前記範囲外にあるときは溶接不良ありと判定する
請求項1に記載のアーク溶接品質判定システム。 - 前記第1物理量は、脚長、溶接ビード幅、余盛り高さ、溶接ビード深さ、および溶接ビード断面積のうちのいずれかである
請求項2に記載のアーク溶接品質判定システム。 - 前記品質判定部は、前記第1物理量が上限値を超えないときは溶接不良無しと判定し、前記第1物理量が前記上限値を超えたときは溶接不良ありと判定する
請求項1に記載のアーク溶接品質判定システム。 - 前記第1物理量は、前記溶接ビードのうち、溶接電極の先端部分よりも溶接方向の前方の部分の長さに相当する前方溶接ビード長である
請求項4に記載のアーク溶接品質判定システム。 - 前記品質判定部は、前記第2物理量が上限値を超えないときは溶接不良無しと判定し、前記第2物理量が前記上限値を超えたときは溶接不良ありと判定する
請求項1に記載のアーク溶接品質判定システム。 - 前記第2物理量は、溶接電極の先端部分が前記溶接ビードの先端部分に到達するまでに要する時間である
請求項6に記載のアーク溶接品質判定システム。 - 溶接電流、溶接電圧、ワイヤ送給速度および溶接速度のうち、少なくとも前記溶接電流および前記溶接電圧を計測する計測部をさらに備え、
前記物理量推定部は、前記計測部で得られた計測値に基づいて前記第1物理量または前記第2物理量を推定する
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のアーク溶接品質判定システム。 - 前記第1物理量と溶接距離との関係を、前記上限値および前記下限値とともにグラフィック表示する表示部をさらに備えた
請求項2または請求項3に記載のアーク溶接品質判定システム。 - 前記第1物理量または前記第2物理量と溶接距離との関係を、前記上限値とともにグラフィック表示する表示部をさらに備えた
請求項4ないし請求項7にいずれか一項に記載のアーク溶接品質判定システム。 - 前記表示部は、溶接電流、溶接電圧、ワイヤ送給速度および溶接速度のうち少なくとも1つを、前記第1物理量または前記第2物理量と並べてグラフィック表示する
請求項9または請求項10に記載のアーク溶接品質判定システム。
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