JP2016026194A - 血圧降下剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は血圧降下剤を提供する。【解決手段】本発明の血圧降下剤は、下記(2)〜(4)及び(6)に示すアミノ酸配列からなるペプチドよりなる群から選択される少なくとも1種のペプチドを含有するグロビン蛋白分解物を有効成分とする:(2) Trp-Gly-Lys-Val-Asn(配列番号2)(3) Trp-Gly-Lys-Val(配列番号3)(4) Trp-Gly-Lys(配列番号4)(6) Phe-Glu-Ser(配列番号6)。【選択図】なし

Description

本発明は、ペプチドを有効成分とする血圧降下剤に関する。
高血圧およびこれに起因する疾患は、全世界で第1位の死因となっており、全世界で約10億人に相当する成人の4人に1人がこれらの疾患に罹患していると言われている。特に糖尿病患者の高血圧に起因する心血管系合併症のリスクは、糖尿病に罹患していない患者に比べて2倍から4倍高く、国際糖尿病連盟では厳格な血圧コントロールの必要性を唱えている。
しかしながら、様々な治療が行われているにもかかわらず、高血圧患者の約70%、また糖尿病と高血圧とを併発している患者については90%近くが目標値までの降圧を達成できていないのが実情である。高血圧が、脳卒中や心筋梗塞等の心血管疾患の主要な危険因子であることは認知されているものの、血圧が十分にコントロールできていない場合(特に仮面高血圧)のほうがより危険であることはあまり知られていない。事実、脳梗塞を発症した高血圧患者の約9割が発症前に血圧治療をしていたという報告があるが、これはまさしく降圧治療が不十分であったために脳卒中を引き起こしたことを示している。また臨床試験の結果からも、収縮期血圧をわずか10mmHg下げただけでも脳卒中の発症を約40%低減できることが明らかになっており、このことからも血圧が「10mmHg高い」ということが非常に大きなリスクになることがわかる。
現在高血圧の薬物治療には、その作用メカニズムに応じて大きく下記の6種類の薬物が使用されている:
(A)利尿薬、
(B)カルシウム拮抗薬、
(C)アンジオテンシン受容体拮抗薬、
(D)アンジオテンシン変換酵素阻害薬、
(E)β遮断薬、
(F)α遮断薬。
また、最近では血圧を下げる作用を有する降圧ペプチドが注目されている。降圧ペプチドとして、具体的には生体産生ペプチドであるナトリウム利尿ペプチド(ANP、BNP、CNP)(非特許文献1〜3など参照)およびアドレノメデュリン(非特許文献4参照)の他、卵白の酵素加水分解物であるArg-Pro-Leu-X-Pro-Trp(XはHis、LysまたはArgである)(配列番号7)(特許文献1参照)、および大豆タンパク質の酵素加水分解物(非特許文献5参照)を挙げることができる。
高血圧の発症には生活習慣が深く関わっていると考えられ、食生活が見直されつつある現在においては、特に特許文献1や非特許文献5に記載される卵白や大豆タンパク質に由来するペプチドは、安全であるとともに、卵白または大豆を摂取した後、体内で消化することによって生成されるペプチドである点で利用価値の高いものと考えられる。
F. Yoshihara, et al., Plasma atrial natriuretic peptide concentration inversely correlates with left atrial collagen volume fraction in patients with atrial fibrillation. Plasma ANP as a possible biochemical marker to predict the outcome of the maze procedure. J Am Coll Cardiol, 39, 288-294, 2002 T. Horio, et al. Gene expression, secretion, and autocrine action of C-type natriuretic peptide in cultured adult rat cardiac fibroblasts. Endocrinology, 144, 2279-2284, 2003 Y. Takami, et al. Diagnostic and prognostic value of plasma brain natriuretic peptide in non-dialysis-dependent chronic renal failure. Am J Kidney Dis, 44, 419-429, 2004 F. Yoshihara, et al. Possible involvement of oxidative stress in hypoxia-induced adrenomedullin secretion in cultured rat cardiomyocytes. Eur J Pharmacol, 436, 1-6, 2002 松井利郎、「7Sグロブリンからの血圧低下ペプチドSVYの高度生成とその生理機能評価」、大豆たん白質研究 Vol.6(2003)、73-77 特開2002−80496号公報
本発明は、低分子量のペプチド、特にグロビン蛋白分解物に由来するペプチドを有効成分とする血圧降下剤を提供することを目的とする。
また本発明は、糖尿病患者の高血圧に起因する心血管系合併症のリスクは、糖尿病に罹患していない患者に比べて2倍から4倍高いという実情を踏まえ、血圧降下作用に加えて、抗糖尿病作用を有し、糖尿病患者または糖尿病の前段階にある患者に対する高血圧の改善に、特に好適に使用することができる血圧降下剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を進めていたところ、血糖上昇抑制作用またはインスリン分泌亢進作用を有し糖尿病の治療に有効であることが知られているグロビン蛋白分解物(WO2006/052031A1参照)、ならびにそれに含まれるペプチドVal-Val-Tyr-Pro(配列番号1)、Trp-Gly-Lys-Val-Asn(配列番号2)、Trp-Gly-Lys-Val(配列番号3)、Trp-Gly-Lys(配列番号4)、Ala-Ala-Trp-Gly-Lys(配列番号5)、およびPhe-Glu-Ser(配列番号6)のアミノ酸配列からなる各ペプチドが、血圧の高い患者に対して血圧降下効果を発揮することを見出し、上記課題を解決する生理活性ペプチドとして有効であることを確認した。
本発明はかかる知見に基づいて完成したものであり、下記の態様を有するものである。
(I)血圧降下剤
(I-1)グロビン蛋白分解物に由来する下記(1)〜(6)に示すアミノ酸配列からなるペプチドよりなる群から選択される少なくとも1種のペプチド、またはこれらのペプチドの少なくとも1種を含有するグロビン蛋白分解物を有効成分とする血圧降下剤:
(1) Val-Val-Tyr-Pro(配列番号1)
(2) Trp-Gly-Lys-Val-Asn(配列番号2)
(3) Trp-Gly-Lys-Val(配列番号3)
(4) Trp-Gly-Lys(配列番号4)
(5) Ala-Ala-Trp-Gly-Lys(配列番号5)
(6) Phe-Glu-Ser(配列番号6)。
(I-2)(1) Val-Val-Tyr-Proのアミノ酸配列(配列番号1)からなるペプチド、または当該ペプチドを含有するグロビン蛋白分解物を有効成分とする、(I-1)記載の血圧降下剤。
(I-3)軽症高血圧患者に経口投与されることを特徴とする(I-1)または(I-2)に記載する血圧降下剤。
(I-4)高血糖に起因する疾患に罹患若しくはその前状態にある高血圧症の患者に投与されることを特徴とする、(I-2)に記載する血圧降下剤。
(I-5)経口投与経路により、成人一日あたり、(1)〜(6)に示すアミノ酸配列からなるペプチドを総量1mg〜500mgの割合、またはグロビン蛋白分解物を0.1g〜5gの割合で、毎日投与されることを特徴とする、(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載する血圧降下剤。
(II)高血圧状態の改善または高血圧状態に起因する疾患の予防若しくは治療方法
(II-1)グロビン蛋白分解物に由来する下記(1)〜(6)に示すアミノ酸配列からなるペプチドよりなる群から選択される少なくとも1種のペプチドまたはこれらのペプチドの少なくとも1種を含有するグロビン蛋白分解物を有効成分とする血圧降下剤を、高血圧患者に投与することを含む、高血圧状態の改善または高血圧状態に起因する疾患の予防若しくは治療方法:
(1) Val-Val-Tyr-Pro(配列番号1)
(2) Trp-Gly-Lys-Val-Asn(配列番号2)
(3) Trp-Gly-Lys-Val(配列番号3)
(4) Trp-Gly-Lys(配列番号4)
(5) Ala-Ala-Trp-Gly-Lys(配列番号5)
(6) Phe-Glu-Ser(配列番号6)。
(II-2)(1) Val-Val-Tyr-Proのアミノ酸配列(配列番号1)からなるペプチドまたは当該ペプチドを含有するグロビン蛋白分解物を有効成分とする血圧降下剤を、高血糖状態に起因する疾患を有する高血圧患者に投与することを含む、高血圧状態の改善または高血圧状態に起因する疾患の予防若しくは治療方法。
(II-3)軽症高血圧患者に経口投与することを特徴とする(II-1)または(II-2)に記載する方法。
(II-4)高血糖に起因する疾患に罹患若しくはその前状態にある高血圧症の患者に投与することを特徴とする、(II-2)に記載する方法。
(II-5)経口投与経路により、成人一日あたり、(1)〜(6)に示すアミノ酸配列からなるペプチドを総量1mg〜500mgの割合で、またはグロビン蛋白分解物を0.1g〜5gの割合で、毎日投与することを特徴とする、(II-1)乃至(II-4)のいずれかに記載する方法。
(III)ペプチドおよびグロビン蛋白分解物の用途
(III-1)グロビン蛋白分解物に由来する下記(1)〜(6)に示すアミノ酸配列からなるペプチドよりなる群から選択される少なくとも1種のペプチド、またはこれらのペプチドの少なくとも1種を含有するグロビン蛋白分解物の、血圧降下剤の調製のための使用:
(1) Val-Val-Tyr-Pro(配列番号1)
(2) Trp-Gly-Lys-Val-Asn(配列番号2)
(3) Trp-Gly-Lys-Val(配列番号3)
(4) Trp-Gly-Lys(配列番号4)
(5) Ala-Ala-Trp-Gly-Lys(配列番号5)
(6) Phe-Glu-Ser(配列番号6)。
(III-2)(1) Val-Val-Tyr-Proのアミノ酸配列(配列番号1)からなるペプチド、または当該ペプチドを含有するグロビン蛋白分解物の、高血糖状態に起因する疾患を有する高血圧患者に対する血圧降下剤の調製のための使用。
(III-3)高血圧状態を改善する方法または高血圧状態に起因する疾患の予防若しくは治療方法に使用される、グロビン蛋白分解物に由来する下記(1)〜(6)に示すアミノ酸配列からなるペプチドよりなる群から選択される少なくとも1種のペプチド、またはこれらのペプチドの少なくとも1種を含有するグロビン蛋白分解物:
(1) Val-Val-Tyr-Pro(配列番号1)
(2) Trp-Gly-Lys-Val-Asn(配列番号2)
(3) Trp-Gly-Lys-Val(配列番号3)
(4) Trp-Gly-Lys(配列番号4)
(5) Ala-Ala-Trp-Gly-Lys(配列番号5)
(6) Phe-Glu-Ser(配列番号6)。
(III-4)高血糖状態に起因する疾患を有する高血圧患者の高血圧状態を改善する方法または当該患者の高血圧状態に起因する疾患の予防若しくは治療方法に使用される、(1) Val-Val-Tyr-Proのアミノ酸配列(配列番号1)からなるペプチド、または当該ペプチドを含有するグロビン蛋白分解物。
本発明によれば、血圧を降下させて高血圧状態を改善することができる血圧降下剤を提供することができる。特に、(1)Val-Val-Tyr-Proのアミノ酸配列(配列番号1)からなるペプチド、または当該ペプチドを含有するグロビン蛋白分解物を有効成分とする本発明の血圧降下剤は、血圧降下作用ととともに血糖上昇抑制作用またはインスリン分泌亢進作用を有するため、糖尿病またはその前状態にある高血圧の患者に対してより有効に使用することができる。
グロビン蛋白分解物のゲル濾過クロマトグラムを示す(調製例1)。 調製例2(3)において行った逆相(酸性)クロマトグラフィーの結果(クロマトグラム)を示す。 調製例2(4)において行った逆相(中性)クロマトグラフィーの結果(クロマトグラム)を示す。 調製例3において行ったグロビン蛋白分解物エタノール5容量%溶出画分の逆相(酸性)クロマトグラフィーの結果(クロマトグラム)を示す。 調製例3において行ったグロビン蛋白分解物エタノール15容量%溶出画分の逆相(酸性)クロマトグラフィーの結果(クロマトグラム)を示す。 自然発症高血圧ラットに、ペプチド(VVYP)を経口投与した場合における、血圧の経時的変化を示す図である(実験例1)。 自然発症高血圧ラットに、ペプチド(VVYP)を含むグロビン蛋白分解物を経口投与した場合における、血圧の経時的変化を示す図である(実験例2)。 軽症高血圧症のヒト患者にペプチド(VVYP)を含むグロビン蛋白分解物を経口投与した場合における、血圧(収縮期血圧、拡張期血圧)の経時的変化を示す図である(実験例3)。
本発明の血圧降下剤は、(1)Val-Val-Tyr-Proのアミノ酸配列(配列番号1)からなるペプチド(以下、単に「ペプチド(VVYP)」という)、(2) Trp-Gly-Lys-Val-Asnのアミノ酸配列(配列番号2)からなるペプチド(以下、単に「ペプチド(WGKVN)」という)、(3) Trp-Gly-Lys-Val(配列番号3)からなるペプチド(以下、単に「ペプチド(WGKV)」という)、(4) Trp-Gly-Lys(配列番号4)からなるペプチド(以下、単に「ペプチド(WGK)」という)、(5) Ala-Ala-Trp-Gly-Lys(配列番号5)からなるペプチド(以下、単に「ペプチド(AAWGK)」という)、および(6) Phe-Glu-Ser(配列番号6)からなるペプチド(以下、単に「ペプチド(FES)」という)からなる群から選択される少なくとも1種のペプチド、またはこれらのペプチドの少なくとも1種を含有するグロビン蛋白分解物を有効成分として含有することを特徴とする。
これらのペプチドはいずれも公知のペプチド合成法を用いて化学合成により調製することができる。例えば、ペプチド合成法としては、アジド法、酸クロライド法、酸無水物法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、カルボイミダゾール法、酸化還元法、DCC-アディティブ(HOMB,HOBt,HOSu)法( 「ザ ペプチド(The Peptide) 」第1巻(1966年),Schreder&Luhke 著,Academic Press,New York,USA;あるいは「ペプチド合成」泉谷ら著,丸善株式会社(1975年) 等) 等のペプチド合成法を例示することができる。これらのペプチド合成法は、固相合成法又は液相合成法のいずれによっても行うことができる。
上記ペプチド合成法では、側鎖官能基を有するアミノ酸、例えばチロシンやスレオニンは、当該側鎖官能基を保護しておくのが好ましい。保護基としては、公知の保護基、例えばベンジルオキシカルボニル基(Cbz-)、t-ブトキシカルボニル基(Boc-)、ベンジル基(Bz-) 等を用いることができる。この保護基は、本発明のペプチドの合成工程において、公知の方法により脱保護を行うことができる。
また、これらのペプチドはいずれもヘモグロビンやミオグロビン等のグロビン蛋白の加水分解物(以下、「グロビン蛋白分解物」という)中に含まれているため、当該グロビン蛋白分解物から単離精製して取得することもできる。なお、グロビン蛋白以外の、例えば、魚肉蛋白、魚粉、コーン蛋白質(ゼイン)等の加水分解物を原料として単離精製することもできる。なお、このグロビン蛋白が動物性蛋白質である場合、その供給源は特に限定されず、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヒト、およびウマ等の血液を広く用いることができる。また、畜肉や魚肉などのミオグロビンを多く含む肉類をその供給源として用いることもできる。
グロビン蛋白の加水分解に関する操作等は、国際公開番号 WO89/06970 公報記載の方法に従って行うことができる。加水分解は、通常酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ又はアルカリ性プロテアーゼの1種若しくは2種以上の加水分解酵素を用いて行なわれる。
具体的には、グロビン蛋白を加水分解するには、まずグロビン蛋白含有物を水に5〜30重量%(固形分として)となるように分散し、酸若しくはアルカリによってプロテアーゼの至適pHに調整し、プロテアーゼを一度に若しくは逐次的に添加して、20〜70℃の温度で3〜48時間、当該酵素を反応させる方法を例示することができる。
斯くして得られるグロビン蛋白分解物から本発明のペプチドを単離生成する方法には、蛋白質またはペプチドに関する公知の精製方法を採用することができる。例えば、塩析法、透析法、イオン交換樹脂法、限外濾過法、逆相クロマトグラフィー法等を用いて、また必要に応じてこれらを適宜組み合わせることによって、各ペプチド〔ペプチド(VVYP)、ペプチド(WGKVN)、ペプチド(WGKV)、ペプチド(WGK)、ペプチド(AAWGK)、またはペプチド(FES)〕を包含するフラクションを取得し、更に当該フラクションから上記各ペプチドを単離取得することができる。上記精製方法のうち逆相クロマトグラフィーは、酸性下における逆相クロマトグラフィー、または当該酸性下における逆相クロマトグラフィーと中性下における逆相クロマトグラフィーとを組み合わせて行うのが好ましい。
フラクション中の蛋白量は、公知の蛋白定量法、例えばニンヒドリン法等によって測定することが可能である。また、選別したフラクション中に含まれるペプチドのアミノ酸配列は、公知の方法(アミノ酸分析法)により同定することができ、それによって本発明が対象とするペプチド(VVYP)、ペプチド(WGKVN)、ペプチド(WGKV)、ペプチド(WGK)、ペプチド(AAWGK)またはペプチド(FES)の存在を確認することができる。なお、本発明の血圧降下剤には、上記各ペプチドをそれぞれ、上記の方法により単離精製された形態で配合してもよいが、血圧降下作用を有する限り、各ペプチドを含む粗精製物の形態で配合してもよい。かかる粗精製物として、前述する各ペプチドを含むグロビン蛋白分解物またはその画分を挙げることができる。
本発明の血圧降下剤は、上記各ペプチドまたは当該ペプチドを含む上記粗精製物(グロビン蛋白分解物またはその画分)からなるものであってもよいが、通常、上記有効成分に加えて薬学的に許容される担体または添加剤とともに調製される。かかる薬学的に許容される担体または添加剤と組み合わせて血圧降下剤を調製する場合、中に配合する各ペプチドの量は、血圧降下作用を有する有効量であればよく、その限りにおいて特に制限されない。
ちなみにペプチド(VVYP)または当該ペプチドを含有するグロビン蛋白分解物は、血圧降下作用に加えて、血糖上昇抑制作用またはインスリン分泌亢進作用を有している。このため本発明の血圧降下剤がペプチド(VVYP)または当該ペプチドを含有するグロビン蛋白分解物を有効成分とするものである場合、配合する当該ペプチドの量は、血圧降下作用を有し、しかも血糖上昇抑制作用またはインスリン分泌亢進作用を発揮する有効量であることが好ましい。
ここで本発明の血圧降下剤に配合する担体は、製剤の投与形態に応じて、通常使用される賦形剤、希釈剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、吸収促進剤、滑沢剤、溶解補助剤、緩衝剤、乳化剤、および懸濁剤などの中から適宜選択することができる。また添加剤は、製剤の投与形態に応じて、通常使用される安定化剤、保存剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤、着色剤、香料、風味剤、および甘味剤などの中から適宜選択することができる。
またかかる血圧降下剤の投与単位形態は、投与経路に応じて各種適宜選択することができ、これらは大きく経口剤、経肺投与剤、経鼻剤、舌下剤、非経口剤(注射剤、点滴剤)などに分類される。当該血圧降下剤は常法に従って、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、及びカプセル剤などの固体投与形態;または溶液、懸濁剤、乳剤、シロップ、及びエリキシルなどの液剤投与形態に調合することができる。また、使用時に適当な担体を添加することによって液状となし得る乾燥品として調製されてもよい。これらはいずれも常法に従って調製することができる。
本発明の血圧降下剤に配合される各ペプチドの割合は、総量で通常0.001〜80重量%程度、好ましくは0.1〜50重量%程度、さらに好ましくは約0.1〜10重量%程度を挙げることができる。
このようにして得られる血圧降下剤の投与量は、その目的(血圧降下作用の発揮、または血糖上昇抑制作用若しくはインスリン分泌亢進作用に加えて血圧降下作用の発揮)、当該血圧降下剤の投与方法、投与形態、投与する患者の年齢や体重または症状(疾病の重篤度)等に応じて適宜選択される。具体的には、本発明のペプチドの投与量(2以上のペプチドを組み合わせて投与する場合は総量)としては、成人一日当り、約1〜500mg程度、好ましくは約2〜100mg程度の範囲を挙げることができる。また本発明のグロビン蛋白分解物の投与量としては、成人一日当り、0.1〜5g程度、好ましくは約0.5〜3g程度の範囲を挙げることができる。
なお、当該投与は必ずしも1日1回である必要はなく1日2〜4回に分割して投与することも可能である。上記各種形態の製剤は、その形態に応じた適切な投与経路、例えば注射剤形態においては、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内投与等により、また固剤形態の医薬製剤は、経口投与等により投与され得る。好ましくは経口投与形態である。
本発明の血圧降下剤は、後記実験例で示すように、高血圧状態にある患者に対して血圧降下作用を発揮し、高血圧状態を改善する。このため本発明の血圧降下剤は、高血圧状態に起因する疾患の予防または治療剤としても有効である。
なお、日本高血圧学会およびWHO/ISHで規定する高血圧分類を表1に示す。
Figure 2016026194
本発明が対象とする高血圧患者には、上記高血圧分類における軽症高血圧、中等症高血圧、重症高血圧、および収縮期高血圧に属する患者が含まれる。好ましくは、軽症高血圧、中等症高血圧、または重症高血圧に属する患者であり、より好ましくは軽症高血圧に属する患者である。特に本発明で使用するペプチド(VVYP)および当該ペプチドを含むグロビン蛋白分解物は、収縮期圧よりも拡張期圧を下げる作用が強い。このため、かかるペプチドおよび当該ペプチドを含むグロビン蛋白分解物を有効成分とする本発明の血圧降下剤が対象とする好適な高血圧患者としては、拡張期圧の比較的高い高血圧患者を挙げることができる。
また、ペプチド(VVYP)および当該ペプチドを含むグロビン蛋白分解物を有効成分とする本発明の血圧降下剤は、上記血圧降下作用に加えて、有効成分であるペプチド(VVYP)に起因してインスリン分泌亢進作用を有し、インスリン作用の低下または欠乏によって生じる高血糖状態を改善し、血糖降下作用を発揮する。このため、当該血圧降下剤は、インスリン作用の低下または欠乏によって生じる高血糖状態に起因する各種の疾患を有する高血圧の患者のために、好適に使用される血圧降下剤として有効である。ここで高血糖状態に起因する疾患としては、糖尿病及び糖尿病の合併症を挙げることができる。ここで対象とする糖尿病には、II型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)およびI型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)の両方が含まれる。好適にはインスリン非依存性のII型糖尿病である。日本糖尿病学会の指針(1999)によると、随時血糖値が200mg/dL以上、空腹時血糖値が126mg/dL以上、75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値が200mg/dL以上のいずれかに該当する場合には、糖尿病と判断することができる。また、違う日の検査で上記基準に2回該当した場合、または1回の確認でも糖尿病の特徴的な症状がある場合、HbA1c(ヘモグロビンA1c)が6.5%以上の場合、若しくは糖尿病網膜症がある場合、糖尿病と判断することができる。なお本発明が対象とする糖尿病患者には、その前段階、すなわち境界域にある患者(境界型糖尿病患者)も含まれる。なお、空腹時血糖値が110〜125mg/dlの間であるか、またはブドウ糖負荷試験2時間値が140〜199mg/dlの間にある場合に、境界型糖尿病と判断することができる。
また糖尿病合併症とは糖尿病(好ましくはインスリン非依存性のII型糖尿病)を直接または間接的な要因として併発する全身性もしくは局所性の疾患であり、具体的には、糖尿病アシドーシス、糖尿病性黄色腫、糖尿病性筋萎縮症、糖尿病性ケトーシス、糖尿病性昏睡、糖尿病性胃障害、糖尿性壊疽、糖尿病性潰瘍、糖尿病性合併症、糖尿病性下痢症、糖尿病性細小血管症、糖尿病性子宮体硬化症、糖尿病性心筋症、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性腎症、糖尿病性水疱、糖尿病性白内障、糖尿病性皮膚障害、糖尿病性浮腫性硬化症、糖尿病性網膜症、糖尿病性リポイド類壊死症、糖尿病性血流障害等を例示することができる。
以下、本発明を調製例及び実験例によって更に詳細に説明する。但し、これらの実験例は本発明を何ら限定するものではない。なお、下記の実験例において、特に言及しない限り、%は重量%を意味するものとする。
調製例1 グロビン蛋白分解物の製造
以下にウシ赤血球を用いたグロビン蛋白分解物の製法の詳細を示す。
新鮮なウシ赤血球100kg に水250リットルを加えて充分溶血させ、リン酸を加えてpHを2.8に調整した後、アスペルギルス・ニガーの酸性プロテアーゼ2.6×107単位を添加し、50℃で3時間反応させた。
反応後、反応液を80℃で30分間加熱して反応を停止させた後、水酸化カルシウムの水懸濁液を加えてpHを6.5に調整し、硅藻土10kgを加え、フィルタープレスを用いて濾過し、得られた濾液を噴霧乾燥して、グロビン蛋白分解物の粉末23kgを得た。得られたグロビン蛋白分解物の分子量分布を、下記条件下で、ゲル濾過クロマトグラフィーを用いて調べた。
<ゲル濾過クロマトグラフィー>
装置 :高速液体クロマトグラフ ( (株) 島津製作所、LC-6A型)
カラム :PolyHYDROXYETHYL A, 5μm, 9.4×200mm, PolyC Inc製
溶出溶媒:50mMギ酸
流速 :0.5ml/分
検出 :紫外吸収 221nm。
上記ゲル濾過クロマトグラフィー法によるグロビン蛋白分解物のゲル濾過クロマトグラムを図1に示す。
調製例2 血圧降下ペプチドの分画および精製
本発明のペプチド(VVYP)は、調製例1で調製したグロビン蛋白分解物を、(1)イオン交換、 (2)限外濾過、(3)酸性下における逆相カラムクロマトグラフィーによる分離、及び (4)中性下における逆相クロマトグラフィーによる分離という手順で処理することにより得られた。
(1)イオン交換
調製例1で得られたグロビン蛋白分解物13.7gの10%水溶液を、弱酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライトIRC50、H+ 型、 オルガノ (株) )に加え、1時間撹拌して吸着させた後、未吸着画分を得た。
(2) 限外濾過
上記イオン交換処理により得られた未吸着画分について、撹拌型限外濾過装置 (アドバンテック (株) 製、UHP 90K) 及び限外濾過膜 (アドバンテック (株) 製、UIIH-1、分画分子量1000) を用いて限外濾過を行い、限外濾過膜上に残った液(残液)を採取した。得られた画分は、酸加水分解した後ニンヒドリン法を行うことにより定量した。酸加水分解は、蛋白量3〜5mgに対して、最終濃度6Nの塩酸1mlを試験管に入れ、常圧下にて封管し、110℃で22時間加熱することにより行った。また、ニンヒドリン法は次のようにして行った。すなわち、加水分解後の検体を水酸化ナトリウムによりpH5.0に調整し、0.2Mクエン酸緩衝液 (pH5.0)を含有したニンヒドリン試薬を用いて 100℃で15分間反応させ、570nmにおける吸光度を測定した。別に、標準溶液としてL-ロイシン水溶液 (75, 150, 225,300nmol/ml) についてニンヒドリン反応を行い、得られた吸光度から検量線を求め、検体のL-ロイシン相当アミノ基量を算出した。定量した結果を表2に示す。
(3) 逆相 (酸性) クロマトグラフィー
上記限外濾過で得られた残液について、以下の条件で逆相 (酸性) クロマトグラフィーを行った。
<逆相 (酸性) クロマトグラフィー>
装置:高速液体クロマトグラフ ( (株) 島津製作所、LC-10A 型)
カラム:SuperPac Pep-S, 15μm, 22.5×250mm, ファルマシア (株) 製
溶出溶媒:0.1容量%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル水溶液
グラジエント:アセトニトリル濃度2容量%から35容量%まで直線的濃度勾配
アセトニトリル濃度変化1容量%/分
流速 :5ml/分
温度 :40℃
検出 :紫外吸収 220nm
分取時間:53.8〜54.5分(画分A)。
上記逆相 (酸性) クロマトグラフィーによるクロマトグラムを図2に示す。
得られた画分は、酸加水分解した後、アミノ酸分析を行うことにより定量した。酸加水分解は、蛋白量3〜5mgに対して、塩酸(最終濃度6N)1mlを試験管に入れ、減圧下にて封管し、110℃で22時間加熱することにより行った。また、アミノ酸分析は以下の条件で次のようにして行った。
<アミノ酸分析>
装置 :高速液体クロマトグラフ ( (株) 島津製作所、LC-6A型)
カラム :Shim-pack ISC-07/S1504 Na、7μm, 4.0×150mm, (株) 島津製作所製
溶出溶媒:(株)島津製作所製アミノ酸移動相キット (Na型)
流速 :0.3 ml/分
温度 :55℃
反応液1:(株)島津製作所製分析キットOPA 試薬
検出 :蛍光吸収 (Ex 348nm, Em 450nm)。
酸加水分解した溶液をロータリーエバポレーターにより濃縮乾固し、さらに減圧下で12時間以上乾燥させ、完全に塩酸を除去した。次に、各アミノ酸含量が100 nmol/ml程度となるように0.2 Mクエン酸緩衝液 (pH2.2) に溶解し、0.45μmフィルター濾液を10μl 注入した。一方、標準溶液としては、アミノ酸混合標準液18成分 H型 (和光純薬工業 (株) ) を0.2Mクエン酸緩衝液 (pH2.2) により25倍希釈後、10μl 注入した (各アミノ酸1nmol/10μl ) 。アミノ酸のピーク面積算出をクロマトパックC-R4A( (株) 島津製作所製) により解析し、標準溶液とのピーク面積比によりアミノ酸量を算出した。
(4) 逆相 (中性) クロマトグラフィー
上記逆相 (酸性) クロマトグラフィーで溶出し、分取した画分について、さらに以下の条件で逆相 (中性) クロマトグラフィーを行った。
<逆相 (中性) クロマトグラフィー>
装置 :高速液体クロマトグラフ ( (株) 島津製作所、LC-10A型)
カラム :SuperPac Pep-S, 15μm, 22.5×250mm(ファルマシア (株) 製)
溶出溶媒:20mM酢酸アンモニウム緩衝液 (pH6.5)含有アセトニトリル水溶液
グラジエント:アセトニトリル濃度0容量%〜25容量%まで直線的濃度勾配
アセトニトリル濃度変化 0.5容量%/分
流速 :5ml/分
温度 :40℃
検出 :紫外吸収 220nm
分取時間:45.8分〜51.0分 (画分B)。
上記逆相 (中性) クロマトグラフィーによるクロマトグラムを図3に示す。
得られた画分は、上記(3)と同様にして定量するとともに、さらに同定を行った。アミノ酸組成は、得られたアミノ酸含量の合計に対する各アミノ酸量の比率により算出した。その結果、画分BはVVYP(Val-Val-Tyr-Pro)であることが分かった。これらをヘモグロビンのアミノ酸配列と照合したところ、いずれの配列も存在することが確認された。定量した結果を表2に示す。
Figure 2016026194
調製例3 血圧降下ペプチドの分画および精製
調製例1で調製したグロビン蛋白分解物100gを含む10%水溶液を、逆相樹脂(YMC ODS AQ120 S50)を充填したオープンカラム(φ100mm×400mm)に吸着させ、溶出液として含水エタノールを用い、そのエタノール濃度を5〜15容量%の範囲で5容量%刻みでステップワイズにより上昇させることにより溶出させた。次いで、エタノール5容量%溶出画分および15容量%溶出画分をそれぞれ下記条件で逆相(酸性)クロマトグラフィーに供した。
<逆相(酸性)クロマトグラフィー>
装置:高速液体クロマトグラフ(Waters Alliance 2695-2996 (Waters製))
カラム:Nucleosil 5C18 120Åφ4.0×250mm (ケムコ(株)製)
溶出溶媒:0.1容量%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル水溶液
グラジエント:0分-5分:アセトニトリル濃度5容量%、
5分-30分:アセトニトリル濃度5-30容量%まで直線的濃度勾配
(アセトニトリル濃度変化1容量%/分)
流速:0.8 mL/分
温度:40℃
検出:紫外吸収 210nm
注入量:20μL。
エタノール5容量%溶出画分および15容量%溶出画分の逆相クロマトグラムをそれぞれ図4および図5に示す。
各クロマトグラムで得られた各ピークを分画し、調製例2に記載する方法に従って、酸加水分解した後にアミノ酸分析をしたところ、5容量%溶出画分の逆相クロマトグラム(図4)において保持時間12.55分の溶出ピークは、アミノ酸配列Phe-Glu-Ser(配列番号6)からなるペプチド(ペプチド(FES))に相当するピークであり、また15容量%溶出画分の逆相クロマトグラム(図5)において保持時間18.16分および19.53分の溶出ピークは、それぞれアミノ酸配列Ala-Ala-Trp-Gly-Lysからなるペプチド(ペプチド(AAWGK))及びTrp-Gly-Lys-Val-Asnからなるペプチド(ペプチド(WGKVN))に相当するピークであることが判明した。
実験例1
自然発症高血圧ラット(SHR/Izm、雄性、9週齢、体重266g、日本エスエルシー株式会社)(6匹)に、調製例2で調製したペプチド(VVYP)を、10mg/kgの投与量で単回経口投与した。投与開始から2時間目及び6時間目に、非加温型非観血式血圧計(室町機械、MK-2000)を用いて無麻酔下でTail-cuff法により収縮期血圧を測定した(―○―)。対照群としてSHRラット(6匹)に溶媒(蒸留水)を同様に単回経口投与し、同様にして収縮期血圧を測定した(―●―)。結果を図6に示す。図6からわかるように、本発明のペプチド(VVYP)には血圧下降作用があることが確認された。
実験例2
自然発症高血圧ラット(SHR/Izm、雄性、14週齢、投与開始時体重範囲309g〜359g、日本エスエルシー株式会社)(8匹)に、調製例1で調製したペプチド(VVYP)を含有するグロビン蛋白分解物を、1g/kgの投与量で10週間経口投与した。投与開始から2週間おきに、非加温型非観血式血圧計(室町機械、MK-2000)を用いて無麻酔下でTail-cuff法により収縮期血圧を測定した(―○―)。対照群としてSHRラット(8匹)に溶媒(蒸留水)を同様に10週間経口投与し、同様にして収縮期血圧を測定した(―●―)。結果を図7に示す。
図7が示すように、本発明のペプチド(VVYP)を含むグロビン蛋白分解物には、血圧上昇を抑制する作用があることがわかる。
実験例3
軽症高血圧の患者(収縮期血圧:140〜159mmHgまたは拡張期血圧:90〜99 mmHg)89名をランダムに2群(44名と45名)に分け、実験群(45名)には調製例1で調製したペプチド(VVYP)を含有するグロビン蛋白分解物500mgを、1日3回、10週間にわたって経口投与した。一方、対照群(44名)の患者には同量の乳糖を投与した。投与開始から3週目、6週目、及び10週目に血圧(収縮期血圧、拡張期血圧)を測定し、血圧の変化を評価した。
結果を図8に示す。図8に示すように、本発明のグロビン蛋白分解物の経口投与により、収縮期血圧は低下傾向を示し、また拡張期血圧は投与から6週間目以後に有意差をもって低下した(―○−)。なお、投与から10週目における対照群(―●―)との差異は、収縮期血圧で約5mmHg、拡張期血圧で約8mmHgであった。以上の結果から、ペプチド(VVYP)を含むグロビン蛋白分解物には、ヒトに対して血圧下降作用があることがわかる。
実験例4
調製例3で、グロビン蛋白分解物から単離同定したペプチドのアミノ酸配列をもとに、下記のペプチドを常法に従って合成した。ちなみに、(3)のペプチド(WGKV)および(4)のぺプチド(WGK)は、(2)のペプチド(WGKVN)のアミノ酸配列からC末端のアミノ酸を1つずつ削除したペプチドに相当する。
(2) Trp-Gly-Lys-Val-Asn(配列番号2)
(3) Trp-Gly-Lys-Val(配列番号3)
(4) Trp-Gly-Lys(配列番号4)
(5) Ala-Ala-Trp-Gly-Lys(配列番号5)
(6) Phe-Glu-Ser(配列番号6)。
自然発症高血圧ラット(SHR/Izm、雄性、12週齢、体重285g、日本エスエルシー株式会社)に、上記で調製した各合成ペプチド((2)〜(6))を、50mg/kgの投与量で単回経口投与した。投与開始から2時間目、4時間目及び6時間目に、非加温型非観血式血圧計(室町機械、MK-2000)を用いて無麻酔下でTail-cuff法により収縮期血圧を測定した。対照群として自然発症高血圧ラットに、溶媒(蒸留水)を同様に単回経口投与し、同様にして収縮期血圧を測定した。結果を表3に示す。表3からわかるように、上記ペプチドにはいずれも血圧下降作用があることが判明した。
Figure 2016026194
実験例5 安全性試験
雌雄のICR系マウスに、調製例2で調製したペプチド(VVYP)を10g/kg体重以上(投与可能最大量)経口投与したが、死亡例はなかった。このことから、当該ペプチドの安全性が確認された。
配列番号1〜6は、グロビン蛋白の加水分解物(グロビン蛋白分解物)に含まれるペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号7は、卵白の酵素加水分解物に含まれるペプチドのアミノ酸配列を示す。

Claims (3)

  1. 下記(2)〜(4)及び(6)に示すアミノ酸配列からなるペプチドよりなる群から選択される少なくとも1種のペプチドを含有するグロビン蛋白分解物を有効成分とする、血圧降下用経口組成物:
    (2) Trp-Gly-Lys-Val-Asn(配列番号2)
    (3) Trp-Gly-Lys-Val(配列番号3)
    (4) Trp-Gly-Lys(配列番号4)
    (6) Phe-Glu-Ser(配列番号6)。
  2. 軽症高血圧患者に経口投与されることを特徴とする請求項1に記載する血圧降下用経口組成物。
  3. 経口投与経路により、成人一日あたり、(2)〜(4)及び(6)のペプチドの少なくとも1種を含有するグロビン蛋白分解物を0.1g〜5gの割合で、毎日投与されることを特徴とする、請求項1または2に記載する血圧降下用経口組成物。
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