JP2022177648A - 血糖降下組成物、及びそれを含有する血糖降下薬剤 - Google Patents

血糖降下組成物、及びそれを含有する血糖降下薬剤 Download PDF

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Abstract

【課題】有効成分を比較的大量に入手可能で、糖尿病治療に有用な機能性として耐糖能・インスリン感受性を亢進させる、安全で経口投与又は静脈投与可能な血糖降下組成物、及びそれを含有する血糖降下薬剤を提供する。【解決手段】血糖降下組成物は、ヒスチジルスレオニン及びスレオニルヒスチジンから選ばれる少なくとも何れかのジペプチドと、前記ジペプチドのアルキルエステル、前記ジペプチドのアシルアミド、及びそれらの少なくとも何れかの薬学的に許容される塩から選ばれる少なくとも何れかのジペプチド類縁体との少なくとも何れかを、血糖降下有効成分として含有するというものである。血糖降下薬剤は、前記の血糖降下組成物を含有するというものである。【選択図】なし

Description

本発明は、血糖値を低下させて糖尿病の治療又は予防に用いることができる血糖降下組成物、及びそれを含有する血糖降下薬剤に関するものである。
食事により摂取されたタンパク質が耐糖能やインスリン感受性に影響を与えることは、非特許文献1のように、従来から広く知られている。実際に、非特許文献1及び2のように、糖尿病や非アルコール性脂肪性肝疾患など、インスリン抵抗性により発症する疾病の食餌療法として、高タンパク質食の有用性が期待されている。このような食事による摂取タンパク質の作用は、非特許文献3及び4のように、摂取タンパク質の種類によって異なる可能性が指摘されている。
しかし、これらの何れの非特許文献にも、食事による摂取タンパク質が耐糖能やインスリン感受性に作用するメカニズムについて、明らかにされていない。
ところで、食生活で摂取されたタンパク質は、その約90%がアミノ酸として吸収され、残余の約10%がジペプチドやトリペプチドとして吸収されることが、非特許文献5のように、知られている。このようなジペプチドは、タンパク質を構成するアミノ酸の種類からランダムなアミノ酸同士の組み合わせ数を求めると、計算上、約330種にも達する。
本発明者らは、タンパク質を摂取した後のアミノ酸やジペプチドやトリペプチドの代謝変化や生体内薬効、特にそれらによる糖代謝調節作用のメカニズムの解明を検討してきた。その解明の過程において、肝臓での脂肪肝の原因となり得る脂肪合成に対する作用を検討したところ、本発明者らは、特許文献1及び2のように、肝臓内でde novo合成される脂肪酸を合成する酵素である脂肪合成酵素のmRNA(Fasn)の発現を抑制することにより脂肪合成を抑制すると推定される、ジペプチドやトリペプチドを有効成分として含有する肝臓脂肪合成抑制用食品組成物を見出している。
また、前記の解明の過程において、本発明者らは、非特許文献6のように、ヒスチジンやヒスチジン含有ジペプチドであるカルノシンが中枢神経ヒスタミン作用を介して、インスリン感受性を亢進させるという知見を見出している。このカルノシンはβ-アラニルヒスチジンであり、鶏胸肉などには多く含まれているが、一般的な食事中、タンパク質での含有量は極めて少ない。
我が国の人口の1/4が、2型糖尿病患者、その予備軍であると言われている。本発明者らは、ジペプチドやトリペプチドの代謝変化や生体内薬効やそのメカニズムの研究を通じ、より一般的で有用なヒスチジン含有ジペプチドにより、2型糖尿病の治療や予防に有用な機能性の化合物、及びそれを含有する組成物の探索に取り組んだ。
Am. J. Clin. Nutr., Vol.78, p.734-741, doi:10.1093/ajcn/78.4.734 (2003). Diabetologia, Vol.62, p.2066-2078, doi:10.1007/s00125-019-4956-4 (2019). Annu. Rev. Nutr., Vol.27, p.293-310, doi:10.1146/annurev.nutr.25.050304.092545 (2007). Gut, Vol.68, p.1088-1098, doi:10.1136/gutjnl-2017-315940 (2019) Best Pract. Res. Clin. Gastroenterol, Vol.30, p.145-159, doi:10.1016/j.bpg.2016.02.007 (2016) Diabetes, Vol.62, p.2266-2277, doi:10.2337/db12-1701 (2013).
特開2020-130121号公報 特開2020-130120号公報
本発明者らは、ジペプチドの代謝変化や生体内薬効やそのメカニズムの研究により、糖尿病治療、特に2型糖尿病治療に有用な特定のジペプチドを見出し、本発明を完成させた。
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、特定のヒスチジン含有ジペプチドとしてヒスチジルスレオニンやスレオニルヒスチジンを含有することにより、有効成分を比較的大量に入手可能で、糖尿病治療に有用な機能性として耐糖能・インスリン感受性を亢進させる、安全で経口投与又は静脈投与可能な血糖降下組成物、及びそれを含有する血糖降下薬剤を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するためになされた本発明の血糖降下組成物は、ヒスチジルスレオニン(His-Thr。以下、HTと略記することもある)及びスレオニルヒスチジン(Thr-His。以下、THと略記することもある)から選ばれる少なくとも何れかのジペプチドと、前記ジペプチドのアルキルエステル、前記ジペプチドのアシルアミド、及びそれらの少なくとも何れかの薬学的に許容される塩から選ばれる少なくとも何れかのジペプチド類縁体との少なくとも何れかを、血糖降下有効成分として含有することを特徴とする。
この血糖降下組成物は、インスリン非依存的に血糖値を降下するというものである。
この血糖降下組成物は、食物のタンパク質の分解物として、前記ジペプチドを含有するというものであってもよい。
前記の目的を達成するためになされた本発明の血糖降下薬剤は、前記血糖降下組成物を含有するというものである。
この血糖降下薬剤は、例えば連続的又は間欠的な経口投与又は静脈投与により投与するためのものである。
本発明の血糖降下組成物及びそれを含有する血糖降下薬剤は、特定のヒスチジン含有ジペプチドとして比較的大量に入手可能なヒスチジルスレオニンやスレオニルヒスチジンを有効成分として含有することにより、糖尿病治療に有用な機能性として、インスリン非依存的に速やかに血糖を有意に低下させると共に、耐糖能・インスリン感受性を亢進させることができる。
食経験のあるタンパク質含有食材・食物や料理中のタンパク質が消化されて必須アミノ酸やジペプチドやトリぺプチドとなって安全に吸収・代謝・分散・排泄されることが分かっている。これら血糖降下組成物及びそれを含有する血糖降下薬剤は、食材由来の有効成分としてヒスチジルスレオニンやスレオニルヒスチジンを含有しているから、それらの有効成分が極めて安全で、短期間又は長期間、連続して又は間欠的に経口投与又は静脈投与が可能である。
本発明を適用する血糖降下組成物を含有する血糖降下薬剤と、本発明を適用外の薬剤とについて、投与後の血糖値と経過時間との相関関係、及び有意差を示すグラフである。 本発明を適用する血糖降下組成物を含有する血糖降下薬剤と、本発明を適用外の薬剤とについて、投与後の血中のインスリン濃度と経過時間との相関関係、及び有意差を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
本発明の血糖降下組成物の好ましい一態様は、ヒスチジルスレオニン及びスレオニルヒスチジンから選ばれる少なくとも何れかのジペプチドを血糖降下有効成分として含有している。
ヒスチジルスレオニンやスレオニルヒスチジンは、血糖値が下がって、インスリン値が下がるという作用を示す有効成分である。
インスリンは、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞で産生されるホルモンであって、51のアミノ酸配列からなるペプチドホルモンであり、血糖を降下させる働きを有している。糖尿病の中でも、1型糖尿病では膵臓からインスリンが分泌されなくなるため、また2型糖尿病では、筋肉や肝臓でインスリンが働き難くなったりインスリン分泌が少なくなったりするため、何れの場合にもインスリン注射が必要となる。そのため、これら糖尿病患者は、インスリン分泌が低いと血糖値が上がるという傾向を示すため、定期的にインスリン製剤を注射して、インスリンによって血糖値を降下させる。
通常は、生体で血糖値が下がるとインスリン分泌が減少する。
一方、この血糖降下組成物中の有効成分であるヒスチジルスレオニン及びスレオニルヒスチジンは、血糖値を低下させているが、インスリンの血中濃度も低下している。従って、血糖値を下げるのにインスリン分泌が不要なのであるから、インスリン製剤によるインスリンの作用によって、又はインスリン様の作用によって血糖値を低下させているのではないことが明らかである。
このヒスチジルスレオニン及びスレオニルヒスチジンが、インスリン非依存的に血糖値を降下させるという作用メカニズムの詳細は必ずしも明らかではないが、インスリン感受性が亢進し、インスリン製剤と全く異なる作用メカニズムによって、血糖値を低下させていると推察される。
このヒスチジルスレオニン及びスレオニルヒスチジンは、何れか一方を含有するものであることが好ましいが、両方を含有するものであってもよい。また、化学合成による単一成分のみからなっていてもよく、タンパク質の酸加水分解・アルカリ加水分解又はペプチダーゼなどの酵素分解による部分加水分解物からの単離・精製による単一成分のみからなっていてもよく、タンパク質の部分加水分解物から得られる非生成物ないし粗精製物である複成分からなっていてもよい。
このヒスチジルスレオニン及びスレオニルヒスチジンは、単一又は両方の遊離のジペプチドであってもよいが、それらの少なくとも何れかのカルボキシル基が炭素数1~20の直鎖状・分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基でアルキル化されたアルキルエステル、若しくはそれらの少なくとも何れかのアミノ基が炭素数1~20の直鎖状・分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアシル基でアミド化されたアミドのような等価体であってもよく、薬学的に許容される塩、例えばアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩であってもよく、塩酸塩・硫酸塩・硝酸塩・酢酸塩・トリフルオロ酢酸塩、クエン酸塩・酒石酸塩・メタンスルホン酸塩・トルエンスルホン酸塩等の有機酸塩、アンモニウム塩・アルキルアンモニウム塩等のアミン塩であってもよい。
このヒスチジルスレオニン及びスレオニルヒスチジンのアルキルエステルやアシルアミドのような等価体、又は塩であっても、遊離のヒスチジルスレオニン及びスレオニルヒスチジンと同様な薬効を示す。
このヒスチジルスレオニン及びスレオニルヒスチジンは、自然界に存在するものであり、また、通常の食生活でタンパク質が消化されてジペプチドとして体内に取り込まれるものの一種であるから、食経験があるものであって、消化器・血中で存在していても、安全性が高いことが既に分かっているものである。このようなヒスチジルスレオニン及びスレオニルヒスチジン、若しくはそれらのアルキルエステルやアシルアミドのような等価体、又は塩は、生体で、吸収・代謝・分布・排泄の薬物動態の過程で、ペプチダーゼのような酵素でアミノ酸、即ちヒスチジンやスレオニンに加水分解されるが、何れも必須アミノ酸であって生体内での安全性が確認されているものである。
この血糖降下組成物は、ジペプチド又はその塩を純水・イオン交換水・生理食塩水・リンゲル液に溶解した水溶液又は懸濁した懸濁液であってもよいが、水溶液であることが好ましい。
本発明の血糖降下薬剤は、生体特にヒト、とりわけ糖尿病患者に治療のため投与されるもので、水溶液又は懸濁液からなる血糖降下組成物そのものであってもよいが、さらに安定剤、保存剤、pH調整剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料防腐剤、媒質、生理食塩水、別な薬効を有する薬剤が添加剤として含まれていてもよい。
この血糖降下薬剤は、水溶液又は懸濁液からなる液状製剤であってもよく、固形製剤であってもよい。必要に応じ、非毒性で不活性の薬学的に許容しうる賦形剤、例えば固体状、半固体状もしくは液状の希釈剤、分散剤、充填剤及び担体と混合することにより、製剤化されていてもよい。
この血糖降下薬剤の剤形は、例えばエリキシル剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、軟膏、懸濁剤、液剤、腸溶剤、乳剤、硬膏剤、坐剤、散剤、錠剤、シロップ剤、注射剤、トローチ剤、軟膏剤、ハップ剤、リニメント剤、リモナーデ剤、ローション剤が挙げられる。液状媒体に溶解させ又は懸濁させたものであってもよく、固体状媒体に分散させたものであってもよい。
この血糖降下薬剤は、経口で投与してもよく、静脈注射・点滴で投与してもよく、皮膚に塗布乃至貼付して経皮吸収させてもよい。
この血糖降下組成物又は血糖降下薬剤は、ヒスチジルスレオニン及びスレオニルヒスチジン、それらのアルキルエステル又はアシルアミドのような等価体、又はそれらの塩を、0.001~99質量%、好ましくは40~99.9質量%、より好ましくは70~99.9質量%、一層好ましくは90~99.9質量%にて、例えば0.1nmol/個体/時間~1000μmol/個体/時間、好ましくは0.5nmol/個体/時間~100μmol/個体/時間、より好ましくは12.5μmol/個体/時間で投与できる濃度で、含んでいる。この血糖降下組成物又は血糖降下薬剤は、ヒスチジルスレオニン及びスレオニルヒスチジン、それらのアルキルエステル又はアシルアミド、若しくはそれらの塩を、患者の体重に対し、0.001~5000mg/kg、好ましくは1000~5000mg/kg、より好ましくは3000~5000mg/kg、含んでいる。
この血糖降下薬剤は、ヒスチジルスレオニン及びスレオニルヒスチジン、それらのアルキルエステル又はアシルアミド、若しくはそれらの塩が、生体で、吸収・代謝・分布・排泄の過程で、ヒスチジンやスレオニンに加水分解されるから、毒性や副作用を示す恐れが無く、安全性が高く、医薬品のほか機能性食品やサプリメントなど、糖尿病の治療や予防のために、用いてもよい。
この血糖降下薬剤の投与量、用量、摂取量は、ヒスチジルスレオニン及びスレオニルヒスチジンである有効成分の有効性、投与の形態・経路、前立腺癌の進行ステージ、患者の体型・体重・年齢、併用する他の疾患の治療薬の種類や量に応じ、適宜選択される。その投与は、留置針を用いてシリンジポンプから1分間~2日間連続投与又は6~24時間ずつ一日1回又は複数回を1~7日間欠投与してもよく、1日1~5回毎日定時(例えば食前・食中・食後)に経口投与又は静脈投与してもよく、1日~14日おきに又は2~6週間おきに間欠的に経口投与又は静脈投与してもよい。
糖尿病患者の医療現場では、多くの糖尿病治療薬がインスリンの分泌や作用を介して血糖を降下させるものである。インスリン非依存的に血糖を降下させる薬剤として、尿細管でブドウ糖が血液に戻らないようにしてブドウ糖を尿に排泄させる結果、血糖を降下させるSGLT2阻害薬が知られている。また、2型糖尿病の患者に専ら用いられ、インスリン抵抗性を改善し、肝臓での糖新生抑制・骨格筋細胞への糖の取り込み促進・腸からの糖の吸収を抑制によって、血糖を降下させるメトホルミンやビグアナイドも知られている。さらにGLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病の患者に専ら用いられ、膵β細胞に作用して血糖依存的にインスリン分泌を促進するGLP-1(Glucagon-like peptide-1)の作用に基づく治療薬であり、血糖改善作用に加えて減量効果を有するが、経口だと配列が解けホルモンとしての機能を発現しないものである。
一方、この血糖降下組成物や血糖降下薬剤のヒスチジルスレオニンやスレオニルヒスチジンは、これらの作用メカニズムと異なる作用機序により薬効を奏するようである。
この血糖降下薬剤の効能は、以下のように説明される。
インスリン感受性が亢進するのは、経口投与または静脈内投与によって、in vivoでインスリン非依存的に、血糖値を降下させることができるからであると推察される。
なお、この血糖降下薬剤は、脂肪肝の合成抑制作用を奏し得るものであるが、それ以上に血糖降下作用が顕著である。
この血糖降下薬剤は、糖尿病患者においてインスリンが分泌されないことによる血糖上昇に対する血糖降下薬剤として、使用できる。
この血糖降下組成物又は血糖降下薬剤は、以下のようにして調製される。
先ず、ヒスチジルスレオニンやスレオニルヒスチジンであるジペプチドは、一般的なペプチドの固相合成法(SPPS:solid phase peptide synthesis)によって、合成される。例えば通常、Fmoc(9-fluorenylmethyloxycarbonyl)化学修飾法が用いられる。具体的には、ラセミ化を最小限に抑えるため、C末端側からN末端側に伸長していく方法により、合成される。より具体的には、固相合成用の樹脂を、DMF等を用いて膨潤させ、一つ目のアミノ酸を樹脂に導入し、キャッピングして、Fmocを定量し、ピぺリジンでFmoc基を脱保護し、2つ目のアミノ酸を縮合し、脱樹脂してから、精製するというものである。tert-ブトキシカルボニル基(Boc基)を用いてもよい。なお、一般的なペプチドの液相合成法により、Boc基やFmoc基で保護したアミノ酸原料を用い、ジペプチドを合成してもよい。
得られたヒスチジルスレオニン又はスレオニルヒスチジンを、必要に応じて添加剤と共に水に所定の濃度に溶解することにより、血糖降下組成物又は血糖降下薬剤を調製することができる。
血糖降下薬剤は、静脈注射によって又は経口投与によって、投与対象(例えば、2型糖尿病患者)に投与される。投与直後から、血中で有意に血糖が低下し、またインスリンも低下する。
(実施例1:HTの合成)
ペプチド合成は、Fmoc固相合成法によって行った。ペプチド合成後、N末端に付いている保護基のFmoc基、及び側鎖の保護基を、順次脱保護し、ペプチドをレジンから切断した。逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC、島津製作所)により、精製することにより収率30%で、ヒスチジルスレオニン(HT)をトリフルオロ酢酸塩(TFA塩)として、白色凍結乾燥粉末で得た。
得られたヒスチジルスレオニン(HT)の理化学評価を行った。
・高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
カラム(Inertsil ODA-3; 4.6mmφ×250mm)を用いHPLC機器としてSS-CM-0310によって高速液体クロマトグラフィー分析を行った。溶出液は、PumpA液として0.065v/v%トリフルオロ酢酸の水溶液及びPumpB液として0.05v/v%トリフルオロ酢酸の水溶液とし、合計流速1ml/minとし、溶出0分でPumpA液のみ、5分でPumpA液のみ、20分でPumpA液:PumpB液70:30、25分でPumpA液:PumpB液35:65、25.01分でPumpA液:PumpB液5:95、溶出27分~35分(終了)でPumpA液のみとした。検出器の波長は220nmとしたところ、クロマトグラムから純度96.544%であった。
・エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)
質量分析計GK11010007を用い、質量分析を行ったところ、[M+H]+として実測値257.1(実測分子量M:256.1、理論値256.26)であった。
理化学分析の結果は、ヒスチジルスレオニン(HT)の化学構造を支持する。
(実施例2:THの合成)
このペプチド合成は、Fmoc固相合成法によって行った。ペプチド合成後、N末端に付いている(保護基の)Fmoc基、及び側鎖の保護基を、順次脱保護し、ペプチドをレジンから切断した。逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC、島津製作所製)により、精製することにより収率30%で、スレオニルヒスチジン(TH)をTFA塩として、白色凍結乾燥粉末で得た。
・高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
カラム(Inertsil ODA-3; 4.6mmφ×250mm)を用いHPLC機器としてSS-CM-0310によって高速液体クロマトグラフィー分析を行った。溶出液は、PumpA液として0.065v/v%トリフルオロ酢酸の水溶液及びPumpB液として0.05v/v%トリフルオロ酢酸の水溶液とし、合計流速1ml/minとし、溶出0分でPumpA液のみ、5分でPumpA液のみ、20分でPumpA液:PumpB液70:30、25分でPumpA液:PumpB液35:65、25.01分でPumpA液:PumpB液5:95、溶出27分~35分(終了)でPumpA液のみとした。検出器の波長は220nmとしたところ、クロマトグラムから純度98.287%であった。
・エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)
質量分析計GK11010007を用い、質量分析を行ったところ、[M+H]+として実測値257.1(実測分子量M:256.1、理論値256.26)であった。
理化学分析の結果は、スレオニルヒスチジン(TH)の化学構造を支持する。
(実施例3:HT組成物の調製)
12.5μmol/個体/時間の投与量にするのに必要なHTを量り取り、0.1%BSA含有生理食塩水に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7.2-7.4に調整を行って、ヒスチジルスレオニン(HT)を含有する血糖降下薬剤である血糖降下組成物としてHT組成物を調製した。
(実施例4:TH組成物の調製)
12.5μmol/個体/時間の投与量にするのに必要なTHを量り取り、0.1%BSA含有生理食塩水に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7.2-7.4に調整を行って、スレオニルヒスチジン(TH)を含有する血糖降下薬剤である血糖降下組成物としてTH組成物を調製した。
(実施例5:HT組成物の投与、並びにインスリン値及び血糖値の測定)
C57BL/6Jマウスに対し、頚静脈カニューレを挿入した。カニューレ挿入から5日後に、0.5nmol/個体/時間の投与量で、実施例3で調製したヒスチジルスレオニン(HT)を含有するHT組成物を36時間連続して静脈内投与した。投与開始から、0,1,2,3,4,5,6,9,12,15,18,24,30,36時間に血糖値を測定し、0,1,3,6,12,18,24,30,36時間で尾静脈採血を行った。
・インスリン濃度測定
得られた採取時間毎の各尾静脈採血について、遠心分離により血漿を得た後、レビスインスリン-マウス-Tキット(AKRIN-011T、富士フィルムワコーシバヤギ株式会社製の製品名)を用いてプロトコルに準じて行い、プレートリーダー(Tristar LB941、ベルトールドテクノロジー社の製品名)により血中のインスリン濃度を測定した。その結果を図1に示す。
・血糖値測定
得られた採取時間毎の各尾静脈採血について、尾からの血液を、直接グルテストNeoアルファ(086533034、株式会社三和化学研究所の製品名)のセンサーチップに接触させることにより、により血糖値を測定した。その結果を図2に示す。
(実施例6:HT組成物の調製・投与、並びにインスリン値及び血糖値の測定)
実施例5のHT組成物に代えて、実施例4で調製したTH組成物を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、インスリン濃度測定・血糖値測定を行った。その結果を図1及び2に示す。
(比較例1:H+T混合組成物の調製・投与、並びにインスリン値及び血糖値の測定)
12.5μmol/個体/時間の投与量にするために、25gのマウスに投与する場合、ヒスチジン92.4mgとトレオニン118.5mgとを10mlの0.1%BSA生理食塩水に溶解させ、H+T混合組成物の試験液を得た。実施例5のHT組成物に代えて、H+T混合組成物を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、インスリン濃度測定・血糖値測定を行った。その結果を図1及び2に示す。
(比較例2:コントロール用生理食塩水の調製・投与、並びにインスリン値及び血糖値の測定)
生理食塩水(Saline)を、コントロール用としてそのまま試験液とした。実施例5のHT組成物に代えて、生理食塩水を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、インスリン濃度測定・血糖値測定を行った。その結果を図1及び2に示す。
図1及び2から明らかな通り、C57BL/6Jマウスに対して、HT、TH、H+T、生理食塩水を36時間静脈内投与したところ、投与開始4時間後より、HT群の血糖値は、生理食塩水群またはH+T群と比し、有意に低下し、その後も持続的な低値を示した。36時間の血糖値曲線下面積でもHT群は、他の2群より有意な低値を示した。また、血中インスリン値は、HT群で持続的な低値を示し、投与後12時間・24時間・30時間で、他の2群と比し有意に低下した。36時間の血中インスリン値曲線下面積も、有意な低値を示した。
このことから、ヒスチジルスレオニンやスレオニルヒスチジンは、インスリン非依存的に血糖を降下させ血糖値を低下させると共に、インスリンの血中濃度を低下させることがわかった。
本発明の血糖降下組成物及びそれを含有する血糖降下薬剤は、糖尿病とりわけ2型糖尿病の患者やその予備軍に対して投与しインスリン非依存的に血糖を降下させる治療薬・予防薬・機能性食品や食材、それらの有用組成として、有用である。

Claims (5)

  1. ヒスチジルスレオニン及びスレオニルヒスチジンから選ばれる少なくとも何れかのジペプチドと、前記ジペプチドのアルキルエステル、前記ジペプチドのアシルアミド、及びそれらの少なくとも何れかの薬学的に許容される塩から選ばれる少なくとも何れかのジペプチド類縁体との少なくとも何れかを、血糖降下有効成分として含有することを特徴とする血糖降下組成物。
  2. インスリン非依存的に血糖値を降下することを特徴とする請求項1に記載の血糖降下組成物。
  3. 食物のタンパク質の分解物として、前記ジペプチドを含有することを特徴とする請求項1~2の何れかに記載の血糖降下組成物。
  4. 請求項1~3の何れかに記載の血糖降下組成物を含有することを特徴とする血糖降下薬剤。
  5. 連続的又は間欠的な経口投与又は静脈投与により投与するためのものであることを特徴とする請求項4に記載の血糖降下薬剤。
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