JP2016023269A - 含フッ素樹脂水性分散液の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)親水性部位を有するマクロモノマーに基づく重合単位を必須構成成分とする含フッ素系共重合体が水に分散されている含フッ素樹脂水性分散液を塗料ベースとして含む塗料(特許文献1)。
(2)フルオロオレフィンに基づく重合単位、プロピレンに基づく重合単位、エチレンに基づく重合単位、ブチレンに基づく重合単位を含むフッ素系共重合体が水に分散されている含フッ素樹脂水性分散液を塗料ベースとして含む塗料(特許文献2)。
(3)含フッ素樹脂エマルションとアクリル共重合体の水溶液または分散体からなる塗料(特許文献3)。
(x)非フッ素系アニオン性乳化剤を含む乳化重合によってフッ素樹脂を含む含フッ素樹脂水性分散液を製造する工程。
(y)前記含フッ素樹脂水性分散液を陰イオン交換樹脂に接触させ、接触後の前記含フッ素樹脂水性分散液のpHを8.5以上とする工程。
また、前記含フッ素樹脂水性分散液と前記陰イオン交換樹脂との接触時間は、10〜420分であることが好ましい。
また、前記フッ素樹脂は、下記の単量体(a)に基づく構成単位(A)と、下記の単量体(b)に基づく構成単位(B)とを有する含フッ素共重合体(I)であることが好ましい。
単量体(a):フルオロオレフィン。
単量体(b):架橋性基を有し、フッ素原子を有しない単量体。
「含フッ素樹脂水性分散液」とは、含フッ素樹脂が水性媒体に分散したものを意味する。
「非フッ素系乳化剤」とは、分子内にフッ素原子を有しない乳化剤を意味する。
「構成単位」とは、単量体が重合することによって形成された該単量体に由来する単位を意味する。重合反応によって直接形成された単位であってもよく、重合体を処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
「単量体」とは、ラジカル重合性不飽和基を有する化合物を意味する。
「架橋性基」とは、硬化剤と反応することにより架橋構造を形成可能な基、または架橋性基同士が反応して架橋構造を形成可能な基を意味する。
「マクロモノマー」とは、片末端にラジカル重合性不飽和基を有する低分子量のポリマーまたはオリゴマーを意味する。
「親水性部位」とは、親水性基を有する部位、親水性の結合を有する部位、またはこれらの組み合わせからなる部位を意味する。
「強塩基性陰イオン交換樹脂」とは、第4級アンモニウム塩基を有する陰イオン交換樹脂(IER)を意味する。
「弱塩基性陰イオン交換樹脂」とは、第1級、第2級または第3級アミン塩基を有する陰イオン交換樹脂(IER)を意味する。
「硬化剤」とは、「架橋性基」と反応可能な基を2個以上有し、架橋性基と反応することにより架橋構造を形成可能な化合物を意味する。
本発明の含フッ素樹脂水性分散液の製造方法は、下記の工程(x)および工程(y)を有する。
(x)非フッ素系アニオン性乳化剤を含む乳化重合によってフッ素樹脂を含む含フッ素樹脂水性分散液を製造する工程。
(y)前記含フッ素樹脂水性分散液を陰イオン交換樹脂(以下、IERと記す。)に接触させ、接触後の前記含フッ素樹脂水性分散液のpHを8.5以上とする工程。
工程(x)では、非フッ素系アニオン性乳化剤を含む乳化重合を行うことで、フッ素樹脂を含む含フッ素樹脂水性分散液を得る。具体的には、水性媒体、非フッ素系アニオン性乳化剤および重合開始剤の存在下で、フッ素樹脂を製造するための単量体を乳化重合させて、フッ素樹脂を含む含フッ素樹脂水性分散液を得る。
工程(x)で製造する含フッ素樹脂水性分散液に含まれるフッ素樹脂としては、後述の含フッ素共重合体(I)、含フッ素単量体に基づく構成単位と必要に応じてオレフィンに基づく構成単位を有し、前記含フッ素単量体が、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびパーフルオロアルキルビニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、含フッ素共重合体(ただし、含フッ素共重合体(I)を除く。)等が挙げられる。
フッ素樹脂としては、耐候性、耐水性、耐薬品性、耐熱性に優れた塗膜を形成できる点から、下記の単量体(a)に基づく構成単位(A)(以下、構成単位(A)と記す。)と、下記の単量体(b)に基づく構成単位(B)(以下、構成単位(B)と記す。)とを有し、必要に応じて下記の単量体(c)に基づく構成単位(C)を有する含フッ素共重合体(I)が好ましい。
単量体(a):フルオロオレフィン。
単量体(b):架橋性基を有し、フッ素原子を有しない単量体。
単量体(c):単量体(a)および単量体(b)以外の単量体。
すなわち、工程(x)では、単量体(a)と単量体(b)とを含み、必要に応じて単量体(c)を含む単量体混合物を乳化重合に用いることが好ましい。
単量体(a)は、フルオロオレフィンである。単量体(a)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
フルオロオレフィンは、オレフィン炭化水素(一般式CnH2n)の水素原子の1個以上がフッ素原子で置換された化合物である。フルオロオレフィンにおいては、フッ素原子で置換されていない水素原子の1個以上が塩素原子で置換されていてもよい。
フルオロオレフィンにおけるフッ素原子の数は、2以上が好ましく、3〜6がより好ましく、3または4がさらに好ましい。フルオロオレフィンにおけるフッ素原子の数が2以上であれば、耐候性に優れた塗膜を形成しやすい。
単量体(b)は、架橋性基を有し、フッ素原子を有しない単量体である。単量体(b)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋性基としては、特に限定されず、たとえば、水酸基、アルコキシシリル基、カルボキシ基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等のラジカル重合性不飽和基が挙げられる。
架橋性基としては、含フッ素樹脂水性分散液の機械的安定性、化学的安定性が良好となり、架橋性も優れることから、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基が好ましく、水酸基が特に好ましい。
単量体(b1):下式(b1)で表される水酸基含有単量体。
単量体(b2):親水性部位を有するマクロモノマー。
X−Y−Z ・・・(b1)
ただし、Xはラジカル重合性不飽和基であり、Yはn−ノニレン基またはシクロヘキサン−1,4−ジメチレン基であり、Zは水酸基である。
(1)CH2=CHOCH2−cycloC6H10−CH2OH
(2)CH2=CHCH2OCH2−cycloC6H10−CH2OH
(3)CH2=CHOC9H18OH
(4)CH2=CHCH2OC9H18OH
単量体(b21):主鎖にポリエーテル鎖またはポリエステル鎖を有し、片末端にラジカル重合性不飽和基を有するマクロモノマー。
単量体(b22):親水性のエチレン性不飽和モノマーがラジカル重合した鎖を有し、片末端にラジカル重合性不飽和基(ビニルオキシ基またはアリルオキシ基)を有するマクロモノマー。
(1)CH2=CHO(CH2)a[O(CH2)b]cOR1
ただし、aは1〜10の整数であり、bは1〜4の整数であり、cは2〜20の整数であり、R1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基(以下、低級アルキル基と記す。)である。
(2)CH2=CHCH2O(CH2)d[O(CH2)e]fOR2
ただし、dは1〜10の整数であり、eは1〜4の整数であり、fは2〜20の整数であり、R2は水素原子または低級アルキル基である。
(3)CH2=CHO(CH2)g(OCH2CH2)h(OCH2CH(CH3))kOR3
ただし、gは1〜10の整数であり、hは2〜20の整数であり、kは0〜20の整数であり、R3は水素原子または低級アルキル基であり、オキシエチレン単位およびオキシプロピレン単位はブロック、ランダムのいずれの型で配列されていてもよい。
(4)CH2=CHCH2O(CH2)m(OCH2CH2)n(OCH2CH(CH3))pOR4
(mは1〜10の整数であり、nは2〜20の整数であり、pは0〜20の整数であり、R4は水素原子または低級アルキル基であり、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位はブロック、ランダムのいずれの型で配列されていてもよい。
(5)CH2=CHO(CH2)qO(CO(CH2)rO)sH(qは1〜10の整数であり、rは1〜10の整数であり、sは1〜30の整数である。
単量体(b21)としては、安定性等の諸性質が良好になる点から、オキシエチレン単位を2個以上有するものが好ましい。なお、オキシアルキレン単位の数が大きすぎると、塗膜の耐水性、耐候性等が低下するおそれがある。
縮合可能な官能基を有する開始剤および連鎖移動剤の存在下に親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーをラジカル重合させることにより、縮合可能な官能基を有する重合体を製造し、縮合可能な官能基にグリシジルビニルエーテル、グリシジルアリルエーテル等を反応させ、末端にラジカル重合性不飽和基を導入する方法(山下ら,Polym.Bull.,5.335(1981))。
単量体(c)は、単量体(a)および単量体(b)以外の単量体である。
単量体(c)としては、特に限定されず、たとえば、オレフィン類(エチレン、プロピレン等)、ビニルエーテル類(エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(ブタン酸ビニルエステル、オクタン酸ビニルエステル等)、アリルエーテル類(エチルアリルエーテル等)、アリルエステル類(エチルアリルエステル等)、芳香族ビニル化合物類(スチレン、ビニルトルエン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(アクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル等)等が挙げられる。
オレフィン類としては、炭素数が2〜10のオレフィン類が好ましい。
ビニルエーテル類、ビニルエステル類、アリルエーテル類、アリルエステル類としては、炭素数が2〜15の直鎖状、分岐状または脂環状のアルキル基を有するものが好ましい。
構成単位(B)のモル数に対する構成単位(A)のモル数の比(A/B)は、0.5〜800が好ましく、1.5〜300がより好ましい。A/Bが前記下限値以上であれば、塗膜の耐候性、耐水性がより良好になる。A/Bが前記上限値以下であれば、分散性がより良好になる。
構成単位(A)と構成単位(B)の総モル数に対する構成単位(C)のモル数の比(C/(A+B))は、0.01〜1が好ましい。
水性媒体としては、水、水と水溶性有機溶媒との混合物等が挙げられる。
水溶性有機溶媒としては、tert−ブタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
水性媒体が水溶性有機溶媒を含む場合、水溶性有機溶媒の含有量は、水の100質量部に対して、1〜40質量部が好ましく、3〜30質量部がより好ましい。
工程(x)の乳化重合においては、モノマーとの相溶性がよく重合効率に優れる点から、乳化剤として非フッ素系アニオン性乳化剤と、必要に応じて非フッ素系ノニオン性乳化剤または非フッ素系カチオン性乳化剤を用いる。
非フッ素系ノニオン性乳化剤としては、アルキルフェノールエチレンオキシド付加物、高級アルコールエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマー等が挙げられる。
非フッ素系カチオン性乳化剤としては、アルキルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
非フッ素系ノニオン性乳化剤を使用する場合、非フッ素系ノニオン性乳化剤の使用量は、含フッ素樹脂水性分散液の総量100質量%に対して、0.01〜10質量%となる量が好ましい。
非フッ素系カチオン性乳化剤を使用する場合、非フッ素系カチオン性乳化剤の使用量は、含フッ素樹脂水性分散液の総量100質量%に対して、0.01〜10質量%となる量が好ましい。
重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤が挙げられる。具体的には、たとえば、過硫酸塩(過硫酸アンモニウム塩等)、レドックス開始剤(過酸化水素と亜硫酸水素ナトリウム等との組み合わせ等)、これらに無機系開始剤(第一鉄塩、硝酸銀等)を共存させた系、二塩基酸過酸化物(ジコハク酸パーオキシド、ジグルタール酸パーオキシド等)、有機系開始剤(アゾビスブチロニトリル等)等が挙げられる。
工程(x)の乳化重合では、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤を用いることにより、フッ素樹脂の重合度(分子量)を調節できる。また、水性媒体中の単量体の濃度の合計が高まる。
連鎖移動剤としては、たとえば、アルキルメルカプタン(tert−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタン等)、アミノエタンチオール、メルカプトエタノール、3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸、3,3’−ジチオ−ジプロピオン酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸n−ブチル、チオグリコール酸メトキシブチル、チオグリコール酸エチル、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、四塩化炭素等が挙げられる。
乳化重合の条件は、特に限定されない。たとえば、重合開始温度は、0〜100℃が好ましく、10〜90℃がより好ましい。また、反応圧力は、0.1〜10MPaが好ましく、0.2〜5MPaがより好ましい。
乳化重合に用いる反応器としては、ステンレス製撹拌機付きオートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製)等が挙げられる。
工程(y)では、工程(x)で得た含フッ素樹脂水性分散液をIERに接触させ、接触後の該含フッ素樹脂水性分散液のpHを8.5以上とする。
接触後のpHは、接触後1時間以内に測定することが好ましく、30分以内に測定することが好ましく、接触直後に測定することがより好ましい。
含フッ素樹脂水性分散液とIERとを接触させる方法としては、たとえば、下記の方法が挙げられる。
・含フッ素樹脂水性分散液にIERを投入し、撹拌する方法(バッチ法)。
・IERを充填した充填塔に、含フッ素樹脂水性分散液を通す方法(連続法)。
IERとしては、強塩基性IER、弱塩基性IERが挙げられる。IERとしては、対イオンの種類がOH−型のものでもよく、Cl−型のものでもよい。
強塩基性IERにおける第4級アンモニウム塩基としては、トリメチルアンモニウム基、ジメチルエタノールアンモニウム基等が挙げられる。強塩基性IERとしては、イオンの漏洩が少なく、化学的安定性に優れる点から、トリメチルアンモニウム基を側鎖に有するスチレン−ジビニルベンゼン架橋樹脂が好ましい。
第1級、第2級または第3級アミン塩基を有する弱塩基性IERとしては、アクリル、スチレンポリアミン、スチレンジメチルアミン等が挙げられる。弱塩基性IERとしては、交換容量が大きく、耐汚染性が良い点から、スチレンポリアミンが好ましい。
基準形にした試料をメスシリンダーで10mLはかり取り、樹脂塔に移し、2N−NaOHの750mLで再生する。次に、脱塩水の1Lで洗浄した後、5%NaCl溶液の250mLを流し、メスフラスコに受け、そこから50mLはかり取りメチルレッド・メチレンブルー混合指示薬を用いて0.1N−HCl溶液で滴定し、次式によりイオン交換容量(meq/mL)を算出し、eq/Lに換算する。
イオン交換容量(meq/mL)=((0.1N−HCl滴定mL)×(HCl力価)×0.1×250/50)/10
基準形にした試料をメスシリンダーで10mL正確にはかり取り、この樹脂を布に包み遠心分離して、付着水分を除いた後、すばやく樹脂の質量を測定する。105℃の恒温乾燥機中で4時間乾燥した後、デシケーター中で30分放冷し、乾燥後の樹脂の質量をはかり水分含有量を計算する。
水分含有量(質量%)=(乾燥前の樹脂の質量(g)−乾燥後の樹脂の質量(g))/乾燥前の樹脂の質量(g)×100
IERの平均粒径は、100〜1600mmが好ましく、300〜1300mmがより好ましく、300〜1000mmが特に好ましい。IERの平均粒径が前記範囲内にあれば、IERの充填塔が閉塞しにくくなる。
陰イオン交換樹脂としては、pHの調整時間、すなわち含フッ素樹脂水性分散液と陰イオン交換樹脂の接触時間が短い点から、商品名「PUROLITE(登録商標)A200MBOH」(ピュロライト社製)、商品名「PUROLITE(登録商標)A300OH」(ピュロライト社製)、商品名「Lewatit(登録商標)MP−800OH」(ランクセス社製)が好ましい。
IERと接触後の含フッ素樹脂水性分散液のpHは、8.5以上であり、9以上が好ましく、9〜13がより好ましく、9〜12がさらに好ましい。IERと接触後の含フッ素樹脂水性分散液のpHが8.5以上であれば、1年程度の長期保存後も含フッ素樹脂水性分散液のpHが低下することを抑制できるため、均一性が高い塗膜を形成でき、また基材に錆が発生することを抑制できる。含フッ素樹脂水性分散液のpHが前記上限値以下であれば、長期保存後のpHが10以下となるため、含フッ素樹脂水性分散液の安定性に優れ、また耐水性に優れた塗膜を形成しやすい。
本発明の製造方法では、得られる含フッ素樹脂水性分散液に、フッ素樹脂以外の他の重合体、着色剤、硬化剤、その他の添加剤を添加してもよい。これら任意成分の添加は、工程(y)の前に行ってもよく、工程(y)の後に行ってもよい。
他の重合体としては、特に限定されず、たとえば、アクリル系重合体、ポリエステル重合体等が挙げられる。
他の重合体の添加量は、特に限定されず、フッ素樹脂100質量部に対して、0〜200質量部が好ましい。
着色剤としては、染料、有機顔料、無機顔料等が挙げられる。
着色剤の添加量は、特に限定されず、含フッ素樹脂水性分散液の総量100質量部に対して、0〜100質量部が好ましい。
含フッ素樹脂水性分散液には、耐候性、耐水性、耐薬品性、耐熱性等をさらに向上させるために、硬化剤を添加してもよい。本発明の含フッ素樹脂水性分散液は、一液型の塗料としてもよく、二液型の塗料としてもよいが、硬化剤を含ませる場合、二液型の塗料とし、使用直前に両液を混合することが好ましい。
硬化剤の添加量は、特に限定されず、フッ素樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましい。
アルカリ化合物由来の成分とは、pHの調整に用いられるアルカリ化合物の他、該アルカリ化合物が他の成分と塩を形成した場合の該アルカリ化合物由来のイオン等も含むことを意味する。
以上説明した本発明の含フッ素樹脂水性分散液の製造方法によれば、得られた含フッ素樹脂水性分散液を長期保存してもpHが低下することを抑制できる。そのため、長期保存した後であっても、例えばpHが6以下となって塗膜を形成する際に硬化速度が速くなりすぎることを抑制でき、均一性が高い塗膜を形成できる。さらに含フッ素樹脂水性分散液のpHが低下することが抑制されるため、酸成分による基材の錆の発生も抑制できる。
また、本発明の製造方法で得られた含フッ素樹脂水性分散液は、IERと接触させなかった場合の含フッ素樹脂水性分散液と比べ、同等の耐水性を有する塗膜を形成できる。
また、本発明では、フッ素樹脂として構成単位(A)および構成単位(B)を有する含フッ素共重合体(I)を製造することで、耐候性、耐水性、耐薬品性、耐熱性等に優れた塗膜を形成できる含フッ素樹脂水性分散液が得られる。
[pHの測定]
各例で得られた含フッ素樹脂水性分散液について、工程(y)の前、工程(y)の撹拌直後のpHを測定した。また、含フッ素樹脂水性分散液を保存し、1週間後と2週間後にpHを測定した。
塗膜の均一性は、光沢計(20度)による測定により評価した。評価は以下の基準で行った。
○:光沢値70以上。
×:光沢値70未満。
防錆性は、塩水噴霧試験(JIS K5621)を行い、目視により評価した。評価は以下の基準で行った。
○:傷の2mm以内に塗膜に膨れ、錆、はがれが出ていない。
×:傷の2mm以内に塗膜に膨れ、錆、はがれがでている。
(単量体(a))
CTFE:クロロトリフルオロエチレン(旭硝子(株)製)。
TFE:テトラフルオロエチレン(旭硝子(株)製)。
(単量体(b))
EOVE:CH2=CHOCH2−cycloC6H10−CH2O(CH2CH2O)nH、平均分子量830(親水性マクロモノマー)(日本乳化剤(株)製)。
HCVE:CH2=CHOCH2−cycloC6H10−CH2OH(水酸基含有単量体)(BASF社製)。
(単量体(c))
CHVE:シクロヘキシルビニルエーテル(BASF社製)。
2−EHVE:2−エチルヘキシルビニルエーテル(BASF社製)。
(非フッ素系アニオン性乳化剤)
SLS:ラウリル硫酸ナトリウム(非フッ素系アニオン性乳化剤)(日光ケミカルズ(株)製)。
工程(x):
内容積2500mLのステンレス製撹拌機付きオートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製)中に、CHVEの330g、2−EHVEの183.5g、EOVEの16.6g、HCVEの27.1g、イオン交換水の1020g、炭酸カリウム(K2CO3)の2.5g、過硫酸アンモニウム(APS)の0.7g、非フッ素系ノニオン性乳化剤(Newcol−1110:日本乳化剤(株)製)の51g、SLSの0.1gを仕込み、氷で冷却して、窒素ガスを0.7MPaになるよう加圧し、脱気した。この加圧脱気を2回繰り返し、0.01MPaまで脱気して溶存空気を除去した後、CTFE、TFEの470gを仕込み、50℃で24時間、重合反応を行った。重合反応後、未反応の単量体を除去して、含フッ素樹脂水性分散液−1を得た。
工程(y):
200mLビーカーに、強塩基性IER(ピュロライト社製、商品名「PUROLITE(登録商標)A200MBOH」)の1gと、含フッ素樹脂水性分散液−1の100gと、撹拌子を入れ、200rpmで1時間撹拌した。
例1と同様に工程(x)を行い、含フッ素樹脂水性分散液−1を得た。
強塩基性IER(ピュロライト社製、商品名「PUROLITE(登録商標)A200MBOH」)を弱塩基性IER(ランクセス社製、商品名「Lewatit(登録商標)MP−62WS」)に変更した以外は、例1と同様に工程(y)を行った。
例1と同様に工程(x)を行い、含フッ素樹脂水性分散液−1を得た。
強塩基性IER(ピュロライト社製、商品名「PUROLITE(登録商標)A200MBOH」)を強塩基性IER(ピュロライト社製、商品名「PUROLITE(登録商標)A300OH」)に変更した以外は、例1と同様に工程(y)を行った。
例1と同様に工程(x)を行い、含フッ素樹脂水性分散液−1を得た。
強塩基性IER(ピュロライト社製、商品名「PUROLITE(登録商標)A200MBOH」)を強塩基性IER(ランクセス社製、商品名「Lewatit(登録商標)MP−800OH」)に変更した以外は、例1と同様に工程(y)を行った。
例1と同様に工程(x)を行い、含フッ素樹脂水性分散液−1を得た。
強塩基性IER(ピュロライト社製、商品名「PUROLITE(登録商標)A200MBOH」)を用いなかった以外は、例1と同様に工程(y)を行った。
例1と同様に工程(x)を行い、含フッ素樹脂水性分散液−1を得た。
強塩基性IER(ピュロライト社製、商品名「PUROLITE(登録商標)A200MBOH」)の1gを弱塩基性IER(ランクセス社製、商品名「Lewatit(登録商標)MP−62WS」)の0.005gに変更した以外は、例1と同様に工程(y)を行った。
なお、表1における略号は以下の意味を示す。
A200:商品名「PUROLITE(登録商標)A200MBOH」(ピュロライト社製)。
MP62:商品名「Lewatit(登録商標)MP−62WS」(ランクセス社製)。
A300OH:商品名「PUROLITE(登録商標)A300OH」(ピュロライト社製)。
MP800:商品名「Lewatit(登録商標)MP−800OH」(ランクセス社製)。
例1と同様に工程(x)を行い、含フッ素樹脂水性分散液−1を得た。
工程(y)において、強塩基性IER(ピュロライト社製、商品名「PUROLITE(登録商標)A200MBOH」)を強塩基性IER(ピュロライト社製、商品名「PUROLITE(登録商標)A300OH」)に変更し、さらに強塩基性IERと含フッ素樹脂水性分散液の量を表2に示すように変更した以外は、例1と同様にして含フッ素樹脂水性分散液を得た。
撹拌後と貯蔵後の含フッ素樹脂水性分散液のpHの測定結果、塗膜の均一性および防錆性の評価結果を表2に示す。
工程(y)における強塩基性IERと含フッ素樹脂水性分散液の量を表3に示すように変更した以外は、例1と同様にして含フッ素樹脂水性分散液を得た。
撹拌後と貯蔵後の含フッ素樹脂水性分散液のpHの測定結果、塗膜の均一性および防錆性の評価結果を表3に示す。
Claims (4)
- 下記の工程(x)および工程(y)を有する、含フッ素樹脂水性分散液の製造方法。
(x)非フッ素系アニオン性乳化剤を含む乳化重合によってフッ素樹脂を含む含フッ素樹脂水性分散液を製造する工程。
(y)前記含フッ素樹脂水性分散液を陰イオン交換樹脂に接触させ、接触後の前記含フッ素樹脂水性分散液のpHを8.5以上とする工程。 - 前記陰イオン交換樹脂と前記含フッ素樹脂水性分散液の比(陰イオン交換樹脂/含フッ素樹脂水性分散液)が1/10〜1/20000(質量比)である、請求項1に記載の含フッ素樹脂水性分散液の製造方法。
- 前記含フッ素樹脂水性分散液と前記陰イオン交換樹脂との接触時間が10〜420分である、請求項1または2に記載の含フッ素樹脂水性分散液の製造方法。
- 前記フッ素樹脂が、下記の単量体(a)に基づく構成単位(A)と、下記の単量体(b)に基づく構成単位(B)とを有する含フッ素共重合体(I)である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂水性分散液の製造方法。
単量体(a):フルオロオレフィン。
単量体(b):架橋性基を有し、フッ素原子を有しない単量体。
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