以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、三相コイルの巻回方法として分布巻を述べるが、これは説明のための例示であって、集中巻等であってもよい。以下では、カフサに取り付けられる固定部材が2つとして説明するが、固定部材の数はこれ以外であってもよい。例えば、1つでもよく、3つ以上であってもよい。
以下で述べる形状、材質等は説明のための例示であって、回転電機のステータの仕様に応じ適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、回転電機のステータ10の構成図である。以下では、回転電機のステータ10を特に断らない限り、ステータ10と呼ぶ。図1には表れていないがステータ10には回転電機温度を測定する温度センサが設けられる。ステータ10は、温度センサから引き出される信号線であるリード線28を固定部材50で固定する構造を有する。図1(a)は、全体斜視図であり、(b)は、(a)の軸方向に沿った断面図であり、(c)は、固定部材50に温度センサのリード線28が収容される状態を示す図である。
ステータ10は、三相同期型回転電機に用いられる固定子であって、ステータコア12に各相コイル20が分布巻で巻回される。なお、図1に、ステータ10における軸方向を示した。
ステータコア12は、外径側のベース部14と、ベース部14から内径側に突き出す複数のティース16と、隣接するティース16の間の空間である複数のスロット18を含む円環状の磁性体部品である。
かかるステータコア12は、ティース16およびスロット18を含む所定の形状に成形された円環状の磁性体薄板を複数積層したものが用いられる。磁性体薄板としては、電磁鋼板を用いることができる。磁性体薄板の積層体に代えて、磁性粉末を所定の形状に一体化成形したものを用いることもできる。
各相コイル20は、適当な絶縁被覆が行われた導体線を所定の形状に曲げ成形し、これを、分布巻の配置方法で、周方向に沿って所定のスロット間隔だけ離れた複数のスロット18の間に渡って配置し、ステータ10における三相巻線を形成するものである。
各相コイル20に用いられる絶縁被覆付きの導体線としては、断面形状が矩形の平角線を用いる。平角線を用いることで、スロット18内のコイル占積率の向上を図ることができる。平角線に代えて、断面が円形、楕円形のものを用いてもよい。
コイルエンド22,24は、スロット18を通ってティース16に巻回された各相コイル20がステータコア12の軸方向端面から突き出した部分である。コイルエンド22において、各相コイル20を構成するコイル巻線が所定の接続方法で接続される。各相端子26は、各相コイル20を構成するU相コイル、V相コイル、W相コイルのそれぞれの一方側端末が引き出されて接続された端子である。なお、U相コイル、V相コイル、W相コイルのそれぞれの他方側端末は相互に接続されて中性点を形成する。
部品カフサ30は、ステータコア12の軸方向端面を覆って配置され、ステータコア12の複数のスロット18に対応して各相コイル20を構成するコイル巻線が通る複数の開口部を有する円環状の部材である。以下では、部品カフサ30を、特に断らない限りカフサ30と呼ぶ。カフサ30は、スロット18に挿入されて巻回されるコイル巻線がステータコア12の軸方向端部で折り曲げ成形されるときに、ステータコア12の端面と直接的に接触しないようにする保護部材で、絶縁材料で構成される。カフサ30の詳細な内容については、図3を用いて後述する。
固定部材50は、カフサ30を介してステータコア12にリード線28を固定する部品で、絶縁材料で構成される。図2は、固定部材を示す図である。図2(a)は、上面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は、側面図であり、(d)は、(a)のA−A線に沿った断面図である。図2(a),(b),(c),(d)のそれぞれについてステータコア12に固定されたときの軸方向、径方向、周方向を示した。径方向についてはステータコア12の外径側の方向と内径側の方向を示した。
固定部材50は、カフサ30の嵌合部40(図3、図4参照)に嵌りこんで固定される爪部52と、爪部52からステータコア12の外径側に張り出す本体部51を有する。本体部51は、内径側から外径側に向かって2つの溝が設けられ、溝は外径側の端部までは延びずに途中で止まる。これによって本体部51は、2つの溝によって分けられた3つ又の形状を有する。3つ又の真ん中部分53の内径側の端部に爪部52が設けられる。したがって、先端に爪部52を有する3つ又の真ん中部分53は、外径側の端部を固定端とし内径側の端部を自由端とする片持ち梁の形状を有し、爪部52は外径側の端部を支点として弾性変形によって軸方向に動くことができる。
本体部51は、3つ又の真ん中部分53と軸方向に沿って所定の隙間間隔S5を空けて配置されるカフサ保持部54を有する。カフサ保持部54は、軸方向に沿った高さH5と、周方向に沿った幅W5を有する。初期状態において、爪部52は隙間間隔S5の中に突き出す形状である。つまり、爪部52の先端部とカフサ保持部54との隙間間隔はS5よりも小さい。
本体部51は、カフサ保持部54よりもステータコア12の外径側であってステータコア12の軸方向端部に向かい合う面に設けられる凹部56を有する。凹部56は、リード線28の断面形状に適合する窪み形状を有する。図2の例では、リード線28の断面形状を円形として、その円形の半径Rの曲率に合わせた窪み形状を有する。
かかる固定部材50は、樹脂材料を用いて所定の形状に成形したものを用いることができる。樹脂材料としては、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂等を用いることができる。
図3は、カフサ30の構成と、カフサ30と固定部材50の取付関係を示す図である。図3(a)は、カフサ30に1つの固定部材50が取り付けられ、2つ目の固定部材50がまだ取り付けられていない状態を示す図であり、(b)は、カフサ30に取り付けられる前の状態の固定部材50を示す図であり、(c)は挿入開口部42の寸法関係を示す図である。
カフサ30は、外径側の環状部32と、内径側の環状部34と、外径側の環状部32と内径側の環状部34を結ぶ複数の土手部36と、隣接する土手部36の間に設けられる複数の開口部38を含んで構成される円環状部材である。土手部36は、ステータコア12のティース16の形状に対応する形状を有し、開口部38は、ステータコア12のスロット18に対応する形状を有する。したがって、土手部36の数は、ステータコア12のティース16の数と同じで、開口部38の数は、ステータコア12のスロット18の数と同じである。
複数の土手部36のうち、数個の土手部37は、他の土手部36に比べさらに外径側に延びる形状を有する。図3では、他の土手部36よりも外径側に延びた2つの土手部37が示される。固定部材50が嵌りこんでいない土手部37についてその外径側に延びる部分を説明すると、土手部37の外径側の端部から内径側に向かって挿入開口部42が設けられる。挿入開口部42の寸法について軸方向に沿った開口高さをH3とし、周方向に沿った開口幅をW3とすると、開口高さH3は、固定部材50のカフサ保持部54の高さH5よりも小さめに設定され、開口幅W3は、カフサ保持部54の幅W5よりも小さく設定される。「小さめ」とは、挿入開口部42の開口に固定部材50のカフサ保持部54が挿入可能な程度である。例えば、約0.1mm程度の寸法差に設定される。
嵌合部40は、土手部37の外径側に延びる部分において土手部37の上面部から挿入開口部42の天井部に向かって貫通する開口穴である。上面部から挿入開口部の天井部までの軸方向に沿った長さは貫通穴である嵌合部40の軸方向に沿った長さである。この嵌合部穴長さをS3とすると、嵌合部穴長さSSは、固定部材50の3つ又の真ん中部分53とカフサ保持部54との間の軸方向に沿った隙間間隔S5よりも小さめに設定される。この場合における「小さめ」とは、固定部材50の内径側の先端部を挿入開口部42の開口に挿入したときに、固定部材50の3つ又の真ん中部分53が弾性変形して爪部52が土手部37の上面部に乗り上げ、さらに固定部材50の先端部をカフサ30の内径側に押し込んだときに爪部52が嵌合部40に嵌りこんで自然状態に戻り、爪部52と嵌合部40が噛みあって固定部材50とカフサ30が互いに固定される程度に設定される。嵌合部穴長さSSが隙間間隔S5よりも大きいと爪部52と嵌合部40が噛み合わずに固定部材50とカフサ30が互いに固定されないことが生じる。爪部52と嵌合部40の噛み合いは、例えば、約1mmから2mmとすることができる。
カフサ30は、複数の開口部38の位置がステータコア12の複数のスロット18の位置に合うように位置決めされ、適当な固定手段によってステータコア12に固定される。かかるカフサ30は、樹脂材料を用いて所定の形状に成形したものを用いることができる。樹脂材料としては、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂等を用いることができる。
図4は、図3のB−B’断面図であり、カフサ30と固定部材50の固定状態を示す図である。図4では、カフサ30の土手部37の外径側から内径側に向かって、固定部材50が土手部37の挿入開口部42に挿入されて爪部52が嵌合部40に嵌りこみ、爪部52と嵌合部40が噛みあって固定部材50とカフサ30が互いに固定された状態が示される。この状態において、固定部材50のカフサ保持部54の高さH5がカフサ30の挿入開口部42の開口高さH3に対応し、固定部材50の3つ又の真ん中部分53とカフサ保持部54との間の隙間間隔S5がカフサ30の嵌合穴長さS3に対応している。
このように固定部材50がカフサ30を介してステータコア12に固定されると、固定部材50の凹部56とステータコア12の軸方向端部との間にリード線28が収容される。ここで、固定部材50の本体部51とステータコア12との間の最大隙間をS35として、最大隙間S35をリード線28の外径断面の最小寸法Dよりも小さく設定することで、リード線28が固定部材50の凹部56から外れることを防止できる。
このように、カフサ30と固定部材50の寸法関係を適切に設定することで、簡単な構造で、温度センサのリード線28をステータ10に対して固定でき、回転電機の振動等でも外れることがなく安定して固定できる。