JP2016018835A - 超音波プローブ - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な特性の圧電体薄膜及びその製造法を提供する。
【解決手段】超音波プローブは素子チップを備え、素子チップは、可撓膜と、可撓膜上に設けられた下部電極と、圧電体膜と、上部電極と、を備え、圧電体膜は、膜厚が0.5μm以上20μm以下であり、平均粒径が0.005μm以上0.2μm以下の結晶粒からなり、かつ断面に層状の不連続面を有さず、xPb(Mg1/3Nb2/3)O3−yPbZrO3−zPbTiO3(x,y,zはモル比を表し、x+y+z=1である)で表される三成分系圧電材料からなり、かつ、この式の三成分系組成図において以下のA、B、C、及びDの四点の範囲内にある組成を有する。
A(x=0.05,y=0.40,z=0.55)
B(x=0.05,y=0.60,z=0.35)
C(x=0.25,y=0.30,z=0.45)
D(x=0.25,y=0.50,z=0.25)
【選択図】図14

Description

本発明は、超音波プローブに関するものである。
超音波プローブに設置された超音波トランスデューサー素子チップから生体に超音波を照射し反射波を解析する超音波診断装置が広く活用されている。超音波トランスデューサー素子チップには圧電素子であるPZT素子が用いられることが多い。PZT素子は、一般に、多結晶体からなる圧電体層と、この圧電体層を間に挟んで配置される上電極及び下電極と、を備えた構造を有している。
このような層構造の圧電素子は駆動対象となる設置面に設置される。例えば、超音波プローブであれば超音波を出力するために変形可能に構成された振動板上に圧電素子が設置される。
PZT素子はチタン酸ジルコン酸鉛等からなる圧電体、強誘電体薄膜は、スパッタ法、ゾルゲル法、CVD法、レーザアブレーション法等で製造することができる。
特にゾルゲル法は組成制御性に優れている。また、ゾル組成物の塗布と、その焼成を繰り返すことで容易に薄膜を形成できるとの利点も有する。さらに、フォトエッチング工程を用いたパターニングも可能であり、その結果素子化も容易である。ゾルゲル法により製造された圧電体薄膜を用いたインクジェット記録ヘッドが特許文献1に開示されている。超音波プローブの圧電素子として用いる場合、0.5μm〜20μm程度の膜厚が一般に必要と言われている。また、超音波プローブの圧電素子としては高い圧電ひずみ定数となり、そのような高い圧電ひずみ定数を得るために700℃以上の温度でのアニールにより結晶粒を成長させることが必要であるとされている。
特開平6−112543号公報
しかしながら、ゾルゲル法によりある程度の膜厚、例えば1μm以上の膜厚、の圧電体薄膜を製造しようとする場合、ペロブスカイト構造を得るためのアニールの過程で膜内にクラックが発生する場合が観察された。
また、ゾルまたはゲル組成物を塗布するために高温で焼成して結晶化させ、それを繰り返すことで膜厚を大きくする方法が提案されている。しかしながら、本発明者らの知る限りでは、この方法によって得られた圧電体薄膜は層状の積層界面を有する。このような積層界面は圧電特性には好ましいものではなく、また素子化のためのエッチングにおいて良好なパターニングができない場合があった。そこで、良好な特性の圧電体薄膜及びその製造法が望まれていた。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本適用例にかかる超音波プローブであって、超音波トランスデューサー素子チップと、前記超音波トランスデューサー素子チップを支持する筐体と、を備え、前記超音波トランスデューサー素子チップは、弾性膜と、前記弾性膜上に設けられた下電極と、前記下電極上に形成された圧電体膜と、前記圧電体膜の表面に形成された上電極と、を備え、前記圧電体膜は、膜厚が0.5μm以上20μm以下であり、平均粒径が0.005μm以上0.2μm以下の結晶粒からなり、かつ断面に層状の不連続面を有さず、xPb(Mg1/3Nb2/3)O3−yPbZrO3−zPbTiO3(x,y,zはモル比を表し、x+y+z=1である)で表される三成分系圧電材料からなり、かつ、この式の三成分系組成図において以下のA、B、C、及びDの四点の範囲内にある組成を有することを特徴とする。
A(x=0.05,y=0.40,z=0.55)
B(x=0.05,y=0.60,z=0.35)
C(x=0.25,y=0.30,z=0.45)
D(x=0.25,y=0.50,z=0.25)
本適用例によれば、超音波プローブでは筐体が超音波トランスデューサー素子チップを支持している。超音波トランスデューサー素子チップは弾性膜を備え、弾性膜上には下電極、圧電体膜及び上電極がこの順に重ねて設置されている。そして、下電極と上電極との間に所定の間隔でパルス状の電圧を印加することにより圧電体膜が伸縮する。これにより弾性膜が振動して超音波が出力される。
そして、圧電体膜は、膜厚が0.5μm以上20μm以下であり、平均粒径が0.005μm以上0.2μm以下の結晶粒からなり、かつ断面に層状の不連続面を有さない。このとき圧電体膜は良好な特性を有することができる。
また、圧電体膜は、xPb(Mg1/3Nb2/3)O3−yPbZrO3−zPbTiO3(x,y,zはモル比を表し、x+y+z=1である)で表される三成分系圧電材料からなり、かつ、この式の三成分系組成図において以下のA、B、C、及びDの四点の範囲内にある組成を有する。
A(x=0.05,y=0.40,z=0.55)
B(x=0.05,y=0.60,z=0.35)
C(x=0.25,y=0.30,z=0.45)
D(x=0.25,y=0.50,z=0.25)
圧電体膜の組成をこのような組成にすることにより、圧電体膜はさらに改善された特性で振動させることができる。
実施形態1にかかわる超音波診断装置の構成を示す概略斜視図。 超音波プローブの構成を示す組織側面図。 素子チップの構成を示す模式平面図。 素子チップの構成を示す模式側断面図。 補強板を示す模式平面図。 補強板を示す要部模式拡大図。 装置端末及び超音波プローブの回路図。 超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図。 超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図。 超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図。 超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図。 超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図。 圧電素子の構造を示す要部模式側断面図。 圧電体膜の組成を示す三成分組成図。 圧電素子の製造方法を説明するための模式図。 圧電素子の製造方法を説明するための模式図。 実施形態2にかかわる圧電体薄膜の100面配向度とTi核の厚さとの関係を測定した結果を示す図。 圧電素子の構造を示す模式側断面図。 実施形態3にかかわる圧電素子の構造を示す模式側断面図。 実施形態4にかかわる圧電素子の構造を示す模式側断面図。 圧電素子の製造方法を示す断面模式図。 圧電素子の製造方法を示す断面模式図。 圧電素子の100面配向度と圧電定数d31との関係を測定した結果を示す図。
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。尚、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の総てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
(実施形態1)
本実施形態では、超音波診断装置の特徴的な例について図1〜図16に従って説明する。
(1)超音波診断装置の全体構成
図1は超音波診断装置の構成を示す概略斜視図である。図1に示すように、超音波診断装置11は装置端末12と超音波プローブ13(プローブ)とを備える。装置端末12と超音波プローブ13とはケーブル14で相互に接続される。装置端末12と超音波プローブ13とはケーブル14を通じて電気信号をやりとりする。装置端末12にはディスプレイパネル15(表示装置)が組み込まれる。ディスプレイパネル15の画面は装置端末12の表面で露出する。装置端末12では、後述されるように、超音波プローブ13で検出された超音波に基づき画像が生成される。画像化された検出結果がディスプレイパネル15の画面に表示される。
図2は超音波プローブの構成を示す組織側面図である。図2に示すように、超音波プローブ13は筐体16を有する。筐体16内には超音波トランスデューサー素子チップとしての素子チップ17が収容される。素子チップ17の表面は筐体16の表面で露出することができる。素子チップ17は表面から超音波を出力するとともに超音波の反射波を受信する。その他、超音波プローブ13は、プローブ本体13aに着脱可能に連結されるプローブヘッド13bを備えることができる。このとき、素子チップ17はプローブヘッド13bの筐体16内に組み込まれることができる。
図3は素子チップの構成を示す模式平面図である。図3に示すように、素子チップ17は基板21を備える。基板21には素子アレイ22が形成される。素子アレイ22は超音波トランスデューサー素子としての圧電素子23の配列で構成される。配列は複数行複数列のマトリックスで形成される。個々の圧電素子23は圧電素子部を備える。圧電素子部は下電極としての下部電極24、上電極としての上部電極25及び圧電体膜26で構成される。個々の圧電素子23ごとに下部電極24及び上部電極25の間に圧電体膜26が挟み込まれる。
下部電極24は複数本の第1導電体24aを有する。第1導電体24aは配列の行方向に相互に平行に延びる。1行の圧電素子23ごとに1本の第1導電体24aが割り当てられる。1本の第1導電体24aは配列の行方向に並ぶ圧電素子23の圧電体膜26に共通に配置される。第1導電体24aの両端は一対の引き出し配線27にそれぞれ接続される。引き出し配線27は配列の列方向に相互に平行に延びる。したがって、総ての第1導電体24aは同一長さを有する。こうしてマトリックス全体の圧電素子23に共通に下部電極24は接続される。
上部電極25は複数本の第2導電体25aを有する。第2導電体25aは配列の列方向に相互に平行に延びる。1列の圧電素子23ごとに1本の第2導電体25aが割り当てられる。1本の第2導電体25aは配列の列方向に並ぶ圧電素子23の圧電体膜26に共通に配置される。列ごとに圧電素子23の通電は切り替えられる。こうした通電の切り替えに応じてラインスキャンやセクタースキャンは実現される。1列の圧電素子23は同時に超音波を出力することから、1列の個数すなわち配列の行数は超音波の出力レベルに応じて決定されることができる。行数は例えば10〜15行程度に設定されればよい。図中では省略されて5行が描かれる。配列の列数はスキャンの範囲の広がりに応じて決定されることができる。列数は例えば128列や256列に設定されればよい。図中では省略されて8列が描かれる。その他、配列では千鳥配置が確立されてもよい。千鳥配置では偶数列の圧電素子23群は奇数列の圧電素子23群に対して行ピッチの2分の1でずらされればよい。奇数列及び偶数列の一方の素子数は他方の素子数に比べて1つ少なくてもよい。さらにまた、下部電極24及び上部電極25の役割は入れ替えられてもよい。すなわち、マトリックス全体の圧電素子23に共通に上部電極が接続される一方で、配列の列ごとに共通に圧電素子23に下部電極が接続されてもよい。
基板21の輪郭は、相互に平行な一対の直線29で仕切られて対向する第1辺21a及び第2辺21bを有する。素子アレイ22の輪郭と基板21の外縁との間に広がる周縁領域31には、第1辺21aと素子アレイ22の輪郭との間に1ラインの第1端子アレイ32aが配置され、第2辺21bと素子アレイ22の輪郭との間に1ラインの第2端子アレイ32bが配置される。第1端子アレイ32aは第1辺21aに平行に1ラインを形成することができる。第2端子アレイ32bは第2辺21bに平行に1ラインを形成することができる。第1端子アレイ32aは一対の下部電極端子33及び複数の上部電極端子34で構成される。同様に、第2端子アレイ32bは一対の下部電極端子35及び複数の上部電極端子36で構成される。1本の引き出し配線27の両端にそれぞれ下部電極端子33、35は接続される。引き出し配線27及び下部電極端子33、35は素子アレイ22を二等分する垂直面で面対称に形成されればよい。1本の第2導電体25aの両端にそれぞれ上部電極端子34、36は接続される。第2導電体25a及び上部電極端子34、36は素子アレイ22を二等分する垂直面で面対称に形成されればよい。ここでは、基板21の輪郭は矩形に形成される。基板21の輪郭は正方形であってもよく台形であってもよい。
基板21には第1フレキ37が連結される。第1フレキ37は第1端子アレイ32aに覆い被さる。第1フレキ37の一端には下部電極端子33及び上部電極端子34に個別に対応して導電線すなわち第1信号線38が形成される。第1信号線38は下部電極端子33及び上部電極端子34に個別に向き合わせられ個別に接合される。同様に、基板21には第2フレキ41が覆い被さる。第2フレキ41は第2端子アレイ32bに覆い被さる。第2フレキ41の一端には下部電極端子35及び上部電極端子36に個別に対応して導電線すなわち第2信号線42が形成される。第2信号線42は下部電極端子35及び上部電極端子36に個別に向き合わせられ個別に接合される。
図4は素子チップの構成を示す模式側断面図である。図4に示すように、個々の圧電素子23は振動膜43を有する。振動膜43の構築にあたって基板21の基体44には個々の圧電素子23ごとに開口45が形成される。開口45は基体44に対してアレイ状に配置される。基体44の表面には弾性膜としての可撓膜46が一面に形成される。可撓膜46は酸化シリコン層(SiO2)及び上面層で構成される。上面層は酸化ジルコニウム(ZrO2)、チタン(Ti)、酸化チタン(TiO)またはこれらが複合した膜となっている。可撓膜46は開口45に接する。こうして開口45の輪郭に対応して可撓膜46の一部が振動膜43として機能する。可撓膜46の膜厚は共振周波数に基づき決定される。
振動膜43の表面に下部電極24、圧電体膜26及び上部電極25が順番に積層される。下部電極24には例えばチタン(Ti)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)及びチタン(Ti)の積層膜やプラチナの膜を用いられることができる。圧電体膜26は例えばジルコン酸チタン酸鉛(PZT)で形成されることができる。上部電極25は例えばイリジウム(Ir)や白金(Pt)で形成されることができる。下部電極24及び上部電極25にはその他の導電材が利用されてもよく、圧電体膜26にはその他の圧電材料が用いられてもよい。ここでは、上部電極25の下で圧電体膜26は完全に下部電極24を覆う。圧電体膜26の働きで上部電極25と下部電極24との間で短絡は回避されることができる。
基板21の表面には保護膜49が積層される。保護膜49は例えば全面にわたって基板21の表面に覆い被さる。その結果、素子アレイ22や第1端子アレイ32a及び第2端子アレイ32b、第1フレキ37及び第2フレキ41は保護膜49で覆われる。保護膜49には例えばシリコーン樹脂膜が用いられることができる。保護膜49は、素子アレイ22の構造や、第1端子アレイ32a及び第1フレキ37の接合、第2端子アレイ32b及び第2フレキ41の接合を保護する。
隣接する開口45同士の間には仕切り壁51が区画される。開口45同士は仕切り壁51で仕切られる。仕切り壁51の壁厚みtは開口45の空間同士の間隔に相当する。仕切り壁51は相互に平行に広がる平面内に2つの壁面を規定する。壁厚みtは壁面同士の距離に相当する。すなわち、壁厚みtは壁面に直交して壁面同士の間に挟まれる垂線の長さで規定されることができる。仕切り壁51の壁高さHは開口45の深さに相当する。開口45の深さは基体44の厚みに相当する。したがって、仕切り壁51の壁高さHは基体44の厚み方向に規定される壁面の長さで規定されることができる。基体44は均一な厚みを有することから、仕切り壁51は全長にわたって一定の壁高さHを有することができる。仕切り壁51の壁厚みtが縮小されれば、振動膜43の配置密度は高められ、素子チップ17の小型化に寄与することができる。壁厚みtに比べて仕切り壁51の壁高さHが大きければ、素子チップ17の曲げ剛性は高められることができる。こうして開口45同士の間隔は開口45の深さよりも小さく設定される。
基体44の裏面には補強板52(補強部材)が固定される。補強板52の表面に基体44の裏面が重ねられる。補強板52は素子チップ17の裏面で開口45を閉じる。補強板52はリジッドな基材を備えることができる。補強板52は例えばシリコン基板から形成されることができる。基体44の板厚は例えば100μm程度に設定され、補強板52の板厚は例えば100〜150μm程度に設定される。ここでは、仕切り壁51は補強板52に結合される。補強板52は個々の仕切り壁51に少なくとも1カ所の接合域で接合される。接合には接着剤を用いてもよい。
補強板52の表面には直線状の溝53(直線状溝部)が形成される。溝53は補強板52の表面を複数の平面54に分割する。複数の平面54は1つの仮想平面HP内で広がる。その仮想平面HP内で基体44の裏面は広がる。仕切り壁51は平面54に接合される。溝53は仮想平面HPから窪む。溝53の断面形状は四角形であってもよく三角形であってもよく半円形その他の形状であってもよい。
図5は補強板を示す模式平面図である。図5に示すように、開口45は第1方向D1に列を形成する。開口45の輪郭形状の図心45bは第1方向D1の1直線56上で等ピッチに配置される。開口45の輪郭45aは1つの形状の複写で象られることから、同一形状の開口45が一定のピッチで繰り返し配置される。開口45の輪郭45aは例えば四角形に規定される。具体的には矩形に形成される。矩形の長辺は第1方向D1に合わせ込まれる。こうして開口45は矩形の輪郭45aを有することから、仕切り壁51は全長にわたって一定の壁厚みtを有することができる。このとき、仕切り壁51の接合域は長辺の中央位置を含む領域であればよい。特に、仕切り壁51の接合域は長辺の全長を含む領域であればよい。仕切り壁51は長辺の全長にわたって開口45同士の間の全面で補強板52に面接合されることができる。さらに、仕切り壁51の接合域は四角形の各辺に少なくとも1カ所ずつ配置されることができる。仕切り壁51の接合域は四角形を途切れなく囲むことができる。仕切り壁51は四角形の全周にわたって開口45同士の間の全面で補強板52に面接合されることができる。
溝53は一定の間隔Lで相互に平行に第1方向D1に並べられる。溝53は第1方向D1に交差する第2方向D2に延びる。溝53の両端は補強板52の端面57a及び端面57bで開口する。1本の溝53は1列(ここでは1行)の開口45の輪郭45aを順番に横切る。個々の開口45には少なくとも1本の溝53が接続される。ここでは、第2方向D2は第1方向D1に直交する。したがって、溝53は矩形の短辺方向に開口45の輪郭45aを横切る。
図6は補強板を示す要部模式拡大図である。図6に示すように、平面54同士の間で溝53は基体44と補強板52との間に通路58a及び通路58bを形成する。こうして溝53内の空間は開口45の内部空間に連通する。通路58a及び通路58bは開口45の内部空間と基板21の外部空間との間で通気を確保する。基板21の表面に直交する方向すなわち基板21の厚み方向から見た平面視で、1本の溝53は1列(ここでは1行)の開口45の輪郭45aを順番に横切ることから、次々に開口45同士は通路58aで接続される。溝53の両端は補強板52の端面57a及び端面57bで開口する。こうして列端の開口45から基板21の輪郭の外側に通路58bは開放される。
溝53の間隔Lは開口45の開口幅Sよりも小さく設定される。開口幅Sは、溝53の並び方向すなわち第1方向D1に開口45を横切る線分のうち最大の長さのもので規定される。言い換えると、開口幅Sは、開口45の輪郭45aに外接する平行線59同士の間隔に相当する。開口45ごとに開口45の輪郭45aに外接する平行線59は特定される。平行線59は第2方向D2に延びる。仮に開口45ごとに開口幅Sが相互に相違する場合には、開口幅Sの最小値よりも小さい間隔Lで溝53は並べられればよい。ここでは、溝53の間隔Lは、開口45の開口幅Sの3分の1以上であって2分の1よりも小さく設定される。
(2)超音波診断装置の回路構成
図7は装置端末及び超音波プローブの回路図である。図7に示されるように、超音波プローブ13には素子チップ17と接続する集積回路チップ55が設置されている。集積回路チップ55はマルチプレクサー61及び送受信回路62を備える。マルチプレクサー61は素子チップ17側のポート群61aと送受信回路62側のポート群61bとを備える。素子チップ17側のポート群61aには第1配線60経由で第1信号線38及び第2信号線42が接続される。こうしてポート群61aは素子アレイ22に繋がる。ここでは、送受信回路62側のポート群61bには集積回路チップ55内の規定数の信号線63が接続される。規定数はスキャンにあたって同時に出力される圧電素子23の列数に相当する。マルチプレクサー61はケーブル14側のポートと素子チップ17側のポートとの間で相互接続を管理する。
送受信回路62は規定数の切り替えスイッチ64を備える。個々の切り替えスイッチ64はそれぞれ信号線63に接続される。送受信回路62は個々の切り替えスイッチ64ごとに送信経路65及び受信経路66を備える。切り替えスイッチ64には送信経路65と受信経路66とが並列に接続される。切り替えスイッチ64はマルチプレクサー61に選択的に送信経路65または受信経路66を接続する。送信経路65にはパルサー67が組み込まれる。パルサー67は振動膜43の共振周波数に応じた周波数でパルス信号を出力する。受信経路66にはアンプ68、ローパスフィルター69(LPF)及びアナログデジタル変換器71(ADC)が組み込まれる。個々の圧電素子23の検出信号は増幅されてデジタル信号に変換される。
送受信回路62は駆動/受信回路72を備える。送信経路65及び受信経路66は駆動/受信回路72に接続される。駆動/受信回路72はスキャンの形態に応じて同時にパルサー67を制御する。駆動/受信回路72はスキャンの形態に応じて検出信号のデジタル信号を受信する。駆動/受信回路72は制御線73によりマルチプレクサー61に接続される。マルチプレクサー61は駆動/受信回路72から供給される制御信号に基づき相互接続の管理を実施する。
装置端末12には処理回路74が組み込まれる。処理回路74は例えば中央演算処理装置(CPU)やメモリーを備えることができる。超音波診断装置11の全体動作は処理回路74の処理に従って制御される。ユーザーから入力される指示に応じて処理回路74は駆動/受信回路72を制御する。処理回路74は圧電素子23の検出信号に応じて画像を生成する。画像は描画データで特定される。
装置端末12には描画回路75が組み込まれる。描画回路75は処理回路74に接続される。描画回路75にはディスプレイパネル15が接続される。描画回路75は処理回路74で生成された描画データに応じて駆動信号を生成する。駆動信号はディスプレイパネル15に送り込まれる。その結果、ディスプレイパネル15に画像が映し出される。
(3)超音波診断装置の動作
次に超音波診断装置11の動作を簡単に説明する。処理回路74は駆動/受信回路72に超音波の送信及び受信を指示する。駆動/受信回路72はマルチプレクサー61に制御信号を供給するとともに個々のパルサー67に駆動信号を供給する。パルサー67は駆動信号の供給に応じてパルス信号を出力する。マルチプレクサー61は制御信号の指示に従ってポート群61bのポートにポート群61aのポートを接続する。ポートの選択に応じて下部電極端子33、下部電極端子35、上部電極端子34及び上部電極端子36を通じて列ごとにパルス信号が圧電素子23に供給される。パルス信号の供給に応じて振動膜43は振動する。その結果、対象物(例えば人体の内部)に向けて所望の超音波が発せられる。
超音波の送信後、切り替えスイッチ64が切り替えられる。マルチプレクサー61はポートの接続関係を維持する。切り替えスイッチ64は送信経路65及び信号線63の接続に代えて受信経路66及び信号線63の接続を確立する。超音波の反射波は振動膜43を振動させる。その結果、圧電素子23から検出信号が出力される。検出信号はデジタル信号に変換されて駆動/受信回路72に送り込まれる。
超音波の送信及び受信は繰り返される。繰り返しにあたってマルチプレクサー61はポートの接続関係を変更する。その結果、ラインスキャンやセクタースキャンが実現される。スキャンが完了すると、処理回路74は検出信号のデジタル信号に基づき画像を形成する。形成された画像はディスプレイパネル15の画面に表示される。
(4)超音波トランスデューサー素子チップの製造方法
図8〜図12は超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図である。図8に示されるように、シリコンウエハー78(基板)の表面には酸化シリコン膜79及び図示しない酸化ジルコニウム膜が相次いで形成される。酸化ジルコニウム膜の表面には導電膜が形成される。導電膜はチタン、イリジウム、白金及びチタンの積層膜で構成される。フォトリソグラフィー技術に基づき導電膜から下部電極24、引き出し配線27、図示しない下部電極端子33及び下部電極端子35が形成される。下部電極24、引き出し配線27、下部電極端子33及び下部電極端子35は個々の素子チップ17ごとに形成される。
図9に示されるように、下部電極24の表面で個々の圧電素子23ごとに圧電体膜26及び上部電極25が形成される。圧電体膜26及び上部電極25の形成にあたってシリコンウエハー78の表面に圧電材料膜及び導電膜が成膜される。圧電材料膜はPZT膜から構成される。導電膜はイリジウム膜から構成される。フォトリソグラフィー技術に基づき個々の圧電素子23ごとに圧電材料膜及び導電膜から圧電体膜26及び上部電極25が成形される。
続いて、図10に示されるように、シリコンウエハー78の表面に導電膜82が成膜される。導電膜82は個々の素子チップ17内で列ごとに上部電極25を相互に接続する。そして、フォトリソグラフィー技術に基づき導電膜82から上部電極25、上部電極端子34及び上部電極端子36が成形される。
その後、図11に示されるように、シリコンウエハー78の裏面からアレイ状の開口45が形成される。開口45の形成にあたってエッチング処理が施される。酸化シリコン膜79はエッチングストップ層として機能する。酸化シリコン膜79及び図示しない酸化ジルコニウム膜からなる振動膜43は開口45により区画される。
補強板用のウエハー83の表面には直線状の溝84が形成される。溝84は相互に平行に等間隔で延びる。溝84の少なくとも一端はウエハー83の端面で開放される。溝84は、開口45の開口幅Sよりも小さい間隔Lで並べられる。こうして溝84の間隔Lが設定されると、シリコンウエハー78と補強板用のウエハー83との間で相対的に位置ずれが生じても、少なくとも1本の溝84は開口45の輪郭45aを横切ることができる。例えば図12に示されるように、シリコンウエハー78に対して補強板用のウエハー83が第1方向D1にずれて溝84aが隣り合う開口45の間に位置しても、2つの開口45にはそれぞれ少なくとも1本の溝84bが配置されることができる。シリコンウエハー78から個々の素子チップ17が切り出された際に、溝84は補強板52の溝53を提供する。
こうして溝84が形成されると、シリコンウエハー78及びウエハー83が大気中またはその他の気体雰囲気下で相互に重ね合わせられる場合でも、比較的に簡単に重ね合わせは実現されることができる。その一方で、シリコンウエハー78の裏面が均一な平面に重ね合わせられると、個々の開口45内に補強板用のウエハーの平面で気体が押し詰められる。大気圧では開口45内の空間の体積よりも大きい体積の気体が開口45内に留まろうとする。開口45の封鎖と同時に、シリコンウエハー78及び補強板用のウエハーの隙間から余分な気体が逃げないと、シリコンウエハー78及び補強板用のウエハーの貼り合わせは実現されることができない。
図11に戻って、シリコンウエハー78の裏面に補強板用のウエハー83(補強部材)の表面が重ね合わせられる。重ね合わせに先立ってウエハー83はハンドリング機構やステージ上に保持される。ウエハー83には例えばリジッドな絶縁性基板が用いられることができる。絶縁性基板にはシリコンウエハーが用いられることができる。接合にあたって例えば接着剤を用いても良い。接合後、シリコンウエハー78から個々の素子チップ17が切り出されて素子チップ17が完成する。
(5)圧電体膜の構造と製造方法
次に、圧電素子23に用いられる圧電体膜26について詳細に説明する。図13は、圧電素子の構造を示す要部模式側断面図である。図13に示すように、圧電素子23では、開口45が設けられた基体44に補強板52が接合されている。基体44上には可撓膜46、下部電極24、圧電体膜26と、上部電極25とが重ねて設置されている。
(圧電体薄膜)
圧電体膜26の厚さは0.5μm以上20μm以下の範囲にある。圧電体膜26は、このような極めて薄い形態にあって好ましい特性を有する。この好ましい特性を得るために、圧電体膜26は、平均粒径0.005μm以上0.2μm以下の結晶粒からなり、かつ薄膜断面に層状の不連続面を有さないものであるのが好ましい。圧電体膜26の厚さは更に好ましくは0.7μm以上10μm以下であり、また、圧電体膜26の結晶粒の平均粒径は0.01μm以上0.1μm以下である。さらに、圧電体膜26はペブロスカイト型が主要を占めるものが好ましい。このような圧電体膜26は良好な特性を有する。具体的には、圧電体膜26の比誘電率が1,000〜3,500程度、より好ましくは1,200〜2,800程度を示す。さらに、圧電体膜26の圧電ひずみ定数が70pC/N以上、より好ましくは100pC/N以上を示す。
以上に示した圧電体膜26は、以下に説明する特定組成と組合されることによって、より好ましい特性を有するものとなる。
図14は圧電体膜の組成を示す三成分組成図である。圧電体膜26はxPb(Mg1/3Nb2/3)O3−yPbZrO3−zPbTiO3で表される三成分系圧電材料からなる。図14に示す三成分系組成図において、圧電体膜26は次のA、B、C、及びDの四点の範囲内にある組成を有する。
A(x=0.05,y=0.40,z=0.55)
B(x=0.05,y=0.60,z=0.35)
C(x=0.25,y=0.30,z=0.45)
D(x=0.25,y=0.50,z=0.25)
本実施形態の第一の態様による組成を有する圧電体膜26は、前記式で表される三成分系圧電体材料からなり、かつ図14に示される領域内の組成を有する。
また、本実施形態の第二の態様による組成を有する圧電体膜26は、前記式においてPbが最大20モル%程度まで、好ましくは5〜15モル%まで、Sr、Ca、Ba、Bi、及びLaから選択される元素によって置換された組成を有していてもよい。すなわち、Pb(1−α)Γα[(Mg1/3Nb2/3)xZryTiz]O3(ここで、x,y,zはモル比を表し、x+y+z=1である)で表され、x,y,zがこの式の三成分系組成図において、次のA、B、C、及びDの四点の範囲内にある。
A(x=0.05,y=0.40,z=0.55)、
B(x=0.05,y=0.60,z=0.35)、
C(x=0.25,y=0.30,z=0.45)、
D(x=0.25,y=0.50,z=0.25)、
そして、前記式中のΓはSr、Ca、Ba、Bi、またはLaの何れかの元素を表し、かつ前記式中のαは、0<α≦0.2の関係を満たす任意の数である。このような組成によってより改善された特性の圧電体膜26を得ることができる。
また、本実施形態の別の好ましい態様によれば、前記式において、Mgの一部または総てが、Co、Zn、Mn、及びNiから選択される元素によって置換されてなるか、Nbの一部が、TaまたはSbによって置換されてなるか、ZrまたはTiの一部が、Sb、Fe、Al、及びCrから選択される元素によって置換されてなるか、の一以上の組成の修正が行われてなる圧電体膜26が提供される。このような組成の修正によって、圧電ひずみ定数、比誘電率、及びヤング率を容易に適切な値に制御することが可能となる。特に比誘電率の制御は、圧電体膜26の発熱量を制御する観点から好ましい。
本実施形態の好ましい態様によれば、PbまたはPb化合物(例えば、PbO)を、Pb:(Mg+Nb+Zr+Ti)=1〜1.2:1のモル比の範囲で更に含有してなる組成を有する圧電体薄膜が提供される。より好ましいモル比は1〜1.15:1である。このようなPb成分が過剰な圧電体薄膜は、大きな圧電ひずみ定数を有することから好ましい。
圧電素子23について容量Cを有するコンデンサーとしての機能を見る。このとき、電界が時間に依存する電圧V(V=V(t):tは時間)を圧電素子23に印加すると、圧電素子23に流れる電流iはi=C(dV/dt)となる。この時に圧電素子23に発生する発熱量Qはi×iに比例する。従って、圧電素子23の容量Cを下げること、換言すれば、圧電体膜26の比誘電率を抑制することが発熱量Qを低下させるために重要となる。
一方、圧電体膜26の電圧印加時の歪み量は、印加電圧に比例する。圧電歪み特性の低下を印加電圧の増加で補っても、前記i=C(dV/dt)の関係から電圧Vの時間勾配を一定にしておけば、電流iの増加を抑制して発熱の弊害を小さくできる。
このような圧電体膜26の組成は、後記する製造法にてゾル組成物中の金属組成を制御することで制御することができる。
(圧電体薄膜の製造法)
(スパッタ法)
薄膜作製の好ましい手法としてスパッタリングが挙げられる。すなわち、特定成分のPZT焼結体をスパッタリングのターゲットとして用い、電極膜上にスパッタリングによりアモルファス状の圧電体膜前駆体膜を形成する。
次に、このアモルファス状の圧電体膜前駆体膜を加熱し結晶化し、焼結させる。この加熱は酸素雰囲気中(例えば、酸素中、または酸素とアルゴン等の不活性ガスとの混合ガス中)において行われるのが好ましい。加熱工程は酸素雰囲気中で圧電体膜前駆体膜を好ましくは500〜700℃の温度で加熱する。加熱によって圧電体膜前駆体膜を結晶化させ、さらに結晶粒径が0.005μm以上0.2μm以下の範囲となるよう実施される。
上記圧電体膜26は次の二つの修正ゾルゲル法によって好ましく製造することができる。
(第一の態様によるゾルゲル法による製造法)
図15は圧電素子の製造方法を説明するための模式図である。以下図に従って圧電素子の製造方法を説明する。
(工程a)
本実施形態による圧電体膜26の製造法は、ゾルゲル法を基本とする。すなわち、圧電体膜26を形成可能な金属成分の水酸化物の水和錯体すなわちゾルを脱水処理してゲルとし、このゲルを加熱焼成して無機酸化物、すなわち圧電体膜26、を調製する方法を基本とする。
本実施形態において、圧電体膜26を構成する金属成分のゾルは、圧電体膜26を形成可能な金属のアルコキシドまたはアセテートを、例えば酸で加水分解して調製することができる。本実施形態においてはゾル中の金属の組成を制御することで、上記した圧電体膜26の組成を得ることができる。すなわち、チタン、ジルコニウム、鉛、さらには他の金属成分のそれぞれのアルコキシドまたはアセテートを出発原料とする。本実施形態にあっては、最終的に圧電体膜26とされるまでに圧電体膜26を構成する金属成分の組成がほぼ維持されるという利点を有する。すなわち、焼成及びアニール処理中に金属成分、とりわけ鉛成分、の蒸発等による変動が極めて少ない。従ってこれら出発原料における金属成分の組成は、最終的な圧電体膜26中の金属組成と一致することとなる。言い換えれば、ゾルの組成は、生成しようとする圧電体膜26に応じて決定される。
また、上記したPb成分が過剰となる圧電体膜26を得るためにゾルにおいて、鉛成分を、化学量論から要求される量よりも20モル%まで、好ましくは15モル%まで過剰とするのが好ましい。
このゾルは有機高分子化合物と混合された組成物として用いられるのが好ましい。この有機高分子化合物は、乾燥及び焼成時に圧電体膜26の残留応力を吸収し、圧電体膜26にクラックが生ずることを有効に防止する。具体的には、この有機高分子を含むゲルを用いると、後記するゲル化された圧電体膜26において細孔が生じる。この細孔が、更に後記するプレアニール及びアニール工程において薄膜の残留応力を吸収するものと考えられる。ここで、好ましく用いられる有機高分子化合物としては、ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアミド、ポリアミック酸、アセチルセルロース及びその誘導体、ならびにそれらの共重合体が挙げられる。尚、ポリ酢酸ビニルを添加することで0.05μm程度の細孔を多数有する多孔質ゲル薄膜に対して、ヒドロキシプロピルセルロースを添加することで1μm以下の大きさでかつ広い分布をもった多孔質ゲル薄膜を形成することができる。
ポリエチレングリコールは平均分子量285〜420程度のものが好ましい。また、ポリプロピレングリコールとしては平均分子量300〜800程度のものが好ましい。
図15(a)に示すように、まず、シリコンウエハー78上に下部電極24が設置される。下部電極24はチタン(Ti)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)及びチタン(Ti)の積層膜を成膜する。次に、積層膜をフォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いて所定の形状に形成する。
次に、圧電体膜26を形成しようとするシリコンウエハー78上にゾル組成物を塗布する。塗布方法は特に限定されず、慣用されている方法、例えば、スピンコート、ディップコート、ロールコート、バーコート等によって行われてよい。また、フレキソ印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷等によって塗布することも可能である。
塗布により形成される膜の厚さは、以下の工程を考慮すると、後記する(工程b)において形成される多孔質ゲル薄膜の厚さが0.01μm以上となるよう制御されるのが好ましく、より好ましくは0.1〜1μm程度となるよう制御される。塗布後、膜は乾燥される。乾燥は自然乾燥、または200℃以下の温度に加熱することで行われてよい。乾燥された膜上に更に膜を塗布して膜厚を厚くすることができる。この態様にあっては、下地となる膜は80℃以上の温度で乾燥されるのが好ましい。
(工程b)
この工程では、(工程a)で得られたゾル組成物の膜をゲル化する。すなわち、(工程a)で得られた膜を焼成し、残留有機物を実質的に含まない非晶質の金属酸化物からなる多孔質ゲル薄膜87とする。本工程を本明細書においては仮焼成工程と呼ぶ場合がある。
焼成は、ゾル組成物の膜をゲル化し、かつ膜中から有機物を除去するのに十分な温度で、十分な時間加熱されることよって行われる。焼成温度は300〜450℃の範囲が好ましく、より好ましくは350〜400℃の範囲である。焼成時間は温度及び使用する炉の形式によって変化するが、例えば脱脂炉を用いた場合、10〜120分程度が好ましく、より好ましくは15〜60分程度であり、またホットプレートを用いた場合、1〜60分程度が好ましく、より好ましくは5〜30分程度である。
以上の(工程a)及び(工程b)によって、シリコンウエハー78上に設けられた下部電極24上に、多孔質ゲル薄膜87が形成される。
(工程c)
図15(b)に示すように、(工程c)は、上記(工程b)によって得られた多孔質ゲル薄膜87を加熱焼成して、結晶質の金属酸化物からなる膜88に変換する工程である。本工程を本明細書においてはプレアニール工程と呼ぶ場合がある。
焼成は、多孔質ゲル薄膜87を、結晶質の金属酸化物からなる膜88に変換するのに必要な温度で加熱されることよって行われてよい。但し、この焼成は結晶中にペロブスカイト型結晶が大部分を占めるまで行われる必要はない。多孔質ゲル薄膜87が均質に結晶化した時点で焼成は終了されてよい。焼成温度としては400〜800℃の範囲が好ましく、より好ましくは550〜750℃の範囲である。焼成時間は温度及び使用する炉の形式によって変化するが、例えばアニール炉を用いた場合、0.1〜5時間程度が好ましく、より好ましくは0.5〜2時間程度であり、またRTA(Rapid Thermal Annealing)炉を用いた場合、0.1〜10分程度が好ましく、より好ましくは1〜5分程度である。
このプレアニールを二段階に分けて実施するのが好ましい。具体的には、その第一段階を400℃〜600℃の範囲の温度で行い、第二段階を600℃〜800℃以下の範囲の温度で行うことが好ましい。より好ましい態様によれば、第一段階を450〜550℃の温度で行い、第二段階を600〜750℃の温度で行う。(工程c)によって、多孔質ゲル薄膜87が結晶質の金属酸化物からなる膜88に変換される。
(工程d)
図15(c)〜図15(e)に示すように、上記(工程a)、(工程b)、及び(工程c)を少なくとも一回以上繰り返して実施し、結晶質の金属酸化物の膜を積層する。繰り返される上記(工程a)、(工程b)、及び(工程c)における膜厚、仮焼成温度、プレアニール条件は、基板上に第一回の膜を形成した場合と同様であってよい。
この工程の結果得られる積層膜の膜厚は最終的な圧電体薄膜の膜厚を考慮して適宜決定されてよいが、次の(工程e)においてクラック等が発生しない膜厚であることが好ましいことは言うまでもない。
この(工程d)を模式的に示せば、まず図15(c)にあるように、先に形成された膜88上に新たに多孔質ゲル薄膜87を形成し、その後でプレアニールする。その結果、図15(d)に示されるように、新たな多孔質ゲル薄膜87は先に形成された膜88と実質的に一体化された膜88とされる。ここで実質的に一体化された膜88とは、積層された層間に不連続層がない場合のみならず、最終的な圧電体膜26の場合と異なり、積層された層間に不連続層がある膜88となってもよい。そして、さらに(工程a)、(工程b)、及び(工程c)を繰り返すならば、図15(e)にあるように、新たな多孔質ゲル薄膜87が形成される。その後でプレアニールする。その結果、図15(f)に示されるようにこの多孔質ゲル薄膜87は結晶質が積層された膜88と実質的に一体化された膜とされる。
図15(g)に示すように、圧電体膜26の形状に膜88をパターンニングする。さらに、膜88上に白金の膜を成膜する。次に、フォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いて白金の膜を所定の形状に形成し上部電極25とする。
(工程e)
本工程は、以上のようにして得られた結晶質の金属酸化物からなり積層された膜88を更に焼成してペロブスカイト型結晶を成長させる工程である。本工程を本明細書においてはアニール工程と呼ぶことがある。
焼成温度としては600〜1200℃の範囲が好ましく、より好ましくは800〜1000℃の範囲である。焼成時間は温度及び使用する炉の形式によって変化する。焼成時間は、例えば、アニール炉を用いた場合、0.1〜5時間程度が好ましく、より好ましくは0.5〜2時間程度である。焼成時間は、RTA炉を用いた場合、0.1〜10分程度が好ましく、より好ましくは0.5〜3分程度である。
また、このアニールを二段階に分けて実施するのが好ましい。具体的には、その第一段階を600℃〜800℃の範囲の温度で行い、第二段階を800℃〜1000℃以下の範囲の温度で行うことが好ましい。より好ましい態様によれば、第一段階を600〜750℃の温度で行い、第二段階を800〜950℃の温度で行う。以上の操作によって、薄膜断面に層状の不連続面を有さない圧電体膜26を製造することができる。
このアニール工程によって膜88では結晶粒が成長し、結晶粒の平均粒径が0.005μm以上0.2μm以下の範囲にある圧電体膜26を得ることができる。この工程によって得られた不連続面を有さない圧電体膜26の上にはさらに上部電極25が設置されている。
(第二の態様によるゾルゲル法による製造法)
図16は圧電素子の製造方法を説明するための模式図である。以下図に従って圧電素子の製造方法を説明する。
(工程a)及び(工程b)
第二の態様の圧電体膜の製造法における(工程a)及び(工程b)は、第一の態様による圧電体薄膜の製造法における(工程a)のゾル組成物を塗布する工程及び(工程b)の仮焼成工程と同一である。従って、説明を省略する。
(工程a)及び(工程b)の結果、図16(a)に示すように、下部電極24及び多孔質ゲル薄膜87が形成されたシリコンウエハー78が得られる。
(工程c)
図16(b)に示すように、(工程a)及び(工程b)を少なくとも一回以上繰り返し、多孔質ゲル薄膜87の積層膜を形成する。繰り返される上記(工程a)及び(工程b)における膜厚、仮焼成温度は、基板上に第一回の膜を形成した場合と同様であってよい。積層膜の膜厚は1μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以下である。この程度の積層膜の膜厚であると、次の(工程d)におけるプレアニールを、クラック等の発生なしに効率よく実施することができる。
(工程d)
図16(c)に示すように、この工程は、(工程c)によって得られた多孔質ゲル薄膜87の積層膜を焼成して、結晶質の金属酸化物からなる膜88に変換する工程である。第一の態様による方法における(工程c)と類似の工程である。本明細書においては本工程についてもプレアニール工程と呼ぶことがある。
焼成は、多孔質ゲル薄膜87の積層膜を、結晶質の金属酸化物からなる膜88に変換するのに必要な温度で加熱されることよって行われてよい。但し、この焼成は結晶中にペロブスカイト型結晶が大部分を占めるまで行われる必要はない。ゲル薄膜が均質に結晶化した時点で焼成は終了されてよい。焼成の温度及び時間については、第一の態様による方法における(工程c)とほぼ同様であってよい。また、第一の態様による方法における(工程c)と同様に二段階に分けて実施されてよい。この工程の結果、多孔質ゲル薄膜87の積層膜が結晶質の薄膜88に変換される。
(工程e)
図16(d)及び図16(e)に示すように(工程c)及び(工程d)の工程を少なくとも一回以上繰り返す。すなわち、前記の(工程a)及び(工程b)を少なくとも一回以上繰り返し、多孔質ゲル薄膜の積層膜を形成し、その積層膜を焼成して結晶質の金属酸化物からなる膜に変換する工程を、更に少なくとも一回以上繰り返す。そして、結晶質の金属酸化物からなる膜88の積層膜を形成する。
繰り返される(工程a)及び(工程b)ならびに(工程d)における種々の条件は、上記した条件と同様であってよい。この工程の結果得られる積層膜の膜厚は最終的な圧電体薄膜の膜厚を考慮して適宜決定されてよいが、(工程e)においてクラック等が発生しない膜厚であることが好ましいことは言うまでもない。
この工程の結果、図16(d)に示すように先に形成された膜88の上に、新たな多孔質ゲル薄膜87の積層膜が形成される。そして、プレアニール工程によって図16(e)に示すように、新たな多孔質ゲル薄膜87の積層膜は先に形成された膜88と実質的に一体化された膜88となる。ここで実質的に一体化された膜88とは、上記したものと同義である。次に、図16(f)に示すように、圧電体膜26の形状に膜88をパターンニングする。
さらに、図16(g)に示すように、膜88上に白金の膜を成膜する。次に、フォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いて白金の膜を所定の形状に形成し上部電極25とする。
(工程f)
本工程は、以上のようにして得られた結晶質の金属酸化物からなる膜88の積層膜を更に焼成してペロブスカイト型結晶を成長させる工程である。第一の態様による方法における(工程e)と類似の工程である。本明細書においては本工程についてもアニール工程と呼ぶことがある。
焼成の温度及び時間については、第一の態様による方法における(工程e)とほぼ同様であってよい。また、第一の態様による方法における(工程e)と同様に二段階に分けて実施されてよい。
(実施例)
(実施例A1)
酢酸鉛0.105モルと、ジルコニウムアセチルアセトナート0.045モルと、酢酸マグネシウム0.005モルとを、30mlの酢酸に、100℃に加熱して溶解させた。室温まで冷却し、チタンテトライソプロポキシド0.040モルと、ペンタエトキシニオブ0.010モルとをエチルセロソルブ50mlに添加し溶解させた。アセチルアセトンを30ml添加して安定化させた後、ポリエチレングリコール#400(関東化学社製、平均分子量380〜420)をゾル中の金属酸化物に対し30重量%の割合で添加し、よく攪拌して均質なゾルとした。
シリコンウエハー78上に白金の下部電極24をスパッタ法で形成しパターニングする。下部電極24の上に前記ゾルをスピンコートで塗布し、400℃で仮焼成した。その結果、クラックを生じることなく、0.3μmの膜厚の非晶質の多孔質ゲル薄膜87を形成できた。更にゾルの塗布と400℃の仮焼成を2度繰り返し、0.9μmの膜厚の多孔質ゲル薄膜87を形成した。次にこの薄膜をRTA炉を用いて酸素雰囲気中、5秒間で650℃に加熱して、1分間保持しプレアニールを行い、0.6μmの膜厚の緻密な膜88とした。
薄膜をエックス線解析により調べたところパイロクロア型結晶ピークが検出された。また、反射型のFT−IR(フーリエ変換赤外吸収スペクトル分析)により調べたところ、3400cm-1付近の水酸基に起因する吸収は検出されなかった。
こうして得られた薄膜に、さらに上で調製したゾルをスピンコートにより塗布し、400℃に仮焼成する工程を三度繰り返して、0.9μmの膜厚の非晶質の多孔質ゲル薄膜87の積層膜を得た。次にRTA炉を用いて650℃で1分間保持することによりプレアニールして、1.2μm厚の結晶質の緻密な膜88を得た。
シリコンウエハー78上に得られた膜88をフォトレジストを用いてパターニングし、ホウフッ酸でエッチングした。レジストを剥離した後、膜88をRTA炉を用いて酸素雰囲気中で900℃において1分間保持してアニールした。1.2μm厚と厚みが変わらない圧電体膜26が得られた。この圧電体膜26をエックス線解析により調べたところペロブスカイト型結晶の鋭く強いピークが検出された。また、シリコンウエハー78を切断しSEM(走査型電子顕微鏡)で圧電体膜26の断面を観察したところ、微小粒径の結晶が均質かつ緻密に分布し、積層による層状の不連続面が存在しないことが確認された。また、圧電体膜26の試料を作成しTEM(透過型電子顕微鏡)により圧電体を観察したところ、平均粒径0.03μmの結晶粒から圧電体膜26が構成されていることがわかった。
以上のようにして得られた圧電体膜26上にアルミニウム膜を蒸着法で形成してパターニングして上部電極25を形成した。その後分極して、圧電素子23とした。圧電素子23の物性を測定したところ、比誘電率は2000、圧電ひずみ定数は150pC/Nと優れた特性を示した。
PZT薄膜をフッ酸で溶かしICP(プラズマ発光分析)で定量したところ、組成のモル比はPb:Mg:Nb:Zr:Ti=1.00:0.05:0.10:0.45:0.40であり、鉛の減少が若干みられたものの、他の元素に関しては原料仕込組成と同一であった。
以上のようにして得られた圧電素子23を用いて超音波プローブ13を作成した。この超音波プローブ13を用いて超音波を出力させたところ、充分な出力が得られた。
(実施例A2〜5)
実施例A1と同様の方法で塗布液を調製したが、但しマグネシウムのモル比0.067とニオブのモル比0.133を固定し、次の表1に示されるようにジルコニウムとチタンのモル比を変動させて6種類の塗布液を用意した。またポリエチレングリコールとして、ポリエチレングリコール#300(関東化学社製、平均分子量285〜315)を用いた。シリコンウエハー78の下部電極24上にこのゾルを塗布後、400℃で仮焼成することで、膜厚0.3μmの非晶質体の多孔質ゲル薄膜87を形成した。更にゾルの塗布と400℃の仮焼成を2度繰り返し、0.9μmの膜厚の多孔質ゲル薄膜87を形成した。次のこの薄膜をRTA炉を用いて、酸素雰囲気中で、急速に650℃に加熱して1分間プレアニールした。その結果、0.6μm厚の結晶質の緻密な膜88が得られた。以上の操作を10回繰り返した(すなわち、塗布液の塗布の回数は30回であった)。RTA炉を用いて、酸素雰囲気中、850℃で1分間保持して膜88をアニールした。その結果、厚さ6μmの圧電体膜26が得られた。得られた圧電体膜26上にアルミニウムの膜を蒸着法で形成しパターニングして上部電極25を形成した。その後分極して、圧電素子23とした。この圧電素子23の平均結晶粒径及び圧電ひずみ定数は次の表に示される通りであった。総てのサンプルにおいてクラック発生は観察されなかった。また圧電体膜26の断面には積層による層状の不連続面は存在しなかった。
Figure 2016018835
(実施例A6〜9)
実施例A1と同様の方法で塗布液を調製したが、但しマグネシウムのモル比0.033とニオブのモル比0.067を固定し、次の表2に示すようにジルコニウムとチタンのモル比を変動させて6種類の塗布液を用意した。シリコンウエハー78の下部電極24上にこのゾルを塗布後、400℃で仮焼成する工程を3度繰り返すことで、膜厚0.9μmの非晶質体の多孔質ゲル薄膜87を形成した。次にこの多孔質ゲル薄膜87を拡散炉を用いて、酸素雰囲気中、550℃で10分間プレアニールした。その結果0.6μm厚の結晶質の緻密な膜88が得られた。以上の操作を15回繰り返した(すなわち塗布液の塗布の回数は45回であった)。RTA炉を用いて、酸素雰囲気中、950℃で1分間保持し、膜88をアニールした。その結果、厚さ9μmの圧電体膜26が得られた。得られた圧電体膜26上にアルミニウム電極を蒸着法で形成しパターニングして上部電極25を形成した。その後分極して、圧電素子23とした。この圧電素子23の平均結晶粒径及び圧電ひずみ定数は次の表に示される通りであった。総てのサンプルにおいてクラック発生は観察されなかった。また圧電体膜26の断面には積層による層状の不連続面は存在しなかった。
Figure 2016018835
(実施例A10〜14)
実施例A1と同様の方法で塗布液を調製したが、但しジルコニウムとチタンのモル比を1:1に固定し、表3に示すようにマグネシウムとニオブとの加算モル比を変動させて7種類の塗布液を用意した。ここでマグネシウムとニオブのモル比は1:2で固定とした。シリコンウエハー78の下部電極24上にこのゾルを塗布後、350℃で仮焼成することで、非晶質の多孔質ゲル薄膜87を形成した。次にこの多孔質ゲル薄膜87を550℃で1時間プレアニールすることにより、結晶質の緻密な膜88が得られた。以上の操作を4回繰り返し、膜88を得た。膜88を拡散炉に酸素を流しながら850℃で20分間アニールした。その結果、厚さ2μmの圧電体膜26を得た。得られた圧電体膜26上にアルミニウムの膜を蒸着法で形成しパターニングして上部電極25を形成した。その後分極して、圧電素子23とした。この圧電素子23の平均結晶粒径及び圧電ひずみ定数は次の表に示される通りであった。
総てのサンプルにおいてクラック発生は観察されなかった。また圧電体膜26の断面には積層による層状の不連続面は存在しなかった。
Figure 2016018835
(実施例A15)
実施例A1と同様の組成の金属酸化物の非晶質層を、シリコンウエハー78の下部電極24上にスパッタ法を用い5μmの膜厚で成膜した。金属酸化物のスパッタターゲットとして、成膜した薄膜の金属モル比がPb:Mg:Nb:Zr:Ti=1.00:0.05:0.10:0.45:0.40となるように製造したものを用いた。成膜した膜88を、RTA炉を用いて酸素雰囲気中、900℃で1分間保持し、アニールした。得られた圧電体膜26上にアルミニウム膜を蒸着法で形成しパターニングして上部電極25を形成した。その後分極して圧電素子23とした。得られた圧電素子23の結晶粒の平均粒径は0.05μmであった。また、その比誘電率は1800、圧電ひずみ定数は140pC/Nと優れた圧電体薄膜素子特性を示した。
実施例A1と同様な方法で、この圧電素子23を用いた超音波プローブ13を組み立て、超音波を出力させたところ、充分な出力が得られた。
(比較例A7)
RTA炉を用いたアニールを750℃で行った以外は実施例A1と同様にして圧電素子23を得た。この圧電素子23の結晶粒の平均粒径は0.005μm未満で定量できなかった。また、比誘電率は800にとどまり、圧電ひずみ定数も40pC/Nであった。
(比較例A8)
RTA炉を用いたアニールを1100℃で行った以外は実施例A1と同様にして圧電素子23を得た。この圧電素子23の鉛成分は実施例A1と比較して20%程度不足していた。また、圧電素子23の結晶粒の平均粒径は0.5μmと大きく、比誘電率は800、圧電ひずみ定数は20pC/Nであった。
(比較例A9)
実施例A1と同様の塗布液を実施例A1と同様にシリコンウエハー78の下部電極24上に塗布した。このシリコンウエハー78を400℃で仮焼成することで、非晶質の多孔質ゲル薄膜87を形成した。次に、RTA炉を用いて酸素雰囲気中900℃で1分間保持することでアニールし、0.2μm厚の圧電体膜26を得た。以上のアニール工程を6度繰り返し1.2μm厚の圧電体膜26を得た。圧電体膜26にクラックは発生しなかった。実施例A1と同様にして圧電素子23とした。この圧電体膜26は平均粒径0.05μmの結晶粒から圧電体膜26が構成されていたが、比誘電率は1200、圧電ひずみ定数は60pC/Nであった。また、圧電体膜26の断面をSEMで観察すると、0.2μm間隔の層状の不連続面が存在していた。この状態の圧電体膜26にフォトエッチングを行うことは困難であった。
また薄膜中の鉛濃度は実施例A1の場合よりも減少しており、また膜の厚み方向で鉛の濃度分布が生じ、ゾルの組成と異なった薄膜であった。
(実施例B1)
酢酸鉛0.105モルと、ジルコニウムアセチルアセトナート0.045モルと、酢酸マグネシウム0.005モルとを、30mlの酢酸に、100℃に加熱して溶解させた。室温まで冷却し、チタンテトライソプロポキシド0.040モルと、ペンタエトキシニオブ0.010モルとをエチルセロソルブ50mlに添加し溶解させた。アセチルアセトンを30ml添加して安定化させた後、ポリプロピレングリコール(平均分子量400)をゾル中の金属酸化物に対し30重量%の割合で添加し、よく攪拌して均質なゾルとした。
シリコンウエハー78上に白金膜をスパッタ法で形成しパターニングして下部電極24を形成した。下部電極24の上に前記ゾルをスピンコートで塗布し、400℃で仮焼成した。その結果、クラックを生じることなく、0.3μmの膜厚の非晶質の多孔質ゲル薄膜87を形成できた。更にゾルの塗布と400℃の仮焼成を2度繰り返し、0.9μmの膜厚の多孔質ゲル薄膜87を形成した。次に多孔質ゲル薄膜87をRTA炉を用いて酸素雰囲気中、5秒間で650℃に加熱して、1分間保持しプレアニールを行った。その結果、0.6μmの膜厚の緻密な膜88が得られた。膜88をエックス線解析により調べたところパイロクロア型結晶ピークが検出された。また、反射型のFT−IR(フーリエ変換赤外吸収スペクトル分析)により調べたところ、2900cm-1付近のメチレン基に起因する吸収は検出されなかった。
こうして得られた膜88に、さらに上で調製したゾルをスピンコートにより塗布し、400℃に仮焼成する工程を三度繰り返して、0.9μmの膜厚の非晶質の多孔質ゲル薄膜87の積層膜を得た。次にRTA炉を用いて650℃で1分間保持することによりプレアニールして、1.2μm厚の結晶質の緻密な膜88を得た。
得られた膜88をフォトレジストを用いてパターニングし、ホウフッ酸でエッチングした。レジストを剥離した後、膜88をRTA炉を用いて酸素雰囲気中で900℃において1分間保持してアニールした。1.2μm厚と厚みが変わらない圧電体膜26が得られた。この圧電体膜26をエックス線解析により調べたところペロブスカイト型結晶の鋭く強いピークが検出された。またシリコンウエハー78を切断しSEM(走査型電子顕微鏡)で圧電体膜26の断面を観察したところ、微小粒径の結晶が均質かつ緻密に分布し、積層による層状の不連続面が存在しないことが確認された。また、薄膜の試料を作成しTEM(透過型電子顕微鏡)により圧電体膜26を観察したところ、平均粒径0.03μmの結晶粒から圧電体膜26が構成されていることがわかった。さらにクラックの発生も全くなかった。
以上のようにして得られた圧電体膜26上にアルミニウムの膜を蒸着法で形成しパターニングして上部電極25を形成した。その後分極して圧電素子23とした。この圧電素子23の物性を測定したところ比誘電率は2000、圧電ひずみ定数は150pC/Nと優れた特性を示した。
PZT薄膜をフッ酸で溶かしICP(プラズマ発光分析)で定量したところ、組成のモル比はPb:Mg:Nb:Zr:Ti=1.00:0.05:0.10:0.45:0.40であり、鉛の減少が若干みられたものの、他の元素に関しては原料仕込組成と同一であった。
以上のようにして得られた圧電素子23を用いた超音波プローブ13を実施例A1と同様の方法により作成した。この超音波プローブ13により超音波を出力させたところ、充分な出力が得られた。
(実施例B2)
実施例B1と同様の方法で塗布液を調製したが、但しマグネシウムのモル比0.067とニオブのモル比0.133、ジルコニウムのモル比0.45、チタンのモル比を0.35として、さらにポリプロピレングリコール(平均分子量750)をゾル中の金属酸化物に対して30重量%添加した。シリコンウエハー78の下部電極24上にこのゾルを塗布後、400℃で仮焼成することで、膜厚0.3μmの非晶質体の多孔質ゲル薄膜87を形成した。更にゾルの塗布と400℃の仮焼成を2度繰り返し、0.9μmの膜厚の多孔質ゲル薄膜87を形成した。次にこの多孔質ゲル薄膜87をRTA炉を用いて酸素雰囲気中で、急速に650℃に加熱して1分間プレアニールした。その結果、0.6μm厚の結晶質の緻密な膜88が得られた。以上の操作を10回繰り返した(すなわち、塗布の回数は30回であった)。RTA炉を用いて酸素雰囲気中、850℃で1分間保持して膜88をアニールした。その結果、厚さ6μmの圧電体膜26が得られた。得られた圧電体膜26上にアルミニウム膜を蒸着法で形成しパターニングして上部電極25を形成した。その後分極して、圧電素子23とした。
この圧電体膜26の平均結晶粒径は0.03μmであり、またこの圧電素子23の圧電ひずみ定数は150pC/Nであった。またクラックの発生は観察されなかった。さらに圧電体膜26の断面には積層による層状の不連続面は存在しなかった。
(実施例B3)
実施例B1と同様の方法で塗布液を調製したが、但しマグネシウムのモル比0.033、ニオブのモル比0.067、ジルコニウムのモル比0.5、チタンのモル比を0.4として、さらにポリプロピレングリコール(平均分子量400)をゾル中の金属酸化物に対して20重量%を添加した。シリコンウエハー78の下部電極24上にこのゾルを塗布後、400℃で仮焼成する工程を三度繰り返すことで、膜厚0.9μmの非晶質体の多孔質ゲル薄膜87を形成した。次に、この薄膜を拡散炉を用いて酸素雰囲気中、550℃で10分間プレアニールすることにより、0.6μm厚の結晶質の緻密な膜88を得た。以上の操作を15回繰り返した(すなわち、塗布の回数は45回であった)。RTA炉を用いて酸素雰囲気中、950℃で1分間保持してアニールした。その結果、厚さ12μmの圧電体膜26を得た。得られた圧電体膜26上にアルミニウムの膜を蒸着法で形成しパターニングして上部電極25を形成した。その後分極して、圧電素子23とした。
この圧電体膜26の平均結晶粒径は0.08μmであり、またこの圧電素子23の圧電ひずみ定数は170pC/Nであった。また、クラックの発生は観察されなかった。さらに圧電体膜26の断面には積層による層状の不連続面は存在しなかった。
(実施例B4)
実施例B1と同様の方法で塗布液を調製したが、但しマグネシウムのモル比0.04、ニオブのモル比0.08、ジルコニウムのモル比0.22、チタンのモル比を0.22として、さらにポリプロピレングリコール(平均分子量400)をゾル中の金属酸化物に対して40重量%を添加した。シリコンウエハー78の下部電極24上にこのゾルを塗布後、350℃で仮焼成することで、非晶質の多孔質ゲル薄膜87を形成した。次に、この薄膜を550℃で1時間プレアニールすることにより、結晶質の緻密な膜88を得た。更に以上の操作を40回繰り返した。得られた膜88を拡散炉に酸素を流しながら850℃で20分間アニールした。その結果、厚さ20μmの圧電体膜26が得られた。得られた圧電体膜26上にアルミニウムの膜を蒸着法で形成しパターニングして上部電極25を形成した。その後分極して、圧電素子23とした。
この圧電体膜26の平均結晶粒径は0.03μmであり、またこの圧電素子23の圧電ひずみ定数は120pC/Nであった。また、クラックの発生は観察されなかった。さらに圧電体膜26の断面には積層による層状の不連続面は存在しなかった。
(実施例C1)
酢酸鉛0.105モルと、ジルコニウムアセチルアセトナート0.045モルと、酢酸マグネシウム0.005モルとを、30mlの酢酸に、100℃に加熱して溶解させた。室温まで冷却し、チタンテトライソプロポキシド0.040モルと、ペンタエトキシニオブ0.010モルとをエチルセロソルブ50mlに添加し溶解させた。アセチルアセトンを30ml添加して安定化させた後、ポリエチレングリコール#400(関東化学社製試薬 平均分子量380〜420)をゾル中の金属酸化物に対し30重量%添加し、よく攪拌して均質なゾルとした。
シリコンウエハー78上に白金の膜をスパッタ法で形成しパターニングして下部電極24を形成した。下部電極24の上に前記ゾルをスピンコートで塗布し、400℃で仮焼成した。その結果クラックを生じることなく、0.3μmの膜厚の非晶質の多孔質ゲル薄膜87を形成できた。更にゾルの塗布と400℃の仮焼成を2度繰り返し、0.9μmの膜厚の多孔質ゲル薄膜87を形成した。次にこの多孔質ゲル薄膜87をRTA炉を用いて酸素雰囲気中、5秒間で500℃に加熱して5分間保持し、さらに700℃に加熱して1分間保持してプレアニールを行った。その結果、0.6μmの膜厚の緻密な膜88を得た。膜88をエックス線解析により調べたところパイロクロア型結晶ピークが検出された。また、反射型のFT−IR(フーリエ変換赤外吸収スペクトル分析)により調べたところ、2900cm-1付近のメチレン基に起因する吸収は検出されなかった。
こうして得られた薄膜に、さらに上で調製したゾルをスピンコートにより塗布し、400℃に仮焼成する工程を三度繰り返して、0.9μmの膜厚の非晶質の多孔質ゲル薄膜87の積層膜を得た。次にRTA炉を用いて500℃で5分間、さらに700℃で1分間保持してプレアニールを行った。その結果、1.2μm厚の結晶質の緻密な膜88を得た。得られた膜88をフォトレジストを用いてパターニングし、ホウフッ酸でエッチングした。レジストを剥離した後、膜88をRTA炉を用いて酸素雰囲気中、600℃で5分間、さらに900℃で1分間保持してアニールを行った。その結果、1.2μm厚と厚みが変わらない圧電体膜26が得られた。圧電体膜26をエックス線解析により調べたところペロブスカイト型結晶の鋭く強いピークが検出された。シリコンウエハー78を切断し、SEM(走査型電子顕微鏡)により圧電体膜26の断面を観察したところ、微小粒径の結晶が均質かつ緻密に分布し、かつ積層による層状の不連続面が存在しないことを確認した。また、圧電体膜26をTEM(透過型電子顕微鏡)により観察したところ、圧電体膜26は平均粒径0.03μmの結晶粒から構成されていることがわかった。さらに、クラックの発生も全く観察されなかった。
以上のようにして得られた圧電体膜26上にアルミニウムの膜を蒸着法で形成し、パターニングして上部電極25を形成した。その後分極して、圧電素子23とした。圧電素子23の物性を測定したところ、比誘電率は2000、圧電ひずみ定数は160pC/Nと優れた特性を示した。
圧電体膜26をフッ酸で溶かしICP(プラズマ発光分析)で定量したところ、組成のモル比はPb:Mg:Nb:Zr:Ti=1.00:0.05:0.10:0.45:0.40であり、鉛の減少が若干みられたものの、他の元素に関しては原料仕込組成と同一であった。
以上のようにして得られた圧電素子23を用いた超音波プローブ13を実施例A1と同様の方法により作成した。この超音波プローブ13により超音波を出力させたところ、充分な出力が得られた。
(実施例C2)
実施例C1と同様の方法で塗布液を調製したが、但しマグネシウムのモル比0.067とニオブのモル比0.133、ジルコニウムのモル比0.45、チタンのモル比を0.35として、さらにポリエチレングリコール#300(関東化学社製試薬 平均分子量285〜315)をゾル中の金属酸化物に対して30重量%の割合で添加した。シリコンウエハー78の下部電極24上にこのゾルを塗布後、400℃で仮焼成することで、膜厚0.3μmの非晶質体の多孔質ゲル薄膜87を形成した。更にゾルの塗布と400℃の仮焼成を2度繰り返し、0.9μmの膜厚の多孔質ゲル薄膜87を形成した。次にこの多孔質ゲル薄膜87をRTA炉を用いて酸素雰囲気中で、急速に600℃に加熱して5分間保持し、さらに725℃に加熱して1分間保持してプレアニールを行った。その結果、0.6μm厚の結晶質の緻密な膜88が得られた。以上の操作を10回繰り返した(すなわち塗布の回数は30回であった)。RTA炉を用いて酸素雰囲気中、650℃で5分間、さらに900℃で1分間保持して膜88のアニールを行った。その結果、厚さ6μmの圧電体膜26が得られた。得られた圧電体膜26上にアルミニウム膜を蒸着法で形成し、パターニングして上部電極25を形成した。その後分極して、圧電素子23とした。
この圧電体膜26の平均結晶粒径は0.03μmであり、またこの圧電素子23の圧電ひずみ定数は165pC/Nであった。またクラックの発生は観察されなかった。さらに圧電体膜26の断面には積層による層状の不連続面は存在しなかった。
(実施例C3)
実施例C1と同様の方法で塗布液を調製したが、但しマグネシウムのモル比0.033、ニオブのモル比0.067、ジルコニウムのモル比0.5、チタンのモル比を0.4として、さらにポリエチレングリコール#400(関東化学社製試薬 平均分子量380〜420)をゾル中の金属酸化物に対して20重量%の割合で添加した。シリコンウエハー78の下部電極24上にこのゾルを塗布後、400℃で仮焼成する工程を三度繰り返すことで、膜厚0.9μmの非晶質体の多孔質ゲル薄膜87を形成した。次に、この多孔質ゲル薄膜87を拡散炉を用いて酸素雰囲気中、500℃に加熱して5分間保持し、さらに650℃に加熱して10分間保持してプレアニールを行った。その結果、0.6μm厚の結晶質の緻密な膜88を得た。以上の操作を15回繰り返した(すなわち塗布の回数は45回であった)。RTA炉を用いて酸素雰囲気中、700℃で5分間、さらに950℃で1分間保持して膜88のアニールを行った。その結果、厚さ12μmの圧電体膜26が得られた。得られた圧電体膜26上にアルミニウムの膜を蒸着法で形成し、パターニングして上部電極25を形成した。その後分極して、圧電素子23とした。
この圧電体膜26の平均結晶粒径は0.08μmであり、またこの圧電素子23の圧電ひずみ定数は170pC/Nであった。またクラックの発生は観察されなかった。さらにその断面には積層による層状の不連続面は存在しなかった。
(実施例D1)
酢酸鉛0.110モル(鉛成分が10モル%過剰)と、ジルコニウムアセチルアセトナート0.045モルと、酢酸マグネシウム0.005モルとを30mlの酢酸に、100℃に加熱して溶解させた。室温まで冷却し、チタンテトライソプロポキシド0.040モルと、ペンタエトキシニオブ0.010モルとをエチルセロソルブ50mlに添加し溶解させた。アセチルアセトンを30ml添加して安定化させた後、ポリエチレングリコール#400(関東化学社製試薬 平均分子量380〜420)をゾル中の金属酸化物に対し30重量%の割合で添加し、よく攪拌して均質なゾルとした。
シリコンウエハー78上に白金の膜をスパッタ法で形成しパターニングして下部電極24を形成した。下部電極24の上に前記ゾルをスピンコートで塗布し、400℃で仮焼成した。その結果、クラックを生じることなく、0.3μmの膜厚の非晶質の多孔質ゲル薄膜87を形成できた。更にゾルの塗布と400℃の仮焼成を2度繰り返し、0.9μmの膜厚の多孔質ゲル薄膜87を形成した。次にRTA炉を用いて酸素雰囲気中、5秒間で650℃に加熱して、1分間保持しプレアニールを行った。その結果、0.6μmの膜厚の緻密な膜88が得られた。膜88をエックス線解析により調べたところパイロクロア型結晶ピークが検出された。また、反射型のFT−IR(フーリエ変換赤外吸収スペクトル分析)により調べたところ2900cm-1付近のメチレン基に起因する吸収は検出されなかった。
こうして得られた膜88に、さらに上で調整したゾルをスピンコートにより塗布し、400℃に仮焼成する工程を三度繰り返して、0.9μmの膜厚の非晶質の多孔質ゲル薄膜87の積層膜を得た。次にRTA炉を用いて650℃で1分間保持することによりプレアニールして、1.2μm厚の結晶質の緻密な膜88を得た。得られた膜88をフォトレジストを用いてパターニングし、ホウフッ酸でエッチングした。レジストを剥離した後、膜88をRTA炉を用いて酸素雰囲気中で900℃において1分間保持してアニールした。1.2μm厚と厚みが変わらない圧電体薄膜が得られた。この圧電体薄膜をエックス線解析により調べたところペロブスカイト型結晶の鋭く強いピークが検出された。また、シリコンウエハー78を切断しSEM(走査型電子顕微鏡)で圧電体膜26を観察したところ、微小粒径の結晶が均質かつ緻密に分布し、積層による層状の不連続面が存在しないことが確認された。また、圧電体膜26の試料を作成しTEM(透過型電子顕微鏡)により、圧電体を観察したところ、平均粒径0.06μmの結晶粒から圧電体膜26が構成されていることがわかった。さらにクラックの発生も全くなかった。
以上のようにして得られた圧電体膜26上にアルミニウムの膜を蒸着法で形成し、パターニングして上部電極25を形成した。その後分極して、圧電素子23とした。圧電素子23の物性を測定したところ、比誘電率は2300、圧電ひずみ定数は170pC/Nと優れた特性を示した。
圧電体膜26をフッ酸で溶かしICP(プラズマ発光分析)で定量したところ、組成のモル比はPb:Mg:Nb:Zr:Ti=1.04:0.05:0.10:0.45:0.40であり、鉛の減少が若干みられたものの、他の元素に関しては原料仕込組成と同一であった。
以上のようにして得られた圧電素子23を用いた超音波プローブ13を実施例A1と同様の方法により作成した。この超音波プローブ13により超音波を出力させたところ、充分な出力が得られた。
(実施例D2)
実施例D1と同様の方法で塗布液を調製したが、但し、鉛成分を15モル%過剰とし、マグネシウムのモル比を0.067とニオブのモル比を0.133、ジルコニウムのモル比を0.45、チタンのモル比を0.35として、さらにポリエチレングリコール#300(関東化学社製試薬 平均分子量285〜315)をゾル中の金属酸化物に対し30重量%の割合で添加した。シリコンウエハー78の下部電極24上にこのゾルを塗布後、400℃で仮焼成することで、膜厚0.3μmの非晶質体の多孔質ゲル薄膜87を形成した。更にゾルの塗布と400℃の仮焼成を2度繰り返し、0.9μmの膜厚の多孔質ゲル薄膜87を形成した。次にこの多孔質ゲル薄膜87をRTA炉を用いて酸素雰囲気中、急速に650℃に加熱して1分間プレアニールした。その結果、0.6μm厚の結晶質の緻密な膜88を得た。更に以上の操作を10回繰り返した(すなわち、塗布の回数は30回であった)。その結果、厚さ6μmの膜88が得られた。RTA炉を用いて酸素雰囲気中850℃で1分間保持し、膜88をアニールした。得られた圧電体膜26上にアルミニウム膜を蒸着法で形成し、パターニングして上部電極25を形成した。その後分極して、圧電素子23とした。
この圧電体膜26の平均結晶粒径は0.05μmであり、またこの圧電素子23の比誘電率は2400、圧電ひずみ定数は175pC/Nであった。またクラック発生は観察されなかった。さらに圧電体膜26の断面には積層による層状の不連続面は存在しなかった。
(実施例D3)
実施例D1と同様の方法で塗布液を調製したが、但し、鉛成分を20モル%過剰とし、マグネシウムのモル比を0.033とニオブのモル比を0.067、ジルコニウムのモル比を0.5、チタンのモル比を0.4として、さらにポリエチレングリコール#400(関東化学社製試薬 平均分子量380〜420)をゾル中の金属酸化物に対して20重量%の割合で添加した。シリコンウエハー78の下部電極24上にこのゾルを塗布後、400℃で仮焼成する工程を三度繰り返すことで、膜厚0.9μmの非晶質体の多孔質ゲル薄膜87を形成した。次に、この多孔質ゲル薄膜87を拡散炉を用いて酸素雰囲気中、550℃で10分間プレアニールした。これによって0.6μm厚の結晶質の緻密な膜88を得た。以上の操作を15回繰り返した(すなわち、塗布の回数は45回であった)。その結果、厚さ12μmの膜88が得られた。RTA炉を用いて酸素雰囲気中950℃で1分間保持し、膜88をアニールした。得られた圧電体膜26上にアルミニウム膜を蒸着法で形成し、パターニングして上部電極25を形成した。その後分極して、圧電素子23とした。
この圧電体膜26の平均結晶粒径は0.08μmであり、またこの圧電素子23の比誘電率は2300、圧電ひずみ定数は185pC/Nであった。またクラックの発生は観察されなかった。さらに圧電体膜26の断面には積層による層状の不連続面は存在しなかった。
実施例A1と同様な方法で実施例D2及びD3の圧電素子23を用いた超音波プローブ13を製造した。この超音波プローブ13により超音波を出力させたところ、充分な出力が得られた。
(実施例E1)
酢酸ビスマス0.002モルと、酢酸鉛0.103モルと、ジルコニウムアセチルアセトナート0.045モルと、酢酸マグネシウム0.005モルとを30mlの酢酸に、100℃に加熱して溶解させた。室温まで冷却し、チタンテトライソプロポキシド0.040モルと、ペンタエトキシニオブ0.010モルとをエチルセロソルブ50mlに溶解させて添加した。アセチルアセトンを30mlを添加して安定化させた後、ポリエチレングリコールをゾル中の金属酸化物に対し30重量%の割合で添加し、よく攪拌して均質なゾルとした。
シリコンウエハー78上に白金の膜をスパッタ法で形成しパターニングして下部電極24を形成した。下部電極24の上に前記ゾルをスピンコートで塗布し、400℃で仮焼成した。その結果、クラックを生じることなく、0.3μmの膜厚の非晶質の多孔質ゲル薄膜87を形成できた。更にゾルの塗布と400℃の仮焼成を2度繰り返し、0.9μmの膜厚の多孔質ゲル薄膜87を形成した。次にこの多孔質ゲル薄膜87をRTA炉を用いて酸素雰囲気中、5秒間で650℃に加熱して、1分間保持しプレアニールを行った。その結果、0.6μmの膜厚の緻密な膜88が得られた。この膜88をエックス線解析により調べたところパイロクロア型結晶ピークが検出された。また、反射型のFT−IRにより調べたところ3400cm-1付近の水酸基に起因する吸収は検出されなかった。
こうして得られた膜88に、さらに上で調製したゾルをスピンコートにより塗布し、400℃に仮焼成する工程を三度繰り返して、0.9μmの膜厚の非晶質の多孔質ゲル薄膜87の積層膜を得た。次にこの積層膜をRTA炉を用いて650℃で1分間保持することによりプレアニールして、1.2μm厚の結晶質の緻密な膜88を得た。
得られた膜88をフォトレジストを用いてパターニングし、ホウフッ酸でエッチングした。レジストを剥離した後、膜88をRTA炉を用いて酸素雰囲気中で900℃において1分間保持して膜88をアニールした。1.2μm厚と厚みが変わらない圧電体膜26が得られた。この圧電体膜26をエックス線解析により調べたところペロブスカイト型結晶の鋭く強いピークが検出された。また、シリコンウエハー78を切断しSEM(走査型電子顕微鏡)により圧電体膜26の断面を観察したところ、微小粒径の結晶が均質かつ緻密に分布し、積層による層状の不連続面が存在しないことが確認された。また、圧電体膜26の試料を作成しTEM(透過型電子顕微鏡)で、圧電体膜26を観察したところ、平均粒径0.03μmの結晶粒から圧電体膜26が構成されていることがわかった。圧電体膜26をフッ酸で溶かしICP(プラズマ発光分析)で定量したところ、モル比はPb:Bi:Mg:Nb:Zr:Ti=0.98:0.02:0.05:0.10:0.45:0.40であり、鉛の減少が若干みられたものの、他の元素に関しては原料仕込組成と同一であった。
本実施例において得られた圧電体膜26の組成は(Pb+Bi):Mg:Nb:Zr:Tiと書き直すと1.00:0.05:0.10:0.45:0.40となり、実施例A1と同一の組成比となる。即ち、本実施例E1の圧電体膜26の組成は、実施例A1におけるPbの2%をBiで置換した構造となった。得られた圧電体膜26上にアルミニウム膜を蒸着法で形成し、パターニングして上部電極25を形成した。その後分極して、圧電素子23とした。この圧電素子23の物性を測定したところ比誘電率は1000、圧電ひずみ定数は120pC/Nの特性を示した。
本実施例による圧電体膜26の特性を実施例A1のそれと比較すると、比誘電率に於いて50%、圧電ひずみ定数に於いて20%下回る。しかしながら本実施例の圧電体膜26は、圧電素子23の占有面積を大きくした超音波プローブ13において、発熱の観点から極めて有利なものであった。
以上のようにして得られた圧電素子23を用いて、超音波プローブ13を作成した。圧電体膜26の大きさは実施例A1と同一とした。圧電体膜26の圧電歪み特性の不足分を補う為、印加電圧を20%大きくした。その結果、超音波の出力特性を損なうこと無く、一方で圧電体膜26の駆動時における発熱量を75%減少することが出来た。
(実施例E2)
ゾルの原材料に、酢酸ランタン0.005モル、酢酸鉛0.998モル、ジルコニウムアセチルアセトナート0.045モル、酢酸マグネシウム0.005モル、チタンテトライソプロポキシド0.040モル、ペンタエトキシニオブ0.010モルを用いた以外は実施例E1と同様にして圧電体薄膜を形成した。
得られた圧電体膜26の組成は、Pb:La:Mg:Nb:Zr:Ti=0.95:0.05:0.05:0.10:0.45:0.40となり、(Pb+La):Mg:Nb:Zr:Tiと書き直すと1.00:0.05:0.10:0.45:0.40となった。即ち実施例A1の圧電体膜26に於けるPbの5%をLaと置換したこととなった。得られた圧電体膜26の圧電特性を分極後に測定したところ、その比誘電率は2500、圧電ひずみ定数は140pC/Nであった。圧電体膜26のヤング率Yは5×1010Paとなり、実施例A1の圧電体膜26のヤング率Y=6×1010Paと比較して柔らかい膜質となった。
(実施例E3〜15)
圧電体膜26の化学式がxPb(Mg1/3 Nb2/3)O3−yPbZrO3−zPbTiO3(x,y,zはモル比を表し、x+y+z=1)系圧電体材料において、この化学式中のPb、Zr、Ti、Nbの一部、Mgの一部または総てを他の元素で置換した圧電体膜26を以下実施例E2と同様にして調製した。
PbをSr、Ca、またはBaと置換した圧電体膜26の比誘電率及びヤング率は表4に示される通りであった。尚、ゾルの原料としては、Srはジエトキシストロンチウムを、Ca及びBaは各々酢酸塩を用いた。
Zr及びTiをSb、Fe、AlまたはCrと置換した圧電体膜26の比誘電率及びヤング率は表5に示される通りであった。尚、ゾルの原料としては、Sbはトリエトキシアンチモンを、Fe、Al及びCrは各々酢酸塩を用いた。
MgをCo、Zn、MnまたはNiと置換した圧電体膜26の比誘電率及びヤング率は表6に示される通りであった。尚、ゾルの原料としては、各々酢酸塩を用いた。
NbをTaまたはSbと置換した圧電体膜26の比誘電率及びヤング率は表7に示される通りであった。尚、ゾルの原料としては、トリエトキシアンチモン、またはペンタメトキシタンタルを用いた。
Figure 2016018835
Figure 2016018835
Figure 2016018835
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(実施形態2)
次に、圧電素子の一実施形態について図18を用いて説明する。本実施形態が実施形態1と異なるところは、下部電極24が3層からなり、圧電体膜26の100面配向度が40%以上70%以下になっている点にある。尚、実施形態1と同じ点については説明を省略する。
(Ti核と圧電体膜の配向度との関係の説明)
図17は、圧電体薄膜の100面配向度とTi核の厚さとの関係を測定した結果を示す図である。図17に示す測定結果の圧電素子では下部電極はZrO2膜上にIr層/Pt層/Ir層がこの順で積層されている。そして、圧電体膜ではTi核が形成され、更に圧電体前駆体膜を形成して結晶化されている。そして、相関線は、圧電体薄膜の100面配向度とTi核の厚さとの関係を測定した結果を示す。第1相関線91は、Ptを含む下部電極第二層の厚さが下部電極全体の厚さに対して10%程度の場合を示す。この場合には、Ti核の厚さが4nm以上6nm以下では100面配向度を約90%まで高めることが可能である。しかし、100面配向度をこれと異なる値に調整しようとする場合、Ti核の厚さの変化に対する100面配向度の変動が大きすぎ、所望の100面配向度を安定して再現性良く得ることができない。
これに対して第2相関線92は、Ptを含む下部電極第二層の厚さの下部電極全体の厚さに対する比率を第1相関線91の場合より増加させた場合を示す。この場合には、Ptの影響を受けて圧電体薄膜の111面配向度が上昇し、100面配向度が第1相関線91の場合より低くなるとともに、Ti核の厚さが4nm以上6nm以下において、100面配向度が安定した値を示している。
このように、Ti核の厚さを4〜6nmとするとともに、下部電極全体の厚さに対するPt層の厚さの割合を調節することにより、100面配向度(100面配向度と111面配向度との比率)を所望の割合に再現性良く合わせ込むことが可能となる。
以下、好適な実施形態を、図面を参照しながら説明する。図18は、圧電素子の構造を示す模式側断面図である。図18に示すように、圧電素子93は基体44を有し、基体44上に酸化膜94、ZrO2膜95、下部電極96、圧電体膜97及び上部電極98を順次積層して構成されている。
酸化膜94は、例えば厚さ220μmの単結晶シリコンからなる基体44上に形成する。好適には、酸化ケイ素(SiO2)からなる膜を1.0μmの厚さに形成して得る。
ZrO2膜95は、弾性を備える層であって、酸化膜94と一体となって可撓膜99を構成している。このZrO2膜95は、弾性を与える機能を備えるため、好ましくは、200nm以上800nm以下の厚みを有する。
ZrO2膜95と下部電極96の間には、双方の層を密着するような金属、好ましくは、チタンまたはクロムからなる密着層(図示しない)を設けてもよい。密着層は、圧電素子93の設置面への密着性が良くするために形成するものであり、当該密着性が確保できる場合には形成しなくてもよい。また、密着層を設ける場合は、最低限の密着性が確保できるようにするため、好ましくは、10nm以上の厚みとする。
下部電極96は、最下層に位置しIrを含む第三層101と、下部電極96の厚さに対して30%以上50%以下の厚さであって、Ptを含む第二層102と、最上層に位置しIrを含む第一層103とから構成されている。下部電極96の全体の厚みは特に制限はなく、例えば100nmとする。尚、焼成前における密着層の厚みをd0、第三層101の厚みをd1、第二層の厚みをd2、第一層の厚みをd3、焼成後の下部電極全体の厚みをdTとしたとき、
dT=3.6×d0+2.4×d1+0.8×d2+2.3×d3
の関係が満たされることが好ましい。
下部電極96の上にはTi核の層(図示しない)が形成されている。Ti核は、4nm以上6nm以下の厚みである。
圧電体膜97は、通常の圧電性セラミックスの結晶で構成された強誘電体であり、好ましくは、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電性材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケルまたは酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したものからなる。圧電体膜97の組成は圧電素子の特性、用途等を考慮して適宜選択する。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)または、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)等が好適に用いられる。また、チタン酸鉛やジルコニウム酸鉛にニオブ(Nb)を適宜添加することにより、圧電特性に優れた膜を得ることができる。
圧電体膜97は、X線回折広角法により測定した100面配向度が40%以上70%以下である。そして、110面配向度は10%以下、111面配向度が残部である。
圧電体膜97の厚みは、製造工程でクラックが発生しない程度に抑え、一方、十分な変位特性を呈する程度に厚くする必要があり、例えば1500nmとする。
上部電極98は、下部電極96と対になる電極であり、好適には、PtまたはIrにより構成される。上部電極98の厚みは、好適には50nm程度である。
(実施形態3)
図19は、圧電素子の構造を示す模式側断面図である。本実施形態の圧電素子104では、下部電極105は、下部電極105の厚さに対して30%以上50%以下の厚さであって、Ptを含む最下層である第二層106と、Irを含む最上層である第一層107とから構成されている点が、上記実施形態2と異なっている。
(実施形態4)
図20は、圧電素子の構造を示す模式側断面図である。本実施形態の圧電素子108では、下部電極109は、Irを含む最下層である第二層110と、下部電極109の厚さに対して20%以上40%以下の厚さであって、Ptを含む最上層である第一層111とから構成されている点が、上記実施形態3と異なっている。
(実施形態2〜実施形態4の製造方法)
次に、圧電素子93、圧電素子104及び圧電素子108の製造方法を図21、図22及び図18を用いて説明する。図21及び図22は、圧電素子93の製造方法を示す断面模式図である。
(酸化膜形成工程)
図21(a)に示すように、この工程は、酸素或いは水蒸気を含む酸化性雰囲気中で基体44を高温処理し、酸化珪素(SiO2)からなる酸化膜94を形成する工程である。この工程には通常用いる熱酸化法の他、CVD法を使用することもできる。
(ZrO2膜を形成する工程)
図21(b)に示すように、基体44上の酸化膜94の上に、ZrO2膜95を形成する工程である。このZrO2膜95は、スパッタ法または真空蒸着法等によりZrの層を形成したものを酸素雰囲気中で高温処理して得られる。
(下部電極を形成する工程)
図21(c)に示すように、実施形態2にかかる下部電極96にあっては、ZrO2膜95上に、Irを含む第三層101を形成する工程と、該第三層101上に、下部電極96の厚さに対して30%以上50%以下の厚さであって、Ptを含む第二層102を形成する工程と、該第二層上にIrを含む第一層103を形成する工程とからなる。
次に、下部電極96の形状にマスクし、その周囲をエッチングする。具体的には、まずスピンナー法、スプレー法等の方法を用いて均一な厚さのレジスト材料を第一層103上に塗布する。次いで、下部電極96の形状のマスクを用いて露光・現像し、レジストパターンを下部電極96の形状に形成する。これに通常用いるイオンミリングまたはドライエッチング法等を適用して、第三層101、第二層102、第一層103をエッチング除去し、下部電極96を成形する。
実施形態3にかかる下部電極105にあっては、ZrO2膜95上に、下部電極105の厚さに対して30%以上50%以下の厚さであって、Ptを含む第二層106を形成する工程と、該第二層上に、Irを含む第一層107を形成する工程とからなる。次に、下部電極105の形状にマスクし、その周囲をエッチングする。具体的方法は実施形態2の場合と同様であり、説明を省略する。下部電極を形成する工程以外は実施形態2の工程と同じ工程となる。図21(c)〜図22における下部電極96を下部電極105に置き換えると実施形態3の製造方法を示す図となる。
実施形態4にかかる下部電極109にあっては、ZrO2膜95上に、Irを含む第二層110を形成する工程と、該第二層上に、下部電極109の厚さに対して20%以上40%以下の厚さであって、Ptを含む第一層111を形成する工程とからなる。次に、下部電極109の形状にマスクし、その周囲をエッチングする。具体的方法は実施形態2の場合と同様であり、説明を省略する。下部電極を形成する工程以外は実施形態2の工程と同じ工程となる。図21(c)〜図22における下部電極96を下部電極109に置き換えると実施形態4の製造方法を示す図となる。
第三層101〜第一層111の各層は、それぞれIrまたはPtをZrO2膜95上に、スパッタ法等で付着させて形成する。尚、下部電極96の形成に先立ち、チタンまたはクロムからなる密着層(図示せず)をスパッタ法または真空蒸着法により形成しても良い。
(Ti核(層)を形成する工程)
この工程は、スパッタ法等により、下部電極96上にチタン結晶(図示せず)を島状に形成する工程である。Ti核(層)を形成するのは、チタン結晶を核としてPZTを成長させることにより、結晶成長が下部電極側から起こり、緻密で柱状の結晶が得られるからである。
(圧電体前駆体膜を形成する工程)
図21(d)に示すように、この工程はゾル・ゲル法により圧電体前駆体膜97aを形成する工程である。まず、有機金属アルコキシド溶液からなるゾルをスピンコート等の塗布法によりTi核上に塗布する。次いで、一定温度で一定時間乾燥させ、溶媒を蒸発させる。乾燥後、さらに大気雰囲気下において所定の高温で一定時間脱脂し、金属に配位している有機の配位子を熱分解させ、金属酸化物とする。この塗布、乾燥、脱脂の各工程を所定回数、例えば4回以上繰り返して4層以上の圧電体前駆体膜を積層する。これらの乾燥と脱脂処理により、溶液中の金属アルコキシドと酢酸塩とは配位子の熱分解を経て金属、酸素、金属のネットワークを形成する。次に、圧電体膜97の形状にマスクし、その周囲をエッチングする。具体的方法は実施形態2の場合と同様であり、説明を省略する。
(焼成工程)
図21(e)に示すように、この工程は圧電体前駆体膜97aを焼成して、圧電体前駆体膜97aを結晶化させる工程である。この焼成によりアモルファス状態の圧電体前駆体膜97aからペロブスカイト結晶構造が形成され、電気機械変換作用を示す圧電体膜97に変化する。そして、圧電体前駆体膜97aはX線回折広角法により測定した100面配向度が40%以上70%以下の圧電体薄膜となる。
(上部電極形成工程)
図22(a)に示すように、圧電体膜97上に電子ビーム蒸着法またはスパッタ法により金属膜を設置する。そして、上部電極98の形状にマスクし、その周囲の金属膜をエッチングする。その結果、圧電体膜97上に上部電極98が設置される。具体的方法は実施形態2の場合と同様であり、説明を省略する。
(保護膜形成工程)
図22(b)に示すように、可撓膜99、下部電極96、圧電体膜97及び上部電極98上に保護膜49を形成する。具体的には、スピンナー法、スプレー法等の方法を用いて均一な厚さの保護膜49の材料を塗布する。次に、保護膜49の材料を乾燥し固化する。次に、不要な部分を除去して保護膜49を形成する。不要な部分を除去する方法はマスキングしてエッチング法を用いて行われる。具体的方法は実施形態2の場合と同様であり、説明を省略する。
(開口形成工程)
図22(c)に示すように、圧電素子93が形成された基体44の他方の面に、異方性エッチングまたは平行平板型反応性イオンエッチング等の活性気体を用いた異方性エッチングを施し、開口45を形成する。エッチングされずに残された部分が仕切り壁51になる。
(補強板貼り合わせ工程)
図18に示すように、エッチング後の基体44に補強板52を接着剤で貼り合わせる。補強板52が貼り合わせられた基体44を超音波プローブ13に取り付ける。
(実施例)
上記実施形態2の製造方法による圧電素子を、下部電極全体の厚さに対するPt層の厚さの比率を種々変えて幾つか製造するとともに、比較例として、上記実施形態で示した比率以外の比率によっても圧電素子を幾つか製造した。
図23は、圧電素子の100面配向度と圧電定数d31との関係を測定した結果を示す図である。圧電定数d31は、高周波駆動(14kHz、プローブヘッド13bを用いて測定)及び低周波駆動(DC駆動、カンチレバーを用いて測定)の両者において測定している。図23において、100面配向度が小さいときは、111面配向度が大きいことを示している。
図23に示されるように、低周波駆動では111面配向度が高いほど圧電定数d31が高いが、プローブヘッド13bに使用されるような高周波駆動では、100面配向度が40%以上70%以下のときに、好適な圧電特性が得られることがわかる。また、このような配向度を示す圧電素子が製造されたのは、下部電極全体の厚さに対するPt層の厚さが30〜50%の場合であった。
尚、圧電定数d31の測定は、電圧印加時の変位から求めた。また、「100面配向度」とは、X線回折広角法においてCuKα線を用いたときのXYZ面に対応するピーク(2θ)の回折強度をI(XYZ)としたとき、I(100)のI(100)とI(110)とI(111)との和に対する比率を意味する。
(その他の変形例)
上記実施形態によらず種々に変形して適応することが可能である。例えば、本実施例で製造した圧電素子は上記超音波プローブ13の圧電素子のみならず、インクジェト式記録ヘッド、プリンター、不揮発性半導体記憶装置、薄膜コンデンサー、パイロ電気検出器、センサー、表面弾性波光学導波管、光学記憶装置、空間光変調器、ダイオードレーザー用周波数二倍器等のような強誘電体装置、誘電体装置、パイロ電気装置、圧電装置、及び電気光学装置の製造に適応することができる。
(実施形態2〜実施形態4の効果)
本実施形態によれば、圧電体薄膜の100面配向度を安定して再現性良く得ることができる。ひいては、圧電体薄膜の100面配向度と111面配向度との比率を再現性良く得ることができる。これにより、高周波及び低周波のいずれにおいても安定した高い圧電特性を備えた圧電素子及びこれを用いた超音波プローブ13、超音波診断装置11並びに圧電素子の製造方法を提供することができる。
16…筐体、17…超音波トランスデューサー素子チップとしての素子チップ、24…下電極としての下部電極、25…上電極としての上部電極、26…圧電体膜、43…振動膜。

Claims (1)

  1. 超音波トランスデューサー素子チップと、
    前記超音波トランスデューサー素子チップを支持する筐体と、を備え、
    前記超音波トランスデューサー素子チップは、
    弾性膜と、
    前記弾性膜上に設けられた下電極と、
    前記下電極上に形成された圧電体膜と、
    前記圧電体膜の表面に形成された上電極と、を備え、
    前記圧電体膜は、
    膜厚が0.5μm以上20μm以下であり、平均粒径が0.005μm以上0.2μm以下の結晶粒からなり、かつ断面に層状の不連続面を有さず、xPb(Mg1/3Nb2/3)O3−yPbZrO3−zPbTiO3(x,y,zはモル比を表し、x+y+z=1である)で表される三成分系圧電材料からなり、かつ、この式の三成分系組成図において以下のA、B、C、及びDの四点の範囲内にある組成を有することを特徴とする超音波プローブ。
    A(x=0.05,y=0.40,z=0.55)
    B(x=0.05,y=0.60,z=0.35)
    C(x=0.25,y=0.30,z=0.45)
    D(x=0.25,y=0.50,z=0.25)
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2020085390A1 (ja) * 2018-10-24 2020-04-30 ヤマハ株式会社 超音波センサ及び超音波検査装置

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