JP2016018195A - 映像表示システムおよび映像表示方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】短焦点プロジェクタを用い、観察者側から見て映像表示透明部材の向こう側に見える光景の視認性を低下させることなく、映像表示透明部材に表示される映像のコントラストが高い状態を維持できる映像表示システムおよび映像表示方法を提供する。
【解決手段】第1の面Aおよびこれとは反対側の第2の面Bを有する透明部材であり、第1の面A側の光景を第2の面B側の観察者Yに視認可能に透過し、第2の面B側の光景を第1の面A側の観察者Xに視認可能に透過し、かつ第1の面A側から投射された映像光を第1の面A側の観察者Xに映像として視認可能に表示する反射型の映像表示透明部材1と、映像表示透明部材1の第1の面A側に設置された投影機200とを備え、投影機200が短焦点プロジェクタであり、映像表示透明部材1の反射率が10%以上、後方ヘーズが5%以上、かつ前方ヘーズが50%以下である、映像表示システム。
【選択図】図1

Description

本発明は、投影機から映像表示透明部材に投射された映像光を観察者に映像として視認可能に表示する映像表示システムおよび映像表示方法に関する。
商品等のショーケース;美術品等の展示ケース;建物、ショールーム、車両等の窓;ガラス扉;室内の透明パーティション等に用いられる透明部材として、下記のものが提案されている。
観察者側から見て透明部材の向こう側に見える光景を視認でき、かつ観察者に対して商品等の説明、各種機器の状態、行き先案内、伝達事項等の情報を伝達する際、観察者に対して各種機器の操作画面等を表示する際、またはプライバシー保護、セキュリティ等のために観察者に対して透明部材の向こう側の光景を視認できなくする際には、投影機から投射された映像光を観察者に映像として視認可能に表示する映像表示透明部材(いわゆる透明スクリーン)。
映像表示透明部材には、投影機から投射された映像光を投影機と同じ側にいる観察者に映像として視認可能に表示する反射型の映像表示透明部材と;投影機から投射された映像光を投影機と反対側にいる観察者に映像として視認可能に表示する透過型の映像表示透明部材とがある。
反射型の映像表示透明部材としては、たとえば、図9に示すような、第1の透明基材110と、第2の透明基材120との間に、表面に規則的な凹凸構造(マイクロレンズアレイ)が形成された第1の透明層132と、第1の透明層132の凹凸構造側の面に沿うように形成された、入射した光の一部を透過する反射膜133と、反射膜133の表面を覆うように設けられた第2の透明層134とを有する映像表示透明部材101が提案されている(特許文献1参照)。
反射型の映像表示透明部材101においては、図9に示すように、投影機200から投射され、第2の透明基材120側の表面(第1の面A)から入射した映像光Lが、反射膜133において散乱することによって結像し、投影機200と同じ側にいる観察者Xに映像として視認可能に表示される。
透過型の映像表示透明部材としては、たとえば、図10に示すような、第1の透明基材110と、第2の透明基材120との間に、透明層142と、透明層142の内部に互いに平行に、かつ所定の間隔で配置された、面方向に沿って延びる複数の光散乱部143と有する映像表示透明部材102が提案されている(特許文献2参照)。
透過型の映像表示透明部材102においては、図10に示すように、投影機200から投射され、第1の透明基材110側の表面(第1の面A)から入射した映像光Lが、光散乱部143において散乱することによって結像し、投影機200と反対側にいる観察者Yに映像として視認可能に表示される。
近年、投影機としては、至近距離から映像光を投射することによって映像表示透明部材に大きな映像を表示させる短焦点プロジェクタが開発されている。短焦点プロジェクタは、映像表示透明部材までの投射距離が比較的短いため、映像表示透明部材の表面への映像光の入射角は、通常のプロジェクタに比べて大きくなる。そのため、短焦点プロジェクタを用いた場合は、映像表示透明部材における、短焦点プロジェクタに近い部分と遠い部分とで、表示される映像に輝度のばらつきが生じる。また、表示される映像のコントラストが低下し、画質が低下する。よって、表示される映像に輝度のばらつきが少なく、表示される映像のコントラストが高い状態を維持できる映像表示透明部材、特に、表示される映像のコントラストが高い状態を維持できる映像表示透明部材が求められている。
特表2010−539525号公報 特開2014−013369号公報
本発明は、短焦点プロジェクタを用いた映像表示システムおよび映像表示方法において、観察者側から見て映像表示透明部材の向こう側に見える光景の視認性を低下させることなく、映像表示透明部材に表示される映像のコントラストが高い状態を維持できる映像表示システムおよび映像表示方法を提供する。
本発明は、以下の構成を有する。
[1]第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有する透明部材であり、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側に設置された投影機から投射された映像光を第1の面側の観察者に映像として視認可能に表示する反射型の映像表示透明部材と、映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機とを備えた映像表示システムであって、前記投影機が、短焦点プロジェクタであり、前記映像表示透明部材の反射率が、10%以上であり、前記映像表示透明部材の後方ヘーズが、5%以上であり、前記映像表示透明部材の前方ヘーズが、50%以下である、映像表示システム。
[2]映像表示透明部材に表示された映像の投影機に最も近い部分における、映像表示透明部材の第1の面への映像光の入射角が、15〜60度である、[1]の映像表示システム。
[3]映像表示透明部材が、第1の面と第2の面との間に、表面に凹凸構造を有する第1の透明層を有し、第1の透明層の凹凸構造の算術平均粗さRaが、0.01〜20μmである、[1]または[2]の映像表示システム。
[4]前記映像表示透明部材が、第1の面と第2の面との間に、第1の透明層の凹凸構造側の面に沿うように形成された、入射した光の一部を透過する反射膜と、反射膜の表面を覆うように設けられた第2の透明層とをさらに有する、[3]の映像表示システム。
[5]前記映像表示透明部材における、第1の透明層の表面の凹凸構造が、不規則な凹凸構造である、[3]または[4]の映像表示システム。
[6]第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有する透明部材であり、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側から投射された映像光を第2の面側の観察者に映像として視認可能に表示する透過型の映像表示透明部材、映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機とを備えた映像表示システムであって、前記映像表示透明部材の反射率が、15%以下であり、前記映像表示透明部材の前方ヘーズが、4〜40%である、映像表示システム。
[7]映像表示透明部材に表示された映像の投影機に最も近い部分における、映像表示透明部材の第1の面への映像光の入射角が、15〜60度である、[6]の映像表示システム。
[8]前記映像表示透明部材が、第1の面と第2の面との間に、透明層と、透明層の内部に互いに平行に、かつ所定の間隔で配置された、面方向に沿って延びる複数の光散乱部とを有する、[6]または[7]の映像表示システム。
[9]第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有する透明部材であり、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側から投射された映像光を第1の面側の観察者に映像として視認可能に表示する反射型の映像表示透明部材に、映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機から映像光を投射し、映像を表示させる方法であって、前記投影機が、短焦点プロジェクタであり、前記映像表示透明部材の反射率が、10%以上であり、前記映像表示透明部材の後方ヘーズが、5%以上であり、前記映像表示透明部材の前方ヘーズが、50%以下である、映像表示方法。
[10]映像表示透明部材に表示された映像の投影機に最も近い部分における、映像表示透明部材の第1の面への映像光の入射角が、15〜60度である、[9]の映像表示方法。
[11]前記映像表示透明部材が、第1の面と第2の面との間に、表面に凹凸構造を有する第1の透明層を有し、第1の透明層の凹凸構造の算術平均粗さRaが、0.01〜20μmである、[9]または[10]の映像表示方法。
[12]前記映像表示透明部材が、第1の面と第2の面との間に、第1の透明層の凹凸構造側の面に沿うように形成された、入射した光の一部を透過する反射膜と、反射膜の表面を覆うように設けられた第2の透明層とをさらに有する、[11]の映像表示方法。
[13]前記映像表示透明部材における、第1の透明層の表面の凹凸構造が、不規則な凹凸構造である、[11]または[12]の映像表示方法。
[14]第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有する透明部材であり、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側から投射された映像光を第2の面側の観察者に映像として視認可能に表示する透過型の映像表示透明部材に、映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機から映像光を投射し、映像を表示させる方法であって、前記投影機が、短焦点プロジェクタであり、前記映像表示透明部材の反射率が、15%以下であり、前記映像表示透明部材の前方ヘーズが、4〜40%である、映像表示方法。
[15]映像表示透明部材に表示された映像の投影機に最も近い部分における、映像表示透明部材の第1の面への映像光の入射角が、15〜60度である、[14]に記載の映像表示方法。
[16]前記映像表示透明部材が、第1の面と第2の面との間に、透明層と、透明層の内部に互いに平行に、かつ所定の間隔で配置された、面方向に沿って延びる複数の光散乱部とを有する、[14]または[15]の映像表示方法。
本発明の映像表示システムおよび映像表示方法によれば、短焦点プロジェクタを用いた映像表示システムおよび映像表示方法において、観察者側から見て映像表示透明部材の向こう側に見える光景の視認性を低下させることなく、映像表示透明部材に表示される映像のコントラストが高い状態を維持することができる。
本発明の映像表示システムの一例を示す概略構成図および反射型の映像表示透明部材の一例を示す層構成図である。 反射型の映像表示透明部材の製造工程の一例を示す断面図である。 反射型の映像表示透明部材の他の例を示す層構成図である。 反射型の映像表示透明部材の他の例を示す層構成図である。 本発明の映像表示システムの他の例を示す概略構成図および透過型の映像表示透明部材の一例を示す層構成図である。 透過型の映像表示透明部材の製造工程の一例を示す断面図である。 透過型の映像表示透明部材の他の例を示す層構成図である。 透過型の映像表示透明部材の他の例を示す層構成図である。 従来の映像表示システムの一例を示す概略構成図および反射型の映像表示透明部材の一例を示す層構成図である。 従来の映像表示システムの他の例を示す概略構成図および透過型の映像表示透明部材の一例を示す層構成図である。
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「第1の面」とは、映像表示透明部材の最表面であって、投影機から映像光が投射される側の表面を意味する。
「第2の面」とは、映像表示透明部材の最表面であって、第1の面とは反対側の表面を意味する。
「第1の面側(第2の面側)の光景」とは、映像表示透明部材の第2の面側(第1の面側)にいる観察者から見て、映像表示透明部材の向こう側に見える像(主要対象物(商品、美術品、人物等)およびその背景、ならびに風景等)を意味する。光景には、投影機から投射された映像光が映像表示透明部材において結像して表示される映像は含まれない。
「入射角」とは、映像光の入射方向と映像表示透明部材の第1の面の法線とがなす角度を意味する。
「前方ヘーズ」とは、第1の面側から第2の面側に透過する透過光、または第2の面側から第1の面側に透過する透過光のうち、前方散乱によって、入射光から0.044rad(2.5°)以上それた透過光の百分率を意味する。すなわち、JIS K 7136:2000(ISO 14782:1999)に記載された方法によって測定される、通常のヘーズである。
「後方ヘーズ」とは、第1の面において反射する反射光のうち、散乱によって、正反射光から0.044rad(2.5°)以上それた反射光の百分率を意味する。
「凹凸構造」とは、複数の凸部、複数の凹部、または複数の凸部および凹部からなる凹凸形状を意味する。
「不規則な凹凸構造」とは、凸部または凹部が周期的に出現せず、かつ凸部または凹部の大きさが不揃いである凹凸構造を意味する。
「シート」は、枚葉のものであってもよく、連続した帯状のものであってもよい。
算術平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601:2013(ISO 4287:1997,Amd.1:2009)に基づき測定される算術平均粗さである。粗さ曲線用の基準長さlr(カットオフ値λc)は0.8mmとした。
透過率は、拡散されずに透過した光と、拡散されて透過した光の合計であり、全光線透過率と同等である。ただし、入射した部位から大きく外れたり、部材端部から放出されたものは含まない。
反射率は、正反射率と拡散反射率の和であり、全光線反射率と同等である。ただし、入射した部位から大きく外れたり、部材端部から放出されたものは含まない。
透過率、反射率、屈折率は、ナトリウムランプのd線(波長589nm)を用いて室温で測定したときの値である。
<反射型の映像表示透明部材を備えた映像表示システム>
本発明の映像表示システムの第1の態様は、反射型の映像表示透明部材と、映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機とを備えた映像表示システムである。
図1は、本発明の映像表示システムの一例を示す概略構成図である。
映像表示システムは、反射型の映像表示透明部材1と、映像表示透明部材1の第1の面A側に設置された投影機200とを備える。
(投影機)
投影機200は、映像表示透明部材1に映像光Lを投射できる短焦点プロジェクタである。
短焦点プロジェクタは、10〜90cmの至近距離からの映像光の投射が可能なプロジェクタであり、超短焦点プロジェクタと呼ばれることもある。
短焦点プロジェクタを用いることによって、光軸方向に焦点位置とずれた場所においても、光量の密度が高い状態となる映像の中央付近の光が、映像表示透明部材1の第1の面Aにおいて正反射した反射光Rの出射角、および結像せずに反射膜33を透過した透過光Tの出射角が大きくなるため、反射光Rや透過光Tが観察者Xや観察者Yの目に入りにくい。
投影機200は、映像表示透明部材1に表示された映像の投影機200に最も近い部分における、映像表示透明部材1の第1の面Aへの映像光の入射角αが15〜60度となるように、映像表示透明部材1の第1の面A側に設置されるのが好ましい。入射角αが15度以上であれば、第1の面Aにおいて正反射した反射光Rの出射角、および結像せずに反射膜33を透過した透過光Tの出射角が大きくなるため、反射光Rや透過光Tが観察者Xや観察者Yの目に入りにくい。入射角αが60度以下であれば、映像表示透明部材1における輝度の低下が抑えられる。すなわち、映像光Lの入射角が小さければ、反射膜33で散乱し、観察者Xへ向かう散乱光が多くなり輝度は高くなるが、映像光Lの入射角が大きければ、反射膜33で散乱し、観察者Xへ向かう散乱光が少なくなり輝度は低くなる。入射角αは、15〜50度が好ましく、20〜45度がより好ましい。
投影機200から投射される映像光Lは、投影機200から離れるほど入射角が大きくなり、より正反射から離れる角度方向に散乱されなければ、観察者Xによって視認されない。そのため、オリジナルの映像に対して、投影機200に近い方の光量が小さく、投影機200に遠い方の光量が大きくなるようにして、観察者Xへ到達する光量がオリジナルの映像と同等の光量分布となるように、補正してもよい。
また、映像表示透明部材1に表示された映像の中心部分における、映像表示透明部材1の第1の面Aへの映像光Lの入射角は、30度以上であってもよい。該入射角が30度以上であれば、映像表示透明部材1に表示された映像の中心付近における、映像を形成しない強度の高い光を観察者が広い範囲で視認しづらくなる。該入射角は、45度以上がより好ましい。
(反射型の映像表示透明部材)
反射型の映像表示透明部材は、第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有する透明部材であり、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側から投射された映像光を第1の面側の観察者に映像として視認可能に表示する映像表示透明部材である。
図1は、反射型の映像表示透明部材の一例を示す層構成図である。
映像表示透明部材1は、第1の透明基材10と、第2の透明基材20との間に、光散乱シート30が配置されたものである。
第1の透明基材10と光散乱シート30とは、接着層12によって接着され、第2の透明基材20と光散乱シート30とは、接着層22によって接着されている。
(透明基材)
第1の透明基材10および第2の透明基材20(以下、まとめて透明基材とも記す。)の材料としては、ガラス、透明樹脂等が挙げられる。各透明基材の材料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
透明基材を構成するガラスとしては、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス等が挙げられる。ガラスからなる透明基材には、耐久性を向上させるために、化学強化、物理強化、ハードコーティング等を施してもよい。
透明基材を構成する透明樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルメタクリレート等が挙げられ、耐候性や透明性の点から、ポリカーボネート、ポリエステル、シクロオレフィンポリマーが好ましい。
透明基材としては、複屈折がないものが好ましい。
透明基材の厚さは、基材としての耐久性が保たれる厚さであればよい。透明基材の厚さは、たとえば、0.01mm以上であってよく、0.05mm以上であってよく、0.1mm以上であってよい。また、透明基材の厚さは、たとえば、10mm以下であってよく、5mm以下であってよく、0.5mm以下であってよく、0.3mm以下であってよく、0.15mm以下であってよい。
(接着層)
接着層12および接着層22(以下、まとめて接着層とも記す。)の材料としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、粘着剤(アクリル系粘着剤等)、光硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物等が挙げられる。各接着層の材料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂としては、たとえば、可塑化ポリビニルアセタール、可塑化ポリ塩化ビニル、飽和ポリエステル、可塑化飽和ポリエステル、ポリウレタン、可塑化ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等が挙げられる。
接着層の厚さは、接着層としての機能が保たれる厚さであればよく、たとえば、0.01〜1.5mmが好ましく、0.05〜1mmがより好ましい。
(光散乱シート)
光散乱シート30は、第1の透明フィルム31と;第1の透明フィルム31の表面に設けられた、表面に不規則な凹凸構造を有する第1の透明層32と;第1の透明層32の凹凸構造側の面に沿うように形成された、入射した光の一部を透過する反射膜33と;反射膜33の表面を覆うように設けられた第2の透明層34と;第2の透明層34の表面に設けられた第2の透明フィルム35とを有する。
(透明フィルム)
第1の透明フィルム31および第2の透明フィルム35(以下、まとめて透明フィルムとも記す。)は、透明樹脂フィルムであってもよく、薄いガラスフィルムであってもよい。各透明フィルムの材料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
透明樹脂フィルムを構成する透明樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
透明フィルムの厚さは、ロールツーロールプロセスを適用できる厚さが好ましく、たとえば、0.01〜0.5mmが好ましく、0.05〜0.3mmがより好ましく、0.2mm以下がさらに好ましい。
(透明層)
第1の透明層32および第2の透明層34(以下、まとめて透明層とも記す。)は、透明樹脂層であることが好ましい。各透明層の材料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよく、同じものが好ましい。
透明樹脂層を構成する透明樹脂としては、光硬化性樹脂(アクリル樹脂、エポキシ樹脂等)の硬化物、熱硬化性樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂が好ましい。透明樹脂層を構成する透明樹脂のイエローインデックスは、映像表示透明部材における窓としての機能が損なわれないように透明感を維持する点から、10以下が好ましく、5以下がより好ましい。
透明層の厚さ(凹凸構造が形成された部分を除く)は、ロールツーロールプロセスにて形成しやすい厚さであればよく、たとえば、0.5〜50μmが好ましい。
透明層の透過率は、50〜100%が好ましく、75〜100%がより好ましく、90〜100%がさらに好ましい。
第1の透明層32の表面に形成された不規則な凹凸構造の算術平均粗さRaは、0.01〜20μmが好ましく、0.05〜10μmがより好ましい。算術平均粗さRaが該範囲内であれば、投影された映像の視野角が広く、正反射光を直接見ずに視認でき、凹凸構造による粒状感が抑えられる。算術平均粗さRaが10μm以下であれば、映像表示透明部材1の向こう側の光景を見るときに凹凸構造が邪魔にならずより好ましい。
また、本発明のように、映像表示透明部材1に表示された映像の投影機200に最も近い部分における、映像表示透明部材1の第1の面Aへの映像光の入射角αが大きい場合、投影機200から遠い部分における入射角は、さらに大きくなる。そのため、投影機200から遠い部分においては、反射膜33で散乱し、観察者Xへ向かう散乱光が少なくなり輝度は低くなる。その結果、映像表示透明部材1に表示される映像に輝度ムラが生じる。凹凸構造の算術平均粗さRaが0.2μm以上であれば、投影機200から遠い部分における輝度の低下が抑えられ、映像の輝度ムラが抑えられる。凹凸構造の算術平均粗さRaが0.4μm以上であれば、映像の輝度ムラが抑えられ、さらに好ましい。
また、凹凸構造の算術平均粗さは、第1の透明層32の表面の場所によって異なっていてもよい。たとえば、投影機200から近い部分における算術平均粗さと遠い部分の算術平均粗さに傾斜を持たせることにより、映像の輝度ムラが抑えられる。この場合、算術平均粗さは、投影機200から遠い方が大きくなるようにすると好ましい。
また、算術平均粗さではなく、凹凸のアスペクト比が投影機200から遠い方が大きくなると好ましい。
また、算術平均粗さではなく、凹凸のピッチが投影機200から遠い方が小さくなると好ましい場合もある。
(反射膜)
反射膜33は、反射膜33に入射した光の一部を透過し、他の一部を反射するものであればよい。反射膜33としては、金属膜、半導体膜、誘電体単層膜、誘電体多層膜、これらの組み合わせ等が挙げられる。
金属膜、半導体膜を構成する金属としては、アルミニウム、銀、ニッケル、クロム、タングステン、ケイ素等が挙げられ、アルミニウム、銀、または、それらが主成分である合金が好ましい。
誘電体膜を構成する誘電体としては、金属酸化物、金属窒化物等が挙げられる。
反射膜33としては、金属薄膜、または、酸化物膜、金属薄膜、酸化物膜の順に積層された膜構成のものが好ましい。
反射膜33の厚さは、第1の透明層32の表面に形成された不規則な凹凸構造の算術平均粗さRaによる機能を妨げずに活かすことができる点から、1〜100nmが好ましく、4〜25nmがより好ましい。
反射膜33の反射率は、充分なスクリーンゲインが得られる範囲としては、5%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。
反射膜33の反射率は、反射膜33の表面の場所によって異なっていてもよい。たとえば、投影機200から近い部分では、反射率が小さく、遠い部分では、反射率が高くなるように傾斜を持たせることにより、映像の輝度ムラが抑えられる。
また、映像表示透明部材1の表面の場所によって反射率または視野角を変化させるために、反射膜33の膜厚が映像表示透明部材1の場所によって異なっていてもよい。たとえば、投影機200から近い部分における反射膜33の膜厚と遠い部分における反射膜33の膜厚に傾斜を持たせることにより、映像の輝度ムラが抑えられる。特に、金属膜の場合は、膜厚を厚くすると反射率が高くなる現象を利用してもよい。
また、反射膜33の膜厚を映像表示透明部材1の場所によって異ならせた場合に、映像表示透明部材1の透過率が面内で一様になるように、(i)映像表示透明部材1に吸収材料層をさらに設ける、または、映像表示透明部材1を構成する基材および層のいずれかに吸収材料を用いることによって、映像表示透明部材1の場所によって吸光係数に傾斜を持たせたり、(ii)映像表示透明部材1の厚さに傾斜を持たせたりして、反射率の面内の変化によってできた透過率の変化を打ち消すとよい。
(光散乱シートの製造方法)
光散乱シート30の製造方法の一例を図2を参照しながら説明する。
図2(a)に示すように、第1の透明フィルム31の表面に、光硬化性樹脂36を塗布し、不規則な凹凸構造が表面に形成されたモールド61を、凹凸構造が光硬化性樹脂36に接するように、光硬化性樹脂36の上に重ねる。
第1の透明フィルム31の側から光(紫外線等)を照射し、光硬化性樹脂36を硬化させて、モールド61の不規則な凹凸構造が表面に転写された第1の透明層32を形成した後、図2(b)に示すように、モールド61を剥離する。
図2(c)に示すように、第1の透明層32の表面に金属を物理蒸着し、金属薄膜からなる反射膜33を形成する。
図2(d)に示すように、反射膜33の表面に光硬化性樹脂37を塗布し、光硬化性樹脂37の上に第2の透明フィルム35を重ねる。
第1の透明フィルム41の側または第2の透明フィルム35の側から光(紫外線等)を照射し、光硬化性樹脂37を硬化させて、第2の透明層34を形成することによって、光散乱シート30を得る。
モールド61としては、不規則な凹凸構造が表面に形成された樹脂フィルム、金属板等が挙げられる。不規則な凹凸構造が表面に形成された樹脂フィルムとしては、微粒子を含む樹脂フィルム、サンドブラスト処理された樹脂フィルム等が挙げられる。
光硬化性樹脂の塗布方法としては、ダイコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、スピンコート法、インクジェット法、スプレーコート法等が挙げられる。
物理蒸着方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等が挙げられる。
(反射型の映像表示透明部材の光学特性)
映像表示透明部材1の透過率は、観察者側から見て映像表示透明部材1の向こう側に見える光景の視認性がよい点から、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上がさらに好ましい。
映像表示透明部材1の透過率は、スクリーンゲイン(輝度)を適切に保つ点から、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、75%以下がさらに好ましい。
映像表示透明部材1の第1の面Aにおける表面の反射率は、映像光Lの反射を抑える点から、5%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。
映像表示透明部材1の反射率は、10%以上であり、30%以上が好ましい。映像表示透明部材1の反射率が10%以上であれば、特に、正反射光から0.044rad(2.5°)以上それた反射光において、このあたりの反射率が得られると人間の視感度的に変化が分かりにくくなるため、充分なスクリーンゲインを得られる。
本発明においては、短焦点プロジェクタを用いることによって、映像表示透明部材1の第1の面Aへの映像光Lの入射角が大きくなり、映像光Lの光量の強い領域が映像表示透明部材1を大きな出射角で透過、または映像表示透明部材1の第1の面Aにて大きな出射角で正反射することによって観察者に到達しにくくなる。しかし、映像光Lの入射角が大きくなるため、透過光Tが映像表示透明部材1付近の床や天井に到達してしまう。そして、透過光Tが床や天井に到達することによって床や天井で散乱された光が、映像表示透明部材1に映りこんで、映像のコントラストの低下を引き起こす。
本発明においては、映像表示透明部材1の反射率を上記程度に高くすることによって、床や天井に到達する透過光Tの光量を減少させ、また、透過光Tが床や天井に到達することによって床や天井で散乱した光が、映像表示透明部材1を透過して写りこむ光量を低下させることができ、映像表示透明部材1に表示される映像のコントラストの低下を防ぐことができる。特に、映像表示透明部材1に表示された映像の投影機200に最も遠い部分における映像光Lの入射角が50度以上である場合は、透過光Tが映像表示透明部材1付近の床や天井に到達するのみでなく、床や天井で散乱された光のうち、比較的光量の多い領域である、正規反射角度からの角度差が90度未満の光が映像表示透明部材1へ到達するため、上記の効果が高くなる。
映像表示透明部材1の前方ヘーズは、観察者側から見て映像表示透明部材1の向こう側に見える光景の視認性の点から、50%以下であり、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。
映像表示透明部材1の後方ヘーズは、スクリーンゲイン、およびコントラストの確保の点から、5%以上であり、15%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましい。
映像表示透明部材1の後方ヘーズは、観察者側から見て映像表示透明部材1の向こう側に見える光景の視認性の点から、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましい。
映像表示透明部材1における隣り合う各層間の屈折率差は、各層界面における反射率が0.5%以内に抑えられる点から、0.2以内が好ましく、各層界面での反射率が0.1%程度となる点から、0.1以内がより好ましい。
(反射型の映像表示透明部材を用いた映像表示方法)
本発明の映像表示方法の第1の態様は、反射型の映像表示透明部材に、映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機から映像光を投射し、映像を表示させる映像表示方法である。
図1に示すように、投影機200から投射され、映像表示透明部材1の第1の面Aから入射した映像光Lが、反射膜33において散乱することによって結像し、投影機200と同じ側にいる観察者Xに映像として視認可能に表示できる。
また、映像表示透明部材1における反射膜33が入射した光の一部を透過するため、第1の面A側の光景を第2の面B側の観察者Yに視認可能に透過でき、かつ第2の面B側の光景を第1の面A側の観察者Xに視認可能に透過できる。
(作用機序)
以上説明した反射型の映像表示透明部材1を用いた本発明の映像表示システムおよび映像表示方法にあっては、短焦点プロジェクタを用いることにより、光軸方向に焦点位置とずれた場所においても、光量の密度が高い状態となる映像の中央付近の光が、映像表示透明部材の第1の面Aにおいて正反射した反射光Rの出射角、および結像せずに反射膜33を透過した透過光Tの出射角が大きくなる。そのため、反射光Rや透過光Tが観察者Xや観察者Yの目に入りにくく、投影機200から投射された映像光Lに由来する反射光Rや透過光Tによる眩しさを観察者Xや観察者Yが感じにくい。また、眩しさを抑えるために、第1の面Aおよび反射膜33の散乱度を高く設定する必要がないため、前方ヘーズを50%以下にすることができ、観察者Xや観察者Y側から見て映像表示透明部材1の向こう側に見える光景の視認性を低下させることがない。
ただし、短焦点プロジェクタを用いることで、映像表示透明部材1の第1の面Aへの映像光Lの入射角が大きくなるため、透過光Tが映像表示透明部材1付近の床や天井に到達するようになる。そして、透過光Tが床や天井に到達することによって床や天井で散乱された光は、映像表示透明部材1に映りこんで、映像のコントラストの低下を引き起こす。そのため、映像表示透明部材1の反射率を10%以上にすることによって、床や天井に到達する透過光Tの光量を減少させ、また、透過光Tが床や天井に到達することによって床や天井で散乱した光が、映像表示透明部材1を透過して写りこむ光量を低下させることができ、映像表示透明部材1に表示される映像のコントラストの低下を防ぐことができる。
また、短焦点プロジェクタを用いることで、映像表示透明部材1の第1の面Aへの入射角が大きくなるため、反射膜33で散乱し、観察者Xへ向かう散乱光が少なくなくなり輝度が低くなる領域が発生する。そこで、後方ヘーズが5%以上である映像表示透明部材1を用いることで、各領域において適切なスクリーンゲインが得られ、映像表示透明部材1の映像表示位置によらず、映像を視認することができるようになる。
(他の実施形態)
なお、本発明における反射型の映像表示透明部材は、第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有する透明部材であり、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側から投射された映像光を第1の面側の観察者に映像として視認可能に表示する映像表示透明部材であればよく、図1の映像表示透明部材1に限定はされない。以下、図1の映像表示透明部材1と同じ構成のものについては同じ符号を付し、説明を省略する。
反射型の映像表示透明部材は、図3に示すように、第1の透明基材10を省略した映像表示透明部材2であってもよい。映像表示透明部材2の具体例としては、たとえば、第2の透明基材20が既存の窓ガラス等である例、すなわち光散乱シート30を、既存の窓ガラス等に貼り付けた例が挙げられる。
また、図1の映像表示透明部材1において、第2の透明基材20を省略したものであってもよい。
また、2枚のガラス板と、ガラス板間に空隙が形成されるようにガラス板の周縁部に介在配置された枠状のスペーサとを有する複層ガラスにおいて、一方のガラス板の内面に、光散乱シート30を貼り付けたものであってもよい。
反射型の映像表示透明部材は、図4に示すように、第1の透明基材10および第2の透明基材20を省略した映像表示透明部材3、すなわち光散乱シート30そのものであってもよい。映像表示透明部材3は、接着層を用いて既存の窓ガラス等への貼り付けが可能である。また、映像表示透明部材3は、変形させることが可能であり、曲面を有する映像表示透明部材を形成するのに向いている。
また、図4の映像表示透明部材3において、第1の透明フィルム31および第2の透明フィルム35を第1の透明基材10および第2の透明基材20に置き換えたものであってもよい。
反射型の映像表示透明部材においては、投影機からの映像光を第2の透明基材側に投射してもよい。この場合、第2の透明基材側の表面が第1の面Aとなる。
また、光散乱シート30の第2の透明フィルム35が、投影機200側となるように、光散乱シート30を配置してもよい。
光散乱シートにおいて、透明フィルムがなくても光散乱シートがその形状を保つことができる場合は、必ずしも光散乱シートに透明フィルムを設ける必要はない。
反射型の映像表示透明部材においては、第1の面および第2の面のいずれか一方または両方に、反射防止フィルムを設けてもよい。
反射型の映像表示透明部材においては、第1の透明層の表面の凹凸構造が規則的な凹凸構造(マイクロレンズアレイ等)であってもよい。ただし、下記の理由から、第1の透明層の表面の凹凸構造は、不規則な凹凸構造であることが好ましい。
規則的な凹凸構造(マイクロレンズアレイ等)の表面に反射膜を形成した場合、光の回折によって観察者側から見て映像表示透明部材の向こう側に見える光景に色むらが生じたり、分光によって観察者側から見て映像表示透明部材の向こう側に見える光景のエッジ部分が虹色に見えたりして、視認性が損なわれる。一方、不規則な凹凸構造の表面に反射膜を形成した場合、光の回折や分光が起こりにくく、これらの問題が生じにくい。そのため、映像表示透明部材を見る方向や場所、入射する光の向きによって色目が変わるような現象が抑えられ、また、映像表示透明部材の向こう側に見える光景の分光が抑えられる。その結果、映像表示透明部材の向こう側に見える光景の視認性や、光景や映像の色再現性に優れ、視線を邪魔しない透明スクリーンとしての性質を備えることができる。
また、反射膜付の凹凸構造、凹凸を埋め込んだ後のものの他の例としては、ハーフミラーに散乱材料を積層したもの;体積ホログラムによって、反射、偏向、拡散されるもの;キノフォーム型ホログラム、その他凹凸表面やその表面に反射膜を形成した構成によって、偏向、反射、拡散されるもの;コレステリック液晶、高分子コレステリック液晶を利用したもの(凹凸構造の表面に配向、形成したコレステリック液晶、高分子コレステリック液晶の表面にエッチング等で凹凸をつけたもの、水平配向と垂直配向の基材にてコレステリック液晶の液晶層を形成したもの、コレステリック液晶に界面活性剤を添加したものを基材上に塗布して、塗布表面を垂直配光させたもの、または、塗布表面の配向性を落としたもの)等が挙げられる。
また、反射膜がなくても、第1の透明基材10が凹凸構造のみで充分に光を反射、散乱できる場合は、必ずしも反射膜を設ける必要はない。
<透過型の映像表示透明部材を備えた映像表示システム>
本発明の映像表示システムの第2の態様は、透過型の映像表示透明部材と、映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機とを備えた映像表示システムである。
図5は、本発明の映像表示システムの他の例を示す概略構成図である。
映像表示システムは、透過型の映像表示透明部材4と、映像表示透明部材4の第1の面A側に設置された投影機200とを備える。
(投影機)
投影機200は、映像表示透明部材4に映像光Lを投射できる短焦点プロジェクタである。
短焦点プロジェクタを用いることによって、光軸方向に焦点位置とずれた場所においても、光量の密度が高い状態となる映像の中央付近の光が、映像表示透明部材4の第1の面Aにおいて正反射した反射光Rの出射角、および結像せずに光散乱部43を透過した透過光Tの出射角が大きくなるため、反射光Rや透過光Tが観察者Xや観察者Yの目に入りにくい。
投影機200は、映像表示透明部材4に表示された映像の投影機200に最も近い部分における、映像表示透明部材4の第1の面Aへの映像光の入射角αが15〜60度となるように、映像表示透明部材4の第1の面A側に設置されるのが好ましい。入射角αが15度以上であれば、第1の面Aにおいて正反射した反射光Rの出射角、および結像せずに光散乱部43を透過した透過光Tの出射角が大きくなるため、反射光Rや透過光Tが観察者Xや観察者Yの目に入りにくい。入射角αが60度以下であれば、映像表示透明部材4における輝度の低下が抑えられる。すなわち、映像光Lの入射角が小さければ、光散乱部43で散乱し、観察者Yへ向かう散乱光が多くなり輝度は高くなるが、映像光Lの入射角が大きければ、光散乱部43で散乱し、観察者Yへ向かう散乱光が少なくなり輝度は低くなる。入射角αは、20〜50度が好ましく、30〜45度がより好ましい。
投影機200から投射される映像光Lは、投影機200から離れるほど入射角が大きくなり、より正反射から離れる角度方向に散乱されなければ、観察者Yによって視認されない。そのため、オリジナルの映像に対して、投影機200に近い方の光量が小さく、投影機200に遠い方の光量が大きくなるようにして、観察者Yへ到達する光量がオリジナルの映像と同等の光量分布となるように、補正してもよい。
また、映像表示透明部材4に表示された映像の中心部分における、映像表示透明部材4の第1の面Aへの映像光Lの入射角は、30度以上であってもよい。該入射角が30度以上であれば、映像表示透明部材4に表示された映像の中心付近における、映像を形成しない強度高い光を観察者が広い範囲で視認しづらくなる。該入射角は、45度以上がより好ましい。
(透過型の映像表示透明部材)
透過型の映像表示透明部材は、第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有する透明部材であり、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側から投射された映像光を第2の面側の観察者に映像として視認可能に表示する映像表示透明部材である。
図5は、透過型の映像表示透明部材の一例を示す層構成図である。以下、図1の映像表示透明部材1と同じ構成のものについては同じ符号を付し、説明を省略する。
映像表示透明部材4は、第1の透明基材10と、第2の透明基材20との間に、光散乱シート40が配置されたものである。
第1の透明基材10と光散乱シート40とは、接着層12によって接着され、第2の透明基材20と光散乱シート40とは、接着層22によって接着されている。
(光散乱シート)
光散乱シート40は、第1の透明フィルム41と;第1の透明フィルム41の表面に設けられた透明層42と;透明層42の内部に互いに平行に、かつ所定の間隔で配置された、面方向に沿って延びる、長手方向に直交する方向の断面が直角三角形の複数の光散乱部43と;透明層42の表面に設けられた第2の透明フィルム45とを有する。以下、このようにストライプ状に一次元方向に延びる複数の光散乱部43が形成されている構造をルーバー構造と記載する場合がある。
(透明フィルム)
第1の透明フィルム41および第2の透明フィルム45(以下、まとめて透明フィルムとも記す。)は、透明樹脂フィルムであってもよく、薄いガラスフィルムであってもよい。各透明フィルムの材料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
透明フィルムとしては、上述した光散乱シート30の透明フィルムと同様のものを用いればよい。
(透明層)
透明層42は、透明樹脂層であることが好ましい。
透明樹脂層を構成する透明樹脂としては、上述した光散乱シート30の透明樹脂層を構成する透明樹脂と同様のものを用いればよい。
透明層42の厚さは、10〜200μmが好ましい。透明層42の厚さが10μm以上であれば、光散乱部43の間隔も10μm以上となり、ルーバーの構造の効果が充分に発揮される。透明層42の厚さが200μm以下であれば、ロールツーロールプロセスにて透明層42を形成しやすい。
(光散乱部)
光散乱部43は、たとえば、透明樹脂、光散乱材料、および必要に応じて光吸収材料を含む。
光散乱部43に含まれる透明樹脂としては、光硬化性樹脂(アクリル樹脂、エポキシ樹脂等)の硬化物、熱硬化性樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂が挙げられる。光散乱部43に含まれる透明樹脂は、透明層42を構成する透明樹脂と同一であってもよく、異なってもよい。
光散乱材料としては、酸化チタン(屈折率:2.5〜2.7)、酸化ジルコニウム(屈折率:2.4)、酸化アルミニウム(屈折率:1.76)等の高屈折率材料の微粒子;ポーラスシリカ(屈折率:1.3以下)、中空シリカ(屈折率:1.3以下)等の低屈折率材料の微粒子;前記透明樹脂との相溶性の低い屈折率が異なる樹脂材料;結晶化した1μm以下の樹脂材料等が挙げられる。
光散乱材料の濃度は、0.01〜5体積%が好ましく、0.05〜1体積%がより好ましい。
光散乱材料が微粒子である場合、微粒子の平均粒子径は、0.05〜1μmが好ましく、0.15〜0.8μmがより好ましい。微粒子の平均粒子径が、散乱する光の波長と同程度かやや小さいと、前方に散乱される確率が大きくなり、入射した光を屈折させずに散乱させる機能が強くなる。その結果、観察者側から見て映像表示透明部材4の向こう側に見える光景の歪みを抑制し、急激に光量を変化させることがないため、光景の視認性が向上する。
光散乱部43が光吸収材料を含む場合、映像表示透明部材4内を不要な迷光として伝搬する光の一部を吸収することができ、散乱される光が減少する。そのため、映像表示透明部材4において白濁して見える現象を抑え、映像のコントラストが向上し、映像の視認性が向上する。また、観察者側から見て映像表示透明部材4の向こう側に見える光景のコントラストも向上し、光景の視認性も向上する。特に、外光によって100ルクス以上の環境が、観察者の視線の中に存在する場合には、前記効果を得やすい。
光吸収材料としては、カーボンブラック、チタンブラック等が挙げられる。
光吸収材料の濃度は、0.01〜10体積%が好ましく、0.1〜3体積%がより好ましい。
光散乱部43の間隔(隣り合う光散乱部43の中心間距離)は、10〜250μmが好ましく、10〜100μmがより好ましい。光散乱部43の間隔が10μm以上であれば、光散乱部43を形成しやすい。光散乱部43の間隔が250μm以下であれば、光散乱部43を視認しにくい。
光散乱部43の幅(光散乱シート40の面方向かつ光散乱部43の長手方向に直交する方向)は、光散乱部43の間隔の10〜70%が好ましく、25〜50%がより好ましい。光散乱部43の幅が光散乱部43の間隔の10%以上であれば、光散乱部43を形成しやすい。光散乱部43の幅が光散乱部43の間隔の70%以下であれば、光散乱部43の透過率、および観察者側から見て映像表示透明部材4の向こう側に見える光景の視認性が向上する。
光散乱部43の幅に対する光散乱部43の高さ(光散乱シート40の面方向に直交する方向)の比、すなわちアスペクト比は、光景の直進光の透過率を維持しながら、斜入射する映像光Lを高ゲインにて散乱させる点から、1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2以上がさらに好ましい。
(光散乱シートの製造方法)
光散乱シート40の製造方法の一例を図6を参照しながら説明する。
図6(a)に示すように、第1の透明フィルム41の表面に、光硬化性樹脂46を塗布し、光散乱部43に対応した断面直角三角形の複数の凸条が表面に形成されたモールド62を、凸条が光硬化性樹脂46に接するように、光硬化性樹脂46の上に重ねる。
第1の透明フィルム41の側から光(紫外線等)を照射し、光硬化性樹脂46を硬化させて、モールド62の凸条に対応する溝44が表面に形成された透明層下層42aを形成した後、図6(b)に示すように、モールド62を剥離する。
図6(c)に示すように、透明層下層42aの表面に、光硬化性樹脂、光散乱材料、および必要に応じて光吸収材料を含むペーストを供給し、余剰分をドクターブレードでかき取ることによって、透明層下層42aの溝44にペースト48を埋め込む。光(紫外線等)を照射し、ペースト48を硬化させて、光散乱部43を形成する
図6(d)に示すように、透明層下層42aの表面および光散乱部43の表面に光硬化性樹脂47を塗布し、光硬化性樹脂47の上に第2の透明フィルム45を重ねる。
第1の透明フィルム41の側または第2の透明フィルム45の側から光(紫外線等)を照射し、光硬化性樹脂47を硬化させて、透明層上層を形成することによって、光散乱シート40を得る。
モールド62としては、複数の凸部が表面に形成された樹脂フィルム、金属板等が挙げられる。
光硬化性樹脂の塗布方法としては、ダイコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、スピンコート法、インクジェット法、スプレーコート法等が挙げられる。
(透過型の映像表示透明部材の光学特性)
映像表示透明部材4の透過率は、観察者側から見て映像表示透明部材4の向こう側に見える光景の視認性がよい点から、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上がさらに好ましい。
映像表示透明部材4の反射率は、15%以下であり、10%以下がより好ましい。
本発明においては、短焦点プロジェクタを用いることによって、映像表示透明部材4の第1の面Aへの映像光Lの入射角が大きくなり、映像光Lの光量の強い領域が映像表示透明部材4を大きな出射角で透過、または映像表示透明部材1の第1の面Aにて大きな出射角で正反射することによって観察者に到達しにくくなる。しかし、映像光Lの入射角が大きくなるため、透過光Tが映像表示透明部材4付近の床や天井に到達してしまう。そして、透過光Tが床や天井に到達することによって床や天井で散乱された光が、映像表示透明部材4に映りこみ、その反射光を観察者が視認することによって、映像のコントラストの低下を引き起こす。
本発明においては、映像表示透明部材4の反射率を上記程度に低くすることによって、透過光Tが床や天井に到達することによって床や天井で散乱した光が、映像表示透明部材4に反射して写りこむ光量を低下させることができ、映像表示透明部材4に表示される映像のコントラストの低下を防ぐことができる。特に、映像表示透明部材4に表示された映像の投影機200に最も遠い部分における映像光Lの入射角が50度以上である場合は、透過光Tが映像表示透明部材4付近の床や天井に到達するのみでなく、床や天井で散乱された光のうち、比較的光量の多い領域である、正規反射角度からの角度差が90度未満の光が映像表示透明部材4へ到達するため、上記の効果が高くなる。
映像表示透明部材4の前方ヘーズは、スクリーンゲインの確保および視野角の確保の点から、4%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、8%以上がさらに好ましい。
映像表示透明部材4の前方ヘーズは、観察者側から見て映像表示透明部材4の向こう側に見える光景の視認性の点から、50%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましい。
映像表示透明部材4における透明層42の屈折率と光散乱部43の屈折率との差は、0.01以下が好ましく、0.005以下がより好ましく、0.001以下がさらに好ましい。透明層42の屈折率と光散乱部43の屈折率との差が大きいと、観察者側から見て映像表示透明部材4の向こう側に見える光景が多重に見える。虹ムラや光景の分光を抑える点から、透明層42と光散乱部43は同じ屈折率であることが好ましい。
映像表示透明部材4における透明フィルムの屈折率と透明層42の屈折率との差も、できるだけ小さいことが好ましい。透明フィルムの屈折率と透明層42の屈折率との差は、0.1以下が好ましく、0.05以下がより好ましく、0.01以下がさらに好ましく、0.001以下が特に好ましい。
(透過型の映像表示透明部材を用いた映像表示方法)
本発明の映像表示方法の第2の態様は、透過型の映像表示透明部材に、映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機から映像光を投射し、映像を表示させる映像表示方法である。
図5に示すように、投影機200から投射され、映像表示透明部材4の第1の面Aから入射した映像光Lが、光散乱部43において散乱することによって結像し、投影機200と反対側にいる観察者Yに映像として視認可能に表示される。
また、映像表示透明部材4における光散乱部43間の間隙が光を透過するため、第1の面A側の光景を第2の面B側の観察者Yに視認可能に透過でき、かつ第2の面B側の光景を第1の面A側の観察者Xに視認可能に透過できる。
(作用機序)
以上説明した透過型の映像表示透明部材4を用いた本発明の映像表示システムおよび映像表示方法にあっては、短焦短プロジェクタを用いることにより、光軸方向に焦点位置とずれた場所においても、光量の密度が高い状態となる映像の中央付近の光が、映像表示透明部材の第1の面Aにおいて正反射した反射光Rの出射角、および結像せずに光散乱部43を透過した透過光Tの出射角が大きくなる。そのため、反射光Rや透過光Tが観察者Xや観察者Yの目に入りにくく、投影機200から投射された映像光Lに由来する反射光Rや透過光Tによる眩しさを観察者Xや観察者Yが感じにくい。また、眩しさを抑えるために、第1の面Aおよび光散乱部43の散乱度を高く設定する必要がないため、前方ヘーズを40%以下にすることができ、観察者Xや観察者Y側から見て映像表示透明部材4の向こう側に見える光景の視認性を低下させることがない。
ただし、短焦点プロジェクタを用いることで、映像表示透明部材4の第1の面Aへの映像光Lの入射角が大きくなるため、透過光Tが映像表示透明部材4付近の床や天井に到達するようになる。そして、透過光Tが床や天井に到達することによって床や天井で散乱された光は、映像表示透明部材4に映りこんで、映像のコントラストの低下を引き起こす。そのため、映像表示透明部材4の反射率を15%以下にすることによって、透過光Tが床や天井に到達することによって床や天井で散乱した光が、映像表示透明部材4に反射して写りこむ光量を低下させることができ、映像表示透明部材4に表示される映像のコントラストの低下を防ぐことができる。
また、短焦点プロジェクタを用いることで、映像表示透明部材4の第1の面Aへの入射角が大きくなるため、光散乱部43で散乱し、観察者Yへ向かう散乱光が少なくなくなり輝度が低くなる領域が発生する。そこで、前方ヘーズが、4%以上である映像表示透明部材4を用いることで、各領域において適切なスクリーンゲインが得られ、映像表示透明部材4の映像表示位置に依らず、映像を視認することができるようになる。
(他の実施形態)
なお、本発明における透過型の映像表示透明部材は、第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有する透明部材であり、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側から投射された映像光を第2の面側の観察者に映像として視認可能に表示する映像表示透明部材であればよく、図5の映像表示透明部材4に限定はされない。以下、図5の映像表示透明部材4と同じ構成のものについては同じ符号を付し、説明を省略する。
透過型の映像表示透明部材は、図7に示すように、第1の透明基材10を省略した映像表示透明部材5であってもよい。映像表示透明部材5の具体例としては、たとえば、第2の透明基材20が既存の窓ガラス等である例、すなわち光散乱シート40を、既存の窓ガラス等に貼り付けた例が挙げられる。
また、図5の映像表示透明部材4において、第2の透明基材20を省略したものであってもよい。
また、2枚のガラス板と、ガラス板間に空隙が形成されるようにガラス板の周縁部に介在配置された枠状のスペーサとを有する複層ガラスにおいて、一方のガラス板の内面に、光散乱シート40を貼り付けたものであってもよい。
透過型の映像表示透明部材は、図8に示すように、第1の透明基材10および第2の透明基材20を省略した映像表示透明部材6、すなわち光散乱シート40そのものであってもよい。映像表示透明部材6は、接着層を用いて既存の窓ガラス等への貼り付けが可能である。また、映像表示透明部材6は、変形させることが可能であり、曲面を有する映像表示透明部材を形成するのに向いている。
また、図8の映像表示透明部材6において、第1の透明フィルム41および第2の透明フィルム45を第1の透明基材10および第2の透明基材20に置き換えたものであってもよい。
光散乱シートにおいて、透明フィルムがなくても光散乱シートがその形状を保つことができる場合は、必ずしも光散乱シートに透明フィルムを設ける必要はない。
透過型の映像表示透明部材においては、第1の面および第2の面のいずれか一方または両方に、反射防止フィルムを設けてもよい。
透過型の映像表示透明部材においては、光散乱部43の長手方向に直交する断面の形状は、図示例のような直角三角形に限定されず、他の三角形、台形、釣鐘形状等であってもよい。
光散乱シートの他の例としては、体積ホログラムによって、透過、偏向、拡散されるもの;キノフォーム型ホログラム、その他凹凸表面を形成した構成によって、偏向、散乱、拡散されるもの等が挙げられる。
また、光散乱シートとしては、透明層内に図示例のような複数の光散乱部を設けることなく、透明層全体に光散乱微粒子を分散させて透明層自体を光散乱層としたものであってもよい。
光散乱微粒子としては、上述した酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等の高屈折率材料の微粒子;ポーラスシリカ、中空シリカ等の低屈折率材料の微粒子等が挙げられる。光散乱微粒子の濃度は、0.01〜5体積%が好ましく、0.05〜1体積%がより好ましい。光散乱微粒子の平均粒子径は、上述した理由から、50〜1000nmが好ましく、100〜800nmがより好ましい。
光散乱層は、上述した理由から、光吸収材料を含んでいてもよい。光吸収材料の濃度は、0.01〜5体積%が好ましく、0.1〜3体積%がより好ましい。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
例1、3、4は実施例であり、例2、5は比較例である。
(例1)
透明なポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す。)フィルム(東洋紡社製、コスモシャイン(登録商標)A4300、厚さ:0.1mm)の表面に、紫外線硬化性樹脂(大阪ガスケミカル社製、オグソール(登録商標)EA−F5003)100質量部に対し、光開始剤(BASF社製、イルガキュア(登録商標)907)を3質量部混合した溶液をダイコート法によって10μmの厚みに塗布した。
不規則な凹凸構造が表面に形成された白色PETフィルム(東レ社製、E20、算術平均粗さRa:0.23μm)を、凹凸構造が紫外線硬化性樹脂に接するように、紫外線硬化性樹脂の上に重ねた。
透明PETフィルムの側から1000mJの紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させて、白色PETフィルムの不規則な凹凸構造が表面に転写された第1の透明層を形成した後、白色PETフィルムを剥離した。
第1の透明層の表面に、アルミニウムを真空蒸着法によって物理蒸着し、アルミニウム薄膜(厚さ:8nm)からなる反射膜を形成した。
反射膜の表面に、紫外線硬化性樹脂(大阪ガスケミカル社製、オグソール(登録商標)EA−F5003)100質量部に対し、光開始剤(BASF社製、イルガキュア(登録商標)907)を3質量部混合した溶液をダイコート法によって10μmの厚みに塗布し、紫外線硬化性樹脂の上に透明PETフィルム(厚さ:0.1mm)を重ねた。
1000mJの紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させて、第2の透明層を形成することによって、例1の光散乱シートを得た。
ソーダライムガラス板(松浪硝子社製、厚さ:3mm)、ポリビニルブチラール(以下、PVBと記す。)フィルム(Solutia社製 Saflex RK11l、厚さ:375μm)、例1の光散乱シート、PVBフィルム(厚さ:375μm)、ソーダライムガラス板(厚さ:3mm)の順に積層し、真空加熱圧着を行い、例1の反射型の映像表示透明部材を得た。例1の映像表示透明部材の評価結果を表1に示す。
投影機として、短焦点プロジェクタ(RICOH社製、PJ WX4141NI)を用意した。
図1に示すように、投影機200に最も近い部分における、映像表示透明部材1の第1の面Aへの映像光の入射角αが26度となるように、映像表示透明部材1の第1の面A側に設置した。映像光の投射距離は、最短で18.8cmであった。
映像表示透明部材1に投影機200から映像光を投射し、映像を表示させた。観察者Xは、映像表示透明部材1の第1の面Aを、真正面かつ3mの距離から観察した。観察者Yは、映像表示透明部材1の第2の面Bを、真正面かつ3mの距離から観察した。投影機200から投射された映像光Lに由来する反射光Rや透過光Tによる眩しさを観察者Xや観察者Yが感じることはなかった。また、映像の輝度ムラが抑えられていた。
(例2)
投影機として、通常のプロジェクタ(EPSON社製、LCD PROJECTOR EB−X8)を用意し、入射角αを10度、映像光の投射距離(最短)を100cmに変更した以外は、例1と同様にして映像表示透明部材に映像を表示させた。投影機200から投射された映像光Lに由来する反射光Rや透過光Tによる眩しさが、観察者Xや観察者Yに感じられた。
(例3)
不規則な凹凸構造が表面に形成された白色PETフィルムとして、算術平均粗さRaが0.02μmのものを用いた以外は、例1と同様にして例3の光散乱シートを得た。
例1の光散乱シートの代わりに例3の光散乱シートを用いた以外は、例1と同様にして例3の反射型の映像表示透明部材を得た。例3の映像表示透明部材の評価結果を表1に示す。
例1の反射型の映像表示透明部材の代わりに例3の透過型の映像表示透明部材を用いた以外は、例1と同様にして映像表示透明部材に映像を表示させた。投影機200から投射された映像光Lに由来する反射光Rや透過光Tによる眩しさを観察者Xや観察者Yが感じることはなかった。ただし、映像の輝度ムラが顕著に現れた。
(例4)
透明PETフィルム(東洋紡社製、コスモシャイン(登録商標)A4300、厚さ:50μm)の表面に、紫外線硬化性樹脂(日立化成社製、ヒタロイド(登録商標)7981、比重1.1)をブレードコート法によって厚さが80μmとなるように塗布した。
光散乱部に対応した断面直角三角形の複数の凸条が表面に形成されたモールドを、凸条が紫外線硬化性樹脂に接するように、温度:25℃、ゲージ圧:0.5MPaの条件で紫外線硬化性樹脂の上に押し付けた。
透明PETフィルムの側から紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させて、モールドの凸条に対応する溝が表面に形成された透明層下層を形成した後、モールドを剥離した。これにより、100mm×100mmの領域の透明層下層の表面に、間隔:80μm、幅:40μm、深さ:80μm、長さ:100mm、断面形状:直角三角形の複数の溝が形成された。
紫外線硬化性樹脂(日立化成社製、ヒタロイド(登録商標)7981、比重1.1)に、酸化チタン微粒子(平均粒子径:0.2μm、比重4.2)を0.1体積%となるように混合したペーストを用意した。
透明層下層の表面にペーストを供給し、余剰分をドクターブレードでかき取ることによって、透明層下層の溝にペーストを埋め込んだ。紫外線を照射し、ペーストを硬化させることによって、光散乱部を形成した。
透明層下層の表面および光散乱部の表面に紫外線硬化性樹脂(日立化成社製、ヒタロイド(登録商標)7981、比重1.1)をダイコート法により厚さが5μmとなるように塗布し、紫外線硬化性樹脂の上に透明PETフィルムを重ねた。
紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させて、透明層上層を形成することによって、例4の光散乱シートを得た。
ソーダライムガラス板(松浪硝子社製、厚さ:3mm)、PVBフィルム(Solutia社製 Saflex RK11l、厚さ:375μm)、例4の光散乱シート、PVBフィルム(厚さ:375μm)、ソーダライムガラス板(厚さ:3mm)の順に積層し、真空加熱圧着を行い、例4の透過型の映像表示透明部材を得た。例4の映像表示透明部材の評価結果を表1に示す。
例1の反射型の映像表示透明部材の代わりに例4の透過型の映像表示透明部材を用いた以外は、例1と同様にして映像表示透明部材に映像を表示させた。投影機200から投射された映像光Lに由来する反射光Rや透過光Tによる眩しさを観察者Xや観察者Yが感じることはなかった。
(例5)
例1の反射型の映像表示透明部材の代わりに例4の透過型の映像表示透明部材を用いた以外は、例2と同様にして映像表示透明部材に映像を表示させた。投影機200から投射された映像光Lに由来する反射光Rや透過光Tによる眩しさが、観察者Xや観察者Yに感じられた。
Figure 2016018195
表中の評価基準は、下記のとおりである。
(光景視認性)
観察者側(反射型の場合は観察者X、透過型の場合は観察者Y)から見て映像表示透明部材の向こう側に見える光景の視認性を、下記の基準にて評価した。
0:良好である。
1:手前が暗い場合、または外光が小さい場合は良好である。
2:大まかな認識が可能なレベルである。
3:光景を視認できない。
(映像視認性)
観察者側(反射型の場合は観察者X、透過型の場合は観察者Y)から見て映像表示透明部材に表示される映像の視認性を、下記の基準にて評価した。
0:良好である。
1:周囲が暗い場合は良好である。
2:大まかな認識が可能なレベルである。
3:映像を視認できない。
本発明の映像表示システムは、商品等のショーケース;美術品等の展示ケース;建物、ショールーム、車両等の窓;ガラス扉;室内の透明パーティション等に用いられる透明部材に映像を表示させるシステムとして有用である。具体的には、観察者側から見て透明部材の向こう側に見える光景を視認でき、かつ観察者に対して商品等の説明、各種機器の状態、行き先案内、伝達事項等の情報を伝達する際、観察者に対して各種機器の操作画面等を表示する際、またはプライバシー保護、セキュリティ等のために観察者に対して透明部材の向こう側の光景を視認できなくする際には、投影機から投射された映像光を観察者に映像として視認可能に表示するシステムとして有用である。
1〜6 映像表示透明部材
10 第1の透明基材
12 接着層
20 第2の透明基材
22 接着層
30 光散乱シート
31 第1の透明フィルム
32 第1の透明層
33 反射膜
34 第2の透明層
35 第2の透明フィルム
36 光硬化性樹脂
37 光硬化性樹脂
40 光散乱シート
41 第1の透明フィルム
42 透明層
42a 透明層下層
43 光散乱部
44 溝
45 第2の透明フィルム
46 光硬化性樹脂
47 光硬化性樹脂
48 ペースト
61 モールド
62 モールド
101 映像表示透明部材
102 映像表示透明部材
110 第1の透明基材
120 第2の透明基材
132 第1の透明層
133 反射膜
134 第2の透明層
142 透明層
143 光散乱部
200 投影機
A 第1の面
B 第2の面
L 映像光
R 反射光
T 透過光
X 観察者
Y 観察者
α 入射角

Claims (16)

  1. 第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有する透明部材であり、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側に設置された投影機から投射された映像光を第1の面側の観察者に映像として視認可能に表示する反射型の映像表示透明部材と、
    映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機と
    を備えた映像表示システムであって、
    前記投影機が、短焦点プロジェクタであり、
    前記映像表示透明部材の反射率が、10%以上であり、
    前記映像表示透明部材の後方ヘーズが、5%以上であり、
    前記映像表示透明部材の前方ヘーズが、50%以下である、映像表示システム。
  2. 映像表示透明部材に表示された映像の投影機に最も近い部分における、映像表示透明部材の第1の面への映像光の入射角が、15〜60度である、請求項1に記載の映像表示システム。
  3. 前記映像表示透明部材が、第1の面と第2の面との間に、表面に凹凸構造を有する第1の透明層を有し、
    第1の透明層の凹凸構造の算術平均粗さRaが、0.01〜20μmである、請求項1または2に記載の映像表示システム。
  4. 前記映像表示透明部材が、第1の面と第2の面との間に、第1の透明層の凹凸構造側の面に沿うように形成された、入射した光の一部を透過する反射膜と、反射膜の表面を覆うように設けられた第2の透明層とをさらに有する、請求項3に記載の映像表示システム。
  5. 前記映像表示透明部材における、第1の透明層の表面の凹凸構造が、不規則な凹凸構造である、請求項3または4に記載の映像表示システム。
  6. 第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有する透明部材であり、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側に設置された投影機から投射された映像光を第2の面側の観察者に映像として視認可能に表示する透過型の映像表示透明部材と、
    映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機と
    を備えた映像表示システムであって、
    前記投影機が、短焦点プロジェクタであり、
    前記映像表示透明部材の反射率が、15%以下であり、
    前記映像表示透明部材の前方ヘーズが、4〜40%である、映像表示システム。
  7. 映像表示透明部材に表示された映像の投影機に最も近い部分における、映像表示透明部材の第1の面への映像光の入射角が、15〜60度である、請求項6に記載の映像表示システム。
  8. 前記映像表示透明部材が、第1の面と第2の面との間に、透明層と、透明層の内部に互いに平行に、かつ所定の間隔で配置された、面方向に沿って延びる複数の光散乱部とを有する、請求項6または7に記載の映像表示システム。
  9. 第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有する透明部材であり、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側から投射された映像光を第1の面側の観察者に映像として視認可能に表示する反射型の映像表示透明部材に、
    映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機から映像光を投射し、映像を表示させる方法であって、
    前記投影機が、短焦点プロジェクタであり、
    前記映像表示透明部材の反射率が、10%以上であり、
    前記映像表示透明部材の後方ヘーズが、5%以上であり、
    前記映像表示透明部材の前方ヘーズが、50%以下である、映像表示方法。
  10. 映像表示透明部材に表示された映像の投影機に最も近い部分における、映像表示透明部材の第1の面への映像光の入射角が、15〜60度である、請求項9に記載の映像表示方法。
  11. 前記映像表示透明部材が、第1の面と第2の面との間に、表面に凹凸構造を有する第1の透明層を有し、
    第1の透明層の凹凸構造の算術平均粗さRaが、0.01〜20μmである、請求項9または10に記載の映像表示方法。
  12. 前記映像表示透明部材が、第1の面と第2の面との間に、第1の透明層の凹凸構造側の面に沿うように形成された、入射した光の一部を透過する反射膜と、反射膜の表面を覆うように設けられた第2の透明層とをさらに有する、請求項11に記載の映像表示方法。
  13. 前記映像表示透明部材における、第1の透明層の表面の凹凸構造が、不規則な凹凸構造である、請求項11または12に記載の映像表示方法。
  14. 第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有する透明部材であり、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側から投射された映像光を第2の面側の観察者に映像として視認可能に表示する透過型の映像表示透明部材に、
    映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機から映像光を投射し、映像を表示させる方法であって、
    前記投影機が、短焦点プロジェクタであり、
    前記映像表示透明部材の反射率が、15%以下であり、
    前記映像表示透明部材の前方ヘーズが、4〜40%である、映像表示方法。
  15. 映像表示透明部材に表示された映像の投影機に最も近い部分における、映像表示透明部材の第1の面への映像光の入射角が、15〜60度である、請求項14に記載の映像表示方法。
  16. 前記映像表示透明部材が、第1の面と第2の面との間に、透明層と、透明層の内部に互いに平行に、かつ所定の間隔で配置された、面方向に沿って延びる複数の光散乱部とを有する、請求項14または15に記載の映像表示方法。
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