JP2016014135A - 光学フィルム、偏光板、および液晶表示装置 - Google Patents

光学フィルム、偏光板、および液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】単位膜厚あたりの光学特性の発現性を向上させつつ、湿度依存性、湿熱下での光学安定性に優れる光学フィルム、偏光板および液晶表示装置の提供。
【解決手段】アシル基の置換度が2.0〜2.6のセルロースアシレートを含み、下記式1および式2を満たす、膜厚が40μm以下の光学フィルム。
式1: ΔRth(RH)/Rth(550)≦0.12
式2: ΔRth(60℃90% 1d)/Rth(550)≦0.05
式中、ΔRth(RH)=Rth(30%)−Rth(80%)であり、ΔRth(60℃90% 1d)=Rth(60℃90% 1d)−Rth(初期)である。
【選択図】なし

Description

本発明は、光学フィルム、偏光板、および液晶表示装置に関する。
近年、液晶表示装置のTV用途が進行し、画面サイズの大型化に伴う高画質化と低価格化が益々求められている。また、液晶表示装置に用いられる光学フィルムに対しても高い品質が要求されており、様々な光学フィルムが提案されている。
例えば、特許文献1には、高吸湿性の複素環式化合物を含有することによって環境湿度に依存したレターデーション変化が抑制されたセルロースアシレートフィルムが記載されている。特許文献2には、セルロースアシレート樹脂とスチレン−無水マレイン酸共重合体の部分開環体を含有することによって、レターデーションの湿熱耐久性が優れたセルロースアシレートフィルムが記載されている。
また、特許文献3には、ベンゼン環、シクロヘキサン環、ピリミジン環、ピリジン環のいずれかの環に、さらに環構造が3つ置換した化合物を、セルロースエステル100質量部に対して1〜20質量部含有させることにより良好な耐光性及び耐湿熱性を有する光学フィルムが記載されている。特許文献4には、プリン塩基骨格などの核酸塩基骨格を含有する化合物を含めることによって湿度変化に対するレターデーション変動が抑制されたセルロースアシレートフィルムが記載されている。
特開2012−215817号公報 特開2011−39304号公報 特開2013−125180号公報 特開2011−241379号公報
特許文献1は、環境湿度に依存したレターデーション変化、すなわち湿度依存性を抑えることができるが、湿熱下での光学特性の変化が大きくなる傾向にある。特許文献2は、湿熱耐久性に優れるが、スチレン−無水マレイン酸共重合体の部分開環体の固有複屈折が小さいので、光学特性を得ようとすると膜厚が40μmを超えるという問題がある。
光学フィルムの薄膜化を行うには、単位膜厚あたりの光学特性の発現性を向上させる必要があるが、上記の通り、単位膜厚あたりの光学特性の発現性を向上させることで薄膜化し、さらに湿度依存性、及び湿熱下での光学安定性を両立させることは困難である。
一方、特許文献3及び特許文献4に記載のフィルムは、縮環構造を含む化合物を含有するが、縮環構造を含む化合物は、吸収がピークを与える波長が長波長側にシフトする傾向があるので、その結果、縮環構造を含む化合物を含有するフィルムは、着色したり、レターデーションの値が、短波長になるほど大きくなってしまう順分散特性を示すことがある。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、単位膜厚あたりの光学特性の発現性を向上させつつ、湿度依存性、及び湿熱下での光学安定性に優れる光学フィルムを提供することを解決すべき課題とする。さらに本発明は、上記の光学フィルムを用いた偏光板および液晶表示装置を提供することを解決すべき課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、アシル置換度を有するセルロースアシレートを含み、厚み方向のレターデーションRthが条件を満たす膜厚40μm以下の光学フィルムが、湿度依存性、及び湿熱下での光学安定性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
<1> アシル基の置換度が2.0〜2.6のセルロースアシレートを含み、
下記式1および式2を満たす、膜厚が40μm以下の光学フィルム;
式1: ΔRth(RH)/Rth(550)≦0.12
式2: ΔRth(60℃90% 1d)/Rth(550)≦0.05
式中、ΔRth(RH)=Rth(30%)−Rth(80%)であり、
Rth(30%)は、25℃、30%相対湿度環境下に2時間放置し、25℃、30%相対湿度環境下で測定したときの波長550nmにおけるフィルムの厚み方向のレターデーションRthを表し、
Rth(80%)は、25℃、80%相対湿度環境下に2時間放置し、25℃、80%相対湿度環境下で測定したときの波長550nmにおけるフィルムの厚み方向のレターデーションRthを表し;
ΔRth(60℃90% 1d)=Rth(60℃90% 1d)−Rth(初期)であり、
Rth(初期)は、光学フィルムをガラスに貼合し、25℃、60%相対湿度環境下で6時間放置した後に測定した波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRthを表し、
Rth(60℃90% 1d)は、ガラスに貼合した光学フィルムを60℃、90%相対湿度環境下で24時間放置し、さらに25℃、60%相対湿度環境下で6時間放置した後に測定した波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRthを表し、
Rth(550)は、光学フィルムの波長550nmにおける厚み方向のレターデーションを表す。
<2> 60℃90%環境下で24時間放置した前後の遅相軸に平行な方向又は遅相軸に直交する方向の寸法変化率が、−0.5〜+0.5%である、<1>に記載の光学フィルム。
<3> さらに下記式3を満たす、<1>または<2>に記載の光学フィルム;
式3: −2nm≦ΔRe(λ)≦2nm
ただし、ΔRe(λ)=Re(630)−Re(450)、Re(630)は、波長630nmにおける面内レターデーションを表し、Re(450)は波長450nmにおける面内レターデーションを表す。
<4> <1>〜<3>のいずれかに記載の光学フィルムと偏光子とを少なくとも有する、偏光板。
<5> <1>〜<3>のいずれかに記載の光学フィルムと、40℃90%で24時間放置した後の透湿度が100g/m2以下であるフィルムとで偏光子が挟持されている偏光板。
<6> 上記40℃90%で24時間放置した後の透湿度が100g/m2以下であるフィルムと上記偏光子とが、活性エネルギー硬化型接着剤で接着されている、<5>に記載の偏光板。
<7> <1>〜<4>のいずれかに記載の光学フィルムを有する、または<5>〜<7>の何れかに記載の偏光板を有する、液晶表示装置。
好ましくは、本発明の光学フィルムは、下記一般式(1)で表される単環化合物および/または一般式(2)で表される単環化合物を含有する。
Figure 2016014135
式中、X1およびX4は、それぞれ独立に=CH−または窒素原子を表し、X2およびX3は炭素原子を表し;
11およびX12は炭素原子を表し、X13およびX14は、それぞれ独立に=CH−または窒素原子を表し;
1およびL2は、それぞれ独立に、単結合、−CO−、−O−、−NR−、およびこれらの組み合わせからなる基を表し、Rは、水素原子、または炭素数1〜6のアルキル基を表し、R1およびR2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、または置換基を有していてもよい炭素数3〜10の複素環基を表す;点線は、単結合、あるいは−X3(−L2−R2)=X1−NH−X2(−L1−R1)=X4−、または−X13=X11(−L2−R2)−NH−X12(−L1−R1)=X14−と一緒になって環を形成する原子団を表す。
好ましくは、一般式(1)で表される単環化合物および一般式(2)で表される単環化合物がそれぞれ、下記一般式(1−1)で表される単環化合物および一般式(2−1)で表される単環化合物である。
Figure 2016014135
式中、X1及びX4は、それぞれ独立に=CH−または窒素原子を表し、X5は−CH2−又は−NH−を表し、
11は炭素原子を表し、X14は=CH−または窒素原子を表し、X15は−CH2−又は−NH−を表し、
1およびL2は、それぞれ独立に、単結合、−CO−O−、−CO−NH−、又は−NH−CO−を表し、R1およびR2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、または置換基を有していてもよい炭素数3〜10の複素環基を表し、nは0または1の整数を表す。
好ましくは、一般式(1−1)および一般式(2−1)中のL1およびL2が単結合を表す。
好ましくは、一般式(1)で表される単環化合物および一般式(2)で表される単環化合物における単環が、それぞれ独立にピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環又はトリアゾール環である。
本発明によれば、単位膜厚あたりの光学特性の発現性を向上させつつ、湿度依存性、及び湿熱下での光学安定性に優れる光学フィルムが提供される。さらに、本発明によれば、上記の光学フィルムを用いた偏光板および液晶表示装置が提供される。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書におけるRe(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。本明細書においては、特に記載がないときは、波長λは、550nmとする。Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。Rth(λ)は上記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHが算出する。尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)及び式(B)よりRthを算出することもできる。ここで平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
Figure 2016014135
ここで、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表し、nx、ny、nzは、屈折率楕円体の各主軸方位の屈折率を表し、dはフィルム厚を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d 式(B)
なおこの際、パラメータとして平均屈折率nが必要になるが、これはアッベ屈折計((株)アタゴ社製の「アッベ屈折計2−T」)により測定した値を用いた。
また、本明細書では、Re(450)、Re(550)、Re(630)、Rth(450)、Rth(550)、Rth(630)等のRe(λ)及びRth(λ)の値は、測定装置により3以上の異なる波長(例としてλ=479.2nm、546.3nm、628.3nm)を用いて測定し、それぞれの波長からRe、Rthを算出するものとする。これらの値をコーシーの式(第3項まで、Re=A+B/λ2+C/λ4)にて近似して値A、B、Cを求める。以上より波長λにおけるRe、Rthをプロットし直し、そこから各波長λでのRe(λ)およびRth(λ)を求めることができる。
なお、レターデーションは、AxoScan(AXOMETRICS社)を用いて測定することもできる。
特に指定のない限り、Re(450)、Re(550)、Re(630)およびRth(450)、Rth(550)、Rth(630)は25℃60%RH環境下で測定した。
(光学フィルム)
本発明の光学フィルムは、アシル基の置換度が2.0〜2.6のセルロースアシレートを含み、下記式1および式2を満たし、膜厚が40μm以下であることを特徴とする。
式1: ΔRth(RH)/Rth(550)≦0.12
式2: ΔRth(60℃90% 1d)/Rth(550)≦0.05
式中、ΔRth(RH)=Rth(30%)−Rth(80%)であり、
Rth(30%)は、25℃、30%相対湿度環境下に2時間放置し、25℃、30%相対湿度環境下で測定したときの波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRthを表し、
Rth(80%)は、25℃、80%相対湿度環境下に2時間放置し、25℃、80%相対湿度環境下で測定したときの波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRthを表し;
ΔRth(60℃90% 1d)=Rth(60℃90% 1d)−Rth(初期)であり、
Rth(初期)は、光学フィルムをガラスに貼合し、25℃、60%相対湿度環境下で6時間放置した後に測定した波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRthを表し、
Rth(60℃90% 1d)は、ガラスに貼合した光学フィルムを60℃、90%相対湿度環境下で24時間放置し、さらに25℃、60%相対湿度環境下で6時間放置した後に測定した波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRthを表し、
Rth(550)は、光学フィルムの波長550nmにおける厚み方向のレターデーションを表す。
本発明の光学フィルムは、光学補償フィルムとして使用することができる。
本発明の光学フィルムは、単位膜厚あたりの光学特性の発現性を向上させることができるので、膜厚が40μm以下の薄膜化が可能となる。また、湿度依存性、及び湿熱下での光学安定性に優れる。
<光学フィルムの物性>
本発明の光学フィルムは、下記式1および式2を満たす。本発明の光学フィルムは、下記式1−1および式2−1を満たすことが好ましく、下記式1−2および式2−2を満たすことがより好ましい。
式1および式2を満たさない場合、単位膜厚あたりの光学特性の発現性を向上させて薄膜化し、さらに湿度依存性、及び湿熱下での光学安定性を両立させることができなくなる。
式1: ΔRth(RH)/Rth(550)≦0.12
式2: ΔRth(60℃90% 1d)/Rth(550)≦0.05
式1−1: ΔRth(RH)/Rth(550)≦0.10
式2−1: ΔRth(60℃90% 1d)/Rth(550)≦0.04
式1−2: ΔRth(RH)/Rth(550)≦0.09
式2−2: ΔRth(60℃90% 1d)/Rth(550)≦0.03
式中、ΔRth(RH)=Rth(30%)−Rth(80%)であり、
Rth(30%)は、25℃、30%相対湿度環境下に2時間放置し、25℃、30%相対湿度環境下で測定したときの波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRthを表し、
Rth(80%)は、25℃、80%相対湿度環境下に2時間放置し、25℃、80%相対湿度環境下で測定したときの波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRthを表し;
ΔRth(60℃90% 1d)=Rth(60℃90% 1d)−Rth(初期)であり、
Rth(初期)は、光学フィルムをガラスに貼合し、25℃、60%相対湿度環境下で6時間放置した後に測定した波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRthを表し、
Rth(60℃90% 1d)は、ガラスに貼合した光学フィルムを60℃、90%相対湿度環境下で24時間放置し、さらに25℃、60%相対湿度環境下で6時間放置した後に測定した波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRthを表し、
Rth(550)は、光学フィルムの波長550nmにおける厚み方向のレターデーションを表す。
上記した式1および式2を満たす光学フィルムは、例えば、本明細書中で後記する添加剤を配合することによって製造することができる。
また、本発明の光学フィルムは、さらに下記式3を満たすことが好ましく、式3−1を満たすことがより好ましく、式3−2を満たすことがさらに好ましい。
ΔRe(λ)を−2nm以上とすることで斜めから見た時の色味変化を向上させることができ、ΔRe(λ)を2nm以下とすることでRe,Rthの幅方向、長手方向バラツキによる色味変化を低減させることができる。
式3: −2nm≦ΔRe(λ)≦2nm
式3−1: −1.4nm≦ΔRe(λ)≦2nm
式3−2: −1.4nm≦ΔRe(λ)≦1.5nm
ただし、ΔRe(λ)=Re(630)−Re(450)、Re(630)は、波長630nmにおける面内レターデーションを表し、Re(450)は波長450nmにおける面内レターデーションを表す。
また、Rth(30%)、Rth(80%)、Rth(550)、Rth(60℃90% 1d)、Rth(初期)、Re(630)、Re(550)、及びRe(450)の各々の好ましい範囲は以下の通りである。
100nm≦Rth(30%)≦ 280nm
90nm≦Rth(80%)≦ 250nm
100nm≦Rth(550)≦ 250nm
90nm≦Rth(60℃90% 1d)≦ 260 nm
100nm≦Rth(初期)≦ 250nm
30nm≦Re(630)≦ 100nm
30nm≦Re(550)≦ 100nm
30nm≦Re(450)≦ 100nm
本発明の光学フィルムは、60℃90%環境下で24時間放置した前後の遅相軸に平行な方向又は遅相軸に直交する方向の寸法変化率が、−0.5〜+0.5%であることが好ましく、−0.3〜+0.3%であることがより好ましく、−0.2〜+0.2%であることがさらに好ましい。寸法変化率を上記範囲内とすることで湿度依存性、湿熱下での光学安定性をより向上させることができる。
寸法変化率は、具体的には下記の方法で測定することができる。まず、切り出した長さ25cm(測定方向)、幅5cmのフィルム試料、またはこれと直交する方向を長手方向として切り出したフィルム試料とを用意し、上記試料に20cmの間隔でピン孔を空け、25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長する(測定値をL0とする)。次いで、試料を60℃、相対湿度90%の湿熱環境下で24時間保持した後、25℃、相対湿度60%にて2時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長する(測定値をL1とする)。これらの測定値を用いて下記式により寸法変化率を算出することができる。
寸法変化率[%]=(L1−L0)/L0×100
本発明の光学フィルムの膜厚は、40μm以下であり、38μm以下が好ましく、35μm以下がより好ましい。下限については特に制限はないが、好ましくは5μmである。
<セルロースアシレート>
本発明の光学フィルムは、アシル置換度が2.0〜2.6のセルロースアシレートを含む。
セルロースアシレートの原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりアシル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位に位置するセルロースの水酸基がアシル化している割合(各位における100%のアシル化は置換度1)の合計を意味する。
本発明においては、セルロースアシレートの総アシル置換度が2.0〜2.6であり、2.0〜2.5であることが好ましく、2.1〜2.4であることがより好ましい。
使用するセルロースアシレートの90質量%以上が上記アシル置換度の範囲を満たすことが好ましく、95質量%以上が上記アシル置換度の範囲を満たすことがより好ましく、96質量%以上が上記アシル置換度の範囲を満たすことがさらに好ましく、全てのセルロースアシレートが上記アシル置換度の範囲を満たすことが特に好ましい。
セルロースのアシル化に用いられるアシル基は1種類でもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。アシル基としては、炭素数2以上のものが好ましい。
セルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されない。例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどが挙げられ、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブタノイル基、tert−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、tert−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくはアセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基(アシル基が炭素原子数2〜4である場合)であり、より特に好ましくはアセチル基(セルロースアシレートが、セルロースアセテートである場合)である。
セルロ−スのアシル化において、アシル化剤としては、酸無水物や酸クロライドを用いた場合、反応溶媒である有機溶媒としては、有機酸、例えば、酢酸、メチレンクロライド等が使用される。
触媒としては、アシル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ、アシル化剤が酸クロライド(例えば、CH3CH2COCl)である場合には、塩基性化合物が用いられる。
最も一般的なセルロ−スの混合脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロ−スをアセチル基および他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、吉草酸等)またはそれらの酸無水物を含む混合有機酸成分でアシル化する方法である。
本発明に用いるセルロースアシレートは、例えば、特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成できる。
本発明の光学フィルムにおけるセルロースアシレートの含有量は、光学フィルムの質量に対して70質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、85質量%以上が特に好ましい。
<添加剤>
本発明の光学フィルムは、セルロースアシレート以外に添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、一般式(1)又は一般式(2)で表される単環化合物、並びに可塑剤(例えば、糖エステル化合物、エステル系化合物等)が挙げられる。
<<一般式(1)又は一般式(2)で表される単環化合物>>
本発明の光学フィルムは、下記一般式(1)で表される単環化合物及び/または一般式(2)で表される単環化合物を含有することが好ましい。
Figure 2016014135
式中、X1およびX4は、それぞれ独立に=CH−または窒素原子を表し、X2およびX3は炭素原子を表し;
11およびX12は炭素原子を表し、X13およびX14は、それぞれ独立に=CH−または窒素原子を表し;
1およびL2は、それぞれ独立に、単結合、−CO−、−O−、−NR−、およびこれらの組み合わせからなる基を表し、Rは、水素原子、または炭素数1〜6のアルキル基を表し、R1およびR2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、または置換基を有していてもよい炭素数3〜10の複素環基を表す;点線は、単結合、あるいは−X3(−L2−R2)=X1−NH−X2(−L1−R1)=X4−、または−X13=X11(−L2−R2)−NH−X12(−L1−R1)=X14−と一緒になって環を形成する原子団を表す。
単位膜厚あたりの光学特性の発現性をより一層向上させ、湿度依存性、及び湿熱下での光学安定性がより一層向上させるという観点から、本発明の光学フィルムは、一般式(1)で表される単環化合物および/または一般式(2)で表される単環化合物を含有することが好ましい。
一般式(1)で表される単環化合物及び/または一般式(2)で表される単環化合物を含有させることで、本発明の効果がより向上する理由は以下のメカニズムによるものと推定している。
一般式(1)または一般式(2)で表される化合物中の酸性水素がカルボニル基へと選択的に配位することができるためと考えられる。環状化合物であると、窒素原子に隣接する原子の結合角度が固定されるため、酸性水素の周りの立体障害が小さくなりカルボニル基への配位が円滑にすすむと推定している。また、光学発現性を向上させるために特に一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される複素芳香環化合物が特に好ましいことがわかってきた。
一般式(1)において、X1およびX4は、それぞれ独立に=CH−または窒素原子を表し、X2およびX3は炭素原子を表す。
一般式(1)において、L1およびL2は、それぞれ独立に、単結合、−CO−、−O−、−NR−、およびこれらの組み合わせからなる基を表し、単結合、−CO−と−O−との組み合わせからなる基、および−CO−と−NR−との組み合わせからなる基が好ましく、L1およびL2がともに単結合がより好ましい。
Rは、水素原子、または炭素数1〜6のアルキル基を表す。炭素数1〜6のアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。Rは、水素原子が好ましい
一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、または置換基を有していてもよい炭素数3〜10の複素環基を表す。
置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基としては、炭素数5〜8のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5〜6のシクロアルキル基がより好ましい。炭素数5〜10のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基としては、炭素数6〜14のアリール基が好ましく、炭素数6〜10のアリール基がより好ましい。炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
アリール基が複数の環を有する場合は炭素数9〜18が好ましく、炭素数11〜16のアリール基がより好ましい。複数の環のうち一部に複素環を含むことが好ましい。
置換基を有していてもよい炭素数3〜10の複素環基としては、炭素数3〜7の複素環基が好ましく、炭素数3〜5の複素環基がより好ましい。炭素数3〜10の複素環基としては、芳香族性を有することが好ましい。芳香族性を有する複素環は、一般に不飽和複素環であり、好ましくは最多の二重結合を有する複素環である。複素環は5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが最も好ましい。複素環のヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子または酸素原子であることが好ましく、窒素原子であることが特に好ましい。芳香族性を有する複素環としては、ピリジン環(複素環基としては、2−ピリジルまたは4−ピリジル)が特に好ましい。
炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、および炭素数3〜10の複素環基は置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基など)、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基など)、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アルキル置換スルファモイル基、アルケニル置換スルファモイル基、アリール置換スルファモイル基、スルオンアミド基、カルバモイル、アルキル置換カルバモイル基、アルケニル置換カルバモイル基、アリール置換カルバモイル基、アミド基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、2−チオフェニル基、2−ピロリル基およびアシル基が含まれる。
一般式(1)において、点線は、単結合、あるいは−X3(−L2−R2)=X1−NH−X2(−L1−R1)=X4−と一緒になって環を形成する原子団を表す。
原子団としては、−CH2−、−NH−、−CH(−L1−R1)−(式中、L1およびR1は、上記と同義であり、好ましい範囲も同様である)およびこれらの組み合わせからなる基が挙げられ、単結合、又は−CH2−が好ましく、単結合がより好ましい。
原子団としては、一般式(1)で表される化合物が5〜7員環となるように原子団が形成されていることが好ましく、5員環または6員環となるように原子団が形成されていることがより好ましく、5員環となるように原子団が形成されていることがさらに好ましい。5員環としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環又はトリアゾール環などが挙げられる。
一般式(2)において、X11およびX12は炭素原子を表し、X13およびX14は、それぞれ独立に=CH−または窒素原子を表す。
一般式(2)において、L1およびL2は、それぞれ独立に、単結合、−CO−、−O−、−NR−、およびこれらの組み合わせからなる基を表し、一般式(1)におけるL1、L2、およびRと同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(2)において、R1およびR2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、または置換基を有していてもよい炭素数3〜10の複素環基を表し、一般式(1)におけるR1およびR2と同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(2)において、点線は、単結合、あるいは−X13=X11(−L2−R2)−NH−X12(−L1−R1)=X14−と一緒になって環を形成する原子団を表す。
原子団としては、一般式(1)における点線の定義と同義であり、好ましい範囲も同様である。
原子団としては、一般式(2)で表される化合物が5〜7員環となるように原子団が形成されていることが好ましく、5員環または6員環となるように原子団が形成されていることがより好ましく、5員環となるように原子団が形成されていることがさらに好ましい。5員環としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環又はトリアゾール環などが挙げられる。
一般式(1)で表される単環化合物および一般式(2)で表される単環化合物は、それぞれ、下記一般式(1−1)で表される単環化合物および一般式(2−1)で表される単環化合物であることが好ましい。
Figure 2016014135
式中、X1及びX4は、それぞれ独立に=CH−または窒素原子を表し、X5は−CH2−又は−NH−を表し、
11は炭素原子を表し、X14は=CH−または窒素原子を表し、X15は−CH2−又は−NH−を表し、
1およびL2は、それぞれ独立に、単結合、−CO−O−、−CO−NH−、又は−NH−CO−を表し、R1およびR2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、または置換基を有していてもよい炭素数3〜10の複素環基を表し、nは0または1の整数を表す。
一般式(1−1)及び一般式(2−1)において、L1およびL2は、それぞれ独立に、単結合、−CO−O−、−CO−NH−、又は−NH−CO−を表し、特に好ましくは、単結合である。
一般式(1−1)及び一般式(2−1)において、R1およびR2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、または置換基を有していてもよい炭素数3〜10の複素環基を表し、一般式(1)におけるR1およびR2と同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(1−1)及び一般式(2−1)において、nは0または1の整数を表し、0が好ましい。
以下、一般式(1)で表される単環化合物及び一般式(2)で表される単環化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、式中、Ar1、Ar2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、または置換基を有していてもよい炭素数3〜10の複素環基を表す。
Figure 2016014135
Figure 2016014135
Figure 2016014135
一般式(1)で表される単環化合物および一般式(2)で表される単環化合物の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して1〜10質量部が好ましく、1〜7質量部がより好ましく、2〜5質量部がさらに好ましい。一般式(1)で表される単環化合物および一般式(2)で表される単環化合物は、1種類のみでもよいし、2種類以上配合してもよい。2種類以上配合するときは、合計量が上記範囲となる。
一般式(1)で表される単環化合物および一般式(2)で表される単環化合物は、例えば、以下の文献に記載の方法により合成することができる。
化合物1−aは、J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 1997, 3189-3196に記載の合成方法により合成することができる。
化合物3−aは、文献 J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 10580-10585に記載の合成方法により合成することができる。
化合物6−aは、Bioorganic & Medicinal Chemistry, 2010, 18, 6184-6196に記載の合成方法により合成することができる。
<<糖エステル化合物>>
本発明の光学フィルムは、糖エステル化合物を含んでいてもよい。糖エステル化合物としては、ピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも一種を1〜12個有しその構造のOH基の一部がエステル化されたエステル化合物およびまたはその混合物を好ましく用いることができる。
ピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも一種を1〜12個有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物のエステル化の割合としては、ピラノース構造又はフラノース構造内に存在するOH基の70%以上であることが好ましい。
本発明においては、上記エステル化合物を総称して、糖エステルまたは糖エステル化合物とも称す。
本発明に用いられるエステル化合物の例としては、例えば、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、あるいはアラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースあるいはケストース挙げられる。
この他、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
これらの化合物の中で、特にピラノース構造とフラノース構造を両方有する化合物が好ましい。
例としては、スクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、更に好ましくは、スクロースである。
ピラノース構造又はフラノース構造中のOH基のすべてもしくは一部をエステル化するのに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、酢酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができ、具体的には、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、γ−イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸、α−イソジュリル酸、クミン酸、α−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、サリチル酸、o−アニス酸、m−アニス酸、p−アニス酸、クレオソート酸、o−ホモサリチル酸、m−ホモサリチル酸、p−ホモサリチル酸、o−ピロカテク酸、β−レソルシル酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ベラトルム酸、o−ベラトルム酸、没食子酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモバニリン酸、ホモベラトルム酸、o−ホモベラトルム酸、フタロン酸、p−クマル酸を挙げることができるが、特に安息香酸、ナフチル酸が好ましい。
オリゴ糖のエステル化合物を、上記ピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも一種を1〜12個を有する化合物として適用できる。
オリゴ糖は、澱粉、ショ糖等にアミラーゼ等の酵素を作用させて製造されるもので、本発明に適用できるオリゴ糖としては、例えば、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖が挙げられる。
また、上記エステル化合物は、下記一般式(A)で表されるピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも一種を1個以上12個以下縮合した化合物である。ただし、R11〜R15、R21〜R25は、炭素数2〜22のアシル基又は水素原子を、m、nはそれぞれ0〜12の整数、m+nは1〜12の整数を表す。
Figure 2016014135
11〜R15、R21〜R25は、ベンゾイル基、水素原子であることが好ましい。ベンゾイル基は更に置換基R26を有していてもよく、例えばアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、フェニル基が挙げられ、更にこれらのアルキル基、アルケニル基、フェニル基は置換基を有していてもよい。オリゴ糖も上記糖エステル化合物と同様な方法で製造することができる。
以下に、上記糖エステル化合物の具体例を挙げるが、これに限定されるものではない。
Figure 2016014135
Figure 2016014135
Figure 2016014135
Figure 2016014135
Figure 2016014135
Figure 2016014135
Figure 2016014135
Figure 2016014135
Figure 2016014135
本発明の光学フィルムが糖エステル化合物を含有する場合、上記糖エステル化合物はセルロースアシレートの質量に対して0.5〜30質量%含むことが好ましく、2〜15質量%含むことがより好ましい。
<<エステル系化合物>>
本発明の光学フィルムは、下記一般式(10)で表されるエステル系化合物を含んでいてもよい。
一般式(10):B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはヒドロキシル基又はカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基又は炭素数6〜12のアリールグリコール残基又は炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。)
一般式(10)中、Bで示されるヒドロキシル基又はカルボン酸残基と、Gで示されるアルキレングリコール残基又はオキシアルキレングリコール残基又はアリールグリコール残基、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基又はアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のエステル系化合物と同様の反応により得られる。
一般式(10)で表されるエステル系化合物のカルボン酸成分としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、脂肪酸等があり、これらはそれぞれ1種又は2種以上の混合物として使用することができる。
一般式(10)で表されるエステル系化合物の炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種又は2種以上の混合物として使用される。
特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースアシレートとの相溶性に優れているため、特に好ましい。
また、上記一般式(10)で表されるエステル系化合物の炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用できる。
一般式(10)で表されるエステル系化合物の炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種又は2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等がある。
一般式(10)で表されるエステル系化合物は、数平均分子量が、好ましくは300〜1500、より好ましくは400〜1000の範囲が好適である。また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、ヒドロキシル基(水酸基)価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、ヒドロキシル基(水酸基)価は15mgKOH/g以下のものである。
以下に、本発明に用いることのできる一般式(10)で表されるエステル系化合物の具体的化合物を示すが、本発明はこれに限定されない。
Figure 2016014135
Figure 2016014135
Figure 2016014135
本発明の光学フィルムがエステル系化合物を含有する場合、上記エステル系化合物は、セルロースアシレートの質量に対して0.1〜30質量%含むことが好ましく、0.5〜10質量%含むことがより好ましい。
本発明においては、添加剤としては、一般式(1)又は一般式(2)で表される単環化合物と可塑剤(上記した糖エステル化合物及びエステル系化合物等)とを併用することも好ましい。上記単環化合物と上記可塑剤とを併用する場合、その比率は特に限定されないが、単環化合物の1質量部に対して1.5〜15質量部の可塑剤を添加することが好ましく、2〜8質量部の可塑剤を添加することがより好ましい。
<光学フィルムの製造方法>
本発明の光学フィルムの製造方法としては特に制限はないが、例えば、溶液流延法又は溶融流延法で製造することができ、溶液流延法で製造されることが好ましい。
溶液流延法は、セルロースアシレート及び添加剤を溶媒に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸又は幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行うことができる。
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースアシレートの濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースアシレートの濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
ドープで用いられる溶媒は、セルロースアシレートの良溶媒と貧溶媒を混合して2種類以上の溶媒を併用することが生産効率の点で好ましく、良溶媒が多い方がセルロースアシレートの溶解性の点で好ましい。
良溶媒と貧溶媒の混合比率の好ましい範囲は、良溶媒が70〜98質量%であり、貧溶媒が2〜30質量%である。良溶媒、貧溶媒とは、使用するセルロースアシレートを単独で溶解するものを良溶媒、単独で膨潤するか又は溶解しないものを貧溶媒と定義している。そのため、セルロースアシレートのアシル基の置換度によっては、良溶媒、貧溶媒が変わる場合がある。
本発明に用いられる良溶媒は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライド又は酢酸メチルが挙げられる。
また、本発明に用いられる上記光学フィルムを溶液流延するときのドープ(以下、セルロースアシレート溶液とも言う)に用いる貧溶媒は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。
セルロースアシレート溶液に用いる貧溶媒としては、溶解性の観点から平均炭素数4以下のアルコールを使用することが好ましく、剥離荷重の観点から平均炭素数2〜4のアルコールを使用することが好ましい。
セルロースアシレート溶液に用いる良溶媒と貧溶媒の混合比率の好ましい範囲は、セルロースアシレートの溶解性の観点からアルコールは30質量%以下にすることが好ましく、剥離荷重を軽くする観点から貧溶媒としてアルコールを15質量%以上含むことが好ましい。上記光学フィルムを溶液流延するときのドープの溶媒は、アルコールを15〜30質量%含むことがより好ましい。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースアシレートの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。
溶媒の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。
また、セルロースアシレートを貧溶媒と混合して湿潤あるいは膨潤させた後、更に良溶媒を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶媒の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶媒を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースアシレートの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。
好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶媒が沸騰しないように調整される。 もしくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースアシレートを溶解させることができる。
次に、このセルロースアシレート溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生し易いという問題がある。
このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースアシレートに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に光学フィルム等を置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。
より好ましくは100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/m2以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm2以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶媒の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。
好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
ここで、ドープの流延について説明する。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶媒の沸点未満の温度で、温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
好ましい支持体温度は0〜55℃であり、25〜50℃が更に好ましい。あるいは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
光学フィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%又は60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%又は70〜120質量%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
尚、Mはウェブ又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
光学フィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
光学フィルムを作製するためには、ウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向(横方向)に延伸を行うことが特に好ましい。剥離張力は300N/m以下で剥離することが好ましい。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は40〜200℃で段階的に高くしていくことが好ましい。
上記光学フィルムにレターデーションReおよびRthを付与するには、更に搬送張力の制御、延伸操作により屈折率異方性の制御を行うことが好ましい。
例えば、長手方向の張力を低く又は高くすることでレターデーション値を変動させることが可能となる。
本発明の光学フィルムは二軸延伸を施すことができる。
二軸延伸を行う際は、フィルムMD方向(搬送方向)に延伸した後にTD方向(搬送方向と直交する方向であり、幅方向ともいう)に延伸することが好ましい。延伸を行う際に、残留溶媒を含んでいてもよいし、残留溶媒を含まない状態で延伸しても良い。残留溶媒を含む場合は、溶媒量がフィルム固形分重量に対して0.1重量%〜50重量%の間で延伸することが好ましい。
フィルムMD方向への延伸率は0〜70%であることが好ましく、0〜60%であることがより好ましく、0〜50%であることが特に好ましい。上記延伸の際の延伸率は、延伸ゾーン入り口におけるフィルム搬送速度と出口におけるフィルム搬送速度差をつけることにより達成することができる。例えば、2つのニップロールを有する装置を用いた場合、延伸ゾーン入口側のニップロールの回転速度よりも、出口側のニップロールの回転速度を速くすることにより、MD方向にセルロースアシレートフィルムを好ましく延伸することが出来る。なお、ここでいう「延伸率(%)」とは、以下の式により求められるものを意味する。
延伸率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
フィルムTD方向への延伸における延伸率は、20%超であることが好ましく、20%超から60%以下であることがより好ましく、22〜55%であることが特に好ましく、23〜50%であることがより特に好ましい。
延伸開始時の膜面温度は100℃以上220℃以下であることが好ましく、120℃以上200℃以下であることがより好ましい。
なお、本発明においては、フィルムTD方向に延伸する方法として、テンター装置を用いて延伸することが好ましい。
上記MD方向への延伸率、延伸時の残留溶媒量、延伸温度、及びTD方向への延伸率、延伸時の残留溶媒量、延伸温度を調整することにより、所望のRe、Rthが得られる。
ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。
また、所謂テンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
製造工程のこれらの幅保持あるいは横方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
上記光学フィルムの遅相軸又は進相軸がフィルム面内に存在し、製造方向とのなす角をθ1とするとθ1は−1°以上+1°以下であることが好ましく、−0.5°以上+0.5°以下であることがより好ましく、−0.3°以上+0.3°以下であることがさらに好ましく、最も好ましくは−0.1°以上+0.1°以下である。
このθ1は配向角として定義でき、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)を用いて行うことができる。θ1が各々上記関係を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制又は防止することに寄与でき、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現を得ることに寄与できる。
[加熱水蒸気処理]
また、延伸処理されたフィルムは、その後、100℃以上に加熱された水蒸気を吹き付けられる工程を経て製造されてもよい。この水蒸気の吹付け工程を経ることにより、製造される光学フィルムの残留応力が緩和されて、寸度変化が小さくなるので好ましい。水蒸気の温度は100℃以上であれば特に制限はないが、フィルムの耐熱性などを考慮すると、水蒸気の温度は、200℃以下となる。
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。上記光学フィルムの製造に用いる巻き取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
以上のようにして得られた、上記光学フィルムの長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
一般的に、大画面表示装置において、斜め方向のコントラストの低下及び色味付きが顕著となるので、上記光学フィルムを用いて製造される本発明の偏光板は、特に大画面液晶表示装置に用いるのに適している。大画面用液晶表示装置用として用いる場合は、例えば、上記光学フィルム幅を1470mm以上として成形するのが好ましい。また、上記光学フィルムには、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様のフィルムのみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様のフィルムも含まれる。後者の態様の光学フィルムは、その状態で保管・搬送等され、実際に液晶表示装置に組み込む際や偏光子等と貼り合わされる際に、切断されて用いられる。また、同様に長尺状に作製されたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子等と、長尺状のまま貼り合わされた後に、実際に液晶表示装置に組み込む際に、切断されて用いられる。ロール状に巻き上げられたセルロースアシレートフィルムの一態様としては、ロール長が2500m以上のロール状に巻き上げられた態様が挙げられる。
(偏光板)
本発明の偏光板は、上記した本発明の光学フィルムと偏光子とを少なくとも有する。好ましくは、本発明の偏光板は、本発明の光学フィルムと、アウターフィルムとで偏光子が挟持されていることが好ましい。特に好ましくは、アウターフィルムは、40℃90%で24時間放置した後の透湿度が100g/m2以下であるフィルムである。
光学フィルムを薄膜化すると、結露ムラが生じることが懸念される。結露ムラは、水が通常フィルムに部分的に付着し、水が付着した部分と付着していない部分とが生じることによって生じるムラである。本発明では、アウターフィルムとして、40℃90%で24時間放置した後の透湿度が100g/m2以下であるフィルムを用いた場合には、結露ムラを抑制することができるので好ましい。40℃90%で24時間放置した後の透湿度は90g/m2以下がより好ましく、80g/m2以下がさらに好ましい。40℃90%で24時間放置した後の透湿度は、例えば、JIS Z−0208に基づいてフィルムの透
湿量を測定し、面積1m2あたり24時間で蒸発する水分量(g)として算出することができる。
透湿度100g/m2以下を充足する場合と充足しない場合の両方を含む上記アウターフィルムとしては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のアクリレート系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;等が挙げられる。偏光子の保護フィルムとしては、上記例示ポリマーから構成されるポリマーフィルムの中でも、セルロース系ポリマーフィルムおよびアクリレート系ポリマーフィルムが好ましく、セルロース系ポリマーフィルム、特にセルロースアシレートフィルムが好ましい。
上記アウターフィルムは、異なる組成のセルロースアシレートフィルムを二層以上含む積層フィルムであってもよい。この場合、積層フィルムに含まれる各セルロースアシレートフィルムのアシル置換度、フィルムに含まれる添加剤の種類および量は、当該フィルムに求められる物性に応じて適宜選択することができる。
上記アウターフィルムは、溶液流延法等の公知の方法で製造することができる。上記アウターフィルムには、必要に応じて選択される添加剤が含まれていてもよい。添加剤の詳細については、例えば特開2012−225994号公報段落0040〜0126を参照できる。
上記アウターフィルムが二層以上の積層構造のフィルムの場合、二層構造または三層構造であることが好ましい。三層以上の積層構造の場合はフィルム内部の層をコア層と言う。三層構成のフィルムは、上記アウターフィルムが溶液流延で製造する際に支持体と接する側の表層(以下、支持体層とも言う)と、支持体と接する側とは反対側の表層(以下、エア層とも言う)と、これらの表層よりも厚膜な一層のコア層を有することが好ましい。一方、二層構造のフィルムには、上記アウターフィルムが溶液流延で製造する際に支持体と接する側の表層(以下、支持体層ともいう)と、他の層(以下、コア層ともいう)が含まれる。
上記アウターフィルムがセルロースアシレートフィルムである場合、上記コア層の膜厚は78μm以下であることが好ましく、13〜68μmの範囲であることがより好ましく、18〜62μmの範囲であることがさらに好ましい。また、支持体層の膜厚は10μm以下であることが好ましく、例えば1〜10μmの範囲である。三層構造のフィルムのエア層の膜厚の好ましい範囲は、支持体層の好ましい範囲と同様である。
偏光子の液晶セルとは反対側に配置される上記アウターフィルムは、主に保護フィルムとしての役割を果たすものであり、その膜厚は特に限定されるものではない。
上記アウターフィルムのフィルム幅は、700〜3000mmの範囲であることが好ましく、1000〜2800mmの範囲であることがより好ましく、1300〜2500mmの範囲であることがより好ましい。
上記アウターフィルムとしては、市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD60、富士フイルム(株)製)、特開2006−58322号公報に記載の脂環式構造含有重合体樹脂フィルム、特開2009−122644号公報に記載のアクリル系樹脂、コスモシャインSRF(東洋紡社製)などを好ましく用いることができる。
<偏光子>
本発明では、偏光子として、一般的な直線偏光子を用いることができる。偏光子は延伸フィルムからなっていても、塗布により形成される層であってもよい。前者の例には、ポリビニルアルコールの延伸フィルムをヨウ素又は二色性染料等で染色したフィルムが挙げられる。後者の例には、二色性液晶性色素を含む組成物を塗布して、配向した状態に固定した層が挙げられる。
なお、本明細書では、「偏光子」という場合は、直線偏光子を意味するものとする。本発明の偏光板では、偏光子の膜厚が3〜30μmであることが好ましく、5〜25μmであることがより好ましい。
偏光子の厚みに特に制限は無いが、偏光板の波うちカールを抑制するために5〜15μmであることが好ましい。
<活性エネルギー硬化型接着剤>
本発明では、アウターフィルムと偏光子とが活性エネルギー硬化型接着剤で接着されていることが好ましい。なお、活性エネルギー線として、通常、光が用いられる。上記光は特に限定されるものではないが、例えば、マイクロ波、赤外線,可視光、紫外線、X線、γ線等が挙げられる。
偏光子と上記アウターフィルムの間には、活性エネルギー硬化型接着剤からなる活性エネルギー硬化型接着剤接着層が形成される。上記接着層の厚さは、0.01〜5μmであることが好ましく、0.2〜3μmであることがより好ましい。0.01μm以上にすると、良好な密着性が得られ、5μm以下とすることにより、パネルの反りを効果的に抑制できる。
活性エネルギー硬化型接着剤は活性エネルギー線を照射すると硬化し、且つ溶媒を含まない(溶媒フリー)接着剤である。
ここで「溶媒を含まない」とは、被接着物に塗布する際の接着剤に、溶媒を全く含まないか、もしくは溶媒含有量が接着剤全質量に対して2質量%未満であることをいう。接着剤中の溶媒含有量はガスクロマトグラフィー等によって測定できる。
活性エネルギー硬化型接着剤としては、特開2008−40278号公報の段落番号0015から0031に記載のものを使用することができる。活性エネルギー線硬化型溶媒フリー接着剤の主成分となる活性エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基などの官能基を有する化合物などの活性エネルギー線によりラジカル重合を起こして硬化するもの(光ラジカル重合性化合物);エポキシ基、オキセタン基、水酸基、ビニルエーテル基、エピスルフィド基、エチレンイミン基等の官能基を有する化合物などの活性エネルギー線により光カチオン反応を起こして硬化するもの(光カチオン重合性化合物);が挙げられる。
光ラジカル重合性化合物としては、特開2008−40278号公報の段落番号0018に記載のものを使用することができ、特開2008−40278号公報の段落番号0019に記載のものを使用することができる。これらの活性エネルギー線硬化性化合物は、それぞれ単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。
活性エネルギー線硬化型接着剤には、上記の活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化反応効率を上げる目的で、重合開始剤を配合することができ、重合開始剤としては、特開2008−40278号公報の段落番号0021〜0027に記載されているアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、ベンゾインアルキルエーテル系等の光ラジカル重合開始剤;芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等の光カチオン重合開始剤等を用いることができる。重合開始剤の配合量は、通常、活性エネルギー線硬化性化合物100質量部に対し、0.5〜10質量部である。
更に活性エネルギー線硬化型接着剤には、光増感剤、帯電防止剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、有機系粒子、無機酸化物粒子、顔料、染料等が配合されていてもよい。光増感剤を使用することで、反応性が向上し、接着剤硬化物の機械強度や接着強度を向上させることができる。光増感剤は特に限定されるものではないが、例えば、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ化合物、ジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素等が挙げられる。光増感剤の具体例としては、特開2008−40278号公報の段落番号0031に記載のものを使用することができる。光増感剤は、活性エネルギー線硬化性化合物を100質量部とした場合に、0.1〜20質量部の範囲内で含有するのが好ましい。
<偏光板の製造方法>
本発明の偏光板は、偏光子の一方の面に、上記アウターフィルムを貼合し、偏光子の他方の面に、本発明の光学フィルムを貼合することによって製造することができる。偏光子の一方の面へのアウターフィルムを貼合せは、好ましくは、上記の活性エネルギー硬化型接着剤を用いて行うことができる。偏光子の他方の面に、本発明の光学フィルムを貼合するための手段は特に限定されないが、上記の活性エネルギー硬化型接着剤を用いて貼合してもよい。
活性エネルギー線硬化型接着剤を介して、上記アウターフィルム及び/または本発明の光学フィルムを貼合する場合には、活性エネルギー線を照射することによって接着剤を硬化させ、上記アウターフィルム及び/または本発明の光学フィルムを偏光子に固定することができる。偏光子への接着剤の塗工方法に特別な限定はなく、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方法が利用できる。
また、上記アウターフィルム及び光学フィルムの偏光子への貼合に先立って、貼合面に、ケン化処理、コロナ処理、プライマ処理、アンカーコーティング処理などの易接着処理が施されていてもよい。
本発明においては活性エネルギー線として、通常、光が用いられる。上記光は特に限定されるものではないが、例えば、マイクロ波、赤外線,可視光、紫外線、X線、γ線等が挙げられる。特に取り扱いが簡便であり、比較的高エネルギーを得られることから紫外線が好適に用いられる。
紫外線を照射するために用いる光源は特に限定されず、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが挙げられる。照射強度は、特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜100mW/cm2であることが好ましい。光照射強度が0.1mW/cm2未満であると、反応時間が長くなりすぎ、100mW/cm2を超えると、ランプからの輻射熱、重合反応熱等により、接
着剤が黄変したり、偏光子自体が劣化する惧れがある。光照射時間は、硬化状況に応じて適宜選択されるものであって、特に限定されないが、照射強度と照射時間との積として表される積算光量が10〜5,000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。
本発明の偏光板の態様は、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面用液晶表示装置用とするためには、上記した通り、偏光板の幅は1470mm以上とすることが好ましい。
<偏光板の幅方向のばらつき(軸ズレ)>
本発明の偏光板の幅方向のばらつきは、以下の値の範囲内であることが好ましい。具体的には、偏光板を10m取り出し、長手方向から2m間隔おきに、偏光板の幅方向等間隔で5点ずつ小片を取り出し、下記式(A)で示される軸ズレ値を測定した場合における軸ズレ値の最大値が0.4°以下であることが好ましい。軸ズレは、0.3°以下であることがさらに好ましい。
式(A):
(軸ズレ値)=|(光学フィルム遅相軸と偏光子吸収軸のなす角)−90°|
(波うちカール)
波うちカールとは、プロテクトフィルム、保護フィルム、偏光子、光学フィルム、粘着剤、セパレートフィルムの順に積層された偏光板が、高湿の環境下に静置された際に、偏光板の端部が吸水する結果、偏光板端部が吸湿膨張により変形し、波状となる現象である。
偏光子の厚みが5〜15μmであり、二軸に延伸した光学フィルムを用いると、偏光板の波うちカールが抑えられることが分かった。メカニズムは明確になっていないが、偏光子の厚みが5〜15μmであると膨張力が抑えられ、二軸に延伸された光学フィルムを用いると、光学フィルムが偏光子の膨張を抑える作用をするものと思われる。
(液晶表示装置)
本発明は、本発明の光学フィルムまたは本発明の偏光板を有する液晶表示装置にも関する。
本発明の液晶表示装置は液晶セルと上記液晶セルの両側に配置された一対の偏光板を有する液晶表示装置であって、上記偏光板の少なくとも一方が本発明の偏光板であることを特徴とするIPS、OCBまたはVAモードの液晶表示装置であることが好ましい。ここで、本発明の光学フィルムは、液晶セル側、即ち、液晶セルと偏光子との間に配置されることが好ましい。
本発明の液晶表示装置の具体的な構成としては特に制限はなく公知の構成を採用できる。例えば、特開2008−262161号公報の図2に記載の構成を採用することができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(化合物1−aの合成)
化合物1−aは、J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 1997, 3189-3196に記載の合成方
法により合成した。具体的には以下の通りである。ジベンゾイルエタン(100kg)、酢酸アンモニウム(200kg)、及び酢酸(1m3)の混合物を20時間還流した。冷却後、反応混合物を冷水(10m3)に注ぎ、固体を濾別し、水で洗浄し、乾燥することにより化合物1−aを細い針状物として得た(90kg、98%)(融点142〜143℃)。
化合物1−bは、化合物1-aの合成方法に準じて合成した。
化合物1−dは、欧州特許 EP 0389904 A2に記載の合成方法により合成した。
化合物3−aは、文献 J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 10580-10585に記載の合成方法を参考にして合成した。具体的には、以下の通りである。2−フェニルイミダゾール(50kg)及びMgO(16.8kg、1.2当量)を1m3の無水ジオキサン中で懸濁し
、室温で10分間激しく攪拌して均一な懸濁物を得た。Pd(OAc)2(3.9kg、5モル%)及びPPh3(18.2kg、0.2当量)を上記混合物にアルゴン下で激しく攪拌しながら添加した。ヨードベンゼン(84.9kg、1.2当量)を0.5m3
無水ジオキサン中に溶解し、上記溶液に滴下し、反応混合物をアルゴン下で150℃に加熱した。溶媒を留去し、数回に分けてフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶出勾配:ヘキサン→20%酢酸エチル/80%ヘキサン)を実施することにより化合物3−a(62kg、収率82%)を単離した。
化合物6−aは、Bioorganic & Medicinal Chemistry, 2010, 18, 6184-6196に記載の
合成方法に準じて以下の通り合成した。N2の雰囲気下において、安息香酸ヒドラジド(40kg, 293mol, 1当量)とベンゾニトリル(396kg,3840mol, 13.1当量)の混合物を、還流温度で14時間攪拌した。混合物を室温に冷却し、得られた沈殿を濾過により回収し、2−プロパノールで洗浄した。2−プロパノールからの再結晶により化合物6−a(37.7kg, 58%)を白色固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): d 7.41-7.59 (m,6H), 8.07-8.10 (m, 2H), 8.12 (1s, 1H); 13C NMR (100 MHz, DMSOd6):d 125.9, 126.1, 128.7, 129.1, 130.2, 131.3; HRMS (EI) [M]+ Calcdfor C14H11N3: 221.0953. Found: 221.0948.
化合物6−bも、化合物6−aの合成方法に準じて合成した。
化合物7−a及び化合物8−aは、市販の1H-ピロール-2,5-ジカルボン酸から公知のエステル化反応、アミド化反応を用いて合成した。
化合物5-bは脱水テトラヒドロフラン520mlにアセトフェノン80g(0.67mol)、イソフタル酸ジメチル52g(0.27mol)を加え、窒素雰囲気下、氷水冷で撹拌しながら、ナトリウムアミド52.3g(1.34mol)を少しずつ滴下した。氷水冷下で3時間撹拌した後、水冷下で12時間撹拌した。反応液に濃硫酸を加えて中和した後、純水及び酢酸エチルを加えて分液し、有機層を純水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた粗結晶にメタノールを加えて懸濁洗浄することにより、中間体Aを55.2g得た。テトラヒドロフラン300ml、エタノール200mlに中間体A55g(0.15mol)を加え、室温で撹拌しながら、ヒドラジン1水和物18.6g(0.37mol)を少しずつ滴下した。滴下終了後、12時間加熱還流した。反応液に純水及び酢酸エチルを加えて分液し、有機層を純水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた粗結晶をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン)で精製することによって、化合物5-bを27g得た。得られた化合物5-bの1H−NMRスペクトルは以下のとおりである。なお、互変異性体の存在により、ケミカルシフトが複雑化するのを避けるために、測定溶媒にトリフルオロ酢酸を数滴加えて測定を行った。1H−NMR(400MHz、溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):8.34(1H、s)、7.87〜7.81(6H、m)、7.55〜7.51(1H、m)、7.48−7.44(4H、m)、7.36−7.33(2H、m)、7.29(1H、s)
(光学フィルム1の作製)
<置換度2.4のセルロースアセテートの製造例>
[特開2011−215630の比較例1を参照]
αセルロース含量98.4質量%の広葉樹前加水分解クラフトパルプをディスクリファイナーで綿状に解砕した。100質量部の解砕パルプ(含水率8質量%)に26.8質量部の酢酸を噴霧し、良くかき混ぜた後、前処理として60時間静置し活性化した(活性化工程)。活性化したパルプを、323質量部の酢酸、245質量部の無水酢酸、13.1質量部の硫酸からなる混合物に加え、40分を要して5℃から40℃の最高温度に調整し、110分間酢化した。中和剤(24質量%酢酸マグネシウム水溶液)を、硫酸量(熟成硫酸量)が2.5質量部に調整されるように3分間かけて添加した。さらに、反応浴を75℃に昇温した後、水を添加し、反応浴水分(熟成水分)を44mol%濃度とした。なお、熟成水分濃度は、反応浴水分の酢酸に対する割合をモル比で表わしたものに100を乗じてmol%で示した。その後、85℃で100分間熟成を行ない、酢酸マグネシウムで硫酸を中和することで熟成を停止し、セルロースジアセテートを含む反応混合物を得た。得られた反応混合物に希酢酸水溶液を加え、セルロースジアセテートを分離した後、水洗・乾燥・水酸化カルシウムによる安定化をして置換度2.4、6質量%粘度60mPa・sのセルロースジアセテートを得た。
<微粒子分散液>
・微粒子(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製) 11質量部
・エタノール89質量部
上記をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
<微粒子添加液>
・メチレンクロライド 99質量部
・置換度2.4のセルロースアセテート 4質量部
・微粒子分散液 11質量部
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに置換度2.4のセルロースアセテートを添加し、加熱して完全に溶解させた後、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。濾過後のセルロースアセテート溶液を充分に攪拌しながら、ここに微粒子分散液をゆっくりと添加し、アトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液を調製した。
<主ドープ液>
置換度2.4のセルロースアセテートを用い、下記組成の主ドープ液を調製した。
<主ドープ液の組成>
・メチレンクロライド: 390質量部
・エタノール: 80質量部
・置換度2.4のセルロースアセテート: 100質量部
・一般式(2)で表される単環化合物1−a: 2.5質量部
・糖エステル化合物A−5: 13質量部
まず、加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶媒の入った加圧溶解タンクにセルロースアセテートを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、更に一般式(2)で表される単環化合物1−aをセルロースアセテートに対して2.5質量%、可塑剤として糖エステル化合物A−5を13質量%添加、溶解させた。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
主ドープ液100質量部に微粒子添加液を2質量部加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分に混合し、次いでベルト流延装置
を用い、幅2mのステンレスバンド支持体に均一に流延した。
得られたウェブ(フィルム)で、残留溶媒量が110質量%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体から剥離した。剥離後に張力をかけて縦延伸率が2%となるように延伸した。
次いで、フィルムの残留溶媒量が1質量%未満となるまで乾燥させた後、更にテンターを用いてフィルム搬送方向に直交する方向へ165℃で、35%延伸した。
なお、残留溶媒量は下記の式にしたがって求めた。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを測定したウェブを120℃で2時間乾燥させた時の質量である。
以上により、幅1.5m、かつ端部に幅1cm、高さ8μmのナーリングを有する膜厚35μmの光学フィルム1(以下、単にフィルム1ともいう)を作製した。
(光学フィルム2〜20の作製)
フィルム1の作製において、セルロースアシレートの置換度、添加剤、延伸温度および膜厚を代えた以外はフィルム1の作製と同様にしてフィルム2〜20を作製した。なお、フィルム18で用いた化合物N1は、以下に示す化合物である。
Figure 2016014135
(光学フィルム21、22の作製)
置換度2.5(アセチル置換度;1.6、プロピオニル置換度;0.9)のセルロースアセテートプロピオネートは特開平10-45804広報に記載の方法を参照して合成した。セルロースアシレートの種類、添加剤、延伸温度および膜厚以外はフィルム1と同様に光学フィルム21、22を作製した。
(光学フィルム23、24、25の作製)
光学フィルム23、24、25はそれぞれフィルム3、21、22の製造方法を金属支持体速度と剥ぎ取り速度(剥ぎ取りロールドロー)との周速差をつけて縦延伸率を7%延伸し、さらにTD延伸率を表2のように変更した以外は同様にして光学フィルム23、24、25を作製した。
作製された光学フィルム1〜25はTD方向に平行する遅相軸を有する。
(評価)
得られた光学フィルム1〜25を用い、以下の評価を行った。
<レターデーション>
Re(450)、Re(630)およびRth(550)はAxoscan(Axometrics社製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長450nm、550nm、630nmで求めた。垂直方向から測定した値とフィルム面を傾けながら同様に測定したレターデーション値の外挿値より算出した。
Rth(30%)は、各フィルムを25℃、30%相対湿度環境下に2時間放置し、放置後、Axoscan(Axometrics社製)を用いて、25℃、30%相対湿度環境下で、波長550nmで求めた。垂直方向から測定した値とフィルム面を傾けながら同様に測定したレターデーション値の外挿値より算出した。
Rth(80%)は、各フィルムを25℃、80%相対湿度環境下に2時間放置し、放置後、Axoscan(Axometrics社製)を用いて、25℃、80%相対湿度環境下で、波長550nmで求めた。垂直方向から測定した値とフィルム面を傾けながら同様に測定したレターデーション値の外挿値より算出した。
Rth(30%)およびRth(80%)から、ΔRth(RH)/Rth(550)を求めた。
Rth(60℃90% 1d)は、ガラスに貼合した各フィルムを60℃、90%相対湿度環境下で24時間放置し、さらに25℃、60%相対湿度環境下で6時間放置した後に、Axoscan(Axometrics社製)を用いて、25℃、60%相対湿度環境下で、波長550nmで求めた。垂直方向から測定した値とフィルム面を傾けながら同様に測定したレターデーション値の外挿値より算出した。
Rth(初期)は、光学フィルムをガラスに貼合し、25℃、60%相対湿度環境下で6時間放置した後に、Axoscan(Axometrics社製)を用いて、25℃、60%相対湿度環境下で、波長550nmで求めた。垂直方向から測定した値とフィルム面を傾けながら同様に測定したレターデーション値の外挿値より算出した。
Rth(60℃90% 1d)およびRth(初期)から、ΔRth(60℃90% 1d)/Rth(550)を求めた。ここで、ΔRth(60℃90% 1d)=Rth(60℃90% 1d)−Rth(初期)である。
ガラス貼合は、光学フィルムをSK−2057(綜研化学社製)を介してイーグルXG(コーニング社製)に貼合した。
<MD方向、TD方向寸法変化率>
フィルムのMD方向(長尺状フィルムの流延方向(縦方向))を長手方向として切り出した長さ25cm(測定方向)、幅5cmのフィルム試料、並びにこれと直交する方向(TD方向)を長手方向として切り出したフィルム試料とを用意し、上記試料に20cmの間隔でピン孔を空け、25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長した(測定値をL0とする)。次いで、試料を60℃、相対湿度90%の湿熱環境下で24時間保持した後、25℃、相対湿度60%にて2時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長した(測定値をL1とする)。これらの測定値を用いて下記式により寸法変化率を算出した。
寸法変化率[%]=(L1−L0)/L0×100
Figure 2016014135
(偏光板の作製)
<フィルムO1の作製>
以下の説明において、共流延による製造において、主流から形成される層がコア層であり、支持体面側の層が支持体層、支持体層とは反対側の層がエア層である。
−コア層用ドープ1の調製−
下記組成のコア層用ドープ1を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ドープ1の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
・セルロースアセテート(アセチル置換度2.86;数平均分子量72000)
100質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 320質量部
・メタノール(第2溶媒) 83質量部
・1−ブタノール(第3溶媒) 3質量部
・添加剤T 10質量部
・添加剤UV1 1質量部
添加剤T: 混合比1:1
Figure 2016014135
添加剤UV1:
Figure 2016014135
具体的には、以下の方法によりコア層用ドープ1を調製した。
攪拌羽根を有する4000Lのステンレス性溶解タンクに、上記混合溶媒をよく攪拌・分散しつつ、セルロースアセテート粉体(フレーク)、添加剤T、UV1を徐々に添加し、全体が2000kgになるように調製した。なお、溶媒は、すべてその含水率が0.5質量%以下のものを使用した。まず、セルロースアセテートの粉末は、分散タンクに粉体を投入して、攪拌剪断速度を最初は5m/sec(剪断応力5×104kgf/m/sec2)の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸および、中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×104kgf/m/sec2)で攪拌する条件下で30分間分散した。分散の開始温度は25℃であり、最終到達温度は48℃となった。分散終了後、高速攪拌は停止し、アンカー翼の周速を0.5m/secとしてさらに100分間攪拌し、セルロースアセテートフレークを膨潤させた。
膨潤した溶液をタンクからジャケット付配管で50℃まで加熱し、更に90℃まで加熱して完全溶解した。加熱時間は15分であった。
次に36℃まで温度を下げ、公称孔径8μmの濾材を通過させドープを得た。
このようにして得られた濃縮前ドープを80℃で常圧のタンク内でフラッシュさせて、蒸発した溶媒を凝縮器で回収分離した。フラッシュ後のドープの固形分濃度は、21.8質量%となった。フラッシュタンクには中心軸にアンカー翼を有するものを用いて、周速0.5m/secで攪拌して脱泡を行った。タンク内のドープの温度は25℃であり、タンク内の平均滞留時間は50分であった。
その後、1.5MPaに加圧した状態で、最初に公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルターを通過させ、次いで同じく10μmの焼結繊維フィルターを通過させた。濾過後のドープ温度は、36℃に調整して2000Lのステンレス製のストックタンク内に貯蔵した。ストックタンクは中心軸にアンカー翼を有するものを用いて、周速0.3m/secで常時攪拌することで、コア層用ドープ1を得た。
−支持体層用ドープ2の調製−
マット剤(二酸化ケイ素(粒径20nm))と上記コア層用ドープ1を、静止型混合器を介して混合させて支持体層用ドープ2を調製した。添加量は、全固形分濃度が20.2質量%、マット剤濃度が0.033質量%となるように行った。
−エア層用ドープ3の調製−
マット剤(二酸化ケイ素(粒径20nm))を静止型混合器を介して上記コア層用ドープ1に混合させて、エア層用ドープ3を調製した。添加量は、全固形分濃度が20.2質量%、マット剤濃度が0.033質量%となるように行った。
−共流延による製造−
流延ダイとして、共流延用に調整したフィードブロックを装備して、主流のほかに両面にそれぞれ積層して3層構造のフィルムを成形できるようにした装置を用いた。なお、ドープの送液流路は、コア層用、支持体層用、エア層用の3流路を用いた。
上記コア層用ドープ1、支持体層用ドープ2、およびエア層用ドープ3を流延口から−5℃に冷却したドラム上に共流延した。このとき、完成厚みの比がエア層/コア層/支持体層=3μm/54μm/3μmとなるように各ドープの流量を調整した。流延したドープ膜をドラム上で34℃の乾燥風を230m3/分で当てることにより乾燥させてドラムより剥離した。剥離の際、搬送方向(長手方向)に17%の延伸を行った。その後、フィルムの幅方向(流延方向に対して直交する方向)の両端をピンテンター(特開平4−1009号公報の図3に記載のピンテンター)で把持しながら搬送を行なった。さらに、熱処理装置のロール間を搬送することによりさらに乾燥し、膜厚60μmのフィルムO1(アウターフィルムO1ともいう)を製造した。
フィルムO1の40℃90%で24時間放置した後の透湿度を以下の方法により測定したところ、580g/m2であった。
<<透湿度の測定>>
フィルムの透湿度はJISZ0208防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に規定される方法(40℃90%相対湿度)で測定した。
<40℃90%で24時間放置した後の透湿度が100g/m2以下であるフィルムO2の作製>
下記式(10)に示したラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂{共重合モノマー質量比=メタクリル酸メチル/2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル=8/2、ラクトン環化率約100%、ラクトン環構造の含有割合19.4%、質量平均分子量133000、メルトフローレート6.5g/10分(240℃、10kgf(98.1N))、ガラス転移温度(Tg)131℃}90質量部と、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂{トーヨーAS AS20、東洋スチレン社製}10質量部との混合物;Tg127℃]のペレットを二軸押し出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出しして、厚さ80μmのラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂シートを得た。この未延伸シートを、160℃の温度条件下、縦1.5倍、横1.8倍に延伸して(メタ)アクリル系樹脂フィルムO2(厚さ:40μm、面内位相差Re:0.8nm、厚み方向位相差Rth:1.5nm)を得た(アウターフィルムO2ともいう)。作製した(メタ)アクリル系樹脂フィルムO2のMD方向の湿度寸法変化率は0.35%であった。
Figure 2016014135
1は水素原子であり、R2及びR3はメチル基である。
フィルムO2の40℃90%で24時間放置した後の透湿度を、フィルムO1の場合と同様に測定したところ、75g/m2であった。
<フィルムO3>
コスモシャインSRF(東洋紡社製、膜厚80μm)をフィルムO3として使用した(アウターフィルムO3ともいう)。フィルムO3の40℃90%で24時間放置した後の透湿度をフィルムO1の場合と同様に測定したところ、20g/m2であった。
(偏光板波うちカール)
ロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥し偏光子を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、アルカリ鹸化処理(50℃、2mol%の水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥した)した実施例3の光学フィルムとアウターフィルムO1を用意し、これらの鹸化した面が偏光子側となるようにして偏光子を間に挟んで貼り合わせ、実施例1の光学フィルム、偏光子、アウターフィルムO1がこの順に貼り合わせてある偏光板をそれぞれ得た。この際、本発明の光学フィルム、保護フィルムのMD方向(フィルム搬送方向)が、偏光子の吸収軸と平行になるように貼り付け、さらに偏光板の位相差フィルムの面に厚さ15μmのアクリル系粘着剤層を設け、さらにその外側に厚さ38μmになるセパレートフィルムを貼合した。上記偏光板において、アウターフィルム側の面にはアクリル系粘着剤層とポリエチレンテレフタレートフィルムからなる厚さ60μmのプロテクトフィルムを貼合し、評価するための偏光板101を作製した。偏光子の厚み、及び光学フィルムを下表の通りに変更した以外は偏光板101と同様にして偏光板102〜110を作製した。
(波うちカールの評価方法)
上記で作製した偏光板を長辺方向が1150mm、短辺方向が645mmの長方形に打ち抜いた。この際、偏光板の吸収軸が短辺に平行になるようにした。打ち抜いた偏光板を、セパレートフィルムが下になるように、23℃55%RH環境下で24時間、平らな面に静置した後、偏光板4辺において平らな面から浮いた箇所を波とし、波ごとにある平らな面からの浮き量の最高値を波の高さとして、直尺シルバー(シンワ測定(株)製)を用いて計測した。偏光板各辺において各波の高さの測定は、セパレートフィルムが下となるように静置した状態、及びセパレートフィルムが上となるように静置した状態で実施した。
波の高さが1mm以上である箇所を1波として計測し、偏光板各辺の波の数、及び波の高さを測定した。測定結果を下記表に示す。各辺の波の数のうち、最大値を「波数」と呼び、全測定結果のうち最大の波の高さを「波高さ」と呼ぶ。波高さ3mm以下、かつ波数3個以下であれば実用上問題ない。
二軸延伸を施した光学フィルム(フィルム23、24、25)を用いた偏光板は、一軸延伸の光学フィルム(フィルム3、21、22)より波高さ、波数ともに良好であった。また、偏光子厚みが10μmの偏光板は25μmの偏光板より、波高さ、波数ともに良好であった。
Figure 2016014135
(液晶表示装置の評価)
<偏光子の作製>
波長380nmにおける屈折率が1.545、波長780nmにおける屈折率が1.521で、厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、2.5倍に一軸延伸し、ヨウ素0.2g/L及びヨウ化カリウム60g/Lを含む30℃の水溶液中に240秒間浸漬し、次いでホウ酸70g/L及びヨウ化カリウム30g/Lを含む水溶液に浸漬すると同時に6.0倍に一軸延伸して5分間保持した。最後に、室温で24時間乾燥し、平均厚さ25μmで、偏光度99.998%の偏光子Pを得た。
<wet貼合による偏光板1の作製>
上記で作製したフィルム1、アウターフィルムO1及び偏光子Pを用いて下記工程1〜5に従って偏光板1を作製した。
工程1:50℃、2mol%の水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化したフィルム1及びアウターフィルムO1を得た。
工程2:上記偏光子Pを固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒間浸漬した。
工程3:工程2で偏光子Pに付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理したフィルム1及びアウターフィルムO1を積層させて配置した。
工程4:工程3で積層したフィルム1の裏面側(アウターフィルムO1側)を圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:工程4で作製した偏光子とフィルム1及びアウターフィルムO1とを貼り合わせた試料を80℃の乾燥機中にて5分間乾燥し、偏光板1を作製した。
<wet貼合による偏光板2、12〜17、20、23〜28、30〜32の作製>
偏光板1の作製において、フィルム1およびアウターフィルムO1を下記表に示すように代えた以外は偏光板1の作製と同様にして偏光板を作製した。
<dry貼合による偏光板3の作製>
(活性エネルギー線硬化型接着剤の調製)
高純度水添エポキシ剤(三菱化学社製「jER YX8000」)35質量部、トリアリ
ールスルホニル塩化合物(サンアプロ社製 「CPI−100P」)4質量部、ベンゾインメチルエーテル(東京化成社製)1質量部を混合して、活性エネルギー線硬化型接着剤を得た。
偏光子Pを、活性エネルギー線硬化型接着剤を介して、フィルム1とアウターフィルムO2とで挟持し、貼り合わせ、積算光量3000mJ/cm2の紫外線を照射し偏光板3を得た。
<dry貼合による偏光板4〜11、18、19、21、22、29の作製>
偏光板3の作製において、フィルム1およびアウターフィルムO2を下記表に示すように代えた以外は偏光板3の作製と同様にして偏光板を作製した。
(評価)
得られた偏光板1〜32を用い、以下の評価を行った。
<偏光板の幅方向軸のばらつき(軸ズレ)>
得られた偏光板を長手10m取り出し、長手方向2mごとに幅方向等間隔に5点ずつ偏光板の小片を切り出し、Axoscan(Axometrics社製)を用いて、各光学フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸のなす角を計測した。また、下記式を用いて、軸ズレ値を算出し、結果を以下のように判断した。評価が0又は1であれば、実用上問題がない。
軸ズレ=|なす角−90°|
0: 0°≦(軸ズレの最大値)≦0.15°
1: 0.15°<(軸ズレの最大値)≦0.3°
2: 0.3°<(軸ズレの最大値)≦0.5°
3: 0.5°<(軸ズレの最大値)
(液晶表示装置の作製)
得られた各実施例および比較例の偏光板に対して、下記パネルへの貼り合わせを実施した。
評価はシャープ社LC−46LV3の液晶表示ディスプレイからフロント側およびリア側の偏光板を取り除いたもの(以下、パネルとも言う)に対し、実施例101の偏光板を液晶パネルのフロント側およびリア側に配置して、実施例101の液晶表示装置を製造した。ここで、本発明の光学フィルム(フィルム1)が、液晶セルに近い側となるように実施例101の偏光板を配置した。また、上記その他の実施例および各比較例の偏光板を液晶パネルのフロント側およびリア側に上記と同様に配置して、その他の実施例および各比較例の液晶表示装置を製造した。
<斜め方向から見た時の色味変化>
上記で作製した各液晶表示装置について、黒表示時の色味変化Δu’v’を下記式に基づいてそれぞれ測定した。ここで、u’max(v’max)は極角60°のときに方位角0〜360°の範囲で測定した値のうち最大のu’(v’)、u’min(v’min)は極角60°のときに方位角0〜360°の範囲で測定した値のうち最小のu’(v’)である。結果を下記表に示す。
Figure 2016014135
0:0.02以下
1:0.02を超え0.08以下
2:0.08を超える
<60℃90%相対湿度環境下で24時間放置した直後の視認性ムラ>
作製した液晶表示装置を60℃90%相対湿度環境下に24時間放置した後に取り出した。その後、暗室環境下で液晶表示装置を正面方向から観察し、以下の基準で評価した。A,Bであれば、実用上問題ないレベルである。
A:視認性不良が確認されない。(画面面積の5%以下)
B:視認性不良がわずかに確認される。(画面面積の5%を超え15%以下)
C:視認性不良が確認される。(画面面積の15%超)
<60℃90%相対湿度環境下で放置後に25℃60%相対湿度環境下で24時間連続点灯させた後の視認性ムラ>
上記と同様にして60℃90%相対湿度環境下に24時間放置した後の液晶表示装置をひきつづき25℃60%環境下で24時間連続点灯した。その後、暗室環境下で液晶表示装置を正面方向から観察し、以下の基準で評価した。A,B,Cであれば、実用上問題ないレベ
ルである。
A:視認性不良が確認されない。(画面面積の5%以下)
B:視認性不良がわずかに確認される。(画面面積の5%を超え10%以下)
C:視認性不良が少し確認される。(画面面積の10%を超え15%以下)
D:視認性不良が確認される。(画面面積の15%超)
<結露ムラ>
作製した液晶表示装置の視認側偏光板の表面に純水を500μL滴下し、サランラップ(登録商標)(旭化成ホームプロダクツ(株)製)を10cm×10cm切り出し、四辺をテープで固定した。液晶表示装置を24時間連続点灯させ、サランラップ(登録商標)を除去し表面の水滴をふき取った。その後、さらに液晶表示装置を24時間連続点灯させた後、黒表示時のムラを正面方向から評価した。0〜2の評価であれば実用上問題ない。3:強く視認される
2:弱く視認される
1:ほぼ視認されない
0:全く視認されない
Figure 2016014135
上記表から、本発明の光学フィルムを用いた偏光板、液晶表示装置は、60℃90%相対湿度環境下で24時間放置した直後の視認性ムラ、60℃90%相対湿度環境下で24時間放置後、25℃60%相対湿度環境下で連続点灯させた後の視認性ムラに優れることから、湿度依存性、及び湿熱下での光学安定性に優れることがわかる。また、斜め方向から見た時の色味変化であるΔu’v’が良好な結果であることから、光学特性の順波長分散性が強くなく、適度な値に保たれていることがわかる。
一方、式1および式2の少なくともいずれかを満たさない光学フィルムを用いた比較例では、薄膜化と、湿度依存性および湿熱下での光学安定性とを両立できないことが分かる。
また、式3の下限未満であるフィルム10を用いた実施例は、斜めから見た時の色味変化が他の実施例と比較して劣る傾向がみられる。

Claims (7)

  1. アシル基の置換度が2.0〜2.6のセルロースアシレートを含み、
    下記式1および式2を満たす、膜厚が40μm以下の光学フィルム;
    式1: ΔRth(RH)/Rth(550)≦0.12
    式2: ΔRth(60℃90% 1d)/Rth(550)≦0.05
    式中、ΔRth(RH)=Rth(30%)−Rth(80%)であり、
    Rth(30%)は、25℃、30%相対湿度環境下に2時間放置し、25℃、30%相対湿度環境下で測定したときの波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRthを表し、
    Rth(80%)は、25℃、80%相対湿度環境下に2時間放置し、25℃、80%相対湿度環境下で測定したときの波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRthを表し;
    ΔRth(60℃90% 1d)=Rth(60℃90% 1d)−Rth(初期)であり、
    Rth(初期)は、光学フィルムをガラスに貼合し、25℃、60%相対湿度環境下で6時間放置した後に測定した波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRthを表し、
    Rth(60℃90% 1d)は、ガラスに貼合した光学フィルムを60℃、90%相対湿度環境下で24時間放置し、さらに25℃、60%相対湿度環境下で6時間放置した後に測定した波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRthを表し、
    Rth(550)は、光学フィルムの波長550nmにおける厚み方向のレターデーションを表す。
  2. 60℃90%環境下で24時間放置した前後の遅相軸に平行な方向又は遅相軸に直交する方向の寸法変化率が、−0.5〜+0.5%である、請求項1に記載の光学フィルム。
  3. さらに下記式3を満たす、請求項1または2に記載の光学フィルム;
    式3: −2nm≦ΔRe(λ)≦2nm
    ただし、ΔRe(λ)=Re(630)−Re(450)、Re(630)は、波長630nmにおける面内レターデーションを表し、Re(450)は波長450nmにおける面内レターデーションを表す。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルムと偏光子とを少なくとも有する、偏光板。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルムと、40℃90%で24時間放置した後の透湿度が100g/m2以下であるフィルムとで偏光子が挟持されている偏光板。
  6. 前記40℃90%で24時間放置した後の透湿度が100g/m2以下であるフィルムと前記偏光子とが、活性エネルギー硬化型接着剤で接着されている、請求項5に記載の偏光板。
  7. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム、または請求項4から6の何れか1項に記載の偏光板を有する、液晶表示装置。
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