JP2016010926A - プリフォームの製造方法及び繊維強化プラスチックの製造方法 - Google Patents

プリフォームの製造方法及び繊維強化プラスチックの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
強化繊維基材を賦形する繊維強化樹脂成形用プリフォームの製造方法であって、コーナー部のブリッジをなくすと共に強化繊維基材のプリフォーム時の寸法バラツキの低減を図り、強化繊維基材の余分な廃棄を低減すること、また、複雑な形状を一括したプレス賦形で行うことにより、低コスト、高精度、汎用性を高めることを目的とする。
【解決手段】
成形金型を用いて強化繊維基材を賦形するプリフォームの製造方法であって、前記強化繊維基材の所定の位置に予め位置決め部材を配置し、前記成形金型に設けられたポジションガイドに前記位置決め部材を位置合わせする予備賦形工程と、予備賦形された前記強化繊維基材を、前記成形金型によりプレスする賦形工程と、を少なくとも有することを特徴とするプリフォームの製造方法。
【選択図】図4

Description

本発明は、繊維強化プラスチック(以下FRP(Fiber Reinforce Plastic)と称することがある)を成形するための強化繊維基材のプリフォームの製造方法、特にRTM(Resin Transfer Molding)成形方法に関し、均一な樹脂含浸成形を可能にする強化繊維基材のプリフォームの製造方法及び繊維強化プラスチックの製造方法に関する。
FRP、特に炭素繊維強化プラスチック(以下CFRPと称することがある)は軽量、かつ高い機械的性質を有する複合材料として様々な分野で利用されている。FRP成形方法の一つとして、長繊維や短繊維からなる繊維強化基材を成形品形状に賦形したプリフォームを、上型下型からなる金型内部に配置し、金型を型締めした後、樹脂注入孔から樹脂を減圧下に注入してプリフォームに含浸させ、加熱硬化の後、金型を開いて脱型するRTM成形方法が知られている。
この方法は、プリプレグ成形のように、予め強化繊維基材に樹脂を含浸させた中間材料を用いることなく、プリフォームを直接型に入れ、型内で樹脂含浸させることから、オートクレーブ法やハンドレイアップ法に比べて生産性が良く、両面の仕上がりの良い、品質の優れた成形品が得られるという特徴がある。
特許文献1では、より成形コストを抑える手段として、従来、型内で賦形させてあった強化繊維基材を、あらかじめ上下の賦形型で挟み込むことで、成形型に設置する前に事前に強化繊維基材にある程度の形状賦形する外段取り法も提案されている。
ここで、成形すべきFRPが角部に近い形の変曲部を有する場合、強化繊維基材が変曲部を有する金型内に配置され、対応する変曲部を有する形状に賦形される。このとき、コーナー形状のような変曲部において、強化繊維基材がブリッジ状に突っ張り、金型に沿わず、金型と基材の間に隙間が形成され、その部位における強化繊維基材の厚みが薄くなり、変曲部と平坦部での強化繊維基材の厚みに差が生じる場合がある。
この状態でマトリクス樹脂を注入含浸し硬化させFRPを成形すると、変曲部と平坦部位間で厚みが相違することになり、目標とする寸法が得られないおそれがある。また、厚みの薄い部位や、隙間が形成された部位では、樹脂リッチ部分が生じたり、ボイドが発生したりするおそれもある。
特許文献2では、強化繊維基材を用いて形成される、コーナー部を有するFRP成形用のプリフォームを製造するに際し、少なくともコーナー部およびその両側部分にわたって、強化繊維基材に副資材を一体化した状態にして、プリフォームを賦形する製造方法が記載されている。この製造方法では、コーナー部を有するFRP成形時における強化繊維基材や副資材のブリッジを防止し、コーナー部における厚みを所定の厚みに維持するとともに、コーナー部に樹脂リッチ部分やボイドを発生させない効果が開示されている。
しかし、特許文献2の構成では、強化繊維基材に副資材を一体化した状態を必須構成としており、副資材を使用することによるコスト要因となるとともに、ただ一体化した状態にするだけでは、変曲部において強化繊維基材が金型との間で隙間が形成され、ブリッジ状に突っ張り、その部位における強化繊維基材の厚みが薄くなり、変曲部と平坦部での強化繊維基材の厚みに差が生じる現象の回避には不十分である。
また、特許文献3では、金型内面に副資材を保持させ、金型内で発泡樹脂原液を発泡させることによって副資材が一体となった発泡樹脂成形品を製造する方法が教示され、副資材に磁性を付与し、金型に磁性体を設置し、磁性体の磁力によって副資材を金型内面に保持させておく方法が開示され、磁気的に吸着されることにより、副資材全体の特性に影響を与えることなく、シート状の副資材が上型の内面に全体として密着状に保持される効果が開示されている。また、密着状に保持されることで、ブリッジを防止し、コーナー部における厚みを所定の厚みに維持できることが推測される。
しかし、特許文献3の構成では、副資材に磁性繊維を縫い付ける必要があること、また、金型に予め磁性体を設置する必要があり、磁性繊維の縫い付けや磁性体を設置に手間が掛かる課題がある。
また、特許文献4では、インサート部品を有する繊維強化樹脂部材の製造方法が教示され、プリフォームの外表面に設けた突出部を、成形型に設けた凹部に嵌入し、前記インサート部品を成形型によって位置決めする方法が記載され、更に突出部をスチールにし、成形型の凹部の底部に磁石を配置する方法が記載され、突出部を磁力等で固定でき正確な位置決めができる効果が開示されている。
特開2003−305719号公報 特開2008−230020号公報 特開2008−142925号公報 特開2011−143609号公報
従来の方法では、強化繊維基材を、成形型に設置する前に事前に成形品形状に賦形したプリフォームとする場合には、一定の成形圧力により強化繊維基材を所望の凹凸形状等の形に変形する必要があるが、その場合に、複雑な形状であると、上型で強化繊維基材を押さえて変形させていく際に、強化繊維基材の許容変形量を超え、強化繊維基材にシワが生じやすい場合がある。また、プリフォームを作成する際、金型と強化繊維基材の配置ばらつき、及び強化繊維基材の変形ばらつき等から、出来上がったプリフォームの寸法がばらつくことがある。この問題は、強化繊維基材に予め余分な面積を持たせることで、寸法のバラツキを吸収させる方法で回避することができるが、その分、強化繊維基材の端部の廃棄分が増える場合がある。
そこで、本発明の目的は、コーナー形状のような変曲部において、強化繊維基材が金型との間で隙間が形成されるブリッジを防止し、コーナー部における厚みを所定の厚みに維持するとともに、コーナー部に樹脂リッチ部分やボイドを発生させないこと、また、プリフォームの形状の寸法バラツキによる強化繊維基材の余分な廃棄の低減のため、プリフォームの形状の寸法バラツキの低減を図ること、また、複雑な形状を一括したプレス賦形で行うことにより、低コスト、高精度、汎用性を高められるプリフォームの製造方法及び繊維強化プラスチック成形品の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用する。
(1)成形金型を用いて強化繊維基材を賦形するプリフォームの製造方法であって、
前記強化繊維基材の所定の位置に予め位置決め部材を配置し、前記成形金型に設けられたポジションガイドに前記位置決め部材を位置合わせする予備賦形工程と、
予備賦形された前記強化繊維基材を、前記成形金型によりプレスする賦形工程と、を少なくとも有することを特徴とするプリフォームの製造方法。
(2)隣接する位置決め部材間の強化繊維基材の長さが、前記隣接する位置決め部材に対応するポジションガイド間距離に対し、同等以上、1.5倍以下の長さである(1)に記載のプリフォームの製造方法。
(3)(1)または(2)に記載の
(a)前記予備賦形工程を繰り返し行う、
(b)前記予備賦形工程および前記賦形工程を繰り返し行う、
(c)前記(a)、(b)を繰り返し行う、
の少なくとも1つを行うプリフォームの製造方法。
(4)前記位置決め部材が、前記強化繊維基材の所定の位置に、磁気力で前記強化繊維基材を挟み込む一対の磁性体であり、前記ポジションガイドが、前記磁性体の入れ子が挿入できる成形金型内の所定の位置に設けられた一定の大きさの型孔である(1)〜(3)のいずれかに記載のプリフォームの製造方法。
(5)前記位置決め部材を所定の位置に設ける工程が、
テンプレートの所定の位置に穴を開ける工程、
前記テンプレートの穴に磁性体の入れ子を挿入する工程、
前記磁性体の入れ子が挿入された前記テンプレート上に強化繊維基材を重ねる工程、及び、
前記強化繊維基材上に磁石を載せ、前記テンプレートの磁性体の入れ子を磁気力により、前記磁石と前記前記磁性体の入れ子とを合致させる工程、により行われる(4)に記載のプリフォームの製造方法。
(6)前記位置決め部材が、前記強化繊維基材の所定の位置に配置させるピンがついたブロックであり、
前記ポジションガイドが、前記ブロックの入れ子が挿入できる成形金型内の所定の位置に設けられた一定の大きさの型孔である(1)〜(3)のいずれかに記載のプリフォームの製造方法。
(7)前記位置決め部材を所定の位置に設ける工程が、
テンプレートの所定の位置に穴を開ける工程、
前記テンプレートの穴にピンの付いたブロックの入れ子を挿入する工程、及び、
前記ブロックの入れ子が挿入された前記テンプレート上に強化繊維基材を重ね、基材にピンを貫通する工程、により行われる(6)に記載のプリフォームの製造方法。
(8)前記位置決め部材が、前記強化繊維基材の所定の位置に付するマーカーであり、
前記ポジションガイドが、強化繊維基材を貫通でき、成形金型内の所定の位置に設けられたポジションピンである(1)〜(3)のいずれかに記載のプリフォームの製造方法。
(9)前記ポジションガイド又は前記位置決め部材は、成形品が有する形状の凹凸部位を挟んだ状態で配置する(1)〜(8)のいずれかに記載のプリフォームの製造方法。
(10)位置情報を認識するアームを前記位置決め部材が配置された前記強化繊維基材に接近させ、前記位置決め部材の配置位置を認識し、前記強化繊維基材を前記アームで捕捉した後、前記成形金型近傍に移動させ、前記成形金型のポジションガイドの位置情報を認識し、前記強化繊維基材の位置決め部材を前記成形金型のポジションガイドに位置合わせすることにより前記強化繊維基材を所定の形態に予備賦形する、(1)に記載の繊維強化基材を賦形したプリフォームの製造方法。
(11)(1)〜(10)いずれか記載のプリフォームの製造方法によって賦形されたプリフォームに、マトリクス樹脂を含浸し、固化又は硬化することを特徴とする繊維強化プラスチック成形品の製造方法。
本発明の強化繊維基材を賦形したプリフォームの製造方法によれば、強化繊維基材の所定の位置と、金型内の所定の位置とを位置合わせして合致させ、強化繊維基材を所定の形態に予備賦形した後に、金型によりプレス一括賦形することにより、コーナー部でのブリッジを防ぐと共に、プリフォームの形状の寸法バラツキを抑制でき、寸法のバラツキを吸収させるために強化繊維基材に余分な面積を持たせる必要がなく、余分な廃棄の低減につなげることができる。また、複雑な形状を一括プレス賦形することにより、低コスト、高精度又は汎用性を高めることができる。
繊維強化プラスチックの製造のためのRTM成形装置の概略図である。 成形型により型閉じされた状態図である。 成形型が型開きされ、繊維強化プラスチックが取出された状態図である。 本発明での実施形態に係る強化繊維基材の位置決め部材の一実施形態を示す概略斜視図である。 磁性体の入れ子と磁石によって強化繊維基材の表裏面が挟まれた形態斜視図である。 本発明での実施形態に係る強化繊維基材の予備賦形の状態断面図である。 本発明での実施形態に係る位置決め部材間の強化繊維基材の状態の概略図である。 本発明の実施形態に係る金型に位置決めされ予備賦形した強化繊維基材をプレス一括賦形させた状態断面図である。 本発明の実施形態に係る成形金型内に設けられたポジションピンと強化繊維基材に付されたマーカーとを合致させる概略斜視図である。 本発明の実施形態に係るロボット教示による搬送の状態を示す構成図である。 本発明の実施形態に係るロボット教示によるチャックで強化繊維基材をつかんだ状態の概略図である。 本発明の実施形態に係るロボット教示による強化繊維基材の予備賦形を示す概略図である。 本発明の実施形態に係るロボット教示による強化繊維基材と金型との位置あわせを示す概略図である。 本発明の実施形態に係るロボット教示による強化繊維基材を金型へ受け渡す状態を示す概略図である。
本発明は、成形金型を用いて強化繊維基材を賦形する繊維強化樹脂成形用プリフォームの製造方法であって、前記強化繊維基材の所定の位置に予め位置決め部材を配置し、前記成形金型に設けられたポジションガイドに前記位置決め部材を位置合わせする予備賦形工程と、予備賦形された前記強化繊維基材を、前記成形金型によりプレスする賦形工程と、を少なくとも有するプリフォームの製造方法である。
繊維強化プラスチックの製造のためのRTM成形装置の概略図を図1に示す。図1において、RTM成形装置は、上型2および下型3からなる成形型1と、開閉弁4を経由させて樹脂注入口5から成形型1内にマトリックス樹脂を注入する樹脂注入装置6と、吸引口7から成形型1内の空気を吸引する吸引装置8とを備える。成形型1は型閉め時に成形キャビティを形成するよう上型2および下型3が具備されている。上下の成形型1には、型閉じ時に成形キャビティを加熱することで成形品を硬化させるよう機能する温調配管が配置されている。成形キャビティは、上型2側を窪ませるとともに下型3を突出させる状態で、上下型2、3間に設けられ、下型3のキャビティ面に強化繊維基材10を保持させる。この強化繊維基材10の保持の方法については後述する。下型3の成形キャビティ面を構成する周囲には、強化繊維基材10が保持された成形キャビティとなる領域を取り囲む周上に所定深さのシール収容溝12を備える。シール収容溝12には、シール収容溝12の深さより大きい直径の密封シール11の下側部分が挿入され、密封シール11の上側部分はシール収容溝12から上方に突出された状態となっている。密封シール11は、例えば、一般的な丸棒状のゴムシールであり、RTM成形用として耐熱性があればよい。型閉じ時に、密封シール11と上型2のシール面とが接触して、成形キャビティを外気から遮断するよう構成される。
また、上型2には、シール面の内側において成形キャビティ面の外周部分に間隔をあけて開口させて複数の吸引口7が配置される。また、成形キャビティ面の中央領域に開口させて樹脂注入口5が配置される。樹脂注入口5は、成形キャビティ面の中央領域に1個だけ設けてもよいが、複数個が等分布状態となるよう複数個の注入口5が成形キャビティ面の周辺領域を避けて開口されるようにすることが望ましい。
以上の構成のRTM成形装置によるRTM成形工程について説明する。図1は、強化繊維基材10が成形型1内の下型3へ保持された状態を示している。この工程では、樹脂注入装置6との間の開閉弁4は閉じられ、空気吸引装置8の吸引作動は停止されている。投入する強化繊維基材10は、所定の製品板厚に応じた厚さとされており、下型3のキャビティ面に載置される。続いて、型閉じが開始され、下型3の密封シール11が上型2のシール面に接する状態となった段階で型閉じ動作が停止される。図2には、上下型により型閉じされた状態図が示されている。この状態では、下型3キャビティ面に載置された強化繊維基材10の表面と上型2キャビティ面との間に、密封シール11と上型2シール面とが接触することで、成形キャビティの空間と外気とが遮断される。次いで、開閉弁4が開かれ、樹脂注入装置6より樹脂注入口5を通じて成形キャビティ内に所定量の熱硬化性樹脂を注入する。成形キャビティ内に注入された熱硬化性樹脂は強化繊維基材10に浸透される。強化繊維基材10に沿って成形キャビティ内を拡がり、熱硬化性樹脂の射出が終了した時点で開閉弁4が閉じられる。次いで、空気吸引装置8が作動され、成形型1内の成形キャビティ内の空気が吸引口7を経由して吸引される。樹脂吸引ラインから、余剰樹脂が型外に排出される。熱硬化性樹脂は強化繊維層10の隙間内に押込まれ、含浸されてゆき、樹脂が強化繊維層10全体に含浸している状態となる。
次いで、成形型1は加熱媒体が流通されることにより、成形キャビティが加熱され、成形キャビティ内の熱硬化性樹脂が硬化され、強化繊維層10と熱硬化性樹脂との複合による繊維強化プラスチック11が生成される。樹脂の硬化が終わった段階で、図3に示すように、成形型1は型開きされ、繊維強化プラスチック11が取り出される。
本発明に係るRTM成形法で使用する樹脂としては、粘度が低く強化繊維への含浸が容易な熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を形成するRIM用(Resin Injection Molding)モノマーなどが好適である。熱硬化性樹脂としては、たとえば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、グアナミン樹脂、また、ビスマレイド・トリアジン樹脂等のポリイミド樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリジアリルフタレート樹脂、さらにメラミン樹脂やユリア樹脂やアミノ樹脂等が挙げられる。
また、ナイロン6樹脂、ナイロン66樹脂又はナイロン11樹脂などのポリアミド樹脂、若しくはこれらポリアミ樹脂ドの共重合ポリアミド樹脂、また、ポリエチレンテレフタラート樹脂又はポリブチレンテレフタラート樹脂などのポリエステル樹脂、若しくはこれらポリエステルの共重合ポリエステル樹脂、さらにポリカーボネート樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステルエラストマー又はポリアミドエラストマーなどに代表される熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
また、上記の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ゴムから選ばれた複数をブレンドした樹脂を用いることもできる。中でも好ましい樹脂として、自動車用外板部材の意匠性に影響を与える成形時の熱収縮を抑える観点から、エポキシ樹脂が挙げられる。一般的に複合材料用エポキシ樹脂としては、主剤として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂が用いられる。一方、硬化剤としては、ジシアンジアミドにジクロロフェニルジメチル尿素を組み合わせた硬化剤系が作業性、物性等のバランスに優れている点で好適に使用されている。
しかし、特に限定されるものではなく、ジアミノジフェニルスルホン、芳香族ジアミン、酸無水物ポリアミドなども使用できる。また、樹脂と前述の強化繊維の比率は、重量比率で20:80〜70:30の範囲内が外板として適当な剛性を保持する点で好ましい。その中でも、FRP構造体の熱収縮を低減させ、クラックの発生を抑えるという点から、エポキシ樹脂または熱可塑性樹脂やゴム成分などを配合した変性エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂がより適している。
FRPの補強繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維等の無機繊維、あるいはアラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維からなる補強繊維が挙げられる。特に、炭素繊維が好ましい。強化繊維基材の形態は特に限定されず、一方向シートや織物、マット等を採用でき、通常、これらを単数ないしは複数枚積層して基材を形成し、必要に応じて事前に賦形したプリフォームの形態で用いる。
本願発明で使用される炭素繊維としては、例えばPAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、セルロース系炭素繊維などの高強度、高弾性率な炭素繊維が使用できる。なかでも得られる強度と弾性率のバランスの観点からPAN系炭素繊維がさらに好ましい。このような炭素繊維としては、成形体の力学特性の観点から、引張弾性率が、好ましくは200〜800GPa、さらに好ましくは220〜800GPaの範囲内であるものが使用できる
PAN系炭素繊維は、ポリアクリロニトリル繊維を原料とする炭素繊維である。ピッチ系炭素繊維は石油タールや石油ピッチを原料とする炭素繊維束である。セルロース系炭素繊維束はビスコースレーヨンや酢酸セルロースなどを原料とする炭素繊維束である。
成形型の材質としてはFRP、鋳鋼、構造用炭素鋼、アルミニウム合金、亜鉛合金、ニッケル電鋳、銅電鋳があげられる。量産には、剛性、耐熱性、作業性の面から構造用炭素鋼が好適である。また、FRP成形体の意匠性、離型性を向上させるため#1000以上の磨き面または、ハードクロムめっきであることが好ましい。
次に、強化繊維基材10を予備賦形する方法について説明する。
本発明において、強化繊維基材の所定の位置に予め位置決め部材を配置し、前記成形金型に設けられたポジションガイドに前記位置決め部材を位置合わせする予備賦形工程と、予備賦形された前記強化繊維基材を、前記成形金型によりプレスする賦形工程と、を有することを特徴とするものである。
ポジションガイドとは強化繊維基材の所定の位置に対して、位置合わせするための成形金型内に設けられた位置合わせのための手段である。
位置決め部材は、強化繊維基材の所定の位置に磁気力により強化繊維基材を挟み込むように配置させた磁性体と磁石であり、ポジションガイドは磁性体の入れ子が挿入できる成形金型内の所定の位置に設けられた一定の大きさの型孔とすることが好ましい。
磁性体と磁石を使用することにより、再利用することができる簡易な方法で正確な位置決めすることができる。また、磁性体の入れ子が挿入できる大きさの型孔とすることにより簡易な方法で正確な位置決めすることができる。
図4には、強化繊維基材10の所定の位置に付与された位置決め部材の一実施態様の概略斜視図が示されている。21はテンプレート、22は位置決めのためのテンプレート21に設けられた穴、23は磁性体の入れ子、24は磁石、10は強化繊維基材を示す。
予定される繊維強化基材10に設ける磁性体23と磁石24を設置する位置を定めるため、繊維強化基材10とは別に繊維強化基材と略同面積のテンプレート21を用いる。まず、このテンプレート21に予定される位置に磁性体からなる入れ子23が挿入できる穴22を設ける。次に、磁性体の入れ子23をテンプレート21に設けられた穴22に挿入する。次に、そのテンプレート21の上に繊維強化基材10を重ね、その繊維強化基材10上に磁石24を載せ、磁気力で磁性体の入れ子23と引き付けられ、挟み込むように配置される。そして、テンプレート21を外すことにより、正確に簡便な方法で磁性体23と磁石24に挟まれ位置決め部材が設けられた繊維強化基材10を得ることができる。
テンプレート21としては一定形状の穴をあけられ、型崩れしない一定の強度を保持できれば材料は特に限定しない。例えば、アクリル等の樹脂材料板、アルミ等の金属材料板が適当に使用できる。
一点鎖線の矢印26は磁性体の入れ子23と磁石24とが引き付けられるペアの関係を示す。その後、テンプレート21だけが取り外され、テンプレート21に挿入していた磁性体の入れ子23と磁石24によって強化繊維基材10の表裏面が挟む形態とすることにより強化繊維基材10に対して位置決め部材が付与される。図5には、テンプレート21が取り外され、磁性体の入れ子23と磁石24によって強化繊維基材10の表裏面が挟まれた形態斜視図が示されている。
また、図6に、本発明での実施形態に係る強化繊維基材10の予備賦形の状態断面図を示す。図6の上部は、テンプレートだけが取り外され、テンプレートに挿入していた磁性体の入れ子23と磁石24によって表裏面が挟まれた強化繊維基材10が示されている。下部にはポジションガイドが付与された成形金型3と、強化繊維基材の位置決め部材と成形金型のポジションガイドとが合致された状態が示されている。ポジションガイド27は、下型3に形成された型孔である。矢印28で示すように、強化繊維基材10に取り付けたそれぞれの磁性体の入れ子23と磁石24を、成形金型3に設けられた型孔27に移動させる。磁性体の入れ子23が型孔27に挿入され、合致することで磁性体の入れ子23と磁石24によって表裏面が挟まれた強化繊維基材10が成形金型内に載置される。それにより、強化繊維基材10が下型3に沿うように湾曲するように変形(予備賦形)されて保持される。
また、隣接する位置決め部材間の強化繊維基材の長さが、隣接する位置決め部材に対応するポジションガイド間距離に対し、同等以上、1.5倍以下の長さとすることが好ましい。ここで、「隣接する位置決め部材に対応するポジションガイド間距離」とは、金型(図6では下型3)表面に沿った最短距離をいう。図7に、図6の領域29を拡大した本発明での実施形態に係る位置決め部材間の強化繊維基材の状態の概略図を示す。図7において、強化繊維基材10は磁性体の入れ子23と磁石24により位置決めされている。磁性体の入れ子23によって位置決めされている強化繊維基材10の位置決めされている箇所の10aと10b間の強化繊維基材の長さは、ポジションガイドである型孔27間の27aと27b間のポジションガイド間距離に対し、同等以上、1.5倍以下の長さとなっている。このような長さにすることにより、後述する一括賦形する際、強化繊維基材10にたるみがあるため、金型表面の凹凸に容易に沿うことができる。特に、事前に予備賦形しておくと、一括賦形する際、基材の変形量も少なくてすむため、強化繊維基材10表面でのシワの発生や、含浸マトリクス樹脂が偏在することを抑制することができる。10aと10b間の強化繊維基材の長さが、ポジションガイドである型孔27間の27aと27b間のポジションガイド間距離と同等よりも短いと、繊維強化基材に無用の力が加わりプリフォームの形状の寸法バラツキが出る場合がある。また、10aと10b間の強化繊維基材の長さが、ポジションガイドである型孔27間の27aと27b間のポジションガイド間距離の1.5倍よりも長い場合、強化繊維基材10にシワが発生しやすくなる場合がある。好ましくは1倍以上1.4倍以下、より好ましくは1.1倍以上、1.3倍以下である。
また、本発明において、ポジションガイド又は位置決め部材は、成形品が有する形状の凹凸部位を挟んだ状態で配置することが好ましい。
図7において、金型3には2箇所の凹凸が形成されており、型孔27間の27aと27b間に製品形状の凹凸を挟んだ状態で配置するのが好ましい。成形品形状の凹凸部位におけるコーナー形状のような変曲部を挟んだ状態で配置することにより、強化繊維基材が金型との間で隙間が形成されるブリッジを防止し、コーナー部における厚みを所定の厚みに維持するとともに、コーナー部に樹脂リッチ部分やボイドの発生を抑制することができる。
図8に、本発明の実施形態に係る金型内に位置決めされ予備賦形した強化繊維基材10をプレス一括賦形させた状態断面図を示す。上金型2には磁石24が挿入できる型孔を有し、プレス一括賦形できる構成としている。上下金型2と3によりプレス成形され、強化繊維基材10は一定形状を有することになる。上下金型2と3との間に形成されたキャビティにマトリクス樹脂を注入して強化繊維基材10に含浸させて繊維強化プラスチック成形品を成形することができる。
このように、本発明では、プレス一括賦形の前に、強化繊維基材に設けられた位置決め部材と成形金型のポジションガイドとを位置合わせして合致させ、強化繊維基材を所定の形態に予備賦形する。
予備賦形により、複数の位置決め部材間の強化繊維基材の長さと、位置決め部材に対応する複数のポジションガイド間距離とが、略同じ長さに合わせることができ、プリフォームの形状の寸法バラツキを抑制できる。また、成形金型の壁に沿ったプレス一括賦形の際に、強化繊維基材が成形金型の壁のラインと平行に沿わせた状態に賦形することができ、成形金型の表面と強化繊維基材との間に隙間が生じることを抑制でき、成形金型内に樹脂を注入含浸させ、硬化させた強化繊維基材全体にわたって、マトリクス樹脂が偏在することなく均一に含浸せることができる。さらには、本発明の一括したプレスによる賦形方法により、プリフォームを形成する工程を要さずに、直接RTM成形を行えるダイレクトRTM成形方法への展開を図ることができる。
また、本発明において、位置決め部材が、繊維強化基材の所定の位置に配置させたピンがついたブロックであり、ポジションガイドが、ブロックの入れ子が挿入できる成形金型内の所定の位置に設けられた一定の大きさの型孔である構成とすることも好ましい態様である。位置決め部材として、前述した磁性体と磁石に代わって、ピンが備えられたブロックを配置する構成とすることにより、簡易な方法で正確な位置決めすることができる。
まず、テンプレートの所定の位置にブロックの入れ子が挿入できる穴を設ける。次に、ブロックの入れ子をテンプレートに設けられた穴に挿入する。次に、そのテンプレートの上に強化繊維基材を重ね、その強化繊維基材にピンを貫通する。そして、テンプレートを外すことにより、正確に簡便な方法で強化繊維基材の位置決めをすることができる。その後、テンプレートだけが取り外された強化繊維基材にピンで貫通させたブロックの入れ子を、成形金型内の所定の位置に設けられた一定の大きさの型孔に挿入して固定することにより、予備賦形された強化繊維基材を得ることが出来る。
また、本発明において位置決め部材は、強化繊維基材10に所定の位置に設けられたマーカーであり、ポジションガイドは繊維強化基材を貫通でき、成形金型の所定の位置に設けられたポジションピンとすることが好ましい。繊維強化基材10に設けられたマーカーが付された部位とポジションピンを合致させ、繊維強化基材を成形金型の所定の位置に位置決めさせた後、一括賦形する構成とすることが好ましい。ポジションピンにより、繊維強化基材の所定の位置と位置合わせするため、貫通させ合致させる構成により、簡易な方法で正確な位置決めすることができる。
図9に、成形金型内に設けられたポジションピンと強化繊維基材に付されたマーカーとを合致させる概略斜視図を示す。図9において、強化繊維基材10に付されたマーカー31を、矢印33で示すように、下型3に設けられたポジションピン32と合致させることで、強化繊維基材10が所定の位置に位置決めされ、強化繊維基材10が下型3に沿うように湾曲するように変形され、予備賦形される。その後、金型内に位置決めされた強化繊維基材10が上下金型によりプレス一括賦形され、強化繊維基材10を所定の形状とすることができる。
マーカーは、所定の位置が分かるための目印であり、印字体、適当な大きさの穴、目印となる付属物等、成形金型側に設けられたポジションガイドと位置合わせできる方法が好ましい。
ポジションガイドは一端が金型の所定の位置に固定し、他端はマーカーが付けられた繊維強化基材に貫通できる形状で一定の長さを持ったものが好ましい。位置合わせのための手段で、針等の貫通できる先端が尖った形状のもので、例えば、針付きの入れ子を用いることができる。
また、本発明において、位置決め部材として強化繊維基材が予備賦形される形状を予め認識記憶させた形状情報を用い、ポジションガイドとして強化繊維基材を配置させる位置を予め認識記憶させた金型における位置情報とすることも好ましい態様である。
画像処理、位置認識処理方法を用いた制御手段により、ロボット同士による搬送、強化繊維基材の位置合わせ、予備賦形を行うことにより、前述したような強化繊維基材に付するマーカー等は不要となり、精度維持、工程の簡素化、生産性向上に寄与することができる。
ロボットに予備賦形される形状を予め形状情報として認識記憶させておく。また、ロボットに強化繊維基材を成形金型に配置させる位置を予め成形金型における位置情報として認識記憶させておく。そして、ロボットアーム等の移動可能な捕捉手段により、強化繊維基材を成形金型上部に移送し、強化繊維基材を成形金型の所定の位置に、位置決め部材である形状情報及び金型における位置情報に基づき、ロボットアーム等の動作を制御して位置合わせすることにより強化繊維基材を所定の形態に予備賦形することが好ましい。
図10a〜図10eに、ロボット教示による搬送の構成図を示す。自動制御用ロボット41に、強化繊維基材10を予備賦形するための形状情報を記憶させる。その形状情報に基づき、強化繊維基材10を捕捉する捕捉手段であるチャック42の動作を制御する。チャック42の動作により、強化繊維基材10を所定の形態に予備賦形することができる。
図10aは、複数のチャック42を保持した自動制御用ロボット41を強化繊維基材10の近くに配置した状態を示す。次に、図10bに示すように、チャック42がターゲットである強化繊維基材10を捕捉する。さらに図10cに示すように、強化繊維基材10を捕捉したチャック42は、成形品の形状が記憶されたロボット41によって、所定の位置に移動される。例えば、図10cにおいては、右側のチャック42aは矢印43で示す左方向に移動する。同時に中央のチャック42bは矢印で示す上方向に移動する。左側のチャック42cは矢印で示す右方向に移動する。このように、予備賦形される形状となるように強化繊維基材10が変形される。その後、図10d、図10eに示すように、一定の形状に賦形された強化繊維基材10は、自動制御用ロボット41に予め認識記憶させた成形金型における位置情報に基づき、成形金型3の所定の位置に載置される。成形金型3は固定のためのピン44が配置され、搬送された強化繊維基材10が金型3に固定される。その後、成形金型3に位置決めされた強化繊維基材10を上下金型によりプレス一括賦形させ、強化繊維基材10は一定形状を有することになる。
次に、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[成形装置]
・100tプレス機(株式会社山本鉄工所製)
・金型温調機(株式会社サーモテック製)
[位置決め冶具]
・テンプレート21:ポリプロピレン製プラスチックダンボール(図4参照)
・磁石24:ネオジム製磁石(ミスミ社製MGLN-20-10-10)
・磁性体入れ子23:鉄ブロック(20mm×10mm×10mm)
・針付き入れ子32:鉄ブロック(20mm×10mm×10mm)
[金型]
・下型3:図6に断面形状を示す。内部に加熱配管からなる型温調配管が複数配置され平面寸法490mm×490mm、高さ300mmの箱型形状を有し、上記磁性体の入れ子23に対応する位置に型孔27を開けた750mm×750mm×600mmのアルミ製凸金型を使用した。
・上型2:下型3と同様の材料、配管、入れ子を有するアルミ製凹型を使用した。
[材料]
・二方向性織物:東レ(株)製CO6343B (織糸:炭素繊維T300-3K、織組織:平織り,織物目付:198g/m、厚さ:0.25mm、縦糸織密度:12.5本/25mm,横糸織密度:12.5本/25mm)。
・粘着性付与剤:平均粒径が100μmである強化繊維基材用バインダー組成物)
二方向性織物の一方の表面に、粘着性付与剤を、エンボスロールとドクターブレードを用いて、単位面積あたりの質量(付着量)が5g/mとなるように計量しながら万遍なく散布した。続いて、織物の表面温度は、粘着性付与剤が溶融するのに十分な温度になるよう、遠赤外線ヒータの下を0.3mm/分で通過させて、粘着性付与剤を織物上に固着させて強化繊維基材を作製した。
(基材の切り出し)
各強化繊維基材から、縦糸、横糸の方向をそれぞれ0°、90°としたときに、0°の方向が長軸方向となるよう、1200mm×1200mmの大きさの基材を切り出した。
(実施例1)
磁性体入れ子23を挿したテンプレート21の上に、切り出した強化繊維基材10を4枚乗せ、その上から、磁性体入れ子23の直上に磁石24をかぶせ、強化繊維基材10を挟み込んだ。その後、テンプレート21の下側から磁性体入れ子23を押し出し、強化繊維基材10をテンプレート21と分離した。続いて、磁性体入れ子23/磁石24を挟み込んだ強化繊維基材10を100℃の温水で加熱した金型下型3の上まで運び、入れ子23を下金型3の対応する位置である型孔27に差し込み予備賦形した後、100℃で加温した上型2を取り付けた100tプレスを下げ、繊維強化基材10を賦形した。
上型2を降ろしてから5分経過後、プレスを上げ、プリフォームを取り出した。出来上がったプリフォームにはシワなどの欠点はなく、コーナー形状のような変曲部において、強化繊維基材10が金型との間で隙間が形成されるブリッジの形成は見られず、品位は良好であった。また、プリフォームの形状の寸法バラツキも少なく強化繊維基材の余分な廃棄の低減にも繋げられた。
また、金型にマトリクス樹脂を注入して強化繊維基材10に含浸させて硬化させることにより、繊維強化プラスチック成形品を得た。樹脂が均一に含浸され、コーナー部に樹脂含浸量が偏在した樹脂リッチ部分やボイドの発生もない良好な成形品が得られた。
(実施例2)
図9に示すように、針付入れ子32を100℃に加温した下型3にはめ込み、その上に、事前に積層し所定の位置にマーカー31を付した繊維強化基材10をかぶせ、マーカー31の位置に針34を刺し貫通させ、100℃で加温した上型2を取り付けた100tプレスを下げ、基材を賦形した。
上型2を降ろしてから5分経過後、プレスを上げ、プリフォームを取り出した。出来上がったプリフォームにはシワなどの欠点はなく、コーナー形状のような変曲部において、強化繊維基材10が金型との間で隙間が形成されるブリッジの形成は見られず、品位は良好であった。また、プリフォームの形状の寸法バラツキも少なく強化繊維基材の余分な廃棄の低減にも繋げられた。
また、金型にマトリクス樹脂を注入して強化繊維基材10に含浸させて硬化させることにより、繊維強化プラスチック成形品を得た。樹脂が均一に含浸され、コーナー部に樹脂含浸量が偏在した樹脂リッチ部分やボイドの発生もない良好な成形品が得られた。
(比較例1)
下型3に磁性体入れ子23のみを事前にはめ込み、その上に、強化繊維基材10を把持することなく置き、100℃で加温した上型2を取り付けた100tプレスを下げ、基材を賦形した。上型を降ろしてから5分経過後、プレスを上げ、プリフォームを取り出した。出来上がったプリフォームはコーナー形状部で大きく折れ曲がったシワが発生しており、とても製品として成立するものではなかった。
本発明に係る成形方法は、高速成形が望まれるあらゆるRTM成形に適用でき、特に、比較的大型かつ比較的複雑な形状の成形品を短時間のうちに効率よく優れた品質をもって成形するために有用である。
1 成形金型
2 上型
3 下型
4 開閉弁
5 樹脂注入口
6 樹脂注入装置
7 吸引口
10 強化繊維基材
21 テンプレート
22 位置決めのためのテンプレートに設けられた穴
23 磁性体の入れ子
24 磁石
27 ポジションガイドである型孔
31 強化繊維基材に付されたマーカー
32 ポジションピン
41 自動制御用ロボット
42 チャック

Claims (11)

  1. 成形金型を用いて強化繊維基材を賦形するプリフォームの製造方法であって、
    前記強化繊維基材の所定の位置に予め位置決め部材を配置し、前記成形金型に設けられたポジションガイドに前記位置決め部材を位置合わせする予備賦形工程と、
    予備賦形された前記強化繊維基材を、前記成形金型によりプレスする賦形工程と、を少なくとも有することを特徴とするプリフォームの製造方法。
  2. 隣接する位置決め部材間の強化繊維基材の長さが、前記隣接する位置決め部材に対応するポジションガイド間距離に対し、同等以上、1.5倍以下の長さである請求項1に記載のプリフォームの製造方法。
  3. (a)前記予備賦形工程を繰り返し行う、
    (b)前記予備賦形工程および前記賦形工程を繰り返し行う、
    (c)前記(a)、(b)を繰り返し行う、
    の少なくとも1つを行う、請求項1または2に記載のプリフォームの製造方法。
  4. 前記位置決め部材が、前記強化繊維基材の所定の位置に、磁気力で前記強化繊維基材を挟み込む一対の磁性体であり、前記ポジションガイドが、前記磁性体の入れ子が挿入できる成形金型内の所定の位置に設けられた一定の大きさの型孔である請求項1〜3のいずれかに記載のプリフォームの製造方法。
  5. 前記位置決め部材を所定の位置に設ける工程が、
    テンプレートの所定の位置に穴を開ける工程、
    前記テンプレートの穴に磁性体の入れ子を挿入する工程、
    前記磁性体の入れ子が挿入された前記テンプレート上に強化繊維基材を重ねる工程、及び、
    前記強化繊維基材上に磁石を載せ、前記テンプレートの磁性体の入れ子を磁気力により、前記磁石と前記前記磁性体の入れ子とを合致させる工程、により行われる請求項4に記載のプリフォームの製造方法。
  6. 前記位置決め部材が、前記強化繊維基材の所定の位置に配置させるピンがついたブロックであり、
    前記ポジションガイドが、前記ブロックの入れ子が挿入できる成形金型内の所定の位置に設けられた一定の大きさの型孔である請求項1〜3のいずれかに記載のプリフォームの製造方法。
  7. 前記位置決め部材を所定の位置に設ける工程が、
    テンプレートの所定の位置に穴を開ける工程、
    前記テンプレートの穴にピンの付いたブロックの入れ子を挿入する工程、及び、
    前記ブロックの入れ子が挿入された前記テンプレート上に強化繊維基材を重ね、基材にピンを貫通する工程、により行われる請求項6に記載のプリフォームの製造方法。
  8. 前記位置決め部材が、前記強化繊維基材の所定の位置に付するマーカーであり、
    前記ポジションガイドが、強化繊維基材を貫通でき、成形金型内の所定の位置に設けられたポジションピンである請求項1〜3のいずれかに記載のプリフォームの製造方法。
  9. 前記ポジションガイド又は前記位置決め部材は、成形品が有する形状の凹凸部位を挟んだ状態で配置する請求項1〜8のいずれかに記載のプリフォームの製造方法。
  10. 位置情報を認識するアームを前記位置決め部材が配置された前記強化繊維基材に接近させ、前記位置決め部材の配置位置を認識し、前記強化繊維基材を前記アームで捕捉した後、前記成形金型近傍に移動させ、前記成形金型のポジションガイドの位置情報を認識し、前記強化繊維基材の位置決め部材を前記成形金型のポジションガイドに位置合わせすることにより前記強化繊維基材を所定の形態に予備賦形する、請求項1に記載の繊維強化基材を賦形したプリフォームの製造方法。
  11. 請求項1〜10いずれか記載のプリフォームの製造方法によって賦形されたプリフォームに、マトリクス樹脂を含浸し、固化又は硬化することを特徴とする繊維強化プラスチック成形品の製造方法。
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