以下に図面を参照して本発明の実施の形態であるインクカートリッジを説明する。
(実施例1)
(インクジェットプリンター)
図1は本発明を適用したインクカートリッジが搭載されるインクジェットプリンターの説明図である。図1ではケースを取り外した状態のインクジェットプリンターを前方の斜め上方から見た場合を示している。インクジェットプリンター(液体噴射装置)1は、印刷ヘッド2と、記録用紙挿入口5から印刷ヘッド2による印刷位置を経由して記録用紙排出口6に至る搬送路10を備えている。また、インクジェットプリンター1は、搬送路10に沿って記録用紙Pを搬送する搬送機構11と、印刷位置において印刷ヘッド2をプリンター幅方向Xに往復移動させるヘッド移動機構12を備える。
印刷ヘッド2はインクジェットヘッドである。搬送機構11は、搬送ローラー13と、この搬送ローラー13の駆動源となる搬送モーター14を備える。ヘッド移動機構12は、印刷ヘッド2を搭載するキャリッジ15と、プリンター幅方向Xに延びるキャリッジガイド軸16と、キャリッジ15をキャリッジガイド軸16に沿って移動させるキャリジ移動機構17を備える。
キャリッジ15には、印刷ヘッド2にインクを供給するための第1インクカートリッジ21(液体供給ユニット)および第2インクカートリッジ22(液体供給ユニット)が搭載されている。第1インクカートリッジ21には、ブラックのインクが貯留されており、第2インクカートリッジ22には、シアン、マゼンタ、イエローのインクが貯留されている。
記録用紙Pはプリンター後方Y2に設けられた記録用紙挿入口5から搬送路10に挿入される。搬送路10に挿入された記録用紙Pは、搬送機構11によってプリンター幅方向Xと直交するプリンター前後方向Yを前方Y1に搬送され、印刷位置において印刷が施される。印刷が施された記録用紙Pはプリンター前方Y1の記録用紙排出口6から排出される。
(キャリッジ)
図2はインクカートリッジ21、22が装着されるキャリッジ15の説明図である。図2(a)はインクカートリッジ21、22が装着された状態のキャリッジ15を上方の斜め前方Y1から見た場合の斜視図であり、図2(b)はキャリッジ15を下方から見た場合の底面図であり、図2(c)はキャリッジ15を上方の斜め前方Y1から見た場合の斜視図である。
図2(a)に示すように、第1インクカートリッジ21と第2インクカートリッジ22はプリンター幅方向Xに配列された状態でキャリッジ15に搭載されている。第1インクカートリッジ21と第2インクカートリッジ22は、プリンター前後方向において同一の長さ寸法を備えている。第2インクカートリッジ22の幅寸法(プリンター幅方向Xにおける長さ寸法)は、第1インクカートリッジ21の幅寸法よりも長い。印刷ヘッド2は、図2(b)に示すように、インクノズル面2aを下方に向けた状態で、キャリッジ15の底部分に搭載されている。
図2(c)に示すように、キャリッジ15は第1インクカートリッジ21および第2インクカートリッジ22が上方から装着されるカートリッジ装着凹部25を備える。カートリッジ装着凹部25は、プリンター前後方向Yに延びる第1仕切板26および第2仕切板27によって第1スロット28と第2スロット29に仕切られている。第1スロット28には第1インクカートリッジ21が装着され、第2スロット29には第2インクカートリッジ22が装着される。
第1スロット28の底面の中央部分からは、第1インク導入管(液体導入管)31が突出している。第1インク導入管31は、第1スロット28に装着された第1インクカートリッジ21からブラックインクを導入して印刷ヘッド2に供給するためのものである。第1インク導入管31の先端面には金属製のメッシュフィルター32が取り付けられている。メッシュフィルター32は中央部分が上方に突出するドーム形状をしている。また、第1スロット28の底面には、第1インク導入管31を包囲するように環状の弾性シール部材33が設置されている。弾性シール部材33はゴムなどの弾性体である。第1スロット28の前側壁面には、第1接点機構34が設けられている。
第2スロット29の底面からは、第2インク導入管(液体導入管)35、第3インク導入管(液体導入管)36、第4インク導入管(液体導入管)37が突出している。第2インク導入管35は、第2スロット29に装着された第2インクカートリッジ22からシアンインクを導入して印刷ヘッド2に供給するためのものである。第3インク導入管36は、第2スロット29に装着された第2インクカートリッジ22からマゼンタインクを導入して印刷ヘッド2に供給するためのものである。第4インク導入管37は、第2スロット29に装着された第2インクカートリッジ22からイエローインクを導入して印刷ヘッド2に供給するためのものである。各インク導入管35、36、37は第1インク導入管31と同一の構成を備えている。また、第2スロット29の底面には各インク導入管35、36、37を包囲するように環状の弾性シール部材33が設置されている。第2スロット29の前側壁面には、第2接点機構38が設けられている。
(第1インクカートリッジ)
図3(a)は第1インクカートリッジ21を前方Y1の斜め上方から見た場合の斜視図であり、図3(b)は第1インクカートリッジ21を前方Y1の斜め下方から見た場合の斜視図であり、図3(c)は第1インクカートリッジ21の底面図である。なお、第1インクカートリッジ21の説明では、インクジェットプリンター1に装着される姿勢において、インクジェットプリンター1の幅方向Xに対応する方向を第1インクカートリッジ21の幅方向Xとし、インクジェットプリンター1の前後方向Yに対応する方向を第1インクカートリッジ21の前後方向Yとする。また、幅方向Xおよび前後方向Yと直交する方向を上下方向Zとし、後述する底板部46から蓋45に向かう方向を上方Z1とし、蓋45から底板部46に向かう方向を下方Z2とする。さらに、インクジェットプリンター1の前方Y1に対応する方向をカートリッジの前方Y1とし、その反対方向を後方Y2とする。
図3に示すように、第1インクカートリッジ21は、全体として直方体形状をしたカートリッジ本体41と、カートリッジ本体41に固定された回路基板42を備える。カートリッジ本体41はポリプロピレン等の樹脂により形成されている。カートリッジ本体41は、凹部43(図4参照)を備える箱型の筐体44と、筐体44の上端開口を封鎖する蓋(第2の壁部)45を有する。筐体44は、図3(b)に示すように、前後方向に長い長方形の底板部(第1の壁部)46と、底板部46における前後方向Y(長手方向)の両端縁から上方Z1に延びで互いに対向する前側板部47および後側板部48と、底板部46の幅方向(短手方向)の両端縁から上方Z1に延びて互いに対向する左側板部49および右側板部50を備える。
底板部46の下面の中央部分には凹部51が形成されている。凹部51の中央部分にはカートリッジ開口(開口)52が設けられている。すなわち、底板部46は、カートリッジ開口52を取り囲む部分が肉薄部46aとなっており、肉薄部46aの周囲が肉薄部46aより肉厚の肉厚部46bとなっている。肉薄部46aと肉厚部46bの境界には環状段部(段差)46cが形成されている。
図3(c)に示すように、カートリッジ開口52は、底板部46において前後方向Yに延びる一対の直線状縁部と、一対の直線状縁部の前端を連続させる円弧形状の前側縁部と、一対の直線状縁部の後端を連続させる円弧形状の後側縁部により規定されている。前側縁部は幅方向Xの中央部分が前方Y1に突出しており、後側縁部は幅方向Xの中央部分が後方Y2に突出している。カートリッジ開口52は、第1インクカートリッジ21に貯留されたインクを外部に供給するインク供給部である。
カートリッジ開口52からは凹部43内に配置されたインク供給口構成部材(第1インク保持部)55が部分的に外部に露出している。インク供給口構成部材55は、ポリプロピレンなどを延伸させて繊維状にしたものを束ねた繊維部材、或いは、ポリウレタンなどの発泡体からなる多孔質部材である。インク供給口構成部材55は部材が備える細孔にインクを保持可能である。
図1、図2(a)に示すように、第1インクカートリッジ21がキャリッジ15のカートリッジ装着凹部25に装着された状態では、キャリッジ15の第1スロット28の第1インク導入管31がカートリッジ開口52に挿入される。また、弾性シール部材33が環状段部46cの内側(凹部51の内側)に挿入される。これにより、弾性シール部材33はカートリッジ開口52の縁部(直線状縁部、前側円弧状縁部および後側円弧状縁部)を囲む状態で肉薄部46aに当接して、第1インクカートリッジ21と第1スロット28の間を液密とする。さらに、第1インク導入管31のメッシュフィルター32がインク供給口構成部材55に押し付けられた状態で面接触して、インク供給口構成部材55と第1インク導入管31が接続された状態となる。ここで、図3(b)、図3(c)に示すように、インク供給口構成部材55においてカートリッジ開口52から露出する露出部分のうち、第1インク導入管31のメッシュフィルター32が接触する領域は、第1インク導入管31へインクを供給するインク供給口56となる。
筐体44の前側板部47の前面部分には、基板固定部61が設けられている。基板固定部61には回路基板42が前方Y1に向かって上方Z1に傾斜する姿勢で固定されている。回路基板42の表面(前方Y1を向く面)には端子群42aが設けられており、裏面(前側板部47の側の面)にはEEPROM等の記憶装置42bが実装されている。ここで、図2に示すように、第1インクカートリッジ21が第1スロット28に装着された状態では、回路基板42の端子群42aは第1スロット28の第1接点機構34と電気的に接続される。回路基板42と第1接点機構34が接続されると、第1インクカートリッジ21とインクジェットプリンター1の間で各種の情報の伝達が可能となる。
(第1インクカートリッジの内部構造)
次に、図4乃至図7を参照して第1インクカートリッジ21の内部構造を説明する。図4は図3(c)のA−A線における第1インクカートリッジ21の縦断面図である。図5(a)は第1インクカートリッジ21の分解斜視図であり、図5(b)は上下を反転させた状態のインク供給口構成部材55の斜視図である。図6は蓋およびインク保持部材を取り除いた状態の第1インクカートリッジ21を上方Z1から見た場合の平面図である。図7(a)は蓋を上方Z1から見た場合の平面図であり、図7(b)は蓋を下方Z2から見た場合の底面図である。
図4および図5に示すように、筐体44の凹部43の底面は底板部46の上面によって規定されている。図6に示すように、カートリッジ開口52は、凹部43の底面における前後方向Yおよび幅方向Xの中央に設けられている。カートリッジ開口52の中心は凹部43の中心と一致していることが好ましい。
底板部46の上面には、カートリッジ開口52を前後方向Yで間に挟んだ両側に、半円形状突起65aが3つずつ設けられている。カートリッジ開口52の前方Y1に位置する3つの半円形状突起65aは幅方向Xに一定間隔で配列されている。カートリッジ開口52の後方Y2に位置する3つの半円形状突起65aも幅方向Xに一定間隔で配列されている。前後方向Yでカートリッジ開口52を挟んで対向する2つの半円形状突起65aは、その弦にあたる縁部分が幅方向Xに平行に延びている。カートリッジ開口52の後側に位置する3つの半円形状突起65aと後側板部48との間には、円弧形状突起65bが3つ設けられている。3つの突起は幅方向Xに所定の間隔を開けて配列されている。カートリッジ開口52の前側に位置する3つの半円形状突起65aと前側板部47との間には、2つの円弧形状突起65bと円形状突起65cが設けられている。2つの円弧形状突起65bは幅方向Xに所定の間隔を開けて配列されており、円形状突起65cは2つの円弧形状突起65bの間に位置している。円形状突起65cと各円弧形状突起65bの間には隙間が形成されている。各半円形状突起65a、各円弧形状突起65b、および、円形状突起65cの高さ寸法は同一であり、これらの上端面は一つの仮想平面上に位置している。
図5(a)および図6に示すように、筐体44の右側板部50における後端部分には、内側に突出して上下方向Zに延びる第1縦リブ67が設けられている。第1縦リブ67と後側板部48の間には、第1縦リブ67、右側板部50および後側板部48によって筐体44の底面から蓋45に至る第1縦溝部68が形成されている。また、筐体44の左側板部49における前端部分には、内側に突出して上下方向Zに延びる第2縦リブ69が設けられている。第2縦リブ69と前側板部47の間には、第2縦リブ69、左側板部49および前側板部47によって筐体44の底面から蓋45に至る第2縦溝部70が形成されている。
蓋45は筐体44に溶着されて筐体44の凹部43を上方Z1から被っている。図5および図7(a)に示すように、蓋45の後端部分の右端部分には第1貫通孔71が設けられている。蓋45の中央部分には第1インクカートリッジ21にインクを充填するためのインク注入口72が設けられている。蓋45の前端部分の左端部分には第2貫通孔73および大気孔74が設けられている。大気孔74は第2貫通孔73の前方Y1に位置している。蓋45は筐体44に溶着された状態では、第1縦溝部68の上方Z1に第1貫通孔71が位置する。
蓋45の上面には、第1貫通孔71と第2貫通孔73の間に、これらを連通させる上面連通溝75が設けられている。上面連通溝75は蛇行する蛇行溝部分を備える。蓋45の上面には、図5(a)に示すように、可撓性の第1シール部材76が溶着されており、第1貫通孔71、インク注入口72、第2貫通孔73および上面連通溝75は、それらの上端開口が上方Z1から封止されている。
蓋45の下面には、図7に示すように、直線状に延びる複数本のリブ77が幅方向Xおよび前後方向Yに間隔を開けて設けられている。各リブ77の間は互いに連通する複数の溝部78となっている。また、蓋45の下面における第1貫通孔71に近い部分には、複数本のリブ77の一つとして、第1貫通孔71の円形開口の縁部分に沿って円弧形状に湾曲する湾曲リブ77aが設けられている。さらに、蓋45の下面には、図5(a)および図7(b)に示すように、第2貫通孔73と大気孔74を連通させる下面連通溝79が設けられている。下面連通溝79が形成されている蓋45の下面部分には、図5に示すように、可撓性の第2シール部材80が溶着される。第2シール部材80は、第2貫通孔73、大気孔74および下面連通溝79の下端開口を下方Z2から封止する。第2貫通孔73と大気孔74は、第2シール部材80と下面連通溝79により区画された連通路を介して連通している。
筐体44の内部には、図4および図5に示すように、下方Z2から上方Z1に向かってインク供給口構成部材55とインク保持部材(第2液体保持部材)81がこの順番に配置されている。
インク供給口構成部材55は、図5および図6に示すように、上方Z1から見た場合(平面視した場合)の平面形状が正方形である。インク供給口構成部材55は、図6に示すように、6つの半円形状突起65aの間に配置されており、半円形状突起65aによって位置決めされた状態で底板部46に載せられている。インク供給口構成部材55は、カートリッジ開口52を上方Z1から被っている。インク供給口構成部材55の厚さ寸法は、半円形状突起65aの高さ寸法よりも僅かに長い。
図5(b)に示すように、インク供給口構成部材55の下面には、後端縁から前方Y1に向って平行に延びる2本の溝部(凹部)82が形成されている。インク供給口構成部材55が位置決めされて底板部46に配置された状態では、図4および図6に示すように、インク供給口構成部材55の後側部分(各溝部82の後側部分)は底板部46の上方Z1に位置している。すなわち、インク供給口構成部材55の後側部分は、上方Z1から見た場合に、底板部46と重なる位置にある。そして、各溝部82の後端開口82aは、図6に示すように、カートリッジ開口52の後方Y2に位置する3つの半円形状突起65aの各隙間に連通している。また、各溝部82の前端部分82bは、上方Z1から見た場合に、カートリッジ開口52と重なる位置にある。従って、図3(b)および図3(c)に示すように、各溝部82の前端部分82bはカートリッジ開口52に連通している。また、上下方向Zから見た場合に、溝部82の前側部分と肉薄部46aは重なっている。
ここで、図6に示すように、各溝部82の前端部分82bはインク供給口構成部材55においてカートリッジ開口52と部分的に重なる位置まで延びているが、第1インクカートリッジ21をインクジェットプリンター1に装着したときに第1インク導入管31のメッシュフィルター32が接触する領域であるインク供給口56には達していない。
なお、本例のインク供給口構成部材55は、上下に積層された第1のインク供給口構成部材と第2のインク供給口構成部材から構成されている。第1のインク供給口構成部材は、後端縁から前方に向って平行に切り欠かれて上下方向Zに貫通する2箇所の開口部を備える部材である。第2のインク供給口構成部材は、第1のインク供給口構成部材の上方Z1に積層された正方形の部材である。第1のインク供給口構成部材と第2のインク供給口構成部材は溶着によって一体とされている。
図5に示すように、インク保持部材81は直方体形状をしている。インク保持部材81は、図4に示すように、各半円形状突起65a、各円弧形状突起65bおよび円形状突起65cの上端面に載置された状態で凹部43内に配置されている。インク保持部材81は凹部43の大部分を占有している。インク保持部材81の下面の中央部分には、インク供給口構成部材55の上面が面接触している。インク保持部材81の下面におけるインク供給口構成部材55との接触部分よりも後方の後側下面部分は、各半円形状突起65aおよび各円弧形状突起65bの高さ寸法に対応する間隔を空けて底板部46と対向している。インク保持部材81の下面におけるインク供給口構成部材55との接触部分よりも前側の前側下面部分は、各半円形状突起65a、各円弧形状突起65bおよび円形状突起65cの高さ寸法に対応する間隔を空けて底板部46と対向している。従って、図4に示すように、インク保持部材81と底板部46分の間には、インク供給口構成部材55よりも後方に後側空間83が形成され、インク供給口構成部材55よりも前方に前側空間84が形成されている。
インク保持部材81は、インクを保持可能な部材であり、インク供給口構成部材55と同様に、ポリプロピレンなどを延伸させて繊維状にしたものを束ねた繊維部材、或いは、ポリウレタンなどの発泡体からなる多孔質部材である。インク注入口72から第1インクカートリッジ21に充填されるインクは凹部43内に拡散して、インク保持部材81およびインク供給口構成部材55に保持された状態となる。なお、第1インクカートリッジ21にインクを充填する充填作業は、カートリッジ開口52および大気孔74を封鎖して筐体44内を減圧した状態で行われる。
ここで、インク供給口構成部材55は、インク保持部材81よりもバブルポイント圧が高く圧力損失が大きい。換言すれば、インク供給口構成部材55は、インク保持部材81よりも細孔密度が高く毛管力が大きい。従って、第1インクカートリッジ21から外部にインクを供給する際に、インクはインク保持部材81からインク供給口構成部材55の側に流れやすい。
バブルポイント圧とは、管状の流路にインク保持部材を配置し、管状の流路のうちインク保持部材の上流側に液体を満たし、上流から下流に向かって液体に圧力をかけていったとき、インク保持部材から液体が下流に漏れ出はじめるときの、液体にかかった圧力BP1を意味する。また、同様の管状の流路に、流路方向の長さが第1のインク保持部材と等しい第2のインク保持部材を配置し、同様に上流から下流に向かって液体に圧力をかけていったとき、第2インク保持部材から液体が下流に漏れ出はじめるときの、液体にかかった圧力BP2を意味する。そして、第1のインク保持部材は第2のインク保持部材よりもバブルポイント圧が高いとは、BP1がBP2よりも大きいことを意味する。
圧力損失とは、管状の流路に第1のインク保持部材を配置し、管状の流路のうち第1のインク保持部材の上流側と下流側に液体を満たし、上流側の液体に上流から下流に向かって圧力P1をかけていったとき、圧力P1と下流側の液体にかかる圧力P2との差圧ΔP1を意味する。また、同様の管状の流路に、流路方向の長さが第1のインク保持部材と等しい第2のインク保持部材を配置し、管状の流路のうち第2のインク保持部材の上流側と下流側に液体を満たし、上流側の液体に上流から下流に向かって圧力P1をかけていったとき、圧力P1と下流側の液体にかかる圧力P2との差圧ΔP2を意味する。そして、第1のインク保持部材は第2のインク保持部材よりも圧力損失が大きいとは、ΔP1がΔP2より大きいことを意味する。
(大気連通路および大気流路)
ここで、第1インクカートリッジ21には、カートリッジ開口52と大気孔74を接続する大気連通路85が構成されている。大気連通路85はカートリッジ開口52と大気孔74の間の大気の移動を可能にするものである。
大気連通路85は、インク供給口構成部材55の2つの溝部82、インク供給口構成部材55の後方Y2における底板部46とインク保持部材81との間の後側空間83、第1縦溝部68、蓋45の下面に構成された溝部78、第1貫通孔71、上面連通溝75、第2貫通孔73、下面連通溝79を備える。すなわち、カートリッジ開口52とインク供給口構成部材55に設けられた2つの溝部(大気連通部)82が連通し、2つの溝部82と後側空間83が連通している。また、後側空間83と第1縦溝部68が連通し、第1縦溝部68と第1貫通孔71が、蓋45の下面に構成された溝部78を介して連通している。さらに、第1貫通孔71が上面連通溝75を介して第2貫通孔73と連通し、第2貫通孔73が下面連通溝79を介して大気孔74と連通している。
また、第1インクカートリッジ21には、インク供給口構成部材55の前方Y1における底板部46とインク保持部材81との間の前側空間84と大気孔74を接続する大気流通路86が構成されている。大気流通路86は前側空間84と大気孔74の間の大気の移動を可能にするものである。
大気流通路86は、前側空間84、第2縦溝部70、蓋45の下面に構成された溝部78、第1貫通孔71、上面連通溝75、第2貫通孔73、下面連通溝79を備える。すなわち、前側空間84と第2縦溝部70が連通し、第2縦溝部70と第1貫通孔71が、蓋45の下面に構成された溝部78を介して連通している。さらに、第1貫通孔71が上面連通溝75を介して第2貫通孔73と連通し、第2貫通孔73が下面連通溝79を介して大気孔74と連通している。
(第2インクカートリッジ)
図8(a)は第2インクカートリッジ22を前方Y1の斜め上方Z1から見た場合の斜視図であり、図8(b)は第2インクカートリッジ22を前方Y1の斜め下方Z2から見た場合の斜視図である。第2インクカートリッジ22の説明においても、インクジェットプリンター1に装着される姿勢において、インクジェットプリンター1の幅方向Xに対応する方向を第2インクカートリッジ22の幅方向Xとし、インクジェットプリンター1の前後方向Yに対応する方向を第2インクカートリッジ22の前後方向Yとする。また、インクジェットプリンター1の前方Y1に対応する方向を第2カートリッジの前方Y1とし、その反対方向を後方Y2とする。
図7に示すように、第2インクカートリッジ22は、全体として直方体形状をしたカートリッジ本体91と、カートリッジ本体91に固定された回路基板92を備える。カートリッジ本体91はポリプロピレン等の樹脂により形成されている。カートリッジ本体91は、内側に第1凹部93、第2凹部94、第3凹部95を備える筐体96と、筐体96の上端開口を封鎖する蓋97を有する。各凹部93、94、95はそれぞれ直方体形状の空間を形成しており、第1凹部93と第2凹部94は幅方向Xに配列されている。第3凹部95は第1凹部93および第2凹部94の前方Y1に設けられている。第1凹部93にはシアンインクが貯留され、第2凹部94にはマゼンタインクが貯留され、第3凹部95にはイエローインクが貯留されている。
ここで、各凹部93、94、95と、蓋97において各凹部93、94、95を上方Z1から封鎖している各蓋部分は、それぞれが第1インクカートリッジ21と対応する構成を備えている。
より具体的には、図8(b)に示すように、各凹部93、94、95の底を規定している筐体96の底板部99には、各凹部93、94、95に対応する位置にカートリッジ開口101、102、103が設けられている。各カートリッジ開口101、102、103は、各凹部93、94、95に貯留されたインクを外部に供給するインク供給部であり、各カートリッジ開口101、102、103からは各凹部93、94、95内に配置されたインク供給口構成部材(第1インク保持部)55が部分的に外部に露出している。また、各凹部93、94、95には、図4に示す第1インクカートリッジ21の内部と同様に、インク供給口構成部材55とインク保持部材81が配置されている。また、各凹部93、94、95と、蓋97において各凹部93、94、95を上方Z1から封鎖している各蓋部分には、第1インクカートリッジ21と同様に、大気連通路85および大気流通路86が構成されている。
第2インクカートリッジ22が第2スロット29に装着された状態では、第1カートリッジ開口101に第2インク導入管35が接続され、第2カートリッジ開口102に第3インク導入管36が接続され、第3カートリッジ開口103に第4インク導入管37が接続される。また、第2インクカートリッジ22が第2スロット29に装着された状態では、回路基板92の端子群92aは第2接点機構38と電気的に接続される。
(インク供給動作)
図9は、第1インクカートリッジ21からインクジェットプリンター1の側にインクを供給するインク供給動作の説明である。なお、第2インクカートリッジ22の各凹部93、94、95に貯留されたインクをインクジェットプリンター1の側に供給するインク供給動作は、第1インクカートリッジ21からインクジェットプリンター1の側にインクを供給するインク供給動作と同様なので、第1インクカートリッジ21からインクジェットプリンター1の側にインクを供給するインク供給動作を説明して、その説明を省略する。
第1インクカートリッジ21がインクジェットプリンター1に装着されると、図9に示すように、第1スロット28の第1インク導入管31が第1インクカートリッジ21のカートリッジ開口52に挿入される。これにより、第1インク導入管31のメッシュフィルター32とカートリッジ開口52から露出するインク供給口構成部材55とが面接触し、インク供給口構成部材55が弾性変形してメッシュフィルター32と密着する。また、第1スロット28の弾性シール部材33が環状段部46cの内側(凹部51の内側)に挿入され、カートリッジ開口52を囲む状態で肉薄部46aに当接して、第1インクカートリッジ21と第1スロット28の間を液密とする。
この状態で、インクジェットプリンター1の側から吸引が行われ、第1インクカートリッジ21から、カートリッジ開口52および第1インク導入管31を介して、印刷ヘッド2にインクが供給される。より具体的には、インク保持部材81およびインク供給口構成部材55に保持されたインクは、インク供給口構成部材55におけるインク供給口56(第1インク導入管31が当接している領域)を介して、第1インク導入管31に導入されて、印刷ヘッド2に供給される。
ここで、第1インクカートリッジ21をインクジェットプリンター1に装着する際などに、第1インクカートリッジ21のカートリッジ開口52(液体供給部)を介して、第1インクカートリッジ21内に空気が押し込まれることがある。押し込まれた空気がインク供給口構成部材55やインク保持部材81の細孔に留まると、インクをインクジェットプリンター1の側に供給する際の圧力損失が大きくなり、第1インクカートリッジ21のインク供給能力が低下する。
かかる問題に対して、本例では、侵入した空気は、カートリッジ開口52と大気孔74を接続する大気連通路85を介して、大気孔74から放出される。また、第1インクカートリッジ21をインクジェットプリンター1に装着する際などに、第1インク導入管31によってインク供給口構成部材55が押し上げられて空気が前側空間84に進入した場合には、侵入した空気は、前側空間84と大気孔74を接続する大気流通路86を介して、大気孔74から放出される。従って、インク供給口構成部材55やインク保持部材81に空気が溜まることが防止或いは抑制される。よって、インクをインクジェットプリンター1の側に供給する際の圧力損失の増大を抑制できる。
また、第1インクカートリッジ21をインクジェットプリンター1に装着する際に、インクジェットプリンター1の側の部材と筐体44の底板部46の肉薄部46aが当接して、稀に、肉薄部46aを内側に変形させてしまうことがある。或いは、第1インクカートリッジ21にインクを充填する充填作業に際し、筐体44内の減圧によって肉薄部46aを内側に変形させてしまうことがある。これらの場合には、筐体44がポリプロピレン等の樹脂で成形されているので、クリープが起こり、カートリッジ開口52の縁部分が内側に曲がった状態で安定してしまう可能性がある。クリープとは、一定の外力が長期間かけられ、材料の変形が時間の経過とともに増加していく現象である。
かかる問題に対して、本例では、蓋の側からカートリッジ開口52を被うインク供給口構成部材55に、大気連通路85の一部を構成する溝部82が設けられている。従って、底板部46におけるカートリッジ開口52の縁部分が内側に変形した場合でも、溝部82が狭められたり閉塞させられたりすることを抑制でき、大気連通路85を確保できる。よって、凹部43内に押し込まれた空気がインク供給口構成部材55に溜まることを防止或いは抑制できる。
(実施例2)
図10は実施例2のインクカートリッジ111の説明図である。図10(a)は本例のインクカートリッジ111を模式的に示す斜視図であり、図10(b)はインク供給口構成部材55の斜視図であり、図10(c)は図10(a)のインクカートリッジ111の縦断面図であり、図10(d)は図(c)の一点鎖線におけるインクカートリッジ111の断面図である。図10(b)において上側の図は、インク供給口構成部材55を上方Z1から見た場合の斜視図であり、下側の図は、インク供給口構成部材55の上下を反転させて上方Z1から見た場合の斜視図である。なお、実施例2のインクカートリッジ111は、実施例1のインクカートリッジ111と同様の構成を備えるので、対応する構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。
本例のインクカートリッジ111は、全体として直方体形状をしている。インクカートリッジ111は、凹部43を備える筐体44と、凹部43の上端開口を封鎖する蓋(第2の壁部)45を有する。筐体44の底板部(第1の壁部)46の中央部分には、カートリッジ開口52が形成されている。蓋45には大気孔74が形成されている。凹部43には、インク供給口構成部材(第1液体保持部材)55とインク保持部材(第2液体保持部材)81が下方Z2から上方Z1に向ってこの順番で積層されている。インク供給口構成部材55は底板部46に載せられて凹部43の内側からカートリッジ開口52を被っている。カートリッジ開口52からはインク供給口構成部材55が部分的に外部に露出している。
インク供給口構成部材55は、平面視した場合の平面形状が四角形をしている。図10(b)に示すように、インク供給口構成部材55の下面には溝部82が設けられている。溝部は、インク供給口構成部材55において平面形状の四角形の一辺を構成している外周縁部分から内側に向って延びている。インク供給口構成部材55が底板部46に載せられてカートリッジ開口52を被った状態では、図10(c)に示すように、溝部82におけるインク供給口構成部材55の外周縁側の端部開口は、インク保持部材81と底板部46との間に形成された空間83に連通している。溝部82における内側の端部分はカートリッジ開口52と連通している。ここで、インクカートリッジ111は、実施例1のインクカートリッジ111と同様に、カートリッジ開口52と大気孔74を接続する大気連通路85を備える。インク保持部材81と底板部46との間に形成された空間83、および、インク供給口構成部材55に設けられた溝部82は、大気連通路85の一部を構成する。
本例においても、底板部46に形成されたカートリッジ開口52を被うインク供給口構成部材55に、大気連通路85の一部を構成する溝部82が設けられている。従って、底板部46におけるカートリッジ開口52の縁部分が内側に変形した場合でも、溝部82が狭められたり閉塞させられたりすることを抑制でき、大気連通路85を確保できる。よって、凹部43内に押し込まれた空気がインク供給口構成部材55に溜まることを防止或いは抑制できる。
(実施例3)
図11(a)は実施例3のインクカートリッジ112を模式的に示す斜視図であり、図11(b)は実施例4のインクカートリッジ121を模式的に示す斜視図である。なお、実施例3、4のインクカートリッジ112、121は、実施例1のインクカートリッジ21および実施例2のインクカートリッジ112と同様の構成を備えるので、対応する構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。
実施例3のインクカートリッジ112は、図11(a)に示すように、全体として直方体形状をしている。インクカートリッジ112は、凹部43を備える筐体44と、凹部43の上端開口を封鎖する蓋(第2の壁部)45を有する。凹部43内は長手方向と直交する方向に延びる仕切り板113により、部分的に仕切られている。長手方向(前後方向Y)において仕切り板113の一方側(後方Y2)に位置する第1の凹部部分114は、実施例2のインクカートリッジ112と同様の構成を備えている。長手方向において仕切り板113の他方側(前方Y1)に位置する第2の凹部部分115は、インクをインク保持部材81に保持させずそのまま貯留する貯留空間となっている。仕切り板113と筐体44の底板部46の間には、第1の凹部部分114と第2の凹部部分115を連通させる隙間が設けられている。
第1の凹部部分114における底板部46(第1の壁部)の中央部分には、カートリッジ開口52が形成されている。蓋45において第1の凹部部分114を被う蓋部分には大気孔74が形成されている。第1の凹部部分114には、インク供給口構成部材(第1液体保持部材)55とインク保持部材(第2液体保持部材)81が下方から上方Z1に向ってこの順番で積層されている。インク供給口構成部材55は、底板部46に載せられて第1の凹部部分114の内側からカートリッジ開口52を被っている。インク供給口構成部材55には溝部82が形成され、この溝部82はカートリッジ開口52と連通する。
ここで、インクカートリッジ112は、カートリッジ開口52と大気孔74を接続する大気連通路85を備える。インク保持部材81と底板部46との間に形成された空間83と、インク供給口構成部材55に設けられた溝部82は、大気連通路85の一部を構成する。
なお、第2の凹部部分115に貯留されたインクは、第1の凹部部分114に貯留されているインクの減少に伴って、逐次に第1の凹部部分114の側に供給される。
本例においても、底板部46に形成されたカートリッジ開口52を被うインク供給口構成部材55に、大気連通路85の一部を構成する溝部82が設けられている。従って、底板部46におけるカートリッジ開口52の縁部分が内側に変形した場合でも、溝部82が狭められたり閉塞させられたりすることを抑制でき、大気連通路85を確保できる。よって、凹部43内に押し込まれた空気がインク供給口構成部材55に溜まることを防止或いは抑制できる。
(実施例4)
実施例4のインクカートリッジ121は、図11(b)に示すように、全体として直方体形状をしている。インクカートリッジ121は、凹部43を備える筐体44と、凹部43の上端開口を封鎖する蓋(第3の壁部)45を有する。筐体44は、その底板部46および蓋45と交差する4枚の側板部122〜125を備える。4枚の側板部122〜125のうちの一つの側板部122(第1の壁部)には、カートリッジ開口52が形成されている。蓋45には大気孔74が形成されている。凹部43内には、側板部122の側から側板部124(第2の壁部)の側に向って、インク供給口構成部材(第1液体保持部材)55とインク保持部材(第2液体保持部材)81がこの順番に配置されている。インク供給口構成部材55とインク保持部材81は面接触している。インク供給口構成部材55は、側板部122に内側から当接した状態でカートリッジ開口52を被っている。カートリッジ開口52からはインク供給口構成部材55が部分的に外部に露出している。
インク供給口構成部材55は、平面視した場合(側板部124の側から側板部122の側に向う前後方向Yから見た場合)の平面形状が四角形をしている。インク供給口構成部材55の側板部122側の端面には、上端縁部分から内側(下方Z2)に向って延びる溝部82が設けられている。インク供給口構成部材55が側板部122に当接してカートリッジ開口52を被った状態では、溝部82における外周縁側の端部開口は、インク保持部材81と側板部122との間に形成された空間83に連通している。溝部82における内側の端部分はカートリッジ開口52と連通している。ここで、インクカートリッジ121は、実施例1のインクカートリッジ121と同様に、カートリッジ開口52と大気孔74を接続する大気連通路85を備える。インク保持部材81と側板部122との間に形成された空間83、および、インク供給口構成部材55に設けられた溝部82は、大気連通路85の一部を構成する。
本例においても、カートリッジ開口52を被うインク供給口構成部材55に、大気連通路85の一部を構成する溝部82が設けられている。従って、側板部122におけるカートリッジ開口52の縁部分が内側に変形した場合でも、溝部82が狭められたり閉塞させられたりすることを抑制でき、大気連通路85を確保できる。よって、凹部43内に押し込まれた空気がインク供給口構成部材55に溜まることを防止或いは抑制できる。
(実施例5)
図12(a)は実施例5のインクカートリッジ131を模式的に示す説明図であり、図12(b)は実施例5のインクカートリッジ131においてカートリッジ開口52が設けられた底板部46が内側に変形した場合の説明図である。図12(c)はインク供給口構成部材55に溝部82が設けられていない比較例のインクカートリッジ131Aにおいて底板部46が内側に変形した場合の説明図である。
実施例4のインクカートリッジ131は、実施例2のインクカートリッジ111における底板部46の下面部分に、実施例1のインクカートリッジ131と同様の凹部51を備えるものである。すなわち、底板部46の下面の中央部分には凹部51が形成されている。凹部51の中央部分にはカートリッジ開口52(開口)52が設けられている。底板部46は、カートリッジ開口52を取り囲む部分が肉薄部46aとなっており、肉薄部46aの周囲が肉薄部46aより肉厚の肉厚部46bとなっている。肉薄部46aと肉厚部46bの境界には環状段部(段差)46cが形成されている。なお、そのほかの構成は、実施例2のインクカートリッジ111と同様なので、対応する構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。
本例では、底板部46におけるカートリッジ開口52の周囲に環状段部46cが設けられている。従って、インクカートリッジ131をプリンターに装着したときに、この環状段部46cの内周側に弾性シール部材33を当接させることにより、インクカートリッジ131と、プリンターの間を液密状態にすることができる。また、図12(b)に示すように、インクカートリッジ131を搬送する際などに、カートリッジ開口52を封鎖する保護キャップ132をインクカートリッジ131に取り付ける際に、この段部の内周側に弾性シール部材132aを当接させることにより、インクカートリッジ131と保護キャップ132の間を液密状態にすることができる。
ここで、底板部46に凹部51を設けてカートリッジ開口52の周辺を肉薄部46aとした場合には、例えば、保護キャップ132をインクカートリッジ131に取り付ける際に、保護キャップ132が底板部46に当接して、底板部46におけるカートリッジ開口52の縁部分を内側に変形させてしまう可能性がある。このような場合に、本例では、蓋45の側からカートリッジ開口52を被うインク供給口構成部材55に、大気連通路85の一部を構成する溝部(大気連通部)82が設けられており、上下方向Zから見た場合に、溝部82と肉薄部46aは重なっている。従って、図12(b)に示すように、底板部46におけるカートリッジ開口52の縁部分が内側に変形した場合でも、溝部82が閉塞させられることを抑制でき、大気連通路85を確保できる。よって、凹部43内に押し込まれた空気がインク供給口構成部材55に溜まることを防止或いは抑制できる。
なお、図12(c)に示すインクカートリッジ131Aのように、インク供給口構成部材55に溝部(大気連通部)82が設けられていない場合には、底板部46におけるカートリッジ開口52の縁部分が内側に変形すると大気孔74を介して空気を逃すことが困難となる。
(実施例6)
図13は実施例6のインクカートリッジ135を模式的に示す説明図である。実施例6のインクカートリッジ135は、実施例5と同様の構成を備えるので、対応する構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。本例では、インク保持部材81と、蓋45に設けられた複数本のリブ77の間に、インク漏れ防止部材136が配置している。インク漏れ防止部材136は、インクを保持可能な部材であり、インク供給口構成部材55およびインク保持部材81と同様に、ポリプロピレンなどを延伸させて繊維状にしたものを束ねた繊維部材、或いは、ポリウレタンなどの発泡体からなる多孔質部材である。
インク漏れ防止部材136は、インク保持部材81と、蓋45のリブ77との間で上下方向に圧縮した状態とされている。また、本例では、複数本のリブ77のうち、大気孔74の円形開口に沿って設けられた湾曲リブ77a(図7(b)参照)の突出寸法を他のリブ77と比較して長くしており、インク漏れ防止部材136が大気孔74の円形開口に接触することを防止している。
ここで、インク保持部材81は、インク漏れ防止部材136よりもバブルポイント圧が高く圧力損失が大きい。換言すれば、インク保持部材81は、インク漏れ防止部材136よりも細孔密度が高く毛管力が大きい。従って、インクは、インク漏れ防止部材136の側からインク保持部材81の側に拡散しやすい。
本例においても、底板部46に形成されたカートリッジ開口52を被うインク供給口構成部材55に、大気連通路85の一部を構成する溝部82が設けられている。従って、底板部46におけるカートリッジ開口52の縁部分が内側に変形した場合でも、溝部82が狭められたり閉塞させられたりすることを抑制でき、大気連通路85を確保できる。よって、凹部43内に押し込まれた空気がインク供給口構成部材55に溜まることを防止或いは抑制できる。また、本例では、インクカートリッジ135の上下を反転させた場合などに、大気孔74を介して凹部43の外側に流出しようとするインクを、インク漏れ防止部材136によって保持して、その流出を防止できる。
(変形例)
図14(a)〜図14(c)および図15(a)、図15(b)は、変形例のインクカートリッジの説明図である。図14(a)〜図14(c)および図15(a)、図15(b)のそれぞれにおいて、右側の図はインクカートリッジの縦断面図であり、左側の図は、右側の図の一点鎖線におけるインクカートリッジの断面図である。なお、変形例のインクカートリッジは、いずれも実施例2のインクカートリッジ111と同様の構成を備えるので、対応する構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図14(a)に示す変形例1のインクカートリッジ141は、大気連通路85の一部を構成する大気連通構造142を有する。大気連通構造142は、底板部46における蓋45側の面に凹部143を備える。凹部143は、底板部46において上方Z1から見た場合にインク供給口構成部材55とは重ならない位置であって、インク保持部材81と重なる位置に設けられている。大気連通構造142は、凹部143とインク保持部材81との間の空間を含んでいる。
本例では、カートリッジ開口52が形成された底板部46が蓋45の側に変形した場合でも、インク供給口構成部材55の溝部82と大気連通構造142により大気連通路85が閉塞させられることを防止或いは抑制できる。また、大気連通構造142が底板部46に形成された凹部143とインク保持部材81の間の空間を含むので、カートリッジ開口52を介して押し込まれた空気がインク保持部材81に溜まることを防止或いは抑制できる。
図14(b)に示す変形例2のインクカートリッジ145は、大気連通路85の一部を構成する大気連通構造146を有する。大気連通構造146は、底板部46における蓋45側の面に凹部147を備える。凹部147は、底板部46において上方Z1から見た場合にインク供給口構成部材55およびインク保持部材81と重なる位置に設けられている。また、凹部147はカートリッジ開口52に連通しており、上方Z1から見た場合にインク供給口構成部材55に設けられた溝部82と重なる位置に設けられている。凹部147の幅寸法は溝部82の幅寸法と同一である。凹部147の深さ寸法は、溝部82の深さ寸法と同じか、或いは、溝部82の深さ寸法よりも長い。大気連通構造146は、凹部147とインク供給口構成部材55との間の空間、および、凹部147とインク保持部材81との間の空間を含んでいる。ここで、溝部82と凹部147が重なっている部分における大気連通路の流路断面積は、0.16mm2以上、9.00mm2以下である。この場合に、溝部82と凹部147が重なっている部分における大気連通路の流路断面の幅寸法および高さ寸法は0.40mm×0.40mm以上、かつ、3.00mm×3.00mm以下である。
本例では、インク供給口構成部材55の溝部(大気連通部)82と大気連通構造146とが重なる部分において大気連通路の流路面積が大きくなる。従って、カートリッジ開口52が形成された底板部46が蓋45の側に変形した場合でも、インク供給口構成部材55の溝部82と大気連通構造146により大気連通路85が閉塞させられることを防止或いは抑制できる。また、大気連通構造146が底板部46に形成された凹部147とインク供給口構成部材55の間の空間を含むので、カートリッジ開口52を介して押し込まれた空気がインク供給口構成部材55に溜まることを防止或いは抑制できる。さらに、大気連通構造146が底板部46に形成された凹部147とインク保持部材81の間の空間を含むので、カートリッジ開口52を介して押し込まれた空気がインク保持部材81に溜まることを防止或いは抑制できる。
図14(c)に示す変形例3のインクカートリッジ151は、大気連通路85の一部を構成する大気連通構造152を有する。大気連通構造152は、底板部46における蓋45側の面に凹部153を備える。凹部153は、底板部46において上方Z1から見た場合にインク供給口構成部材55およびインク保持部材81と重なる位置に設けられており、凹部153はカートリッジ開口52に連通している。また、凹部153は、上方Z1から見た場合にインク供給口構成部材55に設けられた溝部82と重なる位置に設けられている。
本例では、凹部153の幅寸法(幅方向Xにおける寸法)は溝部82の幅寸法よりも長い。凹部153の深さ寸法は、溝部82の深さ寸法と同じか、或いは、溝部82の深さ寸法よりも長い。大気連通構造152は、凹部153とインク供給口構成部材55との間の空間、および、凹部153とインク保持部材81との間の空間を含んでいる。ここで、溝部82と凹部147が重なっている部分における大気連通路の流路断面積は、0.16mm2以上、9.00mm2以下である。この場合に、溝部82と凹部147が重なっている部分における大気連通路の流路断面の幅寸法および高さ寸法は0.40mm×0.40mm以上、かつ、3.00mm×3.00mm以下である。
本例によれば、変形例2のインクカートリッジ145と同様の効果を得ることができる。ここで、インク供給口構成部材55の側に設ける溝部82の幅寸法を大きくした場合には、インク供給口構成部材55が変形しやすくなり、自己の変形によって溝部82を狭めてしまう可能性がある。これに対して、本例では、インク供給口構成部材55よりも剛性を有する樹脂で底板部46を形成している。そして底板部46に形成される凹部153の幅寸法を溝部82の幅寸法よりも大きくし、インク供給口構成部材55に形成される溝部82の幅寸法を小さくしている。従って、大気連通路85の流路断面積を確保しながらインク供給口構成部材55の変形を抑制できる。
図15(a)に示す変形例4のインクカートリッジ155は、大気連通路85の一部を構成する大気連通構造156を有する。大気連通構造156は、底板部46における蓋45側の面に間隔を開けて形成された2本のリブ(凸部)157を有する。2本のリブ157は、底板部46において上方Z1から見た場合にインク供給口構成部材55およびインク保持部材81と重なる位置に設けられている。2本のリブ157の間の空間158はカートリッジ開口52に連通している。また、2本のリブ157の間の空間158は、上方Z1から見た場合にインク供給口構成部材55に設けられた溝部82と重なる位置に形成されている。
2本のリブ157の間の幅寸法は溝部82の幅寸法と同一である。2本のリブ157の高さ寸法は、溝部82の深さ寸法と同じか、或いは、溝部82の深さ寸法よりも長い。大気連通構造156は、2本のリブ157とインク供給口構成部材55との間の空間、および、2本のリブ157とインク保持部材81との間の空間を含んでいる。ここで、溝部82と2本のリブ157の間の空間158が重なっている部分における大気連通路の流路断面積は、0.16mm2以上、9.00mm2以下である。この場合に、溝部82と空間158が重なっている部分における大気連通路の流路断面の幅寸法および高さ寸法は0.40mm×0.40mm以上、かつ、3.00mm×3.00mm以下である。
本例では、インク供給口構成部材55の溝部(大気連通部)82と大気連通構造156とが重なる部分において大気連通路の流路面積が大きくなる。従って、カートリッジ開口52が形成された底板部46が蓋45の側に変形した場合でも、インク供給口構成部材55の溝部82と大気連通構造156により大気連通路85が閉塞させられることを防止或いは抑制できる。また、大気連通構造156が底板部46に形成された2本のリブ157とインク供給口構成部材55の間の空間を含むので、カートリッジ開口52を介して押し込まれた空気がインク供給口構成部材55に溜まることを防止或いは抑制できる。さらに、大気連通構造156が底板部46に形成された2本のリブ157とインク保持部材81の間の空間を含むので、カートリッジ開口52を介して押し込まれた空気がインク保持部材81に溜まることを防止或いは抑制できる。
図15(b)に示す変形例5のインクカートリッジ161は、大気連通路85の一部を構成する大気連通構造162を有する。大気連通構造162は、底板部46における蓋45側の面に間隔を開けて形成された2本のリブ(凸部)163を有する。2本のリブ163は、底板部46において上方Z1から見た場合にインク供給口構成部材55およびインク保持部材81と重なる位置に設けられている。2本のリブ163の間の空間164はカートリッジ開口52に連通している。また、2本のリブ163の間の空間164は、上方Z1から見た場合にインク供給口構成部材55に設けられた溝部82と重なる位置に形成されている。
本例では、2本のリブ163の間の幅寸法は溝部82の幅寸法よりも長い。2本のリブ163の高さ寸法は、溝部82の深さ寸法と同じか、或いは、溝部82の深さ寸法よりも長い。大気連通構造162は、2本のリブ163とインク供給口構成部材55との間の空間、および、2本のリブ163とインク保持部材81との間の空間を含んでいる。ここで、溝部82と2本のリブ163の間の空間164が重なっている部分における大気連通路の流路断面積は、0.16mm2以上、9.00mm2以下である。この場合に、溝部82と空間164が重なっている部分における大気連通路の流路断面の幅寸法および高さ寸法は0.40mm×0.40mm以上、かつ、3.00mm×3.00mm以下である。
本例によれば、変形例4のインクカートリッジ161と同様の効果を得ることができる。ここで、インク供給口構成部材55の側に設ける溝部82の幅寸法を大きくした場合には、インク供給口構成部材55が変形しやすくなり、自己の変形によって溝部82を狭めてしまう可能性がある。これに対して、本例では、インク供給口構成部材55よりも剛性を有する樹脂で形成された底板部46に2本のリブ163を形成している。そして2本のリブ163の間の幅寸法を溝部82の幅寸法よりも大きくし、インク供給口構成部材55に形成される溝部82の幅寸法を小さくしている。従って、大気連通路85の流路断面積を確保しながらインク供給口構成部材55の変形を抑制できる。
(インク供給口構成部材の変形例)
図16および図17は上記のインク供給口構成部材55の替わりに用いることができる変形例のインク供給口構成部材の斜視図である。図16(a)〜図16(c)のそれぞれにおいて、左側の図は変形例のインク供給口構成部材の斜視図である。右側の図は変形例のインク供給口構成部材を、カートリッジ開口52を被う所定の位置に配置し、その状態を上方Z1から見た場合の平面図である。図17(a)、図17(b)において、左側の図は変形例のインク供給口構成部材の斜視図である。中央の図は変形例のインク供給口構成部材を、カートリッジ開口52を被う所定の位置に配置し、その状態を上方Z1から見た場合の平面図である。右側の図は、変形例のインク供給口構成部材を、カートリッジ開口52を被う所定の位置から前後方向Yにずれた位置に配置し、その状態を上方Z1から見た場合の平面図である。
図16(a)に示す変形例1のインク供給口構成部材171は、インク供給口構成部材171の下面に2本の溝部172を備える。各溝部172は、矩形のインク供給口構成部材171の一辺を構成している外周縁部分から内側に向って延びている。また、各溝部172は180度の回転対称となる位置に設けられている。本例のインク供給口構成部材171を、カートリッジ開口52を被う所定の位置に配置すると、一方の溝部172は大気連通路85の一部を構成する。また、他方の溝部172は、大気流通路86とカートリッジ開口52を連通させる。本例のインク供給口構成部材171によれば、インク供給口構成部材171を所定の位置に配置する際に、周方向の向きが180度異なっている場合でも、溝部172によって大気連通路85の一部を構成できる。
図16(b)に示す変形例2のインク供給口構成部材175は、インク供給口構成部材175の下面に4本の溝部176a〜176dを備える。各溝部176a〜176dは、矩形のインク供給口構成部材175の一辺を構成している外周縁部分から内側に向って延びている。また、各溝部176a〜176dは90度の回転対称となる位置に設けられている。インク供給口構成部材175を、カートリッジ開口52を被う所定の位置に配置すると、4本の溝部176a〜176dのうちの一本の溝部176aは、インクカートリッジ161内に構成される大気連通路85の一部を構成する。また、溝部176aと対応する溝部176cは、大気流通路86とカートリッジ開口52を連通させる。本例のインク供給口構成部材175によれば、インク供給口構成部材175を所定の位置に配置する際に、周方向の向きが90度異なっている場合でも、溝部176a〜176dによって大気連通路85の一部を構成できる。
図16(c)に示す変形例3のインク供給口構成部材181は、インク供給口構成部材181の下面に8本の溝部182a〜182hを備える。各溝部182a〜182hは90度の回転対称となる位置に設けられている。インク供給口構成部材181を、カートリッジ開口52を被う所定の位置に配置すると、8本の溝部182a〜182hのうちの2本の溝部182a、182bは、インクカートリッジ161内に構成される大気連通路85の一部を構成する。また、2本の溝部182a、182bと対向する2本の溝部182e、182fは、大気流通路86とカートリッジ開口52を連通させる。
本例のインク供給口構成部材181によれば、インク供給口構成部材181を所定の位置に配置する際に、周方向の向きが90度異なっている場合でも、溝部182a〜182hによって大気連通路85の一部を構成できる。なお、本例では、各溝部182a〜182hはインクカートリッジ161の内側に向うのに伴って、その幅寸法が狭くなる台形を呈している。これにより、隣接する溝部182bと182c、182dと182e、182fと182g、182hと182aの間に挟まれたインク供給口構成部材181の4つの角部の基部分が狭くなることが回避されているので、角部が変形することを防止できる。よって、角部の変形によって大気連通路85を狭めてしまうことを回避できる。
図17(a)に示す変形例4のインク供給口構成部材185は、インク供給口構成部材185の下面に3本の溝部186a、186b、186cを備える。3本の溝部186a、186b、186cは、回転対称とはならない位置に形成されている。具体的には、2本の溝部186a、186bは、矩形のインク供給口構成部材185の一辺を構成している外周縁部分から内側に向って平行に延びている。1本の溝部186cは、2本の溝部186a、186bが形成された一辺と対向する一辺の外周縁部分から内側に向って延びている。本例のインク供給口構成部材185を、カートリッジ開口52を被う所定の位置に配置すると、2本の溝部186a、186bはインクカートリッジ161内に構成される大気連通路85の一部を構成する。また、一本の溝部186cは、大気流通路86とカートリッジ開口52を連通させる。
ここで、本例のインク供給口構成部材185では、一本の溝部186cが、インクカートリッジが適正に組み立てられたか否かを検査する検査用の目印となる。すなわち、図17(a)の右側の図に示すように、カートリッジ開口52から外側に露出している一本の溝部186a、186b、186cの長さを確認することにより、インク供給口構成部材185の位置ずれを確認できる。
図17(b)に示す変形例5のインク供給口構成部材191は、インク供給口構成部材191の下面に2本の溝部192a、192bと、1本の検査用溝部193を備える。2本の溝部192a、192bと検査用溝部193は、回転対称とはならない位置に設けられている。具体的には、2本の溝部192a、192bは、矩形のインク供給口構成部材191の一辺を構成している外周縁部分から内側に向って平行に延びている。検査用溝部193は、2本の溝部192a、192bと交差する方向に延びている。検査用溝部193は、インク供給口構成部材191の縁には達していない。
本例のインク供給口構成部材191を、カートリッジ開口52を被う所定の位置に配置すると、2本の溝部192a、192bは大気連通路85の一部を構成する。検査用溝部193は、その一部分がカートリッジ開口52から外側に露出し、インクカートリッジが適正に組み立てられたか否かを検査する検査用の目印となる。すなわち、右側の図に示すように、カートリッジ開口52から露出している検査用溝部193の位置を確認することにより、インク供給口構成部材191の位置ずれを確認できる。
(インク供給部構成部材のその他の変形例)
上記の各インク供給部構成部材では、インク供給部構成部材の下面に凹部として設けた溝部を、大気連通路85の一部を構成する大気連通部としている。しかしこれに限られず、各インク供給部構成部材において溝部が設けられた部分を上下方向に貫通する開口とし、この開口を、大気連通路85の一部を構成する大気連通部とすることもできる。このようにすれば、インク供給部構成部材に大気連通部を設けることが容易となる。