JP2016004708A - リチウムイオン二次電池用正極活物質およびその製造方法、ならびにそれを用いたリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用正極活物質およびその製造方法、ならびにそれを用いたリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】より高い容量を有する新規なリチウムイオン二次電池用正極活物質の提供。【解決手段】LiMePO4(Meは、少なくとも一部にMn、Co、Feから選択される少なくとも1種の遷移金属を含む)で表される組成を有するリチウム含有遷移金属化合物を主として含む粒子と、フッ化リチウムを主として含む粒子とを備え、フッ化リチウムに対する前記リチウム含有遷移金属化合物のモル比は、0.5〜2.0であるリチウムイオン二次電池用正極活物質。【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用正極活物質およびその製造方法ならびにそれを用いたリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、高電圧であり、かつ高エネルギー密度を有するため、電子機器用、または電力貯蔵用、電気自動車の電源として期待されている。
リチウムイオン二次電池は、正極活物質を有する正極、負極活物質を有する負極、および正極と負極との間に介在するセパレータを具備している。セパレータには、主としてポリオレフィン製の微多孔膜が用いられている。非水電解質には、LiBF4、LiPF6等のリチウム塩を非プロトン性の有機溶媒に溶解した液状非水電解質(非水電解液)が用いられている。負極活物質としては、例えば、黒鉛などの種々の炭素材料が用いられている。正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウムやニッケル酸リチウム等の化合物が用いられている。
近年、環境負荷の小さい正極活物質として、Mnを主体としたオリビン構造のリチウム含有遷移金属化合物(LiMnPO4)を用いることが提案されている。LiMnPO4の理論容量は約170mAh/gである。しかし、上記のリチウム含有遷移金属化合物(LiMnPO4)では、Mnのレドックス反応を十分に活用できず、得られる放電容量が20〜30mAh/g程度であり、非常に低いという問題がある(非特許文献1参照)。
これに対し、より高い容量を有する正極活物質として、リチウム含有遷移金属化合物のフッ化物を用いることが提案されている。例えば、特許文献1はLi2MePO4Fで表される活物質、特許文献2はLiMePO4Fで表される活物質(いずれもMeは遷移金属元素)を提案している。
特開2007−73360号公報 米国特許第6387568号明細書
エー・ケー・パディ(A.K.Padhi)、ケー・エス・ナンジュダスワーミー(K.S.Nanjundaswamy)、ジェイ・ビー・グッドイナフ(J.B.Goodenough)著「ホスホ−オリビンズ・アズ・ポジティブ−エレクトロード・マテリアルズ・フォー・リチャージアブル・リチウム・バッテリーズ(Phospho−olivines as Positive−Electrode Materialsfor Rechargeable LithiumBatteries)」、ジャーナル・オブ・ジ・エレクトロケミカル・ソサイティ(Journal of the Electrochemical Society)、(米国)、1997年、第144巻、p.1188−1194
本発明の一態様は、高い容量を有し得る新規な正極活物質を提供する。
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、LiMePO4(Meは、少なくとも一部にMn、Co、Feからなる群より選択される少なくとも1種を含む)で表される組成を有するリチウム含有遷移金属化合物を主として含む粒子と、フッ化リチウムを主として含む粒子とを備えるリチウムイオン二次電池用正極活物質を含む。
本発明の一態様によると、高い容量を有し得る新規な正極活物質を提供できる。また、本発明の一態様にかかる正極活物質を用いると、高容量なリチウムイオン二次電池を提供できる。
実施例1のコイン型リチウムイオン二次電池の断面図である。
本発明の基礎となった知見は以下のとおりである。
本発明者は、リチウム含有遷移金属化合物を用いた正極活物質の容量をさらに高めるために検討を重ねた。その結果、リチウム含有遷移金属化合物とLiFとの電気化学的な反応を利用することで、リチウム含有遷移金属化合物の理論容量を超える容量を実現し得ることを見出した。
本発明の一態様の概要は以下のとおりである。
本発明の一態様であるリチウムイオン二次電池用正極活物質は、LiMePO4(Meは、少なくとも一部にMn、Co、Feからなる群より選択される少なくとも1種を含む)で表される組成を有するリチウム含有遷移金属化合物を主として含む粒子と、フッ化リチウムを主として含む粒子とを備える。
上記リチウムイオン二次電池用正極活物質は、Li(1-x)MnPO4F(0≦x≦1)で表される組成を有する化合物をさらに含んでもよい。
前記フッ化リチウムに対する前記リチウム含有遷移金属化合物のモル比は、例えば、0.5以上2.0以下であってもよい。
前記リチウム含有遷移金属化合物を主として含む粒子および前記フッ化リチウムを主として含む粒子の平均粒径は1μm以下であってもよい。
本発明の一態様であるリチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極活物質を有する正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を有する負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、リチウムイオン伝導性を有する電解質とを備え、前記正極活物質は、LiMePO4(Meは、少なくとも一部にMn、Co、Feからなる群より選択される少なくとも1種を含む)で表される組成を有するリチウム含有遷移金属化合物を主として含む粒子と、フッ化リチウムを主として含む粒子とを備える。
上記正極活物質は、Li(1-x)MnPO4F(0≦x≦1)で表される組成を有する化合物をさらに含んでもよい。
前記フッ化リチウムに対する前記リチウム含有遷移金属化合物のモル比は、例えば、0.5以上2.0以下であってもよい。
前記リチウム含有遷移金属化合物を主として含む粒子および前記フッ化リチウムを主として含む粒子の平均粒径は、例えば、1μm以下であってもよい。
前記電解質は、例えば、非水電解液であり、前記非水電解液は、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピオン酸メチル、フルオロベンゼン、フルオロエチルメチルカーボネート及びフルオロジメチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素溶媒を含んでもよい。
前記電解質は、例えば、非水電解液であり、前記非水電解液はアニオンレセプターを含んでもよい。
本発明の一態様のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、リチウム含有遷移金属化合物を主として含む粒子とフッ化リチウムを主として含む粒子とを含む正極活物質を製造する方法であって、LiMePO4(Meは、少なくとも一部に、Mn、Co、Feからなる群より選択される少なくとも1種を含む)で表される組成を有するリチウム含有遷移金属化合物と、フッ化リチウムとを準備する工程(A)と、前記リチウム含有遷移金属化合物とフッ化リチウムとを粉砕することにより、リチウム前記含有遷移金属化合物を主として含む粒子と前記フッ化リチウムを主として含む粒子とを得る工程(B)とを包含する。
前記工程(B)は、前記リチウム含有遷移金属化合物と前記フッ化リチウムとの混合物を粉砕機で粉砕する工程を含んでもよい。
本発明の一態様のリチウムイオン二次電池の製造方法は、正極活物質を有する正極を準備する工程と、負極活物質を有する負極を準備する工程と、前記正極と前記負極との間にセパレータが配置されるように、前記正極、前記セパレータ及び前記負極を組み合わせる工程とを含み、前記正極を準備する工程は、リチウム含有遷移金属化合物を主として含む粒子とフッ化リチウムを主として含む粒子とを含む正極活物質を作製する工程を含んでおり、前記正極活物質を作製する工程は、LiMePO4(Meは、少なくとも一部に、Mn、Co、Feからなる群より選択される少なくとも1種を含む)で表される組成を有するリチウム含有遷移金属化合物と、フッ化リチウムとを準備する工程(A)と、前記リチウム含有遷移金属化合物とフッ化リチウムとを粉砕することにより、リチウム前記含有遷移金属化合物を主として含む粒子と前記フッ化リチウムを主として含む粒子とを得る工程(B)とを包含する。
前記工程(B)は、前記リチウム含有遷移金属化合物と前記フッ化リチウムとの混合物を粉砕機で粉砕する工程を含んでもよい。
(実施の形態)
本発明による実施の形態の正極活物質は、リチウム含有遷移金属化合物を主として含む粒子とフッ化リチウム(LiF)を主として含む粒子とを備える。リチウム含有遷移金属化合物は、LiMePO4(Meは、少なくとも一部にMn、Co、Feからなる群より選択される少なくとも1種を含む)で表される組成を有する化合物である。このような化合物は、LiFとの反応によりフッ化リチウム含有遷移金属化合物を生成する。生成されたフッ化リチウム含有遷移金属化合物は、リチウムを可逆的に挿入及び脱離することができる。なお、MeはMn、CoおよびFeのうち少なくとも1種の遷移金属を含んでいればよく、これらのうち2種以上の遷移金属を含んでいてもよい。あるいは、Mn、CoおよびFe以外の元素を含んでいてもよい。また、リチウム含有遷移金属化合物を主として含む粒子は、リチウム含有遷移金属化合物に加えて、種々の添加物や不純物を含んでもよい。同様に、LiFを主として含む粒子も、LiFに加えて種々の添加物や不純物を含んでもよい。
本実施形態の正極活物質によると、LiFとリチウム含有遷移金属化合物との電気化学反応を、リチウム含有遷移金属化合物の電気化学反応に付加して起こさせることができる。従って、正極活物質としてリチウム含有遷移金属化合物を単独で使用する場合よりも高い容量を得ることが可能である。例えばリチウム含有遷移金属化合物の理論容量を超える容量を得ることが可能になる。この理由は、以下のように考えられる。
まず、リチウム含有遷移金属化合物のみからなる正極活物質の容量を説明する。リチウム含有遷移金属化合物として、例えばLiMnPO4で表される組成を有する化合物(以下、単に「LiMnPO4」と略する)を用いた場合の充電反応を式(1)に示す。
LiMnPO4 ⇒Li(1-x)MnPO4+xLi++xe- (0≦x≦1) (1)
式(1)に示すように、Liのインサーション反応により、正極活物質に対して脱離および挿入できるLiの数は、遷移金属あたり1つ以下である。すなわち、式(1)におけるxは0以上1以下である。このため、1電子反応以下の容量しか見込めない。
これに対し、リチウム含有遷移金属化合物とLiFとを含む正極活物質を用いると、式(2)に示すように、まず、LiMnPO4とLiFとの間で付加的な電気化学反応が生じる。これにより、フッ素化したLiMnPO4(LiMnPO4F)が生成されると共に、Liの脱離が生じる。さらに充電を進行させると、式(3)に示すように、フッ素化したLiMnPO4が従来から知られているインサーション反応を起こす。この結果、更なるLiの脱離が生じる。
LiMnPO4+LiF⇒LiMnPO4F+Li++e- (2)
⇒Li(1-x)MnPO4F+(1+x)Li++(1+x)e- (0≦x≦1) (3)
このような2段階の反応メカニズムに基づき、遷移金属あたり1つ以上のLiおよび電子を利用することが可能になる。つまり、式(3)における(1+x)は1以上2以下になる。このため、LiMnPO4のみを正極活物質として用いる場合に想定される1電子反応を超える容量が見込まれる。
リチウム含有遷移金属化合物の粒子とLiF粒子とを分散させた正極活物質において、式(2)に示すようなコンバージョン反応が生じ、その後充放電を行うことにより、フッ化リチウム含有遷移金属化合物(Li(1-x)MePO4F)が生成されることは、本発明者が検討の結果見出したことである。
本実施形態の正極活物質では、初期状態においては、リチウム含有遷移金属化合物の粒子とLiF粒子とが分散している。「初期状態」とは、正極活物質を作製した後、充放電またはリチウムの予備吸蔵を行う前の状態をいう。初期状態の正極活物質は、フッ化リチウム含有遷移金属化合物を実質的に含まなくてもよいし、含んでいてもよい。
この正極活物質では、リチウム含有遷移金属化合物の粒子とLiF粒子とが接触してLiMePO4Fを生成し(式(2))、その後の充放電によりLi(1-x)MePO4Fが得られる(式(3))。充電後も、リチウム含有遷移金属化合物の粒子およびLiF粒子の一部は反応せずに残る可能性がある。また、Li(1-x)MePO4Fの一部は、充放電により初期状態(LiMnPO4およびLiF)に戻り得る。このため、充放電を行った後あるいはリチウムを予備的に吸蔵させた後の正極活物質は、リチウム含有遷移金属化合物の粒子およびLiF粒子に加えて、Li(1-x)MePO4Fで表されるフッ化リチウム含有遷移金属化合物をも含み得る。フッ化リチウム含有遷移金属化合物は、例えばリチウム含有遷移金属化合物の粒子とLiF粒子との接触面に生成されている。
なお、本実施形態の正極活物質に含まれ得るフッ化リチウム含有遷移金属化合物は、例えば特許文献1、2などに開示された従来のフッ化リチウム含有遷移金属化合物とは異なる。本実施形態におけるフッ化リチウム含有遷移金属は、式(2)に示す電気化学的反応で生成されている。この反応は可逆的であり、フッ化リチウム含有遷移金属の一部は反応前の化合物(リチウム含有遷移金属化合物およびフッ化リチウム)に戻り得る。これに対し、例えば特許文献1および2では、リチウム含有遷移金属化合物とフッ化リチウムとを混合し、得られた混合物を焼成することによって、Li2MePO4FあるいはLiMePO4Fで表される組成を有する化合物を製造している。製造されたフッ化リチウム含有遷移金属化合物は高温の熱処理を経て合成された焼結体であり、合成前の化合物には戻らない(不可逆)と考えられる。さらに、これらの特許文献は、リチウム含有遷移金属化合物の粒子とフッ化リチウムの粒子とを分散させると、上記のようなコンバージョン反応が生じることも、これを高容量化に利用することも教示していない。
なお、正極活物質と電解質との反応性を抑える等の目的で、フッ素化合物でコーティングされた正極活物質を用いることも提案されている(例えば国際公開第2006/109930号)。しかしながら、この技術では、フッ素化合物の量は正極活物質の量の例えば10重量%以下と少ないので、フッ素化合物と正極活物質との反応を利用して高容量化を図ることはできないと考えられる。また、フッ素化合物の量を増加させると、正極活物質によるリチウムの脱挿入が生じにくくなり、容量はかえって減少すると考えられる。
本実施形態におけるリチウム含有遷移金属化合物の価数は2〜4価であることが好ましい。これにより、リチウム含有遷移金属化合物とLiFとの反応により生成するフッ化リチウム含有遷移金属化合物が高い作動電圧と十分な容量を確保できる。従って、上記の価数に対応した比率でリチウム含有遷移金属化合物とLiFとを混合してもよい。例えば、初期状態の正極活物質における、LiFに対するリチウム含有遷移金属化合物のモル比R、すなわち、リチウム含有遷移金属化合物(LiMePO4)のモル数/LiFのモル数は、例えば0.5以上2.0以下となるように設定されてもよい。LiFの量が多い場合(例えばモル比Rが0.5未満)、LiFが式(3)に示す反応を阻害するおそれがある。一方、LiFの量が少ない場合(例えばモル比Rが2.0超)、LiFと反応しない(フッ素化されない)リチウム含有遷移金属化合物の割合が増加する。フッ素化されていないリチウム含有遷移金属化合物は、上記式(1)に示すように、1電子反応以下の容量しか得られない。このため、LiFと反応しないリチウム含有遷移金属化合物が増えると、正極活物質の単位重量当たりの容量が小さくなるおそれがある。
リチウム含有遷移金属化合物として、LiMnPO4を用いる場合、式(2)に示すコンバージョン反応が生じると想定される。この反応では、LiMnPO4とLiFとのモル比は1:1である。従って、LiFに対するLiMnPO4のモル比Rが、例えば0.5以上2.0以下、好ましくは1に近い値、例えば0.8以上1.2以下に設定されていれば、式(2)および(3)に示す反応を利用して、より効果的に正極活物質の容量を高めることが可能になる。
LiFとリチウム含有遷移金属化合物との反応は、これらの界面で生じる。このため、リチウム含有遷移金属化合物の粒子およびLiF粒子が小さいほど、これらの粒子同士の接触確率が高くなり、反応しやすいと考えられる。LiF粒子およびリチウム含有遷移金属化合物の粒子の平均粒径は特に限定しないが、例えば0μm超1μm以下である。粒径を小さくするために、LiFとリチウム含有遷移金属化合物とを粉砕装置で粉砕してもよい。
<正極活物質の製造方法>
本実施形態の正極活物質の製造方法の一例を説明する。
正極活物質は、LiFと、LiMePO4で表される組成を有するリチウム含有遷移金属化合物(以下、「LiMePO4」と略する)との混合物を粉砕(混合粉砕)することによって製造され得る。粉砕には、ハイエナジー(high energy)ボールミル、遊星ボールミル、などの公知の粉砕装置を用いることができる。粉砕装置を用いず、乳鉢で粉砕を行ってもよい。本実施形態では、粉砕後、焼成などの加熱工程は行わない。
ここでは、例えば、粉砕機(SPEX製 8000M)を用いて、数時間、LiFとLiMePO4との混合粉砕を行う。これにより、1μm以下、例えば100nm以上1μm以下の粒径を有するLiF粒子およびLiMePO4粒子が得られる。なお、LiFとLiMePO4とを別個に所定のサイズになるまで粉砕し、得られたLiF粒子とLiMePO4粒子とを混合してもよい。
<リチウムイオン二次電池の構成>
次に、本実施形態の正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池の構成を説明する。なお、本実施形態では、リチウムイオン二次電池の正極が上述した正極活物質を有していればよく、その他の構成は特に限定されない。
本実施形態の活物質を用いたリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、正極と負極との間に配置されたセパレータと、リチウムイオン伝導性を有する電解質とを備える。負極はリチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を有する。正極は、上記の正極活物質を有する。
正極は、通常、正極集電体およびそれに担持された正極合剤からなる。正極合剤は、正極活物質の他に、結着剤、導電剤などを含むことができる。正極は、例えば、正極活物質と任意成分からなる正極合剤を液状成分と混合して正極合剤スラリーを調製し、得られたスラリーを正極集電体に塗布し、乾燥させて作製する。負極も、同様に、負極集電体およびそれに担持された負極合剤からなる。負極合剤は、負極活物質の他に、結着剤、導電剤などを含むことができる。負極は、例えば、負極活物質と任意成分からなる負極合剤を液状成分と混合して負極合剤スラリーを調製し、得られたスラリーを負極集電体に塗布し、乾燥させて作製する。
負極活物質としては、例えば、金属、金属繊維、炭素材料、酸化物、窒化物、錫化合物、珪素化合物、各種合金材料等を用いることができる。炭素材料としては、例えば各種天然黒鉛、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、各種人造黒鉛、非晶質炭素などの炭素材料が用いられる。また、珪素(Si)や錫(Sn)などの単体、または合金、化合物、固溶体などの珪素化合物や錫化合物が容量密度の大きい点から好ましい。例えば珪素化合物としては、SiOx(0.05<x<1.95)、またはこれらのいずれかにB、Mg、Ni、Ti、Mo、Co、Ca、Cr、Cu、Fe、Mn、Nb、Ta、V、W、Zn、C、N、Snからなる群から選択される少なくとも1つ以上の元素でSiの一部を置換した合金や化合物、または固溶体などを用いることができる。錫化合物としてはNi2Sn4、Mg2Sn、SnOx(0<x<2)、SnO2、SnSiO3などが適用できる。負極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正極または負極の結着剤には、例えばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースなどが使用可能である。また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体を用いてもよい。またこれらのうちから選択された2種以上を混合して用いてもよい。また電極に含ませる導電剤には、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウムなどの金属粉末類、酸化亜鉛やチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、フェニレン誘導体などの有機導電性材料などが用いられる。
正極活物質、導電剤および結着剤の配合割合は、それぞれ、正極活物質80〜97重量%、導電剤1〜20重量%、結着剤1〜10重量%の範囲とすることが好ましい。また、負極活物質および結着剤の配合割合は、それぞれ、負極活物質93〜99重量%、結着剤1〜10重量%の範囲とすることが好ましい。
集電体には、長尺の多孔性構造の導電性基板か、あるいは無孔の導電性基板が使用される。導電性基板に用いられる材料としては、正極集電体としては、例えばステンレス鋼、アルミニウム、チタンなどが用いられる。また、負極集電体としては、例えばステンレス鋼、ニッケル、銅などが用いられる。これら集電体の厚さは、特に限定されないが、1〜500μmが好ましく、5〜20μmがより望ましい。集電体の厚さを上記範囲とすることにより、極板の強度を保持しつつ軽量化することができる。
正極と負極との間に介在するセパレータとしては、大きなイオン透過度を持ち、所定の機械的強度と、絶縁性とを兼ね備えた微多孔薄膜、織布、不織布などが用いられる。セパレータの材質としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンが耐久性に優れ、かつシャットダウン機能を有しているため、非水電解質二次電池の安全性の観点から好ましい。セパレータの厚さは、一般的に10〜300μmであるが、40μm以下とすることが望ましい。また、15〜30μmの範囲とするのがより好ましく、さらに好ましいセパレータ厚さの範囲は10〜25μmである。さらに微多孔フィルムは、1種の材料からなる単層膜であってもよく、1種または2種以上の材料からなる複合膜または多層膜であってもよい。また、セパレータの空孔率は、30〜70%の範囲であることが好ましい。ここで空孔率とは、セパレータ体積に占める孔部の体積比を示す。セパレータの空孔率のより好ましい範囲は、35〜60%である。
非水電解質としては、液状、ゲル状または固体(高分子固体電解質)状の物質を使用することができる。
液状非水電解質(非水電解液)は、非水溶媒に電解質(例えば、リチウム塩)を溶解させることにより得られる。また、ゲル状非水電解質は、非水電解質と、この非水電解質が保持される高分子材料とを含むものである。この高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、ポリビニリデンフルオライドヘキサフルオロプロピレン等が好適に使用される。
電解質を溶解する非水溶媒としては、公知の非水溶媒を使用することが可能である。この非水溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステルなどが用いられる。環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)などが挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)などが挙げられる。環状カルボン酸エステルとしては、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)などが挙げられる。非水溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、非水溶媒として、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピオン酸メチル、フルオロベンゼン、フルオロエチルメチルカーボネート及びフルオロジメチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素溶媒を含むことが望ましい。これらのフッ素溶媒が非水電解液に含まれていると、非水電解液の耐酸化性が向上するため、高い電圧で電池を充電する場合にも、電池を安定して動作させることが可能となる。
非水溶媒に溶解させる電解質には、例えばLiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、ホウ酸塩類、イミド塩類などを用いることができる。ホウ酸塩類としては、ビス(1,2−ベンゼンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,3−ナフタレンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,2’−ビフェニルジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(5−フルオロ−2−オレート−1−ベンゼンスルホン酸−O,O’)ホウ酸リチウム等が挙げられる。イミド塩類としては、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム((CF3SO22NLi)、トリフルオロメタンスルホン酸ノナフルオロブタンスルホン酸イミドリチウム(LiN(CF3SO2)(C49SO2))、ビスペンタフルオロエタンスルホン酸イミドリチウム((C25SO22NLi)等が挙げられる。電解質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また非水電解液には、添加剤として負極上で分解してリチウムイオン伝導性の高い被膜を形成し、充放電効率を高くすることができる材料を含んでいてもよい。このような機能を持つ添加剤としては、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、4−メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4−エチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、4−プロピルビニレンカーボネート、4,5−ジプロピルビニレンカーボネート、4−フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジビニルエチレンカーボネート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、およびジビニルエチレンカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。なお、上記化合物は、その水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよい。電解質の非水溶媒に対する溶解量は、0.5〜2モル/Lの範囲内とすることが好ましい。
さらに、非水電解液には、過充電時に分解して電極上に被膜を形成し、電池を不活性化する公知のベンゼン誘導体を含有させてもよい。ベンゼン誘導体としては、フェニル基およびフェニル基に隣接する環状化合物基を有するものが好ましい。環状化合物基としては、フェニル基、環状エーテル基、環状エステル基、シクロアルキル基、フェノキシ基などが好ましい。ベンゼン誘導体の具体例としては、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、ジフェニルエーテルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、ベンゼン誘導体の含有量は、非水溶媒全体の10体積%以下であることが好ましい。
本実施形態の正極活物質に含まれるLiFは比較的不溶性である。LiFのフッ化物イオンとリチウム含有遷移金属化合物との反応を促進するために、非水電解液は、電解質溶液中でのLiFのイオン化及び溶解度を上昇させるアニオンレセプターをさらに含んでもよい。
アニオンレセプターは、アニオンをトラップすることで、結果として、非水電解液に溶けないようなLi塩(LiF、Li2Oなど)を解離する物質である。ここでは、アニオンレセプターは、F-を結合することによって非水性溶媒中でのLiFの導電率を上昇させる。アニオンレセプターとしては、特に限定しないが、負の電荷を持ったアニオンを受け入れ、アニオンになることができる物質を用いることができる。
アニオンレセプターは、例えば、米国特許第5705689号及び米国特許第6120941号(アザ−エーテル系化合物);米国特許第6022643号(フッ化ホウ素系化合物);米国特許第6352798号(フェニルホウ素系化合物)に開示されている。参考のため、これらの米国特許の開示内容の全てを本明細書に援用する。
アニオンレセプターの機能について、3価のホウ素化合物(B(−R)3、B(−OR)3)を例に説明する。上記ホウ素化合物におけるRは、芳香族であってもよいし、脂肪族であってもよい。脂肪族の中でも、例えばアルキル基、アルコキシ基などであり得る。B(−R)3、B(−OR)3は、ホウ素上に6つの電子しかもたないため、F-などの電子対を受容して、アニオンになり得る。このとき、ホウ素化合物がルイス酸、F-がルイス塩基として働く。ホウ素化合物のルイス酸性度が高いほど、アニオンレセプターとしてLiF、Li2OのようなLi塩を溶解する能力が高くなる。この例では、B(−R)3の方が、B(−OR)3よりもルイス酸性度が高く、アニオンレセプターとしてのLi溶解能が高い。B(−OR)3では、酸素の負電荷により、ホウ素(B)がアニオン(負)になりにくいからである。
非水電解液1リットルあたりのアニオンレセプターの添加量は、特に限定しないが、例えば0.001mol/L以上1mol/L以下であってもよい。0.001mol/L以上であれば上記の効果が得られる。好ましくは、0.01mol/L以上である。また、アニオンレセプターの添加量は、非水電解液の飽和限界値以下であることが好ましい。例えばアニオンレセプターとしてテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン(TPFPB)を用い、非水電解液としてフルオロエチレンカーボネート(FEC)、エチレンカーボネート(EC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を1:1:6の体積比で混合し、そこに非水溶媒を用いる場合、アニオンレセプターの飽和限界値は0.1mol/L程度になる。
以下、本実施形態を、実施例に基づいて説明する。
(実施例1)
図1は、実施例1のコイン型電池の断面図である。
実施例1のコイン型電池は、正極3は、正極集電体1と、正極集電体1の上に形成された、正極活物質を含む正極合剤22とを有している。負極6は、負極集電体4と、負極集電体4の上に形成された、負極活物質を含む負極合剤層5とを有している。正極3と負極6とは、セパレータ7を介して、正極合剤層2と負極合剤層5とが対向するように配置され、電極群を構成している。電極群は外装8で覆われている。
次に、実施例1のコイン型電池の製造方法を説明する。
(1)正極活物質の作製
本実施例では、リチウム含有遷移金属化合物として、LiMnPO4で表される化合物(以下、「LiMnPO4」)を作製した。まず、リチウム、マンガン源およびリン酸源を等モルずつそれぞれ別の容器に量り取り、蒸留水に溶解させた。次いで、これら3種類の溶液を混合して混合液を得た。得られた混合液を、スプレードライ装置に導入して噴霧乾燥させることにより、原料粉体を調製した。得られた原料粉体を、不活性雰囲気中、350℃の温度で1時間熱分解させた。続いて、不活性雰囲気中、550℃の温度で8時間焼成した。このようにして、LiMnPOが作製された。なお、リチウム源としては、酢酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム等を用いることができる。マンガン源としては、酢酸マンガン、硝酸マンガン等があり、リン酸源としては、リン酸、ポリリン酸、5酸化2リン、(NH4)H2PO4、(NH42HPO4、(NH43PO4等を用いることができる。
上記方法で作製したLiMnPO4と、LiF(関東化学株式会社製、純度98.0%)とをLiMnPO4:LiF=1:1のモル比率で、総量が2gとなるように秤量した。これらを粉砕機で4時間粉砕混合し、粉末状の活物質を得た。粉砕機として、ハイエナジーボールミル(SPEX製、8000M)を用いた。得られた活物質の平均粒径は500μm程度であった。
(2)正極板の作製
70重量部の上記活物質に、導電剤として20重量部のアセチレンブラックと、結着剤として10重量部のN−メチルピロリドン(NMP)と、適量のポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを混合し、正極合剤を含むペーストを得た。このペーストを、集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥後、圧延した。これにより、正極活物質層を備えた厚さ60μmの正極板を得た。この正極板を打ち抜くことによって、直径12.5mmの円形状の正極を得た。
(3)負極板の作製
厚さ300μmのリチウム金属箔を打ち抜くことによって、直径14.0mmの円形状の負極を得た。
(4)非水電解液の調製
フルオロエチレンカーボネート(FEC)、エチレンカーボネート(EC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を1:1:6の体積比で混合して非水溶媒を得た。この非水溶媒に、LiPF6を1.0mol/リットルの濃度で溶解させた。また、アニオンレセプターとしてテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン(TPFPB)を0.05mol/リットル添加した。このようにして、非水電解液を得た。
(5)コイン電池の作製
セパレータ(セルガード社製、セルガード(登録商標)2320、厚さ25μm)に非水電解液を染み込また。次いで、露点が−50℃に管理されたドライボックスの中で、正極、負極およびセパレータを用いて、CR2032規格のコイン型電池を作製した。作製した電池を電池Aとした。セルガード(登録商標)2320は、ポリプロピレン層、ポリエチレン層及びポリプロピレン層で形成された3層セパレータである。
(実施例2)
非水電解液に、アニオンレセプター(TPFPB)を溶解させないこと以外、電池Aと同様にしてコイン電池を作製した。作製した電池を電池Bとした。
(比較例1)
比較例1では、正極活物質として、実施例1と同様の方法で得られたLiMnPO4(総量2g)を粉砕して得られた粒子状の活物質を用いた。
正極活物質を作製する際にLiMnPO4にLiFを混合しない点以外、電池Aと同様にしてコイン型電池を作製した。作製した電池を電池Cとした。
(電池の評価)
以上のようにして得られた電池A〜Cの充電容量及び放電容量を測定した。具体的には、室温環境下にて、0.08mAの電流で、電圧が4.8Vに達するまで定電流充電を行った後、さらに4.8Vの電圧で電流値が0.016mAとなるまで定電圧充電を行った。この後、0.08mAの電流で、放電終止電圧を2.0Vとして定電流放電を行った。この充放電における放電容量(初回放電容量)を測定した。
測定結果を表1に示す。
Figure 2016004708
表1に示すように、実施例1の電池Aの初回放電容量は、122mAh/gであった。また、実施例2の電池Bの初回放電容量は、117mAh/gであった。一方、比較例1の電池Cの初回放電容量は92mAh/gであった。
この結果から、電池Aおよび電池Bは、比較例1の電池Cよりも大きい放電容量を有することが分かった。従って、LiMnPO4とLiFとの電気化学的反応を利用することにより、LiMnPO4のみからなる活物質よりも高い容量の正極活物質が得られることが確認された。また、電池Aが電池Bよりも高い放電容量を有することから、非水電解液にアニオンレセプターを添加することにより、より効果的に高容量化できることが分かった。
また、実施例1の電池Aの初回充電容量は186mAh/gであった。この結果から、電池Aでは、1.26電子反応に相当する電気化学容量が得られることが分かった。LiMnPO4とLiFとの電気化学的な反応により、LiMnPO4の理論容量を超える容量が得られたと推測される。
上記実施例および比較例では、粉砕機を用いて正極活物質を作製したが、他の方法でも作製できる。また、正極活物質の粒子サイズも上記実施例の粒子サイズに限定されない。以下、粉砕機を用いずに正極活物質を作製した例を説明する。
(実施例3)
本実施例では、正極活物質を次のようにして作製した。実施例1と同様の方法で得られたLiMnPO4と、LiF(関東化学株式会社製、純度98.0%)とをLiMnPO4:LiF=1:1のモル比率で、総量が1gとなるように秤量した。これらを乳鉢で15分間粉砕混合し、粉末状の活物質を得た。活物質の平均粒径は2μm程度であった。
正極活物質を作製する際の粉砕混合方法以外は、電池Aと同様にしてコイン型電池を作製した。作製した電池を電池Dとした。実施例1、2と同様の方法で、電池Dの充放電を行い、初回放電容量を測定した。初回放電容量は80mAh/gであった。
(比較例2)
比較例2では、LiMnPO4にLiFを混合しない点以外、実施例3と同様の方法で正極活物質を作製した。具体的には、LiMnPO4(総量1g)を、実施例3と同様の方法で乳鉢を用いて粉砕し、粒子状の活物質を得た。活物質の平均粒径は2μm程度であった。
上記の活物質を用いてコイン型電池を作製した。作製した電池を電池Eとした。実施例1、2と同様の方法で、電池Eの充放電を行い、初回放電容量を測定した。初回放電容量は69mAh/gであった。
この結果、LiMnPO4にLiFを混合した正極活物質を用いた電池Dでは、LiMnPO4にLiFを混合していない正極活物質を用いた電池Eよりも、高い初回放電容量を有することが分かった。これは、電池Dの正極活物質では、LiMnPO4とLiFとの電気化学的反応が生じ、これによって容量が高められたからと考えられる。従って、LiMnPO4およびLiFの粒径が大きい場合(ここでは2μm程度)でも、LiMnPO4とLiFとの電気化学的反応が生じ得ることが確認された。
なお、電池Dの正極活物質でも、上記電気化学的反応(コンバージョン反応)が生じたと考えられる理由は次のとおりである。上記電気化学的反応が生じていないと仮定すると、LiMnPO4に添加されたLiFによって、上述した式(1)に示すLiMnPO4の充電反応が阻害される。この結果、容量が低下すると考えられる。これに対し、電池Dの容量は低下せず、むしろ電池Eの容量よりも高くなった。このことから、電池Dでは、1電子反応を超える容量は得られなかったものの、上述した式(2)に示す電気化学的反応が生じていると推察できる。
電池Dの初回放電容量は、電池A、BおよびCの初回放電容量よりも小さくなった。これは、他の電池と比べて、正極活物質の粒子サイズが大きいので、Liイオン拡散係数が小さいからと考えられる。
また、電池Dの正極活物質では、粒子サイズが大きいので、LiMnPO4とLiFとの接触面積が小さい。このため、電池Aの正極活物質と比べて、LiMnPO4とLiFとの反応は生じ難いと推測される。従って、電池Dの正極活物質における、LiMnPO4とLiFとの電気化学的反応に起因する容量改善効果は、電池Aの正極活物質における容量改善効果よりも小さいと考えられる。
上記実施例ではコイン型の電池を用いたが、円筒型や角型などの形状の異なる電池を用いても同様の効果が得られる。また、上記実施例では、リチウム含有遷移金属化合物としてLiMnPO4で表される組成を有する化合物を用いたが、LiMePO4(Meは、少なくとも一部にMn、Co、Feからなる群より選択される少なくとも1種を含む)で表される組成を有する他の化合物を用いてもよい。同じ内殻構造を持つ3d遷移金属系列の中でも、FeおよびCoは、Mnと隣り合う元素であり、Mnに似た化学的性質を有する。このため、上記組成式で示されるリチウム含有遷移金属化合物は、LiFとコンバージョン反応を生じ得るので、上記の実施例と同様の効果が得られる。
本発明の一態様に係るリチウムイオン二次電池は、携帯電話、PDA、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、携帯ゲーム機などの携帯用電子機器の電源に用いることができる。本発明の一態様に係るリチウムイオン二次電池は、電気自動車、ハイブリッド自動車などの車両の駆動用電源に用いることができる。
1 正極集電体
2 正極合剤層
3 正極
4 負極集電体
5 負極合剤層
6 負極
7 セパレータ
8 外装

Claims (12)

  1. LiMePO4(Meは、少なくとも一部にMn、Co、Feからなる群より選択される少なくとも1種を含む)で表される組成を有するリチウム含有遷移金属化合物を主として含む粒子と、
    フッ化リチウムを主として含む粒子と
    を備えるリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  2. Li(1-x)MnPO4F(0≦x≦1)で表される組成を有する化合物をさらに含む、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  3. 前記フッ化リチウムに対する前記リチウム含有遷移金属化合物のモル比は0.5以上2.0以下である請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  4. 前記リチウム含有遷移金属化合物を主として含む粒子および前記フッ化リチウムを主として含む粒子の平均粒径は1μm以下である、請求項1から3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  5. リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極活物質を有する正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を有する負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、リチウムイオン伝導性を有する電解質とを備え、
    前記正極活物質は、LiMePO4(Meは、少なくとも一部にMn、Co、Feからなる群より選択される少なくとも1種を含む)で表される組成を有するリチウム含有遷移金属化合物を主として含む粒子と、フッ化リチウムを主として含む粒子とを備える、リチウムイオン二次電池。
  6. Li(1-x)MnPO4F(0≦x≦1)で表される組成を有する化合物をさらに含む、請求項5に記載のリチウムイオン二次電池。
  7. 前記フッ化リチウムに対する前記リチウム含有遷移金属化合物のモル比は0.5以上2.0以下である請求項5または6に記載のリチウムイオン二次電池。
  8. 前記リチウム含有遷移金属化合物を主として含む粒子および前記フッ化リチウムを主として含む粒子の平均粒径は1μm以下である、請求項5から7のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
  9. 前記電解質は非水電解液であり、前記非水電解液は、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピオン酸メチル、フルオロベンゼン、フルオロエチルメチルカーボネート及びフルオロジメチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素溶媒を含む、請求項5から8のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
  10. 前記電解質は非水電解液であり、前記非水電解液はアニオンレセプターを含む、請求項5から9のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
  11. リチウム含有遷移金属化合物を主として含む粒子とフッ化リチウムを主として含む粒子とを含む正極活物質を製造する方法であって、
    LiMePO4(Meは、少なくとも一部に、Mn、Co、Feからなる群より選択される少なくとも1種を含む)で表される組成を有するリチウム含有遷移金属化合物と、フッ化リチウムとを準備する工程(A)と、
    前記リチウム含有遷移金属化合物とフッ化リチウムとを粉砕することにより、リチウム前記含有遷移金属化合物を主として含む粒子と前記フッ化リチウムを主として含む粒子とを得る工程(B)と
    を包含するリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  12. 前記工程(B)は、前記リチウム含有遷移金属化合物と前記フッ化リチウムとの混合物を粉砕機で粉砕する工程を含む、請求項11に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
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