JP2016002703A - 3d造形用組成液、3d造形用インクセットおよび3d造形物の製造方法 - Google Patents

3d造形用組成液、3d造形用インクセットおよび3d造形物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】紫外線照射によって硬化させることができ、さらには高い靱性が得られる3D造形物が得られる3D造形用組成液、および、それを用いた3D造形物の製造方法を提供すること。
【解決手段】エチレン重合性基を有する単官能モノマーと、少なくとも一つのエチレン重合性基を含む多官能モノマーと、光開始剤とを含有する3D造形用組成液であって、前記多官能モノマーは、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基からなる群から選択される少なくとも一の官能基を有する、分子量が1000以下の第1のモノマー、ならびに芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基のいずれも有さない、分子量が1000以下の第2のモノマーを少なくとも含有し、前記組成液は、カチオン重合性の化合物を実質的に含有しない、組成液。
【選択図】図2

Description

本発明は、3D造形用光組成液、3D造形用インクセットおよび3D造形物の製造方法に関する。
近年、3D造形物を製造する方法として、液体状の光硬化組成物にレーザー光や紫外線を照射してその照射部分を硬化・積層させる方法や、インクジェットにより基材上に光硬化組成物を着弾させ、着弾した光硬化組成物に紫外線を照射して硬化させる方法が広く知られている。
最近では、3D造形物の試作段階において、試作品の形状だけでなく機能についても確認したいという要望がある。特にABSライクの材料を用いた試作品について、ABS並みの靱性を持った造形物で性状を確認したいという要望がある。
靱性とは、高い剛性と降伏後伸びることによる破断しにくさとを併せもつ性質で、靱性が高い高分子としては、たとえばABS樹脂のように堅いポリスチレンアクリロニトリル樹脂にブタジエンゴムを配合することにより達成するゴム添加型樹脂、ならびに、ポリエチレンテレフタレートおよびポリカーボネート樹脂のように、剛直で分子間相互作用が強い高分子が上げられる。しかし、光硬化による3D造形法では、モノマーを重合させて造形物を製造するため、上記の樹脂と同じように別のゴムを配合する製造方法は採用できない。たとえば、ゴムを配合したモノマーを光重合で3D造形物を作成しても、靱性が低いものしかできなかった。
高い靱性を有する3D造形物を得る方法としては、カチオン重合系とラジカル重合系を併用して、硬化速度の違いを用いて硬化物内で相分離を起こさせる方法がある(特許文献1、特許文献2)。
一方、UVインクジェットを用いて高強度の光造形物を得る方法としては、特許文献3に、光硬化感度を高めつつ、不要な硬化が起きるのを防ぐために、多官能アクリレートと連鎖移動材のチオール化合物を用いる方法が記載されている。
特開2013−151703号公報 特開2013−166893号公報 特表2007−530724号公報 特開2012−255045号公報 特開2012−219255号公報
特許文献1や特許文献2に記載のように、カチオン重合系とラジカル重合系とを併用した組成物を用いて3D造形物を製造しようとすると、ラジカル重合系を単独で用いる場合よりも光硬化感度が低下するため、紫外線では組成物が硬化せず、高価なレーザー光を用いなければならない。そのため、製造コストが高くなるという欠点があった。
また、特許文献3に記載の方法では、多官能アクリレートを多く用いるため、高い剛性は得られているものの、伸びはほとんどなく、靱性が低い造形物に留まっていた。
上記の問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、紫外線照射によって硬化させることができ、さらには高い靱性が得られる3D造形物が得られる3D造形用組成液、それを含む3D造形用インクセット、および、それを用いた3D造形物の製造方法を提供することである。
上記の課題に鑑み、本発明の第一は、3D造形用組成液に関する。
[1]エチレン重合性基を有する単官能モノマーと、少なくとも一つのエチレン重合性基を含む多官能モノマーと、光開始剤とを含有する3D造形用組成液であって、前記多官能モノマーは、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基からなる群から選択される少なくとも一の官能基を有する、分子量が1000以下の第1のモノマー、ならびに、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基のいずれも有さない、分子量が1000以下の第2のモノマーを少なくとも含み、前記組成液は、カチオン重合性の化合物を実質的に含有しない、組成液。
[2]前記第1のモノマーの数平均分子量は前記第2のモノマーの数平均分子量よりも小さい、[1]に記載の組成液。
[3]前記第1のモノマーの質量/前記第2のモノマーの質量で表される質量比率は、40/60以上80/20以下であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の組成液。
[4]前記第1のモノマーおよび前記第2のモノマーが有する前記エチレン重合性基は、いずれも(メタ)アクリル基である、[1]〜[3]のいずれかに記載の組成液。
[5]前記第1のモノマーおよび前記第2のモノマーの少なくともいずれかは、前記エチレン重合性基として、ビニルエーテル基またはアリル基を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の組成液。
[6]剥離剤をさらに含有する、[1]〜[5]のいずれかに記載の組成液。
また、本発明の第二は、3D造形用インクセットに関する。
[7][1]〜[6]のいずれかに記載の組成液と、サポート材組成液とを含む、3D造形用インクセット。
また、本発明の第三は、3D造形物の製造方法に関する。
[8][1]〜[6]のいずれかに記載の組成液に活性光線を照射する工程を有する、3D造形物の製造方法。
本発明の3D造形用組成液または3D造形用インクセットを用いて3D造形物を造形することにより、紫外線照射によって硬化させることができ、さらには高い靱性を有し、壊れにくい3D造形物が得られる。また、本発明によれば、高い靱性を有して、壊れにくい3D造形物が得られる3D造形物の製造方法を提供することができる。
図1はUV−IJ法による3D造形システムの1態様を示す模式図である。 図2はUV−IJ法による3D造形物の製造方法のフロー図である。 図3はUV−IJ法による3D造形物の製造方法の工程(その一)の側面図である。 図4AはUV−IJ法による3D造形物の製造方法の工程(その二)の側面図および図4Bはその上面図である。 図5AはUV−IJ法による3D造形物の製造方法の工程(その三)の側面図および図5Bはその上面図である。 図6AはUV−IJ法による3D造形物の製造方法の工程(その四)の側面図および図6Bはその上面図である。 図7AはUV−IJ法による3D造形物の製造方法の工程(その五)の側面図および図7Bはその上面図である。 図8は本発明の3D造形物の製造方法により得られた3D造形物の斜視図である。
以下に、実施形態を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
1.3D造形用組成液
本発明の3D造形用組成液は、エチレン重合性基を有する単官能モノマーと、少なくとも一つのエチレン重合性基を含む多官能モノマーと、光開始剤とを含有する3D造形用組成液であって、前記多官能モノマーは、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基からなる群から選択される少なくとも一の官能基を有する、分子量が1000以下の第1のモノマー、ならびに芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基のいずれもを有さない、分子量が1000以下の第2のモノマーを少なくとも含み、前記組成液は、カチオン重合性の化合物を実質的に含有しない、組成液である。
1−1.エチレン重合性基を有する単官能モノマー
エチレン重合性基を有する単官能モノマー(以下、単に本発明の単官能モノマーともいう。)とは、1つのエチレン重合性基を有するモノマーである。
エチレン重合性基には、エチレン基、プロペニル基、ブテニル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリル基、アリルエーテル基、ビニルエーテル基、マレイル基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基、アセチルビニル基およびビニルアミド基などが含まれる。なお、本発明において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」、「メタクリル」の双方又はいずれかを意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」、「メタクリレート」の双方又はいずれかを意味する。
これらのうち、(メタ)アクリル基、ビニルエーテル基および(メタ)アクリルアミド基が好ましく、(メタ)アクリル基がさらに好ましい。
本発明の単官能モノマーは、単独で用いてもよいし、複数の種類を組み合わせて用いてもよい。
本発明の単官能モノマーの数平均分子量は、150〜1000とすることで、UV−IJ(ultraviolet-inkjet)法による3D造形物の製造時にインクジェット出射性を高めることができるほか、SLA(stereolithography)法による3D造形物の製造時に液体の対流を防いで硬化性を大きくし、破壊強度を高めることが可能となる。また、単官能モノマーの分子量を150〜600とすることで、インクジェット出射性および硬化性をさらに高めることができる。
3D造形用組成液中に含まれる本発明の単官能モノマーの比率は、特に限定されないが、組成液の全質量に対して50質量%〜95質量%であることが好ましく、65質量%〜90質量%であることがさらに好ましい。本発明の単官能モノマーの量を50質量%以上とすることで、柔軟性が生じて延びが付与され、本発明の単官能モノマーの量を90質量%以下とすることで、架橋ざれていない低分子物質が減るため剛性を高めることができる。
本発明の3D造形用組成液が含有することのできる前記(メタ)アクリル基を有する本発明の単官能モノマーの例には、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、オクチルアクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、n-ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエトキシエチルアクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル−フタル酸、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2-エチルヘキシルカルビトールアクリレート等が含まれる。
本発明の3D造形用組成液が含有することのできる前記アリルエーテル基を有する本発明の単官能モノマーの例には、フェニルアリルエーテル、o−,m−,p−クレゾールモノアリルエーテル、ビフェニル−2−オールモノアリルエーテル、ビフェニル−4−オールモノアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル、シクロヘキサンメタノールモノアリルエーテル等が含まれる。
本発明の3D造形用組成液が含有することのできる前記ビニルエーテル基を有する本発明の単官能モノマーの例には、ブチルビニルエーテル、ブチルプロペニルエーテル、ブチルブテニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、エチルエトキシビニルエーテル、アセチルエトキシエトキシビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、アダマンチルビニルエーテルなどが含まれる。
本発明の3D造形用組成液が含有することのできる前記マレイミド基を有する本発明の単官能モノマーの例には、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、n−ヘキシルマレイミドなどが含まれる。
本発明の3D造形用組成液が含有することのできる前記(メタ)アクリルアミド基を有する本発明の単官能モノマーの例には、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド等が含まれる。
1−2.少なくとも一つのエチレン重合性基を含む多官能モノマー
少なくとも一つのエチレン重合性基を含む多官能モノマー(以下、単に本発明の多官能モノマーともいう。)とは、多官能モノマーであって、前記重合性基として、少なくとも一つのエチレン重合性基を有するものをいう。本発明の3D造形用組成液には、本発明の多官能モノマーとして、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基からなる群から選択される少なくとも一の官能基を有する、分子量が1000以下の第1のモノマー(以下、単に第1のモノマーともいう。)、ならびに芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基のいずれも有さない、分子量が1000以下の第2のモノマー(以下、単に第2のモノマーともいう。)を少なくとも含有する。
本発明の3D造形用組成液は、組成液全体の質量に対して、5質量%以上50質量%以下の本発明の多官能モノマーを含有することができる。組成液全体量に対する本発明の多官能モノマーの含有量が5質量%以上であると、破壊強度を向上させるという効果がある。組成液全体の質量に対する本発明の多官能モノマーの含有量が50質量%以下であると、延びを向上させるという効果がある。本発明の多官能モノマーの含有量は、好ましくは10質量%以上30質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以上25質量%以下である。
本発明の3D造形用組成液は、第1のモノマーおよび第2のモノマーを含むことで、これを硬化して製造する3D造形物の靱性を高めることができる。靱性が高いとは、応力を付与した際の、高分子鎖が変性せずに耐える弾性領域を経由して降伏点に達したときの降伏応力が高く、加えて、応力をさらに付与した際に、高分子鎖が変形を起こし伸びる延性領域を経由して、高分子鎖が耐え切れずに破断するときの、破壊伸度および破壊強度が大きいことをいう。
破断は、変形された局所に応力が集中して生じるものであるから、複数の箇所に応力を分散させることで、破壊伸度および破壊強度を高めることができる。
第1のモノマーは、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基を有しているので、水素結合、π−π結合、立体障害などの、分子間相互作用が大きい架橋部を形成することができる。この、第1のモノマーにより架橋された架橋部は、応力負荷により高分子鎖が引っ張られるときに、強い分子間相互作用により、強い抵抗として働くため、降伏応力を高めることができる。また、降伏後の高分子鎖がずれても、第1のモノマー同士が接近すると、この第1のモノマーによる架橋部は容易に再形成されるので、応力が分散されやすくなる。
一方、第2のモノマーは、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基などの分子間相互作用を奏する官能基を有していないので、第2のモノマーにより架橋された架橋点では、応力を負荷された時に、高分子鎖のずれが生じやすくなる。第2のモノマーによる架橋部において、高分子鎖がずれることによっても、応力が分散されやすくなる。
本発明では、以上のメカニズムにより、これら2つのモノマーを併用することによって応力が広く分散されるため、靱性を向上させることができると考えられる。
このとき、第1のモノマーの数平均分子量が第2のモノマーの数平均分子量よりも小さくなるように、第1のモノマーおよび第2のモノマーを選択することにより、さらに靱性を向上させることができる。分子間相互作用が強い第1のモノマーの長さを、分子間相互作用が少ない第2のモノマーの長さよりも短くすることで、応力が負荷された際に、分子間相互作用が強い第1のモノマーによる架橋部が優先的に切れやすくなる。このとき、第1のモノマーによる架橋部が切れて降伏が生じた後に、分子間相互作用が弱いため良く伸びる第2のモノマーによる架橋部が残ることで、降伏後の延びが得られるために、靱性がより高くなったものと考えられる。
また、本発明の3D造形用組成液に含まれる、前記第1のモノマーの質量と前記第2のモノマーの質量との質量比率(前記第1のモノマーの質量/前記第2のモノマーの質量)は、40/60以上80/20以下であることが好ましい。この質量比率を40/60以上とすることで、第1のモノマーの量を多くして降伏強度を高くすることができ、この質量比率を80/20以下とすることで、第2のモノマーの量を多くして延びを高くすることができる。
1−2−1.第1のモノマー
第1のモノマーは、少なくとも一つの重合性基を有する多官能モノマーであって、前記重合性基として、少なくとも一つのエチレン重合性基を有し、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基からなる群から選択される少なくとも一の官能基をさらに有する、分子量が1000以下のモノマーである。なお、脂環式炭化水素基は飽和脂環式炭化水素基でも不飽和脂環式炭化水素基でもよい。
エチレン重合性基には、前記本発明の単官能モノマーと同様に、エチレン基、プロペニル基、ブテニル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリル基、アリルエーテル基、ビニルエーテル基、マレイル基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基、アセチルビニル基およびビニルアミド基などが含まれる。これらのうち、(メタ)アクリル基、アリルエーテル基、ビニルエーテル基および(メタ)アクリルアミド基が好ましい。第1のモノマーが有するエチレン重合性基は、本発明の単官能モノマーが有するエチレン重合性基と同一の官能基であってもよいし、異なる官能基であってもよい。
第1のモノマーは、上記したエチレン重合性基によって他のモノマー(本発明の単官能モノマー、第1のモノマー、第2のモノマーまたはその他の本発明の3D造形用組成液が含有するモノマー)と重合することができる。第1のモノマーが有する、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基または二級アミド基は、重合時に上記の第1のモノマーによる架橋部を形成する。
また、第1のモノマーは、分子量を150以上1000以下とすることで、剛性を高めることができる。第1のモノマーの分子量は、好ましくは160以上600以下であり、さらに好ましくは160以上400以下である。
本発明の3D造形用組成液が含有することのできる、(メタ)アクリル基を有する第1のモノマーの例には、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジ(メタ)アクリレートおよびシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が含まれる。
本発明の3D造形用組成液が含有することのできる、アリルエーテル基を有する第1のモノマーの例には、フタル酸ジアリルエーテル、イソフタル酸ジアリルエーテル、ジメタノールトリシクロデカンジアリルエーテルおよび1,4-シクロヘキサンジメタノールジアリルエーテル等が含まれる。
本発明の3D造形用組成液が含有することのできる、ビニルエーテル基を有する第1のモノマーの例には、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジビニルエーテル。ビスフェノールAのEO付加物ジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ノルボルニルジメタノールジビニルエーテル、ジビニルレゾルシンおよびジビニルハイドロキノン等が含まれる。
本発明の3D造形用組成液が含有することのできる、(メタ)アクリルアミド基を有する第1のモノマーの例には、ビスメチレンアクリルアミド、ジ(エチレンオキシ)ビスプロピルアクリルアミド、トリ(エチレンオキシ)ビスプロピルアクリルアミドおよび以下に例示する特開2013−208890号公報に記載の重合性モノマー2等が含まれる。
Figure 2016002703
1−2−2.第2のモノマー
第2のモノマーは、少なくとも一つの重合性基を有する多官能モノマーであって、前記重合性基として、少なくとも一つのエチレン重合性基を有し、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基のいずれも有さない、分子量が1000以下のモノマーである。
エチレン重合性基には、前記本発明の単官能モノマーと同様に、エチレン基、プロペニル基、ブテニル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリル基、アリルエーテル基、ビニルエーテル基、マレイル基およびアセチルビニル基などが含まれる。第2のモノマーが有するエチレン重合性基は、本発明の単官能モノマーが有するエチレン重合性基と同一の官能基であってもよいし、異なる官能基であってもよい。また、第2のモノマーが有するエチレン重合性基は、第1のモノマーが有するエチレン重合性基と同一の官能基であってもよいし、異なる官能基であってもよい。
第2のモノマーは、エチレン重合性基を2つ以上有することが好ましい。第2のモノマーは、1のエチレン重合性基によって他のモノマー(本発明の単官能モノマー、第1のモノマー、第2のモノマーまたはその他の本発明の3D造形用組成液が含有するモノマー)と重合することができる。第2のモノマーは、他のエチレン重合性基によって、重合時に上記の第2のモノマーによる架橋部を形成する。
また、第2のモノマーは、分子量を150以上1000以下とすることで、弱い力でも伸びが発生することを防ぎ、靱性を高めることができる。分子量は、好ましくは160以上600以下であり、さらに好ましくは180以上500以下である。
本発明の3D造形用組成液が含有することのできる、(メタ)アクリル基を有する第2のモノマーの例には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートおよびポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の二官能モノマー;ならびに
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート等の三官能以上の多官能モノマー等が含まれる。
本発明の3D造形用組成液が含有することのできる、ビニルエーテル基を有する第2のモノマーの例には、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールビニルエーテル、ブチレンジビニルエーテル、ジブチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、グリセリンエチレンオキシド付加物トリビニルエーテル(エチレンオキシドの付加モル数6)、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリビニルエーテルエチレンオキシド付加物トリビニルエーテル(エチレンオキシドの付加モル数3)、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンヘキサビニルエーテルおよびそれらのオキシエチレン付加物等が含まれる。
本発明の3D造形用組成液が含有することのできる、アリルエーテル基を有する第2のモノマーの例には、アルキレン(炭素数2〜5)グリコールジアリルエーテル、及びポリエチレングリコールジアリルエーテルなどが挙げられる。また、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル及びポリグリセリン(重合度2〜5)ジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル及びテトラアリルオキシエタンなどが含まれる。また、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジグリセリントリアリルエーテル、ソルビトールトリアリルエーテルおよびポリグリセリン(重合度3〜13)ポリアリルエーテルなどが含まれる。
1−2−3.第1のモノマーと第2のモノマーとの組みあわせ
第1のモノマーおよび第2のモノマーの組み合わせは特に限定されず、いかなる組み合わせとしてもよい。
前記第1のモノマーが有する前記エチレン重合性基および前記第2のモノマーが有する前記エチレン重合性基が、いずれも(メタ)アクリル基であると、光硬化感度が高く、少ないエネルギーで造形ができる。
一方、前記第1のモノマーおよび前記第2のモノマーの少なくともいずれかが、前記エチレン重合性基としてビニルエーテル基またはアリル基を含む化合物であると、製造した3D造形物の延びをさらに高めることができる。これは、ビニルエーテル基またはアリル基は重合が遅いために、単官能のモノマーの重合が進むため、架橋部間距離が長くなり、延びが大きくなるものと考えられる。
1−3.光開始剤
光開始剤としては、光ラジカル開始剤を用いることができる。
光ラジカル開始剤には、開裂型と水素引き抜き型とがある。本発明の3D造形用組成液は、少なくとも開裂型の光開始剤を含むことが好ましい。つまり、本発明の3D造形用組成液は、(a)開裂型と水素引き抜き型の両方の光開始剤を含有していてもよく、(b)開裂型の光開始剤のみを含有していてもよい。所望の効果に応じて、用いる光開始剤の種類を適宜使い分ければよい。
3D造形用組成液が、(a)開裂型と水素引き抜き型の両方の光開始剤を含有している場合は、開裂型の開始剤を質量比として多く含有していることが好ましい。光開始剤における水素引き抜き型開始剤の割合は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
3D造形用組成液中に光開始剤として開裂型と水素引き抜き型の両方の種類の重合開始剤を含有していると、3D造形用組成液の硬化速度が上昇する。この理由は定かではないが、開裂型と水素引き抜き型の光開始剤が並存すると、水素引き抜き型の重合開始剤が増感剤のような役割を果たすために重合速度が向上するものと考えられる。これは通常の印刷に比べ、はるかに大きな時間を要する3D造形物の製造において、重要である。
3D造形用組成液が、(b)開裂型の光開始剤のみを含有している(水素引き抜き型の開始剤を含有していない)場合には、(a)開裂型と水素引き抜き型の両方の光開始剤を含有している場合と比較して、3D造形用組成液の硬化物の伸びまたは弾性が向上することがある。この理由は定かではないが、以下のように考えることができる。単官能モノマーの重合により得られる線状高分子間で、水素引き抜き型の重合開始剤によってグラフト反応が発生すると、不規則な架橋が生じることがある。架橋が規則的であれば、硬化物を伸長させた際に均一に力を受けるため、高い伸縮性を維持することができる。ところが、硬化物中に不規則な架橋があると、硬化物を伸長させた際に組成物中の特定の部位に応力が集中する。そのため、架橋部位または線状高分子鎖の破断を招くために、かえって伸びまたは弾性が低下すると考えられる。
そのため、3D造形物の作製スピードを早めることが求められる場合には、3D造形用組成液に、(a)開裂型と水素引き抜き型の両方の種類の重合開始剤を含有させることが好ましい。一方、硬化物の耐久性を重視する場合には、(b)開裂型の光開始剤のみを含有させる(水素引き抜き型の光開始剤を実質的に含有させない)ことが好ましい。
開裂型の光開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類;2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系;ベンジルおよびメチルフェニルグリオキシエステルなどが含まれる。
水素引き抜き型の光開始剤の例には、ベンゾフェノン類(ベンゾフェノン、N,N-ジエチルベンゾフェノン、等)、チオキサントン類(2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、イソプロポキシクロロチオキサントン等)、アントラキノン類(エチルアントラキノン、ベンズアントラキノン、アミノアントラキノン、クロロアントラキノン等)、アクリジン類(9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9'-アクリジニル)ヘプタン等)等が含まれる。
3D造形用組成液における光開始剤の含有量は、活性光線や本発明で用いる各種モノマーの種類などにもよるが、0.01質量%〜10質量%であることが好ましい。
1−4.剥離剤
本発明の3D造形用組成液には、その硬化物と後述のサポート材組成液の硬化物との剥離を容易にするために、さらに剥離剤を含んでもよい。剥離剤は、インクの全質量に対して0.01質量%〜3.0質量%含有することが好ましい。0.01質量%未満では基材との剥離性が低下し、3.0質量%を超えると、硬化前の3D造形用組成液の液滴が合一しやすくなり、インク滲みの原因となることがある。
剥離剤としては、シリコン界面活性剤、フッ素界面活性剤、セバシン酸ステアリルのような高級脂肪酸エステル等が挙げられるが、好ましくは、シリコン界面活性剤である。また、剥離剤は、3D造形用組成液および下記で述べるサポート材組成液のうちいずれかに含有させればよいが、両方に含有させることがより好ましい。
1−5.他のインク成分
本発明の3D造形用組成液には、必要に応じて光開始助剤や重合禁止剤などがさらに含まれていてもよい。光開始助剤は、たとえば第3級アミン化合物であってよく、芳香族第3級アミン化合物が好ましい。芳香族第3級アミン化合物の例には、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステル、N,N-ジヒドロキシエチルアニリン、トリエチルアミンおよびN,N-ジメチルヘキシルアミン等が含まれる。なかでも、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステルが好ましい。3D造形用組成液に、これらの化合物が、一種のみ含まれていてもよく、二種類以上が含まれていてもよい。
重合禁止剤の例には、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-t-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等が含まれる。
また、本発明の3D造形用組成液には、前記本発明の単官能モノマー、第1のモノマーまたは第2のモノマー以外の重合性化合物が含まれていてもよい。含まれていてもよい重合性化合物には、上記したもの以外のモノマー、重合度が2〜20であり重合性を有するオリゴマーおよび重合性を有するポリマー等が含まれる。
なお、本発明の3D造形用組成液には、エポキシ基を有する化合物等の、カチオン重合性の化合物を実質的に含まないことが好ましい。なお、ビニルエーテル基はラジカル重合およびカチオン重合のいずれの重合もすることができるため、ここでいうカチオン重合性の化合物には含めない。カチオン重合性の化合物を実質的に含まないことで、光硬化感度の低下を防ぎ、紫外線でも組成液を硬化させることが可能となる。カチオン重合性の化合物を実質的に含まないとは、組成液の全質量に対して、カチオン重合性の化合物の含有比が1質量%以下であることを意味する。
本発明の3D造形用組成液をインクジェットヘッドより出射する場合は、3D造形用組成液の粘度は100mPa.s以下であることが好ましい。
2.3D造形用インクセット
本発明の3D造形用組成液を、後述するUV−IJ法による3D造形物の製造方法におけるモデル材組成液として用いる場合、モデル材組成液としての本発明の3D造形用組成液を、サポート材組成液とあわせて3D造形用インクセットとしてもよい。サポート材組成液は、後述する3D造形物の製造方法における一態様において、3D造形物の空間部分を形作り、モデル材組成液としての本発明の3D造形用組成液を製造中に支えるために用いることができる。3D造形用インクセットに含まれるサポート材組成液は、特に限定されないものの、熱溶融するもの、または光硬化性でその硬化物が水溶性であるか、または水膨潤性であるものが好ましい。また、サポート材組成液の硬化物と、モデル材組成液の硬化物とが剥離しやすいことが好ましい。
熱溶融するものとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、エステルワックス、アミドワックス、PEG20000などのワックス類が挙げられる。光硬化性でその硬化物が水溶性であるか、または水膨潤性であるものとは、例えば、光重合性官能基(炭素炭素不飽和基など)を有する水溶性化合物(水溶性モノマー)と、光開裂型開始剤と、水と、を主成分とする光硬化樹脂組成物でありうるが、特に限定されない。サポート材組成液には、さらに水溶性高分子が含まれていてもよい。
サポート材組成液に含まれる水溶性モノマーの例には、水溶性(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンジアクリレート、ポリオキシプロピレンジアクリレート、アクロロイルモルホリン、ヒドロキシアルキルアクリレート;水溶性のアクリルアミドとして、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミドなどが含まれる。サポート材組成液に含まれる水溶性高分子の例には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコールなどが含まれる。サポート材組成液に含まれる光開裂型開始剤の例には、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパン-1-オンなどが挙げられるが、特に限定されない。
サポート材組成液をインクジェットヘッドより出射する場合は、サポート材組成液の粘度は100mPa.s以下であることが好ましい。
3.3D造形物の製造方法
本発明の3D造形物の製造方法は、上記した3D造形用組成液に活性光線を照射する工程を含む。活性光線としては、特に限定されることはないが、紫外線、電子線、レーザー光などを用いることができる。
UV−IJ法では、インクジェットを用いて3D造形用組成液を基材に塗布して、基材に着弾した3D造形用組成液に活性光線を照射して硬化させる。その後、塗布と硬化を繰り返すことで、3D造形物を製造する。SLA法では、容器に入れられた3D造形用組成液に活性光線を照射して、照射された3D造形用組成液を硬化させる。その後、硬化された3D造形用組成液を一層分の厚さだけ降下させた後、再度活性光線を照射してその上の層を硬化させていく。
活性光線が紫外線である場合、活性光線照射部(紫外線照射手段)の例には、蛍光管(低圧水銀ランプ、殺菌灯)、冷陰極管、紫外レーザー、数100Pa〜1MPaまでの動作圧力を有する低圧、中圧、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプおよびLED(発光ダイオード)等が含まれる。硬化性の観点から、照度100mW/cm以上の紫外線を照射する紫外線照射手段;具体的には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプおよびLED等が好ましく、消費電力が少ない点から、LEDがより好ましい。具体的には、Phoseon Technology社製 395nm、水冷LEDを用いることができる。
活性光線が電子線である場合、活性光線照射部(電子線照射手段)の例には、スキャニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式等の電子線照射手段が含まれる。処理能力の観点から、カーテンビーム方式の電子線照射手段が好ましい。電子線照射手段の例には、日新ハイボルテージ(株)製の「キュアトロンEBC−200−20−30」、AIT(株)製の「Min−EB」等が含まれる。
活性光線が電子線である場合、電子線照射の加速電圧は、十分な硬化を行うためには、30〜250kVとすることが好ましく、30〜100kVとすることがより好ましい。加速電圧が100〜250kVである場合、電子線照射量は30〜100kGyであることが好ましく、30〜60kGyであることがより好ましい。
活性光線がレーザー光である場合、半導体励起固体レーザー、Arレーザー、He−Cdレーザーなどの紫外線レーザーを用いることができる。
本発明の3D造形用組成液は、カチオン重合性の化合物の含有量を実質的に含まないため、最もエネルギー負荷、装置負荷が少ない紫外線でも十分に硬化させることができる。したがって、紫外線以上にエネルギーが高い電子線、レーザー光を使用しても良いが、紫外線を用いることで、より安価で3D造形物を製造することができる。
3−1.UV−IJ法による3D造形物の製造方法
UV−IJ法による3D造形物の製造方法では、上述の3D造形用組成液を含むモデル材組成液と、サポート材組成液と、を用いることが好ましい。3D造形物の造形過程において、3D造形用組成液の硬化前後の物理的・化学的性質が変化する。そのため、上述の3D造形用組成液を含むモデル材組成液と後述するサポート材組成液とを用いることによって、モデル材組成液の形状を維持しながら製造していくことがより好ましい。3D造形用組成液の硬化物とサポート材組成液の硬化物とは、剥離が比較的容易である。
このとき、サポート材組成液をインクジェットで吐出して3D造形物の空間部分を形作り、モデル材組成液をインクジェットで吐出して3D造形物を形作る。サポート材組成液とモデル材組成液とを同時に吐出してもよいし、サポート材組成液を先に吐出して、その後モデル材組成液を吐出してもよい。インクジェットで吐出したサポート材組成液およびモデル材組成液の少なくとも一方を含む第nの膜を硬化させて第nの硬化層を形成し、その上に同様に吐出した第n+1の膜を硬化させると、第n+1の膜は、第nの硬化層とも接着して硬化するため、積層方向にも接着しながら硬化していく。こうしてすべての硬化層を形成したあと、サポート材組成液の硬化物を除去することで、目的の3D造形物を得ることができる。
UV−IJ法による具体的な製造方法の例は、3D造形物の各層におけるモデル材組成液およびサポート材組成液の吐出位置を表す複数の平面データに含まれる第1の平面データに基づいて、モデル材組成液およびサポート材組成液の少なくともいずれか一方をインクジェットヘッドのノズルから基材上に吐出して第1の膜を形成し、前記第1の膜を光硬化させて第1の硬化層を形成する工程と、前記複数の平面データに含まれる第n(nは2以上の整数)の平面データに基づいて、モデル材組成液およびサポート材組成液の少なくともいずれか一方をインクジェットヘッドのノズルから第n−1の硬化層上に吐出して第nの膜を形成し、第nの膜を光硬化させて第nの硬化層を形成する工程とを有し、第nの膜を形成し第nの硬化層を形成する工程を少なくとも1回以上行い、その後サポート材組成液を除去する工程をさらに有する。
なお、上記UV−IJ法による具体的な製造方法は、CAD(Computer Aided Design)データを3D造形用データであるSTL(Stereo Lithography)データに変換する工程、およびSTLデータに基づいて前記複数の平面データを作成する工程をさらに有していてもよい。また、購入する等の方法で入手したSTLデータまたは複数の平面データを用いてもよい。
3−2.UV−IJ法による3D造形システムおよび装置
図1には、UV−IJ法による3D造形システムの例の概要が示される。図1に示されるUV−IJ法による3D造形システムは、インクジェット部1に、上下(図面Z方向)に駆動する駆動手段(図示省略)を備えるステージ11と、左右(図面XY方向)に移動可能にレール(図示省略)上に配置された、モデル材組成液またはサポート材組成液を吐出するインクジェット装置12と、を有する。
インクジェット装置12は、モデル材組成液用インクジェットヘッド13と、サポート材組成液用インクジェットヘッド14と、膜厚調整用ローラ15と、光源16とを備える。モデル材組成液用インクジェットヘッド13およびサポート材組成液用インクジェットヘッド14は、それぞれ吐出用のノズルを有する。モデル材組成液用インクジェットヘッド13は、配管13aを介してポンプ13bと光硬化性組成物タンク13cに連通する。光硬化性組成物タンク13cには、本願発明の3D造形用組成液を含むモデル材組成液を入れることができる。サポート材組成液用インクジェットヘッド14は、配管14aを介してポンプ14bと光硬化性組成物タンク14cに連通する。光硬化性組成物タンク14cには、サポート材組成液を入れることができる。
図1に示すように、UV−IJ法による3D造形システムは、さらに演算制御部2と、CADデータ等の3D造形用データを入力するための入力装置4と、CADデータから変換されたSTLデータや、STLデータから得られたスライスデータを出力する出力装置5と、STLデータや仮想3D造形物等を表示する表示装置6と、3D造形物を製造するために必要な種々の情報、例えばロット番号と、CADデータ番号、STLデータ番号、モデル材組成液およびサポート材組成液を含む光硬化性組成物セットの番号等を関連付けて記録するための記憶装置3とを有する。
演算制御部2は、CADデータに基づいてSTLデータを算出するSTL演算手段21と、所望の3D造形物にあった光硬化性組成物セットを選択するよう情報を送るインクセット制御手段22と、ステージを駆動させる情報を送るステージ制御手段23と、モデル材組成液またはサポート材組成液を吐出させる情報を送るインクジェット制御手段24と、所望の厚さになるよう層を研磨する情報を送るローラ制御手段25と、吐出された光硬化性組成物を硬化させるために光照射するよう情報を送るUV光源制御手段26と、を備える。
演算制御部2は、CPU等の通常のコンピュータシステムで用いられる演算装置等で構成すればよい。入力装置4としては、例えばキーボード、マウス等のポインティングデバイスが挙げられる。出力装置5としては、例えばプリンタ等が挙げられる。表示装置6としては、例えば液晶ディスプレイ、モニタ等の画像表示装置等が挙げられる。記憶装置3としてはROM、RAM、磁気ディスクなどの記憶装置が使用可能である。
3−3.UV−IJ法による3D造形システムを用いた3D造形物の製造フロー
図1に示すUV−IJ法による3D造形システムを用いるUV−IJ法による3D造形物の製造方法について、図2のフロー図を参照しながら詳細に説明する。
(イ)ステップS101において、例えばCADデータを入力する。そしてステップS102において、CADデータを3D造形用データとしてのSTLデータに変換する。なお、STLデータから形成される仮想3D造形物を出力装置5上に表示して所望の形状が形成されるか否かを確認し、所望の形状が形成されない場合は、STLデータに修正を加えてもよい。
(ロ)ステップS103において、図3に示すように仮想3D造形物を図3のZ方向において複数の薄片状の層に微分割し、各層におけるモデル材組成液の吐出位置データを得る。また、各平面データにおいて、モデル材組成液を支持または固定するためのサポート材組成液の吐出位置データも併せて作成する。モデル材組成液のX,Y方向の周囲にサポート材組成液を吐出することで、いわゆるオーバーハング部分、例えば「K」の字の第二画目部分等を下方からサポート材組成液で支持することができる。モデル材組成液の吐出位置データとサポート材組成液の吐出位置データを同じ層ごとに組み合わせて、本発明における「第1の平面データD1、第2の平面データD2、…第Xの平面データDX」を得る。
(ハ)ステップS105において、仮想3D造形物のデータや複数の平面データに基づいて、最適な光硬化性組成物セットを用意する。
(ニ)ステップS108において、第1の平面データD1に基づき、駆動手段を作動させてステージとインクジェット装置との相対的な位置を合わせる。
(ホ)ステップS110において、図4に示すように、第1の平面データD1に基づいてインクジェットの位置を制御して、ステージ上の適切な位置にモデル材組成液(Ma)およびサポート材組成液(S)の少なくともいずれか一方をインクジェットヘッドのノズルから吐出していき、第1の膜を形成する。各ノズルから吐出される1滴あたりの液滴量は、画像の解像度にもよるが、1pl〜70plが好ましく、2〜50plがより好ましい。その後、ステップS112において、活性光線を照射して第1の膜を光硬化させて第1の硬化層を得る。なお、第1の硬化層の厚みが均一であるか否かを確認し、均一でない場合は厚い部分を研磨して、第1の硬化層の厚さを均一にすることが好ましい。なお、硬化後の各硬化層の厚さは、1〜25μm程度であることが好ましい。
活性光線の照射は、3D造形用組成液滴が記録媒体上に付着した後10秒以内、好ましくは0.001秒〜5秒以内、より好ましくは0.01秒〜2秒以内に行う。隣り合う3D造形用組成液滴同士が合一するのを抑制するためである。活性光線の照射は、1層分の3D造形用組成液を吐出した後に行われることが好ましい。
(ヘ)ステップS114において、形成すべき層がさらにあるかを判定する。形成すべき層がさらにある場合は、ステップS108に戻り、図5に示すように、ひとつの硬化層の厚さ分だけ、ステージ11の位置を下方(Z方向)に移動させる。その後、ステップS110、S112により第nの硬化層を第n−1の硬化層上に形成する。そして、図6、図7に示すように、最終層(第Xの硬化層)が積層されるまで、ステップS108、S110、S112、S114の手順を繰り返して複数の層を積層させる。ステップS114において、形成すべき層がこれ以上はない場合は、ステップS116に移行する。
(ト)ステップS116において、サポート材組成液の硬化物を除去する。例えば、サポート材組成液の硬化物を水で膨潤させて除去する。この除去工程と併せて、他の除去工程、例えばサポート材組成液の硬化物に高圧水を噴霧してモデル材の硬化物からサポート材組成液の硬化物を除去してもよい。
以上により、図8に示すような、3D造形物Mを作製することができる。
[実施形態の変形例]
以上に記載した実施形態においては、モデル材組成液用のインクジェットヘッドが1つの例を示したが、モデル材組成液用のインクジェットヘッド数は1つに制限されない。例えばモデル材組成液用に2つのインクジェットヘッドを設け、各インクジェットヘッドのノズルから物性が異なるモデル材組成液を同時に吐出し、モデル材組成液を混合させて複合材料として造形することもできる。
(実施例1)
(モデル材組成液の調製)
フェノキシエチルアクリレート 68.4質量部
イソボルニルアクリレート 10質量部
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(分子量304) 7質量部
ポリエチレングリコール(n=9)ジアクリレート (分子量542) 13質量部
シリコンオイル KF−969(信越化学社) 0.1質量部
2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(TPO) 1質量部
2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン(DETX) 0.5質量部
を混合加熱溶解して、モデル材組成液とした。
(サポート材組成液の調製)
ポリオキシエチレン(n≒9)ジアクリレート40gと、水60gと、光開始剤irgacure2959’(BASF社製)5gと、シリコン界面活性剤(TSF−4452)0.1gとを混合して溶解させサポート材組成液とした。
(3D造形物の製造)
ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、サポート材組成液を、コニカミノルタIJ社製のインクジェットヘッドKM512MHを用いて、サポート層を形成した。具体的には、1ドットあたりの液滴量を14plとし、720dpi×720dpiで液滴を出射した。着弾した液滴に、高圧水銀灯により光量400ml/cmの紫外線を照射して、硬化させる操作を繰り返して、10cm×2cm、厚さ1mmのサポート層を形成した。
形成したサポート層の上に、モデル材組成液を用いて、サポート層の作製と同じ方法で10cm×2cm、厚さ5mmのモデル層を形成した。次に、サポート層とモデル層との積層体を水に浸すことで、モデル層をポリエチレンテレフタレートフィルムとサポート層から分離させて、3D造形物(硬化膜)を得た。
(実施例2〜11、比較例1〜7)
モデル材組成液の組成を表1、表2および表3に記載のように変更し、それぞれについて同様の手順によって3D造形物を製造した。
[降伏強度、破壊伸びおよび破壊強度の測定]
室温で、走査方向、および積層方向に引張速度 20mm/minで一定荷重をかけて降伏強度、破壊時の破壊伸びおよび破壊強度を測定した。
[総合評価]
総合評価は以下の基準で行った。
○:降伏強度 25MPa以上、かつ、0.85<=破壊強度/降伏強度<=1.2 かつ 破壊伸び 5%以上
△:降伏強度 15MPa以上、かつ、0.6<=破壊強度/降伏強度<=1.7 かつ 破壊伸び 3%以上で、○以外のもの
×:降伏点までに破壊された場合、または、上記条件よりも悪い場合
Figure 2016002703
Figure 2016002703
Figure 2016002703
本発明の3D造形用組成液を用いて製造した3D造形物は、降伏強度、破壊強度および破壊伸びのバランスがよく、高い靱性を有していた。また、今回の実施例で検討したインクは、すべて出射性は良好であった。
本発明の3D造形用組成液は紫外線によって硬化することができ、その硬化物は高い靱性を有する。そのため、3D造形によって、好ましい特性を有する試作品を廉価に製造することができる。
1 インクジェット部
2 演算制御部
3 記憶装置
4 入力装置
5 出力装置
6 表示装置
11 ステージ
12 インクジェット装置
13 モデル材組成液用インクジェットヘッド
14 サポート材組成液用インクジェットヘッド
16 光源

Claims (8)

  1. エチレン重合性基を有する単官能モノマーと、少なくとも一つのエチレン重合性基を含む多官能モノマーと、光開始剤とを含有する3D造形用組成液であって、
    該多官能モノマーは、
    芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基からなる群から選択される少なくとも一の官能基を有する、分子量が1000以下の第1のモノマー、ならびに、
    芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、一級アミド基および二級アミド基のいずれも有さない、分子量が1000以下の第2のモノマーを少なくとも含み、
    該組成液は、カチオン重合性の化合物を実質的に含有しない、組成液。
  2. 前記第1のモノマーの数平均分子量は前記第2のモノマーの数平均分子量よりも小さい、請求項1に記載の組成液。
  3. 前記第1のモノマーの質量/前記第2のモノマーの質量で表される質量比率は、40/60以上80/20以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成液。
  4. 前記第1のモノマーおよび前記第2のモノマーが有する前記エチレン重合性基は、いずれも(メタ)アクリル基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成液。
  5. 前記第1のモノマーおよび前記第2のモノマーの少なくともいずれかは、前記エチレン重合性基として、ビニルエーテル基またはアリル基を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成液。
  6. 剥離剤をさらに含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成液。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成液と、サポート材組成液とを含む、3D造形用インクセット。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成液に活性光線を照射する工程を有する、3D造形物の製造方法。
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