JP2016000395A - 還元性有機物を原料とするフェントン反応触媒 - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、食品分野においては、食品に臭いの残らない殺菌法としてオゾン殺菌を挙げることができるが、オゾン生成装置は高価で大規模施設以外は導入が難しいという欠点がある。
これらの状況から、多くの産業分野において、人体に有害な残効性がなく且つ安価な殺菌方法の開発に対するニーズは高い。
「フェントン反応」とは、二価鉄が作用することで過酸化水素からヒドロキシラジカルを発生させる反応である。発生したヒドロキシラジカルは、ラジカルの中で最も強い酸化力を示す。
その強力な酸化力を利用して、殺菌、有害物質や難分解性の汚染物質の分解(例えば、有害物質で汚染された土壌にフェントン反応触媒を注入し、土壌浄化を行う技術)など、様々な分野への応用が期待されている。
またフェントン反応は、反応終了後に過酸化水素が酸素と水に変化し無害となるため、環境への負荷の小さい技術である。
そこで、水溶性を維持するために、EDTAやクエン酸などを利用して、硫酸第一鉄の溶解度を向上させる技術がある(非特許文献1参照)。
また、フェントン反応の強力な酸化力を利用して、カビの殺菌を行う技術が報告されている(特許文献1参照)。
このため、本来は不安定である二価鉄の状態を長期間維持できる安定したフェントン反応触媒の開発が求められていた。
また、従来のフェントン反応触媒は、豊富に存在し安価で供給可能な三価鉄や金属鉄を鉄原料に使用することはできなかった。
また、本発明は、従来のフェントン反応触媒には見られない、三価鉄や金属鉄(安価な鉄供給原料)についても二価鉄に変換して原料として利用可能なフェントン反応触媒を、製造して提供することを課題とする。
また、本発明は、人体や環境に対して無害なフェントン反応触媒を開発することを課題とする。
従って、従来これら還元剤は、ヒドロキシラジカルを発生させるフェントン反応に利用されることはなかった。
また、本発明者らは、当該還元性有機物は、本来は不安定である二価鉄の状態を長期間安定維持でき、さらに三価の鉄についても二価鉄に還元し、長期間安定維持できることを見出した。さらに、当該還元性有機物は、酸性を呈するため、不溶性の三価鉄や金属鉄についても可溶化して用いることができることを見出した。
即ち、〔請求項1〕に係る本発明は、還元性有機物と鉄供給原料とを、水存在下にて以下(B)の条件で混合し、得られた反応生成物を活性成分としてなるフェントン反応触媒、に関するものである。
(B):前記還元性有機物が、ポリフェノール含有植物体に含まれる還元性有機物であり、;鉄供給原料から供給される鉄元素1モルに対しポリフェノールが0.01〜1,000gになるようにポリフェノール含有植物体を混合する条件。
また、〔請求項2〕に係る本発明は、前記鉄供給原料が、三価鉄の化合物または金属鉄である、請求項1に記載のフェントン反応触媒、に関するものである。
また、〔請求項3〕に係る本発明は、請求項1又は2のいずれかのフェントン反応触媒を用いて過酸化水素からヒドロキシラジカルを発生させることを特徴とする殺菌方法、に関するものである。
また、〔請求項4〕に係る本発明は、請求項1又は2のいずれかのフェントン反応触媒を用いて過酸化水素からヒドロキシラジカルを発生させることを特徴とする汚染物質の分解方法、に関するものである。
また、〔請求項5〕に係る本発明は、請求項1又は2のいずれかのフェントン反応触媒を用いて過酸化水素からヒドロキシラジカルを発生させることを特徴とする化学発光を利用した発光方法、に関するものである。
また、三価鉄や金属鉄についても二価に変換して長期安定維持できるフェントン反応触媒を製造することが可能となる。
これにより、安価な原料(例えば硫酸鉄や塩化鉄などの鉄化合物、土壌、金属鉄など)を鉄供給原料として用いて、フェントン反応触媒を提供することが可能となる。
また、特にこれらの還元性有機物の供給原料として、植物乾留液(炭焼きの副産物)、ポリフェノール含有植物体の搾汁を用いた場合、安価にフェントン反応触媒を製造することが可能となる。
例えば、本発明により、人体や環境に対して安全な殺菌方法、汚染物質分解方法を提供することが可能となる。
また本発明により、フェントン反応触媒を用いたルミノール反応等による化学発光方法を提供することが可能となる。これにより新たな発光方法として新規需要の創出が期待される。
本発明は、特定の還元性有機物を、鉄供給原料から供給される鉄元素に対して特定の割合にて水存在下で混合して得た反応生成物、を活性成分としてなるフェントン反応触媒に関する。
本発明のフェントン反応触媒の製造に用いる還元性有機物としては、以下の(A)〜(C)に挙げるものを用いることができる。また、これらを単独で用いてもよいが、混合して用いることもできる。
本発明における還元性有機物としては、‘アスコルビン酸’を用いることができる。
ここで、アスコルビン酸としては、植物体に含まれるアスコルビン酸を用いることができる。
アスコルビン酸には、三価鉄や金属鉄を二価鉄に還元する作用と、二価鉄を長期間安定化する作用の両方を有するものと推測される。
例えば、トマト、ピーマン、アセロラ、柑橘類(レモン、ライム、オレンジ、グレープフルーツなど)、柿、キウイフルーツ、グァバ、パパイヤ、ブラックベリー、ブルーベリー、イチゴ、メロンなどの果実、;パセリ、ホウレン草などの葉、;ブロッコリー、カリフラワーなどの花茎、;サツマイモなどの地下茎、;芽キャベツなどの側芽、;などを挙げることができる。
本発明においてはこれらの植物体を、植物体乾燥物(特に粉末)、植物体搾汁、抽出物(特に水抽出物)、として用いることができる。また、搾汁や抽出液の乾燥物を用いることもできる。
また、品質の観点を考慮した場合、精製された(もしくはある程度精製された)アスコルビン酸を直接添加して用いることが好ましい。
精製されたアスコルビン酸としては、アスコルビン酸のfree acidだけでなく、アスコルビン酸化合物(アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウムなど)であっても用いることができる。
本発明における還元性有機物としては、‘ポリフェノール含有植物体に含まれる還元性有機物’を用いることができる。
当該還元性有機物としては、原料植物体に含まれる総ポリフェノール、有機酸、フェノール類、カルボニル類など、非常に多くの還元性有機物分子からなる組成物の全量を指すものである。
当該組成物には、三価鉄や金属鉄を二価鉄に還元する作用を奏する分子、二価鉄を長期間安定化する作用を奏する分子、これら両方の作用を奏する分子、が含まれると推測される。
例えば、ブドウ、イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、リンゴ、柑橘類(レモン、ライム、オレンジ、グレープフルーツなど)、柿、バナナなどの果実、;カカオ、黒大豆、黒胡麻、蕎麦などの種子、;紫イモ、ウコンの地下茎、;などを挙げることができる。
本発明においてはこれらの植物体を、植物体乾燥物(特に粉末)、植物体搾汁、抽出物(特に、水抽出物、アルコール抽出物、含水アルコール抽出物)、として用いることができる。また、搾汁や抽出液の乾燥物を用いることもできる。
なお、ここで抽出に用いるアルコールとしては、特にエタノールが好適である。
また、品質の点を考慮すると、抽出された総ポリフェノールや有機酸等の還元性有機物を、組成物として用いることが好適である。
本発明における還元性有機物としては、‘植物乾留液に含まれる還元性有機物’を用いることができる。
当該還元性有機物としては、植物乾留液に含まれる有機酸、フェノール類、カルボニル類、アルコール類、アミン類、塩基性成分、その他中性成分など、非常に多くの還元性有機物分子からなる組成物の全量を指す。
当該組成物には、三価鉄や金属鉄を二価鉄に還元する作用を奏する分子、二価鉄を長期間安定化する作用を奏する分子、これら両方の作用を奏する分子、が含まれると推測される。
植物乾留液とは、還元状態の植物体を熱分解することによって得られる乾留液(粘りけのある褐色を呈する液体)を指す。外見は赤褐色〜暗褐色を呈する。
例えば、木酢液、竹酢液、籾酢液などを挙げることができる。なお、原料コストの観点からも、これらを好適に用いることができる。
本発明では、鉄元素を供給する原料として、二価鉄の化合物、;三価鉄の化合物、;金属鉄、;を含む鉄供給原料のいずれをも用いることができる。また、複数のものを混合して用いることもできる。
また、これらが溶解した二価の鉄イオンを含む水溶液を用いることもできる。
また、水溶性の鉄化合物が溶解した三価の鉄イオンを含む水溶液を用いることもできる。
なお、これら三価鉄化合物で水に不溶性のものであっても、本発明における還元性有機物の酸性を呈する働きによって水溶化するため、本発明の鉄供給原料として直接用いることができる。
なお、これら金属鉄は、通常は水に不溶性を示すが、本発明における還元性有機物の酸性を呈する働きによって水溶化するため、本発明の鉄供給原料として直接用いることができる。
また、有機農業で利用する場合は、原料を天然物に限る必要があることと原料コストや安定供給の観点から、天然物である土壌(特に赤玉土、鹿沼土、ローム)、金属鉄、を鉄供給原料として用いることが好適である。
本発明では、前記還元性有機物の供給原料(もしくは還元性有機物)と前記鉄供給原料(もしくは鉄イオン)を、水存在下で混合することによって、フェントン反応触媒能を有する反応生成物(活性成分)を得ることができる。
本発明においては、前記鉄供給原料から供給される鉄元素に対して、前記還元性有機物の供給原料(もしくは還元性有機物)を特定割合で混合することで、強いフェントン反応触媒能を示す反応生成物が得ることが可能となる。
なお、鉄元素に対して前記還元性有機物の混合割合が多すぎる場合には、過剰に存在する還元性有機物がスカベンジャーとして機能するため、逆にフェントン反応を阻害するため好ましくない。
また、鉄元素に対して前記還元性有機物の混合割合が少なすぎる場合には、得られる反応生成物の量が十分でなく好ましくない。
好ましくは、0.02〜2倍量、特に0.02〜1倍量、さらに0.2〜1倍量、さらに特には約0.5倍量のモル数になるように混合することが望ましい。
好ましくは、0.4〜200g、さらには10〜100g、さらに特には20〜100g、さらに特には約40gになるようにポリフェノール含有植物体を混合することが望ましい。
好ましくは、0.2〜100kg、さらには20〜100kg、さらに特には約50kgになるように混合することが望ましい。
本発明の混合操作は、水存在下において行うものである。ここで水存在下とは、還元性有機物と鉄が、水を媒質として反応できる条件であればよい。
なお、水の量としては、混合や攪拌が可能な溶液の状態であれば良いが、混合操作によって原料(還元性有機物と鉄)が湿潤する程度の量であってもよい。
なお、水としては、当該反応が起こる条件のものであれば如何なるものも用いることができる。例えば、水道水、井戸水、地下水、河川水、脱イオン水、蒸留水、などを挙げることができる。
なお、還元性有機物の供給原料として、植物体搾汁や植物乾留液などを液体のままを用いる場合は、新たに媒質を添加することなく、直接鉄供給原料と混合して反応させることができる。
ここで水の温度としては、水が液体状態である温度であればよいが(例えば1〜100℃)、室温程度(例えば10〜40℃)で特に加熱を要することなく行うことができる。
なお、鉄供給原料として特定の天然物(具体的には土壌)を用いた場合や、不溶性の鉄化合物が主体である場合、混合後、反応時間を長く取ることによって、鉄と還元性有機物が反応しやすくする処理が必要となる。
加温する場合、上限としては200℃(加圧加熱の場合)を挙げることができるが、製造コストの観点から、通常加熱での水の沸点である100℃以下、さらに好ましくは70℃以下で行うことが望ましい。なお、100℃以上の反応条件において、還元性有機物の熱分解を抑制するには、密閉容器内で行う方が効果的である。
また、上限としては、微生物の繁殖による腐敗を防止するため、240時間以下で行うことが望ましい。ただし滅菌処理を伴う場合は特に上限はない。
上記工程を経て得られる反応生成物(還元性有機物と鉄との反応物)は、二価の鉄を長期間安定維持でき、さらに三価鉄や金属鉄を二価の鉄に変換して長期安定維持できる性質を有するものである。
そのため、本発明において得られる前記反応生成物は、反応後に得られた上清や含水状態の沈殿物のままフェントン反応触媒として用いることができる。また、上清や沈殿物をそれぞれ分離回収して、フェントン反応触媒として用いることができる。
また、上清及び/又は沈殿物の乾燥物(例えば、自然乾燥、焙煎など)、当該乾燥物を水に溶いた上清や懸濁物についても、フェントン反応触媒として用いることもできる。
(A) 例えば、‘アスコルビン酸’の場合、添加した鉄元素 1mMに対して得られる反応生成物濃度を「1倍標準液」とした際に、その濃度の0.05倍量以上、特に0.1倍量以上、さらには0.5倍量以上の濃度である時に、強いフェントン反応触媒能を得ることができる。
特に0.5〜20.0倍量、さらには0.5〜10倍量、さらに特には0.5〜5.0倍量の範囲では触媒能はピークに達するため望ましい。
特に1〜20倍量、1〜10倍量の範囲では触媒能はピークに達するため望ましい。
本発明のフェントン反応触媒(還元性有機物と鉄の反応生成物)は、人体や環境に対して安全性が高い物質であるので、医薬、食品、公衆衛生、農業等、工業等、様々な用途に用いることができる。
例えば、前記還元性有機物として、アスコルビン酸やポリフェノール含有植物体成分を用いた場合、これらは食品由来の供給原料に由来する物質であるので、特に食品分野での使用が期待される。
なお、アスコルビン酸を単一物質として用いた場合、当該物質は無色透明のため、特に食品分野での使用が期待される。
また、還元性有機物供給原料として、植物乾留液を用いた場合、当該成分はやや臭いを有する物質を含む。しかし、当該原料は非常に安価であるため、農業、医薬、公衆衛生等の分野での使用が期待される。
本発明のフェントン反応触媒は、過酸化水素からヒドロキシラジカルを発生させる性質を利用して、様々な分野の殺菌に用いることができる。
また、殺菌対象が土壌、汚染水、植物、動物、微生物などの生体そのものあるいは生物を含むものである場合、殺菌対象中には既に生物由来の過酸化水素が微量発生するため、本発明のフェントン反応触媒のみを用いて(過酸化水素を別途加えることなく)殺菌を行うことが可能となる。
殺菌対象が固体である場合、当該フェントン反応触媒と過酸化水素を含む溶液を調製し、殺菌対象に、噴霧、塗布、練り込み等することによって行うことができる。
なお、殺菌対象を当該溶液中に浸漬することによっても行うことができる。また、当該フェントン反応触媒(固形の形態)を殺菌対象に塗布や練り込み等を行い、別途過酸化水素を噴霧等することによっても行うことができる。
また、殺菌対象が液体である場合、当該フェントン反応触媒(液体、固形の両方の形態)と過酸化水素を、殺菌対象に添加、混合等することによって、行うことができる。なお、フェントン反応触媒が固体の場合には、過酸化水素を加えた殺菌対象の液体中に浸漬することによっても行うことができる。
当該殺菌効果は、極めて強力であるため、例えば、数分程度の浸漬によって、顕著な殺菌効果を奏する。
また、本発明のフェントン反応触媒は、汚染水や汚染土壌に含まれる汚染物質を分解して、浄化の一工程に用いることができる。
また、分解対象となる具体的な汚染物質としては、自然界に汚染水や汚染土壌に含まれる有機化合物を指し、例えば、ダイオキシン、PCBなどを挙げることができる。
なお、これら浄化対象のほとんどのもの(微生物相を含むもの)は、既に生物由来の過酸化水素が微量含まれているため、本発明のフェントン反応触媒のみを用いて(過酸化水素を別途加えることなく)汚染物質の分解を行うことも可能となる。
浄化対象が固体である場合、当該フェントン反応触媒と過酸化水素を含む溶液を調製し、対象に、噴霧、散布、塗布、練り込み等することによって行うことができる。なお、浄化対象を当該溶液中に混合浸漬することによっても行うことができる。また、当該フェントン反応触媒(固形の形態)を浄化対象に塗布や練り込み等を行い、別途過酸化水素を噴霧等することによっても行うことができる。
また、浄化対象が液体である場合、当該フェントン反応触媒(液体、固形の両方の形態)と過酸化水素を、浄化対象に添加、混合、散布、浸漬等することによって、行うことができる。なお、フェントン反応触媒が固体の場合には、過酸化水素を加えた浄化対象の液体中に浸漬することによっても行うことができる。
当該分解効果は、極めて強力であるため、例えば、30分程度の浸漬によって、顕著な分解効果を奏することができる。
また、本発明のフェントン反応触媒は、化学発光を利用した発光に用いることができる。
ここで化学発光としては、フェントン反応によって発生したヒドロキシラジカルによって、基質が分解されて発光する現象を指すものである。具体的には、ルミノール、ロフィン、ルシゲニン、シュウ酸ジフェニル、塩化オキサリル、ルシゲニンなどを発光基質として用いた各化学反応を挙げることができる。
発光に用いる溶液において、フェントン反応触媒の使用量としては、上記フェントン反応触媒能が得られる濃度で調製して使用すればよい。また、過酸化水素の使用量としては、0.01〜30,000mM程度含むように用いればよい。また、発光基質としては、それぞれの物質の特性に合わせて適量含むように使用すればよい(ルミノールの場合、0.1〜10g/L程度)。
当該フェントン触媒は極めて安定であるため、長期間安定した発光効果を奏することができる。
当該発光反応は、照明、発電(太陽電池との組合せによる)などに利用することが期待される。
還元作用を示す有機物や組成物について、三価鉄を二価鉄に還元する実験を行った。
表1に示す各試料のそれぞれについて、同重量の塩化鉄(III)(FeCl3)を含む各水溶液(0.1%(w/v))を調製した。
なお、‘アスコルビン酸’(試料1)としては、和光純薬から購入した試薬を用いた。
また、‘ブドウ搾汁’(試料2)(ポリフェノール含有植物体の搾汁)としては、ブドウの実を皮ごと搾汁した液(総ポリフェノール含量2.3g/L)を用い、含有される総ポリフェノール量に換算した重量で濃度調製した。
また、‘籾酢液’(試料3)(植物乾留液)としては、籾殻燻炭を作成する際に抽出した籾酢液の原液を用い、原液の液重量で濃度調製した。
この水溶液に、0.2%ジピリジル(ジピリジル2g、酢酸100g/L)を添加して、呈色反応の有無を調べた。なお、ジピリジルは、二価鉄と反応した時に赤色に呈色する物質であり、二価鉄の検出に用いられる。三価の鉄とは反応せず、無色のままである。
反応後の呈色結果を表1および図1に示す。
また、籾酢液の鉄還元能は、含有成分である還元性有機物(有機酸、フェノール類、カルボニル類、アルコール類、アミン類、塩基性成分、その他中性成分)に起因するものと推測される。
実施例1で鉄還元作用が確認された上記試料と鉄との反応生成物について、フェントン反応触媒能があることを、ルミノール反応により検証した。
なお、ルミノール反応とは、ヒドロキシラジカルの発生によりルミノールを酸化させて発光する反応を指すものである。
実施例1で調製した反応生成物を含む水溶液を、ルミノール溶液(1g/Lルミノール、4g/L水酸化ナトリウム、0.3%過酸化水素)100mlに少量加えて、発光の有無を観察した。
上記試料と鉄の反応生成物を得る工程において、試料と鉄の混合比率を変化させた場合におけるフェントン反応触媒能の強さを検討した。
そして、これら反応生成物を含む水溶液について、AB-2270ルミネッセンサーOctaでルミノール反応の発光量(ヒドロキシラジカル発生量)を測定することで、フェントン反応触媒能の強さを測定した。結果を図2に示す。
ii) また、ブドウ搾汁(図2(2))については、1mM FeCl3に対してブドウ搾汁に含有される総ポリフェノールに換算して0.4〜200mg/L、特に0.4〜100mg/L、さらには10〜100mg/L、さらに特には20〜100mg/L、さらに特には約40mg/Lで混合した時に、強いフェントン反応触媒能を示す反応生成物が得られることが示された。
iii) また、籾酢液(図2(3))については、1mM FeCl3に対して原液で0.2〜100g/L、特に10〜100g/L、さらには20〜100g/L、さらに特には約50g/Lとなるように混合した時に、強いフェントン反応触媒能を示す反応生成物が得られることが示された。
上記試料と鉄の反応生成物について、フェントン反応触媒として機能するのに適した濃度を検討した。
そして、これら反応生成物を含む水溶液について、AB-2270ルミネッセンサーOctaでルミノール反応の発光量(ヒドロキシラジカル発生量)を測定することで、フェントン反応触媒能の強さを測定した。結果を図3に示す。
なお、図3における各反応生成物の濃度(横軸)は、添加した塩化鉄(III) 1mMの時に得られる反応生成物濃度を「1倍標準液」とした場合の倍率で示した。
ii)また、ブドウ搾汁と鉄の反応生成物(図3(2):ブドウ搾汁成分・鉄)については、0.1倍量 以上、特に0.2倍量以上、さらに1倍量以上の濃度である時に、強いフェントン反応触媒能が得られることが示された。特に1〜10倍量の範囲ではピークに達することが示された。
iii)また、籾酢液と鉄の反応生成物(図3(3):籾酢液成分・鉄)については、0.1〜5倍量、特に0.2〜5倍量、さらに約1倍量の濃度である時に、強いフェントン反応触媒能が得られることが示された。
なお、当該反応生成物の濃度が高すぎる場合にフェントン反応触媒能が減少するのは、籾酢液成分中にラジカル消去能を有する物質が存在するためと推測される。
各種試料と鉄の反応生成物について、フェントン反応触媒の比較を行った。
また、特願2010-080605明細書(本願発明者らによるフェントン反応触媒に関する出願)に記載されているコーヒー粕(試料4)、茶殻(試料5)についても、塩化鉄(III)1mMに対して、試料4g/Lになるように加えて、これら試料と鉄との反応生成物を含む水溶液を調製した。調製は実施例1と同様の手順にて調製した。
また、比較対照として、水(試料6)に塩化鉄(III) 1 mMのみを含む水溶液を調製した。
なお、上記各水溶液のそれぞれの対照として、各試料のみを加えた水溶液(Fe無添加の水溶液)を調製した。
特に、ブドウ搾汁(試料2)と鉄の反応生成物には、コーヒー粕(試料4)や茶殻(試料5)との反応生成物に比べて、約20倍の触媒能があることが示された。
アスコルビン酸と鉄の反応生成物について、フェントン反応触媒能による殺菌効果を大腸菌について検討した。
この反応生成物を含む水溶液(10mM アスコルビン酸・鉄)に、過酸化水素を10mMになるように加え、そして、大腸菌を1.0×106cfu/mLとなるように加えた。
なお、対照として、過酸化水素(10mM)のみを含む水溶液に同様に大腸菌を加えたものを調製した。
そして、10分後に各溶液0.1mLを分取し、TTC培地で平板培養した。結果を図5に示す。
このことから、アスコルビン酸と鉄の反応生成物は、過酸化水素と混合することで、フェントン反応を触媒し、強力な殺菌作用を奏することが示された。
ブドウ搾汁(試料2)以外のポリフェノール含有植物体由来の試料についても、ジピリジル反応によって鉄還元能を検証した。
表2に示す各試料7〜10のそれぞれと、1mM塩化鉄(III)を含む各水溶液を調製した。そして、各水溶液を混合して室温で数分静置することで反応させた。
調製した水溶液について、実施例1と同様にしてジピリジル反応を行った。結果を表2、図6に示す。
このことから、ポリフェノールを含有する多くの植物体の成分には、鉄を還元する活性があることが確認された。
例えば、農業、食品、医療、公衆衛生分野などの分野における殺菌に利用することが期待される。また、汚染物質分解方法として利用することも期待される。さらに、化学発光の物質との反応と組み合わせることで、新たな発光方法として新規需要の創出が見込める。
Claims (5)
- 還元性有機物と鉄供給原料とを、水存在下にて以下(B)の条件で混合し、得られた反応生成物を活性成分としてなるフェントン反応触媒。
(B):前記還元性有機物が、ポリフェノール含有植物体に含まれる還元性有機物であり、;鉄供給原料から供給される鉄元素1モルに対しポリフェノールが0.01〜1,000gになるようにポリフェノール含有植物体を混合する条件。 - 前記鉄供給原料が、三価鉄の化合物または金属鉄である、請求項1に記載のフェントン反応触媒。
- 請求項1又は2のいずれかのフェントン反応触媒を用いて過酸化水素からヒドロキシラジカルを発生させることを特徴とする殺菌方法。
- 請求項1又は2のいずれかのフェントン反応触媒を用いて過酸化水素からヒドロキシラジカルを発生させることを特徴とする汚染物質の分解方法。
- 請求項1又は2のいずれかのフェントン反応触媒を用いて過酸化水素からヒドロキシラジカルを発生させることを特徴とする化学発光を利用した発光方法。
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