JP2015533791A - 骨髄細胞に発現する誘発性受容体1(trem−1)trem様転写産物1(tlt−1)に由来する阻害ペプチドおよびその使用 - Google Patents

骨髄細胞に発現する誘発性受容体1(trem−1)trem様転写産物1(tlt−1)に由来する阻害ペプチドおよびその使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、配列番号2のアミノ酸配列から選択される少なくとも6個の連続するアミノ酸ペプチドおよび機能保存的変異体に関する。本発明はこのほか、心血管疾患の治療に使用するための配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列から選択される少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むペプチドおよび機能保存的変異体に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、配列番号2のアミノ酸配列から選択される少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むペプチドおよび機能保存的変異体に関する。本発明はこのほか、心血管疾患の治療に使用するための配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列から選択される少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むペプチドおよび機能保存的変異体に関する。
多数の疾患の顕著な特徴である心血管疾患は世界で主要な死の過程である。
心筋梗塞または脳梗塞は、有害で損傷性の持続性または一過性心筋虚血に起因する複雑な臨床症候群の例である。これは通常、冠動脈/脳動脈閉塞によって引き起こされ、酸素の供給と需要との間に不均衡を生じる。
組織の損傷は虚血の持続時間に左右される。5分程度の短時間の虚血であれば、虚血組織は最終的に再灌流後に回復し、梗塞症状または致死的結果に至ることはない。しかし、虚血の持続時間が著しく長いと梗塞および炎症性反応を起こす。実際、梗塞と炎症性反応との間には関連があり、治癒および瘢痕形成の必要条件となっている[Entman M.L.ら,1994およびMehta J.L.ら,1999]。この応答は、虚血組織が再灌流された場合に程度および持続時間が増幅される。
この応答は多相性であり、最初の虚血が、TNF−アルファ放出によって開始される壊死、フリーラジカル酸素種の形成、補体活性化およびサイトカインカスケードを誘導する。梗塞部の再灌流相が、虚血部位における白血球動員に関与する炎症性反応を増大および促進させる。動員された白血球はほかにも、in situおよび全身の炎症性メディエーター放出に関与し、最終的には、梗塞の病態生理学的結果の原因となる過剰に活性化した炎症状態をもたらす。
いずれの炎症性メディエーターについても作用に見解の一致をみていない。実際、梗塞の生理病理学では有益な作用と有害な作用との間で均衡が保たれている。例えば、TNF−アルファは、その発現および放出の時間、持続時間およびレベルに応じて、心筋虚血時に細胞保護作用だけでなく有害な作用を示す[Harjot K Saini.ら,2005]。これにより、このような炎症性メディエーターの遮断を主体とする治療法の複雑さが説明され得る。
動脈閉塞によって引き起こされる初期の損傷事象から虚血後の組織修復の基礎となる後期段階の再生過程に及ぶ虚血カスケードの全段階において、炎症のメディエーター(サイトカイン、ケモカイン、ROSなど)の放出および広範囲の白血球動員が重要な役割を果たしている。この炎症性応答を標的とした多数の治療戦略が何らかの効果を示すことができなかった。現在、個々の虚血誘導性炎症性メディエーターではなく増幅ループに影響を及ぼす試みに価値があることは明らかであると思われる。
アテローム性動脈硬化症では、動脈での病巣形成および管腔狭窄が徐々に進行することによって脳血管疾患および冠動脈疾患をきたす。プラーク破裂および血栓症が起こると、これらの最もよくみられる形態の心血管疾患が急性冠動脈症候群(ACS)、心筋梗塞または脳卒中として発症する。ヒトおよび動物を対象にした研究では、アテローム性動脈硬化症が、主として内因的に修飾された構造体、具体的には自然免疫応答および適応免疫応答の両方を刺激する酸化リポタンパク質に応答して開始される動脈壁内での慢性炎症過程によって引き起こされることが確認されている。血管細胞および単球/マクロファージの両方の活性化によって自然応答が引き起こされ、次いで、抗原提示細胞によってエフェクターTリンパ球に提示された多数の抗原候補に対して適応免疫応答が発現する[Ait−Oufella Hら,2011]。遺伝子改変マウスモデルにより、循環単球がケモカインによって血管壁内に動員された後、マクロファージおよび脂質を含有する細胞になることが明らかにされている。内膜マクロファージがサイトカイン放出によるプラーク発生、炎症増幅ならびにプロテアーゼ産生およびアポトーシス蓄積によるプラーク不安定化を促進する[Libby P.2002]。
PRRs(病原体認識受容体(Pathogen Recognition Receptors)の略)と相互作用するPAMPs(病原体関連分子パターン(Pathogen−Aassociated Molecular Patterns)の略)と呼ばれる複数のメディエーターによって単球/マクロファージが刺激される。アテローム性動脈硬化症の生理病理には複数のPRRsが関与する。例えば、ヒトおよび動物のアテローム性動脈硬化病巣にはToll様受容体が発現する。マウスではTLRを阻害するとアテローム性動脈硬化症の発現が減少し、このような経路を標的とすることによってアテローム形成が抑制される可能性が示唆される[Bjorkbacka Hら,2004]。
近年、骨髄細胞に発現する新たな受容体のファミリー、すなわち骨髄細胞に発現する誘発性受容体(Triggering Receptors Expressed on Myeloid cells)(TREMs)が新たに記載された。このファミリーのうちTREM−1が単球/マクロファージおよび好中球に発現する。TREM−1の活性化により、サイトカインおよびケモカインの産生(TNF−α、IL−6、IL−8、MCP−1および−3、MIP−1αなど)とともに急速な好中球脱顆粒および酸化バーストが引き起こされる[Radsak MPら,2004およびHara Hら,2009]。
TREM−1の機能は、盛んな免疫応答を誘発するためにTLRを合成することによって炎症を活性化/惹起するのではなく、これを調節/増幅することである。最初、感染時にTREM−1の病態生理的役割が特定された。TREM−1は急性(腸間膜虚血−再灌流、出血性ショック、膵炎など)および慢性(炎症性腸疾患、リウマチ性疾患など)の両方の無菌性炎症時に極めて重要な役割を果たすことが知られている。
TLT−1(Trem様転写産物−1(Trem−Like Transcript−1))はTREMファミリーのメンバーであるが、巨核球および血小板のみにみられるものである。TLT−1は最初、血小板凝集時にフィブリノーゲンを結合し血小板凝集体を安定化することによって何らかの役割を果たすことが確認された。しかし、本発明者らのTLT−1、可溶性TLT−1およびsTLT−1由来ポリペプチドに関する研究室で得られた新たな観察結果から、TLT−1が炎症時にTREM−1を特異的に阻害することによって何らかの役割を果たすことが明らかになった[Derive Mら,2012,国際公開第2010/124685号]。
Washingtonらは、TLT−1が炎症時に血管損傷部位での血小板凝集を促進することによって保護的役割を果たすことを記載している(Washingtonら,J Clin Invest.2009)。
血小板凝集が心血管疾患(例えば、心筋梗塞およびアテローム性動脈硬化症)時に最悪の転帰をもたらすことが知られているため、TLT−1由来ペプチドが心血管疾患に対して治療効果を示すことがわかったのは驚くべきことであった。
本発明者らは本明細書に、1)TREM−1が大動脈、腸間膜動脈および微小血管の細胞の内皮細胞によって発現されること、2)TREM−1が心筋組織によって発現され、その発現が心筋虚血(持続性心筋虚血および一過性心筋虚血)後の梗塞部においてアップレギュレートされること、3)TREM−1がアテローム斑内に動員されたマクロファージによって発現されることを記載する。
本発明者らはこのほか、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドがともにTREM−1を特異的に阻害し、心筋梗塞およびアテローム性動脈硬化症におけるTREM−1による炎症性応答を低下させることが可能であることを示す。
その結果、心筋虚血(持続性虚血および一過性虚血)の2つの異なるモデルの急性期にこれらのペプチドを投与することによってsituの炎症性応答およびこれに続く白血球輸送が調節され、これにより虚血後の心リモデリングおよび疾患進行の後期段階が抑制された。実際、持続性虚血および一過性虚血(虚血−再灌流)事象の6週間後に心機能の劇的な改善が認められた。これは生存率の上昇につながるものであると考えられた。
本発明者らは最後に、TREM−1を特異的に阻害することによってアテローム斑形成の拡大を抑制することにおけるTREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドの役割を示す。
したがって、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列および機能保存的変異体から選択される少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むペプチドに関する。
本発明はさらに、心血管疾患の治療に使用するための配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列から選択される少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むペプチドおよび機能保存的変異体または本発明による単離核酸、発現ベクター、宿主細胞に関する。
本発明の1つの目的は、心血管疾患の治療に使用するための配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列から選択される少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むペプチドおよび機能保存的変異体である。
一実施形態では、前記ペプチドは、心血管疾患の治療に使用するための配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11または配列番号12からなる群より選択される6個の連続するアミノ酸配列を含む。
一実施形態では、心血管疾患は心筋梗塞である。
別の実施形態では、心血管疾患はアテローム性動脈硬化症である。
本発明の別の目的は、配列番号2のアミノ酸配列から選択される少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むペプチドおよび機能保存的変異体である。
一実施形態では、前記ペプチドは、配列番号10、配列番号11または配列番号12からなる群より選択される6個の連続するアミノ酸配列を含む。
別の実施形態では、前記ペプチドは、配列番号8または配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む。
別の実施形態では、前記ペプチドは、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11または配列番号12に示されるアミノ酸配列からなる。
本発明の別の目的は、上記ペプチドをコードする単離核酸配列である。
本発明の別の目的は、上記核酸配列を含む発現ベクターである。
本発明の別の目的は、上記発現ベクターを含む宿主細胞である。
本発明の別の目的は、治療有効量の少なくとも1つの上記ペプチド、上記核酸、上記発現ベクターまたは上記宿主細胞を少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤とともに含む、医薬組成物である。
定義
本明細書全体を通じていくつかの用語が使用され、以下の段落ではこれを定義する。
本明細書で使用される「TLT−1」または「TREM様転写産物1」という用語は、TREMファミリーのメンバーを表す。Mcvicarのグループによる初期の研究[Washington A.V.ら,2004]よって、TLT−1が血小板および巨核球系に特異的に豊富に存在し、血小板α顆粒中の閉じ込められていることが示された。トロンビンまたはLPSによって血小板が活性化すると、TLT−1が血小板表面に移動する。TLT−1にはvセットIg様細胞外ドメイン、膜貫通領域および免疫受容体チロシン依存性抑制モチーフ(ITIM)とポリプロリンリッチドメインとを含む細胞質側末端が含まれている。TREMファミリーの他のメンバーとは異なり、TLT−1はDAP12活性化連鎖と共役しないが、ラット好塩基球性白血病(RBL)細胞のCa++シグナル伝達を増強することが示されており、これはTLT−1が共活性化受容体であることを示唆するものである。TLT−1のアミノ酸配列は配列番号1のアミノ酸配列として記載されている。
本明細書で使用される「骨髄細胞に発現する誘発性受容体(Triggering Receptors Expressed on Myeloid cells 1)」に対する「TREM−1」という用語は、ヒトおよびマウスの多形核好中球および成熟単球の両方で同定されている細胞表面分子を表す。この分子は免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、DAP12と呼ばれるアダプタータンパク質の助けを借りて下流のシグナル伝達経路を活性化する。細胞培養でも感染症の患者の組織試料中でも、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)や黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)などの細菌の存在するとき、TREM−1の発現が細好中球および単球で大幅にアップレギュレートされる。これとは著しく対照的に、免疫複合体によって引き起こされる乾癬、潰瘍性大腸炎または血管炎などの非感染性の炎症性疾患の患者の試料ではTREM−1はアップレギュレートされない。さらに、TREM−1がそのリガンドと結合すると、IL−10産生の阻害とともにLPSの相乗作用およびTNF−αなどの炎症誘発性サイトカイン合成の増幅が観察される。TREM−1のアミノ酸配列は配列番号2のアミノ酸配列として記載されている。
TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドとも呼ばれる本発明のペプチドを下の表1に記載する。
Figure 2015533791
本明細書で使用される「機能保存的変異体」という用語は、特に限定されないが、あるアミノ酸をこれとほぼ同じ特性(例えば、極性、水素結合能、酸性、塩基性、疎水性、芳香族性など)を有するアミノ酸に置き換えることを含め、ペプチドの全体的なコンホメーションおよび機能を変化させずにタンパク質または酵素内の所与のアミノ酸残基が改変した、本発明のペプチドに由来するペプチドを表す。タンパク質内で保存されているとされるアミノ酸以外のアミノ酸が異なっていてもよく、この場合、同様の機能を有する任意の2つのタンパク質の間でのタンパク質またはアミノ酸配列類似性のパーセントは異なるものであり得、類似性がMEGALIGNアルゴリズムに基づくクラスター法などのアライメント方法による決定で、例えば70%〜99%であり得る。「機能保存的変異体」にはこのほか、BLASTまたはFASTAアルゴリズムによる決定でアミノ酸同一性が少なくとも20%、好ましくは40%、より好ましくは60%、好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%であり、比較する元のタンパク質または親タンパク質と同じまたは実質的にほぼ同じ特性または機能を有するペプチドが含まれる。
本明細書で使用される「誘導体」という用語は、ペプチドのin vitroまたはin vivoのコンホメーション、活性、特異性、効果または安定性を修正するために別の方法で修飾された、すなわち、任意の種類の分子とペプチドとを共有結合させることによって、配列のアミノ酸のいずれかに化合物を付加することによって修飾された、本発明のペプチドまたはその機能保存的変異体のバリエーションを指す。
本明細書で使用される「治療すること」または「治療」という用語は、このような用途が適用される障害もしくは病態またはこのような障害もしくは病態の1つもしくは複数の症状を元の状態に戻す、軽減する、その進行を抑制するまたはこれを予防することを表す。
本発明によれば、「薬学的に」または「薬学的に許容される」という用語は、必要に応じて哺乳動物、特にヒトに投与したときに有害反応、アレルギー反応をはじめとする望ましくない反応を引き起こさない実体および組成物を表す。薬学的に許容される担体または添加剤は、無毒性の固体、半固体または液体である任意の種類の充填剤、希釈剤、封入材料または製剤助剤を指す。
本発明によれば、治療する「患者」または「個体」という用語は、炎症性障害に罹患しているか、これに罹患する可能性のあるヒトまたは非ヒト哺乳動物(げっ歯類(マウス、ラット)、ネコ、イヌまたは霊長類など)を対象とする。好ましくは、対象はヒトである。
本発明のペプチド
本発明の第一の態様は、配列番号2のアミノ酸配列から選択される少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むペプチドおよび機能保存的変異体に関する。
本発明の別の態様は、配列番号1のアミノ酸配列から選択される少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むペプチドおよび機能保存的変異体に関する。
一実施形態では、前記ペプチドは配列番号1ではない。
一実施形態では、前記ペプチドは配列番号2ではない。
一実施形態では、ペプチドは長さが50アミノ酸未満、40アミノ酸未満、35アミノ酸未満、30アミノ酸未満、25アミノ酸未満、20アミノ酸未満である。
好ましい実施形態では、本発明によるペプチドは長さが6〜20アミノ酸、10〜20アミノ酸、12〜18アミノ酸または14〜16アミノ酸である。
好ましい実施形態では、本発明によるペプチドは長さが3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、11アミノ酸、12アミノ酸、13アミノ酸、14アミノ酸、15アミノ酸、16アミノ酸、17アミノ酸、18アミノ酸、19アミノ酸または20アミノ酸である。
別の実施形態では、本発明によるペプチドは、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号10、配列番号11または配列番号12からなる群より選択される6個の連続するアミノ酸配列を含む。
別の好ましい実施形態では、本発明によるペプチドは、配列番号3または配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む。
別の好ましい実施形態では、本発明によるペプチドは、配列番号4または配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む。
別の好ましい実施形態では、本発明によるペプチドは、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11または配列番号12に示されるアミノ酸配列からなる。
別の実施形態では、本発明によるペプチドはD−またはL−立体配置を有し得る。
別の実施形態では、本発明によるペプチドのアミノ末端のアミノ酸はアセチル化された末端アミノ基を有し、カルボキシル末端のアミノ酸はアミド化された末端カルボキシ基を有する。したがって、本発明はほかにも、アミノ末端がアセチル化されているか、カルボキシ末端がアミド化されている、本発明のペプチドの誘導体を含む。
さらに、本発明によるペプチドの生物学的利用能(安定性および脂溶性を含む)ならびに本発明によるペプチドが血液脳関門および上皮組織を通過する能力を増大させるために、これに可逆的化学修飾を施し得る。このような可逆的化学修飾の例としては、グルタミン酸およびアスパラギン酸のカルボキシ基とアルコールとのエステル化によってアミノ酸の負電荷を除去し、その疎水性を増大させることが挙げられる。このエステル化は、形成されるエステル結合がこれを加水分解する細胞内エステラーゼによって認識されてアスパラギン酸およびグルタミン酸残基の電荷が元に戻るため、可逆的なものである。その正味の効果は、内部に取り込まれ脱エステル化されたペプチドが細胞膜を通過することができないことから、細胞内ペプチドの蓄積となる。
このような可逆的化学修飾の別の例としては、膜透過性の増大を可能にするTATペプチドまたはペネトラチンペプチドなどのペプチド配列をさらに付加することが挙げられる(Charge−Dependent Translocation of the Trojan.A Molecular View on the Interaction of the Trojan Peptide Penetratin with the 15 Polar Interface of Lipid Bilayers.Biophysical Journal,Volume 87,Issue 1,1 July 2004,Pages 332−343を参照されたい)。
Fmocおよび/またはBocベースの20法論に従って、従来の固相化学ペプチド合成法により本発明によるペプチドを入手し得る(Pennington,M.W.and Dunn,B.N.(1994).Peptide synthesis protocols.Humana Press,Totowaを参照されたい)。
あるいは、組換えDNA技術に基づく従来の方法によって、例えば、簡潔に述べると、本発明のペプチドをコードする核酸配列をしかるべきプラスミドまたはベクターに挿入し、前記プラスミドまたはベクターにコンピテントな細胞を形質転換し、本発明のペプチドの発現が可能な条件下で前記細胞を培養し、必要に応じて、このような事柄の専門家に知られている従来の手段により本発明のペプチドを単離および(任意選択で)精製することを含む方法によって、本発明によるペプチドを入手してもよい。本発明のペプチドをコードする核酸配列は、アミノ酸と、このようなアミノ酸をコードするヌクレオチドコドンとの間に存在する対応から容易に推定され得る。この場合、本発明のさらなる目的は、本発明のペプチドをコードする単離核酸配列である。ある特定の実施形態では、前記核酸は一本鎖DNA、二本鎖DNAおよびRNAから選択される。本発明のさらなる目的は、本発明のペプチドをコードする前記核酸配列を含むプラスミドおよび発現ベクターならびに本発明のペプチドを発現する原核細胞または真核細胞である。組換えDNA技術の原理の概説については、例えば、Blackwell Scientific Publications社が出版する「Principles of Gene Manipulation:An 5 Introduction to Genetic Engineering」と題するテキスト(R.W.OldおよびS.B.,第4版(1989))にみることができる。
記載される通り、本発明はほかにも、本発明のペプチドと機能的に同等なペプチドまたは「機能保存的変異体」を含む。この説明で使用される意味において、「機能的に同等な」という表現は、問題のペプチドが、例えば炎症を軽減する能力などの本発明のペプチドの生物活性を少なくとも1つ有することを意味する。
本発明のペプチドの効果は、ペプチドにより心血管疾患の炎症が軽減したことを評価する簡単な試験を実施することによって、当業者に明らかになるであろう。例えば、単離したヒト好中球、マクロファージまたは内皮細胞5×10個を100ng/mLのLPSおよび/または10μg/mLの抗TREM−1 mAbの存在下、20μg/mLのポリペプチドを加えて、または加えずに、37℃/5%COで24時間インキュベートする。次いで、上清を収集し、TNF−α、IL−6およびGM−CSFの濃度をELISAによって測定する。被験ペプチドがTREM−1を阻害すれば、サイトカイン濃度がペプチドを加えない条件に比して最大30%低下するはずである。
本発明の核酸、ベクターおよび組換え宿主細胞
本発明の第二の態様は、本発明によるペプチドをコードする核酸分子に関する。
好ましい実施形態では、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11または配列番号12の配列を有するペプチドをコードする核酸分子。
「コード配列」またはRNA、ペプチド、タンパク質もしくは酵素などの発現産物を「コードする」配列とは、発現するとRNA、ペプチド、タンパク質または酵素の産生をもたらすヌクレオチド配列のことである、すなわち、このヌクレオチド配列はタンパク質または酵素のアミノ酸配列をコードするものである。タンパク質のコード配列は開始コドン(通常、ATG)および停止コドンを含み得る。
このような核酸分子は、当業者に周知の従来の方法によって、特に天然のタンパク質をコードする遺伝子の部位特異的変異誘発によって入手し得る。通常、前記核酸はDNAまたはRNA分子であり、これをプラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージまたはウイルスベクターなどの適切なベクターに含ませ得る。
したがって、本発明のさらなる目的は、本発明の核酸分子が転写を制御する適切なエレメント(特にプロモーター、エンハンサーおよび任意選択でターミネーター)および任意選択で翻訳と関連付けられたベクターおよび発現カセットのほか、本発明による核酸分子が挿入された組換えベクターに関する。このような組換えベクターは、例えば、クローニングベクターまたは発現ベクターであり得る。
「ベクター」、「クローニングベクター」および「発現ベクター」という用語は、DNAまたはRNA配列(例えば、外来遺伝子)を宿主細胞内に導入して宿主を形質転換し、導入した配列の発現(例えば、転写および翻訳)を促進させ得る運搬体を意味する。
本発明のペプチドまたはキメラ誘導体をコードする遺伝子を挿入し発現させることができる限り、動物細胞用の任意の発現ベクターを使用し得る。適切なベクターの例としては、pAGE107、pAGE103、pHSG274、pKCR、pSG1ベータd2−4などが挙げられる。
プラスミドの他の例としては、複製起点を含む複製プラスミドまたは例えばpUC、pcDNA、pBRなどの組込みプラスミドが挙げられる。
ウイルスベクターの他の例としては、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクターおよびAAVベクターが挙げられる。このような組換えウイルスは、当該技術分野で公知の技術、例えば、パッケージング細胞にトランスフェクトすることによって、またはヘルパープラスミドもしくは30ウイルスによる一過性トランスフェクションなどによって作製し得る。ウイルスパッケージング細胞の典型的な例としては、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞などが挙げられる。このような複製欠損組換えウイルスを作製するための詳細なプロトコルについては、例えば、国際公開第95/14785号、同第96/22378号、米国特許第5,882,877号、同第6,013,516号、同第4,861,719号、同第5,278,056号および国際公開第94/19478号にみることができる。
動物細胞用の発現ベクターに使用されるプロモーターおよびエンハンサーの例としては、SV40の初期プロモーターおよびエンハンサー(Mizukami T.ら,1987)、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーターおよびエンハンサー(Kuwana Yら,1987)、免疫グロブリンH鎖のプロモーター(Mason JOら,1985)およびエンハンサー(Gillies SDら,1983)などが挙げられる。
本発明にはほかにも、in in vivoまたはex vivoの遺伝子治療に使用することができる、本発明の核酸分子を含む遺伝子送達システムが含まれる。これには、例えば、従来の方法で遺伝子治療に使用される、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルスに由来するベクターなどのウイルス転移ベクターが含まれる。これにはほかにも、本発明の核酸分子と非ウイルス遺伝子送達ビヒクルとを含む遺伝子送達システムが含まれる。非ウイルス遺伝子送達ビヒクルの例としては、リポソームおよびポリエチレンイミン、シクロデキストリン、ヒスチジン/リジン(HK)ポリマーなどのポリマーが挙げられる。
本発明の別の目的にはほかにも、少なくとも1つの本発明による核酸分子により遺伝的に形質転換した原核または真核宿主細胞がある。
「形質転換」という用語は、「外来性」(すなわち、外因性または細胞外)の遺伝子、DNAまたはRNA配列を宿主細胞に導入し、宿主細胞が導入遺伝子または配列を発現して所望の物質、通常、導入遺伝子または配列によってコードされるタンパク質または酵素を産生させることを意味する。導入DNAまたはRNAを受け取り発現する宿主細胞は「形質転換された」ことになる。
ペプチド、特に本発明によるペプチドの発現および産生には、真核細胞、特に哺乳動物細胞、より具体的にはヒト細胞を選択するのが好ましい。
通常、誘導体の適切な翻訳後修飾にプロセシングする能力があることから、CHO、BHK−21、COS−7、C127、PER.C6またはHEK293 25などの細胞系を使用し得る。
本発明による発現ベクターの構築、宿主細胞の形質転換は従来の分子生物学技術を用いて実施することができる。本発明のV−ATPアーゼc−サブユニット誘導体は、例えば、本発明による遺伝的に形質転換した細胞を培養し、前記細胞によって発現された誘導体を培養物から回収することによって得られる30であり得る。次いで、これらを必要に応じて、それ自体が当業者に公知の従来の方法、例えば、分画沈殿法、特に硫酸アンモニウム沈殿法、電気泳動、ゲルろ過、アフィニティークロマトグラフィーなどによって精製し得る。
特に、本発明によるタンパク質の作製には、組換えタンパク質を調製および精製するための従来の方法を用い得る。
治療法、使用および医薬組成物
本発明の第三の目的は、心血管疾患の治療に使用するための本発明によるペプチドに関する。
本発明の1つの目的は治療を必要とする対象の心血管疾患を治療する方法であり、この方法は対象に治療有効量の上記ペプチドを投与することを含む。一実施形態では、前記方法は上記ペプチドを投与することを含み、前記ペプチドはTREM−1を阻害する。
特に限定されないが、心筋および脳梗塞、急性心筋梗塞、虚血、冠動脈心疾患、急性冠動脈症候群、脳卒中、動脈瘤、安定または労作性狭心症、心筋症、高血圧性心疾患、心不全(慢性および急性)、肺性心、不整脈、心内膜炎、心筋炎などの炎症性心疾患、末梢動脈疾患、SIRSによる心筋および血管機能不全、アテローム性動脈硬化症を含めた、本発明による心血管疾患。
一実施形態では、心血管疾患病態は心筋梗塞である。
別の実施形態では、心血管疾患病態はアテローム性動脈硬化症である。
別の実施形態では、心血管疾患病態はSIRSによる心筋および血管機能不全である。
一実施形態では、心血管疾患は腸間膜虚血再灌流ではない。
別の実施形態では、心血管疾患は複数菌敗血症時の心血管保護を含まない。
一実施形態では、本発明のペプチドを敗血症の治療に使用しない。
一実施形態では、本発明のペプチドを虚血および再灌流症候群の治療に使用しない。
一実施形態では、本発明のペプチドを凝固亢進状態の患者の治療に使用しない。
一実施形態では、本発明のペプチドを炎症による出血の治療に使用しない。
一実施形態では、本発明のペプチドを急性ウイルス性心筋炎の治療に使用しない。
本発明の一実施形態では、本発明のペプチドを心筋および脳梗塞、心筋虚血、冠動脈心疾患、脳卒中、動脈瘤、安定または労作性狭心症、心筋症、高血圧性心疾患、心不全(慢性および急性)、肺性心、不整脈、心内膜炎、心筋炎などの炎症性心疾患、末梢動脈疾患、SIRSによる心筋および血管機能不全ならびにアテローム性動脈硬化症からなる群で選択される心血管疾患の治療に使用する。
特定の実施形態では、本発明は、心血管疾患の治療に使用するための配列番号2のアミノ酸配列から選択される少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むペプチドおよび機能保存的変異体または配列番号1のアミノ酸配列から選択される少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むペプチドおよび機能保存的変異体に関する。
特定の実施形態では、本発明は、心血管疾患の治療に使用するための配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11または配列番号12に示されるアミノ酸配列のペプチドに関する。
一実施形態では、本発明はほかにも、心血管疾患の治療に使用するための本発明による単離核酸、本発明によるプラスミド、本発明による発現ベクターまたは本発明による宿主細胞に関する。
本発明によるペプチドは、そのデコイ受容体の特性により炎症性病態を治療することができる。
「デコイ受容体」は、ポリ本発明によるペプチド(TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチド)がTREM−1リガンドを捕捉し、そのTREM−1に対する生理学的作用を妨げることを意味する。
したがって、本発明によるペプチドは、より効果的に心血管疾患を阻止する目的で併用療法(複数の治療標的を対象とする)の一部を形成し得る。
本発明のさらなる目的は、治療有効量の少なくとも1つの本発明によるペプチドを少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤とともに含む医薬組成物である。ある特定の実施形態では、前記医薬組成物はほかにも、1つまたは複数の(COOH)ペプチドを含有する。あるいは、本発明の医薬組成物は、本発明のペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を含む治療有効量のベクターを、少なくとも1つの補助剤および/または薬学的に許容される添加剤とともに含有し得る。前記ベクターは遺伝子治療に使用され得る。
「治療有効量」は、任意の医学的処置に適用可能な妥当な利益/リスク比で心血管疾患を治療するのに十分な量の本発明のキメラ誘導体を意味する。
本発明の化合物および組成物の総1日量は、主治医によって妥当な医学的判断の範囲内で決定されることが理解されよう。任意の特定の患者に対する具体的な治療有効量レベルは、治療する障害およびその障害の重症度;使用する具体的な化合物の活性;使用する具体的な組成物、患者の年齢、体重、全般的健康状態、性別および食事;投与のタイミング、投与経路、使用する具体的な化合物の排泄速度;治療の継続期間;使用する具体的なペプチドと併用して、または同時に使用する薬物;ならびに医学分野で周知の同様の因子を含めた様々な因子によって決まる。例えば、所望の治療効果を得るのに必要な用量よりも低いレベルの化合物の用量から開始し、所望の効果が得られるまで用量を漸増させることは、十分当業者の技能範囲内にある。しかし、生成物の1日量は、成人1日当たり0.01〜1,000mgの広範囲にわたって変化し得る。組成物は、治療する患者に対する用量を対症的に調節するために、0.01mg、0.05mg、0.1mg、0.5mg、1.0mg、2.5mg、5.0mg、10.0mg、15.0mg、25.0mg、50.0mg、100mg、250mgおよび500mgの有効成分を含有するのが好ましい。薬剤は通常、約0.01mg〜約500mgの有効成分、好ましくは1mg〜約100mgの有効成分を含有する。有効量の薬物は通常、体重1kgに対して1日当たり0.0002mg〜約20mg、特に体重1kgに対して1日当たり約0.001mg/kg〜7mg/kgの用量レベルで供給される。
本発明の活性な産物(ペプチド、核酸、ラスミド、発現ベクターまたは宿主細胞)を心血管疾患の治療に使用するために投与し得る。投与するべき本発明の活性な産物[ペプチドまたはベクター(構築物)]の治療有効量ならび本発明のペプチドおよび/または医薬組成物で病的状態を治療するための用量は、患者の年齢および状態、障害または疾患の重症度、投与の方法および頻度ならびに使用する具体的なペプチドを含めた多数の因子によって左右される。
本発明のペプチドまたはベクター(構築物)を含有する医薬組成物の提供形態は、投与に適した任意の形態、例えば、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤または液剤などの固体、液体または半固体であってよく、これらの組成物は、任意の適切な手段によって、例えば、経口的に、非経口的に、吸入により、または局所的に投与し得るため、所望の投与形態を形成するのに必要な薬学的に許容される添加剤を含む。医薬品を投与するための様々な医薬形態およびそれを得るのに必要な添加剤に関する概説が、例えば、「Tratado de Farmacia Gal nica」(製剤学に関する論文),C.Faul i Trillo,1993,Luz n 5,S.A.Ediciones,Madridにみられる。
経口投与、舌下投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、経皮投与、局所投与、経肺投与または経直腸投与のための本発明の医薬組成物では、有効成分を単独で、または別の有効成分と組み合わせて、従来の製薬補助剤との混合物として単位投与形態で動物およびヒトに投与することができる。適切な単位投与形態には、錠剤、ゲル剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤および経口懸濁剤もしくは液剤などの経口経路形態、舌下およびバッカル投与形態、エアゾール剤、埋植物、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、皮下、経皮、髄腔内および鼻腔内投与形態ならびに経直腸投与形態が含まれる。
好ましくは、医薬組成物は、注射可能な製剤に薬学的に許容される賦形剤を含有する。これらは具体的には、等張で無菌の生理食塩水(リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムもしくは塩化マグネシウムなど、またはこのような塩の混合物)または場合に応じて滅菌水もしくは生理食塩水の添加によって注射用液剤を構成することが可能な乾燥組成物、特に凍結乾燥であり得る。
注射用途に適した医薬形態としては、無菌水溶液剤または分散液剤;ゴマ油、ラッカセイ油または水性プロピレングリコールを含む製剤;および無菌注射用液剤または分散液剤の即時調製のための無菌粉末が挙げられる。いずれの場合にも、その形態は無菌状態であり、かつ容易に注射可能な程度に流動性でなければならない。それは製造および保管条件下で安定であり、かつ細菌および真菌などの微生物による汚染作用から保護されなければならない。
本発明の化合物を遊離塩基または薬学的に許容される塩として含む液剤は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合した水で調製することができる。このほか分散液剤は、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびその混合物ならびに油で著精することができる。通常の保管および使用条件下では、これらの調製物は微生物の増殖を抑えるために保存剤を含有する。
本発明によるペプチドは、中性または塩形態の組成物に製剤化することができる。薬学的に許容される塩としては酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基との間で形成される)が挙げられ、これは、例えば塩酸もしくはリン酸などの無機酸または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸との間で形成される。遊離カルボキシル基との間で形成される塩はこのほか、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化第二鉄などの無機塩基およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基に由来するものであり得る。
このほか担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、適切なその混合物および植物性油を含有する溶媒または分散媒であり得る。例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散剤の場合は必要な粒子径を維持することによって、また界面活性剤の使用によって、適切な流動性を維持することができる。様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって、微生物の活動を抑制することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むのが好ましい。組成物中に吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用することによって、注射用組成物の持続的吸収をもたらすことができる。
必要な量の活性なペプチドを必要に応じて上記の他の成分とともにしかるべき溶媒に組み込んだ後、ろ過滅菌することによって、無菌注射用液剤を調製する。一般に、基礎となる分散媒と、上に挙げた他の成分のうち必要な成分とを含有する無菌賦形剤に、滅菌した様々な有効成分を組み込むことによって分散液剤を調製する。無菌注射用液剤を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、予め滅菌ろ過した有効成分と任意の追加の所望成分との溶液からその粉末を得ることができる、真空乾燥および凍結乾燥技術である。
製剤化すると、投与剤形に適合した方法で、治療効果の得られる量で液剤が投与される。製剤は上記注射用液剤のタイプのような様々な剤形で容易に投与されるが、ほかにも薬物放出カプセル剤などを用いることができる。水溶液での非経口投与には、例えば、溶液を必要に応じて適切に緩衝し、最初に液体希釈剤を十分な量の生理食塩水またはグルコースで等張にするべきである。このような特定の水溶液は、特に静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与および腹腔内投与に適している。これに関連して、本開示を踏まえれば、当業者には使用し得る無菌水性媒質がわかるであろう。例えば、1回量を等張NaCl溶液1mlに溶かし、これを皮下注入液1000mlに加えるか、注入しようとする部位に注射し得る。治療する対象の状態に応じて、必然的に用量の多少の変更が生じる。いずれの場合にも、投与に関与する者が個々の対象に適した用量を決定する。
本発明のペプチドは、1用量当たり約0.0001〜1.0ミリグラム、約0.001〜0.1ミリグラムまたは約0.1〜1.0ミリグラム、場合によっては約10ミリグラムなどを含む治療用混合物として製剤化され得る。ほかにも、複数の用量を投与し得る。
静脈内または筋肉内注射などの非経口投与用に製剤化された本発明の化合物に加えて、他の薬学的に許容される形態としては、例えば、錠剤をはじめとする経口投与用固形物;リポソーム製剤;持効性カプセル剤;および現在用いられている他の任意の形態が挙げられる。
既に述べた通り、本発明によるペプチドは、より効果的に心血管疾患を阻止する目的で併用療法の一部を形成し得る。この場合、本発明は、少なくとも1つの本発明のペプチドを1つまたは複数の別の抗心血管疾患化合物、例えば、スタチン化合物、抗凝固剤法、抗アルドステロン化合物、ACE阻害剤(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)およびベータ遮断剤とともに含む医薬組成物を提供する。
さらに、本発明は、哺乳動物の心血管疾患を治療する方法を提供し、この方法は、前記心血管疾患に罹患している前記哺乳動物に、治療有効量の少なくとも1つの本発明のペプチドまたは本発明のペプチドをコードする少なくとも1つのDNA配列を含むベクターを、好ましくはそれを含有する医薬組成物の形態で投与することからなる。本発明の1つの特定の実施形態では、前記医薬組成物は、1つまたは複数の本発明のペプチドに加えて、1つまたは複数の(COOH)ペプチドを含有する。
一実施形態では、特に限定されないが、心筋および脳梗塞、急性心筋梗塞、虚血、冠動脈心疾患、急性冠動脈症候群、脳卒中、動脈瘤、安定または労作性狭心症、心筋症、高血圧性心疾患、心不全(慢性および急性)、肺性心、不整脈、心内膜炎、心筋炎などの炎症性心疾患、末梢動脈疾患、SIRSによる心筋および血管機能不全、アテローム性動脈硬化症を含めた、本発明による心血管疾患。
本発明を以下の図面および実施例によってさらに説明する。しかし、これらの実施例および図面は、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドによるTREM−1調節が、αTREM−1およびLPSによってin vitroで誘発した血管機能不全に対して有益であることを示す図である。大動脈リングのフェニレフリン(AおよびB)およびアセチルコリン(C)に対する濃度−応答曲線。健常ラットから大動脈を採取し、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドまたはLR12スクランブルペプチドを加え、または加えずに、αTREM−1(5μg/mL)およびLPS(10μg/mL)によりin vitroで刺激した。B:一部の大動脈から内皮を剥離した(−E)。データは少なくとも5つの異なる実験の代表的なものであり、p値:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns:有意差無し。 TREM−1が伝導動脈および抵抗動脈由来の内皮細胞に発現することを示す図である。図示されるようにLPSを加えて、または加えずにマウス大動脈(伝導動脈)(A)およびラット腸間膜動脈(抵抗動脈)(B)を刺激した。qRT−PCRによりTrem−1発現を測定した。データは少なくとも5つの異なる実験の代表的なものであり、p値:***p値<0.001。ns(有意差無し)。 TREM−1が微小血管内皮細胞に構成的に発現し誘導性であることを示す図である。マウス肺および肝臓から単離したCD146+/VEGFR2+細胞(LuMECおよびLiMEC)をフローサイトメトリーによりTREM−1発現について分析した。TREM−1はLi/LuMECに構成的に発現する(A)。TREM−1発現は実験的敗血症時(A)にin vivoで誘導性であり、またLPSによる1時間の刺激時(B)にin vitroで誘導性である。このほか、FACSによりTREM−1およびVEGFR2発現の動態を解析した(C)。LPSにより時間依存性のTREM−1およびVEGFR2発現のアップレギュレーションが誘導され、これはTREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドによって阻害された。データは少なくとも10の異なる実験の代表的なものであり、p値:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。 LPS刺激時のTREM−1発現の動態を示す図である。(A)in vitroのLuMEC(CD146+、VEGFR2+)をLPSで4時間および12時間刺激し、qRT−PCRにより(A)Trem−1、Tnf−α(B)およびIl−6(C)の発現について解析した。データは少なくとも10の異なる実験の代表的なものである。 LPSで24時間刺激したLuMECによるサイトカイン産生に対するTREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドの効果を示す図である。(A)LPSで24時間刺激したLuMECの上清中のタンパク質濃度をELISAにより分析した。*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001。(B)LPSで24時間刺激したLuMECにおけるサイトカイン/ケモカイン測定。データは対照細胞とTREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドで処置した細胞との間の比で表されている(比が1を上回れば、処置細胞よりも対照細胞の方が濃度が高いことを表す)。データは少なくとも10の異なる実験の代表的なものである。 敗血症時にin vivoで阻害された血管細胞内シグナル伝達経路が、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドによるTREM−1調節によって回復することを示す図である。TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドは、Akt経路およびCox−1発現の阻害を正常に戻すことに加えて、Cox−2およびiNOSを例とする誘導性経路のアップレギュレーションを回復させることができる。この効果は大動脈(A)および腸間膜動脈(B)で測定された。データは少なくとも5つの異なる実験の代表的なものであり、p値:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。 TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドによるTREM−1調節が敗血症性心機能不全に対して有益であることを示す図である。敗血症性心機能不全のラットモデルにTREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドを投与すると、Millarカテーテルによって測定される固有の心機能(FEVG、ESPVR、dpdtmax/Ved、PRSW)が増大する。データは少なくとも10の異なる実験の代表的なものである。 TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドによるTREM−1調節が敗血症による低血圧および心機能不全に対して有益であることを示す図である。(A)敗血症性心機能不全のミニブタモデルにTLT−1由来ペプチドおよびTREM−1由来ペプチドを投与すると、安定な平均動脈圧(85mmHg)の維持に必要なノルエピネフリン注入量が減少する。実際、対照個体よりもTLT−1由来ペプチドおよびTREM−1由来ペプチドで処置した個体の方が常にMAPが高く、ノルエピネフリン投与量が少なかった。(B)心係数、心拍出力係数、SvO2および酸素運搬量の評価。これらのパラメータはすべて、TLT−1由来ペプチドおよびTREM−1由来ペプチドで処置個体の方が対照個体よりも高い値を示した。(C)LR12によりアシドーシスおよび高乳酸塩血症の発現が減弱された。LR12群はn=6、LR12スクランブル群はn=5である。 TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドによるTREM−1調節が敗血症による拡張期、収縮期および平均動脈圧の変化に対して有益であることを示す図である。敗血症性心機能不全(内毒血症)のサルモデルにTLT−1由来ペプチドおよびTREM−1由来ペプチドを投与すると、内毒素による一過性の血圧低下が完全に予防された(平均血圧(A)、収縮期血圧(B)および拡張期血圧(C))(p<0.001、対照ペプチド対LR12)。平均±SD。N=6/グループ。 TREM−1が心筋組織に発現し、虚血時にアップレギュレートされることを示す図である。(A)ベースライン時の心筋ならびに心筋梗塞の6時間後、12時間後および24時間後の梗塞領域におけるTrem−1 mRNAのq−PCRによる定量化。(B)心筋梗塞の24時間後におけるTREM−1タンパク質の定量化。データは少なくとも5つの異なる実験の代表的なものである。結果は平均±SDである。p値は*p<0.001[健常領域と梗塞領域との比較]である。 TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドが、TREM−1を調節することによって、梗塞を起こした心筋における白血球動員および遠隔区画からの白血球動員を制御することを示す図である。(A)TLT−1由来ペプチドおよびTREM−1由来ペプチドまたは対照ペプチド(LR12−scr)で処置したマウスにおける様々な時点での梗塞を起こした心筋への白血球浸潤のフローサイトメトリーによる定量化;1グループ当たりおよび1時点当たりのマウスはn=5;LR12−scrとの比較で*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、偽手術との比較で≠p<0.05、≠≠p<0.01である。(B)MI後の様々な時点における骨髄、血液および脾臓中の白血球のサブタイプのフローサイトメトリーによる定量化;各時点においてn=6〜7;LR12−scr処置マウスとの比較で***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05;偽手術マウスとの比較で≠≠p<0.01、≠p<0.05である。(C)MI後のMCP−1およびMCP−3の血漿中濃度;マウスはn=5;LR12−scr処置個体との比較で***p<0.001である。 TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドが、TREM−1を阻害することによって、マウスの虚血時に心筋炎症性反応を調節することを示す図である。この実験には、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドまたは対照LR12スクランブルペプチド(「対照」)で処置したマウスから心筋梗塞誘発の24時間後に心筋溶解物を得た。2つの領域、すなわち対照個体の梗塞を起こした区域から遠位にある部分から採取した健常領域および梗塞領域を検討した。データは少なくとも5つの異なる実験の代表的なものである。結果は平均±SDである。p値は*p<0.001[LR12と対照との比較]である。ホスホ(p)−p38、(p)−ERK1/2、iNOS、Cox2、(p)−Akt、(p)−GSK3β、Socs3に対する抗体で分析した心筋組織溶解物のウエスタンブロット。 マウスの虚血時の心筋組織によるサイトカイン産生に対するTREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドの効果を示す図である。この実験には、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドまたは対照LR12スクランブルペプチド(「対照」)で処置したマウスから心筋梗塞誘発の6時間後、24時間後および/または96時間後に心筋溶解物を得た。梗塞領域をサイトカイン/ケモカイン産生について分析した。データは少なくとも5つの異なる実験の代表的なものである。p値は*p<0.001[LR12と対照との比較]である。(A)梗塞を起こした心筋組織における心筋梗塞24時間後のサイトカイン/ケモカイン測定。データは対照個体とTREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドで処置したマウスとの間の比で表されている(比が1を上回れば、処置マウスよりも対照マウスの方が濃度が高いことを表す)。(B)サイトカインの発現:梗塞を起こした心筋組織における心筋梗塞6時間後、24時間後および96時間後のTnf−α、Il−6およびIL−10のmRNAレベル。 TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドが、TREM−1を阻害することによって、心筋梗塞領域のプロテアーゼ活性を低下させることを示す図である。この実験には、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドまたは対照LR12スクランブルペプチド(「対照」)で処置したマウスから心筋梗塞誘発の6時間後、24時間後および96時間後に心筋溶解物を得た。梗塞領域を分析した。データは少なくとも5つの異なる実験の代表的なものである。(A)Q−PCRによるMmp9 mRNAの定量化;(B)Timp−1;ならびに(C)ベースライン時、心筋梗塞の12時間後、24時間後および96時間後のMmp−9ゼラチナーゼ活性を示す代表的なゲル内酵素電気泳動。上:対照ペプチドで処置した個体;下:LR12で処置した個体。 TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドが、TREM−1を阻害することによって、マウスの心筋梗塞後の生存率を改善することを示す図である。成体雄Balb/cマウス(20〜23g)に心筋虚血操作を加え、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドを反復投与する(0.9%NaCl 0.2mL中100μgを1日1回で5日間)グループ、スクランブルLR12を反復投与する(0.9%NaCl 0.2mL中100μgを1日1回で5日間)グループまたは0.9%NaCl 0.2mL中10μgの抗TREM−1 mAbを腹腔内注射するグループに無作為に割り付けた(1グループ当たりn=10〜15)。生存率を1週間モニターし、ログランク検定により解析した(第5日以降、死亡個体はみられなかった)。データは少なくとも15の異なる実験の代表的なものである。 TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドが、TREM−1を阻害することによって、ラットの心筋虚血−再灌流後の心機能を改善することを示す図である。成体雄Wistarラットに心筋虚血−再灌流操作を加え、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドを反復投与する(0.9%NaCl 0.2mL中、3mg/kg、1日1回で5日間)グループまたはスクランブルLR12を反復投与する(0.9%NaCl 0.2mL中、3mg/kg、1日1回で5日間)グループに無作為に割り付けた(n=10)。心筋損傷の6週間後、麻酔下でコンダクタンスカテーテルを用いて心機能を検討した。TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドで処置したラットの方が対照ラットよりもEmax、ESPVRおよびPRSWが高い値を示した。いずれもp<0.02[対照とLR12との比較]である。 TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドが、TREM−1を阻害することによって、ラットの心筋梗塞後の収縮期および拡張期機能を改善することを示す図である。成体雄Wistarラットに心筋虚血操作を加え、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドを反復投与する(0.9%NaCl 0.2mL中、3mg/kg、1日1回で5日間)グループまたはスクランブルLR12を反復投与する(0.9%NaCl 0.2mL中、3mg/kg、1日1回で5日間)グループに無作為に割り付けた(n=20)。心筋損傷の6週間後、麻酔下でコンダクタンスカテーテルを用いて心機能を検討した。検討したいずれのパラメータも、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドで処置したラットの方が対照ラットよりも良好な値を示した(いずれもp<0.01[対照とLR12との比較]である)。 4週間にわたってPBS(左)またはLR12(右)の連日腹腔内注射によって処置したapoE−/−マウスの大動脈洞のアテローム性動脈硬化プラークを示す図である。TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドで処置すると、Red Oil染色を用いて評価される大動脈洞内のアテローム性動脈硬化症の発現が減少する:LR12処置では103318μmであるのに対して賦形剤投与では146736μm、P=0.02である。データは少なくとも15の異なる実験の代表的なものである。 アテローム性動脈硬化プラークにおけるマクロファージ染色(抗MOMA2、赤色)を示す図である。apoE−/−マウスをTREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドで処置すると、免疫蛍光染色法および免疫組織化学法(抗MOMA2)による定量化でアテローム性動脈硬化プラークにおけるマクロファージ浸潤が対照個体よりも27%減少する(p=0.004)。 TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドが、TREM−1を阻害することによって、第7日における循環血中の非古典的単球集団の減少を引き起こすことを示す図である。アテローム硬化症マウスモデルの第7日、循環血中のCD115Gr1lowおよびCD115Gr1high単球を染色後にフローサイトメトリーにより計数した。データは少なくとも5つの異なる実験の代表的なものである。(P<0.05)。 :TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドが、TREM−1を阻害することによって、第28日における白血球増加を軽減することを示す図である。アテローム硬化症マウスモデルの第28日、循環血中のCD115Gr1lowおよびCD115Gr1high単球を染色後にフローサイトメトリーにより計数した。データは少なくとも5つの異なる実験の代表的なものである。*p<0.05;**p<0.001。 TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドで処置すると、病変内の単球浸潤が減少することを示す図である。無菌PBSで1:4に希釈した1μmのFluoresbriteグリーン蛍光プレーンマイクロスフェアを後眼窩静脈内に注射することにより、単球をin vivoで標識した。病巣内の蛍光ビーズの数が単球動員を反映する。データは少なくとも5つの異なる実験の代表的なものである。P<0.05。
材料および方法
ペプチド
GenBank/EMBL/DDBJ(アクセッション番号AY078502、AF534822、AF241219およびAF287008)のTLT−1およびTREM−1の配列に基づいて、TREM−1ペプチドおよびTLT−1ペプチドをその細胞外ドメインの様々な部分(TREM1−LP17、TREM1−LP12、TREM1−LP6−1、TREM1−LP6−2、TREM1−LP6−3、TLT1−LR17、TLT1−LR12、TLT1−LR6−1、TLT1−LR6−2およびTLT1−LR6−3)を模倣して設計した。これらはin vivoアッセイ用にC末端アミド化ペプチドとして化学合成したものである(Pepscan Presto BV、Lelystad、The Netherland)。分取精製後、質量分析および分析逆相高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、正確なペプチドが99%超の収率で得られ、均一であった。これらのペプチドには内毒素が含まれていなかった。対応するスクランブルペプチドを同様に合成し、対照ペプチドとして用いた。
動物
実験方法はすべて、実験動物の管理および使用に関する地方委員会による承認を受け、動物実験に関する国際ガイドラインに従って実施したものである。Charles River社(Strasbourg、France)からマウスおよびラットを入手した。
マウス胸部大動脈およびラット腸間膜動脈の分離
ペントバルビタールナトリウムの腹腔内注射により動物を麻酔した正中腹部切開を実施し、胸郭を開いて胸部大動脈または腸間膜動脈(ラット)を露出させた。
血管から血液を除去し、10%ウシ胎仔血清と抗生物質を添加したRPMI培地で20時間インキュベートした。以下のように様々な条件を無作為に適用した:1)対照血管、2)LPS(10μg/mL)とex vivoでインキュベートした血管、3)LPSおよびペプチドによる処置、4)アゴニストのαTREM−1(5μg/mL)、5)LPSとインキュベートし処置した内皮剥離血管。
一部の実験では、刺激後、血管から全RNAおよびタンパク質を抽出した。
血管反応性
ワイヤーミオグラフ(EMKA Technologies、France)で大動脈の血管反応性を検討した。この実験は以下の組成の生理食塩水(PSS)中、37℃で常時95%O2/5%COを通気しながら実施した:119mmol/L NaCl、4.7mmol/L KCl、14.9mmol/L NaHCO3−、1.2mmol/L MgSO42−、2.5mmol/L CaCl2、1.18mmol/L KH2PO4−および5.5mmol/Lグルコース。至適な受動張力下で平衡化(少なくとも20分間)した後、KCl脱分極(100mM)と10μMフェニレフリン(Phe)(Sigma−Aldrich、Saint Quentin Falavier、France)の組合せに応答した2回の連続した収縮を用いて、血管の最大収縮能を試験した。20分のウォッシュアウト時間の後、この血管収縮薬アゴニストの累積投与(1nM〜100μM)により、PEに対する濃度−応答曲線を求めた。新たな洗浄時間の後、1μMのフェニレフリン(Phe)で予備収縮させてからアセチルコリン(ACh)(1nM〜100μM;Sigma、St Louis、MO、USA)の弛緩効果を試験することにより、内皮依存性の弛緩を評価した。50%を超える弛緩を引き起こすアセチルコリン(1μM)により、機能的な内皮の存在を確認した。
肺および肝臓微小血管内皮細胞(LuMECおよびLiMEC)の分離
深麻酔(ペントバルビタール)下でマウスを屠殺し、肺および肝臓を採取した。一部修正を加えた既に記載されているプロトコル[Daqingら,1998]に従って、マウス肺および肝臓の微小血管内皮細胞の分離を実施した。簡潔に述べると、臓器を10%FBS−DMEMで洗浄し、1〜2mm四方に細切し、I型コラゲナーゼ(2mg/ml、Gibco)で37℃にて1時間、時折攪拌しながら消化した。細胞消化物を70μmのセルストレーナーでろ過し、1,500rpmで遠心分離し、20%FBS、100μg/ml ECGS(BD Biosciences)および抗生物質を添加したDMEM/F12培地(Gibco)を含むゼラチンコートディッシュに細胞を播いた。第1日、浮遊細胞を除去し、PBSで洗浄し、新鮮な培地を加えた。5日後、CD146 MicroBead Kitを用いて、これらの細胞の1回目の精製を実施した。トリプシン処理後、細胞を成長培地に再懸濁させ、次いで新鮮なゼラチンコートディッシュに播いた。15日後、同じ手順に従って細胞に2回目の精製を実施した。純度(85%超)および内皮細胞の生存率のを確認した。さらに、FACS解析を用いて、フローサイトメトリーによりVEGFR2およびCD146発現を判定し細胞の表現型を評価した。
ミニブタの調製ならびに敗血症による低血圧および敗血症性心機能不全のモニタリング
生体雄ミニブタ(Sus scrofa domestica、ベトナムダルマミニブタ、30〜40kg)をElevage Ferry社(Vosges、France)から購入した。手術前、ミニブタに水を自由摂取させて一晩絶食させた。ケタミン(10mg/kg)およびミダゾラム(0.1mg/kg)の筋肉内投与により前麻酔を実施した。静脈内ペントバルビタール(10mg/kgの初期ボーラス投与および6〜8mg/(kg・時)の持続投与)により麻酔を誘導および維持し、必要に応じてスフェンタニル(10μg)およびパンクロニウム(4mg)を間欠的に用いた。ミニブタに機械的換気を施行した(炭酸正常状態が維持されるよう1回換気量8ml/kg、PEEP 5cm H2O、FiO2 0.21、呼吸数14〜16回/分に調節した)。左頸静脈を露出させ、トリプルルーメンラインを挿入した。右頸静脈にもカテーテルを挿入し、心拍出量、SvO2、右心房圧および肺動脈圧が連続的に記録できるようSwan−Ganzカテーテルを配置した。動脈圧の連続測定のために右頸動脈カテーテルを挿入した。膀胱内のカテーテルにより尿の採取を可能にした。
計測後、正中開腹術を施行して左結腸から糞便を採取し、1.5g/kgを0.9%NaCl 200mLに懸濁させ、38℃で2時間インキュベートした。手術後、腹膜炎誘発および腹水ドレナージを実施するためチューブを留置した。
手術後、ミニブタを2時間回復させた後、ベースライン測定を実施した(「H0」と定義される)。試験全体を通じて通常の生理食塩水を常時投与した(10mL/(kg・時))。加温パッドまたは冷却を用いて体温を一定(±1℃)に維持した。
ベースラインデータ収集(H0)後、腹部チューブから自己糞便を投与して腹膜炎を誘発した後、鉗子で留めておいた。2時間後(H2)、ミニブタを無作為化により、LR12を投与するグループ(LR12群、n=6)または賦形剤(通常の生理食塩水)単独を投与するグループ(対照群、n=5)に割り付けた。5mg/kg(60mL中)のボーラス投与を30分間、静脈内実施した後、1mg/(kg・h)(15mL/時)の注入を開始し、試験期間を通じて継続した。
次いで、試験期間を通じて、経験豊富な徹底した医師が以下の指針に厳密に従って動物を管理した:
i)血行動態に関する目標:主な目的は平均動脈圧(MAP)を85mmHg超に維持することとした。この目的を達成するため、0.9%NaClの維持投与(7mL/(kg・時))に加えて、中心静脈圧(CVP)および肺動脈楔入圧(PAOP)が18mmHg未満の場合に限りヒドロキシエチルデンプン(試験期間全体で最大20mL/kg)(HES130/0.4、Voluven(登録商標)、Fresenius)の投与を認めた。ヒドロキシエチルデンプンが最大体積に達した場合、最大10μg/(kg・分)のノルエピネフリンの持続注入を開始した。
ii)呼吸に関する目標:主な目的はPaO2/FiO2比を300超、動脈PaCO2を35〜45mmHgに維持することとした。したがって、吸気/呼気の比を1:1付近、PEEPを最大15cmHO、呼吸数を最大30回/分に増大させることによって、人工呼吸器の設定を修正できるようにした。
iii)加温パッドまたは冷却を用いて体温を一定(±1℃)に維持するものとした。
iv)血糖を5〜7mmol/Lに維持する必要がある場合、静脈内グルコース注入を実施するものとした。
MAP、平均肺動脈圧(MPAP)、右心房圧(RAP)、心拍出量(CO)、心係数(CI)およびSvO2を含めた血行動態パラメータを常時モニターした。Swan−Ganzのモニタリングにより全身酸素運搬量(DO2)および全身酸素消費量(VO2)を計算した。心拍出力係数(W/m)をMAP×CI/451として計算した(24)。
サルの調製ならびに敗血症による低血圧および敗血症性心機能不全のモニタリング
雄カニクイザル(Macaca fascicularis)(2.8〜3.5kg、24か月齢、Le Tamarinier、La Route Royale、Tamarin、Mauritius)を用いた。LPS抗原投与前日にカニクイザルを絶食させたが、水は常時摂取とした。CIToxLABフランス倫理委員会(CIToxLAB France Ethical Committee)(CEC)が全試験計画を審査し承認した(Nr CEC:02221)。
薬物投与およびin vivoのLPS抗原投与。
LPS抗原投与の前日、バイタルサインおよび体重を記録した。翌朝、ベースラインの臨床検査室試料を採取し、ベースラインとなる一連のバイタルサインを記録した。テフロン(登録商標)カテーテルから橈側皮静脈または伏在静脈内に薬物を投与した。LPS投与には反対側の静脈を用いた。
サルを無作為化により、LR12を投与するグループまたはプラセボを投与するグループ(1グループ当たりn=6)に割り付けた。賦形剤(0.9%NaCl)のみを注入する4匹からなるグループを追加で設け、対照群とした。
時間0の時点で、15分間のLR12またはプラセボ溶液の静脈内注入を開始し、較正済みのシリンジポンプ(Harvard Apparatus)により12mL/時の速度で送達した(5mg/kg、10分間、2mL)。次いで、持続注入を2mL/時の速度でさらに8時間実施した(1mg/(kg・時)、8時間、16mL)。処置注入の直前、反対側のカテーテルから10分間にわたってLPS(10μg/kg)の静脈内ボーラス投与を実施した。全試験期間中、サルを拘束椅子に立位で固定して覚醒した状態に保ち、絶食を継続させた。
脈拍数および血圧について、15分毎のモニタリングを1時間、次いで30分毎のモニタリングを7時間実施した。
心筋梗塞のマウスモデル
全処置を6〜8週齢のマウス雄C57BL/Cに実施した。キシラジン(60mg/kg)の腹腔内注射によりマウスを麻酔し、背臥位に固定した。気管に挿管して換気した(1回換気量を200μl/25g、呼吸数を120回/分とした)。左側開胸術を施行後、左冠動脈を確認し、左心耳の先端から1.0mmの遠位部を8−0プロレン縫合糸で結紮した。虚血領域(左心室)の心筋の色が赤色から白色に変化したことによりLAD梗塞を確認した。胸部を閉じ、6−0絹糸で皮膚を縫合した。マウスをケージに戻し、完全に回復するまで監視した。
術後、死亡率についてマウスをモニターした。マウスを無作為化により、ペプチドを投与するグループ(連日腹腔内注射を5日間、5mg/kg)または投与しないグループに割り付け、生存をモニターした。あるいは、6時間後、24時間後、96時間後に、麻酔後にペントバルビタールナトリウムの過量投与によってマウスを屠殺した(1グループ当たりn=6)。胸骨正中切開術を施行後、心臓を摘出し、虚血領域および非虚血領域を切離した。次いで、RT−PCR、WB、免疫組織化学およびELISA分析用にARN抽出およびタンパク質抽出を実施した。
フローサイトメトリー
健常C57BL/6マウスおよび敗血症(CLP)マウスの微小血管内皮細胞(MEC)を記載される通りに分離し、FITCおよびPEとコンジュゲートした抗マウスVEGFR2および抗TREM−1と4℃で20分間インキュベートした。細胞をPBSで2回洗浄し、0.1%ホルムアルデヒドで固定した後、フローサイトメータで分析した。対照としてマウスIgG2aアイソタイプを同じ濃度で使用した。
他の実験では、FACS解析前にMECをLPS(0.1μg/ml)で2時間および6時間刺激するか、刺激しなかった。
梗塞組織から単細胞懸濁液を調製するため、心臓を採取し、鋭利な鋏で細切し、コラゲナーゼI、コラゲナーゼXI、DNアーゼIおよびヒアルロニダーゼ(Sigma−Aldrich)のカクテルに入れ、37℃で1時間振盪した。次いで、細胞を十分に破砕し、遠心分離した(15分間、500g、4℃)。
脾臓を摘出し、HBSS中、4℃にて3mlシリンジの先端で破砕し、70μmナイロンフィルター(BD)でろ過した。細胞懸濁液を4℃で10分間、300gで遠心分離した。赤血球を溶解し(Red Blood Cells Lysis溶液、Miltenyi)、脾細胞をHBSSで洗浄し、0.2%(重量/体積)BSAを添加したHBSSに再懸濁させた。クエン酸塩を抗凝固剤として用いて心臓穿刺により末梢血を採血し、赤血球を溶解した。最後に、大腿骨をHBSS 1mLで洗い流し、70μmナイロンフィルターでろ過し、4℃で10分間、300gで遠心分離して骨髄単細胞懸濁液を得た。血球計算盤を用いてトリパンブルー(BioRad)によりアリコートから総生存細胞数を求めた。
CD4またはCD8T細胞(CD4−またはCD8−APC、CD3ε−PE、CD45−FITC)、B細胞(CD19−PE、CD45−FITC)、顆粒球(CD45−FITC、Ly−6G−APC)、単球サブセット(CD115−PE、Ly−6C−APC、CD45−FITC)に対するmAbのカクテル(抗体はすべてMiltenyi Biotech社製)中で細胞懸濁液をインキュベートした。記録する細胞数を総生存細胞数(1mL当たりの総生存白血球数)と選択したゲート内にある細胞の百分率との積として計算し、組織(心臓)1mg当たり、器官(大腿骨および脾臓)当たりまたは1mL(血液)当たりで記録した。FC500サイトメータ(Beckman Coulter)でデータを得た。
RNA抽出およびポリメラーゼ連鎖反応解析
RNeasy Plus Mini Kit(Qiagen、Courtaboeuf、France)を用いて細胞または虚血領域および非虚血領域から全RNAを抽出しNanoDrop(ThermoScientific)で定量化した後、iScript cDNA合成キット(BioRad)を用いてレトロ転写し、Qiagen社から入手可能なプローブ(Quantitect Primers)を用いて、mTREM−1、mTNF−α、mIL−6、mMMP−9、mTIMP−1およびmActBについて定量的PCRにより定量化した。あるいは、PCRアレイ(Mouse Innate Immune/Endothelial Cells RT Profiler PCR Arrays、SABiosciences)用に全RNAをRT First Strand Kit(SABiosciences、Tebu−bio、Le Perray−en−Yvelines、France)でレトロ転写した。PCRはすべてMyiQ Thermal Cyclerで実施し、iQ5ソフトウェア(Qiagen)により定量化した。遺伝子発現をActBで正規化した。
タンパク質リン酸化解析
虚血領域および非虚血領域の組織またはMECをPhosphoSafe Extraction Reagent(Novagen)で溶解し、4℃で5分間、16,000gで遠心分離し、上清を収集した。ブラッドフォード法(Pierce)によりタンパク質濃度を求めた。次いで、溶解物をウエスタンブロット(Criterion XT Bis−Tris Gel、4〜12%、BioRadおよびPVDF膜、Millipore)で分析し、抗ホスホ−p38,抗−pERK1/2,抗−pAKT,抗−pGSK3β,抗−iNOS,抗−COX2,抗−SOCS3,抗−TREM−1および西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートした対応する二次抗体(Cell Signaling)ならびにSuperSignal West Femto Substrate(Pierce)で発色させた。抗p38,抗−ERK1/2,抗−AKT,抗−GSK3βまたは抗−チューブリンを正規化に用いた。このほか、免疫ブロット(Phospho−Kinase Array;R&D Systems)により複数のリン酸化タンパク質のパネルを検討した。LAS−4000イメージャーおよびMulti−Gaugeソフトウェア(Fujifilm)により捕捉および定量的シグナル密度分析を実施した。
サイトカイン濃度測定
ELISA(Mouse Quantikine ELISAキット、R&Dsystems)およびサイトカインパネルアッセイ(Proteome Profiler Mouse Cytokine Array Kit、Panel A、R&Dsystems)により製造業者の推奨に従って、心筋溶解物(虚血領域および非虚血性領域)およびMEC上清中のサイトカインを測定した。
酵素電気泳動
組織抽出物のMMP−9酵素活性をSDS−PAGEゼラチン酵素電気泳動により判定した。組織抽出物中に存在するMMP−9がゼラチン基質を分解し、ゲルをタンパク質について染色すると明瞭なバンドが残る。簡潔に述べると、ホモゲナイズし標準化した組織試料に還元剤を加えずに変性させ、ゼラチンを含有する7.5%SDS−PAGEゲルでの電気泳動により分離した。次いで、10mM CaCl2、0.15M NaClおよび50mMトリス(pH7.5)を含有する緩衝液中、ゲルをTriton x−100(タンパク質を再生させる)の存在下、室温で2時間、次いで37℃で一晩インキュベートした。その後、ゲルを0.25%クーマシーブルーで染色した。デンシトメトリーによりバンドの分析および定量化を実施した。
心筋永久虚血のラットモデル
成体雄Wistarラット(360〜380g)を用いた。全ラットをケタミン(100mg/kg、筋肉内)で麻酔し、機械的換気を施行した。左側開胸術を施行後、左冠動脈を確認し、8−0プロレン縫合糸で結紮した。虚血領域(左心室)の心筋の色が赤色から白色に変化したことによりLAD梗塞を確認した。胸部を閉じ、6−0絹糸で皮膚を縫合した。ラットをケージに戻し、完全に回復するまで監視した。全ラットの術後死亡率は20%であった。
外科的LAD閉塞後、マイクロTEPイメージングにより虚血領域の重要性を評価した。次いで、ラットを無作為化により、24時間毎に5日間ペプチド(5mg/kg)を投与するグループまたはプラセボ(賦形剤)を投与するグループに割り付けた。
心筋リモデリングおよび心筋機能に対する治療効果を検討するため、6週間後にマイクロTEPイメージングおよびコンダクタンスカテーテル(Millar)により、なおも評価を実施した。
心筋虚血再灌流のラットモデル
虚血60分後にLAD結紮を解除することにより虚血領域を再灌流したことを除いて、永久虚血の場合と同じ手術を施行した。次いで、上記プロトコルと同じプロトコルを適用した。
マイクロPETイメージング
最初のPET記録の60分前、全個体に対し、約70MBqの18F−FDG(体積0.3〜0.5ml)を静脈内注射し、短時間麻酔下(1.5〜2.5%のイソフルラン吸入)に置いた。イソフルランによる持続麻酔下、専用の小動物PETシステム(Inveon、Siemens、Knoxville、TN、USA)を用いてリストモードで記録を得た。ラットを腹臥位にして加温パッドの上に置き、体温を正常範囲内に維持した。四肢の内表面に装着した3つの電極により、ラットと標準的なECGモニターとを接続した。記録時間は18F放射を20分間、57Co透過を6分間とした。同時計数タイミングウィンドウを3.4nsに設定し、エネルギーウィンドウを350〜650keVに設定した。16の心拍間隔で画像を再構築し、通常の心拍数値に対して11〜15msの時間分離能を得た。これらの条件下で軸空間分解能は1.5mm未満であった。さらに、ステレオリソグラフィー工程で得られたLVラットファントムでは、FDG PET画像により実際の内腔容積が高精度に決定され、成体のLV収縮終期容積の下限に相当する100μlのレベルを上回るものであった。
コンダクタンスカテーテルによる試験
ラットをイソフルランで麻酔し、2F高忠実度マイクロメートルカテーテル(SPR−407、Millar Institute、Houston、TX、USA)を右頸動脈からLV内に挿入した。Millarカテーテルと、AcqKnowledge IIIソフトウェア(ACQ3.2)を備えたPCと連動させたHarvard Data Acquisition Systemとを連結した。
マウスのアテローム性動脈硬化症
12週齢の雄ApoE−/−マウスに脂肪食(脂質15%、コレステロール1.25%、コール酸無添加)の食餌を与え、ペプチド(100μg/日)またはPBSの連日腹腔内注射により処置した。脂肪食の4週間後、マウスを分析用に屠殺した。
Red Oilを用いて大動脈洞内のアテローム性動脈硬化プラークを染色し定量化した。本発明者らは、免疫蛍光染色法および免疫組織化学法を用いて、プラークの組成を分析した。最後に、本発明者らは、Potteauxらによって開発されたパルス染色法を用いて、アテローム性動脈硬化プラークへの単球動員に対するペプチド治療の効果を検討した。簡潔に述べると、無菌PBSで1:4に希釈した1μmのFluoresbriteグリーン蛍光プレーンマイクロスフェアを後眼窩静脈内に注射することにより、単球をin vivoで標識した[Potteauxら,2011]。病巣内の蛍光ビーズの数が単球動員を反映する。
結果
1.TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドは大動脈のLPS誘導性収縮および内皮機能不全を改善する:
TREM−1調節が内皮血管運動に直接影響を及ぼし得るかどうかを検討するため、本発明者らは、正常ラットから切離した血管または内皮剥離血管をLPS、αTREM−1(TREM−1のアゴニスト)、TREM−1−およびTLT−1−由来ペプチドならびに対照ペプチドLR12スクランブルでex vivo刺激した。最初に、LPSおよびαTREM−1が血管運動障害を誘発した(図1Aおよび1C)。次いで、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドがLPSによる血管運動障害を正常に戻した(図1Bおよび1C)。最後に、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドはすべて、内皮を除去するとその有益な効果が消失した(図1B)。
2.TREM−1は大動脈および腸間膜動脈由来の内皮細胞に発現する:
TREM−1がマウス大動脈およびラット腸間膜動脈由来の内皮細胞に発現するかどうかを明らかにするため、本発明者らは、血管(内皮を有するものまたは有さないもの)をLPSで6時間刺激した(100ng/ml)。マウス大動脈(図2A)およびラット腸間膜動脈(図2B)とも、内皮が存在する場合のみLPS刺激によりTrem−1発現がアップレギュレートされた。
したがって、本発明者らは、TREM−1がマウス大動脈およびラット腸間膜動脈由来の内皮細胞に発現することを初めて示す。
3.TREM−1は肺および肝臓の微小血管内皮細胞(LuMECおよびLiMEC)に発現する:
TREM−1は肺および肝臓の微小血管内皮細胞に構成的に発現し、その発現は敗血症時およびLPS刺激によってアップレギュレートされる(図3)。これらの結果はリアルタイムRT−PCRによってさらに裏付けられた(図3C)。
Trem−1の発現はLPSによる4時間の刺激後に大幅に増大し、その後減少した。同様に、Tnf−αおよびIl−6も同じ動態を示した(図4)。
予想された通り、細胞をLPSで24時間刺激したところ各種サイトカインが大量に産生され、その濃度はTREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドによって低下した(図5)。
したがって、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドによる処置によって、内皮細胞による炎症誘発性サイトカインの産生を減弱させることができた。
4.TREM−1調節が敗血症誘導性心血管機能不全を改善する:
マウスモデル:本発明者らは、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドの投与がマウスの敗血症性ショック時に平均動脈圧を維持し、乳酸アシドーシスを抑制することを観察した。血管シグナル伝達の検討では、敗血症時にはAkt経路の阻害のほか、Cox−2およびiNOSのアップレギュレーションと同時にCox−1の発現が示された。血管機能不全の証拠となるこれらの要素はTREM−1調節によって正常に戻る(図6)。
ラットモデル:本発明者らはこのほか、固有の心機能(図7;表2)に焦点を絞り、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドによるTREM−1調節によって、複数の心パラメータ:ESPVR(収縮終期圧・容積関係)、PRSW(前負荷動員一回仕事量)、(dP/dt)max/Ved(左心室圧のマーカー)およびLVEF(左心室駆出率)が改善することを示した。
Figure 2015533791
ミニブタモデル:本発明者らは敗血症のミニブタモデルで、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドの投与が心血管不全を軽減することを観察した。腹膜炎により、大量輸液(対照群に対して7750±540mL、LR12群に対して6500±800mL、p=0.137)の甲斐なくMAPの急速な低下が引き起こされた(図8A)。したがって、MAPを85mmHg超に維持するため、H12までに対照個体およびLR12処置個体のそれぞれ4/5および1/6にノルエピネフリンを開始した。血圧の維持に必要なノルエピネフリン注入速度は、LR12処置個体の方が対照個体よりも有意に遅いことがわかった(図8A)。
対照群では、低血圧に伴って心係数および心拍出力係数(心機能をより適切に表すと考えられている)がともに低下した。その結果、SvO2およびDO2が徐々に低下した(図8B)。この場合も同じく、LR12は心不全の軽減に有意な有益な効果を示した。両群とも進行性の乳酸アシドーシスを発現したが(図8C)、そのほとんどがLR12によって軽減された(p=0.0005)。
サルモデル:本発明者らはサルの内毒素注入モデルで、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドの投与が心血管不全を軽減することを観察した。LPS注射後、心拍数が一時的に増加し、LR12注入の効果はみられなかった(不掲載)。LPS抗原刺激により、特にH1〜H2でわずかな体温上昇が引き起こされたが、プラセボ(LR12scr)個体とLR12処置個体との間の差に有意性は認められなかった(不掲載)。
プラセボ処置群では、用いたLPSの投与量が少なくても一過性の低血圧が発現し、180分後に収縮期動脈圧が最大25%、拡張期動脈圧が最大40%低下した(LR12または対照群との比較でp<0.001)。これとは極めて対照的に、LR12処置個体には低血圧が全くみられず、その動脈圧は対照個体と差がなかった(図9)。
5.TREM−1は心筋組織に発現し、虚血時にアップレギュレートされる:
TREM−1が心臓組織に発現するかどうかを明らかにするため、冠動脈結紮の前および心筋梗塞(MI)の6時間後、24時間後および96時間後に、マウスの健常領域および梗塞領域の両方から心筋を採取した。ベースライン時のtrem−1発現は極めて低かったのに対して、虚血によりその発現のアップレギュレーションが徐々に誘導され、MIの24時間後に最高レベルに達した(図10A)。ウエスタンブロットによりタンパク質レベルでも同じ動態が観察された(図10B)。これに対して、非梗塞(「健常」)領域ではTREM−1発現は常に低い状態であった(データ不掲載)。
6.TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドはマウスにおいてMI時に白血球動員を調節し、遠隔区画からの白血球動員を制御する:
マウスには、またおそらくヒトにも、2つ異なる単球サブタイプが存在し、Ly−6Chigh単球が強力な炎症性メディエーターであるのに対して、Ly−6Clow単球はその逆の作用を有する[NAHRENDORFら,2007]。TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドによるTrem−1調節によって、梗塞を起こした心筋へのLy−6Chigh単球の浸潤が完全に抑制されたのに対して、Ly−6Clow単球の動員は一時的に増大した。このほか、LR12処置によってPMN浸潤がブロックされた(図11A)。TREM−1はリンパ球によって発現されないが、Trem−1調節がB細胞およびT細胞の動員に影響を及ぼした。すなわち、LR12処置マウスでBリンパ球およびCD8リンパ球の浸潤が減少したのに対して、CD4細胞の動員が増加した。
Trem−1は、梗塞を起こした心筋への白血球動員の制御に重要であると思われるため、本発明者らは、遠隔区画からの細胞動員に対するTrem−1の効果を検討した。心筋梗塞発症後24時間以内に単球が脾臓を出て心臓に浸潤する(SWIRSKIら)。この現象は今回、MI後最大1週間持続する脾臓単球含有量の急速な減少とともに観察された。同時に、72時間後に循環血中の単球数の顕著な増加がみられるともに、骨髄(BM)内に徐々に蓄積した(図11B)。Trem−1の除去または調節により、脾臓の単球枯渇および血中の単球増加がほぼ完全に抑制された。
72時間後に末梢血好中球数の増加がみられ、第7日までにベースラインに戻った。この好中球増加はTrem−1ノックアウトマウスにもLR12処置マウスにも観察されなかった。好中球の脾臓内含有量がほとんど変化しなかったことから、脾臓は好中球の産生/放出にあまり関与しないと思われた。このほか、BMに徐々に中程度に蓄積するのが観察され、群間差は認められなかった(図11B)。
MIの24時間後、脾臓のBリンパ球数、CD4リンパ球数、CD8リンパ球数が著しく減少し、同時にCD4リンパ球およびCD8リンパ球の減少がみられた。次いで、72時間後に循環血中のリンパ球数の増加がみられた後、MIの7日後にベースラインに戻った。Trem−1をブロックすることにより、このリンパ球の動態パターンが妨げられた(図11B)。
単球化学誘引タンパク質1(MCP−1またはCCL2)、CX3CL1(またはフラクタルカイン)およびMCP−3(またはCCL7)は、それぞれ炎症性部位へのLy−6Chigh単球、Ly−6Clow単球およびリンパ球の動員に関与する重要なケモカインである。MIの24時間後、MCP−1、CX3CL1およびMCP−3の血漿中濃度が増大した。処置マウスではMCP−1およびMCP−3レベルが著明に低下した(図11C)。
7.TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドはマウスのMI時に心筋炎症性反応を調節する:
本発明者らは次に、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドによるTREM−1調節が浸潤性炎症性細胞の活性化を制御し得るかどうかを検討した。MI後迅速に心筋に侵入する炎症性細胞は、p38MAPKおよびERK1/2のリン酸化ならびにiNOSおよびCOX2発現のアップレギュレーションにより活性化する。この活性化はTREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドによって部分的に抑制される(図12)。本発明者らがこれらのタンパク質のリン酸化/発現の動態を解析したところ、ペプチドのレベルは常に低下する(不掲載)。これに対して、生存に関与するタンパク質(AKT)または拡張を抑制することが知られているタンパク質(SOCS3)のいくつかが、いずれのペプチドによってもアップレギュレートされた。例えば、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK3β)は炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの産生の制御に極めて重要な役割を果たす。自然免疫細胞では、GSK3β不活性化(リン酸化を介するもの)がサイトカインの産生を抑制し、心筋細胞生存率を改善することが知られている。本発明者らは今回、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドによってGSK3βのリン酸化が対照に比して増大することを観察した。
TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドによって細胞の炎症誘発作用が調節されると思われたため、本発明者らは次に、それがサイトカイン/ケモカイン産生の減少につながるかどうかを検討した。
本発明者らが次に検討した自然免疫または内皮機能に関与する168個の遺伝子のうち、冠動脈結紮後、ほとんどの場合、MIの24時間後に156個の発現が変化した。LR12投与が心筋梗塞による遺伝子活性化を阻止した。
予想された通り、MIにより各種のサイトカイン(IL6、IL13、IL17、IL27、IFNγ)およびケモカイン(MIP2、JE)の産生が増大した。TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドによりこれらのタンパク質の濃度が低下した(図13A)。定量的PCRにより、特にMIの6時間後にこれらの結果が遺伝子レベルで確認された(図13B)。
したがって、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドの投与によって、梗塞領域のMI炎症性反応を調節することができた。
8.TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドは心筋梗塞を起こした組織のプロテアーゼ活性を低下させる:
梗塞を起こした心筋では浸潤性の好中球およびマクロファージがマトリックスメタロプロテイナーゼ9(Mmp−9)を発現する。Mmp−9の活性は組織メタロプロテアーゼ阻害物質−1(Timp−1)によりバランスが保たれている。この2つのタンパク質の微妙なバランスを維持することが、心不全を引き起こす心室リモデリングの予防に極めて重要な役割を果たす。本発明者らは今回、対照マウスの梗塞領域でMmp−9およびTimp−1のmRNA発現が増大することを観察した。これとは対照的に、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドで処置した個体では、Mmp−9発現が低い状態で維持されたのに対して、Timp−1が著しくアップレギュレートされた(図14A、B)。したがって、Mmp−9/Timp−1比は対照マウスの方が常に高い値を示した。梗塞領域のMmp−9ゼラチナーゼ活性は、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドで処置したマウスよりも対照マウスの方が常に高い値を示した(図14C)。
以上の結果は、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドがMI後の心構造の保護および心リモデリングの阻止に有益な役割を果たし得るという仮説を支持するものである。
9.TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドはマウスのMI後の生存率を改善する:
本発明者らは次に、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドの投与がMI時に何らかの保護効果をもたらし得るかどうかを明らかにしようと考えた。成体雄Balb/cマウスの腹腔内にTREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドまたはLR12スクランブルの反復投与(連日100μgで5日間)を永久的な冠動脈結紮の60分後から始めて無作為に実施した。LR12処置した個体が1個体以外すべて生き延びた(図15)のに対して、対照マウスの40%が死亡した(ログランク検定;p<0.01)。他のTREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドでもほぼ同じ結果が得られた。
持続的なTREM−1の関与がさらに有害であるかどうかを検討するため、本発明者らは、アゴニスト作用のある抗TREM−1 mAbをマウスに投与した。この処置により死亡率が大幅に上昇し、生存率はわずか20%であった。
10.TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドはラットの心筋虚血−再灌流後の心機能を改善する:
より重要なMIモデルにおけるTREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドの役割を検討するため、本発明者らは、ラットに一時的な冠動脈結紮(虚血−再灌流モデル:IR)を実施した。ラットを無作為に割り付けた後、麻酔下で撮像(マイクロTEP)し、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチド(連日3mg/kgで5日間、腹腔内投与)またはLR12スクランブルペプチドを投与した。次いで、6週間後に再び撮像した後、コンダクタンスカテーテル(Millar)を用いて心機能を検討した。
第1日、IR直後、両群に差はみられなかった。梗塞領域は中程度に重要であり、心機能はわずかに変化した。6週間後、全ラットに改善がみられ、梗塞がほぼ完全に治癒し、心室リモデリングは全く認められなかった(表3)。したがって、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドはマイクロTEPによって評価したパラメータには何ら効果を示さなかった。これに対して、コンダクタンスカテーテルにより心機能を検討したところ、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドがEmaxまたはPRSWなどの極めて重要な収縮期パラメータを大幅に改善するのが観察された(図16;表4)。
Figure 2015533791
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したがって、この比較的軽症の心筋虚血モデルでも、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドの投与により収縮期の心機能を回復させることができた。
11.TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドはラットの心筋梗塞後の収縮期および拡張期機能を改善する:
本発明者らは最後に、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドによってもたらされる炎症性応答の調節が、重症MI後の心機能改善につながり得るかどうかを検討した。本発明者らは、ラットに永久的な冠動脈結紮を実施した後、上記の通りに無作為に割り付けて撮像した。
この場合も同様に、第1日、両群とも全く同じであった。6週間後、重要な心室拡大のぞんざいによって評価される重要な心リモデリングが生じていた。この心リモデリングは、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドによって少なくとも部分的に変化した(表5)。心不全の間接的なマーカーとして、対照ラットには全ペプチドで処置したラットを上回る体重増加がみられた。
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コンダクタンスカテーテルによって心機能を検討したところ、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドがEmax、ESPVR、PRSW、dP/dTmin、dP/dTmaxおよびVedなどの極めて重要な収縮期および拡張期パラメータを改善するのが観察された(図17)。
まとめると、以上のデータは、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドが心筋梗塞後の心リモデリングおよび心不全の予防に保護的役割を果たすことを裏付けるものである。
12.TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドはマウスのアテローム性動脈硬化症の発現を予防する:
Red Oilを用いて大動脈洞内のアテローム性動脈硬化プラークを染色し定量化した。興味深いことに、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドによって処置すると、大動脈洞内の病巣の大きさが有意に30%減少した(146736μmに対して103318μm、P=0.02)(図18)。この結果は第二の一連の実験で確認された。
13.TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドはアテローム斑の細胞組成を変化させる:
本発明者らは、免疫蛍光染色および免疫組織化学法を用いて、プラーク組成を分析した。リンパ球浸潤(抗CD3抗体)およびコラーゲン蓄積(Sirius Red)に群間差は観察されなかった。しかし、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドで処置したマウスのアテローム性動脈硬化病巣内のマクロファージ浸潤が有意に27%減少していることがわかった(図19)。
14.TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドはアテローム硬化症マウスの血中白血球集団を是正する:
本発明者らは、フローサイトメトリーを用いて血中白血球集団を分析した。古典的単球はCD115+Gr1highであり、非古典的単球はCD115+Gr1lowであった。固形飼料で飼育したapoE−/−マウスでは、非古典的単球のみがTREMを発現した。興味深いことに、高脂肪食により非古典的単球でのTREM−1発現が増大した(データ不掲載)。
次いで、本発明者らは、処置期間中に血中白血球集団を分析した。第7日、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドで処置したマウスの血液に非古典的単球の有意な減少が観察された(図20)。第28日、血液に古典的単球および非古典的単球の有意な減少が観察された(図21)。
15.TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドはアテローム性動脈硬化プラークへの単球動員を減少させる:
最後に、本発明者らは、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドによる処置がアテローム性動脈硬化プラークへの単球動員に対する効果を検討した。本発明者らは、Potteauxらによって開発されたパルス染色法を用いた。簡潔に述べると、無菌PBSで1:4に希釈した1μmのFluoresbriteグリーン蛍光プレーンマイクロスフェアを後眼窩静脈内に注射することにより、単球をin vivoで標識した[Ait−Oufella H.ら,2011]。病巣内の蛍光ビーズの数が単球動員を反映する。ビーズを注射した24時間後、処置apoE−/−マウスを屠殺した。興味深いことに、TREM−1由来ペプチドおよびTLT−1由来ペプチドで処置したグループに対照群に比して単球浸潤の有意な減少がみられた(図22)。
参考文献
本願全体を通じて、様々な文献に本発明と関連のある最新技術が記載されている。これらの文献の開示は参照により本開示に組み込まれる。
Throughout this application,various references describe the state of the art to which this invention pertains.The disclosures of these references are hereby incorporated by reference into the present disclosure.
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Claims (12)

  1. 心血管疾患の治療に使用するための、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列から選択される少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むペプチドおよび機能保存的変異体。
  2. 心血管疾患の治療に使用するための、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11または配列番号12からなる群より選択される6個の連続するアミノ酸配列含む、請求項1に記載のペプチド。
  3. 前記心血管疾患が心筋梗塞である、請求項1または2に記載の使用するためのペプチド。
  4. 前記心血管疾患がアテローム性動脈硬化症(artherosclerosis)である、請求項1または2に記載の使用するためのペプチド。
  5. 配列番号2のアミノ酸配列から選択される少なくとも6個の連続するアミノを含むおよび機能保存的変異体。
  6. 配列番号10、配列番号11または配列番号12からなる群より選択される6個の連続するアミノ酸配列を含む、請求項5に記載のペプチド。
  7. 配列番号または配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む、請求項5に記載のペプチド。
  8. 配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11または配列番号12に示されるアミノ酸配列からなる、請求項5に記載のペプチド。
  9. 請求項5〜8に記載のペプチドをコードする、単離核酸配列。
  10. 請求項9に記載の核酸配列を含む、発現ベクター。
  11. 請求項10に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
  12. 治療有効量の請求項5〜8に記載の少なくとも1つのペプチド、請求項9に記載の核酸、請求項10に記載の発現ベクターまたは請求項11に記載の宿主細胞を、少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤とともに含む、医薬組成物。
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