JP2015522295A - 電荷の斥力相互作用を使用することによりホモダイマータンパク質の混合物を調製するための方法 - Google Patents

電荷の斥力相互作用を使用することによりホモダイマータンパク質の混合物を調製するための方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、電荷の斥力相互作用を使用することによりホモダイマータンパク質混合物を調製するための方法に関する。本方法は、異なるタンパク質又は抗体が類似の電荷間の斥力相互作用によりヘテロダイマーを形成しにくく、一方で同じタンパク質又は抗体が反対電荷間の引力相互作用によりホモダイマーを形成しやすいように、残基の一部を反対荷電残基と置換する工程を含む。本発明の方法により得られるホモダイマータンパク質混合物は、同じ標的の異なるエピトープに同時に作用して、異なるソースからの抗原に結合することにより、複数の抗原の効果を同時に阻害する可能性があることから、腫瘍及び他の疾患の免疫学的診断及び治療に対する新規アプローチが提供される。

Description

本発明は、ホモダイマータンパク質の混合物を調製するための方法、特に、電荷の斥力相互作用を使用することによりホモダイマータンパク質の混合物を調製するための方法に関する。本発明は更に、この方法により得られるホモダイマータンパク質混合物、及びホモダイマータンパク質混合物を調製するための方法の使用に関する。
モノクローナル抗体薬は、この15年間で大きな進歩を遂げ、製薬業界の推進力となった。1996年以来、合計約30のモノクローナル抗体薬が承認され、9つの薬剤の年間売上は10億USドル超に上った。2010年、モノクローナル抗体薬全体の売上は、300億USドル超であり、年成長率は10%超であった。モノクローナル抗体は、その標的に対する高い特異性により、単一の標的のみを阻害する。しかしながら、腫瘍、自己免疫疾患、及び他の疾患について代償的な作用を回避するため、複数の標的/シグナル経路を阻害することが必要な場合がある。ウイルス感染については、ウイルスの高い変異率により、一般に、漏れを防止するために複数の抗原部位を阻害することが必要である。複数の代替的解決策がある。1つは、ポリクローナル抗体を使用するか、又は、抗体のFcフラグメントを改変することによりヘテロダイマー、例えば二重特異性抗体を得るというものである。別の解決策は、治療のための抗体混合物を使用するというものであり、抗体混合物は、同じ標的の異なるエピトープ、又は異なる標的に対する、2つ以上の抗体を含む。
US7262028は、1つの軽鎖及び異なる重鎖の発現による、2価抗体又は単一の宿主細胞クローンからの2価抗体の混合物を作製するための方法を開示しており、さらに様々な用途における有用性についてスクリーニングされ得る抗体の組合せを作製するための方法も提供する。
WO/2010/084197には、単一の宿主細胞クローンからの2つ以上の異なる抗体を含む混合物を作製するための方法が記載されている。一実施形態において、異なる1価抗体の混合物が作製されている。別の一実施形態において、1価抗体と2価抗体との混合物が作製されている。この方法において、ホモダイマーは、IgG4の2つのFabアームの自然交換現象により安定化され、現象を引き起こすヒンジ領域及びCH3ドメインのいくつかの残基が変更されている。しかしながら、この特許文献は、ヘテロダイマーの存在の問題が完全に解決されるかどうかに言及していない。
US5789208及びUS6335163には、ポリクローナル抗体のライブラリーを発現させるための方法が記載されており、ポリクローナルFabフラグメントのライブラリーは、ファージ提示ベクター上で発現され、次に抗原の反応性についてスクリーニングされた。重鎖及び軽鎖の可変領域遺伝子の選択された組合せが、対に結合された形で定常領域遺伝子を含む真核細胞発現ベクター内へ導入され、完全ポリクローナル抗体のサブライブラリーが得られる。サブライブラリーを骨髄腫細胞内にトランスフェクトさせた後、安定なクローンは抗体を生成すると考えられ、これらを混合してモノクローナル抗体の混合物を得ることができる。この方法を使用することにより、混合されたトランスフェクト細胞群を培養することによって1つの組換え生産プロセスでポリクローナル抗体を直接得ることが理論上可能であるとはいえ、混合された細胞群の安定性、したがって生成されたポリクローナル抗体の一貫性の観点から、潜在的問題が存在し得る。薬学的に許容される大規模(工業)生産方法において、群全体で異なる細胞を制御することは困難な課題である。例えば、細胞の増殖速度及び抗体の生産速度等の特性は、ポリクローナル抗体の混合物中の抗体の比が一定に保たれ得るよう、非クローン性群中のすべての単一のクローンについて安定に保たれるべきである。したがって、混合抗体の生産は、当技術分野において実現されているかもしれないが、経済的及び実際的に大規模製造に適した好適な解決策は依然として存在しない。
最近、Merck社とデンマークのSymphogen A/S社は、Sym004について、世界的な専用実施契約を締結した。Sym004は、現在開発中の新規抗体混合物であり、上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とする。
Sym004は2つの抗体からなり、リガンド結合、受容体活性化及び下流シグナリングを遮断可能であり、EGFR内在化及び分解を誘導することにより、癌細胞表面からのEGFR受容体の除去を誘発するとも考えられている。Sym004は現在、以前に標準的化学療法及び市販の抗EGFRモノクローナル抗体での治療を受けたことがある、早期野生型KRAS転移大腸癌(mCRC)に罹患した患者の治療のためのフェーズI/IIの治験において評価されている。加えて、抗EGFRベースの治療に失敗した、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)に罹患した患者のフェーズIIの治験が現在進行中である。
Symphogen A/S社の抗体混合物技術は、以下の工程、すなわち、まず、抗体スクリーニングプラットフォームにより同じ標的に対する複数の抗体を得る工程、次に、それぞれの抗体の分子構築を実施する工程、振とうフラスコ内で細胞を培養する工程、及び細胞を混合する工程、及び漸次増幅培養により細胞混合物を培養する工程、次に最適化された精製を実施し、最終産物を得る工程を含む。しかしながら、この方法は依然として、不安定な細胞増殖速度及び抗体生産速度に起因する問題を伴う。なぜなら、組換え宿主細胞が、様々なホモダイマーの混合物を作製するための方法において使用されるからである。この方法では単一の細胞で単一の抗体を発現させるので、この方法にはヘテロダイマーの問題を伴わない。
すべての手段において、2種以上のタンパク質又は抗体を単一の組換え細胞クローンで作製することができれば、タンパク質又は抗体混合物を作製するのにより理想的であると考えられる。
大規模な実験に基づき、本発明者らは、2種以上のタンパク質又は抗体を単一の組換え細胞クローンから同時に調製するための方法を開発した。本発明は、具体的には、以下の態様を含む。すなわち、
本発明の第1の態様は、単一の組換え細胞クローンを使用することにより2種以上のタンパク質を含有する混合物を得るための方法であって、ここでタンパク質はモノマー鎖間の重合により形成されるダイマーの形態であり、2種以上のタンパク質は同じドメインを含有しており、前記方法は、異なるタンパク質からのモノマー鎖が類似の電荷間の斥力相互作用によりヘテロダイマーを形成しにくく、一方で同じタンパク質からのモノマー鎖が反対電荷間の引力相互作用によりホモダイマーを形成しやすいように、1種又は複数のタンパク質の同じドメインにおける2つのモノマー鎖の残基の一部を反対荷電アミノ酸(単数又は複数)と置換する工程を含む、上記方法に関する。
本発明の一実施形態において、タンパク質は、抗体又は抗体の一部を含む融合タンパク質である。
本発明の第1の態様のうちいずれか一つの実施形態による方法において、最大で1種のタンパク質の残基が置換されていない。本発明の一実施形態において、一方のタンパク質の残基は置換されていないが、他方のタンパク質の残基は置換されている。本発明の別の一実施形態において、2種のタンパク質の残基は両方とも置換されている。
複数(2種以上)のタンパク質の残基が置換される場合、異なるタンパク質間で置換された残基の位置のうち少なくとも1種が異なっており、好ましくは、異なるタンパク質間で置換された残基のすべての位置が異なっている。
本発明の第1の態様のうちいずれか一つの実施形態による方法において、同じドメインは、抗体のCH3ドメインを指す。
本発明の第1の態様のうちいずれか一つの実施形態による方法において、同じドメインは、抗体のFc領域を指す。
本発明の第1の態様のうちいずれか一つの実施形態による方法において、抗体は哺乳動物、例えばヒト、マウス又はラットに由来する。
本発明の第1の態様のうちいずれか一つの実施形態による方法において、抗体は、IgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3)、IgA(例えばIgA1、IgA2)、IgE、IgD及びIgM(例えばIgM1、IgM2)からなる群から選択される。
本発明の第1の態様のうちいずれか一つの実施形態による方法において、同じドメインにおける残基の一部を反対荷電残基と置換する工程は、
(1)タンパク質の2つのモノマー鎖の同じドメイン間の界面残基を得る工程、
(2)工程(1)で得られた界面残基から、対になる正電荷及び負電荷を有する対になる残基を選択する工程、並びに
(3)工程(2)で得られた対になる正電荷及び負電荷を有する対になる残基から、残基の1つ又は複数の対(例えば2つの対、3つの対又は4つの対)を選択し、選択された対の残基を反対荷電残基と置換する工程
を含む。
本発明の一実施形態において、荷電アミノ酸は、リシン(lys)、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、アスパラギン酸(Asp)及びグルタミン酸(Glu)からなる群から選択される。
本発明の一実施形態において、同じドメインは、抗体のFc領域又はCH3ドメインを指し、対になる正電荷及び負電荷を有する対になる荷電残基は、以下のa)〜h)
a)第1鎖の356位のGlu(E)及び第2鎖の439位のLys(K)、
b)第1鎖の357位のGlu(E)及び第2鎖の370位のLys(K)、
c)第1鎖の370位のLys(K)及び第2鎖の357位のGlu(E)、
d)第1鎖の392位のLys(K)及び第2鎖の399位のAsp(D)、
e)第1鎖の399位のAsp(D)及び第2鎖の392位のLys(K)、
f)第1鎖の399位のAsp(D)及び第2鎖の409位のLys(K)、
g)第1鎖の409位のLys(K)及び第2鎖の399位のAsp(D)、並びに
h)第1鎖の439位のLys(K)及び第2鎖の356位のGlu(E)
に示す対になる残基からなる群から選択され、
上の8つの残基対の位置は、抗体のKABATシステムのEUナンバリングインデックスにより決定される。
本発明の一実施形態において、1種又は複数のタンパク質の同じドメインにおける2つのモノマー鎖の残基の一部を反対荷電残基と置換する工程は、以下の状況の1つ又は任意の組合せを指す。すなわち、
(1)1種のタンパク質について、392位のLysをAspと置換すること、409位のLysをAspと置換すること、及び399位のAspをLysと置換すること、
(2)1種のタンパク質について、356位のGluをLysと置換すること、及び439位のLysをGluと置換すること、
(3)1種のタンパク質について、357位のGluをLysと置換すること、及び370位のLysをGluと置換すること、
(4)1種のタンパク質について、357位のGluをLysと置換すること、370位のLysをGluと置換すること、392位のLysをAspと置換すること、409位のLysをAspと置換すること、及び399位のAspをLysと置換すること、
(5)1種のタンパク質について、392位のLysをAspと置換すること、及び399位のAspをLysと置換すること、
(6)1種のタンパク質について、399位のAspをLysと置換すること、及び409位のLysをAspと置換すること、
(7)1種のタンパク質について、392位のLysをAspと置換すること、409位のLysをAspと置換すること、及び399位のAspをLysと置換すること、同時に、もう1種のタンパク質について、357位のGluをLysと置換すること、及び370位のLysをGluと置換すること、並びに
(8)1種のタンパク質について、392位のLysをAspと置換すること、409位のLysをAspと置換すること、及び399位のAspをLysと置換すること、同時に、もう1種のタンパク質について、356位のGluをLysと置換すること、及び439位のLysをGluと置換すること。
本発明の一実施形態において、配列番号2に示す配列における対になる正電荷及び負電荷を有する対になる荷電残基は、以下のa1)〜h1)に示す8つの残基対である。
a1)第1鎖の161位のGlu(E)及び第2鎖の244位のLys(K)、
b1)第1鎖の162位のGlu(E)及び第2鎖の175位のLys(K)、
c1)第1鎖の175位のLys(K)及び第2鎖の163位のGlu(E)、
d1)第1鎖の197位のLys(K)及び第2鎖の204位のAsp(D)、
e1)第1鎖の204位のAsp(D)及び第2鎖の197位のLys(K)、
f1)第1鎖の204位のAsp(D)及び第2鎖の214位のLys(K)、
g1)第1鎖の214位のLys(K)及び第2鎖の204位のAsp(D)、
h1)第1鎖の244位のLys(K)及び第2鎖の161位のGlu(E)。
本発明の一実施形態において、配列番号4に示す配列における対になる正電荷及び負電荷を有する対になる荷電残基は、以下のa2)〜h2)に示す8つの残基対である。
a2)第1鎖の399位のGlu(E)及び第2鎖の482位のLys(K)、
b2)第1鎖の400位のGlu(E)及び第2鎖の413位のLys(K)、
c2)第1鎖の413位のLys(K)及び第2鎖の400位のGlu(E)、
d2)第1鎖の435位のLys(K)及び第2鎖の442位のAsp(D)、
e2)第1鎖の442位のAsp(D)及び第2鎖の435位のLys(K)、
f2)第1鎖の442位のAsp(D)及び第2鎖の452位のLys(K)、
g2)第1鎖の452位のLys(K)及び第2鎖の442位のAsp(D)、
h2)第1鎖の482位のLys(K)及び第2鎖の399位のGlu(E)。
本発明の第1の態様のうちいずれか一つの実施形態による方法において、同じドメインにおける残基の一部を反対荷電残基と置換するプロセスは、残基の置換から得られるタンパク質をコードするヌクレオチド配列を得る工程、及びヌクレオチド配列を組換え宿主細胞で発現させ、残基の置換から得られるタンパク質を得る工程を含む。
本発明において、タンパク質混合物は、異なるタンパク質を発現ベクター内に別々にクローニングし、異なる発現ベクターを宿主細胞に同時トランスフェクトし、組換え宿主細胞を培養してタンパク質を発現させることにより、又は、異なるタンパク質を1つの発現ベクター内に作動可能に連結及びクローニングし、更に発現ベクターを培養のための宿主細胞内に導入することにより得られる。
本発明において、置換から得られるアミノ酸配列に基づくコード化ヌクレオチド配列を得るためのプロセスは、当技術分野においてよく知られている。
本発明の第2の態様は、2種以上のタンパク質を含有する混合物であって、ここでタンパク質はモノマー鎖間の重合により形成されるダイマーの形態であり、2種以上のタンパク質は同じドメインを含有しており、異なるタンパク質からのモノマー鎖が類似の電荷間の斥力相互作用によりヘテロダイマーを形成しにくく、一方で同じタンパク質からのモノマー鎖が反対電荷間の引力相互作用によりホモダイマーを形成しやすいように、1種又は複数のタンパク質の同じドメインにおける2つのモノマー鎖の残基の一部が反対荷電アミノ酸(単数又は複数)と置換されている、上記混合物に関する。
本発明の一実施形態において、タンパク質は、抗体又は抗体の一部を含む融合タンパク質である。
本発明の第2の態様のうちいずれか一つの実施形態による混合物において、最大で1種のタンパク質又は抗体の残基が置換されていない。本発明の一実施形態において、一方のタンパク質の残基は置換されていないが、他方のタンパク質の残基は置換されている。本発明の別の一実施形態において、2種のタンパク質の残基は両方とも置換されている。
複数(2種以上)のタンパク質の残基が置換される場合、異なるタンパク質間で置換された残基の位置のうち少なくとも1種が異なっており、好ましくは、異なるタンパク質間で置換された残基のすべての位置が異なっている。
本発明の第2の態様のうちいずれか一つの実施形態による混合物において、同じドメインは、抗体のCH3ドメインを指す。
本発明の第2の態様のうちいずれか一つの実施形態による混合物において、同じドメインは、抗体のFc領域を指す。
本発明の第2の態様のうちいずれか一つの実施形態による混合物において、抗体は哺乳動物、例えばヒト、マウス又はラットに由来する。
本発明の第2の態様のうちいずれか一つの実施形態による混合物において、抗体は、IgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3)、IgA(例えばIgA1、IgA2)、IgE、IgD及びIgM(例えばIgM1、IgM2)からなる群から選択される。
本発明の第2の態様のうちいずれか一つの実施形態による混合物において、残基の一部は、タンパク質の2つのモノマー鎖の同じドメイン間の界面残基であり、好ましくは、界面残基は、対になる正電荷及び負電荷を有する荷電残基であり、より好ましくは、対になる残基の1つ又は複数の対(例えば2つの対、3つの対又は4つの対)は、反対荷電残基と置換されている。
本発明の一実施形態において、荷電アミノ酸は、リシン(lys)、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、アスパラギン酸(Asp)及びグルタミン酸(Glu)からなる群から選択される。
本発明の一実施形態において、同じドメインは、抗体のFc領域又はCH3ドメインを指し、対になる正電荷及び負電荷を有する対になる荷電残基は、以下のa)〜h)
a)第1鎖の356位のGlu(E)及び第2鎖の439位のLys(K)、
b)第1鎖の357位のGlu(E)及び第2鎖の370位のLys(K)、
c)第1鎖の370位のLys(K)及び第2鎖の357位のGlu(E)、
d)第1鎖の392位のLys(K)及び第2鎖の399位のAsp(D)、
e)第1鎖の399位のAsp(D)及び第2鎖の392位のLys(K)、
f)第1鎖の399位のAsp(D)及び第2鎖の409位のLys(K)、
g)第1鎖の409位のLys(K)及び第2鎖の399位のAsp(D)、並びに
h)第1鎖の439位のLys(K)及び第2鎖の356位のGlu(E)
に示す対になる残基からなる群から選択され、
上の8つの残基対の位置は、抗体のKABATシステムのEUナンバリングインデックスにより決定される。
本発明の一実施形態において、1種又は複数のタンパク質の同じドメインにおける2つのモノマー鎖の残基の一部を反対荷電残基と置換する工程は、以下の状況の1つ又は任意の組合せを指す。すなわち、
(1)1種のタンパク質について、392位のLysをAspと置換すること、409位のLysをAspと置換すること、及び399位のAspをLysと置換すること、
(2)1種のタンパク質について、356位のGluをLysと置換すること、及び439位のLysをGluと置換すること、
(3)1種のタンパク質について、357位のGluをLysと置換すること、及び370位のLysをGluと置換すること、
(4)1種のタンパク質について、357位のGluをLysと置換すること、370位のLysをGluと置換すること、392位のLysをAspと置換すること、409位のLysをAspと置換すること、及び399位のAspをLysと置換すること、
(5)1種のタンパク質について、392位のLysをAspと置換すること、及び399位のAspをLysと置換すること、
(6)1種のタンパク質について、399位のAspをLysと置換すること、及び409位のLysをAspと置換すること、
(7)1種のタンパク質について、392位のLysをAspと置換すること、409位のLysをAspと置換すること、及び399位のAspをLysと置換すること、同時に、もう1種のタンパク質について、357位のGluをLysと置換すること、及び370位のLysをGluと置換すること、並びに
(8)1種のタンパク質について、392位のLysをAspと置換すること、409位のLysをAspと置換すること、及び399位のAspをLysと置換すること、同時に、もう1種のタンパク質について、356位のGluをLysと置換すること、及び439位のLysをGluと置換すること。
本発明の一実施形態において、配列番号2に示す配列における対になる正電荷及び負電荷を有する対になる荷電残基は、以下のa1)〜h1)に示す8つの残基対である。
a1)第1鎖の161位のGlu(E)及び第2鎖の244位のLys(K)、
b1)第1鎖の162位のGlu(E)及び第2鎖の175位のLys(K)、
c1)第1鎖の175位のLys(K)及び第2鎖の163位のGlu(E)、
d1)第1鎖の197位のLys(K)及び第2鎖の204位のAsp(D)、
e1)第1鎖の204位のAsp(D)及び第2鎖の197位のLys(K)、
f1)第1鎖の204位のAsp(D)及び第2鎖の214位のLys(K)、
g1)第1鎖の214位のLys(K)及び第2鎖の204位のAsp(D)、
h1)第1鎖の244位のLys(K)及び第2鎖の161位のGlu(E)。
本発明の一実施形態において、配列番号4に示す配列における対になる正電荷及び負電荷を有する対になる荷電残基は、以下のa2)〜h2)に示す8つの残基対である。
a2)第1鎖の399位のGlu(E)及び第2鎖の482位のLys(K)、
b2)第1鎖の400位のGlu(E)及び第2鎖の413位のLys(K)、
c2)第1鎖の413位のLys(K)及び第2鎖の400位のGlu(E)、
d2)第1鎖の435位のLys(K)及び第2鎖の442位のAsp(D)、
e2)第1鎖の442位のAsp(D)及び第2鎖の435位のLys(K)、
f2)第1鎖の442位のAsp(D)及び第2鎖の452位のLys(K)、
g2)第1鎖の452位のLys(K)及び第2鎖の442位のAsp(D)、
h2)第1鎖の482位のLys(K)及び第2鎖の399位のGlu(E)。
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様のうちいずれか一つの実施形態の方法により得られるタンパク質混合物に関する。
CH3ドメインを含有するポリペプチドが残基間の相互作用により相互作用界面を形成してダイマーを形成することから、本発明の一実施形態において、ホモダイマー混合物を得るための方法が記載され、ヘテロダイマーにおける2つのCH3ドメイン間の引力相互作用を、CH3ドメインの相互作用界面上の残基を改変することにより電荷の斥力作用を介して減少させ、ホモダイマーの混合物をもたらすことができる。一般的に、関連残基を荷電残基として改変することにより、ヘテロダイマーのCH3−CH3界面上に電荷の斥力作用を形成できる。いくつかの場合において、界面上で正電荷を有する所定のアミノ酸(リシン、アルギニン、ヒスチジン)を負電荷を有するもの(アスパラギン酸、グルタミン酸)に変異させると斥力作用が形成される可能性があり、逆もまた同様である。
本発明の一実施形態において、CH3−CH3界面上で残基が相互作用する際に、対になっている荷電残基間の相互作用を決定し、任意の1つ又は複数の残基を選択し、ホモダイマー及びヘテロダイマーの形成に対する選択された残基の効果を分析し、次に、選択された残基を荷電残基に変異させ、変異後にホモダイマー及びヘテロダイマーの形成に対する変異残基の効果を調査し、次に、変異前後の効果を比較するが、ここで適切な変異は、ホモダイマーの形成を強化し、ヘテロダイマーの形成を減弱化する効果をもたらすと予想される。最後に、ホモダイマーの形成を強化してヘテロダイマーの形成を減弱化する効果が最大化されるような、残基の適切な変異を選択する。
特定の一実施形態において、上に記載の方法は、以下のとおり定義される。すなわち、ホモダイマータンパク質のCH3ドメインにおける対になる荷電残基を反対荷電残基に変異させると、対になる反対荷電残基の引力相互作用によりもたらされる相互作用により、2つのモノマー鎖のFc間にホモダイマーが形成され得るが、一方で、1つの鎖上の対になるアミノ酸の電荷の電気特性の交換によりもたらされる類似の電荷の斥力相互作用により、ヘテロダイマーは形成され得ないことから、ホモダイマーのみを含むFc抗体又はFc融合タンパク質混合物が得られる。
本発明において、ポリペプチドとも呼ばれるタンパク質は、10より多くの残基、好ましくは50より多くの残基、より好ましくは100より多くの残基を含有する。本発明の一実施形態において、タンパク質は、抗体であるか、又は抗体の一部を含む。本発明の特定の実施形態において、タンパク質は、IgG1のFcフラグメントである。本発明の別の一実施形態において、タンパク質は、単鎖可変フラグメント(ScFv)とIgG1のFcフラグメントとの融合タンパク質である。
本発明において、宿主細胞は、タンパク質又は抗体を発現させるのに好適な細胞、例えば原核細胞又は真核細胞である。原核細胞の一例は、大腸菌(E.coli)であり、真核細胞の例は、酵母細胞又は哺乳動物細胞であり、哺乳動物細胞の例は、ヒト上皮細胞(例えば293H)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)又は骨髄腫細胞である。
本発明において、異なるタンパク質は同じドメインを含有する。本発明の一実施形態において、同じドメインは、抗体のCH3ドメイン又は抗体のFc領域を指す。
本発明において、単一ポリペプチドとも呼ばれるモノマー鎖は、ダイマータンパク質を形成する1つのモノマー又は1つのサブユニットを指す。本発明の一実施形態において、ダイマーを形成する2つのモノマー鎖は対称的であり、すなわち、2つのモノマー鎖の配列は同じである。
本発明において、残基の置換は、ダイマータンパク質を形成する2つのモノマー鎖の対応する位置の残基の置換を指す。
本発明において、ダイマーは、タンパク質又は核酸の形成中に、2つのサブユニット又は2つのモノマーにより形成される組合せを指し、サブユニット又はモノマーは、共有結合又は非共有結合により結合され得るのであり、ホモダイマーは、ダイマーを形成する2つのサブユニットの配列が同じことを意味し、ヘテロダイマーは、ダイマーの2つのサブユニットが異なることを意味する。
本発明において、ドメインは、生体高分子において、特にタンパク質において、特定の構造及び独立した機能を有する領域を指す。本発明の一実施形態において、ドメインは、抗体のCH3ドメイン及び抗体のFc領域を指す。
本発明において、界面残基は、ドメイン間の接触界面を形成する残基を指す。界面残基は、2つ以上の残基からなる。
本発明において、1種のタンパク質又は同じタンパク質は、1つのヌクレオチド配列から発現されるタンパク質、すなわちホモダイマーとして形成されるタンパク質を指す。
本発明の方法を使用して得られるタンパク質又は抗体混合物は、2種以上のタンパク質又は抗体ホモダイマーの混合物、好ましくは2種のタンパク質又は抗体ホモダイマーの混合物であり得る。
本発明の一実施形態において、CH3を含有するドメインは、CH3ドメインのみ、又はCH3ドメインを含有するヒト免疫グロブリンFc領域であり得る。一般に、ヒト免疫グロブリンFc領域のCH3ドメインのポリペプチドは、野生型ヒト免疫グロブリンFc領域に由来する。野生型ヒト免疫グロブリンFcは、ヒト個体群内に生じるアミノ酸配列を指す。もちろん、Fc配列は個体間で若干異なり得る。本発明におけるヒト免疫グロブリンFcはまた、野生型ヒト免疫グロブリンFc配列と比較して複数の残基が変化した断片も含有し、例えば、糖鎖付加部位で変異したいくつかの残基又は他の変異を含む、Fc領域におけるいくつかの残基の変化を有する断片を含有する。CH3ドメインの配列は、例えば、配列番号2の148位〜252位に示す配列であり得る。Fc領域の配列は、例えば、配列番号2の26位〜252位に示す配列であり得る。
本発明において、「ヒト免疫グロブリンFc」という用語は、ヒト免疫グロブリン結晶化可能フラグメントを指し、ヒト免疫グロブリン鎖定常領域、特に免疫グロブリン重鎖定常領域のC末端部である。例えば、免疫グロブリンFc領域は、重鎖のCH2、CH3及びCH4の2つ以上のドメインと免疫グロブリンヒンジ領域との組合せを含んでいてもよい。本明細書において、IgGのFc領域は、下部ヒンジ領域−CH2−CH3ドメインに相当する(IgGについて、CH2及びCH3は、Cγ2及びCγ3ドメインとも呼ばれる)。ヒトIgG1のバックグラウンドでは、KabatシステムにおけるEUインデックスによれば、下部ヒンジ領域は、226位〜236位を指し、CH2ドメインは237位〜340位を指し、CH3ドメインは341位〜447位を指す。重鎖定常領域のアミノ酸配列により、免疫グロブリンは異なるタイプへと分けることができる。主に5つのタイプの免疫グロブリンが存在する。すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMであり、免疫グロブリンのいくつかは、更にサブタイプ(アイソタイプ)、例えばIgG−1、IgG−2、IgG−3、IgG−4、IgA−1及びIgA−2に分けることができる。他のIgGサブタイプの類似のドメインは、IgGサブタイプの重鎖又は重鎖フラグメントを、ヒトIgG1の重鎖又は重鎖フラグメントのアミノ酸配列と比較することにより決定できる。特定の免疫グロブリンタイプ及びサブタイプからの特定の免疫グロブリンFc領域を選択することは、当業者の能力の範囲内である。免疫グロブリンモノマーの残基相互作用界面は、ヒトとマウスとの間で高度に保存されているので、電荷の斥力相互作用を使用することによりホモダイマータンパク質又は抗体混合物を調製する方法はまた、ヒト及びマウス両方のIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMにも好適である。関連する方法はまた、CH3ドメインの非荷電残基を荷電残基に変異させるのにも好適である。
本発明において、Fc領域の残基は、免疫グロブリン重鎖のためのEUインデックスによりナンバリングされる(Kabatら、免疫学的に関心を引くタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991年)、参照のためここに引用する)。KabatシステムのEUインデックスは、ヒトIgG1抗体のためのEU残基ナンバリングを指す。抗体Fc領域のアミノ酸配列の位置は、Kabatらにおいて言及されているEUインデックスで示される。
本発明において、ホモダイマータンパク質混合物を作製するための抗体プロトタイプは、抗体、免疫グロブリン、Fc融合ポリペプチド、Fcコンジュゲート(図2参照)であり得るが、このリストに限定することは意図されていない。
本発明において、ホモダイマータンパク質は、Fc領域を含有するポリペプチドのホモダイマータンパク質であってもよく、これは抗体、Fc融合タンパク質、Fcコンジュゲート、Fc由来ポリペプチド、単離Fc及びそれらの断片を含むが、これに限られるものではない。したがって、ホモダイマータンパク質は、天然ポリペプチド、天然ポリペプチドの変異型、天然ポリペプチドの改変形態、合成ポリペプチド又は非タンパク質断片を含有するポリペプチドであってもよい。天然ポリペプチドの改変形態は、天然遺伝子によりコードされないポリペプチドである。例えば、改変ポリペプチドは、キメラ抗体又はヒト化抗体であり得る。
本発明において、ホモダイマー混合物は、標準的実験手法で組換え細胞から精製されてもよい。例えば、ホモダイマータンパク質がFc領域を含むとき、タンパク質はプロテインAを使用して精製されてもよい。精製方法は、クロマトグラフィー法、例えばサイズ排除、イオン交換、親和性クロマトグラフィー及び限外濾過を含むが、これに限定されるものではない。本発明のホモダイマー混合物の分離及び精製方法はまた、上の方法の任意の適切な組合せを含む。
本発明は更に、ホモダイマータンパク質又は抗体を構成するための改変モノマー鎖又は改変単一ポリペプチドに関する。
本発明は更に、改変ホモダイマータンパク質又は抗体(又はモノマー鎖又は単一ポリペプチド)をコードする核酸配列に関する。
本発明は更に、改変ホモダイマータンパク質又は抗体(又はモノマー鎖又は単一ポリペプチド)を含む医薬組成物に関する。
異なるタンパク質の同じドメイン(例えば抗体のFc)間の相互作用により、ホモダイマー及びヘテロダイマーの形成は動的で複雑なプロセスであり、これは、ホモダイマーの界面残基の相互作用による安定なホモダイマーの形成、及びヘテロダイマーの界面残基の相互作用による安定なヘテロダイマーの形成、並びに、ホモダイマーの存在によるヘテロダイマーの含有量の動的変化、及びヘテロダイマーの存在によるホモダイマーの含有量の動的変化を伴う。本発明は、単一の組換え細胞クローンで2種以上のタンパク質又は抗体の混合物を調製するための方法を提供し、この方法は、タンパク質又は抗体のホモダイマーの含有量を増加させることができ、他の望ましくない産物、例えばヘテロダイマーの含有量を減少させることができる。実験結果は、本発明により得られるタンパク質又は抗体混合物が、純粋な成分及び所望の安定性を有することを示す。本発明により調製されるタンパク質又は抗体混合物は、同じ標的の異なるエピトープに同時に作用するか、又は異なる抗原の機能を同時に阻害する可能性があることから、腫瘍及び他の疾患の治療のための新規方法及び常法が提供される。
組換えベクターpcMVβ−SP−Fcの構造の概略図である。 組換えベクターpcDNA3.1−zeo−ScFv−Fcの構造の概略図である。 ヒト(a)及びマウス(b)IgGサブタイプ配列のアラインメントの図である。図において、重鎖のCH3のアラインメントが実施され、星印(*)で示される残基は、ヒトIgG1 Fcの結晶構造によるCH3−CH3相互作用領域の残基であり、四角囲みで示される残基は、ホモダイマー混合物を形成しやすいアミノ酸変異を表す。IgGの荷電残基のほとんどが、高度に保存されていることに留意すべきである。(c)は、他の抗体サブタイプ(IgA、IgE、IdD及びIgM)のCH3配列の比較を表す。(b)及び(c)における星印(*)は、ヒトIgG1によるCH3−CH3相互作用領域における残基を表す。 野生型における電荷の相互作用及び変異体における電荷の相互作用の概略図であり、後者はヘテロダイマーの形成を阻害し、ホモダイマーの形成を増進する。(a)野生型の場合には、電荷の相互作用がヘテロダイマー及びホモダイマーの両方の形成を促進する。(b)1つの鎖のFc領域のCH3ドメインにおける二重変異(D399K及びK409D)の場合には、電荷の斥力相互作用により、ヘテロダイマーは形成され得ないことから、電荷の引力相互作用によりホモダイマー混合物が容易に形成され得る。 ホモダイマー(ScFv−Fc/ScFv−Fc及びFc/Fc)及びヘテロダイマー(ScFv−Fc/Fc)の電気泳動解析の結果を示す図であり、レーンMは、分子量マーカー(上の3つの断片は、上から下に104KD、78KD及び50KDを表す)を示し、レーン1〜9はそれぞれ、表5における変異組合せ0〜8である。 31日間の加速安定性試験におけるSDS−PAGE解析の結果を示す図であり、Controlは野生型、scFv−Fc/Fc−mix1は変異組合せ1、scFv−Fc/Fc−mix13は変異組合せ4、scFv−Fcmix1/Fc−mix2は変異組合せ6である。 31日間の加速安定性試験におけるCE−SDS解析の結果を示す図であり、Controlは野生型、Mix1は変異組合せ1、Mix2は変異組合せ6である。
本発明の実施形態を、実施例を参照することにより詳細に例示するが、当業者は、以下の実施例は単に本発明を例示するのみであり、本発明を限定するものとみなされるべきでないことを理解すると考えられる。具体的な条件が与えられていない実施例は、従来の条件又は製造者により提示された条件により実施される。製造業者が与えられていない試薬又は機器は、すべて従来の市販製品である。
特に指定しない限り、以下の実施例において使用される実験方法は、従来の方法である。
特に指定しない限り、以下の実施例において使用される材料、試薬等は、市販されている。
(例1:抗体FcフラグメントのCH3ドメインにおける変異残基の選択)
1.配列及び構造の取得
Fc領域を含有する48のヒトIgG1抗体の結晶構造を、タンパク質データベース(PDB、www.pdb.org)から取得し、これら48の抗体のFcフラグメントは、構造類似性検索アルゴリズム上で1DN2(PDB番号)に由来していた(参照文献:Yuzhen Ye及びAdam Godzik.FATCAT:柔軟な構造比較及び構造類似性検索のためのウェブサーバ(FATCAT: a web server for flexible structure comparison and structure similarity searching).Nucleic Acids Res.、2004年、32(Web Server issue):W582〜585頁.)。
2.界面残基の決定
界面アミノ酸予測ソフトウェアCMA(URL:http://ligin.weizmann.ac.il/cma/)を、残基相互作用の距離に基づき、抗体(PDB番号:1DN2)におけるCH3−CH3間の接触残基をスクリーニング及び認識するために使用した。アミノ酸残基の接触規則に従い、界面残基は、限界よりも短い距離(側鎖の重原子から他の鎖の残基の任意の重原子まで)を有するものを指す。この実施例において、距離限界は、4.5Å又は5.5Åのいずれかに設定された(B.Erman、I.Bahar及びR.L.Jernigan.複数の相互作用部位を有する剛体の平衡状態 タンパク質らせんへの応用(Equilibrium states of rigid bodies with multiple interaction sites.Application to protein helices.)J.Chem.Phys.1997年、107:2046〜2059頁を参照のこと)。ヒト及びマウスIgGサブタイプの残基の接触界面の保存は、図3の配列の多重アラインメントにより決定できた。表1は、残基の接触規則(すなわち、残基間の距離が4.5Åよりも短い)でのスクリーニングにより同定される抗体1DN2の34の界面残基を示し、A鎖及びB鎖はそれぞれ、抗体1DN2の第1鎖及び第2鎖を表した。以下の残基の位置は、抗体FcのためのKABATナンバリングシステムのEUインデックスにより指定された。
3.対になる荷電残基の調査
表1に挙げたCH3−CH3界面残基に基づき、対になる荷電残基を、残基の電荷に従い選択し、結果を表2に示し、8対の荷電残基が存在した。
4.荷電残基の変異
表2の結果によれば、抗体1DN2の2つのFc鎖は、2つの対称的な鎖である。したがって、任意の鎖の対になる残基について、1つの鎖の所定の位置の残基を反対電荷を有する残基に変異させると、抗体の2つの鎖の同じ位置の残基は両方とも変異し、例えば、対になる残基Glu356A−Lys439Bについては、変異の2つのタイプは次のとおりである。すなわち、
1)Glu356AがLys356A若しくはArg356Aに変異するか、及び/又はLys439AがGlu439A若しくはAsp439Aに変異する、
2)Glu356BがLys356B若しくはArg356Bに変異するか、及び/又はLys439BがGlu439B若しくはAsp439Bに変異する。
この場合、反対電荷は、正荷電残基(リシン(Lys、K)又はアルギニン(Arg、R)又はヒスチジン(His、H))が負荷電残基(アスパラギン酸(Asp、D)又はグルタミン酸(Glu、E))に変異するか、又は負荷電残基(アスパラギン酸又はグルタミン酸)が正荷電残基(リシン又はアルギニン)に変異することを意味する。具体的な変異位置は、表3及び表4に示されるとおりである。

加えて、より複雑な場合には、操作はまた、上記方法又は上述の対になる残基の変異の組合せに基づいていてもよい。本発明の解決法に従って(Fc混合物を調製するために)Fcを改変して抗体混合物を調製するための方法は、上述の単鎖の対になる残基の二重変異又は変異の任意の組合せに限定されなかった。
(例2:抗体FcフラグメントのCH3ドメインにおける残基を改変することによるホモダイマータンパク質混合物の調製)
1.ヒトIgG1のFcフラグメントを発現させるための組換えベクターpcMVβ−SP−Fcの構築
遺伝子データベースにおけるヒトIgG1のFcフラグメント(ヒンジ−CH2−CH3)の遺伝子配列により、2つの末端に認識配列としてHind III及びEcoRI並びに保護塩基をそれぞれ含有する配列番号1に示されるヒトFc遺伝子(780bpの長さ、SP−Fcと命名)を人工合成により得た。Fc遺伝子をEcoRI及びHind IIIで二重消化し、得られた断片を、EcoRI及びHind IIIで二重消化した哺乳動物細胞のための発現ベクターpcMVβ(Invitrogen)のベクター主鎖に結合して、組換えベクターpcMVβ−SP−Fc(その構造の概略図は図1に示すとおりである)を得た。組換えベクターpcMVβ−Fcが、pcMVβのEcoRI部位とHind III部位との間に配列番号1の16位から771位のヌクレオチド配列に示されるDNA断片が挿入されたベクターであることが、配列決定で判明した。
配列番号1の16位から771位のヌクレオチド配列によりコードされるFcタンパク質のアミノ酸配列は、以下のとおりである(配列番号2に示す)。
METDTLLLWVLLLWVPGSTGGSGGGDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHENPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号2)。
2.ScFv−Fc融合タンパク質を発現させるための組換えベクターpcDNA3.1−zeo−ScFv−Fcの構築
両端に認識配列としてHind III及びEcoRI並びに保護塩基をそれぞれ含有する配列番号3に示すScFv−Fc融合タンパク質をコードする遺伝子を遺伝子合成により得た。ScFv−Fc融合タンパク質をコードするORFをEcoRI及びHind IIIで二重消化し、得られた断片を、EcoRI及びHind IIIで二重消化した哺乳動物細胞のための発現ベクターpcDNA3.1−zeo(Invitrogen)の主鎖に結合して、組換えベクターpcDNA3.1−zeo−ScFv−Fc(その構造の概略図は図2に示すとおりである)を得た。組換えベクターpcDNA3.1−zeo−ScFv−Fcが、pcDNA3.1−zeoのEcoRI部位とHind III部位との間に配列番号3の16位から1488位のヌクレオチド配列に示されるDNA断片が挿入されたベクターであることが、配列決定で判明した。
配列番号3の16位から1488位のヌクレオチド配列によりコードされるScFv−Fc融合タンパク質のアミノ酸配列は、以下のとおりである(配列番号4に示す)。
MGWSLILLFLVAVATRVLSEVQLLESGGGVVQPGRSLRLSCIASGFTFSSYPMTWVRQAPGKGLEWVASISYDGSYKYKADSMKGRLTISRDNSKNTLYLEMNSLTAEDTAVYYCARTAFFNAYDFWGQGTLVTVSSASTKGPSVGGGGSGGGGSEIVMTQSPATLSVSPGERATLSCRASQSVRSNLAWYQQKPGQAPRLLIYAASTRATGIPARFSGSGSGTEFTLTISSLQSEDFAVYYCQQYNEWFRTSGQGTKVEIKRDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHENPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号4)。
配列番号2及び配列番号4の下線部のアミノ酸配列は同じである。
3.変異誘発のためのアミノ酸位置を選択することによる改変組換えベクターの調製
例1の表3及び表4の変異させられる残基に従い、scFV−Fc及びFcをコードするヌクレオチド配列(配列番号1及び配列番号3)の変異及び組合せ変異のため、オーバーラップPCR法を使用した。表5の変異組合せ1〜8に示すとおり、改変後、8つの組換えベクターpcDNA3.1−zeo−ScFv−Fc及びpcMVβ−SP−Fcを得た。
4.トランスフェクト細胞及び抗体混合物の検出
工程3における8つの変異組合せを有する発現ベクターを、PEIで懸濁適応293H細胞(ATCC CRL−1573)内に別々にトランスフェクトさせ、プラスミドpcDNA3.1−zeo−ScFv−FcのpcMVβ−SP−Fcに対する同時トランスフェクション比は1:1であり、3〜4日後、細胞培養上清を回収した。プロテインAアガロース樹脂で免疫沈降を実施し、ホモダイマータンパク質又は抗体(ScFv−Fc/ScFv−Fc及びFc/Fc)及びヘテロダイマータンパク質又は抗体(ScFv−Fc/Fc)の含有量を、非還元条件下でSDS−PAGEにより検出した。Gel−Proプロフェッショナル画像解析ソフトウェア(Media Cybernetics社)を、ホモダイマータンパク質又は抗体(ScFv−Fc/ScFv−Fc及びFc/Fc)及びヘテロダイマータンパク質又は抗体(ScFv−Fc/Fc)の割合を解析するために使用した。結果は、図5及び表6に示すとおりであった。表5における関連する変異組合せをScFv−Fcに導入したとき、ホモダイマーScFv−Fc/ScFv−Fc及びFc/Fcの割合が大きく増加し、一方でヘテロダイマー(ScFv−Fc/Fc)は大きく減少した。3つの変異K392D/K409D/D399K(変異組合せ2)又は変異組合せ4、5若しくは6がFcに導入されたときは、発現タンパク質は主にScFv−Fc/ScFv−Fc及びFc/Fcホモダイマーの形態で存在し(>96%)、電荷の斥力相互作用が、ホモダイマーの形成を増進させ、ヘテロダイマーの形成を阻害するために重要であることを示唆する。ScFv−Fc上の追加の変異(E357K/K370E又はE356K/K439E)が、ホモダイマーの含有量を有意には増加させなかったが、ヘテロダイマーの含有量を一定の範囲で増加させたことに留意すべきである。加えて、E357K/K370E/K392D/K409D/D399K(変異組合せ4)がFcに導入されたときには、Fcモノマーが現れる(約6%)ので、安定性を更に調査すべきである。
タンパク質又は抗体混合物の組成の解析のために使用される方法は、以下のとおりである。すなわち、融合タンパク質ScFv−FcはFcより大きな分子量を有し、したがって、ScFv−Fc及びFcの組合せでは、ホモダイマー(ScFv−Fc/ScFv−Fc及びFc/Fc)及びヘテロダイマー(ScFv−Fc/Fc)は、SDS−PAGEにおいて異なる位置のバンドを示すと考えられる。ホモダイマー及びヘテロダイマーの割合を検出できる。ScFv−Fc及びFcの発現ベクターを同時トランスフェクトさせ、ホモダイマー(ScFv−Fc/ScFv−Fc及びFc/Fc)及びヘテロダイマー(ScFv−Fc/Fc)を同時に視覚化できる。
プラスミドpcDNA3.1−zeo−ScFv−FcのpcMVβ−SP−Fcに対する同時トランスフェクション比が、ホモダイマーのヘテロダイマーに対する比に与える影響を調査するために、変異組合せ1を有するプラスミドpcDNA3.1−zeo−ScFv−Fc及びpcMVβ−SP−Fcを、PEIで懸濁培養中の293H細胞(ATCC CRL−1573)内に、4:1、1:1及び1:4の比で同時トランスフェクトさせ、3〜4日の培養後、細胞培養上清を回収した。プロテインAアガロース樹脂で免疫沈降を実施し、ホモダイマータンパク質又は抗体(ScFv−Fc/ScFv−Fc及びFc/Fc)及びヘテロダイマータンパク質又は抗体(ScFv−Fc/Fc)の含有量を、非還元条件下でSDS−PAGEにより検出した。結果を表7に示す。ScFv−FcのFcに対する同時トランスフェクション比を変化させることにより、異なるホモダイマーの割合が変化するが、ヘテロダイマーの割合が常に5%未満であることが結果から分かり、変異組合せ1がヘテロダイマーを安定的に排除できることを示唆する。
本発明によれば、異なるFc鎖を含む2つのプラスミドの同時トランスフェクション比を変化させることにより、異なるホモダイマーの比を一定程度まで調整できるが、ホモダイマー全体の割合は、ヘテロダイマーの割合と同様、有意に変化させることはできず、プラスミドの同時トランスフェクション比が変化してもホモダイマー全体の割合は安定に保たれることを示す。
5.抗体混合物の加速安定性研究
工程4におけるSDS−PAGEでの様々な変異組合せの結果に基づき、本発明者らは、変異組合せ1、4、6及び0(野生型、scFv−Fc野生型のみがトランスフェクトされる)の抗体混合物を選択し、31日間にわたり、45℃未満で加速安定性研究を実施し、SDS−PAGE解析を、0、4、8、16、21及び31日目に実施した。同様に、本発明者らは、変異組合せ1(ミックス1)、組合せ6(ミックス2)及び組合せ0(野生型、対照)の抗体混合物を選択し、CE−SDS(キャピラリー電気泳動)解析を0、8、21及び31日目に実施した。
31日間の加速安定性SDS−PAGEの結果は、変異組合せ1及び6が、野生型(scFV/scFVホモダイマー、対照)抗体混合物と同様、非常に高い安定性を示したことを示した。16日目から、ScFv−Fc/ScFv−Fcホモダイマーが部分的に劣化した一方で、Fc/Fcホモダイマーは、31日目まで優れた安定性を示した。ScFVの不安定性を考慮すると、変異組合せ1及び6の抗体混合物は、野生型Fcと比較して安定性に差がなかったと考えられる。変異組合せ4により作製された抗体混合物に、比較的顕著な劣化が見られ、沈殿が観察されたことに留意すべきである。単一のFc鎖上の5つの変異(すなわち、Fcダイマー上の10の変異)で、構造が影響を受け、不安定性を引き起こしたと推測される。関連する結果は、図6に示すとおりである。
従来のSDS−PAGEと対照的に、CE−SDSは、試料のローディング量が少ない、精確な分子量マーカーを得ることが可能である、紫外線等でのインライン検出、及び定量分析等の利点を有する。したがって、この方法を、ホモダイマー混合物の劣化をより精確に測定するために使用できる。変異組合せ1及び6が、野生型(対照)抗体混合物と同様の良好な安定性を示すことが、図7及び表6から分かった。ScFv−Fc/ScFv−Fcホモダイマー試料の比較的明らかな劣化ピークが16日目から現れる。関連する結果は、SDS−PAGE解析の加速安定性結果と一致している。
本発明を実施するための具体的なモデルを詳細に説明したが、当業者は、これらの詳細は、当技術分野におけるあらゆる教示に従い修正及び変更が可能であり、これら変更が本発明の保護範囲内であることを理解すると考えられる。本発明の全範囲は、添付の請求項及びそれらのあらゆる均等物により定められる。

Claims (13)

  1. 単一の組換え細胞クローンを使用することにより2種以上のタンパク質(例えば抗体)を含有する混合物を得るための方法であって、ここでタンパク質はモノマー鎖間の重合により形成されるダイマーの形態であり、2種以上のタンパク質は同じドメインを含有しており、前記方法は、異なるタンパク質からのモノマー鎖が類似の電荷間の斥力相互作用によりヘテロダイマーを形成しにくく、一方で同じタンパク質からのモノマー鎖が反対電荷間の引力相互作用によりホモダイマーを形成しやすいように、1種又は複数のタンパク質の同じドメインにおける2つのモノマー鎖のアミノ酸残基の一部を反対荷電残基と置換する工程を含む、上記方法。
  2. 2種以上のタンパク質(例えば抗体)を含有する混合物であって、ここでタンパク質はモノマー鎖間の重合により形成されるダイマーの形態であり、2種以上のタンパク質は同じドメインを含有しており、異なるタンパク質からのモノマー鎖が類似の電荷間の斥力相互作用によりヘテロダイマーを形成しにくく、一方で同じタンパク質からのモノマー鎖が反対電荷間の引力相互作用によりホモダイマーを形成しやすいように、1種又は複数のタンパク質の同じドメインにおける2つのモノマー鎖の残基の一部が反対荷電残基と置換されている、上記混合物。
  3. 最大で1種のタンパク質の残基が置換されていない、請求項1に記載の方法又は請求項2に記載の混合物。
  4. 同じドメインが、抗体のCH3ドメイン又は抗体のFc領域を指す、請求項1に記載の方法又は請求項2に記載の混合物。
  5. 抗体が、哺乳動物、例えばヒト、マウス又はラットに由来する、請求項4に記載の方法又は混合物。
  6. 抗体が、IgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3)、IgA(例えばIgA1、IgA2)、IgE、IgD及びIgM(例えばIgM1、IgM2)からなる群から選択される、請求項4に記載の方法又は混合物。
  7. 同じドメインにおける残基の一部を反対荷電残基と置換する工程が、
    (1)タンパク質の2つのモノマー鎖の同じドメイン間の界面残基を得る工程、
    (2)工程(1)で得られた界面残基から対になる正電荷及び負電荷を有する対になる残基を選択する工程、並びに
    (3)工程(2)で得られた対になる正電荷及び負電荷を有する対になる残基から、残基の1つ又は複数の対(例えば2つの対、3つの対又は4つの対)を選択し、選択された対の残基を反対荷電残基と置換する工程
    を含む、請求項1に記載の方法。
  8. 残基の一部が、タンパク質の2つのモノマー鎖の同じドメイン間の界面残基であり、好ましくは、界面残基が、対になる正電荷及び負電荷を有する荷電残基であり、より好ましくは、対になる残基の1つ又は複数の対(例えば2つの対、3つの対又は4つの対)が、反対荷電残基と置換されている、請求項2に記載の混合物。
  9. 荷電残基が、リシン(lys)、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、アスパラギン酸(Asp)及びグルタミン酸(Glu)からなる群から選択される、請求項7に記載の方法又は請求項8に記載の混合物。
  10. 同じドメインが、抗体のFc領域又はCH3ドメインを指し、対になる正電荷及び負電荷を有する対になる荷電残基が、以下のa)〜h)
    a)第1鎖の356位のGlu(E)及び第2鎖の439位のLys(K)、
    b)第1鎖の357位のGlu(E)及び第2鎖の370位のLys(K)、
    c)第1鎖の370位のLys(K)及び第2鎖の357位のGlu(E)、
    d)第1鎖の392位のLys(K)及び第2鎖の399位のAsp(D)、
    e)第1鎖の399位のAsp(D)及び第2鎖の392位のLys(K)、
    f)第1鎖の399位のAsp(D)及び第2鎖の409位のLys(K)、
    g)第1鎖の409位のLys(K)及び第2鎖の399位のAsp(D)、並びに
    h)第1鎖の439位のLys(K)及び第2鎖の356位のGlu(E)
    に示す対になる残基からなる群から選択され、
    上の8つの残基対の位置が、抗体のKABATシステムのEUナンバリングインデックスにより決定される、請求項7に記載の方法又は請求項8に記載の混合物。
  11. 同じドメインにおける2つのモノマー鎖の残基を反対荷電残基と置換する工程が、1つのタンパク質について、392位のLysをAspと置換すること、409位のLysをAspと置換すること、399位のAspをLysに置換することを意味する、請求項10に記載の方法又は混合物。
  12. 同じドメインにおける残基の一部を反対荷電残基と置換するプロセスが、残基の置換から得られるタンパク質をコードするヌクレオチド配列を得る工程、及びヌクレオチド配列を組換え宿主細胞で発現させ、残基の置換から得られるタンパク質を得る工程を含む、請求項1に記載の方法。
  13. 請求項1、3から7まで及び9から12までのいずれか一項に記載の方法により得られるタンパク質混合物。
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