JP2015510952A - 改良された腐食保護を提供する、水性コーティング、組成物およびその方法 - Google Patents

改良された腐食保護を提供する、水性コーティング、組成物およびその方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、腐食抑制剤に関し、さらに具体的には、コーティング組成物のための腐食抑制剤に関する。本発明は、金属表面にコーティング組成物を適用している間、フラッシュ錆を減らし、得られた乾燥コーティングにおいて、さらに改良された腐食抑制をするといった改良された腐食特性をもつコーティング組成物を提供する。本発明は、さらに、上述の組成物およびその腐食抑制剤を作製し、使用する方法も提供する。本発明は、トリアルカノールアミンを含む第1の錯化剤と、カルボン酸を含む第2の錯化剤とを含有する腐食抑制成分を含む水性コーティング組成物を取り扱う。

Description

本発明は、腐食抑制剤に関し、さらに具体的には、コーティング組成物のための腐食抑制剤に関する。本発明は、金属表面にコーティング組成物を適用している間、フラッシュ錆を減らし、得られた乾燥コーティングにおいて、さらに改良された腐食抑制をするといった改良された腐食特性をもつコーティング組成物を提供する。本発明は、さらに、上述の組成物およびその腐食抑制剤を作製し、使用する方法も提供する。
本発明は、腐食を抑制する組成物、この組成物を用いて金属性表面が腐食するのを防ぐ方法、さらに具体的には、コーティング組成物のための腐食抑制剤、かかる腐食抑制剤を含有するコーティング組成物に関する。
金属表面は、時には一定の条件への非常に短期間内の曝露によってさえ、非常に迅速な腐食を受けることがある。その条件によっては、特に、金属表面が水溶液(特に酸性溶液、高イオン性溶液、硬水でさえ)と接触する場合には、ほんの数分または数時間で顕著な腐食が起こることがある。この迅速な腐食は、一般的に、鉄金属表面の場合には「フラッシュ錆」と呼ばれるが、非鉄金属表面でも同様の問題がある。「フラッシュ錆」という用語は、以下に使用する場合、関与する材料が鉄であるか非鉄であるかによらず、迅速に腐食することを指す。
すべてのフラッシュ錆が簡単に目に見えるわけではないが、いずれのかかる腐食の存在も有害であり得、一般に、さらなる深さ方向の分析で検出することができる。フラッシュ錆および他の腐食形態は、種々の用途のために金属性成分を製造するとき、この成分が製作、組み立て、その後の試験および使用の間に水溶液と接触する場合には、特に問題となり得る。
フラッシュ錆が起こるのを減らし、可能な場合には防ぐことが依然として必要である。表面および部分が長持ちし、腐食に関連する損傷に起因する早期故障を経験し得ないように他の種類の腐食を減らすことも依然として必要である。
市販の腐食抑制剤、例えば、金属スルホン酸塩、カルボン酸の重金属(例えば、亜鉛)塩、安息香酸塩、亜硝酸塩および硝酸塩を含有する顔料組成物は、水溶解度が低いことが多い。それに加え、亜硝酸塩および硝酸塩を用いて形成されるフラッシュ錆抑制剤は、これらの腐食抑制剤の毒性が商業的な使用での魅力を低減するため、金属用途を対象とした長期間腐食抑制剤としての使用を限定してきた。
それに加え、アミンと混合された亜硝酸塩および硝酸塩は、効果的なフラッシュ錆抑制剤であるが、これらが反応すると、公知の発癌物質であるN−ニトロソアミンを形成することがある。
その結果、初期のフラッシュ錆形成の保護を与え、長期間の腐食保護も与え得るコーティング組成物のための腐食抑制剤の必要性が存在する。費用対効果が高く、重金属を含まず、亜硝酸塩を含まず、溶媒を含まず、毒性がないか、および/または環境に優しくない材料を含まず、またはこれらの任意の組み合わせを有するコーティング組成物において望ましい性能を与える腐食抑制剤も必要である。腐食抑制剤は、理想的には、油を吸収せず、コーティング組成物に直接加えることができ、その結果、コーティング組成物は、初期のフラッシュ錆形成の保護を与え、コーティングが適用された表面で、さらに長期間にわたって腐食からの保護を与える。またはCIは、系中で作製することができる。
上の議論および直面する問題を踏まえ、改良されたコーティング、ならびにこれらおよび他の金属性成分を処理し、フラッシュ錆または腐食を減らす方法と、フラッシュ錆または腐食が起こったときに取り扱う方法とを含む関連分野での進化が引き続き必要である。本発明は、これらの要求に対処するものである。
本発明は、トリアルカノールアミンを含む第1の錯化剤と、カルボン酸を含む第2の錯化剤とを含有する腐食抑制成分を含む水性コーティング組成物を取り扱う。本発明は、水と、ポリマー樹脂成分と、上述の腐食抑制成分とを含むコーティング組成物を提供し、さらに、場合により、種々のさらなる添加剤が可能である。
本発明は、さらに、トリアルカノールアミンを含む第1の錯化剤と、カルボン酸を含む第2の錯化剤とを含有する腐食抑制成分自体も提供する。
本発明は、金属表面にコーティングを適用している間、フラッシュ錆形成を減らす方法であって、(i)トリアルカノールアミンを含む第1の錯化剤と、カルボン酸を含む第2の錯化剤とを含む腐食抑制成分を含むコーテイング組成物を調製する工程と;(ii)金属表面にコーティング組成物を適用する工程とを含み、適用している間、金属表面にフラッシュ錆形成を減らすコーティングをもたらす方法を提供し、改良された腐食防止性能を与える。本発明は、さらに、コーティングの腐食防止特性を改良する、上述の同じ工程を含む、方法を提供する。本発明は、さらに、金属表面にコーティングを適用している間、フラッシュ錆形成を減らし、さらに、コーティングの腐食防止特性も改良する、上述の同じ工程を含む方法も提供する。
本発明は、腐食抑制剤成分を含有する水性コーティング組成物を製造するプロセスであって、(i)水と、トリアルカノールアミンを含む第1の錯化剤と、カルボン酸を含む第2の錯化剤とを一緒に混合し、腐食抑制剤成分を形成する工程と;(ii)水性コーティング組成物に腐食抑制剤成分を加える工程とを含み、
得られた水性コーティング組成物が、(i)金属表面にコーティングを適用している間、フラッシュ錆形成を減らし、または(ii)改良された腐食防止性能を有するコーティングを与え、または(iii)(i)および(ii)の両方を与えるプロセスを提供する。
本発明は、さらに、水性コーティングにおけるフラッシュ錆抑制剤としての上述の腐食抑制成分の使用も提供する。本発明は、さらに、コーティングの腐食防止特性を改良するための上述の腐食抑制成分の使用を提供する。本発明は、さらに、水性コーティングにおけるフラッシュ錆抑制剤としての上述の腐食抑制成分の使用も提供し、さらに、コーティングの腐食防止特性を改良する。
本明細書に記載する任意の実施形態では、本発明は、第2の錯化剤のカルボン酸が、3〜50個の炭素原子を含有する1種類以上のジカルボン酸であってよいことを定める。第1の錯化剤のトリアルカノールアミンは、窒素原子に結合する3個の同一のアルカノール基を含む三級モノアミンであってもよく、トリアルカノールアミンは、6〜42個の炭素原子を含有する。
本発明は、さらに、第1の錯化剤が、80重量%超がトリアルカノールアミンであるアミン混合物である上述のコーティング組成物を提供する。第1の錯化剤は、1種類以上のトリアルカノールアミンの混合物であってもよく、または、単一のトリアルカノールアミンであってもよく、任意の他のトリアルカノールアミンを含めた任意の他のアミンを実質的に含まなくてもよい。
本発明は、さらに、本明細書に記載する任意の実施形態で、腐食抑制剤成分の第1の錯化剤と第2の錯化剤の重量比が1:9〜9:1であってもよいことを定める。
種々の好ましい特徴および実施形態を、非限定的な説明によって以下に記載する。
コーティング組成物
本発明は、上述の腐食抑制成分を含有するコーティング組成物を含む。さらに具体的には、本発明は、腐食抑制成分を含む水性コーティング組成物を取り扱う。
本発明のコーティング組成物は、上述の腐食抑制成分を含有する限り、過度に限定されない。ある実施形態では、本発明のコーティング組成物は、金属表面に適用および/または使用するものであり、フラッシュ錆形成を最小限にし、および/または減らす必要があり、場合により、さらに、表面の長期間の腐食を最小限にし、および/または減らす必要がある。本発明のコーティング組成物は、費用対効果が高く、重金属を含まず、亜硝酸塩を含まず、溶媒を含まず、毒性がないか、および/または環境に優しくない材料を含まず、またはこれらの任意の組み合わせを有しつつ、コーティング組成物における望ましい性能を場合により与える。
ある実施形態では、本発明のコーティング組成物は、(i)水(薄め液と呼ばれることもある)と、(ii)ポリマー樹脂成分と、(iii)上述の腐食抑制成分とを含む。ある実施形態では、本発明のコーティング組成物は、(i)水と、(ii)ポリマー樹脂成分と、(iii)上述の腐食抑制成分と、(iv)顔料および/または染料(本明細書で使用する場合、顔料は、染料を含んでいてもよい)とを含む。ある実施形態では、本発明のコーティング組成物は、(i)水と、(ii)ポリマー樹脂成分と、(iii)上述の腐食抑制成分と、(iv)消泡剤とを含む。ある実施形態では、本発明のコーティング組成物は、(i)水と、(ii)ポリマー樹脂成分と、(iii)上述の腐食抑制成分と、(iv)顔料および/または染料とを含む。ある実施形態では、本発明のコーティング組成物は、(i)水と、(ii)ポリマー樹脂成分と、(iii)上述の腐食抑制成分と、(iv)消泡剤と、(v)顔料および/または染料とを含む。これらのいずれかの実施形態では、コーティング組成物は、例えば、レオロジー調整剤、ヒンダードアミン光散乱剤、紫外線抑制剤、湿潤剤、流動性調整剤、ワックスエマルション、融着剤、可塑剤、またはこれらの組み合わせを含む1種以上のさらなる添加剤も含んでいてもよい。
ある実施形態では、本発明のコーティング組成物は、顔料で着色されているか、および/または染料で着色されており、顔料成分および/または染料成分を含有する。ある実施形態では、本発明のコーティング組成物は、顔料で着色されていないか、および/または染料で着色されておらず、任意の顔料成分および/または染料成分を実質的に含まないか、あるいは任意の顔料成分および/または染料成分を全く含まず、あるいは他の実施形態では、顔料成分および/または染料成分を故意に含まない。
本発明のいくつかのコーティング組成物では、コーティング組成物は、水系塗料であり、例えば、例えば、橋、船、金属パイプおよび手すり、地下鉄などの構造、金属建造物、流体を運ぶためのパイプおよび導管、貯蔵タンクなどの金属のコーティングを維持するための水系塗料である。これらの水系塗料の例は、酢酸ビニル、スチレン、スチレン−ブタジエン、酢酸ビニル−塩化ビニル、アクリロニトリル−ブタジエン、イソプレン、塩化ビニリデン−アクリロニトリル、塩化ビニリデン−酢酸ビニル、塩化ビニル−アクリロニトリル、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルポリマーならびにこれらのコポリマーと、他のビニルモノマー、カルボン酸化された合成ゴムおよび天然ゴムなどのエマルションポリマーである。他の有用かつ周知の水系塗料としては、エポキシ、アルキド、フタルアルキド、乳化した乾燥油、ポリスチレンなどが挙げられる。膜形成剤および塗料の性質は、本発明にとって重要ではないと考えられ、任意の水系塗料、特に、鉄金属のためのコーティングが、本発明の利益を享受し得る。
本発明のいずれかのコーティング組成物は、場合により、1種以上のさらなる添加剤をさらに含んでいてもよい。これらのさらなる添加剤は、1種以上のさらなる薄め液、分散剤、湿潤剤、融着用溶媒、顔料/染料および/または顔料/染料分散剤(コーティング組成物が、顔料/染料で着色されている場合)、消泡剤(すでに存在しない場合)、フィラー、可塑剤、溶解助剤、増粘剤、pH調整剤(バッファーと呼ばれることもある)、紫外線抑制剤、またはこれらの任意の組み合わせを含んでいてもよい。
適切な消泡剤としては、例えば、ポリグリコール消泡剤およびシリコン消泡剤が挙げられる。本発明で使用するのに適切な市販のポリグリコール消泡剤としては、例えば、Pluronic(登録商標)の名称でBASF(登録商標)によって販売されている製品およびQ2−3183AとしてDow Corning(登録商標)によって販売されている製品の2つの製品が挙げられる。利用可能なさらなる適切なシリコン消泡剤の非限定例としては、以下が挙げられる:ジメチルポリシロキサン加水分解物;アルファ−メチル−オメガ−メトキシポリジメチルシロキサン;ポリジメチルシリコーン油;ポリ(ジメチルシロキサン);メチル末端封鎖ポリジメチルシロキサン;ポリオキシ(ジメチルシリレン)、アルファ−(トリメチルシリル)−オメガ−ヒドロキシ;ポリ[オキシ(ジメチルシリレン)]、アルファ−[トリメチルシリル]−オメガ−[(トリメチルシリル)オキシ];シリコーン油;アルファ−(トリメチルシリル)ポリ[オキシ(ジメチルシリレン)]−オメガ−メチル;およびこれらの混合物が挙げられる。好ましい組成物は、浴、噴霧または他の適用方法であるかによらず、かかる消泡剤を、金属表面を処理するときに使用する間、発泡を抑制するのに十分なさまざまな数および量で含んでいてもよい。かかる消泡剤は、組成物中の種々の他の成分、例えば、塩基性成分、イミダゾリン成分およびアゾール成分、または本明細書の組成物中で使用する任意の他の成分を加える間にも特に有益であろう。選択される好ましい実施形態では、かかる消泡剤は、目的とする有利な効果を達成するのに適切な、組成物の約0.01〜約1.0重量%の量で存在していてもよい。
適切なpH調節剤としては、無機塩基、例えば、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム、および公知のバッファー剤または一般的に用いられているバッファー剤、例えば、ホスフェートおよびボレートが挙げられる。
適切な分散剤(界面活性剤と呼ばれることもある)としては、スルホン酸アルキル、アクリルスルホネート、リン酸エステル、スルホサクシネート、アセチレングリコール、エトキシル化アルコール、およびこれらの組み合わせが挙げられる。本発明で使用するのに適切なかかる界面活性剤の市販例としては、Lubrizol Corporationから入手可能なSolsperse(商標)界面活性剤、およびStepan CompanyによるNF−12界面活性剤が挙げられる。含まれる場合、かかる界面活性剤は、好ましくは、1重量%までの量、0.1〜1重量%の範囲の量で与えられてもよい。この様式で使用する場合、かかる界面活性剤を加え、良好な濡れ性能を与え、組成物全体と金属表面の濡れ性、および組成物全体の他の成分と金属表面の濡れ性を高めることができる。
ある実施形態では、コーティング組成物は、アクリルエマルションであり、スチレンアクリルエマルションを含む。ある実施形態では、コーティング組成物は、ハロゲン化物、例えば、塩化物を実質的に含まないか、全く含まない。ある実施形態では、コーティング組成物は、塩化ビニリデンエマルションではない。上述のエマルションおよびコーティング組成物は、一般に、モノマー、例えば、スチレンおよびビニリデンを指す。これらの化合物が、重合した物質を含有し、そのため、ポリスチレンアクリルエマルション、ポリ塩化ビニリデンエマルションなどと呼ばれてもよいことが理解される。
腐食抑制剤成分
本発明の腐食抑制成分は、第1の錯化剤と、第2の錯化剤とを含む。第1の錯化剤は、トリアルカノールアミンを含有する。第2の錯化剤は、カルボン酸を含有する。腐食抑制成分は、錯化剤が互いに塩を形成することができる量の水を含んでいてもよい。理論によって束縛されることを望まないが、第1の錯化剤に使用される特定のアミン型を、記載される特定の型の酸と組み合わせると、本発明によって、改良された驚くべき性能を達成することができ、この特定されたアミンを使用しない場合、および/またはかなり異なる酸を使用する場合には、得ることができないと考えられる。
第1の錯化剤は、トリアルカノールアミンを含有する。第1の錯化剤は、アミン混合物、例えば、2種類以上のトリアルカノールアミン混合物であってもよい。また、第1の錯化剤は、少なくとも1種のトリアルカノールアミンを含むアミン混合物であってもよい。言い換えると、非トリアルカノールアミンを含む他のアミンが、第1の錯化剤中に存在していてもよい。しかし、第1の錯化剤は、トリアルカノールアミンを含有する。
ある実施形態では、第1の錯化剤は、少なくとも50重量%がトリアルカノールアミンであり、他の実施形態では、第1の錯化剤は、少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、または95重量%がトリアルカノールアミンである。さらに他の実施形態では、第1の錯化剤は、1種類以上のトリアルカノールアミンから本質的になり、任意の他のアミンを実質的に含まなくてもよい。実質的に含まないとは、任意の他のアミンが、第1の錯化剤中に、産業用材料に典型的な量しか存在していないことを意味する。言い換えると、市販の産業用材料が、1種類以上のトリアルカノールアミンで構成されていると考えられる場合、他のアミンを意図的に加えたり、および/または他のアミンの量が、典型的な混入または副生成物の存在などに起因して存在してもよい量を超えたりしない限り、任意の他のアミンが実質的に存在しないと考えてもよい。
ある実施形態では、本明細書で使用する場合、ある材料は、5重量%以下、4重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、または0.5重量%以下の第2の材料を含有する場合、第2の材料を実質的に含まないと考えてもよい。
適切なトリアルカノールアミンとしては、アミン、三級モノアミン、すなわち、1個の窒素原子と3個のアルカノール基、例えば、ヒドロキシ基を含有する3個のヒドロカルビル基、またはある実施形態では、ヒドロキシ基を含有する3個のアルキル基とを含むアミンが挙げられる。これらのトリアルカノールアミンは、合計で3〜42個の炭素原子、または4〜30個、または5〜18個、6〜12個、6〜9個、またはちょうど6個の炭素原子を含有していてもよい。ある実施形態では、トリアルカノールアミンは、ヒドロキシ基を含有する3個のヒドロカルビル基またはアルキル基が同一である同一のアルカノール基を有する。このことは、ある実施形態では、第1の錯化剤のトリアルカノールアミンが、窒素原子に結合した3個の同じアルカノール基を含む三級モノアミンであり、トリアルカノールアミンは、3〜42個の炭素原子を含有するか、または上述の任意の他の範囲の炭素原子を含有する。
ある実施形態では、第1の錯化剤のトリアルカノールアミンは、式:
Figure 2015510952

式中、各Rは、独立して、アミンが6〜42個の炭素原子、または6〜120個、6〜18個、6〜12個、6〜9個、または6個の炭素原子を含有するようなヒドロカルビル基である;
によって表わされる。他の実施形態では、R基は、2〜40個の炭素原子、または3〜39個、4〜38個、5〜37個、または6〜36個の炭素原子をそれぞれ含有すると定義されてもよい。他の実施形態では、R基は、2〜14個の炭素原子、または2〜10個、2〜6個、2〜4個、2〜3個、またはちょうど4個、3個、または2個の炭素原子をそれぞれ含有すると定義されてもよい。ある実施形態では、上の式のR基は、アルキル基である(またはむしろアルキレン基)。ある実施形態では、上の式のR基は、それぞれ同じ数の炭素原子を含有する同じアルキレン基である。R基は、直鎖または分枝鎖であってもよいが、ある実施形態では、上の式のR基は、直鎖アルキレン基である。
本発明で使用するのに適切なトリアルカノールアミンの適切な例としては、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、またはこれらの混合物が挙げられる。ある実施形態では、本発明のトリアルカノールアミンは、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、またはこれらのいくつかの組み合わせである。他の実施形態では、本発明のトリアルカノールアミンは、トリエタノールアミンである。さらに他の実施形態では、本発明のトリアルカノールアミンは、トリプロパノールアミン、またはこれらのいくつかの組み合わせである。
第2の錯化剤は、カルボン酸を含有する。本発明で使用するのに適切なカルボン酸は、過度に限定されないと考えられる。ある実施形態では、第2の錯化剤は、1種類以上のジカルボン酸を含む。ある実施形態では、第2の錯化剤は、3個または4個から50個の炭素原子まで、または4〜40個、8〜20個、10〜12個、または11〜12個の炭素原子を含む1種以上のカルボン酸を含有する。ある実施形態では、第2の錯化剤は、3〜50個の炭素原子、または4〜40個、8〜20個、10〜12個、または11〜12個の炭素原子を含有する1種類以上のジカルボン酸を含む。
ある実施形態では、第2の錯化剤は、少なくとも1つのジカルボン酸を含む。ある一定の実施形態では、第2の錯化剤は、2種類、3種類、またはそれより多いジカルボン酸の混合物を含む。本発明で使用するのに適切なかかるジカルボン酸混合物の市販例は、Corefree(登録商標)M−1という名称でInvista(登録商標)から販売されている。
適切なカルボン酸としては、直鎖カルボン酸、分枝鎖カルボン酸、またはこれらの組み合わせ、ある実施形態では、直鎖ジカルボン酸、分枝鎖ジカルボン酸、またはこれらの組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、カルボン酸は、任意の芳香族基を含まない脂肪族である。
ある実施形態では、第2の錯化剤は、式:
Figure 2015510952

式中、nは、2〜48である;
によって表わされる1種類以上のジカルボン酸を含んでいてよい。ある実施形態では、nは、3〜38、または6〜18、7〜10、8〜10、または9〜10である。
ある実施形態では、第2の錯化剤は、上に定義されるように、モノカルボン酸を実質的に含まないか、全く含まない。ある実施形態では、第2の錯化剤は、上に定義されるように、分枝鎖カルボン酸、つまり、分枝鎖モノカルボン酸、分枝鎖ジカルボン酸、または両者を実質的に含まないか、全く含まない。
適切な酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、またはこれらのいくつかの組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、酸は、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、またはこれらのいくつかの組み合わせを含有する。
ある実施形態では、第2の錯化剤としては、セバシン酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、2−ドデセン二酸、3−tert−ブチルアジピン酸、1,1−シクロヘキサン二酢酸、ならびにこれらの同じ酸の塩の混合物および/または塩が挙げられる。
ある実施形態では、上に記載する水性コーティング組成物は、(i)トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、またはこれらのいくつかの組み合わせを含む第1の錯化剤と、(ii)マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、またはこれらのいくつかの組み合わせを含む第2の錯化剤とを含む。
上述のいずれかの実施形態では、第1の錯化剤は、1種類以上のトリアルカノールアミンを含むアミン混合物であってもよい。これらいくつかの実施形態では、アミン混合物は、80重量%超がトリアルカノールアミンであるか、または85重量%、90重量%または95重量%超がトリアルカノールアミンである。
上述のいずれかの実施形態では、第1の錯化剤は、1種類以上のトリアルカノールアミンを含み、アミンのアルカノール基が直鎖であるアミン混合物であってもよい。これらいくつかの実施形態では、アミン混合物は、80重量%、85重量%、90重量%または95重量%超がこれらのトリアルカノールアミンである。
上述のいずれかの実施形態では、第1の錯化剤は、1種類以上のトリアルカノールアミンを含み、アミンのアルカノール基が同じ直鎖アルカノール基であるアミン混合物であってもよい。これらいくつかの実施形態では、アミン混合物は、80重量%、85重量%、90重量%または95重量%超がこれらのトリアルカノールアミンである。
上述の水性コーティング組成物では、第1の錯化剤と第2の錯化剤の重量比は、1:9〜9:1であってもよい。ある実施形態では、第1の錯化剤と第2の錯化剤の重量比は、1:5〜5:1、1:4〜4:1、2:3〜3:2、または約3:2、約1:1、または約2:3である。
上述の水性コーティング組成物では、腐食抑制成分は、組成物全体に対して0.1〜30重量%、あるいは0.1重量%または0.25重量%または0.5重量%から、20重量%または10重量%または5重量%まで、あるいは0.1〜2.0重量%、または0.25〜2.0重量%、または0.5〜1.5重量%、または約1.0重量%存在していてもよい。
ある実施形態では、上述の水性コーティング組成物において、第2の錯化成分は、組成物全体の中で15重量%まで、あるいは0.1重量%または0.2重量%または0.5重量%から、15重量%または10重量%または5重量%または2重量%まで存在していてもよい。同様に、ある実施形態では、第1の錯化成分は、組成物全体の中で15重量%まで、あるいは0.1重量%または0.2重量%または0.5重量%から、15重量%または10重量%または5重量%または2重量%まで存在していてもよい。
ある実施形態では、第1の錯化剤および/または腐食抑制成分全体は、亜硝酸ナトリウム塩を実質的に含まないか、または全く含まない。ある実施形態では、第2の錯化剤および/または腐食抑制成分全体は、硫黄含有カルボン酸、例えば、アリールスルホンアミドカルボン酸を実質的に含まないか、または全く含まない。ある実施形態では、腐食抑制成分は、ワックスエマルションを実質的に含まないか、または全く含まない。本発明は、記載する利益を与えるために、これらの種類の材料の存在を必要としない。
ある実施形態では、第1の錯化剤および/または腐食抑制成分全体は、アゾール(例えば、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾールおよびメルカプトベンゾチアゾール)および/またはイミダゾリン(例えば、エトキシル化イミダゾリン)を実質的に含まないか、または全く含まない。本発明は、記載する利益を与えるために、これらの種類の材料の存在を必要としない。
ある実施形態では、第1の錯化剤および/または腐食抑制成分全体は、ホスホネートおよび/またはポリホスホネート(例えば、有機ホスホネート、ポリアミノホスホネートおよびポリホスホン酸ポリマー)を実質的に含まないか、または全く含まない。本発明は、記載する利益を与えるために、これらの種類の材料の存在を必要としない。
ある実施形態では、錯化剤および/または腐食抑制成分全体は、金属および/または金属塩、例えば、多価金属イオンを実質的に含まないか、または全く含まない。ある実施形態では、組成物を、一般に、揮発性有機化合物を含有せず、環境に優しいものとして記載してもよく、一般に、非常に少量の揮発性有機化合物を含有するか、または測定可能な揮発性有機化学物質を含まないという点で、「低VOC」または「VOCを含まない」と考えられる。
ある実施形態では、錯化剤および/または腐食抑制成分全体は、有機酸、例えば、ソルビン酸、乳酸およびクエン酸、ならびにかかる酸の塩および/または誘導体(そのカリウム塩およびナトリウム塩を含む)を実質的に含まないか、または全く含まない。
ある実施形態では、錯化剤および/または腐食抑制成分全体は、天然ゴムまたはワックス、例えば、ハチミツ、植物性ワックスおよび/あるいはその抽出物または誘導体(例えば、パラフィン、オレンジピールワックス、キサンタンゴムおよびカラギーナンを含む)を実質的に含まないか、または全く含まない。
ある実施形態では、錯化剤および/または腐食抑制成分全体は、芳香族カルボン酸、例えば、安息香酸を実質的に含まないか、または全く含まない。
ある実施形態では、第1の錯化剤および/または腐食抑制成分全体は、一級アミンおよび/または二級アミンを実質的に含まないか、または全く含まない。ある実施形態では、第1の錯化剤および/または腐食抑制成分全体は、一級アルカノールアミンおよび/または二級アルカノールアミンを実質的に含まないか、または全く含まない。
産業上の用途
本発明は、上述の水性コーティング組成物およびこれに用いられる腐食抑制添加剤パッケージのための種々の方法および使用を含む。
上述の組成物は、鉄金属表面、例えば、鋼鉄および鋳鉄において特に有利な用途を見出しているが、多くの非鉄金属表面は、保護を受け、それによって、上述の組成物から同様に利益を享受する。
本発明は、金属表面にコーティングを適用している間、フラッシュ錆形成を減らす方法を含む。上述のように、特に、水性コーティング組成物を用い、金属表面にコーティングを適用するとき、フラッシュ錆形成は、非常に速く起こり得る。本発明は、上述の組成物を利用し、このようなコーティングを適用している間、フラッシュ錆形成を減らし、ある場合には、なくす方法を提供する。
フラッシュ錆形成を減らす方法は、(i)トリアルカノールアミンを含む第1の錯化剤と、カルボン酸を含む第2の錯化剤とを含む腐食抑制成分を含むコーテイング組成物を調製する工程と;(ii)金属表面にコーティング組成物を適用する工程とを含む。この方法は、コーティングの適用の間、フラッシュ錆形成を減らした、および/または減らす、金属表面へのコーティングをもたらす。ある実施形態では、この方法は、さらに、改良された腐食防止性能を与えるコーティングをもたらし、この改良された性能は、コーティングが乾燥した後にも続く。上述のいずれかのコーティング組成物をこの記載した方法で使用してもよい。
本発明は、上述の腐食抑制成分を含有する水性コーティング組成物を製造するプロセスも提供する。このプロセスは、(i)水と、トリアルカノールアミンを含む第1の錯化剤と、カルボン酸を含む第2の錯化剤とを一緒に混合し、腐食抑制剤成分を形成する工程と;(ii)水性コーティング組成物に腐食抑制剤成分を加える工程とを含む。また、腐食抑制剤成分を系中で作製してもよい。得られた水性コーティング組成物は、金属表面にコーティングを適用している間、フラッシュ錆形成を減らすことができる。ある実施形態では、得られた組成物は、さらに、改良された腐食防止性能を有するコーティングを与え、この改良された性能は、コーティングが乾燥した後にも続く。上述のいずれかのコーティング組成物をこの記載した方法で使用してもよい。
別の言い方をすると、本発明は、上の組成物を、噴霧、浸漬、コーティングまたは他の効果的な手段によって金属表面に混合し、希釈し、接触させるか、または適用する工程を含む、金属表面を処理して腐食を抑制する方法も提供する。かかる方法は、1種以上の腐食を抑制する組成物、または上に記載するこれを含有するコーティング組成物を用い、ある様式で金属表面と接触させるか、または処理する工程を含む。ある実施形態では、約7〜約10のpHを有するように組成物を配合する。上述の方法は、腐食を抑制する組成物、またはこれを含有するコーティング組成物を、この組成物をその他の閉じられた流体系に流すことによって、金属部分を、この組成物を含有する加熱または非加熱浴に浸すか、または浸漬することによって、あるいはその環境下で適した技術を用い、金属部分に組成物を噴霧するか、または塗ることによって、金属表面に適用することも含む。さらに他の実施形態では、この方法は、さらに、処理した金属部分を保存し、輸送し、または使用すること、あるいは処理した部品を乾燥させ、接触に対して乾燥状態にある組成物のコーティングを形成し、その後に腐食から保護することを含んでいてもよい。
本発明は、さらに、水性コーティング組成物におけるフラッシュ錆抑制剤としての上述の腐食抑制成分の使用も提供する。本発明は、上述の腐食抑制成分の使用であって、該成分を含むコーティングの腐食防止性能を改良し、この性能が、コーティングが乾燥した後にも続くための使用も提供する。上述のいずれかの腐食抑制成分を、上述の用途で使用してもよい。
上述のように、本発明は、添加剤パッケージ、さらに具体的には、水性コーティング組成物のための添加剤パッケージである腐食抑制成分自体も提供する。腐食抑制成分は、トリアルカノールアミンを含む第1の錯化剤と、カルボン酸を含む第2の錯化剤とを含む。腐食抑制成分は、上述の第1の錯化剤および第2の錯化剤のいずれかを含んでいてもよい。腐食抑制成分は、1種以上のさらなる添加剤を含んでいてもよく、および/または上述のいずれかを含む1種以上のさらなる添加剤を含む、より大きな添加剤パッケージの一部であってもよい。腐食抑制成分および/または使用される添加剤パッケージは、1種以上の溶媒および/または希釈剤も含んでいてもよく、担体として記載されてもよい。
適切な担体としては、水系流体(水および/またはアルコール成分を含む)が挙げられる。適切なアルコールとしては、一価、二価、三価または他の多価アルコールが挙げられる。処理される特定の金属部分または表面および使用する組成物全体の濃度によって、さまざまな量のアルコールおよび水成分を組成物に配合してもよい。例えば、濃縮形態で、好ましい組成物は、全体で約80重量%未満の水を含んでいてもよい。この濃縮された組成物は、使用に際し、約20倍に、すなわち、適用に応じて、約1:20(濃縮物:水)に、またはさらに希釈されてよい。好ましい組成の、使用準備ができた配合物は、適用に応じて、約50重量%、または60重量%から約90重量%までの水を含んでいてもよい。処理される金属部分または表面に応じて、濃縮物または使用準備ができた配合物が望ましいかにかかわらず、アルコール成分を種々の量で加えてもよい。例えば、濃縮された配合物は、約1〜約10重量%のアルコール成分を含んでいてもよい。使用準備ができた配合物では、この濃縮物を約5〜約10倍またはそれを超える希釈比で希釈してもよい。適切なアルコールの例としては、二価アルコール、すなわち、グリコールまたはジオール、ならびに三価アルコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールおよび他のグリコール(ジエチレン、トリエチレンなどを含む)などが挙げられる。
上の言及は、濃縮された配合物および使用準備ができた配合物の両方についてなされているが、これらの配合物は、エンドユーザーのために、エンドユーザーによって禁止されることが理解されるだろう。所望な場合、特定の用途、環境、処理方法、保護が必要な金属表面の種類によっては、濃縮された配合物を「そのまま」使用することができる。
本明細書で使用する場合、「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」という用語は、当業者に周知である通常の意味で用いられる。具体的には、分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有し、炭化水素の特徴を主に有する基を指す。ヒドロカルビル基の例としては、炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、ならびに芳香族−、脂肪族−、および脂環式置換芳香族置換基、ならびに分子の別の部分を合わせて環が完成される環状置換基(例えば、2個の置換基が一緒になって環を形成する);置換された炭化水素置換基、すなわち、非炭化水素基を含有する置換基であり、本発明の内容では、置換基の主な炭化水素の性質を変えない(例えば、ハロ(特に、クロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソおよびスルホキシ);ヘテロ置換基(すなわち、主に炭化水素の特徴を有するが、本発明の内容では、それ以外は炭素原子で構成される環または鎖に炭素以外を含有する置換基である)が挙げられる。ヘテロ原子としては、硫黄、酸素および窒素が挙げられ、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基を包含する。一般に、2個以下、ある実施形態では、1個以下の非炭化水素置換基が、ヒドロカルビル基の10個の炭素原子ごとに存在しているか、典型的には、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基が存在しなくてもよい。本明細書で使用する場合、「炭化水素基」または「炭化水素置換基」という用語は、カルボニル基を含有するヒドロカルビル基を意味する。
上述の材料の一部が、最終的な配合物中で相互作用してもよいことが公知であり、その結果、最終的な配合物の成分は、最初に加えたものと異なっていてもよい。例えば、(洗剤などの)金属イオンが、他の分子の他の酸性部位またはアニオン性部位に移動してもよい。これによって形成される生成物は、その意図する用途で本発明の組成物を使用すると形成される生成物を含めて、容易な記載が可能でないことがある。とはいうものの、かかるすべての改変および反応生成物は、本発明の範囲に含まれ、本発明は、上述の成分を混ぜることによって調製される組成物を包含する。
本発明を以下の実施例によってさらに説明する。実施例が、本発明を説明するために与えられているが、本発明を限定することを意図していない。
実施例セット1
いくつかの異なる腐食抑制剤成分を、顔料で着色していない水性コーティング組成物に加えることによって、実施例セットを調製する。基準となる水性コーティング組成物は、従来の配合を有し、水、ポリマー樹脂および添加剤パッケージを含有し、以下添加剤パッケージAと呼ぶ。添加剤パッケージAは、消泡剤、分散剤、増粘剤、pH調節剤および融着剤を含む。基準となる水性コーティング組成物は、腐食抑制剤を含有しない。実施例セットは、水性コーティング組成物の基準となるサンプルを含み、次いで、それぞれ、上部を異なる腐食抑制剤を用いて1.0%になるまで処理することを除き、基準と同じである一連の例を含む。実施例セット1の例のまとめを以下の表に与える。
Figure 2015510952

1−腐食抑制剤Iは、Raybo(登録商標)Chemical CompanyによってRAYBO(登録商標)60として上市され、亜硝酸ナトリウムアミン塩を含む市販の腐食抑制剤である。
2−腐食抑制剤IIは、ワックスエマルションである。
3−腐食抑制剤IIIは、トリエタノールアミンアリールスルホンアミドカルボン酸塩である。
4−腐食抑制剤IIIは、トリイソプロパノールアミンおよびモノイソプロパノールアミンと、10〜12個の炭素原子を含有するジカルボン酸との混合物の塩である。
5−腐食抑制剤IIIは、トリエタノールアミンと、10〜12個の炭素原子を含有するジカルボン酸との塩である。
実施例セット2
実施例セット1と同様に第2のサンプルセットを調製するが、実施例セット2は、異なる添加剤パッケージを使用する、顔料で着色した水性コーティング組成物のセットである。実施例セット2の基準となる水性コーティング組成物は、従来の配合を含み、水と、実施例セット1で使用されるポリマー樹脂と、添加剤パッケージとを含み、以下、添加剤パッケージBと呼ぶ。添加剤パッケージBは、消泡剤、分散剤、顔料、フィラー、溶解助剤、増粘剤、pH調節剤および融着剤を含む。実施例セット2の例のまとめを以下の表に与える。
Figure 2015510952

1−腐食抑制剤Iは、Raybo(登録商標)Chemical CompanyによってRAYBO(登録商標)60として上市され、亜硝酸ナトリウムアミン塩を含む市販の腐食抑制剤である。
2−腐食抑制剤IIは、ワックスエマルションである。
3−腐食抑制剤IIIは、トリエタノールアミンアリールスルホンアミドカルボン酸塩である。
4−腐食抑制剤IIIは、トリイソプロパノールアミンおよびモノイソプロパノールアミンと、10〜12個の炭素原子を含有するジカルボン酸との混合物の塩である。
5−腐食抑制剤IIIは、トリエタノールアミンと、10〜12個の炭素原子を含有するジカルボン酸との塩である。
実施例セット3
実施例セット1と同様に第3のサンプルセットを調製するが、実施例セット3は、異なるポリマー樹脂を使用する。実施例セット3は、上に記載されている、水と、実施例セット1および2で使用するのとは異なるポリマー樹脂と、添加剤パッケージAとを含有する従来の配合を有する、顔料で着色していない水性コーティング組成物のセットである。実施例セット3の例のまとめを以下の表に与える。
Figure 2015510952

1−腐食抑制剤Iは、Raybo(登録商標)Chemical CompanyによってRAYBO(登録商標)60として上市され、亜硝酸ナトリウムアミン塩を含む市販の腐食抑制剤である。
2−腐食抑制剤IIは、ワックスエマルションである。
3−腐食抑制剤IIIは、トリエタノールアミンアリールスルホンアミドカルボン酸塩である。
4−腐食抑制剤IIIは、トリイソプロパノールアミンおよびモノイソプロパノールアミンと、10〜12個の炭素原子を含有するジカルボン酸との混合物の塩である。
5−腐食抑制剤IIIは、トリエタノールアミンと、10〜12個の炭素原子を含有するジカルボン酸との塩である。
実施例セット4
実施例セット2と同様に第4のサンプルセットを調製するが、実施例セット4は、実施例セット3で使用するのと同じ樹脂である異なるポリマー樹脂を使用する。実施例セット4は、上に記載されている、水と、実施例セット3のポリマー樹脂と、添加剤パッケージBとを含有する従来の配合を有する、顔料で着色された水性コーティング組成物のセットである。実施例セット4の例のまとめを以下の表に与える。
Figure 2015510952

1−腐食抑制剤Iは、Raybo(登録商標)Chemical CompanyによってRAYBO(登録商標)60として上市され、亜硝酸ナトリウムアミン塩を含む市販の腐食抑制剤である。
2−腐食抑制剤IIは、ワックスエマルションである。
3−腐食抑制剤IIIは、トリエタノールアミンアリールスルホンアミドカルボン酸塩である。
4−腐食抑制剤IIIは、トリイソプロパノールアミンおよびモノイソプロパノールアミンと、10〜12個の炭素原子を含有するジカルボン酸との混合物の塩である。
5−腐食抑制剤IIIは、トリエタノールアミンと、10〜12個の炭素原子を含有するジカルボン酸との塩である。
上述の実施例セット中のすべての例を試験し、フラッシュ錆形成を減らす能力について評価し、実施例から作製されるコーティングの腐食防止性能についても評価した。サンプルを評価するために用いられる試験を以下に記載する。
試験片をコーティングし、実施例の材料の1.0mil厚の乾燥膜を与え、次いで、このパネルを乾燥させることによって、フラッシュ錆の減少を評価する。コーティングを周囲条件下(約60%相対湿度、22℃)に適用して数分以内に、フラッシュ錆を観察した。15分後、フラッシュ錆形成について試験パネルを評価し、結果をASTM D610−08に基づいて百分率で報告し、100%の結果は、金属表面全体がフラッシュ錆形成を示し、0%の結果は、フラッシュ錆形成が全く観察されないことを示す。
組成物の腐食防止性能、および/または組成物から作製されるコーティングをいくつかの試験によって評価する。これらの試験は、以下の試験を含む:(i)改変したASTM B117−09にしたがって行われた塩噴霧試験、試験条件は35℃、5%塩水溶液、1日に24時間行う、(ii)ASTM G154−06サイクル1にしたがって行われたQUV耐候試験、60℃、8時間および0.89W/m/nmの設定の紫外光サイクル、50℃、4時間暗状態、1日に24時間行う設定の凝縮サイクル、ならびに(iii)改変したASTM D4585−07にしたがって行われたクリーブランドコンデンシングキャビネット(Cleveland condensing cabinet)(QCT)試験、試験条件は、35℃、100%相対湿度、1日に24時間行う。ASTM B117−09試験を24時間続け、ASTM G154−06試験を200時間続け、ASTM D4585−07試験を200時間続けた。これらすべての試験について、結果を百分率で報告し、低い百分率ほど腐食が少なく、そのため、良好な性能を示す。この試験から得た結果を以下に提示する。
Figure 2015510952
これらの結果は、本発明の組成物が、いずれの腐食抑制成分も含有しなかった基準となる例と比較して、フラッシュ錆形成に対し良好な保護を与え、他の腐食抑制成分を含有する例と比較して、フラッシュ錆形成に対し、少なくとも同様の良好な保護を与えることを示す。これらの結果は、本発明の組成物が、基準(実施例1−1、2−1、3−1および4−1を参照)および他の市販の腐食抑制剤、例えば、腐食抑制剤I(実施例1−2、2−2、3−2および4−2を参照)の両方と比較し、改良された腐食保護性能を有するコーティングを与えることも示す。腐食抑制剤IVを含有する例(実施例1−5、2−5、3−5および4−5を参照)および腐食抑制剤Vを含有する例(実施例1−6、2−6、3−6および4−6を参照)は、フラッシュ錆に対する優れた保護をなお与えつつ、特に、複数の腐食試験に対し、全体に改良された性能を示した。良好な性能を有するこれらの実施例の中で、これらの結果は、腐食抑制剤Vを含有する例が、性能および特性の最も良い全体的な組み合わせを示したことを示す。
上に言及したそれぞれの文書は、参照により本明細書に組み込まれる。実施例を除き、または、その他の明確に示されている場合を除き、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子の数などを特定する本明細書のあらゆる数量は、「約」という用語で修飾されていると理解すべきである。他に示されている場合を除き、材料の量または比率を特定する記載でのすべての数量は、重量基準である。他に示されていない限り、本明細書で言及するそれぞれの化学物質または組成物は、異性体、副生成物、誘導体、通常商業グレードに存在することが理解される他のかかる物質を含有していてもよい商業グレードの物質であると解釈すべきである。しかし、それぞれの化学成分の量は、他に示されていない限り、商業的な物質に通常存在していてもよいいずれの溶媒または希釈油も除いて提示される。本明細書に記載する量、範囲、および比率の上限および下限を独立して組み合わせてもよいことが理解されるべきである。同様に、本発明のそれぞれの要素の範囲および量を、他の任意の要素の範囲または量と一緒に使用することができる。本明細書で使用する場合、「〜から本質的になる」という表現は、検討中の組成物の基本的な特徴および新規な特徴に大いに影響しない物質を含むことを許容する。

Claims (14)

  1. 腐食抑制成分を含み、
    前記腐食抑制成分が、トリアルカノールアミンを含む第1の錯化剤と、カルボン酸を含む第2の錯化剤とを含む、
    水性コーティング組成物。
  2. (i)水と;(ii)ポリマー樹脂成分と;(iii)該腐食抑制成分とを含む、請求項1に記載の水性コーティング組成物。
  3. 前記第2の錯化剤が、3〜50個の炭素原子を含む1種類以上のジカルボン酸を含む、請求項1に記載の水性コーティング組成物。
  4. 前記第2の錯化剤が、式:
    Figure 2015510952

    式中、nは、1〜48である;
    によって表される1種類以上のジカルボン酸を含む、請求項1に記載の水性コーティング組成物。
  5. 前記第1の錯化剤の前記トリアルカノールアミンのうち1種以上が、窒素原子に結合する3個の同一のアルカノール基を含む三級モノアミンであり、該トリアルカノールアミンは、6〜42個の炭素原子を含む、請求項1に記載の水性コーティング組成物。
  6. 前記第1の錯化剤の前記トリアルカノールアミンのうち1種以上が、式:
    Figure 2015510952

    式中、各Rは、独立して、2〜42個の炭素原子を含有するヒドロカルビレン基である;
    によって表わされる、請求項1に記載の水性コーティング組成物。
  7. 前記第1の錯化剤の前記トリアルカノールアミンが、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、またはこれらのいくつかの組み合わせを含み、
    前記第2の錯化剤の前記カルボン酸が、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、またはこれらのいくつかの組み合わせを含む、請求項1に記載の水性コーティング組成物。
  8. 前記第1の錯化剤は、1種類以上のトリアルカノールアミンを含むアミン混合物を含み、該アミン混合物は、80重量%超がトリアルカノールアミンである、請求項1に記載の水性コーティング組成物。
  9. 前記第1の錯化剤は、トリアルカノールアミンを含み、任意の他のアミンを実質的に含まない、請求項1に記載の水性コーティング組成物。
  10. 前記第1の錯化剤と前記第2の錯化剤の重量比が、1:9〜9:1である、請求項1に記載の水性コーティング組成物。
  11. 金属表面にコーティングを適用している間、フラッシュ錆形成を減らす方法であって、該方法は、
    (i)トリアルカノールアミンを含む第1の錯化剤と、カルボン酸を含む第2の錯化剤とを含む腐食抑制成分を含むコーテイング組成物を調製する工程と;
    (ii)金属表面に該コーティング組成物を適用する工程と
    を含み、
    適用している間、該金属表面にフラッシュ錆形成を減らすコーティングをもたらす、方法。
  12. 腐食抑制剤成分を含有する水性コーティング組成物を製造するプロセスであって、
    (i)水と、トリアルカノールアミンを含む第1の錯化剤と、カルボン酸を含む第2の錯化剤とを一緒に混合し、該腐食抑制剤成分を形成する工程と;
    (ii)水性コーティング組成物に腐食抑制剤成分を加えるか、または系中で該腐食抑制剤を形成する工程とを含み、
    得られた水性コーティング組成物が、金属表面に該コーティングを適用している間、フラッシュ錆形成を減らす、プロセス。
  13. 水性コーティング組成物におけるフラッシュ錆抑制剤としての腐食抑制成分の使用であって、該腐食抑制成分が、トリアルカノールアミンを含む第1の錯化剤と、カルボン酸を含む第2の錯化剤とを含む、使用。
  14. 水性コーティング組成物のための腐食抑制成分であって、該腐食抑制成分が、トリアルカノールアミンを含む第1の錯化剤と、カルボン酸を含む第2の錯化剤とを含む、腐食抑制成分。

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