JP2015508064A - ビニルエステルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、式R1−C(O)O−CH=CH2で表されるトランスビニル化化合物を用いて式R−C(O)OHで表されるカルボン酸を転化することによる、式R−C(O)O−CH=CH2で表されるビニルエステルを製造するための連続的な触媒的方法であって、転化が、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、及び白金の群からの少なくとも1種の遷移金属を含有する遷移金属触媒の存在下に、反応相手を取り除くことなく行われ、その後に、得られた反応混合物がその成分に分離される方法に関する。

Description

本発明は、カルボン酸のビニルエスエルを別のカルボン酸のビニルエステルのトランスビニル化反応により連続的に製造するための触媒的方法に関する。
比較的高級のカルボン酸のビニルエステルは、コモノマーとして、ある程度の経済的な重要性を有している。これら比較的高級のカルボン酸のビニルエステルを使って、例えばポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン又はポリアクリル酸エステルのようなポリマーの特性を変性させることができる。すなわち、例えば分散型塗料の加水分解耐性を高めることができる。比較的高級のカルボン酸のビニルエステルは接着剤の製造にも用いられる。この使用分野に関して技術的に重要なのは、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、ラウリン酸又はShellのバーサチック酸911、10、及び1519をベースとするビニルエステルであることが分かった。これらの比較的高級のカルボン酸は、例えば、オキソ反応によって製造されるアルデヒドの酸化によるか、又はオレフィン、一酸化炭素及び水からのいわゆるコッホ合成により入手可能である。2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸又はイソノナン酸をベースとするビニルエステルの場合に、イソノナン酸が主に3,5,5−トリメチルヘキサン酸からなる場合には均一な化合物が存在する一方で、バーサチック酸911のビニルエステルでは、9〜11個の炭素原子を有する高度に分枝したカルボン酸の混合物が、そしてバーサチック酸1519のビニルエステルでは、15〜19個の炭素原子を有する高度に分枝したカルボン酸の混合物が、ビニルエステル内で結合している。バーサチック酸10のビニルエステルでは、ネオデカン酸のような構造の異なる高度に分枝したデカン酸が誘導体化されている。3,5,5−トリメチルヘキサン酸は、ジイソブチレンのヒドロホルミル化とその後の対応するアルデヒドの酸化により、工業的規模で製造される(Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie、第4版、1983、Chemie出版、第9巻、143〜145頁(非特許文献1);第23巻、606〜607頁(非特許文献2))。
カルボン酸のビニルエステルをアセチレンとカルボン酸の反応により製造することが公知である(G. Huebner、Fette, Seifen, Anstrichmittel 68、290 (1966)(非特許文献3)、Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie、第4版、1983、Chemie出版、第23巻、606〜607頁(非特許文献2))。このやり方は欧州特許出願第1057525A2号明細書(特許文献1)で取り上げられており、それによれば、管形反応器内で気体状アセチレンとビニル化すべきカルボン酸を触媒の存在下で反応させる。公知の多相法では、触媒、例えば亜鉛塩を溶解含有しているカルボン酸が連続相を形成し、この連続相中に気体状アセチレンが分散相として存在している。管形反応器は負荷率0.8超で稼働する。ただし原料としてアセチレンを使用することは、産業的な稼働では高度に複雑な装置及び安全技術を必要とし、加えてアセチレンは一般的に一部の地域(lokal)でしか提供されていない。
カルボン酸のビニルエステルを別のカルボン酸のビニルエステルによる、いわゆるトランスビニル化反応によって製造することも公知である。
Figure 2015508064
式中、R及びRは脂肪族又は芳香族の残基を意味することができる。平衡反応を生成物の方向へと制御するため、たいていはトランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHを高過剰量で使用する。また発生するカルボン酸R−C(O)OHは、その平衡から素早く取り出して、転化率を上昇させるため、十分に揮発性であることが望ましい。反応混合物は、一般的に蒸留によって処理されるので、トランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHの選択は、たいていは他の反応物の沸点に基づいて決まる(Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie、第4版、1983、Chemie出版、第23巻、606〜607頁(非特許文献2))。比較的高級のカルボン酸のビニルエステルの製造には、トランスビニル化化合物として酢酸ビニルが特に適しており、またプロピオン酸ビニルもある程度適している。酢酸ビニルは工業的に生産された化学製品として安価に提供されている。酢酸ビニル及びそれから形成される酢酸は比較的低い沸点を有しており、所望のビニルエステルから比較的高級のカルボン酸を蒸留によって分離することができる。
ビニル化化合物としての酢酸ビニルによるカルボン酸のトランスビニル化反応については、文献中に数多くの示唆がある。Adelman、Journal Organic Chemistry、1949、14、1057〜1077頁(非特許文献4)は、触媒としての水銀塩の存在下における、酢酸ビニルによる、ステアリン酸、ラウリン酸、又は3,5,5−トリメチルヘキサン酸のような比較的高級のカルボン酸のトランスビニル化を調査している。米国特許第2,245,131号明細書(特許文献2)は、酢酸水銀の存在下での酢酸ビニルによる安息香酸又はクロトン酸の転化を取り扱っている。反応混合物は、最初は還流させて留めておく。
続いて反応温度を上昇させ、形成された酢酸を分離する。その後、形成された安息香酸ビニルをさらなる分留蒸留において精製する。米国特許第2,299,862号明細書(特許文献3)は、酢酸水銀及び硫酸の存在下で、2−エチルヘキサン酸及び酢酸ビニルからビニル−2−エチルヘキサノアートを製造することを開示している。得られた粗混合物は、最初に酢酸ナトリウムで中和し、続いて蒸留する。ビニル−2−エチルヘキサノアートが収率73%で得られる。ドイツ国特許第1222493B号明細書(特許文献4)によれば、酢酸ビニルによるトランスビニル化のための触媒として、スルホン酸型陽イオン交換樹脂の水銀塩が使用される。
水銀含有触媒を用いたトランスビニル化方法の欠点は、水銀含有触媒の毒性及び揮発性ならびに望ましくないエチリデンジエステルの形成である。さらに、触媒を通常は硫酸により活性化すること及び反応混合物の蒸留前に中和により不活性化する必要があることは、プロセス工程の追加を意味している。
これらの欠点は、パラジウム触媒を適用することで回避することができ、これに関しては、例えば2,2’−ビピリジル又は1,10−フェナントロリンのような芳香族の窒素含有配位子によるパラジウム錯体の変性が有利であることが分かった。米国特許第5,214,172号明細書(特許文献5)によれば、そのように変性されたパラジウム触媒の活性は、強酸の添加によって上昇する。米国特許第5,741,925号明細書(特許文献6)は、2,2’−ビピリジル又は1,10−フェナントロリンによって変性されたパラジウム錯体の存在下での、ナフテン酸のトランスビニル化を取り扱っている。公知の作業方式に対応して、ナフテン酸、好ましくは環状でC10〜C20のカルボン酸を、トランスビニル化化合物としての酢酸ビニルにより、還流させながら対応するビニルエステルに転化させる。触媒は、蒸留中に安定しており、複数のサイクルで改めて用いることができる。米国特許第5,223,621号明細書(特許文献7)に基づいて開示された方法は、その場で形成される(2,2’−ビピリジル)パラジウム(II)ジアセタート錯体による還流下でのカルボン酸、例えばラウリン酸又は安息香酸のトランスビニル化に関する。触媒は、粗生成物の蒸留前に、シュウ酸又は塩酸によって沈殿させてろ別する。
カルボン酸をトランスビニル化するために、パラジウム塩とレドックス剤からなる複合触媒系を使用することも公知である。欧州特許出願第0376075A2号明細書(特許文献8)では、塩化パラジウム、臭化銅(II)、及び酢酸リチウムからなるレドックス活性触媒系を推奨している。例として、酢酸ビニルの沸点付近で、ラウリン酸の酢酸ビニルによる不連続的なトランスビニル化することが記載されている。所望のビニルエステルは、続く蒸留の際に純粋な状態で得られる。レドックス活性触媒系のさらなる一形態が特開2002−322125A号公報(特許文献9)に開示されている。この場合、カルボン酸及び酢酸ビニルならびに酢酸パラジウム及び酢酸リチウムから成る反応混合物が65℃に加熱される。
従来技術では、トランスビニル化反応のためにルテニウム含有触媒を使用することも言及されている。Murray、Catalysis Today 1992、13、93〜102頁(非特許文献5)によれば、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、ネオデカン酸、ネオノナン酸又はアジピン酸のような比較的高級のカルボン酸を、金属ルテニウム又はルテニウム化合物、例えば塩化ルテニウム、酸化ルテニウム又はRu(CO)12のようなルテニウムカルボニルの存在下で、酢酸ビニルによって対応するビニルエステルに変換することができる。この反応は、不連続的に、一酸化炭素又は窒素下で、約2barの圧力及び通常は130〜150℃の温度で実施される。対応する方法が欧州特許出願第0351603A2号明細書(特許文献10)及び欧州特許出願第0506070A2号明細書(特許文献11)からも公知である。ルテニウム触媒は、熱に対してパラジウム触媒より安定であることが指摘されており、パラジウム触媒は、温度が上昇すると金属パラジウムを分離させながら不活性化する。ただし、公知のルテニウム触媒による方法では中程度の収率しか示されていない。
トランスビニル化反応のための従来技術で主に記載されている方法は、不連続的に、たいていは還流下で、また時には加圧下で密閉された反応容器内で実施される。
連続的に稼働されるトランスビニル化方法は、欧州特許出願第0497340A2号明細書(特許文献12)から公知である。連続的に稼働される反応蒸留により、最も揮発性の反応成分を連続的に取り除くことで、トランスビニル化反応の平衡R−C(O)OH+R−C(O)O−CH=CH→R−C(O)OH+R−C(O)O−CH=CHが生成物の方向にシフトする。トランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHは、対応する酸R−C(O)OHが揮発性であるように、また平衡から外れるように選択される。欧州特許出願第0497340A2号明細書(特許文献12)に基づく方法は、トランスビニル化化合物として好ましくは酢酸ビニルを使用し、形成された酢酸は未反応の酢酸ビニルと一緒に反応ゾーンから取り除かれる。その後、別のステップで酢酸から分離された酢酸ビニルを再び反応ゾーンに戻す。この公知の方法は、ルテニウム触媒、例えば[Ru(CO)OAc]を用いて作用し、アジピン酸、ネオデカン酸、及び2−エチルヘキサン酸のトランスビニル化を記載している。ただし、望ましくない酸無水物の形成を抑えるため、所望のビニルエステルの部分転化までしか進行させない。
国際公開第2011/139360A1号パンフレット(特許文献13)及び国際公開第2011/139361A1号パンフレット(特許文献14)は、酢酸ビニルによるカルボン酸の連続的及び半連続的なトランスビニル化方法を開示しており、この場合、2,2’−ビピリジル及び1,10−フェナントロリンのような芳香族の窒素含有配位子を有するパラジウム錯体を使用している。連続的な方法は、充填塔が載置された気泡塔内で稼働され、この塔の下流には精留塔及びストリップ塔がさらに接続されている。酢酸ビニルは気泡塔に導入され、その一方で同時に、カルボン酸及び酢酸ビニルからなり、触媒を溶解含有している混合物が、載置された充填塔に送り込まれる。カルボン酸及び触媒は気泡塔に流れ込み、その一方で酢酸ビニルが向流で気泡塔を通り抜け、そして載置された充填塔を通り抜ける。酢酸ビニルと形成された酢酸が導出され、下流に接続された精留塔及びストリップ塔内で分けられる。
従来技術で記載されている連続的な方法の欠点は、トランスビニル化化合物である酢酸ビニルが、選択される反応条件の故に非常に短い滞留時間で蒸発してしまい、これによりそれ以上のトランスビニル化反応が生じないので、ビニルエステルの製造のために効率よく利用されていないことである。さらに、公知の連続的に稼働されるトランスビニル化方法は、反応容器の後ろに、追加的な反応塔として作用する一連の塔を接続しなければならないので、装置が複雑であり、かつ高い投資費用を投じなければならない。すなわち公知の方法では、所望のビニルエステルの中程度の空時収率しか可能ではない。
欧州特許出願第1057525A2号明細書 米国特許第2,245,131号明細書 米国特許第2,299,862号明細書 ドイツ国特許第1222493B号明細書 米国特許第5,214,172号明細書 米国特許第5,741,925号明細書 米国特許第5,223,621号明細書 欧州特許出願第0376075A2号明細書 特開2002−322125A号公報 欧州特許出願第0351603A2号明細書 欧州特許出願第0506070A2号明細書 欧州特許出願第0497340A2号明細書 国際公開第2011/139360A1号パンフレット 国際公開第2011/139361A1号パンフレット
Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie、第4版、1983、Chemie出版、第9巻、143〜145頁 Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie、第4版、1983、Chemie出版、第23巻、606〜607頁 G. Huebner、Fette, Seifen, Anstrichmittel 68、290 (1966) Adelman、Journal Organic Chemistry、1949、14、1057〜1077頁 Murray、Catalysis Today 1992、13、93〜102頁
それ故、装置をあまり複雑にすることなく、簡単に実施することができ、かつ所望のビニルエステルの高い空時収率、つまり反応体積及び時間当たりの高い生成物生産量を可能にする、カルボン酸のトランスビニル化のための連続的に稼働される方法が求められている。さらに、所望のビニルエステルは高い選択率で形成されるべきである。
したがって、本発明は、式R−C(O)O−CH=CHで表されるトランスビニル化化合物を用いて式R−C(O)OHで表されるカルボン酸を転化することによる、式R−C(O)O−CH=CHで表されるビニルエステルを製造するための連続的な触媒的方法であって、これらのR及びRは互いに独立して脂肪族の、脂環式の、又は芳香族の残基を意味し、転化が、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、及び白金の群から選択される少なくとも1種の遷移金属を含有する遷移金属触媒の存在下に、反応相手を取り除くことなく行われ、その後、得られた反応混合物がその構成成分に分離されることを特徴とする方法にある。
連続的に少なくとも1種の反応相手をトランスビニル化平衡から取り除き(entzogen)、そのために化学平衡が常に乱される公知の連続的に稼働される方法とは対照的に、本発明による方法では、反応相手を取り除くことなく定常状態で転化が遂行する。反応系は定常状態にあり、反応容器から放出された混合物が、その後の処理の際に初めて混合物の構成成分に分離される。トランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHによるカルボン酸R−C(O)OHの転化は遷移金属触媒の存在下で行われ、一般的には20〜160℃、好ましくは60〜150℃、とりわけ90〜140℃の温度で実施される。本発明による方法は、反応相手を取り除くことなく稼働されるにもかかわらず、それでもなお意外なことに、所望のビニルエステルの高い収率及び高い空時収率を達成することができる。
トランスビニル化反応は、標準圧力でも上昇させた圧力でも実施することができ、一般には最大15MPa、好ましくは0.5〜8MPa、とりわけ0.8〜2MPaの圧力で実施される。90〜140℃の温度及び0.8〜2MPaの圧力での反応設定がことのほか適していることが分かった。しかし意外なことに標準圧力及びとりわけ60〜150℃の反応温度でも、同様に所望のビニルエステルの非常に高い空時収率が達成される。
反応容器としては、任意に組み立てられた管形連続反応器、例えば垂直に立っているかもしくは水平に配置された管形連続反応器又は幾重にも蛇行した管形連続反応器のような管形反応器が適している。管形反応器はコンジットとして稼働することができ、ただし管形反応器は、充填物又は装入物、例えばラシヒリング、サドル、ポールリング、スパイラル、バッフルもしくは静的ミキサー、又はミキサーパッキン(Mischerpackung)を含むこともできる。静的混合要素は市場で入手可能であり、例えば、粘度の異なる液体を混合するための特殊な製品ラインをもつスルザーミキサー又はケニックスミキサーとして市場で売り出されている。管形反応器は、移送ポンプ及び場合によっては熱交換器を備えていてもよい。
管形反応器を稼働する際は、投入カルボン酸R−C(O)OH及びトランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHを、管形反応器に別々に、ただし同時に、向流又は並流で導入することができる。しかし両方の液体を前もって混合し、均質な溶液として管形反応器に送り込んでもよい。特別な一実施形態では、均質な溶液が、管形反応器に入る前に、上流に設けられた静的混合要素を通るよう案内される。
またトランスビニル化反応は、撹拌釜又は撹拌釜カスケード内で、加圧なしか又は加圧下で連続的に実施することができる。投入カルボン酸R−C(O)OH及びトランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHは、別々に、又は混合物として連続的に供給され、定常状態にある反応混合物が連続的に導出される。この分野で通常の反応器の実施形態、例えば熱対流を利用したループ反応器又はマルチチャンバ型反応器内での連続的な反応操作も可能である。反応容器は、投入カルボン酸R−C(O)OH及びトランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHからなり液状で触媒を含有する混合物を入れるための軸方向に配置されたノズルを備えた円管形反応器として形成することもでき、この反応器は、内側の強制流動を生成するため、軸方向に配置された誘導管をさらに備えている。
トランスビニル化化合物及びビニル化すべき投入カルボン酸からなる予め製造された混合物による反応容器の空間速度(Belastung)V/Vhは、反応器の体積及び時間に対して0.4〜7.0h−1、好ましくは0.7〜6.2h−1が有利であることが分かった。両方の反応物質が反応容器に別々に、ただし同時に導入される場合、反応容器の空間速度V/Vhは、それぞれ反応器の体積及び時間に対し、トランスビニル化化合物により0.2〜6.0h−1、ビニル化すべき投入カルボン酸により0.1〜6.7h−1である。
定常状態で実施される連続的なプロセス管理により、公知の反応蒸留に比べて非常に高い空時収率を達成できることが有利であり、公知の反応蒸留では、形成されたカルボン酸がトランスビニル化化合物と一緒に連続的に反応系から取り除かれる。加えてこのプロセス管理はトランスビニル化化合物を、常に反応混合物中での十分に高い濃度を保証するため、及び反応蒸留塔に十分に負荷をかけるために大量に投入する必要があり、トランスビニル化化合物のための高度の循環管理が必要である。公知の連続的な反応操作は、大きな反応器容積及び装置の高度な複雑さを必要とする。つまり、高い投資費用を伴う比較的高度に複雑な装置で、中程度の空時収率しか達成されないのである。
ビニルエステルの重合のような副反応を回避するため、トランスビニル化化合物には反応容器に入れる前に適切な阻害剤、例えばヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、第三級ブチルカテコール、又はフェノチアジンを添加することができる。ただし、阻害剤を別個に連続的に反応容器に導入してもよい。均質な反応混合物中での阻害剤の濃度は、トランスビニル化化合物の投入量に対して一般的に3〜150ppmである。
本発明による方法により、対応するビニルエステルに転化することのできる開始カルボン酸R−C(O)OHとしては、脂肪族の、脂環式の、又は芳香族のカルボン酸が適している。有機残基Rは、通常、2〜20個、好ましくは4〜13個の炭素原子を有する。脂肪族カルボン酸に属しているのは、例えばプロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、n−吉草酸、2−メチル酪酸、3−メチル酪酸、ピバル酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、イソノナン酸、ネオノナン酸、n−デカン酸、2−プロピルヘプタン酸、ネオデカン酸もしくはバーサチック酸10、バーサチック酸911、バーサチック酸1519、ラウリン酸、トリデカン酸、パルミチン酸、又はステアリン酸である。本発明による方法に基づいてトランスビニル化し得る様々なイソノナン酸のうち、3,5,5−トリメチルヘキサン酸を挙げることができ、この3,5,5−トリメチルヘキサン酸は、ジイソブチレンを対応する3,5,5−トリメチルヘキサナールへとヒドロホルミル化し、続いて酸化することによって入手可能である。ジイソブチレンが強酸性触媒の存在下で一酸化炭素及び水により転化される場合は、主に、ネオノナン酸とも呼ばれる2,2,4,4−テトラメチルペンタン酸が得られる。ピバル酸、ネオノナン酸、ネオデカン酸もしくはバーサチック酸10、又はバーサチック酸911、異性体のC9〜C11のカルボン酸の混合物、及びバーサチック酸1519、異性体のC15〜C19のカルボン酸の混合物は、カルボキシル基に隣接する炭素原子に3個のアルキル残基を担持し、かついわゆるネオ構造を有する高度に分枝したカルボン酸である。カルボキシル基の付近での高度な分枝にもかかわらず、このネオ酸を非常に優れた収率で、対応するビニルエステルに変化させることができる。バーサチック酸はShellの商標名である。
これと共に、安息香酸もしくはナフタリンカルボン酸のような芳香族カルボン酸又はアクリル酸、クロトン酸、もしくはメタクリル酸のような不飽和脂肪族カルボン酸も、ビニル誘導体に転化することができる。液状のカルボン酸はそのまま本発明による方法に用いることができる。固体のカルボン酸は、溶剤中に、例えばトルエン、THF、ジオキサン、もしくは環状エーテル中に溶解して、又はトランスビニル化化合物中に直接溶解して、溶液としてトランスビニル化反応に投入される。
トランスビニル化化合物RC(O)O−CH=CHとしては、産業的規模で安価に大量に提供され得るすべてのビニルエステルが適している。一般的に、Rは脂肪族の、脂環式の、又は芳香族の残基を意味している。有機残基Rは、通常、1〜20個の炭素原子を有する。Rがメチルの酢酸ビニル又はRがエチルのプロピオン酸ビニルを使用することが好ましく、ただしRがウンデシルのラウリン酸ビニルのようなより高級のカルボン酸のビニルエステルも使用される。トランスビニル化化合物の選択は、誘導体化すべきカルボン酸R−C(O)OHの物理的特性ならびに形成される反応相手R−C(O)OH及びR−C(O)O−CH=CHに左右され、かつ反応混合物をどの方法により様々な成分に有用に分け得るかに基づいて決まる。通常は、回収されたトランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CH及び回収された投入カルボン酸R−C(O)OHを再びトランスビニル化反応に戻す。トランスビニル化反応によって形成されたカルボン酸R−C(O)OHは、反応混合物の処理過程で分離され、それから所望のビニルエステルR−C(O)O−CH=CHがさらに精製される。慣習的に、得られた反応混合物は蒸留によって処理され、結晶化又は沈殿による処理は不可能ではないが特定の特殊事例に限定される。
反応混合物を処理する際及び所望のビニルエステルをさらに精製する際にも、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、第三級ブチルカテコール、又はフェノチアジンのような阻害剤を添加することが有用と分かった。反応混合物を処理する際に生じるトランスビニル化触媒は、その後、必要に応じて未使用の触媒又は未使用の配位子を添加した後で、再びトランスビニル化反応に戻される。
カルボン酸の投入量R−C(O)OHに対し、トランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHをモル比0.1:1〜10:1、好ましくは0.2:1〜5:1で投入することができる。トランスビニル化化合物の量も、投入物質の物理的特性及び形成される反応相手に基づいて、かつ反応混合物がどのやり方でできるだけ有利に処理され得るかに基づいて決まる。
酢酸ビニルは、安価に入手できること、及び酢酸ビニルの沸点と、トランスビニル化反応において形成される酢酸の沸点とに基づき、5個以上の炭素原子を有するカルボン酸、例えばn−吉草酸、2−メチル酪酸、3−メチル酪酸、ピバル酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、n−ノナン酸、イソノナン酸、ネオノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、n−デカン酸、2−プロピルヘプタン酸、ネオデカン酸もしくはバーサチック酸10、バーサチック酸911、バーサチック酸1519、ラウリン酸、トリデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、又は安息香酸もしくはナフタリンカルボン酸のトランスビニル化の際にとりわけ有利なトランスビニル化化合物であることが分かった。しかしプロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、アクリル酸、クロトン酸、又はメタクリル酸のような低級カルボン酸のトランスビニル化も、本発明による方法に基づき、酢酸ビニルにより可能である。酢酸ビニルは、カルボン酸のモル投入量に対して通常は最大10:1、好ましくは最大5:1のモル過剰量で投入される。反応混合物は、通常は蒸留によって処理される。過剰な酢酸ビニル、形成された酢酸、及び所望のビニルエステルは揮発性成分として取り出され、その後で分けられる。残留物中には投入カルボン酸がトランスビニル化触媒と一緒に残る。触媒を含有する残留物は、高沸点物質を含有する部分流を任意選択で排出させてから、必要に応じて未使用の触媒又は未使用の配位子を添加した後で再びトランスビニル化反応に戻される。
酢酸ビニルを、カルボン酸のモル投入量に対して最大0.1:1、好ましくは最大0.2:1のモル不足量で使用することもできる。これにより、酢酸ビニルを分離するための手間を減らすことができる。
トランスビニル化触媒として、単座又は多座の有機窒素配位子又は有機リン配位子によって変性されている、白金族のルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、及び白金からの遷移金属の錯化合物が用いられる。1種の遷移金属の、又は遷移金属の混合物を使用する場合は複数の遷移金属の総濃度は、それぞれ不足量で投入される出発化合物に対し、つまり投入されたカルボン酸R−C(O)OH又は投入されたトランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHに対し、一般的に0.005〜1.5モル%、好ましくは0.01〜1.0、とりわけ0.02〜0.6モル%である。触媒として、化学量論的に組成された遷移金属と配位子の錯化合物を使用することはできるが、通常は、過剰な配位子、つまり遷移金属と錯結合していない配位子の存在下で作用させる。遷移金属1モルにつき、配位子は1〜40モル、好ましくは3〜30モルで適用される。遷移金属:配位子のモル比は1:3〜1:10の範囲内が特に適していることが分かった。単座の有機窒素配位子として適しているのは、例えば、ピリジン、キノリン、位置異性のピコリン、位置異性のルチジン、コリジン、アニリン、位置異性のトルイジン、位置異性のキシリジン、N−メチルアニリン、又は脂肪族及び芳香族のアミド、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、アセトアニリド、もしくはN−メチル−2−ピロリドンであり、単座の有機リン配位子として適しているのは、例えば、トリブチルホスフィン又はトリオクチルホスフィンのようなトリアルキルホスフィン、トリフェニルホスフィン又はトリトリルホスフィンのようなトリアリールホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンのようなトリシクロアルキルホスフィン、モノブチルジフェニルホスフィン又はジプロピルフェニルホスフィンのようなアルキルアリールホスフィン、シクロアルキルアリールホスフィン、亜リン酸トリフェニル又は亜リン酸トリナフチルのような亜リン酸トリアルキル又は亜リン酸トリアリールである。多座の有機窒素配位子又は有機リン配位子として適しているのは、例えば二座配位子であり、例えば2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、P,P,P’,P’−テトラフェニル−1,2−ジホスフィノエタン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、5−クロロ−1,10−フェナントロリン、3,4,7,8−テトラメチル−1,10−フェナントロリン、2,9,4,7−テトラメチル−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン、4,4’−ジフェニル−2,2’−ビピリジル、4−メチル−1,10−フェナントロリン、2,2’−ビキノリン、又は5−メチル−1,10−フェナントロリンである。
遷移金属と配位子の錯体は均一な組成である必要はなく、例えば配位子及び/又は遷移金属の種類が異なる遷移金属と配位子の錯化合物の混合物から成ることができる。有機溶液中に含まれる遊離配位子も、様々な単座又は多座の有機窒素配位子又は有機リン配位子の混合物から構成されていてよい。トランスビニル化触媒は、通常は、遷移金属、遷移金属化合物、又は対応する混合物と、単座又は多座の有機窒素配位子、有機リン配位子、又は対応する混合物とから、反応混合物中でトランスビニル化反応の条件下で形成される。
トランスビニル化触媒は、別途で事前の形成反応において製造してもよい。事前形成を実施するのに適切な溶剤としては、トランスビニル化化合物、ビニル化すべき開始カルボン酸、又はその混合物を使用することができる。事前形成ステップの条件は、一般に、トランスビニル化反応の条件に対応している。事前形成条件は、トランスビニル化プロセスの開始時に調整することができ、つまり準備した有機溶液中で活性トランスビニル化触媒を形成させてから、トランスビニル化化合物及びビニル化すべき開始カルボン酸を反応容器に投入する。プロセス進行中に遷移金属と配位子の錯体触媒を添加する場合は、別個の事前形成ステップにおいて初めに活性の遷移金属と配位子の錯体触媒の溶液を製造し、続いてこの溶液を、未使用の溶液としてプロセスに補充する。この事前形成ステップでは、溶剤として、トランスビニル化化合物、ビニル化すべき開始カルボン酸、又はその混合物を使用する。事前形成ステップ中も、配位子を過剰量で投入することができ、これによりトランスビニル化反応中に遷移金属と配位子との間の前述のモル比が生じる。
トランスビニル化触媒として、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、及び白金の群から選択される少なくとも1種の遷移金属を含有する変性されていない遷移金属錯体を使用することもでき、この遷移金属錯体は、単座又は多座の有機窒素配位子又は有機リン配位子を担持していない。トランスビニル化反応の条件下で、投入された触媒前駆物質、例えば遷移金属、遷移金属カルボニル、遷移金属カルボキシラート、遷移金属ハロゲン化物、又は遷移金属アセチルアセトナートから、活性遷移金属錯体が形成されると推察できる。場合によっては、変性されていない遷移金属錯体を投入する際に一酸化炭素が添加される。ルテニウム触媒が、変性されていない形態で特に使用される。
変性されていない遷移金属錯体を用いる場合は、元素の周期表のIb族のレドックス活性遷移金属及びアルカリ金属化合物をさらに添加するのが有利であることが分かる。レドックス活性遷移金属としては、例えば2価の銅のハロゲン化物の形態での銅が適している。アルカリ金属化合物としては、好ましくはリチウム化合物、例えば酢酸リチウムもしくはプロピオン酸リチウムのようなカルボン酸リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、塩化リチウム、又は水酸化リチウムを使用する。適切なトランスビニル化触媒は、例えば、前駆物質である塩化パラジウムと、臭化銅(II)と、酢酸リチウムとから形成することができる。適切な前駆物質からの活性トランスビニル化触媒の形成は、反応容器内で、反応条件下で行われる。この触媒も、反応容器内で最初に形成するか、又は別個の容器内で事前に形成することができる。
白金族の遷移金属は、金属又は化合物として使用される。金属の形態では、細かく分散させた粒子として使用するか、又は活性炭、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、アルミナのような担体上に沈積した薄い層の状態で使用する。遷移金属化合物としては、ビニル化すべき投入カルボン酸の塩又は形成される対応するカルボン酸の塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、2−エチルヘキサノアート、又はイソノナノアートが適している。さらに、硝酸塩もしくは硫酸塩のような無機の水素酸もしくは酸素酸の塩、様々な酸化物、又はカルボニル化合物もしくは錯化合物、例えば、シクロオクタジエニル化合物もしくはアセチルアセトナートを用いてもよい。遷移金属ハロゲン化合物は、可能ではあるがハロゲン化物イオンの腐食挙動の故にあまり考慮されない。
好ましくは、パラジウム化合物又はルテニウム化合物、とりわけその酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、2−エチルヘキサノアート、イソノナノアート、アセチルアセトナート、トリフラート、トリフルオロアセタート、又はカルボニル、例えば、Ru(CO)12、HRu(CO)12、又は[Ru(CO)OAc]を使用する。
反応容器からの液状放出物は、続いて、加圧下で作用させている場合には圧力緩和段階により標準圧力に緩和し、それからさらなる分離機構で処理される。液状の反応放出物を、まず初めに、緩和段階での気体状生成物の形成が減少するような温度に冷却することも有用であることが分かる。その際に場合によっては形成される気体部分は分離し、得られた液相をさらに処理する。トランスビニル化化合物と、形成されたカルボン酸と、所望のビニルエステルと、投入カルボン酸と、トランスビニル化触媒とを含有する液状の反応混合物を分離して個々の生成物流に分け、その際に回収されたトランスビニル化化合物は通常は再び反応容器に戻され、形成されたカルボン酸はプロセスから取り除き、所望のビニルエステルはさらに精製する。トランスビニル化触媒は、最も揮発性の低い反応成分中にたまり、必要に応じて、高沸点物質を含有する部分流を排出させてから反応容器に戻される。反応相手の物理的特性に応じて、最も揮発性の低い反応成分は、例えば未転化の開始カルボン酸、形成されたカルボン酸、又はトランスビニル化化合物であり得る。反応容器からの液状放出物をそのまま、加圧下で稼働する分離機構に送り込み、得られた物質流を別々にさらに加工してもよい。
トランスビニル化化合物が酢酸ビニルの場合、反応混合物は、加圧されていれば標準圧力に緩和し、蒸留により処理するのが有用であることが分かった。酢酸ビニルと、形成された酢酸と、所望のビニルエステルとは揮発性成分として、未転化の投入カルボン酸から分離され、この未転化の投入カルボン酸がトランスビニル化触媒を含有している。取り出された揮発性成分は続いて蒸留により、酢酸ビニルと、酢酸と、所望のビニルエステルとに分けられる。酢酸ビニルは反応容器に戻され、酢酸は排出され、所望のビニルエステルはさらに精製される。比較的沸騰しにくく、触媒を含有している投入カルボン酸は、触媒循環として再び戻される。必要に応じて、触媒循環から高沸点物質を含有する部分流が放出され、かつ未使用の触媒が場合によっては事前形成された形態で添加されるか、又は未使用の配位子だけが添加される。
以下では開始カルボン酸が、最も揮発性が低く、かつ反応混合物を処理した際に比較的揮発しにくい残留物として生じる場合に関する図1による原理図に基づいて、本発明による好ましい方法をより詳細に説明する。しかし本発明による方法は、図面に示した実施形態に限定されるのではなく、任意の反応相手が比較的揮発しにくい成分として生じるような実施形態にも問題なく適用することができる。
本発明による好ましい方法の原理図である。
トランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHは導管(1)を介し、及びビニル化すべき投入カルボン酸R−C(O)OHは導管(2)を介して混合容器(3)に送られ、混合容器(3)から導管(4)を介して混合物が反応容器(5)に導入される。液状の反応放出物が導管(6)を介して緩和容器(7)に送り込まれ、緩和容器(7)内で標準圧力に緩和される。必要に応じて、緩和の際にすべての成分を液状に保つため、液状の反応放出物を最初に(破線で示した)冷却機構(7’)に導いて冷却し、導管(6)を介して緩和容器(7)に送り込む。その際に場合によっては形成される気相は導管(8)を介して導出され、形成された液相は導管(9)を介して分離容器(10)に送り込まれる。分離容器(10)内では、トランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHと、形成されたカルボン酸R−C(O)OH及び所望のビニルエステルR−C(O)O−CH=CHが富化された揮発性留分が分けられ、この留分は導管(11)を介し、場合によっては緩和段階から導管(8)を介して誘導された揮発性部分と合流して、導管(12)を介して分離容器(13)に送られる。分離容器(13)内で分離されたトランスビニル化化合物は導管(14)を介して戻され、導管(1)を介して誘導されるトランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHと合流する。分離容器(13)内で生じる、トランスビニル化反応中に形成されたカルボン酸R−C(O)OH及び所望のビニルエステルR−C(O)O−CH=CHは、導管(15)を介して導出され、分離容器(16)に送り込まれ、この分離容器(16)からは、形成されたカルボン酸R−C(O)OHが導管(17)を介し、及び所望のビニルエステルR−C(O)O−CH=CHが導管(18)を介して流出する。
導管(18)を介して得られたビニルエステルにはさらなる精密精製を施すことができる(図1には示していない)。
分離容器(10)内で得られ、好ましい一実施形態では未転化の開始カルボン酸R−C(O)OH及びトランスビニル化触媒を含有する比較的揮発しにくい留分は、導管(19)を介して導出され、必要に応じて、高沸点物質を含有する側流は(破線で示した)導管(20)を介して排出されてから、導管(21)を介して触媒循環として戻される。触媒循環には、必要に応じて(破線で示している)導管(22)を介して未使用の触媒が場合によっては事前に形成された形態で補充されるか、又は未使用の配位子が補充され、使用済みの古い触媒と未使用の触媒とからなる混合物が導管(23)を介して混合容器(3)に供給される。反応部でも処理部でも、適切な位置で阻害剤を添加することができる(図1には示していない)。分離容器(10)、(13)、及び(16)としては、薄膜蒸発器、短経路蒸発器、又は蒸留塔のような、分離操作のために一般的な装置が適している。調整すべき温度条件及び圧力条件は、処理すべき反応混合物中に存在する成分に基づいて決定され、ルーチン試験によって確定することができる。分離段階の必要性及び回数のような分離容器の設計も、ルーチン試験又はシミュレーションによって確定することができる。
本発明を以下の例においてより詳しく説明するが、記載した実施形態に限定されるわけではない。

下記の例の実施には図1に基づく試験構造物を使用した。準備容器(3)内では、導管(1)を介して誘導された酢酸ビニル(例1〜例7、例15〜例22)又はプロピオン酸ビニル(例8〜例14)、導管(2)を介して誘導されたビニル化すべき開始カルボン酸R−C(O)OH、及び導管(23)を介して誘導された触媒溶液が混合され、それから導管(4)を介し、管形連続反応器として形成された反応容器(5)に移送ポンプで送り込まれた。導管(6)を介して放出された液状の反応混合物は、緩和容器(7)内で標準圧力に緩和された。その際に形成された、酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニル及び形成された酢酸又はプロピオン酸を含有する気体部分は導管(8)を介して取り出された。導管(9)を介して導出された液状放出物をガスクロマトグラフィで分析した。
以下の表1〜表7には、トランスビニル化のために使用した開始カルボン酸R−C(O)OHと、反応容器(5)内で調整された反応条件と、ガスクロマトグラフィ分析から確定された所望のビニルエステルR−C(O)O−CH=CHの空時収率とが列記されている。触媒溶液は、酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニル及びそれぞれの投入カルボン酸から成る混合物中で、触媒前駆物質である酢酸パラジウムPd(OAc)と二座の窒素含有配位子である1,10−フェナントロリン(例1〜例16、例21〜例24)又は2,2’−ビピリジル(例17、例18)とを混合することにより調合した。例19及び例20では、錯体[Ru(CO)OAc]を触媒前駆物質として使用した。例21〜例23では、カルボン酸のモル投入量に対し、酢酸ビニルをモル不足量で投入した。活性触媒の形成は、反応容器内で、反応条件下で行った。触媒前駆物質に関するモル比の表示は、パラジウムのモル量又はルテニウムのモル量に関している。用いられたイソノナン酸は、ジイソブチレンのヒドロホルミル化とその後の対応するアルデヒドの酸化に基づいており、主に3,5,5−トリメチルヘキサン酸を含有していた。
Figure 2015508064
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表1、表2、表4、及び表5の結果が示すように、定常状態で連続的に稼働されるトランスビニル化反応では非常に高い空時収率が達成され、この空時収率は、反応過程から酢酸ビニル及び酢酸を連続的に取り除く反応蒸留の公知の方法では達成できない。さらに、公知の方法は反応蒸留の際に大量の酢酸ビニルを投入しなければならず、かつ反応体積が大きいので、多大な酢酸ビニル投入量を必要とする。
表3に列記した結果が示すように、標準圧力下での反応操作の場合も同様に高い空時収率を達成することができる。酢酸ビニルをモル不足量で使用する反応操作でも、所望のビニルエステルの高い空時収率を得ることができる(表6)。表7によれば、管形連続反応器内での滞留時間を1時間未満に調整することも可能であり、したがって負荷率の高い稼働状態を調整することができ、この高い負荷率は空時収率を明らかに高めることができる。
緩和容器(7)内で得られた粗生成物は、導管(9)を介して薄膜蒸発器(10)に送り込まれ、薄膜蒸発器(10)からは、ジャケット温度95℃及び負圧で、酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニルと、酢酸又はプロピオン酸と、それぞれのビニルエステルR−C(O)O−CH=CHとを含有する塔頂生成物が取り出された。この生成物流は、緩和容器(7)からの気体部分と合流し、導管(12)を介して蒸留塔(13)に送られ、この蒸留塔(13)内では生成物混合物が、酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニルから成る塔頂留分と、酢酸又はプロピオン酸及びそれぞれのビニルエステルR−C(O)O−CH=CHから成る塔底生成物とに分けられた。酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニルを含有する流れは導管(14)を介して戻され、塔底生成物は導管(15)を介してさらなる蒸留塔(16)に送り込まれ、この蒸留塔(16)内では、塔頂生成物として酢酸又はプロピオン酸が取り出された。塔底生成物としては、導管(18)を介してそれぞれのビニルエステルR−C(O)O−CH=CHが獲得された。薄膜蒸発器(10)での、また蒸留塔(13)及び(16)でのそれぞれの蒸留条件は、常套の最適化によって調整することができた。
薄膜蒸発器(10)の液状放出物からは、100質量部に対し、高沸点物質を含有する側流約5〜10質量部が導管(20)を介して排出され、その一方で残りは触媒循環として戻された。管形連続反応器(5)内で調整すべき比率に対応して、導管(22)を介して未使用の触媒を補充した。未使用の触媒の補充は、酢酸パラジウム及び1,10−フェナントロリンもしくは2,2’−ビピリジル又は[Ru(CO)OAc]を、酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニル及びそれぞれの投入カルボン酸から成る混合物中に加えることにより、溶液で行われた。
【書類名】 明細書
【発明の名称】 ビニルエステルの製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸のビニルエスエルを別のカルボン酸のビニルエステルのトランスビニル化反応により連続的に製造するための触媒的方法に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的高級のカルボン酸のビニルエステルは、コモノマーとして、ある程度の経済的な重要性を有している。これら比較的高級のカルボン酸のビニルエステルを使って、例えばポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン又はポリアクリル酸エステルのようなポリマーの特性を変性させることができる。すなわち、例えば分散型塗料の加水分解耐性を高めることができる。比較的高級のカルボン酸のビニルエステルは接着剤の製造にも用いられる。この使用分野に関して技術的に重要なのは、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、ラウリン酸又はShellのバーサチック酸911、10、及び1519をベースとするビニルエステルであることが分かった。これらの比較的高級のカルボン酸は、例えば、オキソ反応によって製造されるアルデヒドの酸化によるか、又はオレフィン、一酸化炭素及び水からのいわゆるコッホ合成により入手可能である。2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸又はイソノナン酸をベースとするビニルエステルの場合に、イソノナン酸が主に3,5,5−トリメチルヘキサン酸からなる場合には均一な化合物が存在する一方で、バーサチック酸911のビニルエステルでは、9〜11個の炭素原子を有する高度に分枝したカルボン酸の混合物が、そしてバーサチック酸1519のビニルエステルでは、15〜19個の炭素原子を有する高度に分枝したカルボン酸の混合物が、ビニルエステル内で結合している。バーサチック酸10のビニルエステルでは、ネオデカン酸のような構造の異なる高度に分枝したデカン酸が誘導体化されている。3,5,5−トリメチルヘキサン酸は、ジイソブチレンのヒドロホルミル化とその後の対応するアルデヒドの酸化により、工業的規模で製造される(Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie、第4版、1983、Chemie出版、第9巻、143〜145頁(非特許文献1);第23巻、606〜607頁(非特許文献2))。
【0003】
カルボン酸のビニルエステルをアセチレンとカルボン酸の反応により製造することが公知である(G. Huebner、Fette, Seifen, Anstrichmittel 68、290 (1966)(非特許文献3)、Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie、第4版、1983、Chemie出版、第23巻、606〜607頁(非特許文献2))。このやり方は欧州特許出願第1057525A2号明細書(特許文献1)で取り上げられており、それによれば、管形反応器内で気体状アセチレンとビニル化すべきカルボン酸を触媒の存在下で反応させる。公知の多相法では、触媒、例えば亜鉛塩を溶解含有しているカルボン酸が連続相を形成し、この連続相中に気体状アセチレンが分散相として存在している。管形反応器は負荷率0.8超で稼働する。ただし原料としてアセチレンを使用することは、産業的な稼働では高度に複雑な装置及び安全技術を必要とし、加えてアセチレンは一般的に一部の地域(lokal)でしか提供されていない。
【0004】
カルボン酸のビニルエステルを別のカルボン酸のビニルエステルによる、いわゆるトランスビニル化反応によって製造することも公知である。
【0005】
【化1】
Figure 2015508064
【0006】
式中、R及びRは脂肪族又は芳香族の残基を意味することができる。平衡反応を生成物の方向へと制御するため、たいていはトランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHを高過剰量で使用する。また発生するカルボン酸R−C(O)OHは、その平衡から素早く取り出して、転化率を上昇させるため、十分に揮発性であることが望ましい。反応混合物は、一般的に蒸留によって処理されるので、トランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHの選択は、たいていは他の反応物の沸点に基づいて決まる(Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie、第4版、1983、Chemie出版、第23巻、606〜607頁(非特許文献2))。比較的高級のカルボン酸のビニルエステルの製造には、トランスビニル化化合物として酢酸ビニルが特に適しており、またプロピオン酸ビニルもある程度適している。酢酸ビニルは工業的に生産された化学製品として安価に提供されている。酢酸ビニル及びそれから形成される酢酸は比較的低い沸点を有しており、所望のビニルエステルから比較的高級のカルボン酸を蒸留によって分離することができる。
【0007】
ビニル化化合物としての酢酸ビニルによるカルボン酸のトランスビニル化反応については、文献中に数多くの示唆がある。Adelman、Journal Organic Chemistry、1949、14、1057〜1077頁(非特許文献4)は、触媒としての水銀塩の存在下における、酢酸ビニルによる、ステアリン酸、ラウリン酸、又は3,5,5−トリメチルヘキサン酸のような比較的高級のカルボン酸のトランスビニル化を調査している。米国特許第2,245,131号明細書(特許文献2)は、酢酸水銀の存在下での酢酸ビニルによる安息香酸又はクロトン酸の転化を取り扱っている。反応混合物は、最初は還流させて留めておく。
【0008】
続いて反応温度を上昇させ、形成された酢酸を分離する。その後、形成された安息香酸ビニルをさらなる分留蒸留において精製する。米国特許第2,299,862号明細書(特許文献3)は、酢酸水銀及び硫酸の存在下で、2−エチルヘキサン酸及び酢酸ビニルからビニル−2−エチルヘキサノアートを製造することを開示している。得られた粗混合物は、最初に酢酸ナトリウムで中和し、続いて蒸留する。ビニル−2−エチルヘキサノアートが収率73%で得られる。ドイツ国特許第1222493B号明細書(特許文献4)によれば、酢酸ビニルによるトランスビニル化のための触媒として、スルホン酸型陽イオン交換樹脂の水銀塩が使用される。
【0009】
水銀含有触媒を用いたトランスビニル化方法の欠点は、水銀含有触媒の毒性及び揮発性ならびに望ましくないエチリデンジエステルの形成である。さらに、触媒を通常は硫酸により活性化すること及び反応混合物の蒸留前に中和により不活性化する必要があることは、プロセス工程の追加を意味している。
【0010】
これらの欠点は、パラジウム触媒を適用することで回避することができ、これに関しては、例えば2,2’−ビピリジル又は1,10−フェナントロリンのような芳香族の窒素含有配位子によるパラジウム錯体の変性が有利であることが分かった。米国特許第5,214,172号明細書(特許文献5)によれば、そのように変性されたパラジウム触媒の活性は、強酸の添加によって上昇する。米国特許第5,741,925号明細書(特許文献6)は、2,2’−ビピリジル又は1,10−フェナントロリンによって変性されたパラジウム錯体の存在下での、ナフテン酸のトランスビニル化を取り扱っている。公知の作業方式に対応して、ナフテン酸、好ましくは環状でC10〜C20のカルボン酸を、トランスビニル化化合物としての酢酸ビニルにより、還流させながら対応するビニルエステルに転化させる。触媒は、蒸留中に安定しており、複数のサイクルで改めて用いることができる。米国特許第5,223,621号明細書(特許文献7)に基づいて開示された方法は、その場で形成される(2,2’−ビピリジル)パラジウム(II)ジアセタート錯体による還流下でのカルボン酸、例えばラウリン酸又は安息香酸のトランスビニル化に関する。触媒は、粗生成物の蒸留前に、シュウ酸又は塩酸によって沈殿させてろ別する。
【0011】
カルボン酸をトランスビニル化するために、パラジウム塩とレドックス剤からなる複合触媒系を使用することも公知である。欧州特許出願第0376075A2号明細書(特許文献8)では、塩化パラジウム、臭化銅(II)、及び酢酸リチウムからなるレドックス活性触媒系を推奨している。例として、酢酸ビニルの沸点付近で、ラウリン酸の酢酸ビニルによる不連続的なトランスビニル化することが記載されている。所望のビニルエステルは、続く蒸留の際に純粋な状態で得られる。レドックス活性触媒系のさらなる一形態が特開2002−322125A号公報(特許文献9)に開示されている。この場合、カルボン酸及び酢酸ビニルならびに酢酸パラジウム及び酢酸リチウムから成る反応混合物が65℃に加熱される。
【0012】
従来技術では、トランスビニル化反応のためにルテニウム含有触媒を使用することも言及されている。Murray、Catalysis Today 1992、13、93〜102頁(非特許文献5)によれば、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、ネオデカン酸、ネオノナン酸又はアジピン酸のような比較的高級のカルボン酸を、金属ルテニウム又はルテニウム化合物、例えば塩化ルテニウム、酸化ルテニウム又はRu(CO)12のようなルテニウムカルボニルの存在下で、酢酸ビニルによって対応するビニルエステルに変換することができる。この反応は、不連続的に、一酸化炭素又は窒素下で、約2barの圧力及び通常は130〜150℃の温度で実施される。対応する方法が欧州特許出願第0351603A2号明細書(特許文献10)及び欧州特許出願第0506070A2号明細書(特許文献11)からも公知である。ルテニウム触媒は、熱に対してパラジウム触媒より安定であることが指摘されており、パラジウム触媒は、温度が上昇すると金属パラジウムを分離させながら不活性化する。ただし、公知のルテニウム触媒による方法では中程度の収率しか示されていない。
【0013】
トランスビニル化反応のための従来技術で主に記載されている方法は、不連続的に、たいていは還流下で、また時には加圧下で密閉された反応容器内で実施される。
【0014】
連続的に稼働されるトランスビニル化方法は、欧州特許出願第0497340A2号明細書(特許文献12)から公知である。連続的に稼働される反応蒸留により、最も揮発性の反応成分を連続的に取り除くことで、トランスビニル化反応の平衡R−C(O)OH+R−C(O)O−CH=CH→R−C(O)OH+R−C(O)O−CH=CHが生成物の方向にシフトする。トランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHは、対応する酸R−C(O)OHが揮発性であるように、また平衡から外れるように選択される。欧州特許出願第0497340A2号明細書(特許文献12)に基づく方法は、トランスビニル化化合物として好ましくは酢酸ビニルを使用し、形成された酢酸は未反応の酢酸ビニルと一緒に反応ゾーンから取り除かれる。その後、別のステップで酢酸から分離された酢酸ビニルを再び反応ゾーンに戻す。この公知の方法は、ルテニウム触媒、例えば[Ru(CO)OAc]を用いて作用し、アジピン酸、ネオデカン酸、及び2−エチルヘキサン酸のトランスビニル化を記載している。ただし、望ましくない酸無水物の形成を抑えるため、所望のビニルエステルの部分転化までしか進行させない。
【0015】
国際公開第2011/139360A1号パンフレット(特許文献13)及び国際公開第2011/139361A1号パンフレット(特許文献14)は、酢酸ビニルによるカルボン酸の連続的及び半連続的なトランスビニル化方法を開示しており、この場合、2,2’−ビピリジル及び1,10−フェナントロリンのような芳香族の窒素含有配位子を有するパラジウム錯体を使用している。連続的な方法は、充填塔が載置された気泡塔内で稼働され、この塔の下流には精留塔及びストリップ塔がさらに接続されている。酢酸ビニルは気泡塔に導入され、その一方で同時に、カルボン酸及び酢酸ビニルからなり、触媒を溶解含有している混合物が、載置された充填塔に送り込まれる。カルボン酸及び触媒は気泡塔に流れ込み、その一方で酢酸ビニルが向流で気泡塔を通り抜け、そして載置された充填塔を通り抜ける。酢酸ビニルと形成された酢酸が導出され、下流に接続された精留塔及びストリップ塔内で分けられる。
【0016】
米国特許第4425277号明細書(特許文献15)からは、ビニルエステルを製造するための連続方法が知られている。反応は、アルカリ金属化合物及び銅(II)化合物からなる共触媒と一緒に使用される、担持されたパラジウム触媒の存在下で行われる。
【0017】
欧州特許出願第0054158A1号明細書(特許文献16)も同様に、ビニルエステルを製造するための連続方法に関する。パラジウム(II)をベースとし、所定の分析的SiO 含有量を有する担体材料として活性炭素を有する担持触媒の存在下で反応が行われる。 【0018】
従来技術で記載されている連続的な方法の欠点は、トランスビニル化化合物である酢酸ビニルが、選択される反応条件の故に非常に短い滞留時間で蒸発してしまい、これによりそれ以上のトランスビニル化反応が生じないので、ビニルエステルの製造のために効率よく利用されていないことである。さらに、公知の連続的に稼働されるトランスビニル化方法は、反応容器の後ろに、追加的な反応塔として作用する一連の塔を接続しなければならないので、装置が複雑であり、かつ高い投資費用を投じなければならない。すなわち公知の方法では、所望のビニルエステルの中程度の空時収率しか可能ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】 欧州特許出願第1057525A2号明細書
【特許文献2】 米国特許第2,245,131号明細書
【特許文献3】 米国特許第2,299,862号明細書
【特許文献4】 ドイツ国特許第1222493B号明細書
【特許文献5】 米国特許第5,214,172号明細書
【特許文献6】 米国特許第5,741,925号明細書
【特許文献7】 米国特許第5,223,621号明細書
【特許文献8】 欧州特許出願第0376075A2号明細書
【特許文献9】 特開2002−322125A号公報
【特許文献10】 欧州特許出願第0351603A2号明細書
【特許文献11】 欧州特許出願第0506070A2号明細書
【特許文献12】 欧州特許出願第0497340A2号明細書
【特許文献13】 国際公開第2011/139360A1号パンフレット
【特許文献14】 国際公開第2011/139361A1号パンフレット
【特許文献15】 米国特許第4425277号明細書
【特許文献16】 欧州特許出願第0054158A1号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie、第4版、1983、Chemie出版、第9巻、143〜145頁
【非特許文献2】Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie、第4版、1983、Chemie出版、第23巻、606〜607頁
【非特許文献3】G. Huebner、Fette, Seifen, Anstrichmittel 68、290 (1966)
【非特許文献4】Adelman、Journal Organic Chemistry、1949、14、1057〜1077頁
【非特許文献5】Murray、Catalysis Today 1992、13、93〜102頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
それ故、装置をあまり複雑にすることなく、簡単に実施することができ、かつ所望のビニルエステルの高い空時収率、つまり反応体積及び時間当たりの高い生成物生産量を可能にする、カルボン酸のトランスビニル化のための連続的に稼働される方法が求められている。さらに、所望のビニルエステルは高い選択率で形成されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
したがって、本発明は、式R−C(O)O−CH=CHで表されるトランスビニル化化合物を用いて式R−C(O)OHで表されるカルボン酸を転化することによる、式R−C(O)O−CH=CHで表されるビニルエステルを製造するための連続的な触媒的方法であって、これらのR及びRは互いに独立して脂肪族の、脂環式の、又は芳香族の残基を意味し、転化が、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、及び白金の群から選択される少なくとも1種の遷移金属を含有する遷移金属触媒の存在下に、90〜160℃の温度及び0.5〜15MPaの圧力で、反応相手を取り除くことなく行われ、その後、得られた反応混合物がその構成成分に分離されることを特徴とする方法にある。
【0022】
連続的に少なくとも1種の反応相手をトランスビニル化平衡から取り除き(entzogen)、そのために化学平衡が常に乱される公知の連続的に稼働される方法とは対照的に、本発明による方法では、反応相手を取り除くことなく定常状態で転化が遂行する。反応系は定常状態にあり、反応容器から放出された混合物が、その後の処理の際に初めて混合物の構成成分に分離される。トランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHによるカルボン酸R−C(O)OHの転化は遷移金属触媒の存在下で行われ、90〜160℃、好ましくは90〜150℃、とりわけ90〜140℃の温度で実施される。本発明による方法は、反応相手を取り除くことなく稼働されるにもかかわらず、それでもなお意外なことに、所望のビニルエステルの高い収率及び高い空時収率を達成することができる。
【0023】
トランスビニル化反応は、5〜15MPa、好ましくは0.5〜8MPa、とりわけ0.8〜2MPaの圧力で実施される。90〜140℃の温度及び0.8〜2MPaの圧力での反応設定がことのほか適していることが分かった。しかし標準圧力及びとりわけ90〜150℃の反応温度でも、同様に所望のビニルエステルの非常に高い空時収率が達成される。
【0024】
反応容器としては、任意に組み立てられた管形連続反応器、例えば垂直に立っているかもしくは水平に配置された管形連続反応器又は幾重にも蛇行した管形連続反応器のような管形反応器が適している。管形反応器はコンジットとして稼働することができ、ただし管形反応器は、充填物又は装入物、例えばラシヒリング、サドル、ポールリング、スパイラル、バッフルもしくは静的ミキサー、又はミキサーパッキン(Mischerpackung)を含むこともできる。静的混合要素は市場で入手可能であり、例えば、粘度の異なる液体を混合するための特殊な製品ラインをもつスルザーミキサー又はケニックスミキサーとして市場で売り出されている。管形反応器は、移送ポンプ及び場合によっては熱交換器を備えていてもよい。
【0025】
管形反応器を稼働する際は、投入カルボン酸R−C(O)OH及びトランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHを、管形反応器に別々に、ただし同時に、向流又は並流で導入することができる。しかし両方の液体を前もって混合し、均質な溶液として管形反応器に送り込んでもよい。特別な一実施形態では、均質な溶液が、管形反応器に入る前に、上流に設けられた静的混合要素を通るよう案内される。
【0026】
またトランスビニル化反応は、撹拌釜又は撹拌釜カスケード内で、加圧下で連続的に実施することができる。投入カルボン酸R−C(O)OH及びトランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHは、別々に、又は混合物として連続的に供給され、定常状態にある反応混合物が連続的に導出される。この分野で通常の反応器の実施形態、例えば熱対流を利用したループ反応器又はマルチチャンバ型反応器内での連続的な反応操作も可能である。反応容器は、投入カルボン酸R−C(O)OH及びトランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHからなり液状で触媒を含有する混合物を入れるための軸方向に配置されたノズルを備えた円管形反応器として形成することもでき、この反応器は、内側の強制流動を生成するため、軸方向に配置された誘導管をさらに備えている。
【0027】
トランスビニル化化合物及びビニル化すべき投入カルボン酸からなる予め製造された混合物による反応容器の空間速度(Belastung)V/Vhは、反応器の体積及び時間に対して0.4〜7.0h−1、好ましくは0.7〜6.2h−1が有利であることが分かった。両方の反応物質が反応容器に別々に、ただし同時に導入される場合、反応容器の空間速度V/Vhは、それぞれ反応器の体積及び時間に対し、トランスビニル化化合物により0.2〜6.0h−1、ビニル化すべき投入カルボン酸により0.1〜6.7h−1である。
【0028】
定常状態で実施される連続的なプロセス管理により、公知の反応蒸留に比べて非常に高い空時収率を達成できることが有利であり、公知の反応蒸留では、形成されたカルボン酸がトランスビニル化化合物と一緒に連続的に反応系から取り除かれる。加えてこのプロセス管理はトランスビニル化化合物を、常に反応混合物中での十分に高い濃度を保証するため、及び反応蒸留塔に十分に負荷をかけるために大量に投入する必要があり、トランスビニル化化合物のための高度の循環管理が必要である。公知の連続的な反応操作は、大きな反応器容積及び装置の高度な複雑さを必要とする。つまり、高い投資費用を伴う比較的高度に複雑な装置で、中程度の空時収率しか達成されないのである。
【0029】
ビニルエステルの重合のような副反応を回避するため、トランスビニル化化合物には反応容器に入れる前に適切な阻害剤、例えばヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、第三級ブチルカテコール、又はフェノチアジンを添加することができる。ただし、阻害剤を別個に連続的に反応容器に導入してもよい。均質な反応混合物中での阻害剤の濃度は、トランスビニル化化合物の投入量に対して一般的に3〜150ppmである。
【0030】
本発明による方法により、対応するビニルエステルに転化することのできる開始カルボン酸R−C(O)OHとしては、脂肪族の、脂環式の、又は芳香族のカルボン酸が適している。有機残基Rは、通常、2〜20個、好ましくは4〜13個の炭素原子を有する。脂肪族カルボン酸に属しているのは、例えばプロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、n−吉草酸、2−メチル酪酸、3−メチル酪酸、ピバル酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、イソノナン酸、ネオノナン酸、n−デカン酸、2−プロピルヘプタン酸、ネオデカン酸もしくはバーサチック酸10、バーサチック酸911、バーサチック酸1519、ラウリン酸、トリデカン酸、パルミチン酸、又はステアリン酸である。本発明による方法に基づいてトランスビニル化し得る様々なイソノナン酸のうち、3,5,5−トリメチルヘキサン酸を挙げることができ、この3,5,5−トリメチルヘキサン酸は、ジイソブチレンを対応する3,5,5−トリメチルヘキサナールへとヒドロホルミル化し、続いて酸化することによって入手可能である。ジイソブチレンが強酸性触媒の存在下で一酸化炭素及び水により転化される場合は、主に、ネオノナン酸とも呼ばれる2,2,4,4−テトラメチルペンタン酸が得られる。ピバル酸、ネオノナン酸、ネオデカン酸もしくはバーサチック酸10、又はバーサチック酸911、異性体のC9〜C11のカルボン酸の混合物、及びバーサチック酸1519、異性体のC15〜C19のカルボン酸の混合物は、カルボキシル基に隣接する炭素原子に3個のアルキル残基を担持し、かついわゆるネオ構造を有する高度に分枝したカルボン酸である。カルボキシル基の付近での高度な分枝にもかかわらず、このネオ酸を非常に優れた収率で、対応するビニルエステルに変化させることができる。バーサチック酸はShellの商標名である。
【0031】
これと共に、安息香酸もしくはナフタリンカルボン酸のような芳香族カルボン酸又はアクリル酸、クロトン酸、もしくはメタクリル酸のような不飽和脂肪族カルボン酸も、ビニル誘導体に転化することができる。液状のカルボン酸はそのまま本発明による方法に用いることができる。固体のカルボン酸は、溶剤中に、例えばトルエン、THF、ジオキサン、もしくは環状エーテル中に溶解して、又はトランスビニル化化合物中に直接溶解して、溶液としてトランスビニル化反応に投入される。
【0032】
トランスビニル化化合物RC(O)O−CH=CHとしては、産業的規模で安価に大量に提供され得るすべてのビニルエステルが適している。一般的に、Rは脂肪族の、脂環式の、又は芳香族の残基を意味している。有機残基Rは、通常、1〜20個の炭素原子を有する。Rがメチルの酢酸ビニル又はRがエチルのプロピオン酸ビニルを使用することが好ましく、ただしRがウンデシルのラウリン酸ビニルのようなより高級のカルボン酸のビニルエステルも使用される。トランスビニル化化合物の選択は、誘導体化すべきカルボン酸R−C(O)OHの物理的特性ならびに形成される反応相手R−C(O)OH及びR−C(O)O−CH=CHに左右され、かつ反応混合物をどの方法により様々な成分に有用に分け得るかに基づいて決まる。通常は、回収されたトランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CH及び回収された投入カルボン酸R−C(O)OHを再びトランスビニル化反応に戻す。トランスビニル化反応によって形成されたカルボン酸R−C(O)OHは、反応混合物の処理過程で分離され、それから所望のビニルエステルR−C(O)O−CH=CHがさらに精製される。慣習的に、得られた反応混合物は蒸留によって処理され、結晶化又は沈殿による処理は不可能ではないが特定の特殊事例に限定される。
【0033】
反応混合物を処理する際及び所望のビニルエステルをさらに精製する際にも、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、第三級ブチルカテコール、又はフェノチアジンのような阻害剤を添加することが有用と分かった。反応混合物を処理する際に生じるトランスビニル化触媒は、その後、必要に応じて未使用の触媒又は未使用の配位子を添加した後で、再びトランスビニル化反応に戻される。
【0034】
カルボン酸の投入量R−C(O)OHに対し、トランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHをモル比0.1:1〜10:1、好ましくは0.2:1〜5:1で投入することができる。トランスビニル化化合物の量も、投入物質の物理的特性及び形成される反応相手に基づいて、かつ反応混合物がどのやり方でできるだけ有利に処理され得るかに基づいて決まる。
【0035】
酢酸ビニルは、安価に入手できること、及び酢酸ビニルの沸点と、トランスビニル化反応において形成される酢酸の沸点とに基づき、5個以上の炭素原子を有するカルボン酸、例えばn−吉草酸、2−メチル酪酸、3−メチル酪酸、ピバル酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、n−ノナン酸、イソノナン酸、ネオノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、n−デカン酸、2−プロピルヘプタン酸、ネオデカン酸もしくはバーサチック酸10、バーサチック酸911、バーサチック酸1519、ラウリン酸、トリデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、又は安息香酸もしくはナフタリンカルボン酸のトランスビニル化の際にとりわけ有利なトランスビニル化化合物であることが分かった。しかしプロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、アクリル酸、クロトン酸、又はメタクリル酸のような低級カルボン酸のトランスビニル化も、本発明による方法に基づき、酢酸ビニルにより可能である。酢酸ビニルは、カルボン酸のモル投入量に対して通常は最大10:1、好ましくは最大5:1のモル過剰量で投入される。反応混合物は、通常は蒸留によって処理される。過剰な酢酸ビニル、形成された酢酸、及び所望のビニルエステルは揮発性成分として取り出され、その後で分けられる。残留物中には投入カルボン酸がトランスビニル化触媒と一緒に残る。触媒を含有する残留物は、高沸点物質を含有する部分流を任意選択で排出させてから、必要に応じて未使用の触媒又は未使用の配位子を添加した後で再びトランスビニル化反応に戻される。
【0036】
酢酸ビニルを、カルボン酸のモル投入量に対して最大0.1:1、好ましくは最大0.2:1のモル不足量で使用することもできる。これにより、酢酸ビニルを分離するための手間を減らすことができる。
【0037】
トランスビニル化触媒として、単座又は多座の有機窒素配位子又は有機リン配位子によって変性されている、白金族のルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、及び白金からの遷移金属の錯化合物が用いられる。1種の遷移金属の、又は遷移金属の混合物を使用する場合は複数の遷移金属の総濃度は、それぞれ不足量で投入される出発化合物に対し、つまり投入されたカルボン酸R−C(O)OH又は投入されたトランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHに対し、一般的に0.005〜1.5モル%、好ましくは0.01〜1.0、とりわけ0.02〜0.6モル%である。触媒として、化学量論的に組成された遷移金属と配位子の錯化合物を使用することはできるが、通常は、過剰な配位子、つまり遷移金属と錯結合していない配位子の存在下で作用させる。遷移金属1モルにつき、配位子は1〜40モル、好ましくは3〜30モルで適用される。遷移金属:配位子のモル比は1:3〜1:10の範囲内が特に適していることが分かった。単座の有機窒素配位子として適しているのは、例えば、ピリジン、キノリン、位置異性のピコリン、位置異性のルチジン、コリジン、アニリン、位置異性のトルイジン、位置異性のキシリジン、N−メチルアニリン、又は脂肪族及び芳香族のアミド、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、アセトアニリド、もしくはN−メチル−2−ピロリドンであり、単座の有機リン配位子として適しているのは、例えば、トリブチルホスフィン又はトリオクチルホスフィンのようなトリアルキルホスフィン、トリフェニルホスフィン又はトリトリルホスフィンのようなトリアリールホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンのようなトリシクロアルキルホスフィン、モノブチルジフェニルホスフィン又はジプロピルフェニルホスフィンのようなアルキルアリールホスフィン、シクロアルキルアリールホスフィン、亜リン酸トリフェニル又は亜リン酸トリナフチルのような亜リン酸トリアルキル又は亜リン酸トリアリールである。多座の有機窒素配位子又は有機リン配位子として適しているのは、例えば二座配位子であり、例えば2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、P,P,P’,P’−テトラフェニル−1,2−ジホスフィノエタン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、5−クロロ−1,10−フェナントロリン、3,4,7,8−テトラメチル−1,10−フェナントロリン、2,9,4,7−テトラメチル−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン、4,4’−ジフェニル−2,2’−ビピリジル、4−メチル−1,10−フェナントロリン、2,2’−ビキノリン、又は5−メチル−1,10−フェナントロリンである。
【0038】
遷移金属と配位子の錯体は均一な組成である必要はなく、例えば配位子及び/又は遷移金属の種類が異なる遷移金属と配位子の錯化合物の混合物から成ることができる。有機溶液中に含まれる遊離配位子も、様々な単座又は多座の有機窒素配位子又は有機リン配位子の混合物から構成されていてよい。トランスビニル化触媒は、通常は、遷移金属、遷移金属化合物、又は対応する混合物と、単座又は多座の有機窒素配位子、有機リン配位子、又は対応する混合物とから、反応混合物中でトランスビニル化反応の条件下で形成される。
【0039】
トランスビニル化触媒は、別途で事前の形成反応において製造してもよい。事前形成を実施するのに適切な溶剤としては、トランスビニル化化合物、ビニル化すべき開始カルボン酸、又はその混合物を使用することができる。事前形成ステップの条件は、一般に、トランスビニル化反応の条件に対応している。事前形成条件は、トランスビニル化プロセスの開始時に調整することができ、つまり準備した有機溶液中で活性トランスビニル化触媒を形成させてから、トランスビニル化化合物及びビニル化すべき開始カルボン酸を反応容器に投入する。プロセス進行中に遷移金属と配位子の錯体触媒を添加する場合は、別個の事前形成ステップにおいて初めに活性の遷移金属と配位子の錯体触媒の溶液を製造し、続いてこの溶液を、未使用の溶液としてプロセスに補充する。この事前形成ステップでは、溶剤として、トランスビニル化化合物、ビニル化すべき開始カルボン酸、又はその混合物を使用する。事前形成ステップ中も、配位子を過剰量で投入することができ、これによりトランスビニル化反応中に遷移金属と配位子との間の前述のモル比が生じる。
【0040】
トランスビニル化触媒として、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、及び白金の群から選択される少なくとも1種の遷移金属を含有する変性されていない遷移金属錯体を使用することもでき、この遷移金属錯体は、単座又は多座の有機窒素配位子又は有機リン配位子を担持していない。トランスビニル化反応の条件下で、投入された触媒前駆物質、例えば遷移金属、遷移金属カルボニル、遷移金属カルボキシラート、遷移金属ハロゲン化物、又は遷移金属アセチルアセトナートから、活性遷移金属錯体が形成されると推察できる。場合によっては、変性されていない遷移金属錯体を投入する際に一酸化炭素が添加される。ルテニウム触媒が、変性されていない形態で特に使用される。
【0041】
変性されていない遷移金属錯体を用いる場合は、元素の周期表のIb族のレドックス活性遷移金属及びアルカリ金属化合物をさらに添加するのが有利であることが分かる。レドックス活性遷移金属としては、例えば2価の銅のハロゲン化物の形態での銅が適している。アルカリ金属化合物としては、好ましくはリチウム化合物、例えば酢酸リチウムもしくはプロピオン酸リチウムのようなカルボン酸リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、塩化リチウム、又は水酸化リチウムを使用する。適切なトランスビニル化触媒は、例えば、前駆物質である塩化パラジウムと、臭化銅(II)と、酢酸リチウムとから形成することができる。適切な前駆物質からの活性トランスビニル化触媒の形成は、反応容器内で、反応条件下で行われる。この触媒も、反応容器内で最初に形成するか、又は別個の容器内で事前に形成することができる。
【0042】
白金族の遷移金属は、金属又は化合物として使用される。金属の形態では、細かく分散させた粒子として使用するか、又は活性炭、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、アルミナのような担体上に沈積した薄い層の状態で使用する。遷移金属化合物としては、ビニル化すべき投入カルボン酸の塩又は形成される対応するカルボン酸の塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、2−エチルヘキサノアート、又はイソノナノアートが適している。さらに、硝酸塩もしくは硫酸塩のような無機の水素酸もしくは酸素酸の塩、様々な酸化物、又はカルボニル化合物もしくは錯化合物、例えば、シクロオクタジエニル化合物もしくはアセチルアセトナートを用いてもよい。遷移金属ハロゲン化合物は、可能ではあるがハロゲン化物イオンの腐食挙動の故にあまり考慮されない。
【0043】
好ましくは、パラジウム化合物又はルテニウム化合物、とりわけその酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、2−エチルヘキサノアート、イソノナノアート、アセチルアセトナート、トリフラート、トリフルオロアセタート、又はカルボニル、例えば、Ru(CO)12、HRu(CO)12、又は[Ru(CO)OAc]を使用する。
【0044】
反応容器からの液状放出物は、続いて、圧力緩和段階により標準圧力に緩和し、それからさらなる分離機構で処理される。液状の反応放出物を、まず初めに、緩和段階での気体状生成物の形成が減少するような温度に冷却することも有用であることが分かる。その際に場合によっては形成される気体部分は分離し、得られた液相をさらに処理する。トランスビニル化化合物と、形成されたカルボン酸と、所望のビニルエステルと、投入カルボン酸と、トランスビニル化触媒とを含有する液状の反応混合物を分離して個々の生成物流に分け、その際に回収されたトランスビニル化化合物は通常は再び反応容器に戻され、形成されたカルボン酸はプロセスから取り除き、所望のビニルエステルはさらに精製する。トランスビニル化触媒は、最も揮発性の低い反応成分中にたまり、必要に応じて、高沸点物質を含有する部分流を排出させてから反応容器に戻される。反応相手の物理的特性に応じて、最も揮発性の低い反応成分は、例えば未転化の開始カルボン酸、形成されたカルボン酸、又はトランスビニル化化合物であり得る。反応容器からの液状放出物をそのまま、加圧下で稼働する分離機構に送り込み、得られた物質流を別々にさらに加工してもよい。
【0045】
トランスビニル化化合物が酢酸ビニルの場合、反応混合物は、標準圧力に緩和し、蒸留により処理するのが有用であることが分かった。酢酸ビニルと、形成された酢酸と、所望のビニルエステルとは揮発性成分として、未転化の投入カルボン酸から分離され、この未転化の投入カルボン酸がトランスビニル化触媒を含有している。取り出された揮発性成分は続いて蒸留により、酢酸ビニルと、酢酸と、所望のビニルエステルとに分けられる。酢酸ビニルは反応容器に戻され、酢酸は排出され、所望のビニルエステルはさらに精製される。比較的沸騰しにくく、触媒を含有している投入カルボン酸は、触媒循環として再び戻される。必要に応じて、触媒循環から高沸点物質を含有する部分流が放出され、かつ未使用の触媒が場合によっては事前形成された形態で添加されるか、又は未使用の配位子だけが添加される。
【0046】
以下では開始カルボン酸が、最も揮発性が低く、かつ反応混合物を処理した際に比較的揮発しにくい残留物として生じる場合に関する図1による原理図に基づいて、本発明による好ましい方法をより詳細に説明する。しかし本発明による方法は、図面に示した実施形態に限定されるのではなく、任意の反応相手が比較的揮発しにくい成分として生じるような実施形態にも問題なく適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】 本発明による好ましい方法の原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
トランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHは導管(1)を介し、及びビニル化すべき投入カルボン酸R−C(O)OHは導管(2)を介して混合容器(3)に送られ、混合容器(3)から導管(4)を介して混合物が反応容器(5)に導入される。液状の反応放出物が導管(6)を介して緩和容器(7)に送り込まれ、緩和容器(7)内で標準圧力に緩和される。必要に応じて、緩和の際にすべての成分を液状に保つため、液状の反応放出物を最初に(破線で示した)冷却機構(7’)に導いて冷却し、導管(6)を介して緩和容器(7)に送り込む。その際に場合によっては形成される気相は導管(8)を介して導出され、形成された液相は導管(9)を介して分離容器(10)に送り込まれる。分離容器(10)内では、トランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHと、形成されたカルボン酸R−C(O)OH及び所望のビニルエステルR−C(O)O−CH=CHが富化された揮発性留分が分けられ、この留分は導管(11)を介し、場合によっては緩和段階から導管(8)を介して誘導された揮発性部分と合流して、導管(12)を介して分離容器(13)に送られる。分離容器(13)内で分離されたトランスビニル化化合物は導管(14)を介して戻され、導管(1)を介して誘導されるトランスビニル化化合物R−C(O)O−CH=CHと合流する。分離容器(13)内で生じる、トランスビニル化反応中に形成されたカルボン酸R−C(O)OH及び所望のビニルエステルR−C(O)O−CH=CHは、導管(15)を介して導出され、分離容器(16)に送り込まれ、この分離容器(16)からは、形成されたカルボン酸R−C(O)OHが導管(17)を介し、及び所望のビニルエステルR−C(O)O−CH=CHが導管(18)を介して流出する。
【0049】
導管(18)を介して得られたビニルエステルにはさらなる精密精製を施すことができる(図1には示していない)。
【0050】
分離容器(10)内で得られ、好ましい一実施形態では未転化の開始カルボン酸R−C(O)OH及びトランスビニル化触媒を含有する比較的揮発しにくい留分は、導管(19)を介して導出され、必要に応じて、高沸点物質を含有する側流は(破線で示した)導管(20)を介して排出されてから、導管(21)を介して触媒循環として戻される。触媒循環には、必要に応じて(破線で示している)導管(22)を介して未使用の触媒が場合によっては事前に形成された形態で補充されるか、又は未使用の配位子が補充され、使用済みの古い触媒と未使用の触媒とからなる混合物が導管(23)を介して混合容器(3)に供給される。反応部でも処理部でも、適切な位置で阻害剤を添加することができる(図1には示していない)。分離容器(10)、(13)、及び(16)としては、薄膜蒸発器、短経路蒸発器、又は蒸留塔のような、分離操作のために一般的な装置が適している。調整すべき温度条件及び圧力条件は、処理すべき反応混合物中に存在する成分に基づいて決定され、ルーチン試験によって確定することができる。分離段階の必要性及び回数のような分離容器の設計も、ルーチン試験又はシミュレーションによって確定することができる。
【0051】
本発明を以下の例においてより詳しく説明するが、記載した実施形態に限定されるわけではない。
【実施例】
【0052】

下記の例の実施には図1に基づく試験構造物を使用した。準備容器(3)内では、導管(1)を介して誘導された酢酸ビニル(例1〜例7、例15〜例22)又はプロピオン酸ビニル(例8〜例14)、導管(2)を介して誘導されたビニル化すべき開始カルボン酸R−C(O)OH、及び導管(23)を介して誘導された触媒溶液が混合され、それから導管(4)を介し、管形連続反応器として形成された反応容器(5)に移送ポンプで送り込まれた。導管(6)を介して放出された液状の反応混合物は、緩和容器(7)内で標準圧力に緩和された。その際に形成された、酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニル及び形成された酢酸又はプロピオン酸を含有する気体部分は導管(8)を介して取り出された。導管(9)を介して導出された液状放出物をガスクロマトグラフィで分析した。
【0053】
以下の表1〜表7には、トランスビニル化のために使用した開始カルボン酸R−C(O)OHと、反応容器(5)内で調整された反応条件と、ガスクロマトグラフィ分析から確定された所望のビニルエステルR−C(O)O−CH=CHの空時収率とが列記されている。触媒溶液は、酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニル及びそれぞれの投入カルボン酸から成る混合物中で、触媒前駆物質である酢酸パラジウムPd(OAc)と二座の窒素含有配位子である1,10−フェナントロリン(例1〜例16、例21〜例24)又は2,2’−ビピリジル(例17、例18)とを混合することにより調合した。例19及び例20では、錯体[Ru(CO)OAc]を触媒前駆物質として使用した。例21〜例23では、カルボン酸のモル投入量に対し、酢酸ビニルをモル不足量で投入した。活性触媒の形成は、反応容器内で、反応条件下で行った。触媒前駆物質に関するモル比の表示は、パラジウムのモル量又はルテニウムのモル量に関している。用いられたイソノナン酸は、ジイソブチレンのヒドロホルミル化とその後の対応するアルデヒドの酸化に基づいており、主に3,5,5−トリメチルヘキサン酸を含有していた。
【0054】
【表1】
Figure 2015508064
【0055】
【表2】
Figure 2015508064
【0056】
【表3】
Figure 2015508064
【0057】
【表4】
Figure 2015508064
【0058】
【表5】
Figure 2015508064
【0059】
【表6】
Figure 2015508064
【0060】
【表7】
Figure 2015508064
表1、表2、表4、及び表5の結果が示すように、定常状態で連続的に稼働されるトランスビニル化反応では非常に高い空時収率が達成され、この空時収率は、反応過程から酢酸ビニル及び酢酸を連続的に取り除く反応蒸留の公知の方法では達成できない。さらに、公知の方法は反応蒸留の際に大量の酢酸ビニルを投入しなければならず、かつ反応体積が大きいので、多大な酢酸ビニル投入量を必要とする。
【0061】
表3に列記した結果が示すように、標準圧力下での反応操作の場合も同様に高い空時収率を達成することができる。酢酸ビニルをモル不足量で使用する反応操作でも、所望のビニルエステルの高い空時収率を得ることができる(表6)。表7によれば、管形連続反応器内での滞留時間を1時間未満に調整することも可能であり、したがって負荷率の高い稼働状態を調整することができ、この高い負荷率は空時収率を明らかに高めることができる。
【0062】
緩和容器(7)内で得られた粗生成物は、導管(9)を介して薄膜蒸発器(10)に送り込まれ、薄膜蒸発器(10)からは、ジャケット温度95℃及び負圧で、酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニルと、酢酸又はプロピオン酸と、それぞれのビニルエステルR−C(O)O−CH=CHとを含有する塔頂生成物が取り出された。この生成物流は、緩和容器(7)からの気体部分と合流し、導管(12)を介して蒸留塔(13)に送られ、この蒸留塔(13)内では生成物混合物が、酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニルから成る塔頂留分と、酢酸又はプロピオン酸及びそれぞれのビニルエステルR−C(O)O−CH=CHから成る塔底生成物とに分けられた。酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニルを含有する流れは導管(14)を介して戻され、塔底生成物は導管(15)を介してさらなる蒸留塔(16)に送り込まれ、この蒸留塔(16)内では、塔頂生成物として酢酸又はプロピオン酸が取り出された。塔底生成物としては、導管(18)を介してそれぞれのビニルエステルR−C(O)O−CH=CHが獲得された。薄膜蒸発器(10)での、また蒸留塔(13)及び(16)でのそれぞれの蒸留条件は、常套の最適化によって調整することができた。
【0063】
薄膜蒸発器(10)の液状放出物からは、100質量部に対し、高沸点物質を含有する側流約5〜10質量部が導管(20)を介して排出され、その一方で残りは触媒循環として戻された。管形連続反応器(5)内で調整すべき比率に対応して、導管(22)を介して未使用の触媒を補充した。未使用の触媒の補充は、酢酸パラジウム及び1,10−フェナントロリンもしくは2,2’−ビピリジル又は[Ru(CO)OAc]を、酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニル及びそれぞれの投入カルボン酸から成る混合物中に加えることにより、溶液で行われた。

Claims (19)

  1. 式R−C(O)O−CH=CHのトランスビニル化化合物を用いて式R−C(O)OHで表されるカルボン酸を転化することによる、式R−C(O)O−CH=CHで表されるビニルエステルを製造するための連続的な触媒的方法であって、これらのR及びRは互いに独立して脂肪族の、脂環式の、又は芳香族の残基を意味し、該転化が、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム及び白金の群からの少なくとも1種の遷移金属を含有する遷移金属触媒の存在下に、反応相手を取り除くことなく行われ、その後、得られた反応混合物がその構成成分に分離されることを特徴とする、上記の方法。
  2. 前記転化が、20〜160℃、好ましくは60〜150℃、とりわけ90〜140℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記転化が標準圧力で行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記転化が60〜150℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
  5. 前記転化が、最大15MPa、好ましくは0.5〜8MPa、とりわけ0.8〜2MPaの圧力で行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
  6. 前記転化が、0.8〜2MPaの圧力及び90〜140℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
  7. 式R−C(O)OHで表されるカルボン酸において、残基Rが2〜20個の炭素原子を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
  8. 式R−C(O)OHで表されるカルボン酸が、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、n−吉草酸、2−メチル酪酸、3−メチル酪酸、ピバル酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、イソノナン酸、ネオノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、n−デカン酸、2−プロピルヘプタン酸、ネオデカン酸、異性体のC9〜C11の酸の混合物、異性体のC15〜C19の酸の混合物、ラウリン酸、トリデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフタリンカルボン酸、アクリル酸、クロトン酸、及びメタクリル酸の群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
  9. 式R−C(O)O−CH=CHで表されるトランスビニル化化合物において、残基Rが1〜20個の炭素原子を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
  10. が、メチル、エチル又はウンデシルであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
  11. 前記遷移金属触媒が、単座又は多座の有機窒素配位子又は有機リン配位子を錯結合して含有していることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。
  12. 1種又は2種以上の遷移金属の総濃度が、それぞれ不足量で投入される出発化合物に対し、0.005〜1.5モル%、好ましくは0.01〜1.0モル%、とりわけ0.02〜0.6モル%であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。
  13. 遷移金属:単座又は多座の有機窒素配位子又は有機リン配位子のモル比が、1:1〜1:40、好ましくは1:3〜1:30であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
  14. 遷移金属としてパラジウムを使用し、かつ多座の有機窒素配位子として1,10−フェナントロリン又は2,2’−ビピリジルを使用することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一つに記載の方法。
  15. 遷移金属触媒が、元素の周期表のIb族のレドックス活性遷移金属及びアルカリ金属化合物を追加的に含有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。
  16. 遷移金属のほかに、元素の周期表のI族のレドックス活性遷移金属として銅を、そしてアルカリ金属化合物としてカルボン酸リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、塩化リチウム、及び水酸化リチウムの群から選択されるリチウム化合物を追加的に使用することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
  17. 遷移金属としてパラジウムを使用することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
  18. 転化が管形反応器内で行われることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一つに記載の方法。
  19. 前記管形反応器が、移送ポンプ及び場合によっては熱交換器を備えていることを特徴とする請求項18に記載の方法。
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