JP2015230801A - リチウム空気電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】揮発による電解質の減少がなく、電池の長期の安定作動が可能で安全なリチウム空気電池を提供すること。
【解決手段】導電性材料および触媒を含む空気極と、金属リチウムまたはリチウム含有物質を含む負極と、前記空気極と前記負極に接するリチウムイオン導電性電解質を含むリチウム空気電池であって、前記リチウムイオン導電性電解質が、リチウムイオン導電性有機電解液とリチウムイオン導電性ゲルポリマー電解質を含み、前記リチウムイオン導電性ゲルポリマー電解質が前記空気極の空気と接触する面とは逆の面を被覆することを特徴とするリチウム空気電池。
【選択図】図1

Description

本発明は、リチウム空気電池に関する。本発明は特に、鉛蓄電池やリチウムイオン電池などの従来の電池よりも小型軽量でかつ遙かに大きい放電容量を実現できるリチウム空気電池に関する。
リチウム空気電池は、正極活物質として空気中の酸素を用い、電池外部から常に酸素が供給され、電池内に大量の負極活物質である金属リチウムを充填することができる。このため、電池の単位体積当たりの放電容量の値を非常に大きくできることが報告されている。
例えば、非特許文献1では、溶質として1mol/lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、有機溶媒として炭酸プロピレン(PC)と1,2−ジメトキシエタン(DME)の混合溶媒を用いて電解液を作製し、リチウム空気(酸素)電池の評価を行っている。
また、非特許文献2の電解液は、溶質として1.0mol/lのLiPFを用い、有機溶媒として炭酸エチレン(EC)と炭酸エチルメチル(EMC)(体積比で30:70)の混合溶媒をベースに、サイクル性能の改善をおこなうための添加剤としてトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(TPFPB)を少量混合して作製されている。いずれの文献でも、これらを電解質として用いたリチウム空気電池は、空気電池として作動し、大きな放電容量およびサイクル性能の改善が可能であることを報告している。
しかしながら、これらの文献で用いられている有機溶媒には揮発性があるため、空気を電池内に取り込む構造を有するリチウム空気電池においては、長期間作動させるには安定性に課題があると考えられる。つまり、長期に電池を作動させると、正極側から電解液が揮発することによって電池抵抗が増大し、電池性能が著しく低下することが予想される。実際に、これらの文献には、数サイクルのみを行った結果しか記載されていない。また、これらの有機電解液は、揮発性かつ引火性があるため、火災事故などの安全性が懸念される。
J. Read et al., Journal of The Electrochemical Society, Vol. 150, pp.A1351−A1356 (2003). N.−S. Choi et al., Journal of Power Sources, Vol. 225, pp. 95−100 (2013).
本発明は、揮発による電解質の減少がなく、電池の長期の安定作動が可能で安全なリチウム空気電池を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、
導電性材料および触媒を含む空気極と、
金属リチウムまたはリチウム含有物質を含む負極と、
前記空気極と前記負極に接するリチウムイオン導電性電解質
を含むリチウム空気電池であり、
前記リチウムイオン導電性電解質が、リチウムイオン導電性有機電解液とリチウムイオン導電性ゲルポリマー電解質を含み、前記リチウムイオン導電性ゲルポリマー電解質が前記空気極の空気と接触する面とは逆の面を被覆することを特徴とする。
本発明のリチウム空気電池では、前記リチウムイオン導電性ゲルポリマー電解質に、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはテトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)を含むことが好ましい。
本発明のリチウム空気電池では、前記リチウムイオン導電性ゲルポリマー電解質が、厚さ2μm〜20μmで前記空気極の空気と接触する面とは逆の面を被覆することを特徴とする。
本発明のリチウム空気電池では、前記リチウムイオン導電性ゲルポリマー電解質が無機金属酸化物フィラーを含むことを特徴とする。
本発明のリチウム空気電池は、ゲルポリマー電解質が前記空気極の空気と接触する面とは逆の面を被覆することで、上述した課題が改善される。また、本発明のリチウム空気電池、上記構成を有することで、その性能が改善される。さらに、前記ゲルポリマー電解質が、無機金属酸化物フィラーを含むことで、ゲルポリマー電解質の強度が向上し、より性能が改善される。
本発明のリチウム空気電池は、多数回の充放電サイクルを繰り返しても、放電容量の低下が小さく、高エネルギー密度のリチウム空気電池となる。
本発明に係るリチウム空気電池の基本的な構成を示す図である。 本発明に係るゲルポリマー電解質の合成法を表す図である。 本発明に係るコイン型リチウム空気電池セルの構成を示す概略図である。 実施例1および3に係るリチウム空気電池セルの充放電曲線を示す図である。
以下に、適宜図面を参照しつつ、本願に係るリチウム空気電池の一実施形態について詳細に説明する。
[リチウム空気電池の構成]
本発明に係るリチウム空気電池は、導電性材料および触媒を含む空気極と、金属リチウムまたはリチウム含有物質を含む負極と、前記空気極と前記負極に接するリチウムイオン導電性電解質を含む。本発明の一実施形態は、図1に示すような構造を有するリチウム空気電池であり、本発明に係るリチウム空気電池の放電時の基本的な構成を示したものである。
本発明に係るリチウム空気電池100は、図1に示されるように、導電性材料および触媒を含む空気極(正極)102、金属リチウムまたはリチウム含有物質を含む負極(104、並びに、前記空気極と前記負極に接するリチウムイオン導電性電解質が含まれる。本発明のリチウム空気電池では、前記電解質が、少なくともリチウムイオン導電性有機電解液を含有するリチウムイオン導電性ゲルポリマー電解質110を含み、このゲルポリマー電解質が前記空気極の空気と接触する面とは逆の面を被覆する構造を有する。本発明においては、さらに、電解液(例えば有機電解液)106、セパレータ108などを含むことができ、このような構成とすることが好ましい。また、セパレータ108には電解液を含浸させることができる。
前記空気極102は、触媒および導電性材料を構成要素に含むことができる。また、空気極には、前記材料を一体化するための結着剤を含むことが好ましい。負極104は金属リチウム又はリチウムイオンを放出及び吸収することができるリチウム含有合金などの物質を構成要素とすることができる。なお、リチウムイオン導電性電解質については、以下で詳述する。
上記の各構成要素について以下に説明する。なお、本明細書において、電解液とは、電解質が液体形態である場合をいう。
(I)空気極(正極)
本発明では、空気極は、触媒及び導電性材料を少なくとも含み、必要に応じて結着剤等の添加剤を含むことができる。
(I−1)導電性材料
本発明では、空気極に導電性材料を含むことができる。導電性材料には、例えばカーボンを例示することができる。使用されるカーボン種として、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック類、活性炭類、グラファイト類、カーボンファイバ類、カーボンクロス類、カーボンシート類などを挙げることができる。空気極中で反応部位を十分に確保するために、カーボンは比表面積が大きなものが適している。具体的には、BET比表面積で300m/g以上の値を有しているものが望ましい。これらのカーボンは、例えば市販品として、又は公知の合成により入手することが可能である。
(I−2)触媒
空気極中には、酸素還元および酸素発生反応に高活性な触媒が添加される。該触媒として、Mn、Fe、Co、Ni、V、W等の遷移金属の少なくとも一つを含む酸化物を挙げることができる。具体的には、MnO、Mn、MnO、FeO、Fe、FeO、CoO、Co、NiO、NiO、V、WOなどの単独酸化物、La0.6Sr0.4MnO、La0.6Sr0.4FeO、La0.6Sr0.4CoO、La0.6Ca0.4CoO、Pr0.6Ca0.4MnO、LaNiO、La0.6Sr0.4Mn0.4Fe0.6などのペロブスカイト型構造を有する複合酸化物などを例に挙げることができる。
これら触媒の合成手法としては、固相法、液相法などの公知のプロセスを用いることができる。本発明では、金属酢酸塩や金属硝酸塩の混合水溶液の蒸発乾固や金属アルコキシドの加水分解によりアモルファス前駆体を得る手法などに代表される液相法を用いることが望ましい。
触媒は、三相界面サイトを多量に触媒粒子表面に生成することが重要であり、使用する触媒は高表面積あることが望ましく、BET比表面積が10m/g以上のものが好適である。
また、触媒として、中心金属として遷移金属のMn、Fe、Co、Ni、V、W等の少なくとも一つを含むポルフィリンまたはフタロシアニンなどの大環状金属錯体を挙げることができる。これらの金属錯体は、カーボンと混合後、不活性ガス雰囲気中で熱処理を行うことによって活性が増大する。
本発明で使用できる触媒として、上記の例以外に、Pt、Au、Pd、Ruなどの貴金属、及び酸化パラジウム(PdO)、酸化ルテニウム(RuO)などの貴金属含有酸化物を例に挙げることができる。さらに、Co、Ni、Mnなどの遷移金属も空気極の触媒の例として挙げることができる。
上述の金属は、カーボン上に高分散で担持することにより、高い活性を発現することができる。具体的には、これらの金属が分散したコロイド溶液中にカーボンを分散させ、激しく撹拌することによって、カーボン上に金属粒子を吸着若しくは担持させることにより、高い分散性を達成することができる。
また、上記カーボンに金属を吸着若しくは担持させた後、熱処理を行うことで、カーボンを含む貴金属酸化物を合成することもできる。
本発明のリチウム空気電池では、上述のように、空気極に使用する触媒及びカーボンの比表面積は、所定の値を有することが望ましい。本発明では、比表面積の測定は、市販の装置を用いて行うことができる。例えば、比表面積は、市販の測定装置を用いて、液体窒素を冷却媒として使用するような手順で測定することができる。
(I−3)結着剤(バインダー)
空気極は結着剤(バインダー)を含むことができる。この結着剤は、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などを例として挙げることができる。これらの結着剤は、粉末として又は分散液として用いることができる。
本発明において、空気極用いられる導電性材料、触媒および任意選択的な結着剤の使用割合は特に限定されない。通常のリチウム空気電池で使用される空気極の使用割合を適用することができる。例えば、本発明のリチウム空気電池において、空気極中での触媒の含有量は、0.5〜50重量%であり、導電性材料は、10〜60重量%であり、結着剤は0〜40重量%である。
(I−4)空気極の調製
空気極は以下のように調製することができる。例えば、前記触媒粉末、カーボン粉末、及び必要に応じてバインダー粉末を混合し、この混合物をチタンメッシュ等の支持体上に圧着することにより、空気極を成形することができる。また、前述の混合物を有機溶剤等の溶媒中に分散してスラリー状にして、金属メッシュ又はカーボンクロスやカーボンシート上に塗布し乾燥することによって、空気極を形成することができる。
得られた空気極の片面は大気に曝され、もう一方の面は電解質と接する。また、電極の強度を高め、電解液の漏洩を防止するために、冷間プレスだけでなく、ホットプレスを適用することによっても、より安定性に優れた空気極を作製することができる。
(II)負極
本発明のリチウム空気電池は、負極に負極活物質を含む。この負極活性物質は、リチウム電池の負極材料として用いることができる材料であれば特に制限されない。例えば、金属リチウムを挙げることができる。或いは、リチウム含有物質として、リチウムイオンを放出及び吸蔵することができる物質である、リチウムと、シリコン又はスズとの合金、或いはLi2.6Co0.4Nなどのリチウム窒化物を例として挙げることができる。
なお、上記のシリコン又はスズの合金を負極として用いる場合、負極を合成する時にリチウムを含まないシリコン又はスズなどを用いることもできる。しかし、この場合には、空気電池の作製に先立って、化学的手法又は電気化学的手法(例えば、電気化学セルを組んで、リチウムとシリコン又はスズとの合金化を行う方法)によって、シリコン又はスズが、リチウムを含む状態にあるように処理しておく必要がある。具体的には、作用極にシリコン又はスズを含み、対極にリチウムを用い、有機電解液中で還元電流を流すことによって合金化を行う等の処理をしておくことが好ましい。
本発明のリチウム空気電池の負極は、公知の方法で形成することができる。例えば、リチウム金属を負極とする場合には、複数枚の金属リチウム箔を重ねて所定の形状に成形することで、負極を作製すればよい。
(III)電解質
本発明による電解質は、リチウムイオン導電性有機電解液とリチウムイオン導電性ゲルポリマー電解質(本明細書では、リチウムイオン導電性ゲルポリマー電解質を、単にゲルポリマー電解質又はゲル電解質とも称する)を含む。本発明では、ゲルポリマー電解質は、空気極の空気と接触する面とは逆の面に配置される。本発明のリチウムイオン導電性ゲルポリマー電解質は、このゲルポリマーと、有機電解液のような電解質を含む。
具体的には、図1に示されるように、電解質は、ゲルポリマー電解質110と電解液(好ましくは有機電解液)106を含み、これらが空気極102および負極104の間に配置される。必要に応じて、電解液106はセパレータ108に含浸させるなどの手段を用いて配置してもよい。
ゲルポリマー電解質110は、電解液106が揮発するのを防止するため、空気極の空気と接触する面とは逆の面全体を覆うように配置されることが好ましい。
ゲルポリマー電解質は、例えば図2に示すような手順で調製することができる。まず、PVdFなどのポリマー粒子をテトラヒドロフラン(THF)溶剤に、必要に応じて加熱しながら溶解する(202〜206)。次に、この溶液に有機電解液を添加し(208)、さらに必要に応じて加熱しながら混合する(210)。得られた溶液を、シャーレなどのガラス板上に、スポイトを用いて滴下することでキャスティングし(212)、加熱処理および乾燥する(214〜216)ことで膜状のゲルポリマー電解質を作製することができる。得られた膜状のゲルポリマー電解質は、必要に応じて、成形、有機電解液の添加及び含浸を行う(218〜224)。
このゲルポリマー電解質に含まれる有機電解液は、リチウム電池に用いられるものであれば特に限定されない。例えば、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)などのリチウムイオンを含む金属塩を、溶媒に溶解したものを挙げることができる。本発明では、溶媒は、空気中の酸素との反応性が低く、劣化しにくいジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒またはテトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)溶媒のような非水系溶媒が好ましい。
ゲルポリマー電解質は、空気極の空気と接触する面とは逆の面を被覆する。従って、空気極の当該面全体に一様にゲルポリマー電解質を被覆するために、ゲルポリマー電解質はある程度の膜厚を有することが必要である。なお、膜厚が大きすぎるとリチウムイオンを伝導する際にバリアとなるため、ある程度膜厚を抑える必要もある。具体的には、ゲルポリマー電解質の膜厚は、2μm〜20μmの範囲にあることが望ましい。
本発明では、ゲルポリマー電解質を空気極の形状に合わせた所定の形状に成形し、空気極と圧着することで、ゲルポリマー電解質が被覆された空気極を作成することができる。例えば、ゲルポリマー電解質のシートを上述したような手順で調製し、これを空気極の目的の面全体を被覆するように圧着することで、空気極の目的の面に配置することができる。
上記のようなゲルポリマー電解質のシートを空気極に圧着する以外に、ゲルポリマー電解質を空気極の目的の面全体に被覆する方法としては、例えば、スピンコーティング法のような手段がある。
さらに、ゲルポリマー電解質は、Al、SiOなどの無機金属酸化物フィラーをさらに含んでもよい。このような無機フィラーを含むことで、ゲルポリマー電解質を空気極の所定の面上に被覆した際に、その強度が向上し、本発明のリチウム空気電池の性能がより改善される。
ゲルポリマー電解質中における無機金属酸化物フィラーの含有量は、ゲルポリマー電解質の総重量を基準として、2〜50重量%であることが好ましい。
本発明では、電解質には上記のゲルポリマー電解質に加えて有機電解質(例えば有機電解液)を含む。有機電解質が有機電解液の場合、セパレータなどに含浸させてもよい。
この有機電解質は、リチウム電池に用いられるものであれば特に限定されない。例えば、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)などのリチウムイオンを含む金属塩を、例えば炭酸エチレン(EC)及び炭酸ジメチル(DMC)の混合溶媒、EC及び炭酸ジエチル(DEC)などのような混合溶媒、又は炭酸プロピレン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)のような単独溶媒に溶解した非水系有機電解液などを例として挙げることができる。
本発明において、ゲルポリマー電解質110に使用する有機電解液と、有機電解質106は同じものであってもよく、異なるものであってもよい。例えば、ゲルポリマー電解質110に使用する有機電解液に1mol/l LiTFSI/TEGDMEまたは1mol/l LiTFSI/DMSOを用い、有機電解質106に1mol/l LiTFSI/PCなどを用いることができる。
(IV)他の要素
本発明のリチウム空気電池は、上記構成要素に加え、セパレータ、電池ケース、金属メッシュ(例えばチタンメッシュ)などの構造部材、その他のリチウム空気電池に要求される要素を含むことができる。これらは、従来公知のものを使用することができる。
(V)リチウム空気電池の製造
本発明のリチウム空気電池は、上述した通り、少なくとも空気極(正極)、負極及び電解質を含む。例えば、図1に示されるように、空気極と負極の間に電解質を狭持するように構成され、かつ、空気極の空気と接触する面とは逆の面がゲルポリマー電解質で被覆される。このような構成のリチウム空気電池は、従来の手順で製造することができる。例えば、空気極、負極および電解質をそれぞれ調製し、所定の順序にこれらを積層し、必要に応じて電池ケース内に収容すればよい。また、ゲルポリマー電解質の空気極への被覆方法は上述した通りであり、例えば、膜状に形成されたゲルポリマー電解質を所定の形状に成形した空気極と圧着すればよい。
一実施形態では、例えば図3のようなコイン型のリチウム空気電池を製造することができる。図3に示されるように、コインセル型の空気電池は、空気極306、ゲル電解質308、電解液を含浸したセパレータ310、および負極312が少なくとも含まれる。さらに空気電池はカソードケース302、チタンメッシュ304、Niメッシュ314、スペーサ316、ウェーブワッシャー318およびアノードケース320などを含むことができる。この空気電池は、例えば、空気極306とゲルポリマー電解質308を軽く圧着した空気極/ゲルポリマー電解質、前記有機電解液を含侵させたセパレータ310、金属リチウムまたはリチウム含有物質を含む負極312、並びに、上記のその他の各要素を図3に示すような順序で積層し、カソードケース302およびアノードケース320内に配置し、各構成要素を配置した両ケースを固定することで製造することができる。セパレータや電池セルケースなどは市販品を用いることができる。
以下に添付図面を参照して、この発明に係るリチウム空気電池についての実施例を詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
(実施例1〜4)
(I) ゲルポリマー電解質膜の作製
ゲルポリマー電解質膜は、図2に示す手法で作製した。本実施例では、PVdFと1mol/l LiTFSI/TEGDME電解液またはPVdFと1mol/l LiTFSI/DMSO電解液を含むサンプルを作製した。
具体的には、図2に示すように、PVdF粒子(アルドリッチ製)をテトラヒドロフラン(THF)溶剤に60℃で加熱しながら溶解し、有機電解液[1mol/l LiTFSI/TEGDMEまたは1mol/l LiTFSI/DMSO、両試薬とも富山薬品工業(株)製]を添加し、さらに60℃で加熱しながら溶解した。得られた溶液を、シャーレなどのガラス板状に、スポイトを用いて滴下し、さらに90℃で、3時間真空乾燥を行った。その後、得られたシートを徐冷し、膜状のゲルポリマー電解質を得た。さらに、作製したゲルポリマー電解質の微細な空隙を埋めるために、電解質膜を上記の有機電解液と同組成の電解液に含侵し、その後、余剰な電解液をふき取った。これにより、空隙のない膜状のゲルポリマー電解質を得た。なお、シャーレへの滴下量を調整することで膜厚を調整することができた。
ゲルポリマー電解質の組成は、電解液:PVdF=80:20(重量比)とした。得られたゲルポリマー電解質は、直径17mmの円形に金属ポンチを使って切り抜いた。本実施例1〜4では、以下に示すような、膜厚の異なるゲルポリマー電解質を作製した。
(II) 空気極の作製
市販の酸化ルテニウム(RuO)粉末(関東化学製)、ケッチェンブラックEC600JD粉末(ライオン(株)製、BET比表面積1270m/g)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末を5:57:38の重量比で、らいかい機を用いて十分に粉砕および混合し、ロール成形し、シート状電極(厚さ:0.5mm)を作製した。このシート状電極を直径13mmの円形に切り抜き、チタンメッシュ上にプレスすることにより、ガス拡散型の空気極を得た。このようして作製した空気極と前記ゲルポリマー電解質を、中心を揃えて軽く圧着して、空気極/ゲルポリマー電解質構造体を得た。
(III) 有機電解液含侵セパレータの作製
市販のPE製セパレータ(セルガード社製、直径17mm)に、十分量の市販の有機電解液1mol/l LiTFSI/PC(富山薬品工業(株)製)を含侵させた。2〜3時間静置したのちに、キムワイプを用いて、セパレータから余剰な電解液を拭き取った。以上の手順で有機電解液含侵セパレータを作製した。
(IV) 金属リチウム負極の作製
市販の金属リチウム箔(厚さ0.2mm、直径13mm、本城金属(株)製)3枚を、中心を揃えて重ねて軽く圧着し、負極を作製した。
(V) 空気電池セルの作製
図3に、コイン型リチウム空気電池セルの積層構造を示す。図3に示すように、上記のように作成した要素を含む各構成要素を積層した後に、市販のかしめ機(宝泉(株)製)を用いてケースをかしめることにより、コイン型リチウム空気電池セルを得た。電池の作製は、露点が−60℃以下の乾燥空気中で行った。
(VI) 電池性能評価
電池の充放電サイクル試験は、充放電測定システム(BioLogic社製VMP−3)を用いて、空気極の有効面積(空気に直接曝される面積)当たりの電流密度で0.1mA/cmを通電し、開回路電圧から電池電圧が、2.0Vに低下するまで放電電圧の測定を行った。続いて、充電は、同電流密度で、4.2Vのカットオフもしくは放電時間=充電時間となるように測定を行った。また、このサイクルを繰り返して電池性能の評価を行った。電池の放電試験は、通常の生活環境下で行った。充放電容量は空気極(カーボン+酸化物+PTFE)重量当たりの値(mAh/g)で表した。
膜厚2μmでゲルポリマー電解質を空気極に付与した実施例1および3の空気電池セルの初回の放電および充電曲線を図4に示す。両実施例とも、1000mAh/gを超える大きな放電容量を示したが、DMSOを用いた実施例3がTEGDMEを用いた実施例1よりも約1.3倍大きな値を示した。作動電圧に関しては、平均放電電圧は両実施例ともほぼ同様であったが、充電に関しては、DMSOを用いた実施例3が低電圧での充電が可能であった。このように、ゲルポリマー電解質に含まれる有機電解液によって挙動は異なるものの、両実施例とも大きな放電容量を有していることを確認した。表2に、初回、50サイクル目、100サイクル目の放電容量を、まとめて示す。実施例1および3とも比較的安定なサイクル性能を示し、150サイクル後の容量維持率は約80%という高い値であった。
実施例1および3よりも膜が厚い20μmでゲルポリマー電解質を空気極に付与した実施例2および4の空気電池セルの初回、50サイクル目、100サイクル目の放電容量を、表2にまとめて示す。表2より、実施例2および4は、実施例1および3よりも全体的に容量が小さい傾向が見られた。これは、膜厚の増加により、セル全体の抵抗が増加したためであると考えられる。しかしながら、両実施例とも初回では1000mAh/g以上の放電容量を示し、サイクルを繰り返した場合の放電容量維持率も実施例1および3と同様の安定性であった。
これらの結果より、空気極表面にゲルポリマー電解質を付与する本発明は、大きな放電容量と優れたサイクル安定性という電池性能を得るために有効な手法であることが確認された。
(実施例5および6)
本実施例は、ゲルポリマー電解質に無機酸化物フィラーを添加した場合の例である。
ゲルポリマー電解質に、無機酸化物フィラーとして、表3に示すゲルポリマー電解質組成で、Al(関東化学(株)製)またはSiO(関東化学(株)製)を添加した。有機電解液は、1mol/l LiTFSI/DMSOを用いた。
リチウム空気電池の作製は、前記実施例とほぼ同様である。即ち、図2の208において、有機電解液に無機酸化物を混合し、よく分散するように超音波処理を行い、その後、PVdF溶液と混合した(202〜210)。後の工程は、図2に示すとおりである。また、空気極の作製および空気電池セルの作製などは、実施例1〜4と同様にして行った。
表2に、実施例5および6の初回、50サイクル目、100サイクル目の放電容量を、まとめて示す。フィラーを用いていない実施例3と比較すると、初回放電において若干の容量減少が見られるものの、サイクル安定性は優れており、両実施例とも150サイクル後においても約87%の高い容量維持率を示した。これは、フィラーの添加により、ゲルポリマー電解質の強度が向上し、電解液の揮発防止効果が促進されたためと考えられる。
(比較例)
本発明の有効性を検証するために、以下の空気電池セルを作製した。
(比較例1)
ゲルポリマー電解質なし、つまりセパレータに含浸させる有機電解液(1mol/l LiTFSI/PC)のみを含む空気電池セルを作製した。
(比較例2)
本発明の好ましいゲルポリマー電解質の膜厚から逸脱する膜厚1μmのゲルポリマー電解質[有機電解液(1mol/l LiTFSI/DMSO):PVdF=80:20(重量比)]を用いた空気電池セルを作製した。なお、セパレータに含浸させる有機電解液としては、1mol/l LiTFSI/PCを使用した。
(比較例3)
本発明の好ましいゲルポリマー電解質の膜厚から逸脱する膜厚21μmのゲルポリマー電解質[有機電解液(1mol/l LiTFSI/DMSO):PVdF=80:20(重量比)]を用いた空気電池セルを作製した。なお、セパレータに含浸させる有機電解液としては、1mol/l LiTFSI/PCを使用した。
空気極作製やセル作製は、実施例1〜4と同様の手法で行った。本比較例に係るリチウム空気電池の電池性能を、表2に記す。
比較例1では、大きな初回放電容量を示したものの、サイクルを繰り返すと急激に容量は減少し、23サイクル後にはゼロとなった。
比較例2および3は、比較例1よりも安定したサイクル特性を示すものの、本発明の好ましいゲルポリマー電解質の膜厚の範囲内である実施例3および4と比較すると、容量維持率が低いことが分かった。
以上の結果より、本発明のゲルポリマー電解質は、優れた電池性能の実現に大きく寄与していることが確認された。また、本発明における膜厚が適切に制御されたゲルポリマー電解質は、電解液の揮発防止膜として有効に機能し、優れた電池性能の実現に大きく寄与することが確認された。
本発明のリチウム空気電池は、電気自動車、スマートフォン等のモバイル機器の駆動大幅に長時間化することができ、或いは、本発明のリチウム空気電池を用いた、停電時に備えたバックアップシステムの作動を大幅に長時間化することができると考えられる。
本発明によるリチウム空気電池の構成を用いることにより、充放電サイクル性能に優れた高エネルギー密度のリチウム空気電池を作製することができ、電気自動車や様々な電子機器の駆動源として有効に利用することができる。
102 空気極(正極)
104 負極
106 有機電解質(有機電解液)
108 セパレータ
110 ゲルポリマー電解質
202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224 ゲルポリマー電解質の製造の各工程
302 カソードケース
304 Tiメッシュ
306 空気極
308 ゲルポリマー電解質(ゲル電解質)
310 有機電解液含浸セパレータ
312 負極(Li金属)
314 Niメッシュ
316 スペーサ
318 ウェーブワッシャー
320 アノードケース

Claims (4)

  1. 導電性材料および触媒を含む空気極と、
    金属リチウムまたはリチウム含有物質を含む負極と、
    前記空気極と前記負極に接するリチウムイオン導電性電解質
    を含むリチウム空気電池であって、
    前記リチウムイオン導電性電解質が、リチウムイオン導電性有機電解液とリチウムイオン導電性ゲルポリマー電解質を含み、前記リチウムイオン導電性ゲルポリマー電解質が前記空気極の空気と接触する面とは逆の面を被覆することを特徴とするリチウム空気電池。
  2. 前記リチウムイオン導電性ゲルポリマー電解質に、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはテトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)を含むことを特徴とする請求項1記載のリチウム空気電池。
  3. 前記リチウムイオン導電性ゲルポリマー電解質が、厚さ2μm〜20μmで前記空気極の空気と接触する面とは逆の面を被覆することを特徴とする請求項1または2記載のリチウム空気電池。
  4. 前記リチウムイオン導電性ゲルポリマー電解質が、無機金属酸化物フィラーを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のリチウム空気電池。
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