JP2015229857A - 既存建物の免震化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】免震ピットによる床面積の減少を防ぎ、用地を有効に活用するとともに敷地境界を侵すことのない免震建物を構築することを可能とした既存建物の免震化方法を提案する。
【解決手段】既存建物を、上部構造体2と下部構造体3とに分離する工程と、下部構造体3の外壁に沿って立設された外柱30にコンクリートを増し打ちする工程と、下部構造体3の外柱30と上部構造体2の外柱20との間に免震装置4を介設する工程と、上部構造体2のみを移動する工程とを備える既存建物の免震化方法であって、下部構造体3の外柱30と上部構造体2の外柱20とを、地盤面GLよりも高い位置において分離する。
【選択図】図1

Description

本発明は、既存建物を免震建物とするための既存建物の免震化方法に関する。
免震建物は、上部構造体と下部構造体との間に免震装置を介設することで、上部構造体の免震化を図るものである。
従来の免震建物100は、図5の(a)に示すように、下部構造体102の基礎部103と擁壁104により囲まれた空間(免震ピット105)に免震装置106を配設し、この免震装置106により上部構造体101を支持する基礎下免震建物が一般的である。
前記従来の基礎下免震建物100は、下部構造体102の擁壁104と免震ピット105の分、敷地境界線よりも内側に上部構造体101を構築する必要がある。
建物の中間階に免震装置を設置して免震層とする中間階免震建物では、中間階に免震層が必要となるが、擁壁と免震ピットが必要ないので、それだけ外周部分を敷地境界線の近傍まで広げることができる。
しかし、中間階免震建物で地震時に揺れが低減するなどの免震効果を発揮するのは免震層より上の上部構造のみで、下部構造では免震効果はほとんどない。加えて既存建物を免震化する場合には、免震層や下部構造体で大幅な補強が必要になることが多く、柱補強による床面積の減少や免震化工事期間中使用できない面積が多くなる。
そのため、特許文献1には、敷地境界近くまで建物が建てられている既存建物において、擁壁上に免震装置を設置し、擁壁と地下階の間に免震ピットを構築した改修方法が提案されている。図5の(b)に示すように、上部構造体210の下層階211を囲むように下部構造体220の擁壁221が形成されており、当該擁壁221の上端部に免震装置230を設け、この免震装置230を介して上部構造体210の上層階212の外周部分を擁壁220により支持する免震建物200が開示されている。この免震建物200は、中心市街地などにおいて、敷地境界まで建てられている。
一方、既存建物を免震化すると、免震装置により上部構造の地震時変位が大きくなるため、建物周りのクリアランスを非免震建物より大きく取る必要がある。
そのため、隣地境界線や隣接建物が近接している既存建物は、免震化と前後して不足するクリアランス分以上の距離を、近接する隣地境界線等から離れる方向に既存建物を水平移動(曳家)させて、隣地境界線等とのクリアランスを確保する場合がある(例えば、特許文献2参照)。
基礎下免震建物の移動(曳家)工事では、上部に基礎梁、下部に耐圧盤を備える免震ピット内において、既存建物全体を水平移動している。
特許文献2や図5(a)に示すような基礎下免震建物では、上部構造を支持する下部構造の基礎部が丈夫な耐圧盤などであることが多く、不足クリアランス分程度の水平移動させる移動工事を行っても、下部構造体を補強する必要はほとんどない。
特許第3240438号公報 特許第4199693号公報
しかし、中間階免震建物や、基礎下免震建物であっても上部構造体を丈夫な耐圧盤で支持していない場合には、不足クリアランス分程度水平移動させる移動工事を行っても、移動により上部構造体と下部構造体がずれて付加モーメントが作用するため、免震層や下部構造体を大幅に補強する必要が出てくる。柱に作用する重心がずれることにより、免震装置を設置する柱の上端部に大きな付加モーメントが作用することになるため、免震装置を設置する柱に付加的な力が常時かかるようになる。
更に、免震装置を設置して上部構造の荷重を支持している柱の上端部には、地震時等に大きな水平力が作用するため、柱が下端部だけで固定されていると下端部にかかる力が膨大になってしまう。この場合、上端部と下端部の距離に比例して下端部にかかる力が大きくなるので、複数層にわたる長柱は更なる補強が必要となる。
建物の中間階に免震装置を設置して免震層とする中間階免震建物では、免震層や下部構造体で大幅な補強が必要になることが多く、一般にコンクリートを増し打ちするなどして免震層の全ての柱を補強する。外周部分以外の柱は耐震壁と連続していない独立した柱が多く、補強量が増加し、移動すると更に補強量が増加する。また、柱補強による床面積の減少や免震化工事期間中使用できない面積が多くなる。
擁壁は土圧(横圧)を支持するためのものであり、一般に擁壁に掛かる土圧は、地表面位置での0から下端での最大値まで比例的に増加する。
また、図5の(b)に示すように、上部構造体210の下層階211を囲むように下部構造体220が形成されており、上部構造体210の割合を増やすことで中間階免震建物の短所を低減しようとしている。すなわち、免震効果を発揮する上部構造面積を増やして、大幅な補強が必要になることが多い下部構造面積を減らした。また、擁壁に免震装置221を載せるために擁壁221を補強する場合は、擁壁221に隣接する地下構造物(下層階211)を壊す必要があり、地下構造面積が小さくなる。
免震層が段差を有しひとつの平面でない場合には、建物(上部構造体)周りのクリアランスだけでなく、上部構造体と下部構造体の間のクリアランスも注意して確保しなければならなくなり、建物内部にも多くの免震クリアランスとなるスペースを必要とする。
このような観点から、本発明は、隣接ビルとの間隔が近接している既存建物を免震化するにあたり、敷地を有効に活用するとともに敷地境界を侵すことのない免震建物を構築することを可能とした既存建物の免震化方法を提案することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明の既存建物の免震化方法は、既存建物を、上部構造体と下部構造体とに分離するとともに、前記下部構造体の外縁に沿って立設された外柱にコンクリートを増し打ちする工程と、前記下部構造体の外柱と前記上部構造体の外柱との間に免震装置を介設する工程と、前記上部構造体のみを移動する工程とを備えており、前記下部構造体の外柱と前記上部構造体の外柱とを、地盤面よりも高い位置において分離することを特徴としている。
なお、上部構造体の移動は、免震装置を介設してから行ってもよいし、免震装置を介設する前に行ってもよい。
かかる既存建物の免震化方法によれば、上部構造体を移動するので、隣地境界線や隣地建物との間だけでなく、上部構造体と下部構造体の間にも必要な方向に必要な分だけの免震クリアランスを確保することができる。
また、下部構造体の外柱にコンクリートを増し打ちしているため、移動後の上部構造体の外柱と下部構造体の外柱との偏心量を最小限にとどめることができ、したがって、下部構造体の外柱に作用する偏心モーメントを極力小さくすることができる。
また、下部構造体の外柱にコンクリートを増し打ちしているため、基礎部分を囲う擁壁は、土圧支持機能が主であり、軸荷重の影響は小さく、擁壁改修の手間や材料費はわずかである。
なお、前記既存建物の地下部分の地山に面する側部を前記下部構造体に含め、前記側部に囲まれた中央部を前記上部構造体に含めるように分離すれば、ピット空間を別途設ける必要はなく、既存建物の地下部分の床面積の減少を最小限に抑えることができる。
また、前記既存建物は、敷地境界付近に地下外壁と前記地下外壁に接して設けられた外柱を備えていてもよい。
本発明の既存建物の免震化方法によれば、免震ピット構造による床面積の減少を防ぎ、用地を有効に活用するとともに敷地境界を侵すことのない免震建物を構築することが可能となる。
(a)は本実施形態の免震建物(移動後の建物)を示す断面図、(b)は(a)のA−A断面図である。 (a)は免震化前の建物(既存建物)を示す断面図、(b)は移動前の建物を示す断面図である。 上部構造体と下部構造体とに分離後の建物の一部を示す拡大断面図である。 他の形態に係る免震建物を示す断面図である。 (a)および(b)は従来の免震建物を示す断面図である。
本実施形態の免震建物1は、他の建物(隣接建物)Bが隣接している既存建物を免震化したものである。
免震建物1は、図1に示すように、上部構造体2と、下部構造体3と、免震装置4とを備えている。
既存建物10は、図2に示すように、地上4階、地下2階、鉄筋コンクリートラーメン構造の多層階建物であるが、既存建物10の規模、形状、用途等は限定されない。
また、既存建物10の構造形式も限定されない。例えば、既存建物10は、鉄筋コンクリート造であってもよいし、鉄骨鉄筋コンクリート造であってもよい。また、既存建物10の基礎は杭基礎であってもよいし、直接基礎であってもよい。
本実施形態の既存建物の免震化方法は、分離工程と、増し打ち工程と、免震装置設置工程と、移動工程とを備えている。
分離工程は、図2の(b)に示すように、既存建物10を上部構造体2と下部構造体3に分離する工程である。なお、既存建物10の分離は、上部構造体2を図示しない支保部材等により仮受けした状態で行う。
既存建物10の外縁では、図2の(b)に示すように、地盤面GLよりも高い位置において、既存建物10を上下に分離する。既存建物10の外縁(外壁)に沿って形成された外柱11(図2の(a)参照)は、地盤面GLよりも高い位置において下部構造体3の外柱30と上部構造体2の外柱20とに分離する。このように、分離位置が地盤面GLより上部に設置されていると、擁壁と免震ピットを建物外周部に設ける必要がなく、それだけ外周部分を敷地境界線の近傍まで広げることができるので望ましい。
一方、既存建物10の内部は、既存建物10の地下部分(地盤面GLよりも低い位置)において分離する。このように、分離工程では、既存建物10の地下部分の地山に面する側部を下部構造体3に含め、側部に囲まれた中央部を上部構造体2に含めるように既存建物10を分離する。
上部構造体2には、既存建物10の地下部分の中央部により形成された下層階部分21と、既存建物10の地上部分により形成された上層階部分22とが含まれている。
一方、下部構造体3には、既存建物10の地下部分の側部により形成された地下階部分32が含まれている。
本実施形態の地下階部分32は、既存建物10の地下部分のうち、地山に面する側部に沿った少なくとも1スパン分の柱や梁にコンクリートを増し打ちするなどして耐震補強するとともに中央部から分離することにより形成する。
地下階部分32と下層階部分21との間には、隙間42を形成する。隙間42は、移動後に、下部構造体3に対する上部構造体2の地震時の想定相対変位よりも大きな幅となるように形成する。
本実施形態では、下層階部分21の隣接建物B側(図面の右側)の隙間42よりも隣接建物Bと反対側(図面の左側)の隙間42の方が大きくなるようにしておく。こうすることで、移動後の両隙間42,42が、いずれも想定される地震時の変位よりも大きな幅となる。
本実施形態では、既存建物10の下側に下部構造体3の基礎部分31を形成する。
基礎部分31は、下層階部分21の下側に新たに形成されたコンクリート製の基礎スラブである。なお、基礎部分31の構成は限定されるものではなく、例えば、基礎梁であってもよい。
基礎部分31は、既存建物10の底盤の下方の地盤を掘り下げて形成する。本実施形態の基礎部分31は、中央が周縁よりも窪んでいる断面視凹字状に形成する。
基礎部分31の周縁は、既存建物10の側部により形成された地下階部分32の下面に当接していて、地下階部分32を下方から支持している。なお、基礎部分31は、地下階部分32と一体に固定されていればよく、地下階部分32との接合形式(構造)は限定されない。
増し打ち工程は、図3に示すように、下部構造体3の外壁33(外縁)に沿って立設された外柱30にコンクリートを増し打ちする工程である。
増し打ちコンクリート34の厚さは限定されるものではなく、移動する上部構造体2の移動量に応じて適宜設定すればよい。
図2の(b)に示すように、隣接建物B側(図面において右側)に立設された外柱30に増し打ちされる増し打ちコンクリート34は、建物の内側(隣接建物Bの反対側)に打設する。
一方、隣接建物Bの反対側(図面において左側)に立設された外柱30に増し打ちされる増し打ちコンクリート34は、建物の外側(外壁33の外面)に打設する。
本実施形態では、増し打ちコンクリート34の施工に伴い、図3に示すように、外柱30の内側(下層階部分22側)に間隔をあけて立設された内柱35と、外柱30および内柱35に横架された梁36を増設する。
本実施形態では、鉄筋コンクリートにより内柱35を形成するが、内柱35の構成は限定されるものではなく、例えば鉄骨柱であってもよい。また、内柱35は、既存の柱でもよいし、既存の柱を増し打ちコンクリート等により補強してもよい。
また、本実施形態では、鉄筋コンクリートにより梁36を形成するが、梁36の構成は限定されるものではない。また、梁36は、既設の梁であってもよいし、既設の梁を増し打ちコンクリート等により補強したものであってよい。
免震装置設置工程は、上部構造体2と下部構造体3との間に免震装置4を介設する工程である。
免震装置4は、上部構造体2の外柱20と下部構造体3の外柱30との間、および、上部構造体2の下層階部分21と下部構造体3の基礎部分31との間(免震ピット41)に介設する。
本実施形態では、積層ゴムにより構成された免震装置4を使用する。なお、免震装置4の構成は限定されるものではなく、例えば、すべり支承であってもよい。
また、本実施形態では、免震装置4に加え、図示しないオイルダンパーも上部構造体2と下部構造体3との間に配設する。免震化に用いる各装置の種類、数、配置等は、適宜設定すればよい。
免震装置4は、上部構造体2に上端を固定する。
外柱20,30同士の間に介設される免震装置4は、図3に示すように、上部構造体2の外柱20の直下に上端を固定する。このとき、免震装置4の中心軸が外柱20の柱芯と一致するようにする。
免震ピット41に配設される免震装置4の上端は、下層階部分21の下面に固定する。本実施形態では、図2の(b)に示すように、複数の免震装置4を免震ピット41に等間隔で配設するが、配設される免震装置4の数や配置は限定されない。
免震装置4の下端は、上部構造体2の移動後に下部構造体3(外柱30または基礎部分31)に固定する。
移動工程は、図1に示すように、上部構造体2のみを水平移動(曳家)する工程である。
上部構造体2は、隣接建物Bとのクリアランスが大きくなるように、隣接建物Bの反対側方向に水平移動する。移動量は、免震化によって不足するクリアランス分以上必要であるが、外柱を免震化するので、外柱への増し打ちコンクリート34の移動方向の厚さ以下でなければならない。従って移動量は、一般的な曳家工事のように大きくないので、本実施形態では、移動装置としてコロ棒等でなく、滑りを用いた移動工法を用いた。
一般的に、滑りを用いた移動工法は、高荷重の大型の建物を移動させるのに適しており、建物の基礎下に滑り装置(移動体)を設置する方法である。移動工法に使用される滑り装置において、1つの滑り材の滑り面に接する面積は大きく、よって滑り装置における面積当たりの耐荷重が大きいために、滑り装置を小さくすることができるとともに、滑り装置を支える基礎の補強も少なくて済むという特徴がある。
上部構造体2の外柱20と下部構造体3の外柱30との間、および、上部構造体2の下層階部分21と下部構造体3の基礎部分31との間(免震ピット41)に、図示しない滑り装置(移動体)を設置する。ここで、滑り装置は、下部構造体3の上面にプレートが無収縮モルタルを介して平坦に固定され、このプレート上に、当接面に滑動性に優れたナイロンが貼設されて上部構造体側に固定されたプレートが移動自在に設けられたものである。
そして、所定箇所の滑り装置に、推進装置となる図示しない水平移動ジャッキを上部構造体2の外柱20と下部構造体3の外柱30との間、および、上部構造体2の下層階部分21と下部構造体3の基礎部分31との間(免震ピット41)に配置し、移動方向に押圧可能とする。
移動後、下層階部分21と地下階部分32との間(隙間42)に、エキスパンションジョイントを介設する。
なお、エキスパンションジョイントは必要に応じて設ければよい。
本実施形態の免震化方法によれば、以下に示す作用効果を得ることができる。
すなわち、上部構造体2を移動するので、隣接建物Bとの間に、免震装置4による地震時変位に応じた免震クリアランスを確保することができ、隣接ビルとの間隔が近接している(外壁が敷地境界に隣接している)既存建物を免震化する場合でも、敷地を有効に活用するとともに敷地境界を侵すことのない免震建物を構築することができる。
建物の中間階に免震装置を設置して免震層とする中間階免震建物では、免震層や下部構造体で大幅な補強が必要になることが多く、一般に免震層の全ての柱をコンクリートを増し打ちするなどで補強する。外周部分以外の柱は耐震壁と連続していない独立した柱が多く、補強量が増加し、移動すると更に補強量が増加する。また、柱補強による床面積の減少や免震化工事期間中使用できない面積が多くなる。
下部構造体3の外柱30にコンクリートを増し打ちしているため、移動後の上部構造体2の外柱20と下部構造体3の外柱30との偏心量を最小限にとどめることができる。したがって、下部構造体3の外柱30に作用する偏心モーメントを極力小さくすることができる。
また、下部構造体3の外柱30の位置においてコンクリートを増し打ちしているため、建物の基礎部分を囲う擁壁の壁厚を増加させる従来の免震化方法に比べて、施工時の手間や材料費を低減させることができる。
既存建物10の同一地下階の全体を免震化せず、一部の共用空間(下層階部分21)のみを免震化する一方で、残部の共用空間(地下階部分32)については耐震補強を施し、免震建物1の支持体として利用している。よって、地下階部分32となる残部の共用空間は、既存建物10の共用空間と同等に、用途を変更する必要がなく、既存建物10の地下部分の床面積の減少を最小限に抑えることができる。
地下階部分32は、外柱30、内柱35および梁36により形成された柱梁架構により居住空間が形成されているため、有効に活用することができる。
また、外壁33に作用する土圧は外柱30に伝達されるため、外壁33の壁厚を必要最小限に抑えることができる。
外壁33は、柱梁架構により支持されており、土圧に対して安定している。
また、上部構造体2を外柱30で支持しているため、大きな地震時水平力が外壁33に作用することがないため、外壁33の壁厚を必要以上に大きくする必要がない。
上部構造体2は、免震装置4を介して下部構造体3により支持されているため、上部構造体2の免震性が確保されている。
また、上部構造体2(下層階部分21)と下部構造体3(地下階部分32)との隙間42は、想定される地震時における上部構造体2の下部構造体3に対する相対変位よりも大きいため、地震時に上部構造体2と下部構造体3とが接触して免震機能が阻害されることもない。
下層階部分21と地下階部分32は、エキスパンションジョイントを介して連結されているため、常時において下層階部分21と地下階部分32との間で行き来が可能であるとともに、地震時等における上部構造体2の免震機能が阻害されることがない。
また、下部構造体3の平面形状は、上部構造体2の平面形状からはみ出すことがなく、用地を有効に活用することができる。
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、免震装置設置工程後に移動工程を実施する場合について説明したが、免震装置設置工程と移動工程との順序は限定されない。また、前記実施形態では、分離工程後に増し打ち工程を実施する場合について説明したが、分離工程と増し打ち工程との順序は限定されない。
また、前記実施形態では、移動前に免震装置4の上端を上部構造体2に固定しておき、移動後に免震装置4の下端を下部構造体3に固定する場合について説明したが、免震装置4は、移動前に下端を下部構造体3に固定しておき、移動後に上端を上部構造体2に固定してもよいし、移動工程が完了した後に免震装置を搬入し設置してもよい。
また、免震装置4は、移動前に上部構造体2と下部構造体3との両方に固定しておいてもよい。例えば、免震装置4としてスライドプレートとすべり部材とを備えたすべり支承を使用する場合には、移動後の免震装置4の軸芯が鉛直になるように、スライドプレートおよびすべり部材のいずれか一方を移動前の上部構造体2に固定するとともに他方を下部構造体3に固定しておいてもよい。
前記実施形態では、下部構造体3として、基礎部分31を新設する場合について説明したが、基礎部分31は必ずしも新設する必要はない。
例えば、図4に示す免震建物1のように、既存建物10の基礎スラブ37を補強することにより、基礎部分31として使用してもよい。この場合には、下層階部分21の柱23の下端と基礎部分31との間に免震装置4を介設する。なお、基礎スラブ37の補強方法は限定されるものではないが、例えば、コンクリートによる増厚や、スラブや梁等を増設することにより行えばよい。
前記実施形態では、既存建物10の地下部分の1スパン分を下部構造体3の地下階部分32として使用する場合について説明したが、地下階部分32の大きさは限定されない。また、下部構造体3の地下階部分32の用途は限定されない。
また、下部構造体3の地下階部分32は、建物の地下部分の全周にわたって形成してもよいし、建物の地下部分に部分的に形成してもよい。すなわち、下部構造体3の左右の一方に地下階部分32を形成し、他方は擁壁構造としてもよい。
1 免震建物
10 既存建物
2 上部構造体
20 外柱
21 下層階部分
22 上層階部分
3 下部構造体
30 外柱
31 基礎部分
32 地下階部分
33 外壁
34 増し打ちコンクリート
35 内柱
36 梁
4 免震装置
41 免震ピット
42 隙間
B 隣接建物

Claims (4)

  1. 既存建物を、上部構造体と下部構造体とに分離するとともに、前記下部構造体の外縁に沿って立設された外柱にコンクリートを増し打ちする工程と、
    前記下部構造体の外柱と前記上部構造体の外柱との間に免震装置を介設する工程と、
    前記上部構造体のみを移動する工程と、を備える既存建物の免震化方法であって、
    前記下部構造体の外柱と前記上部構造体の外柱とを、地盤面よりも高い位置において分離することを特徴とする、既存建物の免震化方法。
  2. 既存建物を、上部構造体と下部構造体とに分離するとともに、前記下部構造体の外縁に沿って立設された外柱にコンクリートを増し打ちする工程と、
    前記上部構造体のみを移動する工程と、
    前記下部構造体の外柱と前記上部構造体の外柱との間に免震装置を介設する工程と、を備える既存建物の免震化方法であって、
    前記下部構造体の外柱と前記上部構造体の外柱とを、地盤面よりも高い位置において分離することを特徴とする、既存建物の免震化方法。
  3. 前記既存建物の地下部分の地山に面する側部を前記下部構造体に含め、前記側部に囲まれた中央部を前記上部構造体に含めることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の既存建物の免震化方法。
  4. 前記既存建物が、敷地境界付近に地下外壁と前記地下外壁に接して設けられた外柱を備えていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の既存建物の免震化方法。
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