JP2015223163A - 起泡・泡持ち向上剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】飲食品用の新たな起泡および/または泡持ち向上剤の提供。
【解決手段】α−1,4−結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が11〜35の分岐グルカンまたはその還元物を含んでなる起泡および/または泡持ち向上剤。
【選択図】なし

Description

本発明は起泡および/または泡持ち向上剤に関し、さらに詳細には、分岐グルカンを有効成分として含んでなる起泡および/または泡持ち向上剤に関する。本発明はまた、起泡および/または泡持ちが向上した飲食品並びにその製造方法にも関する。
炭酸ガスを含んだ発泡性飲料は、アルコール、非アルコールを問わず、数多く市場に供されている。炭酸ガスを含んだ発泡性飲料において起泡性や気泡安定性を向上させることは重要な要素である。泡の主な働きとしては、飲料からの炭酸ガスの抜けの防止、泡立ちによる香り立ち、劣化防止のための蓋としての役割、泡の弾ける音の心地よさ、見た目の美味しさ等があり、炭酸ガスを含んだ飲料の起泡性や気泡安定性を向上させることによる消費者への訴求効果は高い。
炭酸ガスを含んだ発泡性飲料のうち、「発泡酒」および所謂「第3のビール」は、「ビール」と比較して気泡安定性が劣るという課題がある。同様にビールテイストのノンアルコール飲料や、コーラ、サイダーのような炭酸清涼飲料は、ビールと比較して起泡性や気泡安定性が劣る。これは、麦芽などに由来するタンパク質や炭水化物がビールの起泡や気泡安定性に寄与するためである。このため、飲食品の起泡性を改善するとともに、その泡を安定化させる技術が求められている。
これまでに炭酸ガスを含んだ飲料の起泡性や気泡安定性を改善するためにサポニンを飲料に添加することが行われている(例えば、特許文献1参照)。また、近年、エンドウ豆から抽出したエンドウタンパク質を気泡安定性向上物質として発泡性アルコール飲料に使用する技術(例えば、特許文献2参照)や、水溶性の大豆多糖類を気泡安定性改善剤として使用する技術(例えば、特許文献3参照)が見いだされている。しかし、サポニンを添加した飲料の泡はキメが細かく気泡安定性が不十分であり、また、サポニン独特の苦味も問題となっていた。また、大豆やエンドウのタンパク質は起泡性および気泡安定性を向上させるが、これらの植物由来のタンパク質はアレルゲン物質となる危険性がある。従って、消費者の様々なニーズに応えるため、新たな起泡・泡持ち向上剤の開発が求められているといえる。
特開2009−11200号公報 国際公開第05/005593号 特開2011−147462号公報
このような背景のもと本発明者らは、直鎖状グルカンと分岐構造とからなる重合度11〜35のグルカンであって、少なくとも直鎖状グルカンの非還元末端に分岐構造が導入されたグルカンが飲食品の起泡性と気泡安定性の改善に有用であることを見いだし本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、新たな起泡および/または泡持ち向上剤並びに起泡および/または泡持ちが向上した飲食品およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)α−1,4−結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が11〜35の分岐グルカンまたはその還元物を含んでなる起泡および/または泡持ち向上剤。
(2)分岐グルカンまたはその還元物の分岐構造の直鎖状グルカンへの結合様式がα−1,6−結合またはα−1,3−結合である、上記(1)に記載の起泡および/または泡持ち向上剤。
(3)分岐グルカンまたはその還元物の分岐構造が直鎖状グルカンの非還元末端に結合した1〜2個のグルコース残基である、上記(1)または(2)に記載の起泡および/または泡持ち向上剤。
(4)ビールテイスト飲料、発泡性アルコール飲料および清涼飲料の起泡および/または泡持ちを向上させる、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の起泡および/または泡持ち向上剤。
(5)α−1,4−結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が11〜35の分岐グルカンまたはその還元物を添加してなる、起泡および/または泡持ちが向上した飲食品。
(6)飲食品が、ビールテイスト飲料、発泡性アルコール飲料および清涼飲料から選択される、上記(5)に記載の飲食品。
(7)α−1,4−結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が11〜35の分岐グルカンまたはその還元物を飲食品の製造原料として使用する、起泡および/または泡持ちが向上した飲食品の製造方法。
(8)飲食品が、ビールテイスト飲料、発泡性アルコール飲料および清涼飲料から選択される、上記(7)に記載の製造方法。
本発明の起泡および/または泡持ち向上剤は分岐グルカンを有効成分としていることから、アレルゲン物質を飲食品に混入させる恐れがない。また本発明の起泡および/または泡持ち向上剤は飲食品の起泡性や気泡安定性に優れている。従って本発明はアレルゲン物質混入の恐れのない、起泡性や気泡安定性に優れた新たな起泡および/または泡持ち向上剤を提供することができ、消費者の様々なニーズに応えることができる点で有利である。また、本発明の起泡および/または泡持ち向上剤は、その構造により易消化性である場合が有り、易消化性であれば飲食品にエネルギー剤としての機能も付与できる点で有利である。さらに、易消化性であれば消化不良による下痢を心配しなくてもよく、摂取量に特段制限を設けなくてよいという点で更に有利である。
第3のビールにおける気泡安定性試験(実施例1)の結果を示した図である。黒三角:分岐グルカン1添加、黒菱形:糖組成物無添加、黒四角:マルトースシラップ添加。 ノンアルコール・ビールテイスト飲料における気泡安定性試験(実施例2)の結果を示した図である。黒三角:分岐グルカン2添加、黒菱形:糖組成物無添加、黒四角:マルトースシラップ添加。 発泡酒における気泡安定性試験(実施例3)の結果を示した図である。黒三角:分岐グルカン1を原料に使用した発泡酒、黒四角:マルトースシラップを原料に使用した発泡酒、黒菱形:分岐オリゴ糖シラップを原料として使用した発泡酒。
発明の具体的な説明
本発明では、直鎖状グルカンと分岐構造とからなる重合度11〜35のグルカンであって、少なくとも直鎖状グルカンの非還元末端に分岐構造が導入されたグルカン(以下、「本発明のグルカン」ということがある)を起泡および/または泡持ち向上剤の有効成分として用いる。ここで、「直鎖状グルカン」とは、単一のグルコシド結合によりグルコース分子が結合して構成された直鎖状のグルカンを意味する。
本発明の分岐グルカンの具体例としては、α−1,4−グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度11〜35の分岐グルカンが挙げられる。本発明による分岐グルカンの更なる具体例としては、α−1,4−グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、その直鎖状グルカンの非還元末端のみに導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度11〜35の分岐メガロ糖が挙げられる。
本発明において「分岐構造」とは、α−1,4−グルコシド結合以外のグルコシド結合により直鎖状グルカンに結合した1個以上のグルコース残基からなるグルカン残基を意味する。α−1,4−グルコシド結合以外のグルコシド結合としては、α−1,6−グルコシド結合、α−1,3−グルコシド結合、α−1,2−グルコシド結合が挙げられる。
本発明の分岐グルカンにおいて、分岐構造のグルカン残基を構成するグルコース残基の個数は本発明の分岐グルカンの重合度を満たす限り特に限定されないが、好ましくは、1〜数個、より好ましくは、1〜6個、1〜4個、1〜3個、または1〜2個とすることができる。
本発明において「還元末端」とは、還元性を示す糖残基を意味する。本発明において「非還元末端」とは、還元性を示さない糖残基、すなわち、「還元末端」以外の末端糖残基を意味する。
本発明において「重合度」とは、グルカンを構成するグルコース残基の個数を指し、直鎖状グルカンを構成するグルコース残基の個数のみならず、分岐構造を構成するグルコース残基の個数を含む。分岐糖類の重合度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって測定することができる。
本発明において「還元物」とは、糖の還元末端のグルコシル基のアルデヒド基が還元され、水酸基となっているものを言う。糖の還元物を得る方法は当業者に周知であり、使用可能な還元方法を例示すれば、ヒドリド還元剤を用いる方法、プロトン性溶媒中の金属を用いる方法、電解還元方法、接触水素化反応方法等が挙げられる。本発明においては、少量の還元物を調製する場合にはヒドリド還元剤を用いる方法が簡便且つ特殊な装置を必要とせず便利であり、一方で、工業的に大規模に実施する場合には、経済性優れ、副生成物も少ないという点から、接触水素化反応を用いる方法が好ましい。
本発明の起泡および/または泡持ち向上剤として利用可能な分岐グルカンは、本発明のグルカンの構造を有する限り、その製造方法に特に制限は無いが、デンプン分解物(例えば、デンプン液化液)に糖転移酵素を作用させることで安価かつ効率的に製造可能である。
また、アミラーゼと糖転移作用を有する酵素とを、デンプン分解物に作用させることにより本発明の分岐グルカンをより効率的に製造することができる。デンプン分解物から本発明の分岐グルカンを生成させる上記酵素反応は、酵素反応が進行する温度で実施することができ、通常、60℃付近までの温度範囲で実施することができる。好適な反応温度は、30〜55℃である。デンプン分解物から本発明の分岐グルカンを生成させる酵素反応は、酵素反応が進行するpHで実施することができ、通常、pH5〜9の範囲で実施することができる。好適な反応pHは、pH5.5〜7の範囲である。酵素の使用量と反応時間とは密接に関係しており、目的とする酵素反応の進行により適宜反応時間を調節することができる。上記アミラーゼとしては、例えばシクロデキストリン生成酵素やα―アミラーゼが使用できる。
ここで、シクロデキストリン生成酵素は、パエニバチルス・エスピー (Paenibacillus sp.)、バチルス・コアギュランス (Bacillus coagulans)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、およびバチルス・マゼランス(Bacillus macelans)由来のものから選択することができる。また、α―アミラーゼは、市販のα―アミラーゼであるクライスターゼL−1およびクライスターゼT−5(いずれも大和化成社製)から選択することができる。また、糖転移作用を有する酵素は、α−グルコシダーゼ、6−α−グルコシルトランスフェラーゼ、デキストリンデキストラナーゼ、および環状マルトシルマルトース生成酵素から選択することができ、上記α−グルコシダーゼは、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger) またはアクレモニウム・エスピー(Acremonium sp.)由来のものを使用することができる。
上記酵素反応に用いられるシクロデキストリン生成酵素の添加量は、反応効率および製造コストの観点から、対基質(固形)1g当たり0.2〜10単位とすることができる。ここで、シクロデキストリン生成酵素1単位とは後述するシクロデキストリン生成酵素の活性測定方法の条件下において、1分間に1mgのβ−シクロデキストリンを生成するのに必要な酵素量をいう。
上記酵素反応に用いられるα―アミラーゼの添加量は、反応性および製造コストの観点から、対基質(固形)当たり0.0005〜0.1質量%とすることができる。
また上記酵素反応に用いられる糖転移作用を有する酵素のうちα−グルコシダーゼの添加量は、反応効率および製造コストの観点から、対基質(固形)1g当たり0.01〜30単位とすることができる。ここで、α−グルコシダーゼ1単位とは後述するα−グルコシダーゼの活性測定方法の条件下において、1分間に1μmolのマルトースを加水分解するのに必要な酵素量をいう。
さらに上記製造方法では、アミラーゼと糖転移作用を有する酵素に加えて、枝切り酵素を更に作用させることができる。枝切り酵素を作用させた場合は、本発明の分岐グルカン生成反応後に残存する重合度35を超えるデキストリン成分の残存量が少なく、本発明の分岐グルカン生成量が高まることから、効率的に分岐グルカンを製造するためには枝切り酵素を使用することが好ましい。枝切り酵素は、アミラーゼおよび糖転移作用を有する酵素と一緒に、デンプン分解物に作用させることが好ましい。
ここで、枝切り酵素は、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択して使用することができ、より好ましい態様では、マイロイデス・オドラータス (Myroides odoratus)由来イソアミラーゼ、シュードモナス・アミロデラモサ (Pseudomonas amyloderamosa) 由来イソアミラーゼ、およびクレブシエラ・プネウモニアエ(Klebsiella pneumoniae)由来プルラナーゼ、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
上記酵素反応に用いられる枝切り酵素のうちイソアミラーゼの添加量は、反応効率および製造コストの観点から、対基質(固形)1g当たり10〜1000単位とすることができる。上記製造方法の酵素反応に用いられる枝切り酵素のうちプルラナーゼの添加量は、反応性および製造コストの観点から、対基質(固形)当たり0.001〜0.1質量%とすることができる。ここで、イソアミラーゼ1単位とは、後述するイソアミラーゼの活性測定方法の条件下において610nmの吸光度を0.01増加させる酵素力価である。
本発明の起泡および/または泡持ち向上剤として利用可能な分岐グルカンは、再表2009−113652号公報、再表2008−136331号公報、特開2011−200225号公報、および特開2013−252137号公報に記載の方法でも製造することができる。
本発明の「起泡および/または泡持ち向上剤」とは、泡立ちを促進する効果、すなわち「起泡性向上効果」と、泡沫の消失を抑制する効果、すなわち「気泡安定化効果」のいずれか一方または両方を有するものを意味するものであり、「起泡性向上剤」および/または「気泡安定性向上剤」として使用することも出来る。
本発明の起泡および/または泡持ち向上剤は、分岐グルカンまたはその還元物を有効成分として含むことを特徴としており、分岐グルカンまたはその還元物を含有する液糖や粉糖をそのまま起泡および/または泡持ち向上剤として用いてもよい。また、本発明の起泡および/または泡持ち向上剤は、有効成分である分岐グルカンまたはその還元物に加えて、その効果を阻害しない範囲で他の食品素材、例えば、サポニン・タンパク・大豆多糖類等の気泡剤や、糖質、油脂類、アミノ酸、タンパク質(分解物を含む)、ペプチド、乳化剤、有機酸、保存料、着色料、香料、無機塩類等の飲食品に通常用いられている成分を添加してもよい。
本発明の起泡および/または泡持ち向上剤は、分岐グルカンおよびその還元物を含有していればよく、その含有量に特に制限は無いが、分岐グルカンにより発揮される効果と製造コストを考慮すると、固形分当り5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。また、本発明の起泡および/または泡持ち向上剤に含まれる分岐グルカンおよびその還元物の含量の上限に特に制限はないが、製造コストを考慮すると、固形分当たり80質量%以下とすることができ、好ましくは60質量%以下である。本発明の起泡および/または泡持ち向上剤に含まれる分岐グルカンおよびその還元物の含量を例示すると、1〜100質量%、5〜90質量%、10〜70質量%、15〜60質量%である。
本発明の起泡および/または泡持ち向上剤は、発泡性飲料をはじめとする各種飲食品に添加し、飲食品の製造に使用することができ、それにより飲食品の泡立ちを促進し、気泡を安定化させることができる。その添加時期も特に制限は無く、製造時に原料として添加してもよく、製造中に添加してもよく、製造後に添加してもよい。前記飲食品としては、特に、ビールテイスト飲料、発泡性アルコール飲料、発泡性清涼飲料、ホイップクリーム、メレンゲが好ましい。
本発明の「ビールテイスト飲料」はビール風味を有する発泡性の飲料を意味する。「ビールテイスト飲料」にはビールテイストのノンアルコール飲料と、ビールテイストのアルコール飲料が含まれる。本発明において「ビールテイストのノンアルコール飲料」とは、通常にビールを製造した場合に得られるビール特有の味わい、香りに類似する特徴を有するノンアルコール飲料を意味する。また、本発明において「ビールテイストのアルコール飲料」の典型例としては「ビールテイスト発酵アルコール飲料」が挙げられる。「ビールテイスト発酵アルコール飲料」とは、炭素源、窒素源、および水などを原料として酵母により発酵させた飲料であって、ビール風味を有するアルコール飲料を意味する。「ビールテイスト発酵アルコール飲料」としては、原料として麦および麦芽を使用しないビールテイスト発酵飲料(例えば、いわゆる「第3のビール」あるいは「新ジャンル」と呼ばれる、酒税法上、「その他の醸造酒(発泡性)(1)」に分類される飲料)や、原料として麦芽を使用するビール、発泡酒、リキュール(例えば、酒税法上、「リキュール(発泡性)(1)」に分類される飲料)が挙げられる。
本発明の「発泡性アルコール飲料」は、ビールテイストのアルコール飲料以外の発泡性アルコール飲料を意味する。このような発泡性アルコール飲料としては、麦芽を使用しない発泡性アルコール飲料(「酎ハイ」と呼ばれる焼酎ハイボール等のリキュール類やスパークリングワイン、発泡性清酒、カクテル、サワー等)が挙げられる。
本発明の「清涼飲料」は、ビールテイストのノンアルコール飲料以外の発泡性ノンアルコール飲料を意味する。このような発泡性ノンアルコール飲料としては、コーラ、サイダー、栄養ドリンク、乳性飲料、アイソトニック飲料、スポーツ飲料、果汁飲料等が挙げられる。また、茶、紅茶、コーヒー、野菜ジュース等のように、通常は発泡性でない飲料であっても、炭酸ガスなどにより発泡性が付与された場合にはこれらも清涼飲料に含まれる。サイダー、クリームソーダ等の炭酸飲料には、粉末を水や湯に溶解して飲むインスタントタイプのものもあるが、本発明の清涼飲料はそのようなインスタントタイプのものも含む。
本発明によれば、本発明の起泡および/または泡持ち向上剤を添加してなるビールテイスト発酵アルコール飲料が提供される。このようなビールテイスト発酵アルコール飲料は、本発明の起泡および/または泡持ち向上剤を添加する以外は通常のビール、発泡酒、その他の醸造酒(発泡性)、およびその他のリキュール(発泡性)の製造で一般的に用いられる方法で製造することができる。
例えば、麦芽を原料として使用するビールテイスト発酵アルコール飲料は、少なくとも水および麦芽から調製された発酵前液(麦汁)を発酵させることにより製造することができる。すなわち、水および麦芽から調製された発酵前液を発酵させ、得られた発酵液(酒下し液)を、所望により低温にて貯蔵した後、ろ過工程により酵母を除去することにより、ビールテイスト発酵アルコール飲料を製造することができる。麦汁の調製は常法に従って実施することができ、例えば、麦芽と温水を混合するか、あるいは麦芽と糖類、澱粉、タンパク質等の副原料とを温水で混合し、必要に応じてアミラーゼ等の酵素を加えて糖化後ろ過して麦汁を調製することができる。
また、麦および麦芽を原料として使用しないビールテイスト発酵アルコール飲料は、少なくとも水および液糖から調製された発酵前液を発酵させることにより製造することができる。すなわち、水および液糖から調製された発酵前液を発酵させ、得られた発酵液(酒下し液)を、所望により低温にて貯蔵した後、ろ過工程により酵母を除去することにより、ビールテイスト発酵アルコール飲料を製造することができる。
本発明の起泡および/または泡持ち向上剤の添加タイミングは特に限定されず、前述の麦汁調製前(仕込み工程)に他の副原料と一緒に麦汁または発酵前液に添加しても、麦汁調製後発酵前にホップと一緒に麦汁または発酵前液に添加してもよく、あるいは、発酵工程中に発酵液に添加するか、発酵工程の後に発酵液に添加してもよい。
ビールテイスト発酵アルコール飲料のいずれの製造方法においても炭素源および窒素源として麦、米、とうもろこし、でんぷん等の副原料を発酵前液に添加することができ、また、必要に応じて、ホップ、香料、着色料(カラメル)、他の起泡および/または泡持ち向上剤、水質調整剤、発酵助成剤等のその他の添加物等を発酵前液に添加することができる。さらに、ホップは、発酵前液を煮沸する前に、発酵前液を煮沸中に、または発酵前液を煮沸した後に、添加することができる。
本発明によれば、本発明の起泡および/または泡持ち向上剤を添加してなるビールテイストのノンアルコール飲料が提供される。このようなビールテイストのノンアルコール飲料は、本発明の起泡および/または泡持ち向上剤を添加する以外はビールテイストのノンアルコール飲料の製造で一般的に用いられる方法で製造することができる。例えば、水と原料を仕込釜あるいは仕込槽に投入して撹拌し、得られた混合液にホップを添加し、次いで煮沸し、静置することによりビールテイストのノンアルコール飲料を調製することができる。静置により固形分を取り除いた後、炭酸ガスの添加、濾過、容器詰め、殺菌などの工程を経て、ビールテイストのノンアルコール飲料を得ることができる。ビールテイストのノンアルコール飲料についても本発明の起泡および/または泡持ち向上剤の添加タイミングは特に限定されず、原料の仕込液に添加しても、煮沸後に添加してもよい。
その他の飲食品についても、本発明の起泡および/または泡持ち向上剤を添加する以外は通常の飲食品で一般的に用いられる方法で製造することができる。添加タイミングも特に限定されない。
本発明の起泡および/または泡持ち向上剤のビールテイスト飲料、発泡性アルコール飲料、清涼飲料等の飲食品への添加量は、特に制限されないが、起泡性および気泡安定性をよりよく発揮させる観点から、飲食品当たり0.01重量%〜30重量%、好ましくは0.05重量%〜30重量%、より好ましくは0.1重量%〜30重量%とすることができる。粉末飲料に加工する場合の含量も、該粉末飲料が適した濃度となるよう水に溶解した状態で上記添加量の範囲内になるよう調整にすればよい。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。なお、実施例中の割合(%)は特に断りがない限り質量%を表す。
シクロデキストリン生成酵素の活性測定
糖化反応に使用したシクロデキストリン生成酵素(CGTase)を以下に示す。
・パエニバチルス・エスピー由来のCGTase:日本食品化工社製アルカリCDアミラーゼ
酵素反応は、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に溶解した1%可溶性デンプン(ナカライテスク社)0.9mlに適宜水で希釈した酵素溶液0.1mlを添加し、40℃に10分間保持した。これに40mM水酸化ナトリウム水溶液を2.5ml添加して反応を停止した。生成したβ−シクロデキストリンをフェノールフタレイン法により測定した。すなわち、0.1mg/mlフェノールフタレインおよび2.5mM炭酸ナトリウムからなる溶液0.3mlを上記溶液に添加し、攪拌後550nmの吸光度を測定した。0〜0.1mg/mlの範囲で作成したβ−シクロデキストリンの標準曲線に基づき生成したβ−シクロデキストリン量を求めた。
α−グルコシダーゼの活性測定
糖化反応に使用したα−グルコシダーゼを以下に示す。
・アスペルギルス・ニガー由来のα−グルコシダーゼ:アマノエンザイム社製トランスグルコシダーゼアマノ
・アクレモニウム・エスピー由来のα−グルコシダーゼ:キリンフードテック社製テイスターゼ
酵素反応は、50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.2)に溶解した0.25%マルトース80μlに0.05%トリトンX−100を含む10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.2)で適宜希釈した酵素溶液20μlを添加し、37℃に10分間保持した。反応10分で反応液50μlを抜き出し、2Mトリス塩酸緩衝液(pH7.0)100μlと混合して反応を停止した。これにグルコースCII−テストワコー(和光純薬社)を40μl添加した後、室温に1時間保持して発色させ、490nmの吸光度を測定した。
生成したグルコース量を0〜0.01%の範囲で作成したグルコースの標準曲線に基づき算出した。
イソアミラーゼの活性測定
糖化反応に使用したイソアミラーゼを以下に示す。
・マイロイデス・オドラータス由来のイソアミラーゼ:合同酒精社製GODO−FIA
反応は、20mM塩化カルシウムを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)100μlに5mg/mlワキシーコーンスターチ(日本食品化工社)350μlを添加し、45℃に5分間保持したものに同緩衝液にて適宜希釈した酵素溶液100μl添加して45℃に15分間保持した。これに反応失活用ヨウ素液(6.35mg/mlヨウ素および83mg/mlヨウ化カリウムからなる溶液2mlと0.1N塩酸8mlを混合したもの)500μlを添加して反応を停止した。この反応停止液を室温に15分間保持し、
これに純水10ml添加したものの610nmの吸光度を測定した。
製造例1:分岐グルカンの製造(1)
30%(w/w)DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにパエニバチルス・エスピーのシクロデキストリン生成酵素を対固形当たり2単位、マイロイデス・オドラータスのイソアミラーゼを対固形分1g当たり200単位、プルラナーゼ「アマノ」3(アマノエンザイム社製)を対固形分当たり0.02%、アクレモニウム・エスピーのα−グルコシダーゼを対固形分1g当たり0.75単位、クライスターゼ L−1(大和化成社製)を対固形分1g当たり0.006%添加して40時間糖化した。これを80℃に加温し、クライスターゼL−1を対固形分当たり0.005%添加してヨード反応が消失するまで作用させた。続いて、定法に従い精製、濃縮することで分岐グルカンを製造した。得られた糖組成物(分岐グルカン1)中の「α−1,4−結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が11〜35の分岐グルカン」含量を特開2010−95701号公報の試験例2に記載された方法で測定したところ、26.6%であった。
製造例2:分岐グルカンの製造(2)
特開2010−95701号公報の製造例に記載された方法に準じて分岐グルカン(分岐グルカン2)を製造した。詳しくは、30%(w/w)DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにパエニバチルス・エスピーのシクロデキストリン生成酵素を対固形当たり1単位、マイロイデス・オドラータスのイソアミラーゼを対固形分1g当たり100単位、プルラナーゼ「アマノ」3(アマノエンザイム社製)を対固形分当たり0.01%、アスペルギルス・ニガーのα−グルコシダーゼを対固形分1g当たり3.75単位添加して72時間糖化した。これを80℃に加温し、クライスターゼL1(大和化成社製)を対固形分当たり0.005%添加してヨード反応が消失するまで作用させた。続いて、定法に従い精製、濃縮することで分岐グルカンを製造した。得られた糖組成物(分岐グルカン2)中の「α−1,4−結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が11〜35の分岐グルカン」含量を特開2010−95701号公報の試験例2に記載された方法で測定したところ、17.9%であった。
実施例1:第3のビールにおける気泡安定性試験
予め室温放置及び撹拌にて炭酸を抜いた市販の第3のビール(ビールテイスト発酵アルコール飲料)に、固形分で1%の各種糖組成物を添加した。糖組成物を添加した第3のビールをメスシリンダーに40ml移し入れ、炭酸ガスを送り込んで発泡させ、泡を含む総量を約100mlにした。泡の残存量を経時的に記録し、泡安定性を検証した。
その結果、製造例1で得られた糖組成物(分岐グルカン1)を添加したものは糖組成物無添加のものおよびマルトースシラップ(日本食品化工社製)を添加したものと比較して泡の残存する時間が有意に増加した(図1)。このように分岐グルカンはビールテイスト飲料の泡持ち時間を改善する効果を有することが示された。
実施例2:ノンアルコール・ビールテイスト飲料における気泡安定性試験
予め室温放置及び撹拌にて炭酸を抜いた市販のノンアルコール・ビールテイスト飲料に、固形分で1%の糖組成物を添加した。糖組成物を添加したビールテイスト飲料をメスシリンダーに40ml移し入れ、炭酸ガスを送り込んで発泡させ、泡を含む総量を約100mlにした。泡の残存量を経時的に記録し、泡安定性を検証した。
その結果、製造例2で得られた糖組成物(分岐グルカン2)を添加したものは糖組成物無添加のものおよびマルトースシラップ(日本食品化工社製)を添加したものと比較して泡の残存する時間が有意に増加した(図2)。このように分岐グルカンはビールテイスト飲料の泡持ち時間を改善する効果を有することが示された。
実施例3:発泡酒における起泡性および気泡安定性試験
麦芽および副原料として糖類を使用し、常法に従って麦芽比率50%未満の発泡酒を醸造した。糖類としてマルトースシラップ(日本食品化工社製)を使用した発泡酒、更に該マルトースシラップの約15%を製造例1で得られた糖組成物(分岐グルカン1)あるいは分岐オリゴ糖シラップ(パノリッチ、日本食品化工社製)に一部置換した発泡酒について以下のように起泡性と泡安定性を検証した。
まず、製造した発泡酒を100mlのメスシリンダーに注ぎ、発泡酒20ml当たりの生成した泡の容量を比較した(表1)。
Figure 2015223163
その結果、糖類の一部を分岐グルカン1で置換した発泡酒は、マルトースシラップを使用した発泡酒や、糖類の一部を分岐オリゴ糖シラップで置換した発泡酒と比較して、生成した泡の容量が有意に増加した。
次に、実施例1および2と同様に発泡後の泡の残存量を経時的に記録した結果、分岐グルカン1を原料とした発泡酒はマルトースシラップおよび分岐オリゴ糖シラップを原料とした発泡酒と比較して泡の残存する時間が有意に増加した(図3)。
このように分岐グルカンは醸造副原料として用いた場合であってもビールテイスト発酵アルコール飲料の泡量や泡持ち時間を改善する効果を有することが示された。すなわち、分岐グルカンは、起泡および/または泡持ち向上剤としていずれとしても有効であることが示された。

Claims (8)

  1. α−1,4−結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が11〜35の分岐グルカンまたはその還元物を含んでなる起泡および/または泡持ち向上剤。
  2. 分岐グルカンまたはその還元物の分岐構造の直鎖状グルカンへの結合様式がα−1,6−結合またはα−1,3−結合である、請求項1に記載の起泡および/または泡持ち向上剤。
  3. 分岐グルカンまたはその還元物の分岐構造が直鎖状グルカンの非還元末端に結合した1〜2個のグルコース残基である、請求項1または2に記載の起泡および/または泡持ち向上剤。
  4. ビールテイスト飲料、発泡性アルコール飲料および清涼飲料の起泡および/または泡持ちを向上させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の起泡および/または泡持ち向上剤。
  5. α−1,4−結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が11〜35の分岐グルカンまたはその還元物を添加してなる、起泡および/または泡持ちが向上した飲食品。
  6. 飲食品が、ビールテイスト飲料、発泡性アルコール飲料および清涼飲料から選択される、請求項5に記載の飲食品。
  7. α−1,4−結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が11〜35の分岐グルカンまたはその還元物を飲食品の製造原料として使用する、起泡および/または泡持ちが向上した飲食品の製造方法。
  8. 飲食品が、ビールテイスト飲料、発泡性アルコール飲料および清涼飲料から選択される、請求項7に記載の製造方法。
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