JP2015222030A - バルブタイミング調整装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】回転位相のロック不良を抑えた高応答性のバルブタイミング調整装置の提供。
【解決手段】バルブタイミング調整装置は、駆動回転体10と従動回転体20とに噛合し、遊星運動することにより駆動回転体10と従動回転体20との間の回転位相を変化させる遊星歯車50と、回転位相の位相端において回転位相の変化を止めるストッパ機構60とを、備える。駆動回転体10は、遊星歯車50が偏心して噛合する歯車部材11と、クランクトルクが伝達されて回転する伝達部材13と、歯車部材11と伝達部材13とを軸方向に接触させて締結する螺子部材とを、有し、歯車部材11は、伝達部材13との締結箇所よりも凹陥することにより伝達部材13との軸方向の接触を制限する段差凹部82を、当該締結箇所から軸方向まわりの周方向にずれた制限箇所Slに形成する。
【選択図】図6

Description

本発明は、内燃機関においてクランク軸からのクランクトルクの伝達によりカム軸が開閉する動弁のバルブタイミングを調整するバルブタイミング調整装置に、関する。
クランク軸及びカム軸とそれぞれ連動回転する駆動回転体及び従動回転体の間の回転位相を、それら回転体に噛合させた遊星歯車の遊星運動により変化させるバルブタイミング調整装置は、従来より知られている。
かかるバルブタイミング調整装置の一種として特許文献1に開示の装置では、回転位相の位相端において回転位相の変化を、ストッパ機構により止めている。そのため、内燃機関の運転に対する応答性を高めるべく、回転位相を高速に変化させてストッパ機構により止める場合には、大きな衝撃力が発生する。ここで駆動回転体は、遊星歯車が偏心して噛合する歯車部材と、クランクトルクが伝達されて回転する伝達部材とを、軸方向に接触させて螺子部材により締結した構造となっている。そのため、大きな衝撃力に耐えるには、当該螺子部材の締結軸力を大きく設定しておく必要がある。
特開2012−237203号公報
さて、特許文献1の開示装置では、回転位相の変化を止めたことで衝撃力が発生すると、歯車部材は、遊星歯車との偏心噛合箇所の近傍では外周側へ歪む一方、当該偏心噛合箇所から軸方向まわりの周方向に離れた箇所では内周側へ歪む。上述したように螺子部材の締結軸力を大きく設定した場合、歯車部材の歪みは解放され難くなるため、衝撃力の発生毎に歯車部材には、歪みが蓄積され易くなる。その結果、歪んだ歯車部材と遊星歯車との噛合状態が解除されずに固持されて、位相端における回転位相のロック不良を招くおそれがあった。こうしたロック不良は、大きな衝撃力を生むような回転位相の高速変化により高い応答性を達成する上において、障壁となっていた。
本発明は、以上説明した問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、回転位相のロック不良を抑えた高応答性のバルブタイミング調整装置を、提供することにある。
上述した課題を解決するために開示された発明は、内燃機関においてクランク軸からのクランクトルクの伝達によりカム軸(2)が開閉する動弁のバルブタイミングを調整するバルブタイミング調整装置(1)において、クランク軸と連動回転する駆動回転体(10)と、カム軸と連動回転する従動回転体(20)と、駆動回転体と従動回転体とに噛合し、遊星運動することにより駆動回転体と従動回転体との間の回転位相を変化させる遊星歯車(50)と、回転位相の位相端(Pa,Pr)において回転位相の変化を止めるストッパ機構(60)とを、備え、駆動回転体は、遊星歯車が偏心して噛合する歯車部材(11)と、クランクトルクが伝達されて回転する伝達部材(13)と、歯車部材と伝達部材とを軸方向に接触させて締結する螺子部材(71)とを、有し、歯車部材は、伝達部材との締結箇所(Ss)よりも凹陥することにより伝達部材との軸方向の接触を制限する段差凹部(82)を、締結箇所から軸方向まわりの周方向にずれた制限箇所(Sl)に形成することを特徴とする。
この発明の歯車部材は、螺子部材による伝達部材との締結箇所から周方向にずれた制限箇所において、段差凹部の形成により締結箇所よりも凹陥することで、薄肉化される。これにより歯車部材では、ストッパ機構により回転位相の変化を止めたことで衝撃力が発生すると、段差凹部を形成する制限箇所に歪みが集中し易くなる。しかし、歯車部材の制限箇所では、段差凹部の凹陥により伝達部材との軸方向接触が制限されることで、衝撃力による歪みが螺子部材の締結軸力によっては保持され難くなる。しかも、歯車部材と伝達部材とが軸方向接触する締結箇所では、歪みの集中し易い制限箇所から周方向に離間した位置関係により、衝撃力で発生する歪み自体が低減され得る。これらによれば、歯車部材の歪みが衝撃力の発生毎に蓄積されて歯車部材と遊星歯車との噛合状態が固持されてしまう事態を、抑止できる。故に、大きな衝撃力を生むような回転位相の高速変化であっても実行し得ることから、回転位相のロック不良を抑えて高い応答性を達成することが可能となる。
また、開示された別の発明は、位相端において遊星歯車が歯車部材に対して偏心する径方向を、偏心方向(Da,Dr)と定義したとき、螺子部材は、偏心方向に位置する制限箇所とは周方向にずれた締結箇所において、歯車部材と伝達部材とを締結する。
この発明によると、ストッパ機構により回転位相変化が止められる位相端の歯車部材においては、遊星歯車が偏心する径方向としての偏心方向に位置する箇所にて、歪みが発生し易くなる。しかし、歯車部材のうち偏心方向に位置する制限箇所には、段差凹部が形成されて薄肉化されるので、発生した歪みを当該制限箇所に集中させ得る。しかも歯車部材では、伝達部材と軸方向接触して締結される締結箇所が制限箇所とは周方向にずれて離間することで、制限箇所を含む偏心方向の歪み箇所から締結箇所までの歪み伝達は低減され得る。これらによれば、歯車部材における歪み蓄積の抑止機能を高めることができるので、ロック不良を抑えた高応答性の達成に貢献可能となる。
一実施形態によるバルブタイミング調整装置を示す図であって、図2のI−I線断面図である。 図1のII−II線断面図である。 図1のIII−III線断面図である。 図3とは異なる作動状態を示す断面図である。 図1の部分拡大図である。 図1の部分拡大図である。 図5の変形例を示す部分拡大図である。 図6の変形例を示す部分拡大図である。 図2の変形例を示す部分拡大図である。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態によるバルブタイミング調整装置1は、車両において内燃機関のクランク軸(図示しない)からカム軸2へクランクトルクを伝達する伝達系に、設置されている。ここでカム軸2は、内燃機関の「動弁」のうち吸気弁(図示しない)をクランクトルクの伝達により開閉する軸であり、装置1は、当該吸気弁のバルブタイミングを調整する。
(基本構成)
以下、装置1の基本構成を説明する。装置1は、電動モータ4、制御系7及び位相調整系8等から構成されている。
図1に示すように電動モータ4は、例えばブラシレスモータ等であり、内燃機関の固定節に固定されるモータケース5と、当該ケース5により正逆回転自在に支持されるモータ軸6とを有している。制御系7は、駆動ドライバ及びその制御用マイクロコンピュータ等から構成されており、モータケース5の外部及び/又は内部に配置されて電動モータ4と電気的に接続されている。制御系7は、電動モータ4への通電を制御することで、モータ軸6を回転駆動する駆動トルクを発生する。
位相調整系8は、駆動回転体10、従動回転体20、遊星キャリア30及び遊星歯車50を備えている。
図1〜3に示すように全体として中空状の駆動回転体10は、位相調整系8の他の構成要素20,30,50を内部に収容している。駆動回転体10は、歯車部材11を伝達部材13及びカバー部材14間に介装した状態にて、それらの部材11,13,14を同軸上に螺子止めしてなる。図1,2に示すように円環板状の歯車部材11は、歯底円の内周側に歯先円を有した駆動側内歯車部12を、周壁部により形成している。
図1,3に示すように円筒状の伝達部材13は、周方向に等間隔をあけた箇所から外周側へと突出する複数のスプロケット歯18を、周壁部により形成している。伝達部材13は、それらスプロケット歯18とクランク軸の複数の歯との間においてタイミングチェーンが掛け渡されることで、クランク軸と連繋する。かかる連繋形態下、クランク軸のクランクトルクがタイミングチェーンを通じて伝達部材13に伝達されるとき、当該伝達部材13を含む駆動回転体10は、クランク軸と連動して周方向の一方(図3の時計方向)に回転する。
有底円筒状の従動回転体20は、伝達部材13の内周側に同軸上に嵌合している。従動回転体20は、カム軸2に同軸上に連結される連結部22を、底壁部により形成している。かかる連結形態の従動回転体20は、カム軸2と連動して駆動回転体10と同一の周方向(図3の時計方向)に回転しつつ、駆動回転体10に対しては遅角方向及び進角方向のいずれにも相対回転可能となっている。
従動回転体20は、歯底円の内周側に歯先円を有した従動側内歯車部24を、周壁部により形成している。従動側内歯車部24の歯数は、駆動側内歯車部12の歯数よりも少なく設定されている。従動側内歯車部24は、駆動側内歯車部12に対して軸方向のカム軸2側へとずれている。
図1〜3に示すように部分偏心円筒状の遊星キャリア30は、伝達部材13及び従動回転体20の内周側からカバー部材14の内周側に跨って、配置されている。遊星キャリア30は、周壁部のうち回転体10,20及びモータ軸6と同軸上の内周面により、円筒面状の入力部31を形成している。入力部31には、継手33と嵌合する嵌合溝32が設けられ、当該継手33を介してモータ軸6が遊星キャリア30と連結されている。かかる連結形態の遊星キャリア30は、モータ軸6と一体となって周方向の一方に正回転又は周方向の他方に逆回転しつつ、駆動側内歯車部12に対しては遅角方向及び進角方向のいずれにも相対回転可能となっている。
遊星キャリア30はさらに、周壁部のうち回転体10,20及びモータ軸6とは偏心する外周面により、円筒面状の支持部34を形成している。支持部34は、遊星ベアリング35を介して、遊星歯車50の内周側に同軸上に嵌合している。かかる嵌合形態の遊星歯車50は、支持部34により支持されることで、駆動側内歯車部12に対する遊星キャリア30の相対回転に従って遊星運動可能となっている。ここで遊星運動とは、遊星歯車50自身の軸方向まわりに自転しつつ、モータ軸6及び遊星キャリア30の正逆回転方向へ公転する、同歯車50の運動をいう。
段付円筒状の遊星歯車50は、歯底円の外周側に歯先円を有した駆動側外歯車部52及び従動側外歯車部54を、周壁部により形成している。駆動側外歯車部52及び従動側外歯車部54の歯数は、それぞれ駆動側内歯車部12及び従動側内歯車部24の歯数よりも同数ずつ少なくなるように、設定されている。駆動側外歯車部52は、歯車部材11の内周側に偏心して配置され、駆動側内歯車部12と遊星運動可能に噛合している。従動側外歯車部54は、駆動側外歯車部52に対して軸方向のカム軸2側へとずれている。従動側外歯車部54は、従動回転体20のうち周壁部の内周側に偏心して配置され、従動側内歯車部24と遊星運動可能に噛合している。
以上の構成により回転体10,20間を歯車連繋してなる位相調整系8は、制御系7により制御されたモータ軸6の回転状態に応じて、駆動回転体10と従動回転体20との間の回転位相(以下、単に「回転位相」という)を調整する。かかる回転位相の調整により、内燃機関の運転状況に適合するバルブタイミング調整が実現される。
具体的には、モータ軸6と共に遊星キャリア30が駆動回転体10と同速に正回転するときには、当該遊星キャリア30が駆動側内歯車部12に対して相対回転しない。その結果、遊星歯車50が遊星運動せずに回転体10,20と連れ回りするので、回転位相が実質的に不変となって、バルブタイミングが保持調整される。一方、モータ軸6と共に遊星キャリア30が駆動回転体10よりも低速に正回転する又は逆回転するときには、当該遊星キャリア30が駆動側内歯車部12に対する遅角方向へ相対回転する。その結果、遊星歯車50が遊星運動して従動回転体20が駆動回転体10に対する遅角方向へ相対回転するので、回転位相が遅角変化して、バルブタイミングが遅角調整される。また一方、モータ軸6と共に遊星キャリア30が駆動回転体10よりも高速に正回転するときには、当該遊星キャリア30が駆動側内歯車部12に対する進角方向へ相対回転する。その結果、遊星歯車50が遊星運動して従動回転体20が駆動回転体10に対する進角方向へ相対回転するので、回転位相が進角変化して、バルブタイミングが進角調整される。
(ストッパ機構)
次に、位相調整系8に設けられているストッパ機構60につき、説明する。
図1,3に示すようにストッパ機構60は、伝達部材13に形成されるストッパ溝62と、従動回転体20に形成されるストッパ突起64とを、組み合わせて構築されている。
具体的にストッパ溝62は、伝達部材13の内周面に開口し、周方向に沿って円弧溝状に延伸している。図3に示すように、ストッパ溝62のうち遅角方向の内端面は、最遅角ストッパ面62rを形成している一方、同溝62のうち進角方向の内端面は、最進角ストッパ面62aを形成している。ストッパ突起64は、従動回転体20の周壁部から外周側へ略扇状に突出している。ストッパ突起64は、ストッパ溝62内に突入した状態にて、回転体10,20の周方向両側に揺動可能となっている。
図3に示すように最遅角ストッパ面62rは、ストッパ溝62内にて遅角方向に揺動したストッパ突起64と当接することで、駆動回転体10に対する従動回転体20の遅角方向への相対回転を止める。これにより回転位相の変化は、遅角方向の位相端(即ち、最遅角位相)Prにて規制される。一方、図4に示すように最進角ストッパ面62aは、ストッパ溝62内にて進角方向に揺動したストッパ突起64と当接することで、駆動回転体10に対する従動回転体20の進角方向への相対回転を止める。このとき回転位相の変化は、進角方向の位相端(即ち、最進角位相)Paにて規制される。
こうした形態下、最遅角ストッパ面62r又は62aとストッパ突起64との当接により発生する衝撃力は、遊星歯車50を介して従動回転体20と連繋する歯車部材11にまで伝達される。このとき、最遅角ストッパ面62r又は62aに対してストッパ突起64が当接するときの相対的な当接速度が増大することで、歯車部材11に作用する衝撃力も増大することになる。
(締結構造)
次に、位相調整系8に設けられている締結構造70につき、説明する。
図1〜4に示すように締結構造70は、周方向に実質等間隔をあけた複数の締結箇所Ssに、それぞれ設けられている。各締結箇所Ssの締結構造70は、上述の金属製部材11,13,14を金属製螺子部材71により締結して駆動回転体10を形成するように、構築されている。
各締結箇所Ssにおいて、各部材11,13,14を軸方向に重ね合わせて共締めしている螺子部材71は、円筒部72、雄螺子部73及び頭部74を一体に有している。具体的には、図1,5に示すように円筒部72は、互いに軸方向に接触する歯車部材11及びカバー部材14をいずれも貫通する通し孔75(図2も参照)に、挿通されている。雄螺子部73は、カバー部材14とは反対側において歯車部材11と軸方向に接触する伝達部材13のうち、当該伝達部材13を貫通する雌螺子孔76(図3も参照)に、螺合している。頭部74は、雄螺子部73と螺合した伝達部材13との間に、歯車部材11及びカバー部材14を挟持している。こうした形態に締結構造70が構築されていることで、各締結箇所Ssにおける歯車部材11と伝達部材13との接触界面には、それぞれ螺子部材71により発生する軸力が継続的に印加された状態となる。
(制限構造)
次に、位相調整系8に設けられている制限構造80につき、説明する。
図1,2に示すように制限構造80は、歯車部材11の周方向における複数箇所Sl、本実施形態では各締結箇所Ss間の制限箇所Slに、それぞれ設けられている。各制限箇所Slの制限構造80は、段差凹部82及び貫通孔部84を組み合わせて構築されている。
具体的には、図2,5,6に示すように段差凹部82は、歯車部材11の周壁部により、駆動側内歯車部12の外周側に形成されている。段差凹部82は、歯車部材11の軸方向両面のうち、周方向両側の締結箇所Ssにおいて伝達部材13と軸方向接触している側の接触面111よりも、当該伝達部材13とは反対側に凹陥している。軸方向において段差凹部82の深さは、歯車部材11の厚さよりも小さい。段差凹部82は、周方向両側の締結箇所Ss間に跨って円弧溝状に延伸している。こうした形態により、図2に示す段差凹部82は、各位相端Pr,Paでの偏心方向Dr,Daに位置するように配置された状態下、歯車部材11と伝達部材13との軸方向接触を周方向両側の締結箇所Ss間にて制限している。
ここで偏心方向Drは、歯車部材11の径方向のうち、図3に示す遅角方向の位相端Prにおいて遊星歯車50が歯車部材11に対して偏心する方向である。また、偏心方向Daは、歯車部材11の径方向のうち、図4に示す進角方向の位相端Paにおいて遊星歯車50が歯車部材11に対して偏心する方向である。さらに図2に示すように、これらの偏心方向Da,Drに段差凹部82を位置させている制限箇所Slは、周方向において両側締結箇所Ssのいずれからもずれるように、設定されている。
図2,5に示すように貫通孔部84は、歯車部材11の周壁部により、段差凹部82の外周側に形成されている。貫通孔部84は、歯車部材11のうち段差凹部82の底面83から伝達部材13とは反対側へ軸方向に貫通することで、当該歯車部材11の外周縁部を除肉している。貫通孔部84は、周方向両側の締結箇所Ss間のうち所定範囲を円弧孔状に延伸している。こうした形態により貫通孔部84も、各位相端Pr,Paでの偏心方向Dr,Daに位置するように配置され、歯車部材11と伝達部材13との軸方向接触を周方向両側の締結箇所Ss間にて制限している。故に、貫通孔部84が段差凹部82と径方向に隣接形成された制限箇所Slにおいて、周方向両側の締結箇所Ssに設けられた螺子部材71の軸力は、歯車部材11と伝達部材13との間には印加されない状態となる。
(潤滑構造)
次に、位相調整系8に設けられている潤滑構造90につき、説明する。
図1に示すように潤滑構造90は、「潤滑液」として内燃機関からエンジンオイルが導入される収容室92に、導入入口94を組み合わせて構築されている。
具体的に従動回転体20は、連結部22を貫通することで駆動回転体10内部の収容室92に開口する導入入口94を、形成している。導入入口94は、内燃機関においてクランク軸のクランクトルクにより駆動されるメカポンプ9の吐出口に、カム軸2の導入通路2aを介して連通している。こうした形態により内燃機関の運転中は、内燃機関のメカポンプ9から導入通路2aへ吐出されるエンジンオイルは、導入入口94を通じて収容室92に導入される。さらに、収容室92に導入されたエンジンオイルは、従動側内歯車部24と従動側外歯車部54との噛合箇所Sef及び駆動側内歯車部12と駆動側外歯車部52との噛合箇所Sed等へ順次供給される。その結果として駆動回転体10の内部では、それら各噛合箇所が潤滑されることになる。
ここで図5,6に示すように、各制限箇所Slの段差凹部82よりも内周側となる箇所では、歯車部材11のうち接触面111よりも軸方向に突出する円環状の突出部110が伝達部材13の内周面130に嵌合している。かかる嵌合形態により駆動回転体10内部の収容室92は、外部に対して周方向の全域に亘ってシールされている。
(作用効果)
以上説明した装置1の作用効果を、以下に説明する。
装置1の歯車部材11は、螺子部材71による伝達部材13との締結箇所Ssから周方向にずれた制限箇所Slにおいて、段差凹部82の形成により締結箇所Ssよりも凹陥することで、薄肉化される。これにより歯車部材11では、ストッパ機構60により回転位相の変化を止めたことで衝撃力が発生すると、段差凹部82を形成する制限箇所Slに歪みが集中し易くなる。しかし、歯車部材11の制限箇所Slでは、段差凹部82の凹陥により伝達部材13との軸方向接触が制限されることで、衝撃力による歪みが螺子部材71の締結軸力によっては保持され難くなる。しかも、歯車部材11と伝達部材13とが軸方向接触する締結箇所Ssでは、歪みの集中し易い制限箇所Slから周方向に離間した位置関係により、衝撃力で発生する歪み自体が低減され得る。これらによれば、歯車部材11の歪みが衝撃力の発生毎に蓄積されて歯車部材11と遊星歯車50との噛合状態が固持されてしまう事態を、抑止できる。故に、大きな衝撃力を生むような回転位相の高速変化であっても実行し得ることから、回転位相のロック不良を抑えて高い応答性を達成することが可能となる。
さらに装置1によると、ストッパ機構60により回転位相変化が止められる位相端Pr,Paの歯車部材11においては、遊星歯車50が偏心する径方向としての偏心方向Dr,Daに位置する箇所にて、歪みが発生し易くなる。しかし、歯車部材11のうち偏心方向Dr,Daに位置する制限箇所Slには、段差凹部82が形成されて薄肉化されるので、発生した歪みを当該制限箇所Slに集中させ得る。しかも歯車部材11では、伝達部材13と軸方向接触して締結される締結箇所Ssが制限箇所Slとは周方向にずれて離間することで、制限箇所Slを含む偏心方向Dr,Daの歪み箇所から締結箇所Ssまでの歪み伝達は低減され得る。これらによれば、歯車部材11における歪み蓄積の抑止機能を高めることができるので、ロック不良を抑えた高応答性の達成に貢献可能となる。
加えて装置1によると、歯車部材11の周方向では、それぞれ個別の螺子部材71により歯車部材11及び伝達部材13が締結される箇所として等間隔に設定された締結箇所Ssの間にて、制限箇所Slの段差凹部82が凹陥形成されるので、重さが偏り難くなる。これによれば、歯車部材11の回転時に発生するアンバランスを低減して、当該アンバランスに起因する回転位相の変化速度の低下、ひいては応答性の低下を抑えることが可能となる。
また加えて装置1によると、歯車部材11の制限箇所Slでは、軸方向に貫通する貫通孔部84が段差凹部82の外周側に形成されることで、歯車部材11と伝達部材13との接触制限がそれら貫通孔部84と段差凹部82との協働により果たされ得るのみならず、剛性が可及的に下げられ得る。その結果、接触制限による歪み保持の解消と、低剛性となる制限箇所への歪み集中とにより、歪み蓄積の抑止機能を高めることができるので、ロック不良を抑えた高応答性の達成に貢献可能となる。
さらに加えて装置1によると、駆動回転体10の内部にて遊星歯車50との噛合箇所Sedがエンジンオイルで潤滑される歯車部材11は、段差凹部82よりも内周側にて伝達部材13と嵌合することで、シール状態を当該内部の周方向全域に亘って実現している。これによれば、ロック不良を抑えた高応答性を達成するために歯車部材11と伝達部材13とを軸方向に離間させる段差凹部82を通じて、それら部材11,13を締結してなる駆動回転体10の内部からエンジンオイルが漏れる事態についても、抑止可能となる。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、当該実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
具体的に変形例1では、図7,8に示すように、段差凹部82及び貫通孔部84の少なくとも一方(同図は両方の例)を、歯車部材11と共に伝達部材13にも設けてもよい。また、変形例2では、図9に示すように、貫通孔部84を歯車部材11に設けなくてもよい。
変形例3では、偏心方向Dr,Daの少なくとも一方に、締結箇所Ssを設定してもよい。また、変形例4では、周方向において複数の締結箇所Ssを不等間隔に、設定してもよい。
変形例5では、部材11,13同士の嵌合によるシール状態を、段差凹部82よりも内周側のうち周方向の一部において実現しない構成を、採用してもよい。また、変形例6では、「動弁」としての排気弁のバルブタイミングを調整する装置に、本発明を適用してもよい。
1 バルブタイミング調整装置、2 カム軸、10 駆動回転体、11 歯車部材、13 伝達部材、20 従動回転体、50 遊星歯車、60 ストッパ機構、62 ストッパ溝、62a 最進角ストッパ面、62r 最遅角ストッパ面、64 ストッパ突起、70 締結構造、71 螺子部材、72 円筒部、73 雄螺子部、74 頭部、75 通し孔、76 雌螺子孔、80 制限構造、82 段差凹部、83 底面、84 貫通孔部、90 潤滑構造、92 収容室、94 導入入口、110 突出部、111 接触面、130 内周面、Da,Dr 偏心方向、Pa,Pr 位相端、Sed,Sef 噛合箇所、Sl 制限箇所、Ss 締結箇所

Claims (5)

  1. 内燃機関においてクランク軸からのクランクトルクの伝達によりカム軸(2)が開閉する動弁のバルブタイミングを調整するバルブタイミング調整装置(1)において、
    前記クランク軸と連動回転する駆動回転体(10)と、
    前記カム軸と連動回転する従動回転体(20)と、
    前記駆動回転体と前記従動回転体とに噛合し、遊星運動することにより前記駆動回転体と前記従動回転体との間の回転位相を変化させる遊星歯車(50)と、
    前記回転位相の位相端(Pa,Pr)において前記回転位相の変化を止めるストッパ機構(60)とを、備え、
    前記駆動回転体は、
    前記遊星歯車が偏心して噛合する歯車部材(11)と、
    前記クランクトルクが伝達されて回転する伝達部材(13)と、
    前記歯車部材と前記伝達部材とを軸方向に接触させて締結する螺子部材(71)とを、有し、
    前記歯車部材は、前記伝達部材との締結箇所(Ss)よりも凹陥することにより前記伝達部材との前記軸方向の接触を制限する段差凹部(82)を、前記締結箇所から前記軸方向まわりの周方向にずれた制限箇所(Sl)に形成することを特徴とするバルブタイミング調整装置。
  2. 前記位相端において前記遊星歯車が前記歯車部材に対して偏心する径方向を、偏心方向(Da,Dr)と定義したとき、
    前記螺子部材は、前記偏心方向に位置する前記制限箇所とは前記周方向にずれた前記締結箇所において、前記歯車部材と前記伝達部材とを締結することを特徴とする請求項1に記載のバルブタイミング調整装置。
  3. 前記周方向に等間隔に設定される複数の前記締結箇所では、それぞれ個別の前記螺子部材により、前記歯車部材と前記伝達部材とが締結され、
    前記制限箇所の前記段差凹部は、前記周方向において各前記締結箇所の間に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のバルブタイミング調整装置。
  4. 前記歯車部材は、前記軸方向に貫通することにより前記歯車部材と前記伝達部材との接触を制限する貫通孔部(84)を、前記制限箇所のうち前記段差凹部の外周側に形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
  5. 前記駆動回転体のうち前記歯車部材が前記遊星歯車と噛合する内部には、当該噛合の箇所(Sed)を潤滑する潤滑液が導入され、
    前記歯車部材と前記伝達部材とは、前記段差凹部よりも内周側において互いに嵌合することにより、前記駆動回転体の内部を前記周方向の全域に亘ってシールすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。


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