JP5987868B2 - バルブタイミング調整装置 - Google Patents

Description

本発明は、バルブタイミング調整装置に関する。

従来、クランク軸と連動して回転する駆動側回転体に対して、カム軸と連動して回転する従動側回転体を相対回転させることによって、カム軸が開閉駆動するバルブのバルブタイミングを調整するバルブタイミング調整装置が知られている。特許文献１には、ボルトにより駆動側回転体に締結された太陽歯車と、太陽歯車の内歯部に噛み合う遊星歯車とを備え、遊星歯車の遊星運動によって従動側回転体を相対回転させるように構成されたバルブタイミング調整装置が開示されている。特許文献１では、駆動軸回転体と太陽歯車とを圧入することによって、駆動軸回転体に対する太陽歯車の軸ずれ防止を図っている。

特開２００９−１８５７８６号公報

ところで、特許文献１では、太陽歯車の内歯部に対して径方向外側で軸方向へ突き出す圧入用突起の内側に駆動側回転体が圧入されている。これに対し、例えば駆動側回転体の外壁のスプロケットの軸方向位置が太陽歯車側に寄せるように設定される場合などには、駆動側回転体と太陽歯車との嵌合関係を逆転させる必要がある。つまり、駆動側回転体から軸方向へ突き出す圧入用突起の内側に太陽歯車を圧入する必要がある。

しかしながら、上述のように駆動側回転体と太陽歯車との嵌合関係を逆転させると、組み付け時において、ボルトによる軸方向圧縮力を受けて太陽歯車が径方向へ拡大するように変形する際、外側への変形が駆動側回転体の圧入用突起により阻害されるため、内側へより多く変形するようになる。そのため、太陽歯車の内歯部が内側に歪むことに起因して摩耗および異音が発生し、性能・耐久性が低下するおそれがある。
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、性能・耐久性の低下を抑制しつつ太陽歯車の軸ずれを抑制可能なバルブタイミング調整装置を提供することである。

本発明によるバルブタイミング調整装置は、第１回転体と、第２回転体と、太陽歯車と、締結部材と、遊星歯車と、回転伝達手段とを備えている。
第１回転体は、燃機関の駆動軸および従動軸の一方に連動して回転可能である。第２回転体は、駆動軸および従動軸の他方に連動して回転可能である。太陽歯車は、第１回転体と同軸上に位置する内歯部を有している。締結部材は、内歯部に対して径方向外側で太陽歯車と第１回転体とを締結している。遊星歯車は、内歯部に噛み合いつつ遊星運動可能である。回転伝達手段は、遊星歯車が遊星運動するとき当該遊星歯車の自転を第２回転体に伝達することによって、第１回転体に対する第２回転体の回転位相を変化させる。

本発明は特に太陽歯車に特徴がある。太陽歯車は、周方向において各締結部材間で第１回転体に圧入されている圧入部と、周方向において締結部材と重なる箇所で径方向外側に所定の空間が隣接するように設けられている開放部と、を有している。

組み付け時において、締結部材による軸方向圧縮力を受けて太陽歯車が径方向へ拡大するように変形する際、その変形は、主に締結部材周辺、すなわち周方向において締結部材と重なる箇所で起こる。本発明では、周方向において締結部材と重なる箇所は開放部であり、この開放部に対して径方向外側には所定の空間がある。そのため、軸方向圧縮力を受けた太陽歯車の締結部材周辺の肉が上記空間に逃げるように外側に変形することで、内側への変形を抑制することができる。そのため、太陽歯車の内歯部が内側に歪むことを抑制し、摩耗および異音の発生を抑制することができる。

また、太陽歯車のうち変形の生じ難い各締結部材間の圧入部が第１回転体に圧入されている。
したがって、本発明によれば、性能・耐久性の低下を抑制しつつ太陽歯車の軸ずれを抑制可能である。

本発明の一実施形態によるバルブタイミング調整装置を説明する断面図である。 図１のＩＩ−ＩＩ線断面図である。 図１のＩＩＩ−ＩＩＩ線断面図である。 図１のＩＶ−ＩＶ線断面図である。

以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づき説明する。実施形態同士で実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
＜一実施形態＞
本発明の一実施形態によるバルブタイミング調整装置を図１に示す。バルブタイミング調整装置１０は、内燃機関９０のクランク軸９１に対しカム軸９２を相対回転させることによって、カム軸９２が開閉駆動する図示しない吸気弁のバルブタイミングを調整するものであり、クランク軸９１からカム軸９２までの回転伝達経路に設けられている。クランク軸９１は、特許請求の範囲に記載の「駆動軸」に相当する。カム軸９２は、特許請求の範囲に記載の「従動軸」に相当する。吸気弁は、特許請求の範囲に記載の「バルブ」に相当する。

［全体構成］
先ず、バルブタイミング調整装置１０の全体構成について図１〜図４を参照して説明する。
バルブタイミング調整装置１０は、モータ９３により駆動される電動式であり、駆動側回転体２０、太陽歯車２５、従動側回転体３０、ボルト３５、偏心軸４０および遊星回転体４５を備えている。モータ９３は、カム軸９２の延長上に設けられ、例えば図示しないチェーンカバーに固定される。

駆動側回転体２０は、有底筒状に形成されており、カム軸９２に嵌合している円板状の底部２１と、底部２１から軸方向へ突き出す筒部２２と、筒部２２のうち底部２１とは反対側の端部から外側に突き出しているスプロケット２３とを有している。駆動側回転体２０は、筒部２２と底部２１とを軸方向へ貫通している複数のねじ穴２４を有している。スプロケット２３は、チェーン９４によってクランク軸９１に回転伝達可能に連結されている。駆動側回転体２０は、クランク軸９１に連動して回転可能であり、特許請求の範囲に記載の「第１回転体」に相当する。

太陽歯車２５は、有底筒状に形成されており、筒部２２に対して底部２１とは反対側で駆動側回転体２０と同軸上に位置している筒状の第１内歯部２６と、第１内歯部２６のうち駆動側回転体２０とは反対側に位置している円板状の底部２７とを有している。底部２７の内側には軸受２８が設けられている。太陽歯車２５は、第１内歯部２６と底部２７とを軸方向へ貫通する複数の通孔２９を有している。第１内歯部２６は、特許請求の範囲に記載の「内歯部」に相当する。

従動側回転体３０は、有底筒状に形成されており、ボルト３１によりカム軸９２の端部に締結されている円板状の底部３２と、底部３２から軸方向へ突き出すとともに駆動側回転体２０と同軸上に位置している筒状の第２内歯部３３とを有している。従動側回転体３０は、駆動側回転体２０の筒部２２に収容されている。また、従動側回転体３０は、カム軸９２に連動して回転可能であり、特許請求の範囲に記載の「第２回転体」に相当する。

ボルト３５は、特許請求の範囲に記載の「締結部材」に相当し、太陽歯車２５に対して駆動側回転体２０とは反対側から通孔２９に挿入されて駆動側回転体２０のねじ穴２４にねじ込まれており、第１内歯部２６に対して径方向外側で太陽歯車２５と駆動側回転体２０とを締結している。本実施形態では、ボルト３５、通孔２９およびねじ穴２４は４つずつ設けられている。本実施形態では、各ボルト３５は、周方向で等間隔に設けられている。

偏心軸４０は、太陽歯車２５および駆動側回転体２０の軸心ＡＸ１上に設けられ、軸受２８を介して太陽歯車２５により軸心ＡＸ１まわりに回転可能に支持されている。偏心軸４０のうち駆動側回転体２０側の端部は、軸心ＡＸ１に対し偏心する偏心部４１を形成している。偏心部４１の外側には、軸受４２が設けられている。偏心軸４０は、連結部材９５によってモータ９３のモータ軸９６に回転伝達可能に連結されている。

遊星回転体４５は、段付筒状であり、第１内歯部２６と噛み合っている第１遊星歯車４６と、第２内歯部３３と噛み合っている第２遊星歯車４７とを有している。遊星回転体４５は、偏心部４１の軸心である偏心軸心ＡＸ２上に設けられ、軸受４２を介して偏心部４１により遊星運動可能に支持されている。遊星運動とは、偏心軸心ＡＸ２まわりに自転しつつ軸心ＡＸ１まわりに公転する運動のことである。第１遊星歯車４６は第１内歯部２６よりも歯数が少なく、また第２遊星歯車４７は第２内歯部３３よりも歯数が少ない。第１遊星歯車４６は、特許請求の範囲に記載の「遊星歯車」に相当する。

以上のように構成されたバルブタイミング調整装置１０では、クランク軸９１に対するカム軸９２の回転位相が目標値よりも遅角側である場合、モータ９３によって偏心軸４０が駆動側回転体２０および太陽歯車２５に対して高速回転させられる。つまり、偏心軸４０が駆動側回転体２０および太陽歯車２５に対して進角側に相対回転させられる。このとき、偏心軸４０の回転は、遊星回転体４５が遊星運動することによって減速してカム軸９２に伝達される。これにより、吸気バルブのバルブタイミングが進角される。第２遊星歯車４７および第２内歯部３３は、第１遊星歯車４６が遊星運動するとき当該第１遊星歯車４６の自転を減速して従動側回転体３０に伝達する「回転伝達手段」を構成している。

また、カム軸９２の回転位相が目標値よりも進角側である場合、モータ９３によって偏心軸４０が駆動側回転体２０および太陽歯車２５に対して低速回転させられる。つまり、偏心軸４０が駆動側回転体２０および太陽歯車２５に対して遅角側に相対回転させられる。このとき、偏心軸４０の回転は、遊星回転体４５が遊星運動することによって減速してカム軸９２に伝達される。これにより、吸気バルブのバルブタイミングが遅角される。
また、カム軸９２の回転位相が目標値と一致する場合、偏心軸４０が駆動側回転体２０および太陽歯車２５と同速回転させられる。このとき、遊星回転体４５は、遊星運動せず、駆動側回転体２０および従動側回転体３０と一体に回転する。これにより、吸気バルブのバルブタイミングが保持される。

［特徴構成］
次に、バルブタイミング調整装置１０の特徴構成について図１〜図３を参照して説明する。
図１および図２に示すように、駆動側回転体２０の筒部２２は、各ボルト３５間で太陽歯車２５側に突き出す複数の圧入用突起５１を有している。本実施形態では、圧入用突起５１は、各ボルト３５間に１つずつ設けられている。各圧入用突起５１は、周方向で等間隔に設けられている。

太陽歯車２５の第１内歯部２６は、周方向において各ボルト３５間で圧入用突起５１に圧入されている圧入部５２と、周方向においてボルト３５と重なる箇所で径方向外側に所定の空間５３が隣接するように設けられている開放部５４とを有する。
通孔２９は、開放部５４に対応する箇所で径方向外側に開口している。また、通孔２９は、軸心ＡＸ１を中心とするピッチ円５５上に配置されている。圧入部５２の圧入面５６の外径Ｄ１はピッチ円５５の直径Ｄ２と同じである。

図３に示すように、従動側回転体３０の第２内歯部３３は、径方向内側に凹む凹部５７を外壁に有している。そして、駆動側回転体２０の筒部２２は、径方向内側に突き出して凹部５７に挿入され、周方向において凹部５７と係合することによって駆動側回転体２０に対する従動側回転体３０の相対回転を所定角度範囲で規制可能なストッパ５８を有している。本実施形態では、凹部５７およびストッパ５８は、４つずつ設けられている。ねじ穴２４は、周方向においてストッパ５８と重なる箇所に形成されている。

［効果］
以上説明したように、本実施形態では、太陽歯車２５は、周方向において各ボルト３５間で駆動側回転体２０の圧入用突起５１に圧入されている圧入部５２と、周方向においてボルト３５と重なる箇所で径方向外側に所定の空間５３が隣接するように設けられている開放部５４とを有している。

組み付け時において、ボルト３５による軸方向圧縮力を受けて太陽歯車２５が径方向へ拡大するように変形する際、その変形は、主にボルト３５周辺、すなわち周方向においてボルト３５と重なる箇所で起こる。本実施形態では、周方向においてボルト３５と重なる箇所は開放部５４であり、この開放部５４に対して径方向外側には所定の空間５３がある。そのため、軸方向圧縮力を受けた太陽歯車２５のボルト３５周辺の肉が上記空間５３に逃げるように外側に変形することで、内側への変形を抑制することができる。そのため、太陽歯車２５の第１内歯部２６が内側に歪むことを抑制し、摩耗および異音の発生を抑制することができる。

また、太陽歯車２５のうち変形の生じ難い各ボルト３５間の圧入部５２が駆動側回転体２０に圧入されている。
したがって、本実施形態によれば、性能・耐久性の低下を抑制しつつ太陽歯車２５の軸ずれを抑制可能である。

また、本実施形態では、ボルト３５が挿通している太陽歯車２５の通孔２９は、開放部５４に対応する箇所で径方向外側に開口している。
そのため、軸方向圧縮力を受けた太陽歯車２５のボルト３５周辺の肉を、より一層、外側に変形させることができる。

また、本実施形態では、通孔２９は、太陽歯車２５の軸心ＡＸ１を中心とするピッチ円５５上に配置されている。そして、圧入部５２の圧入面５６の外径Ｄ１はピッチ円５５の直径Ｄ２と同じである。
これにより、通孔２９を開放部５４に対応する箇所で径方向外側に開口させることができる。

ここで、通孔２９の一部が径方向外側に開口すると、駆動側回転体２０および太陽歯車２５からなるハウジングの剛性が低下する懸念がある。
これに対して、本実施形態では、ねじ穴２４は、周方向においてストッパ５８と重なる箇所に形成されている。
これにより、ねじ穴２４周辺の肉厚を確保してハウジングの剛性低下を抑制し、ボルト３５の軸力を確保することができる。また、ねじ穴２４を径方向内側に設定することができ、バルブタイミング調整装置１０の体格を径方向へ小型化することができる。

＜他の実施形態＞
本発明の他の実施形態では、駆動側回転体の圧入用突起は、周方向で連続するように筒状に形成されてもよい。この場合、筒状の圧入用突起の内壁には、太陽歯車の開放部に対応する箇所に溝が形成される。これにより、開放部は、径方向外側に所定の空間が隣接するように設けられる。
本発明の他の実施形態では、太陽歯車の圧入部の圧入面の外径はピッチ円の直径より大きくてもよいし、小さくてもよい。
本発明の他の実施形態では、太陽歯車の通孔は、開放部に対応する箇所で径方向外側に開口していなくてもよい。
本発明の他の実施形態では、太陽歯車の第１内歯部と底部とは、別部材から構成されてもよい。

本発明の他の実施形態では、ボルトに変えて、例えばリベット等の他の締結部材が設けられてもよい。
本発明の他の実施形態では、バルブタイミング調整装置は、内燃機関の排気弁のバルブタイミングを調整するものであってもよい。
本発明の他の実施形態では、バルブタイミング調整装置は、クランク軸と同軸上に設けられてもよい。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。

１０・・・バルブタイミング調整装置
２０・・・駆動側回転体（第１回転体）
２６・・・第１内歯部（内歯部）
２５・・・太陽歯車
３０・・・従動側回転体（第２回転体）
３３・・・第２内歯部（回転伝達手段）
３５・・・ボルト（締結部材）
４６・・・第１遊星歯車（遊星歯車）
４７・・・第２遊星歯車（回転伝達手段）
５２・・・圧入部
５３・・・空間
５４・・・開放部

Claims (4)

1. 内燃機関（９０）の駆動軸（９１）から従動軸（９２）までの回転伝達経路に設けられ、前記従動軸が開閉駆動するバルブのバルブタイミングを調整するバルブタイミング調整装置（１０）であって、
   前記駆動軸および前記従動軸の一方に連動して回転可能な第１回転体（２０）と、
   前記駆動軸および前記従動軸の他方に連動して回転可能な第２回転体（３０）と、
   前記第１回転体と同軸上に位置する内歯部（２６）を有している太陽歯車（２５）と、
   前記内歯部に対して径方向外側で前記太陽歯車と前記第１回転体とを締結している締結部材（３５）と、
   前記内歯部に噛み合いつつ遊星運動可能な遊星歯車（４６）と、
   前記遊星歯車が遊星運動するとき当該遊星歯車の自転を前記第２回転体に伝達することによって、前記第１回転体に対する前記第２回転体の回転位相を変化させる回転伝達手段（３３、４７）と、
   を備え、
   前記太陽歯車は、周方向において各前記締結部材間で前記第１回転体に圧入されている圧入部（５２）と、周方向において前記締結部材と重なる箇所で径方向外側に所定の空間（５３）が隣接するように設けられている開放部（５４）と、を有することを特徴とするバルブタイミング調整装置。
2. 前記太陽歯車は、前記締結部材が挿通している通孔（２９）を有し、
   前記通孔は、前記開放部に対応する箇所で径方向外側に開口していることを特徴とする請求項１に記載のバルブタイミング調整装置。
3. 前記通孔は、前記太陽歯車の軸心（ＡＸ１）を中心とするピッチ円（５５）上に配置され、
   前記圧入部の圧入面（５６）の外径（Ｄ１）は前記ピッチ円の直径（Ｄ２）と同じであることを特徴とする請求項２に記載のバルブタイミング調整装置。
4. 前記締結部材は、前記太陽歯車を挿通して前記第１回転体にねじ込まれているボルトであり、
   前記第２回転体は、径方向内側に凹む凹部（５７）を外壁に有し、
   前記第１回転体は、前記第２回転体を収容している筒部（２２）を有し、
   前記筒部は、径方向内側に突き出して前記凹部に挿入され、周方向において前記凹部と係合することによって前記第１回転体に対する前記第２回転体の相対回転を規制可能なストッパ（５８）と、周方向において前記ストッパと重なる箇所に形成され、前記締結部材がねじ込まれているねじ穴（２４）と、を有していることを特徴とする請求項１〜３のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。

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