JP2015220335A - 希土類磁石、及び希土類磁石の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い残留磁束密度と保磁力を有する希土類磁石及びその製造方法を提供する。
【解決手段】希土類元素R、Fe及びBを含有するR−Fe−B系合金を熱間塑性加工して製造された希土類磁石であって、Rを32質量%以上37質量%以下、Bを1.1質量%以上1.5質量%以下含有する組成を有し、RFe14B化合物の主相11と、主相の結晶粒界に存在して主相よりもRの濃度が高い粒界相とを含む組織を有し、主相の平均結晶粒径が500nm以下であり、残留磁束密度Brが1.15T以上で、保磁力iHcが1200kA/m以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は、希土類磁石、及び希土類磁石の製造方法に関する。特に、熱間加工希土類磁石に関する。
モータや発電機などの用途に、希土類元素(R)、鉄(Fe)及びホウ素(B)を含有し、RFe14B化合物を主相とするR−Fe−B系合金を用いた希土類磁石(R−Fe−B系磁石)が広く利用されている。R−Fe−B系磁石を構成するR−Fe−B系合金は、磁性相であるRFe14B化合物の主相と、主相の結晶粒界(主相と主相との間)に主相よりもRの濃度が高い粒界相とを含む組織を有する。R−Fe−B系磁石としては、RとしてNdを選択したNd−Fe−B系磁石(ネオジム磁石)が代表的である。
R−Fe−B系磁石の種類としては、R−Fe−B系合金の粉末を焼結した焼結磁石や、合金粉末をバインダ樹脂で固化したボンド磁石が主流である。その他、R−Fe−B系合金を熱間塑性加工した熱間加工磁石が開発されている(特許文献1〜3を参照)。
一般に、熱間加工磁石は、R−Fe−B系合金の粉末を冷間プレスにより予備成形し、熱間プレスにより圧縮成形した後、この粉末成形体を熱間塑性加工することで製造される。熱間加工磁石の特徴は、熱間塑性加工によって主相の結晶粒が加圧方向に圧縮されて塑性変形すると同時に、結晶粒のc軸が加圧方向に配向することにより、異方性が発現する。特許文献1〜3には、熱間成形したR−Fe−B系合金の粉末成形体を磁石素材とし、これを熱間で後方押出し加工により円筒状に加工することで、ラジアル方向に異方性を有する異方性磁石が得られることが開示されている。
特開2011−42837号公報 特開平11−329810号公報 特開平9−129465号公報
R−Fe−B系磁石の磁気特性の更なる向上が望まれている。特に、高磁力と高耐熱性を実現する観点から、残留磁束密度Brと保磁力iHcの向上が求められている。
R−Fe−B系磁石において、主相の結晶粒の配向性を上げるほど、異方性が向上し、残留磁束密度を高めることができる。また、一般に、結晶粒が微細であるほど、保磁力を高めることができ、耐熱性が向上することが知られている。
熱間加工磁石の場合、熱間塑性加工の加工度を大きくすることで、圧縮応力によって結晶粒の配向を促進させ、c軸の配向性を上げることが考えられる。しかしながら、加工度を大きくすると、塑性変形によって結晶粒がc軸と垂直な方向(a軸の方向)に伸長して結晶粒のアスペクト比が大きくなるため、形状異方性が強くなり、c軸配向(結晶磁気異方性)による異方性向上効果が低下する他、保磁力も低下する虞がある。また、加工度を大きくすると、局所的に過剰加工や加工不足が発生し易いため、歩留りが悪化する虞がある。更に、加工度を大きくするには、加工温度を高くする必要があるが、加工温度を高くすると、結晶粒の粒成長が生じ、保磁力が低下する。逆に、加工温度を低くすると、加工度を小さくする必要があり、c軸配向が不十分となるため、残留磁束密度が低下する。つまり、残留磁束密度と保磁力とは、トレードオフの関係にある。したがって、従来の熱間加工磁石の技術では、残留磁束密度と保磁力を同時に向上させることが難しい。よって、保磁力を低下させずに、残留磁束密度を向上させる技術の開発が要望されている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的の1つは、高い残留磁束密度と保磁力を有する希土類磁石を提供することにある。本発明の別の目的は、高い残留磁束密度と保磁力を有する希土類磁石を得ることができる希土類磁石の製造方法を提供することにある。
本発明の一態様に係る希土類磁石は、希土類元素R、Fe及びBを含有するR−Fe−B系合金を熱間塑性加工して製造されたものである。本発明の希土類磁石は、前記Rを32質量%以上37質量%以下、前記Bを1.1質量%以上1.5質量%以下含有する組成を有する。また、本発明の希土類磁石は、RFe14B化合物の主相と、前記主相の結晶粒界に存在して前記主相よりも前記Rの濃度が高い粒界相とを含む組織を有し、前記主相の平均結晶粒径が500nm以下である。そして、本発明の希土類磁石は、残留磁束密度Brが1.15T以上で、保磁力iHcが1200kA/m以上である。
本発明の一態様に係る希土類磁石の製造方法は、希土類元素R、Fe及びBを含有するR−Fe−B系合金を熱間塑性加工する製造方法であり、以下の磁石素材準備工程と、熱間加工工程と、を備える。
磁石素材準備工程:前記Rを32質量%以上37質量%以下、前記Bを1.1質量%以上1.5質量%以下含有する組成を有し、RFe14B化合物を主相とするR−Fe−B系合金の粉末を圧縮成形して得られ、前記主相の平均結晶粒径が500nm以下である前記R−Fe−B系合金の粉末成形体を磁石素材として用意する工程。
熱間加工工程:前記磁石素材を、675℃以上800℃以下の温度で熱間塑性加工する工程。
そして、前記熱間加工工程では、前記磁石素材を前記熱間塑性加工する際に、前記主相の結晶粒が塑性変形によって伸長する方向と平行に3T以上の磁場を印加する。
上記希土類磁石は、高い残留磁束密度と保磁力を有する。上記希土類磁石の製造方法は、高い残留磁束密度と保磁力を有する希土類磁石を得ることができる。
実施形態に係る希土類磁石の製造方法の一例を説明する図である。 実施形態に係る希土類磁石の製造方法における結晶粒の配向メカニズムを説明する図である。
本発明者らは、R−Fe−B系熱間加工磁石において、保磁力を低下させずに、残留磁束密度を向上させる技術について鋭意研究を重ねた。その結果、主相の結晶粒が塑性変形によって伸長する方向と平行に磁場を印加した状態で熱間塑性加工することで、磁場によってc軸の配向性を高めることができ、残留磁束密度を改善できることを見出した。つまり、熱間塑性加工の加工温度を低くして加工度を小さくしても、残留磁束密度の向上を図ることができる。そして、磁場中で熱間塑性加工することにより、高い残留磁束密度と保磁力を有し、高磁力と高耐熱性を兼ね備える希土類磁石が得られるとの知見を得た。以上の知見に基づいて、本発明者らは本発明を完成するに至った。
[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)実施形態に係る希土類磁石は、希土類元素R、Fe及びBを含有するR−Fe−B系合金を熱間塑性加工して製造されたものである。この希土類磁石は、Rを32質量%以上37質量%以下、Bを1.1質量%以上1.5質量%以下含有する組成を有する。また、この希土類磁石は、RFe14B化合物の主相と、主相の結晶粒界に存在して主相よりもRの濃度が高い粒界相とを含む組織を有し、主相の平均結晶粒径が500nm以下である。そして、この希土類磁石は、残留磁束密度Brが1.15T以上で、保磁力iHcが1200kA/m以上である。
上記希土類磁石は、残留磁束密度Brが1.15T以上であり、残留磁束密度が高い。更に、上記希土類磁石は、保磁力iHcが1200kA/m以上であり、保磁力が高い。したがって、上記希土類磁石は、高い残留磁束密度と保磁力を有し、高磁力と高耐熱性を兼ね備える。
上記希土類磁石は、Rを32質量%以上37質量%以下、Bを1.1質量%以上1.5質量%以下含有する組成を有することで、高い残留磁束密度と保磁力を有する希土類磁石を得ることができる。また、主相のRFe14B化合物を形成しない余分なR及びBが粒界相を形成し、主相の周囲に粒界相を十分に存在させることができる。c軸の配向性が上がる理由は次のように考えられる。粒界相が十分に存在することで、磁場中で熱間塑性加工した際に、c軸に垂直なa軸方向に主相の結晶粒が成長すると共に、圧縮応力によって粒界すべりが起きて、c軸が圧縮方向に配向するような結晶粒の回転が起こる。加えて、磁場によってa軸を伸長方向に配列する効果が得られ、a軸に垂直なc軸が圧縮方向に揃い易くなり、c軸の配向性を上げることができる。更に、粒界相がBを含有することで、粒界相を通したBの拡散により主相と粒界相との間でBのやりとりが起こり、磁場によりa軸が伸長方向に配列し易くなる結果、c軸の配向性が上がる。
上記希土類磁石は、主相の平均結晶粒径が500nm以下であるので、保磁力を高められ、耐熱性が向上する。また、主相の結晶粒の表面から内部に亘って磁場によるa軸の配列効果が得られ、c軸配向が進む。
(2)上記希土類磁石の一形態としては、[残留磁束密度Br/飽和磁束密度Js]で表される配向度が0.90以上であることが挙げられる。
上記希土類磁石は、[残留磁束密度Br/飽和磁束密度Js]で表される配向度が0.90以上であり、異方性が大きい。
(3)上記希土類磁石の一形態としては、粒界相におけるRの含有量が50質量%以上で、Bの含有量が5.0質量%以上であることが挙げられる。
粒界相におけるRの一部は、通常、Feなどの金属元素と共晶合金を形成する。希土類磁石が上記組成を満たすことで、粒界相におけるRの含有量を50質量%以上、Bの含有量を5.0質量%以上とすることができる。Rの含有量が50質量%以上であることで、粒界相の融点を下げたり、熱間塑性加工時に粒界相の粘性を低下させることができる。これにより、熱間塑性加工した際に粒界すべりによる結晶粒の回転(転位移動)や粒界相を通しての元素拡散による再結晶が起こり易くなり、c軸の配向性が上がる。一方、Bの含有量が5.0質量%以上であることで、粒界相を通したBのやりとりが促進され、熱間塑性加工した際に磁場によるa軸の伸長方向への配列が進む結果、c軸の配向性が向上する。
(4)上記希土類磁石の一形態としては、主相の結晶粒のアスペクト比が2.5以上4.0以下であることが挙げられる。
主相の結晶粒は、通常、熱間塑性加工によって伸長する方向とa軸方向が一致するように配向し、圧縮される方向とc軸方向が一致するように配向するため、a軸方向が長軸、c軸方向が短軸になる。結晶粒のアスペクト比(長軸径/短軸径)が2.5以上であることで、a軸方向にある程度長い結晶粒であり、圧縮応力によって結晶粒の回転や再結晶の成長が促進されたことを示しており、a軸の配列が揃った状態の割合が高いことから、c軸の配向性が向上する。一方、結晶粒のアスペクト比が4.0以下であることで、c軸方向に過度に圧縮された結晶粒でないため、c軸配向による結晶磁気異方性を適度に発揮でき、結晶粒形状に起因する内部反磁界(形状異方性)が強くなり過ぎることによる保磁力の低下も抑制できる。
(5)上記希土類磁石の一形態としては、主相の結晶粒の短軸径が120nm以上200nm以下であることが挙げられる。
主相の結晶粒の短軸径が120nm以上であることで、c軸方向に過度に圧縮された結晶粒でないため、c軸配向による結晶磁気異方性をより発揮し易い。一方、主相の結晶粒の短軸径が200nm以下であることで、c軸方向にある程度圧縮されており、圧縮応力によってc軸が圧縮方向により配向し、残留磁束密度及び配向度の向上が期待できる。また、結晶粒が微細であり、保磁力の向上が期待できる。
(6)上記希土類磁石の一形態としては、RがNdを必須元素として含むことが挙げられる。
RがNdを必須元素として含むことで、磁気特性に優れる希土類磁石(Nd−Fe−B系磁石)が得られる。
(7)実施形態に係る希土類磁石の製造方法は、希土類元素R、Fe及びBを含有するR−Fe−B系合金を熱間塑性加工する製造方法であり、以下の磁石素材準備工程と、熱間加工工程と、を備える。
磁石素材準備工程:Rを32質量%以上37質量%以下、Bを1.1質量%以上1.5質量%以下含有する組成を有し、RFe14B化合物を主相とするR−Fe−B系合金の粉末を圧縮成形して得られ、主相の平均結晶粒径が500nm以下であるR−Fe−B系合金の粉末成形体を磁石素材として用意する工程。
熱間加工工程:磁石素材を、675℃以上800℃以下の温度で熱間塑性加工する工程。
そして、熱間加工工程では、磁石素材を熱間塑性加工する際に、主相の結晶粒が塑性変形によって伸長する方向と平行に3T以上の磁場を印加する。
上記希土類磁石の製造方法によれば、高い残留磁束密度と保磁力を有する上記実施形態に係る希土類磁石を製造することができる。具体的には、主相の結晶粒の配向性を上げることができ、保磁力を低下させずに、残留磁束密度を向上させることができる。上記希土類磁石の製造方法における結晶粒の配向メカニズムは次のように考えられる。
熱間塑性加工によって主相の結晶粒が優先成長方向であるa軸方向に成長すると共に、圧縮応力によって粒界すべりが起きて結晶粒が回転することで、a軸に垂直なc軸が圧縮方向に揃うように配向しようとする。更に、熱間塑性加工する際に、結晶粒の伸長方向と平行に磁場を印加することで、磁場によってa軸が伸長方向に配列することにより、a軸に垂直なc軸が圧縮方向に配向する効果が強化され、c軸の配向を助長する。したがって、磁場によりa軸を伸長方向に揃うように配列することで、c軸配向のばらつきを抑制してc軸が圧縮方向に揃い易くなり、c軸配向の均一化と向上を図ることができる。つまり、塑性加工による配向効果に加え、磁場による配向強化効果を併用することで、c軸の配向性を高めることができる。
熱間塑性加工の加工温度を675℃以上とすることで、粒界相を液状化し易く、粒界すべりによる結晶粒の回転が起こり易くなり、c軸の配向性が上がる。また、塑性加工性も上がる。一方、熱間塑性加工の加工温度を800℃以下とすることで、結晶粒の粒成長を抑制でき、保磁力が向上する。また、加工温度を低くすることで、熱間塑性加工に使用する金型寿命を改善できる。
磁場を3T以上とすることで、磁場による配向強化効果を発揮して、c軸配向が大きく向上する。
(8)上記希土類磁石の製造方法の一形態としては、上記磁石素材準備工程が以下の合金粉末準備工程と、水素化工程と、圧縮成形工程と、脱水素工程と、を備えることが挙げられる。
合金粉末準備工程:R−Fe−B系合金の粉末を用意する工程。
水素化工程:R−Fe−B系合金の粉末を水素化処理して、RFe14B化合物を水素化分解する工程。
圧縮成形工程:水素化処理したR−Fe−B系合金の粉末を圧縮成形して、粉末成形体を得る工程。
脱水素工程:水素化処理したR−Fe−B系合金の粉末成形体を脱水素処理して、水素化分解したRFe14B化合物を再結合することにより、磁石素材となるR−Fe−B系合金の粉末成形体を得る工程。
水素化処理したR−Fe−B系合金の粉末を圧縮成形した後、その粉末成形体に対し脱水素処理することで、高密度のR−Fe−B系合金の粉末成形体を得ることができる。また、水素化処理によりRFe14B化合物を水素化分解した後、脱水素処理により再結合させることで、RFe14B化合物(主相)の結晶粒を微細化できる。したがって、このようなR−Fe−B系合金の粉末成形体を磁石素材とすることで、磁気特性に優れる希土類磁石を製造することができる。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る希土類磁石及びその製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
<希土類磁石>
希土類磁石は、希土類元素R、Fe及びBを含有するR−Fe−B系合金を熱間塑性加工して製造されたものである。
希土類磁石(R−Fe−B系合金)は、Rを32質量%以上37質量%以下、Bを1.1質量%以上1.5質量%以下含有し、残部がFe及び不可避的不純物の組成を有する。また、希土類磁石は、RFe14B化合物の主相と、主相の結晶粒界に存在して主相よりもRの濃度が高い粒界相とを含む組織を有する。以下、組成及び組織について詳しく説明する。
(組成)
Rは、Sc、Y、ランタノイド及びアクチノイドから選択される少なくとも1種の希土類元素である。中でも、Nd、Pr、Sm、Ce、Dy、Tb及びYから選択される少なくとも1種の元素を含むと、磁気特性に優れる希土類磁石が得られて好ましい。特に、原料コスト及び磁気特性の観点から、Ndを必須元素として含むことが好ましい。Ndを必須元素として含む場合は、Nd単独であってもよく、Ndの一部をPr、Ce、Dy、Tb及びYなどの元素で置換してもよい。Ndの一部をPrに置換することで、粒界相の融点を下げることができる。粒界相の融点が下がると、熱間塑性加工した際に、圧縮応力によって粒界すべりが起き易くなり、それに伴う結晶粒の回転によって、c軸が圧縮方向に配向し易くなる。Ndの一部をDyやTbに置換すると、保磁力を高められる。この場合、RにおけるNdの割合は50質量%以上であることが好ましい。
Rの含有量は、32質量%以上37質量%以下である。Rの含有量がこの範囲を満たすことで、磁気特性に優れる希土類磁石が得られる。また、主相のRFe14B化合物を形成しない余分なRが粒界相を形成し、主相の周囲に粒界相を十分に存在させることができる。
Feは、Fe単独であってもよく、Feの一部をCo、Ni、Ga、Cu、Al、Si、Ti、Mn及びNbから選択される少なくとも1種以上の元素で置換してもよい。Feの一部をCoで置換した場合、磁気特性を一層高められる。この場合、Coの含有量は6質量%以下であることが好ましく、6質量%超含有すると、磁気特性が低下する虞がある。また、Feの一部をGaやCu,Alで置換すると、粒界相の融点を下げることができ、配向性を高められる。
Bは、B単独であってもよく、Bの一部をCやNで置換してもよい。Bを単独で含有する場合、Bの含有量は1.1質量%以上1.5質量%以下である。Bの含有量がこの範囲を満たすことで、粒界相に一定以上のBを含有させることができる。これにより、磁場中で熱間塑性加工した際に、粒界相を通してBが拡散して主相と粒界相との間でBのやりとりが起こり、磁場によってa軸が伸長方向に配向する効果が得られる。その結果、a軸に垂直なc軸が圧縮方向に揃い易くなり、c軸の配向性を上げることができる。
(組織)
主相は、RFe14B化合物からなり、平均結晶粒径が500nm以下である。主相の平均結晶粒径が500nm以下であるので、保磁力が高く、耐熱性が向上する。ここでいう「平均結晶粒径」とは、主相の結晶粒における最大径(長軸径)の平均値である。主相の結晶粒径(長軸径(最大径)及び短軸径(最小径))は、c軸に垂直な面(熱間塑性加工による磁石素材(結晶粒)の加圧方向に対して垂直で、磁石素材(結晶粒)の伸長方向に平行な任意の断面)の結晶組織を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、1視野につき30個以上の結晶粒について調べ、3視野の平均値とする。
主相の結晶粒は、通常、熱間塑性加工によって伸長する方向とa軸方向が一致するように配向し、圧縮される方向とc軸方向が一致するように配向するため、a軸方向が長軸、c軸方向が短軸になる。結晶粒のアスペクト比(長軸径/短軸径)は2.5以上4.0以下であることが好ましい。結晶粒のアスペクト比(長軸径/短軸径)が2.5以上であることで、a軸方向にある程度長い結晶粒であり、圧縮応力によって結晶粒の回転や再結晶の成長が促進されたことを示しており、a軸の配列が揃った状態の割合が高いことから、c軸の配向性が向上する。一方、結晶粒のアスペクト比が4.0以下であることで、c軸方向に過度に圧縮された結晶粒でないため、c軸配向による結晶磁気異方性を適度に発揮でき、結晶粒形状に起因する内部反磁界(形状異方性)が強くなり過ぎることによる保磁力の低下も抑制できる。更に、主相の結晶粒の短軸径は120nm以上200nm以下であることが好ましい。主相の結晶粒の短軸径が120nm以上であることで、c軸方向に過度に圧縮された結晶粒でなく、また、結晶方位の乱れ易い結晶粒界の存在率がc軸の配向方向に過剰に多くならないので、c軸配向による結晶磁気異方性をより発揮し易い。一方、主相の結晶粒の短軸径が200nm以下であることで、結晶粒が微細であり、保磁力の向上が期待できる。
粒界相は、主相の結晶粒界に存在する。粒界相におけるRの含有量は50質量%以上で、Bの含有量は5.0質量%以上であることが好ましい。希土類磁石(R−Fe−B系合金)が上記組成を満たすことで、Rの含有量が50質量%以上、Bの含有量が5.0質量%以上の粒界相を形成することができる。Rの含有量が50質量%以上であることで、粒界相の融点を下げたり、熱間塑性加工時に粒界相の粘性を低下させることができる。これにより、熱間塑性加工した際に粒界すべりによる結晶粒の回転(転位移動)や粒界相を通しての元素拡散による再結晶が起こり易くなり、c軸の配向性が上がる。一方、Bの含有量が5.0質量%以上であることで、粒界相を通したBのやりとりが促進され、磁場中で熱間塑性加工した際に磁場によるa軸の配向性を高められる結果、c軸の配向性が向上する。粒界相におけるRの含有量の上限値は80質量%以下、Bの含有量の上限値は8質量%以下とすることが挙げられる。より好ましいRの含有量の下限値は60質量%以上、上限値は75質量%以下である。より好ましいBの含有量の下限値は5.5質量%以上、上限値は7.5質量%以下である。
希土類磁石(R−Fe−B系合金)の組成や、粒界相におけるR及びBの含有量は、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)により組成分析することで測定できる。
(磁気特性)
希土類磁石は、残留磁束密度Brが1.15T以上で、保磁力iHcが1200kA/m以上であり、高い残留磁束密度と保磁力を有し、高磁力と高耐熱性を兼ね備える。より好ましい残留磁束密度Brは1.16T以上、保磁力iHcは1300kA/m以上である。更に、[残留磁束密度Br/飽和磁束密度Js]で表される配向度が0.90以上であることが好ましい。より好ましい配向度(Br/Js)は0.91以上である。
<希土類磁石の製造方法>
希土類磁石の製造方法は、希土類元素R、Fe及びBを含有するR−Fe−B系合金を熱間塑性加工する製造方法であり、磁石素材準備工程と、熱間加工工程と、を備える。以下、各工程について詳しく説明する。
(磁石素材準備工程)
磁石素材準備工程は、Rを32質量%以上37質量%以下、Bを1.1質量%以上1.5質量%以下含有する組成を有し、RFe14B化合物を主相とするR−Fe−B系合金の粉末を圧縮成形して得られ、主相の平均結晶粒径が500nm以下であるR−Fe−B系合金の粉末成形体を磁石素材として用意する工程である。R−Fe−B系合金は、例えばメルトスパン法やストリップキャスト法などにより製造することができ、これを粉砕することでR−Fe−B系合金の粉末を得ることができる。
メルトスパン法では、主相の平均結晶粒径が500nm以下の微細な多結晶組織が得られる。メルトスパン法で製造した場合、通常、主相の結晶粒径は10nm〜50nm程度である。また、主相の結晶粒を微細化する技術として、HDDR(Hydrogenation Disproportionation Desorption Recombination;水素化・不均化・脱水素・再結合)法がある。HDDR法は、R−Fe−B系合金を水素化処理して、主相のRFe14B化合物を水素化分解した後、脱水素処理することにより再結合させる方法である。これにより、主相の結晶粒が微細化され、平均結晶粒径が500nm以下の微細な多結晶組織を得ることができる。HDDR処理したHDDR粉末の場合、通常、主相の結晶粒径は100nm〜300nm程度である。R−Fe−B系合金の粉末の粒子径は、例えば5μm〜5mmの範囲内で適宜調整することが挙げられる。
〈磁石素材〉
磁石素材となるR−Fe−B系合金の粉末成形体としては、次のものが挙げられる。1つは、R−Fe−B系合金の粉末を熱間プレスにより圧縮成形した熱間成形体が挙げられる。熱間プレスすることにより、高密度の粉末成形体が得られる。更に、熱間プレスの前に、R−Fe−B系合金の粉末を予め冷間プレスにより予備成形してもよい。
熱間成形体を磁石素材として用意する場合、磁石素材準備工程は、次の合金粉末準備工程と、熱間プレス工程と、を備えることが挙げられる。
合金粉末準備工程は、R−Fe−B系合金の粉末を用意する工程である。R−Fe−B系合金の粉末としては、メルトスパン法で製造した合金粉末や、合金粉末をHDDR処理したHDDR粉末を利用できる。
熱間プレス工程は、R−Fe−B系合金の粉末を熱間プレスにより圧縮成形して粉末成形体を得る工程である。熱間プレスの成形温度は、例えば700℃〜800℃程度とすることが挙げられる。
更に、熱間プレス工程の前に、R−Fe−B系合金の粉末を冷間プレスにより予備成形する冷間プレス工程を備えてもよい。
もう1つは、R−Fe−B系合金の粉末を水素化処理(HD処理)した後、これを圧縮成形して粉末成形体を作製し、この粉末成形体に対し脱水素処理(DR処理)したHDDR成形体が挙げられる。水素化処理によってR−Fe−B系合金を水素化分解した状態で圧縮成形することで、高密度の粉末成形体が得られ、更に、脱水素(DR)処理により、元のRFe14B化合物に再結合すると共に主相の結晶粒を微細化できる。
HDDR成形体を磁石素材として用意する場合、磁石素材準備工程は、次の合金粉末準備工程と、水素化工程と、圧縮成形工程と、脱水素工程と、を備えることが挙げられる。
合金粉末準備工程は、R−Fe−B系合金の粉末を用意する工程である。R−Fe−B系合金の粉末としては、メルトスパン法やストリップキャスト法などの公知の方法で製造した合金粉末を利用できる。
水素化工程は、R−Fe−B系合金の粉末を水素化処理して、RFe14B化合物を水素化分解する工程である。ここで、水素化処理とは、R−Fe−B系合金の粉末を水素を含む雰囲気中で不均化温度以上の温度で熱処理することであり、この処理により、RFe14B化合物(主相)をRの水素化合物とFeを含有するFe含有物との相に水素化分解する。そして、水素化処理したR−Fe−B系合金は、Rの水素化合物(例、NdHやSmH)の相とFeを含有するFe含有物(例、FeやFeBなどのFe化合物)の相とが混在する組織を有する。Fe含有物の相は、RFe14B化合物やRの水素化合物の相に比較して、柔らかく変形し易いことから、後工程の圧縮成形工程において、圧縮成形が容易になる。特に、純Feは変形し易く、Fe含有物の相としてFe相が存在すると、成形性が向上し、後工程の圧縮成形工程において粉末成形体の高密度化を図り易い。
水素化処理する際の雰囲気は、水素を含む雰囲気、例えばHガス雰囲気、又はHガスとArやNなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気とすることが挙げられる。また、水素化処理する際の雰囲気圧力は、大気圧とすることができる。水素化処理する際の熱処理の温度は、不均化反応が生じる不均化温度以上(例えば600℃以上、更に650℃以上)1100℃以下、好ましくは700℃以上(更に750℃以上)950℃以下(更に900℃以下)とすることが挙げられる。
圧縮成形工程は、水素化処理したR−Fe−B系合金の粉末を圧縮成形して、粉末成形体を得る工程である。水素化処理したR−Fe−B系合金の粉末を圧縮成形することで、高密度の粉末成形体が得られる。圧縮成形する際の成形圧力は、例えば294MPa(3ton/cm)以上1960MPa(20ton/cm)以下とすることが挙げられる。また、粉末成形体の相対密度は、例えば80%〜95%程度とすることが挙げられる。ここでいう「相対密度」とは、R−Fe−B系合金の真密度に対する実際の密度([粉末成形体の実測密度/合金の真密度]の百分率)を意味する。その他、圧縮成形する際に成形用金型を適宜加熱することで、粉末の変形を促進することができ、高密度の粉末成形体が得られ易い。
脱水素工程は、水素化処理したR−Fe−B系合金の粉末成形体を脱水素処理して、水素化分解したRFe14B化合物を再結合することにより、磁石素材となるR−Fe−B系合金の粉末成形体を得る工程である。ここで、脱水素処理とは、水素化処理したR−Fe−B系合金の粉末成形体を不活性雰囲気中又は減圧雰囲気中で再結合温度以上の温度で熱処理することであり、この処理により、水素化分解したRFe14B化合物を再結合すると共に主相の結晶粒を微細化する。
脱水素処理する際の雰囲気は、不活性雰囲気、例えばArやNなどの不活性ガス雰囲気、又は、減圧雰囲気、例えば真空度が10Pa以下の真空雰囲気とすることが挙げられる。より好ましい真空雰囲気の真空度は、1Pa以下、更には0.1Pa以下である。特に、減圧雰囲気(真空雰囲気)中で脱水素処理した場合、再結合反応が完全に進行して、希土類元素の水素化合物が残存し難い。脱水素処理する際の熱処理の温度は、再結合反応が生じる再結合温度以上(例えば600℃以上、更に650℃以上、特に700℃以上)1000℃以下とすることが挙げられる。
(熱間加工工程)
熱間加工工程は、磁石素材を、675℃以上800℃以下の温度で熱間塑性加工する工程である。
〈熱間塑性加工〉
熱間塑性加工としては、例えば磁石素材を1軸方向に加圧して、主相の結晶粒を任意の1方向に、転位移動や、原子・分子(RFe14Bクラスター)の流動再結晶現象によって伸長させる塑性加工とすることが挙げられる。具体的には、押出し加工(後方押出し加工及び前方押出し加工を含む)や据え込み加工が挙げられる。熱間塑性加工は、特に限定されるものではなく、目的に応じて種々の方法を用いることができる。熱間塑性加工する際の雰囲気は、酸化による磁気特性の低下を抑制する観点から、不活性雰囲気、例えばArやNなどの不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
熱間塑性加工によって、c軸に垂直なa軸方向に主相の結晶粒が成長すると共に、圧縮応力によって粒界すべりが起きて、c軸が圧縮方向に配向するような結晶粒の回転(転位移動)が起こる。また、結晶粒界に液状化する粒界相が存在する場合は、結晶粒が原子や分子(RFe14Bクラスター)単位で液相を介して再結晶化して析出するような現象が起こる。
〈加工温度〉
熱間塑性加工の加工温度は675℃以上800℃以下とする。熱間塑性加工の加工温度を675℃以上とすることで、粒界相を液状化して、粒界すべりによる結晶粒の回転が起こり易くなり、c軸の配向性が上がる。また、塑性加工性も上がる。一方、熱間塑性加工の加工温度を800℃以下とすることで、結晶粒の粒成長を抑制でき、保磁力が向上する。
〈加工度〉
熱間加工工程における熱間塑性加工の加工度は、例えば60%以上90%以下とすることが挙げられる。熱間塑性加工の加工度を60%以上とすることで、塑性加工によるc軸配向が進む。より好ましい加工度は70%以上である。一方、熱間塑性加工の加工度を90%以下とすることで、加工圧が小さくなり、熱間塑性加工に使用する金型寿命を改善できる。また、加工温度を低くできる。加工度は、押出し加工の場合、磁石素材の断面減少率で表され、[(押出前の断面積−押出後の断面積)/押出前の断面積]の百分率として求める。
〈加工時間〉
熱間加工工程における熱間塑性加工の加工時間は、例えば1秒以上60秒以下とすることが挙げられる。加工時間は、加工開始から加工終了までの時間である。
〈磁場〉
更に、熱間加工工程では、磁石素材を熱間塑性加工する際に、主相の結晶粒が塑性変形によって伸長する方向と平行に3T以上の磁場を印加する。熱間塑性加工する際に、結晶粒の伸長方向と平行に磁場を印加することで、磁場によってa軸が伸長方向に配向する効果が強化される。その結果、c軸の配向性を上げることができる。したがって、塑性加工による配向効果に加え、磁場による配向強化効果を併用することで、c軸の配向性を高めることができる。特に、磁場を3T以上とすることで、c軸配向が一層強くなる。磁場を大きくするほど、磁場によるa軸配列効果によってc軸配向が進むと考えられる。印加する磁場の上限値は、特に限定されるものではないが、例えば10T以下とすることが挙げられる。
図1を参照して、希土類磁石の製造方法の一例を説明すると共に、図2を参照して、希土類磁石の製造方法における結晶粒の配向メカニズムを説明する。
この例では、磁石素材を熱間後方押出し加工により円筒状に加工することで、円筒状の希土類磁石を製造する場合を例に説明する。図1に示す後方押出し加工装置20は、上パンチ21と下パンチ22と筒状の金型23とを備える。まず、図1上段に示すように、下パンチ22と金型23とで形成されるキャビティ内に磁石素材10をセットする。この時点では、図1上段の右図に示すように、磁石素材10は、主相11の結晶粒のc軸(図中、白抜き矢印で示す)がランダムな方向に向いており、磁気的に配向していない。金型23は、ヒータ(図示せず)を有しており、金型温度を制御することで、磁石素材10を所定の加工温度まで加熱できる。次に、図1下段に示すように、上パンチ21をキャビティ内に挿入することで、磁石素材10を後方(紙面上方向)に押出すことで、有底円筒状の希土類磁石が得られる。熱間後方押出し加工では、上パンチ21は軸方向(紙面下方向)に挿入されるが、磁石素材10の加圧方向はラジアル方向(紙面左右方向)となり、上パンチ21と金型23との間で磁石素材10の組織がラジアル方向に圧縮される。上パンチ21の移動速度を調節することで、加工時間の制御が可能である。また、磁石素材10は、上パンチ21と金型23との間を通って伸ばされ、組織が塑性変形によって加圧方向に対して垂直方向に伸びる。更に、後方押出し加工装置20は、磁場印加装置30を備えており、磁石素材10を熱間塑性加工する際に、磁石素材10の組織が塑性変形によって伸長する方向と平行に所定の磁場Mを印加することができる。磁場印加装置30には、超電導マグネットが好適に利用できる。そして、磁場中で熱間塑性加工することによって、図1下段の右図に示すように、主相11の結晶粒のc軸が圧縮方向に配向した希土類磁石が得られる。
結晶粒の配向メカニズムは、次のように考えられる。図2上段は、熱間塑性加工前の組織を示し、主相11の結晶粒のc軸がランダムに配向している状態である。ここで、図中、白抜き矢印はc軸、黒塗り矢印はa軸を示している。磁場中で熱間塑性加工すると(図2中段を参照)、主相11の結晶粒が優先成長方向であるa軸方向に成長すると共に、粒界相12が液状化する。次に、加圧方向(図中、実線矢印で示す)に作用する圧縮応力によって粒界すべりが起きて主相11の結晶粒が回転することで、a軸に垂直なc軸が圧縮方向に揃うように配向しようとする。加えて、熱間塑性加工する際に、主相11の結晶粒の伸長方向(加圧方向に対して垂直な方向)と平行に磁場Mを印加することで、磁場Mの方向にa軸の成長が促進され、a軸が伸長方向により強く配向する結果、a軸に垂直なc軸が圧縮方向に揃い易くなり、c軸配向を助長する。その結果、塑性加工によるc軸配向に加え、磁場によるa軸配列効果を併用することで、c軸の配向性を高めることができ、図2下段に示すように、主相11の結晶粒のc軸が圧縮方向に配向した希土類磁石が得られる。特に、圧縮応力のみによる配向では、加工形状によっては、金型の軸方向端部や摺動抵抗の大きい金型の内壁面近傍では応力方向が加圧軸からずれることにより、c軸の配向性が低下することがあるが、磁場の印加により配向度の低下を抑制することができる。
[実施例1]
xNd−5質量%Co−yB−残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有するNd−Fe−B系合金(xはNdの含有量(質量%)、yはBの含有量(質量%))の粉末を用意し、磁石素材を作製した。その後、磁石素材を熱間塑性加工して希土類磁石の試料を製造し、製造した希土類磁石の試料について評価した。
磁石素材は、次のようにして作製した。
まず、上記組成を有するNd−Fe−B系合金を準備した。このNd−Fe−B系合金は、ストリップキャスト法により製造したものであり、厚さが300μm程度で、大きさ(縦・横)が5mm四方以下の薄片状である。この薄片状のNd−Fe−B系合金を粉砕した後、篩にかけて、粒子径が1000μm以下のNd−Fe−B系合金粉末を用意した。
次に、Nd−Fe−B系合金の粉末をHガス雰囲気中、850℃×2時間の熱処理して水素化処理した。
次いで、水素化処理したNd−Fe−B系合金の粉末を金型に充填し、圧縮成形して、直径20mm×高さ15mmの粉末成形体を得た。圧縮成形は、油圧プレス装置を用いて行い、成形圧力を1470MPa(15ton/cm)とした。また、圧縮成形は、Nガス雰囲気(O濃度:2000ppm以下)中、室温で行った。
続いて、水素化処理したR−Fe−B系合金の粉末成形体をHガス雰囲気中で780℃まで昇温した後、真空雰囲気に切り換えて、780℃×2.5時間の熱処理して脱水素処理した。真空雰囲気の到達真空度は0.5Pa未満に設定した。以上のようにして、磁石素材となるR−Fe−B系合金の粉末成形体を作製した。
希土類磁石の試料は、次のようにして製造した。
図1を参照して説明した後方押出し加工装置を用いて、磁石素材を熱間後方押出し加工により円筒状に加工して、外径20mm×内径16mm×高さ30mmの有底円筒状の希土類磁石の試料を製造した。この場合、加工度(断面減少率)は約64%である。この例では、熱間後方押出し加工する際に、金型温度を制御して、磁石素材を所定の加工温度Tdに加熱すると共に、図1を参照して説明した磁場印加装置により所定の磁場Mを印加した。更に、この例では、磁石素材を後方押出し加工装置にセットした後、熱間後方押出し加工する前に磁石素材に対して10分間の予備加熱を行った。予備加熱の温度は、熱間後方押出し加工する際の加工温度より100℃低い温度とした。熱間塑性加工及び予備加熱は、Nガス雰囲気(O濃度:2000ppm以下)中で行った。
希土類磁石の試料は、次のようにして評価した。
製造した円筒状の希土類磁石をラジアル方向(高さ方向に直交する方向)に切り出してリング状に加工した後、更に高さ方向に切断して略立方体形状の試験片を得た。そして、この試験片に3979kA/m(50kOe)の磁界を印加して着磁し、磁気特性を評価した。具体的には、BHトレーサ(理研電子株式会社製DCBHトレーサ)を用いてB−H曲線を測定し、飽和磁化Js、残留磁化Br、配向度Br/Js、及び保磁力iHcを求めた。但し、飽和磁化Jsは、1989kA/m(25kOe)の磁界を印加したときの値である。磁界の印加方向は、リング状に加工した状態でのラジアル方向とした。
更に、試験片の中心を通るように高さ方向に切断した断面をSEMで組織観察し、主相の結晶粒径を測定し、結晶粒のアスペクト比R及び短軸径dを求めた。また、試料の断面をEDXにより組成分析し、粒界相におけるNdの含有量及びBの含有量を求めた。
(試験例1)
上述した実施例1に基づいて、試験例1では、Ndの含有量xを33質量%、Bの含有量yを1.2質量%とした組成を有するNd−Fe−B系合金の粉末を用意し、磁石素材を作製した。表1に示す押出し加工条件で磁石素材を熱間後方押出し加工して、希土類磁石の試料を製造した。具体的には、加工温度Tdを700℃として加工時間tを変更した試料No.1−1〜1−6と、加工温度Tdを850℃として加工時間tを変更した試料No.1−11〜1−16とを製造した。なお、試験例1では、磁場を印加していない(即ち、磁場M=0)。そして、各試料について評価した。その結果を表1に示す。
Figure 2015220335
加工温度を700℃とした試料No.1−1〜1−6は、保磁力が1200kA/m以上であるのに対し、加工温度を850℃とした試料No.1−11〜1−16は、保磁力が大きく低下していることが分かる。更に、加工時間が長くなるほど、残留磁化(残留磁束密度)や配向度が向上し、保磁力が低下する傾向が見られる。また、加工時間が長くなるほど、結晶粒のアスペクト比が大きくなり、短軸径が小さくなる傾向が見られる。加工時間を30秒以下とした試料のうち、試料No.1−2〜1−5は、結晶粒のアスペクト比が2.5以上4.0以下で、かつ短軸径が120nm以上200nm以下を満たし、残留磁化(残留磁束密度)と保磁力とを両立し易く、好ましいと考えられる。
(試験例2)
上述した実施例1に基づいて、試験例2では、Ndの含有量xを33質量%、Bの含有量yを1.2質量%とした組成を有するNd−Fe−B系合金の粉末を用意し、磁石素材を作製した。表2に示す押出し加工条件で磁石素材を熱間後方押出し加工して、希土類磁石の試料を製造した。具体的には、加工温度Tdを700℃として磁場Mを変更した試料No.2−1〜2−7と、加工温度Tdを850℃として磁場Mを変更した試料No.2−11〜2−17とを製造した。なお、加工時間tはいずれも18秒とした。そして、各試料について評価した。その結果を表2に示す。
(試験例3)
試験例3では、磁場Mを4Tとして加工温度Tdを変更した以外は、試験例2と同じようにして、試料No.3−1〜3−6を製造した。その評価結果を表2に併せて示す。
Figure 2015220335
磁場を3T以上とした試料No.2−5〜2−7は、残留磁化が1.15T以上であり、試料No.2−1〜2−4に比較して、保磁力を低下させることなく、残留磁化(残留磁束密度)や配向度が大幅に向上していることが分かる。また、加工温度を675℃以上800℃以下とした試料No.3−2〜3−4は、残留磁化が1.15T以上で、保磁力が1200kA/m以上であり、残留磁化(残留磁束密度)と保磁力とを高いレベルで両立できていることが分かる。これに対し、加工温度が800℃を超える試料は、保磁力が大きく低下しており、一方で、加工温度が675℃未満とした試料は、残留磁化や保磁力が大きく低下していることが分かる。更に、加工温度が高くなるほど、粒界相におけるNdやBの含有量が増える傾向があり、また、結晶粒のアスペクト比が大きくなる傾向が見られる。これは、加工温度が高くなることで、粒界相に拡散するNdやBが増えたり、塑性変形が起こり易くなったことが原因と考えられる。
(試験例4)
上述した実施例1に基づいて、試験例4では、Ndの含有量xを33質量%とし、Bの含有量yを変えた複数種のNd−Fe−B系合金の粉末を用いて磁石素材を作製した。表3に示す押出し加工条件で磁石素材を熱間後方押出し加工して、試料No.4−1〜4−9の希土類磁石を製造した。押出し加工条件はいずれも同じであり、加工温度を700℃、磁場を4T、加工時間を18秒とした。そして、各試料について評価した。その結果を表3に示す。
(試験例5)
試験例5では、Ndの含有量xを変えて、Bの含有量yを1.2質量%とした以外は、試験例4と同じようにして、試料No.5−1〜5−7の希土類磁石を製造した。その評価結果を表3に併せて示す。
Figure 2015220335
Bを1.1質量%以上1.5質量%以下含有する試料No.4−4〜4−7は、残留磁化が1.15T以上で、保磁力が1200kA/m以上であり、残留磁化(残留磁束密度)と保磁力とを高いレベルで両立できていることが分かる。また、Ndを32質量%以上37質量%以下含有する試料No.5−3〜5−5は、残留磁化が1.15T以上で、保磁力が1200kA/m以上であり、残留磁化(残留磁束密度)と保磁力とを高いレベルで両立できていることが分かる。これに対し、B又はNdの含有量が上記範囲を満たさない試料は、残留磁化や保磁力が大きく低下しており、飽和磁化(飽和磁束密度)も低下している場合もある。
本発明の一態様に係る希土類磁石は、モータや発電機などに好適に利用可能である。本発明の一態様に係る希土類磁石の製造方法は、熱間加工希土類磁石の製造に好適に利用可能である。
10 磁石素材
11 主相(結晶粒) 12 粒界相
20 後方押出し加工装置
21 上パンチ 22 下パンチ
23 金型
30 磁場印加装置
M 磁場

Claims (8)

  1. 希土類元素R、Fe及びBを含有するR−Fe−B系合金を熱間塑性加工して製造された希土類磁石であって、
    前記Rを32質量%以上37質量%以下、前記Bを1.1質量%以上1.5質量%以下含有する組成を有し、
    Fe14B化合物の主相と、前記主相の結晶粒界に存在して前記主相よりも前記Rの濃度が高い粒界相とを含む組織を有し、
    前記主相の平均結晶粒径が500nm以下であり、
    残留磁束密度Brが1.15T以上で、保磁力iHcが1200kA/m以上である希土類磁石。
  2. [残留磁束密度Br/飽和磁束密度Js]で表される配向度が0.90以上である請求項1に記載の希土類磁石。
  3. 前記粒界相における前記Rの含有量が50質量%以上で、前記Bの含有量が5.0質量%以上である請求項1又は請求項2に記載の希土類磁石。
  4. 前記主相の結晶粒のアスペクト比が2.5以上4.0以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の希土類磁石。
  5. 前記主相の結晶粒の短軸径が120nm以上200nm以下である請求項4に記載の希土類磁石。
  6. 前記RがNdを必須元素として含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の希土類磁石。
  7. 希土類元素R、Fe及びBを含有するR−Fe−B系合金を熱間塑性加工する希土類磁石の製造方法であって、
    前記Rを32質量%以上37質量%以下、前記Bを1.1質量%以上1.5質量%以下含有する組成を有し、RFe14B化合物を主相とするR−Fe−B系合金の粉末を圧縮成形して得られ、前記主相の平均結晶粒径が500nm以下である前記R−Fe−B系合金の粉末成形体を磁石素材として用意する磁石素材準備工程と、
    前記磁石素材を、675℃以上800℃以下の温度で熱間塑性加工する熱間加工工程と、を備え、
    前記熱間加工工程では、前記磁石素材を前記熱間塑性加工する際に、前記主相の結晶粒が塑性変形によって伸長する方向と平行に3T以上の磁場を印加する希土類磁石の製造方法。
  8. 前記磁石素材準備工程は、
    前記R−Fe−B系合金の粉末を用意する合金粉末準備工程と、
    前記R−Fe−B系合金の粉末を水素化処理して、前記RFe14B化合物を水素化分解する水素化工程と、
    水素化処理した前記R−Fe−B系合金の粉末を圧縮成形して、粉末成形体を得る圧縮成形工程と、
    水素化処理した前記R−Fe−B系合金の粉末成形体を脱水素処理して、水素化分解した前記RFe14B化合物を再結合することにより、前記磁石素材となる前記R−Fe−B系合金の粉末成形体を得る脱水素工程と、
    を備える請求項7に記載の希土類磁石の製造方法。
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