JP7151270B2 - R―t―b系希土類永久磁石 - Google Patents
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Description
そこで、モーターの更なる効率化のためには、モーター高速回転時の誘導電圧の上昇を抑制させる必要がある。解決策の一つとして高速回転時にモーター内に設置した磁石の磁力を低下させ、誘導電圧の発生を抑えることのできる可変磁力モーターがある。
現在、可変磁力モーター用低保磁力磁石としてはSm2Co17系低保磁力磁石が実用化されているが、車載用ではなく家電用モーターに使用されている。Sm2Co17系低保磁力磁石はNd2Fe14B磁石と同じ希土類系磁石であるが、磁石に使用する元素の違いにより結晶構造が異なるため、磁石として得られる残留磁束密度(Br)が低い(Brの理論限界である飽和磁束密度(Js)が12kG程度とNd2Fe14B磁石の16kGに比べ低い)。また、角形性(Hk/Hcj)も0.7程度とNd2Fe14B磁石の0.9程度に比べ低い。加えて、機械的強度が低いといった問題もある。
しかし、添加元素は焼結時に液相化するため、多量に添加した場合、磁場中冷間プレスによって配向化させた結晶の状態を保つことが困難になる。したがって、焼結後の配向度は0.75~0.85と低くなる。また、低保磁力化のためのCeやCuの添加によりNd2Fe14B主相の体積割合が減少するため、飽和磁束密度(Js)も本来のNd2Fe14B磁石の16kGに比べ、14.0kG程度まで低下してしまう。これらの影響により、これまでに低保磁力磁石では高Brと低保磁力の両立が出来ていない。
すなわち、本発明の目的は、高残留磁束密度かつ低保磁力が両立しているR-T-B系希土類永久磁石を提供することにある。
本発明は以下の(1)~(2)である。
(1)R2T14B構造からなる主相と、該主相の周りに存する粒界相と、を含み、該主相のアスペクト比が2超10未満であり、組成が(R1XR2(1-X))a(Fe(1-Z)CoZ)100-a-bBbであるR-T-B系希土類永久磁石。
(上記組成式中、R1はCe、La、Y、Gd、Er、LuおよびThからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、前記R2はNd、Pr、Sm、Tb、DyおよびHoからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素である。0<X<0.75、0≦Z<0.1、12≦a≦15、3.5≦b≦7.5)
(2)残留磁束密度(Br)が13kG以上であり、
保磁力が5kOe以下である、上記(1)に記載のR-T-B系希土類永久磁石。
本発明は、R2T14B構造からなる主相と、該主相の周りに存する粒界相と、を含み、該主相のアスペクト比が2超10未満であり、組成が(R1XR2(1-X))a(Fe(1-Z)CoZ)100-a-bBbであるR-T-B系希土類永久磁石である。
このようなR-T-B系希土類永久磁石を、以下では「本発明の磁石」ともいう。
粒界相を形成する化合物としてはCuを含む化合物が例示される。
また、ICP分析装置にて主相の結晶粒と粒界相を含めた領域を分析することで磁石の組成を定量できる。
R1はCe、LaおよびYからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であることが好ましい。
R2はNd、PrおよびSmからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素である。
なお、XはR1の原子%(at%)を意味する。
なお、ZはCoの原子%(at%)を意味する。
a<12.0ではR―T―B系永久磁石の主相となるR2T14B相の生成が十分ではなくなること、粒界相の減少により熱間加工時での結晶粒配向が進まないことから高い残留磁束密度を得ることが出来ない。一方、aが15.0を超えると主相であるR2T14B相の体積比率が低下し、残留磁束密度が低下する。
なお、aはR1およびR2の合計の原子%(at%)を意味する。
b<3.5ではR―T―B系永久磁石の主相となるR2T14B相の生成が十分ではなくなるため残留磁束密度が低下する。一方で、b>7.5ではBに起因する主相以外の相が多数発生し、保磁力等の磁気特性の安定性が失われる傾向がある。
なお、bはBの原子%(at%)を意味する。
本発明の磁石は保磁力が5kOe以下あることが好ましく、3kOe以下であることがより好ましい。
本発明の磁石の着脱磁性を示すグラフを図2に例示する。
本発明の磁石は配向度が0.8(Br/Js)以上あることが好ましく、0.9(Br/Js)以上であることがより好ましい。
所望の組成(表1を参照)となるように予備成形体を作成した。予備成形体は、希土類、鉄族金属およびホウ素を配合した原料を溶解して得られた溶湯を回転ロールに噴出させて、フレーク状の超急冷リボンを製造し、この磁石合金粉末を所要粒径に粉砕した後、冷間プレスを行なって圧粉体とし、さらにこの圧粉体を熱間または温間プレスして高密度化することで得た。
そして、熱間加工法によって磁石を作成した。ここで熱間加工法は、特許第4957415号の[0014]~[0016]に記載されている方法である。なお、熱間加工温度は、実施例、比較例の組成に応じ、770~830℃に制御した。
特許第5686213号明細書の0041段落に記載されている焼結法によって磁石を作成した。
実施例1等の場合と同様の方法によって、所望の組成(表2を参照)となるように予備成形体を作成した。そして、実施例1等の場合と同様の熱間加工法によって磁石を作成した。なお、熱間加工法における成形温度は、後述する表2に示す。
次に、ICP分析にて主相の結晶粒と粒界相を含めた領域を分析し、磁石の組成を定量化した。
組成の定量結果を表1および表2に示す。
走査型電子顕微鏡による観察時の条件は、以下の通りである。
観察倍率:20,000倍
装置:S-4700、日立ハイテクノロジーズ社製
観察条件:2次電子像
観察方向:配向方向に垂直な方向(磁石磁化容易方向に垂直な方向)
粒径確認方法:画像処理(winROOF、三谷商事株式会社)
画像処理条件:針状比
画像処理領域:約740nm×640nm
このような条件にて観察して得られる画像上における、その1つの結晶粒の最大径を測定して、その値をdとした。また、その最大径を2等分する点を定め、それに直交する直線が結晶粒の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定してtとした。そして、d/tを求め、これをその結晶粒のアスペクト比とした。
このようにして50個の結晶粒についてアスペクト比を測定し、これを単純平均して得た値をその磁石のアスペクト比とした。得られたアスペクト比を表1,2に示す。
なお、実施例12~17、比較例9、10の主相結晶粒におけるdを表2に示す。いずれの実施例もdは、1μm以下であった。
以上のような現象から、磁石組成ごとの入熱量の制御(成形温度)と磁石組成中の希土類元素量の量でアスペクト比を制御することができる。
結果を表1,2(R1、R2のカッコ内の比は、原子%での比を示す)に示す。
比較例2の磁石は、R2を含まない点で(すなわち、Xが1.000である点で)、本発明の磁石に相当しない。この場合、Br、配向度および角形性が低くなった。
比較例3の磁石は、Xが0.750である点で、本発明の磁石に相当しない。この場合、残留磁束密度(Br)および配向度が低くなった。
比較例4の磁石は、R2を含まず(すなわち、Xが1.000であり)、アスペクト比が1.2である点で、本発明の磁石に相当しない。この場合、残留磁束密度(Br)、配向度および角形性が低くなった。
比較例5の磁石は、R1を含まない点で(すなわち、Xが0である点で)、本発明の磁石に相当しない。この場合、保磁力(Hcj)が高くなった。
比較例6の磁石は、R1を含まない点で(すなわち、Xが0である点で)、本発明の磁石に相当しない。この場合、保磁力(Hcj)が高くなった。
比較例7の磁石は、R1を含まず(すなわち、Xが0であり)、アスペクト比が1.1である点で、本発明の磁石に相当しない。この場合、保磁力(Hcj)が高くなった。
比較例8の磁石は、アスペクト比が1.2である点で、本発明の磁石に相当しない。この場合、角形性が低いという点で劣っている。
比較例9の磁石は、アスペクト比が1.8である点で、本発明の磁石に相当しない。この場合、残留磁束密度(Br)および配向度が低くなった。
比較例10の磁石は、アスペクト比が2.0である点で、本発明の磁石に相当しない。この場合、残留磁束密度(Br)および配向度が低くなった。
特に、実施例1~7および実施例15~17の磁石は、残留磁束密度(Br)が13kG以上であり、かつ、保磁力が5kOe以下であるため、特に優れたR-T-B系希土類永久磁石であるといえる。
Claims (2)
- R2T14B構造からなる主相と、該主相の周りに存する粒界相と、を含み、該主相のアスペクト比が2超10未満であり、組成が(R1XR2(1-X))a(Fe(1-Z)CoZ)100-a-bBbであり、Gaを含まず、保磁力が5kOe以下である、R-T-B系希土類永久磁石。
(上記組成式中、R1はCe、La、Y、Gd、Er、LuおよびThからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、前記R2はNd、Pr、Sm、Tb、DyおよびHoからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素である。0<X<0.75、0≦Z<0.1、12≦a≦15、3.5≦b≦7.5) - 残留磁束密度(Br)が13kG以上である、請求項1に記載のR-T-B系希土類永久磁石。
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