JP2015216026A - 導電性ペースト及び配線基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】体積抵抗率の小さい硬化物を形成可能な導電性ペースト及びその導電性ペーストを熱硬化させた硬化物による配線を含む配線基板を提供する。
【解決手段】導電性ペーストは、導電性フィラーとなるSnBi合金粒子及びCu粒子と、熱硬化性樹脂と、硬化剤となるイミダゾール化合物と、フラックス成分となるアミンのアジピン酸塩と、を含んでいる。また、イミダゾール化合物はヒドロキシル基を有し、アミンのアジピン酸塩の活性化する温度は熱硬化性樹脂と共に用いられるときSnBi合金粒子の融点よりも低い、という特徴を有している。これによれば、導電性ペーストによる塗膜の焼成時に、SnBi合金粒子とCu粒子との間での金属結合を形成するのに適切な状態が長く続くため、金属結合の接合面が多く形成されて、塗膜を焼成した硬化物の体積抵抗率は小さくなる。
【選択図】図11

Description

本発明は、導電性ペースト及び配線基板に関し、特に、プリント配線基板等の配線材料として好適に用いられる体積抵抗率の小さい硬化物を形成可能な導電性ペースト及びその導電性ペーストを熱硬化させた硬化物による配線を含む配線基板に関する。
近年、電子機器を製造する技術分野において、配線基板の配線を形成するために、印刷した導電性ペーストを印刷して焼成した硬化物が用いられることがある。
そのような硬化物の体積抵抗率は、配線基板の配線の内部を伝達する電気信号の損失量を小さくするために、小さい方が好ましい。
従来の導電性ペーストとしては、特許文献1に記載の鉛フリー半田の技術を用いて一部が金属結合して連続した導電パスを形成する導電性ペーストが知られている。
従来の導電性ペーストは、Snと、Bi、In、AgおよびCuの群から選ばれる1種もしくはそれ以上の元素との組合せからなる合金粒子Yと、合金粒子Yよりも低い融点を有する合金粒子Zと、を含んでなる導電性フィラー成分と熱硬化性樹脂成分と硬化剤成分とフラックス成分と粘度調整/チクソ性付与添加剤とを含んでいる。導電性ペースト901は、回路基板に電子部品を実装する場合に、回路基板の電極と、電子部品の電極と、の間に所定量で塗布されると共に、加熱される。また、熱硬化性樹脂は、加熱されることによって硬化収縮して、電子部品と、基板と、を比較的強固に接合する。また、熱硬化性樹脂は、加熱されることによって合金粒子Zは溶融して、合金粒子Yの表面に付着して、合金粒子Y同士の間を接続して、熱硬化性樹脂の硬化物中に導電パスを形成する。
国際公開第2009/069273号
しかしながら、従来の導電性ペーストは、場合によっては、焼成時に内部の状態が適切に変化しないことがあり、導電パスの体積抵抗率を小さくする金属結合した接合面が少数しか形成されないことがあった。そのため、導電性ペーストの硬化物の体積抵抗率が大きくなってしまう、という問題があった。
本発明は、上述した課題を解決して、焼成したとき、体積抵抗率の小さい硬化物を形成可能な導電性ペースト及びその導電性ペーストを熱硬化させた硬化物による配線を含む配線基板を提供するものである。
この課題を解決するために、本発明の導電性ペーストは、導電性フィラーとなるSnBi合金粒子及びCu粒子と、熱硬化性樹脂と、硬化剤となるイミダゾール化合物と、フラックス成分となるアミンのアジピン酸塩と、を含んでいる導電性ペーストにおいて、前記イミダゾール化合物は、ヒドロキシル基を有し、前記アミンのアジピン酸塩の活性化する温度は、前記熱硬化性樹脂と共に用いられるとき、前記SnBi合金粒子の融点よりも低いことに特徴を有する。
これによれば、導電性ペーストによる塗膜の焼成時に、フラックス成分が活性化してから、熱硬化性樹脂が増粘して流動性が失われるまでの時間が長くなって、SnBi合金粒子とCu粒子との間での金属結合を形成するのに適切な状態が長く続くため、塗膜を焼成した硬化物内部には、SnBi合金粒子とCu粒子とが金属結合した接合面が多く形成されて、硬化物の体積抵抗率は小さくなる。
また、本発明の導電性ペーストは、前記アミンのアジピン酸塩のアミンの炭素数は、2以上であることを特徴としている。
これによれば、アミンの炭素数が2以上であることから、アミンのアジピン酸塩の分子内分極率は比較的小さくなるので、加熱工程中に熱硬化性樹脂の中に溶解し易くなる。そのため、熱硬化性樹脂と接している導電性フィラーの表面の酸化皮膜は効率的に除去されるとともに、熱硬化性樹脂と接している導電性フィラーの表面は、効率的に金属同士が濡れ易い状態に活性化されるので、硬化物内部には、金属結合した接合面が多く形成される。
また、本発明の導電性ペーストは、前記アミンのアジピン酸塩は、n−ブチルアミンアジピン酸塩であることを特徴としている。
これによれば、n−ブチルアミンアジピン酸塩のアミンの炭素数が4となっていることによって、熱硬化性樹脂に対する相溶性の大きさと、フラックス成分として活性化する温度の低さと、のバランスが良くなるため、焼成時に、導電性フィラー表面の酸化皮膜は十分に時間を掛けて除去されるとともに、導電性フィラーの表面は十分な時間を掛けて活性化されるので、導電性フィラーの集合した導電パスの各所には、金属結合した接合面を多く形成することが出来る。
また、本発明の導電性ペーストは、前記イミダゾール化合物は、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールであることを特徴としている。
これによれば、1つのヒドロキシル基及びフェニル基を有する2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールを用いることによって、熱硬化性樹脂に対するイミダゾール化合物の相溶性の大きさと、活性化する温度の高さと、のバランスが良くなる。そのため、焼成時に熱硬化性樹脂の中に均一に溶解する。また、熱硬化性樹脂の中に均一に溶解すると、活性化したときには熱硬化性樹脂を均一に硬化収縮させるので、熱硬化性樹脂に包まれた導電性フィラーの一部同士の接合面には収縮による力が効率的に作用して、導電性フィラーの一部が弾性変形することによって接合面の面積が大きくなり、導電性フィラーの集合した導電パスの体積抵抗率は小さくなる。
また、本発明の導電性ペーストは、前記熱硬化性樹脂は、分子構造の末端部分に反応性のグリシジル基を有する合成樹脂であることを特徴としている。
これによれば、分子構造の末端部分に反応性のグリシジル基を有する合成樹脂を用いることによって、熱硬化性樹脂を重合させた高分子量体の内部には、三次元架橋構造が形成されるので、導電性ペーストの硬化物の機械強度及び耐熱性が高くなる。また、三次元架橋構造を含む高分子量体の接着力は強いので、硬化物内部の導電性フィラー同士の接合面には、互いに接触する向きに硬化収縮する高分子量体からの力が強く掛かるため、その接合面は弾性変形して接触面積が広くなるので、硬化物内部の導電性フィラーの集合体の体積抵抗率は小さくなる。
また、本発明の導電性ペーストは、前記Cu粒子は、AgめっきCu粒子またはSnめっきCu粒子であることを特徴としている。
これによれば、Cu粒子の表面は、めっき膜に保護されて酸化され難くなるため、導電性ペーストを印刷して焼成した硬化物内部の導電性フィラーの集合体の体積抵抗率は小さくなる。
また、本発明の導電性ペーストは、前記導電性フィラーの平均粒子径は、10μm以下であることを特徴としている。
これによれば、平均粒子径を10μm以下とすることで、各粒子は転がり易くなるので、導電性ペーストは、滑らかなペースト性を備えるようになり、また、印刷性が良くなり、また、ファインピッチでのパターンニングが可能となる。
また、本発明の配線基板は、前記導電性ペーストを熱硬化させた硬化物による配線が形成されていることを特徴としている。
これによれば、配線の体積抵抗率が小さいことから、伝達される信号の損失が少ない配線基板を提供できる。
本発明の導電性ペーストは、その塗膜の焼成時に、フラックス成分が活性化してから、熱硬化性樹脂が増粘して導電性ペーストの流動性が失われるまでの時間が長くなって、SnBi合金粒子とCu粒子との間の金属結合を形成するのに適切な状態が長く続くため、塗膜を焼成した硬化物内部には、SnBi合金粒子とCu粒子とが金属結合した接合面が多く形成されて、硬化物の体積抵抗率は小さくなる。
以上のとおり、本発明によると、焼成したとき、体積抵抗率の小さい硬化物を形成可能な導電性ペーストが提供される。
本発明の実施形態の実施例1の結果を説明する表を示す図である。 実施形態の実施例2の結果を説明する表を示す図である。 実施形態の実施例2の結果のデータプロットを平滑線でつなげた散布図である。 実施形態の実施例3の結果を説明する表を示す図である。 実施形態の実施例4の結果を説明する表を示す図である。 実施形態の実施例4の結果のデータプロットを平滑線でつなげた散布図である。 実施形態の実施例5の結果を説明する表を示す図である。 実施形態の実施例5の結果のデータプロットを平滑線でつなげた散布図である。 実施形態の実施例1の条件1−1の塗膜を加熱するとき、加熱開始から30分経過するまでの間に、その塗膜の内部で起こる熱イベントの位置を付記した温度プロファイル図である。 実施形態の実施例1の条件1−1の塗膜を加熱するとき、加熱開始後2分から30分までの間に、その塗膜の内部で起こる熱イベントの位置を付記した温度プロファイル図である。 実施形態の導電性ペーストの加熱工程前の構成を説明する模式図である。 実施形態の導電性ペーストを印刷して焼成した硬化物の構成を説明する模式図である。 実施形態の導電性ペーストを熱硬化させた硬化物による配線を含む配線基板の構成を説明する上面図である。
以下、本発明の実施形態の導電性ペースト1について説明する。
[導電性ペーストの構成]
導電性ペースト1は、スクリーン印刷等の一般的な印刷技術を用いて、任意の形状の塗膜にパターニング可能なペーストの性状を有している。
また、導電性ペースト1は、導電性フィラーAと、熱硬化性樹脂Dと、硬化剤Eと、フラックス成分Fと、を含んでいる。
また、導電性フィラーAは、鉛フリー半田の成分を含む粒子からなる金属粒子Bと、Cu粒子からなる金属粒子Cと、を含んでいる。また、導電性フィラーAは、平均粒子径が10μm以下の微粒子である。さらに、鉛フリー半田の成分を含む粒子は、SnBi合金粒子である。またさらに、Cu粒子には、めっき膜によりCu粒子表面の酸化を防止させたAgめっきCu粒子またはSnめっきCu粒子が用いられる。
また、導電性フィラーAは、最も高い重量比で導電性ペースト1に配合されている。また、導電性フィラーAは、導電性ペースト1内に均一に分散されている。また、導電性フィラーAは、導電性フィラーAを内包する熱硬化性樹脂Dが硬化収縮したときには、導電性フィラーAの表面同士が接触するくらい高密度に分散されている。また、導電性フィラーAに含まれている金属粒子Bは、加熱されると溶融するSnBi合金粒子からなるので、金属粒子Bと金属粒子Cとの接合面は、加熱後には金属結合する。そのため、導電性ペーストを印刷して焼成した硬化物は、導電性を有し、電気的な配線として利用できるものとなる。
熱硬化性樹脂Dは、硬化剤Eと混合され且つ加熱されたとき、重合反応を起こして粘度が増加する合成樹脂である。また、熱硬化性樹脂Dは、硬化するとき、周囲の物質を接着する合成樹脂である。そのため、導電性ペースト1は、耐熱性の基板の上に任意の形状に成形してから所定の温度プロファイルで加熱するとき、加熱される前の外形を保持したまま硬化物になる。また、その硬化物及び基板の接合面は、熱硬化性樹脂D及び硬化剤Eからなる接着剤成分によって接合される。
熱硬化性樹脂Dには、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂またはビスフェノールF型のエポキシ樹脂または脂肪族環状型のエポキシ樹脂等の分子構造の末端部分に反応性のグリシジル基を有する合成樹脂が用いられる。
硬化剤Eには、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のヒドロキシル基を有するイミダゾール化合物が用いられる。
フラックス成分Fには、n−ブチルアミンアジピン酸塩(ノルマルブチルアミンアジピン酸塩)等の熱硬化性樹脂Dと共に用いられるとき、SnBi合金粒子の融点よりも活性化する温度の低いアミンのアジピン酸塩が用いられる。また、フラックス成分Fには、アミンの炭素数が2以上のアミンのアジピン酸塩が用いられる。フラックス成分Fは、系が加熱されたとき活性化して、導電性フィラーAの表面の酸化皮膜を除去する融剤である。また、フラックス成分Fは、酸化皮膜の除去された金属粒子Cの表面と、溶融した金属粒子Bの表面と、の濡れ性を良くさせる表面活性剤である。また、フラックス成分Fは、所定の加熱工程が終了して、系が除冷されたとき、不活性化して、導電性ペースト1の硬化物の内部の他の構成要素に化学的な影響を与えなくなる化学物質である。
尚、塩とは、酸性物質由来の陰イオンと、塩基性物質由来の陽イオンと、がイオン結合した物質のことを指す。また、アミンのアジピン酸塩とは、アジピン酸由来の陰イオンと、アミン化合物由来の陽イオンと、がイオン結合した物質のことを指す。
[導電性ペーストによる硬化物の作製]
次に、本発明の導電性ペースト1による硬化物の作製の詳細を説明する。図1は、本発明の実施形態の実施例1の結果を説明する表を示す図である。図9は、実施形態の実施例1の条件1−1の塗膜2を加熱するとき、加熱開始から30分経過するまでの間に、塗膜2の内部で起こる熱イベントの位置を付記した温度プロファイル図である。図10は、実施形態の実施例1の条件1−1の塗膜2を加熱するとき、加熱開始後2分から30分までの間に、塗膜2の内部で起こる熱イベントの位置を付記した温度プロファイル図である。図11は、実施形態の導電性ペースト1の加熱工程前の構成を説明する模式図である。図12は、実施形態の導電性ペーストを印刷して焼成した硬化物の構成を説明する模式図である。図13は、実施形態の導電性ペースト1を熱硬化させた硬化物による配線11を含む配線基板10の上面図である。
導電性ペースト1には、金属粒子Bとして、平均粒子径6μmのSnBi合金粉(Sn比率42w%)を25重量部配合する。また、金属粒子Cとして平均粒子径5μmのAgめっきCu粉を75重量部配合する。また、熱硬化性樹脂Dとして、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂(ADEKA製EP−4100HF)を15重量部配合する。また、フラックス成分Fとしてn−ブチルアミンアジピン酸塩を0.750重量部配合する。また、図1に示すように、硬化剤Eとして2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールを0.750重量部配合する。また、配合した材料は、手作業で混練した後、室温下で三本ロールミルを用いて分散処理して、均一に調製する。
調製が完了した導電性ペースト1は、スクリーン版(ステンレス400メッシュ(本/inch))を用いたスクリーン印刷で、厚さ75μmのPETフィルム基材へ幅0.3mm、長さ50mmの塗膜に成形する。また、その塗膜は、図13に示す配線11のような形状に印刷される。また、導電性ペーストの粘度が大きすぎて印刷が困難な場合は、反応性希釈剤(ADEKA製EP−4088S)を適宜加えて、粘度を調節する。
次に、本発明の特徴である導電性ペースト1の組成構成によって、加熱工程中に導電性ペースト1の内部構造が変化する状態について説明する。
また、加熱工程中の導電性ペースト1の塗膜構造の状態を分かり易くするために、図9及び図10に示す温度プロファイルの具体的な数値(加熱時間、温度)を参照しながら説明する。また、導電性ペースト1を印刷したパターンの内部構成は、図9及び図10に示す温度プロファイルで焼成されるとき、図11に示す塗膜2の構成から、特徴的な状態変化(熱イベントT1からT9)を経て、図12に示す硬化物の構成へと変わる。また、本実施形態の温度プロファイルは、金属粒子B(SnBi合金粒子)の融点よりも高い温度を含んでいるため、図11に示す加熱工程前の金属粒子Bは、加熱中に融解して、図12に示すように、焼成後には形状が変わる。
(熱イベントT1、熱硬化性樹脂Dの低粘度化)
塗膜2は、熱風乾燥炉に投入され、室温(25℃)から、毎秒3.5℃の硬化昇温速度で加熱される。また、塗膜2が熱風乾燥炉に投入されてから18秒経過したとき、塗膜2の温度は、およそ90℃に達する。また、熱硬化性樹脂Dは、およそ90℃になったとき、熱硬化性樹脂Dの分子のブラウン運動する力の大きさが分子同士を繋ぎ止める分子間相互作用の力の大きさより大きくなるので、低粘度化(熱イベントT1)する。また、低粘度化した熱硬化性樹脂Dは、塗膜2の内部の導電性フィラーAの占めている以外の領域で激しく対流する。また、図11に示す硬化剤E及びフラックス成分Fは、比重が小さいので、激しく対流する熱硬化性樹脂Dの流れに乗って移動する。また、熱イベントT1の前は熱硬化性樹脂Dの粘度によって、塗膜2の内部に均一に分散して保持されていた導電性フィラーAは、熱硬化性樹脂Dが低粘度化したとき、自重で塗膜2の底部に沈降する。また、沈降した導電性フィラーAは、表面同士が接する。また、熱硬化性樹脂Dは、低粘度化してから熱硬化性樹脂Dが重合して高分子量体Gを生成するために増粘して流動性を失う(熱イベントT7)まで、およそ32秒間、流動性のある状態を保つ。
(熱イベントT2、フラックス成分Fの溶解)
また、塗膜2が熱風乾燥炉に投入されてから24秒経過したとき、塗膜2の温度は110℃に達して、フラックス成分Fが熱硬化性樹脂Dの中に溶解(熱イベントT2)する。また、フラックス成分Fは、激しく対流する熱硬化性樹脂Dの流れに乗って移動しながら、熱硬化性樹脂Dの中に溶解するので、フラックス成分Fは一瞬で熱硬化性樹脂Dの中に均一に溶解(熱拡散)する。
(熱イベントT3、フラックス成分Fの活性化)
また、熱硬化性樹脂Dの中に均一に熱拡散したフラックス成分Fは、イオン結合が解離して活性化する。(熱イベントT3)また、活性化したフラックス成分Fは、熱硬化性樹脂Dと接する金属粒子B及び金属粒子Cの表面の酸化皮膜を解離したアジピン酸が還元して取り除く。また、活性化したフラックス成分Fは、金属粒子B及び金属粒子Cの表面に解離したアミンが吸着することにより活性化して金属同士の濡れ性を良くする。また、活性化したフラックス成分Fは、数分間、活性化した状態を保つ。
(熱イベントT4、硬化剤Eの溶解)
また、塗膜2が熱風乾燥炉に投入されてから30秒経過したとき、塗膜2の温度は130℃に達して、硬化剤Eが熱硬化性樹脂Dの中に溶解する。(熱イベントT4)また、硬化剤Eは、激しく対流する熱硬化性樹脂Dの流れに乗って移動しながら、熱硬化性樹脂Dの中に溶解するので、硬化剤Eは一瞬で熱硬化性樹脂Dの中に均一に熱拡散する。
(熱イベントT5、硬化剤Eの活性化)
また、熱硬化性樹脂Dの中に均一に熱拡散した硬化剤Eは、分子単位にほぐれて活性化する。(熱イベントT5)また、活性化した硬化剤Eは、熱硬化性樹脂Dの分子構造の末端部分の反応性のグリシジル基に作用して、熱硬化性樹脂Dの単独重合反応を開始させる。また、硬化剤Eは熱硬化性樹脂Dの中に均一に熱拡散しているので、熱硬化性樹脂Dは分子単位で均一に重合する。また、活性化した硬化剤Eは、数分間、活性化した状態を保つ。また、活性化した硬化剤Eによって、活性化された熱硬化性樹脂Dの分子構造の末端部分の反応性のグリシジル基は、付加反応を起こして近傍に存在する別のグリシジル基を活性化させる。また、活性化したグリシジル基は、近傍に存在する熱硬化性樹脂Dを重合させてなる高分子量体Gの一部と架橋結合する。また、重合反応及び架橋結合の形成が進むに従い、熱硬化性樹脂Dを重合させてなる高分子量体Gの粘度は、次第に大きくなる。また、イミダゾール化合物は、求核付加反応によって熱硬化性樹脂Dを重合させる。また、イミダゾール化合物が熱硬化性樹脂Dを重合させる化学反応は逐次反応なので、その反応速度は遅い。そのため、熱硬化性樹脂Dを重合させてなる高分子量体Gの粘度が大きくなる速度は遅い。
(熱イベントT6、金属粒子Bの融解)
また、塗膜2が熱風乾燥炉に投入されてから35秒経過したとき、塗膜2の温度は150℃に達して、金属粒子Bが融解する。(熱イベントT6)また、この時点では、熱硬化性樹脂Dの重合が開始してから、5秒程度しか経過していないので、熱硬化性樹脂Dは流動性を失っていない。また、この時点で、フラックス成分Fが活性化してから11秒経過しているので、金属粒子B及び金属粒子Cの表面の酸化皮膜は取り除かれている。また、この時点で、フラックス成分Fが活性化してから11秒経過しているので、金属粒子B及び金属粒子Cの表面は金属同士が濡れやすい状態に活性化されている。また、金属粒子B及び金属粒子Cは、熱硬化性樹脂Dが低粘度化(熱イベントT1)したときに、塗膜2の底部に沈降して、表面同士が接触している。また、活性化された金属粒子B及び金属粒子Cの接合面の端部には、表面自由エネルギーによって濡れ広がる力が掛かるので、温度が上がって金属粒子Bが融解したとき、溶融した金属粒子Bは金属粒子Cの表面形状に沿って変形しながら濡れ広がる。また、金属粒子Bが、融解(熱イベントT6)してから、粘度の増加した高分子量体Gに動きを阻まれて変形できなくなる(熱イベントT7)まで、およそ25秒間、金属粒子B及び金属粒子Cの接合面は形成され続ける。
(熱イベントT7、流動性の喪失)
また、熱イベントT5で熱硬化性樹脂Dの重合が開始してからおよそ30秒経過したとき、熱硬化性樹脂Dを重合させてなる高分子量体Gの粘度は、導電性ペースト1の有機成分が流動性を失うほどに大きくなる。また、融解した金属粒子Bは、流動性を失った熱硬化性樹脂Dを重合させてなる高分子量体Gに動きを阻まれて変形できなくなるので、金属粒子B及び金属粒子Cの接合面の増加は止まる。
(金属結合した接合面の形成)
また、融解して濡れ広がった金属粒子Bと金属粒子Cとの接合面は、温度が下がって金属粒子Bが固体化したとき、金属結合によって接合される。また、金属粒子Bと金属粒子Cとが金属結合した接合面の電気抵抗は、例えば、金属粒子Cの表面同士が接触した接合面の電気抵抗より小さくなる。そのため、金属粒子Bと金属粒子Cとが金属結合した接合面が多くなるとき、導電性フィラーAの集合した導電パスの体積抵抗率は小さくなる。
(熱イベントT8、柔軟性の喪失)
また、塗膜2の有機成分の流動性が喪失した後、熱硬化性樹脂Dを重合させてなる高分子量体Gの分子同士は、一部が架橋結合して密接につながりあう分子構造(三次元架橋構造)を形成する。また、高分子量体Gの中の三次元架橋構造の数が増えるに従って、塗膜2は次第に柔軟性を失う。(熱イベントT8)
(熱イベントT9、硬化収縮)
また、加熱工程を継続する間、熱硬化性樹脂Dを重合させてなる高分子量体Gの中の三次元架橋構造の数は増え続けるので、塗膜2が熱風乾燥炉に投入されてからおよそ120分経過したとき、塗膜2は硬くなる。また、熱硬化性樹脂Dを重合させてなる高分子量体Gは硬化収縮して体積が小さくなる。(熱イベントT9)そのため、加熱工程の後の硬化物の厚さは、加熱工程前の塗膜2の厚さより薄くなる。また、硬化収縮する高分子量体Gに包まれている導電性フィラーAの集合した導電パスには、引き締められる力が作用するので、導電性フィラーAの粒子の表面同士が接触する接合面は、微小に弾性変形または塑性変形して接触面積が広くなる。また、接合面の面積が広くなるとき、金属接点の電気抵抗は小さくなるので、硬化物の体積抵抗率は小さくなる。また、図13に示す配線11の体積抵抗率は小さくなるので、配線基板10上で伝達される信号は、損失が少なくなる。
このように、本発明の実施形態の導電性ペースト1は、導電性フィラーAとなるSnBi合金粒子(金属粒子B)及びCu粒子(金属粒子C)と、熱硬化性樹脂Dと、硬化剤Eとなるイミダゾール化合物と、フラックス成分Fとなるアミンのアジピン酸塩と、を含んでいる。また、イミダゾール化合物は、ヒドロキシル基を有し、アミンのアジピン酸塩の活性化する温度は、熱硬化性樹脂Dと共に用いられるとき、SnBi合金粒子の融点よりも低い、という特徴を有している。これによれば、導電性ペースト1による塗膜2の焼成時に、フラックス成分Fが活性化してから、熱硬化性樹脂Dが増粘して流動性が失われるまでの時間が長くなって、金属粒子Bと金属粒子Cとの間での金属結合を形成するのに適切な状態が長く続くため、塗膜2を焼成した硬化物内部には、金属粒子Bと金属粒子Cとが金属結合した接合面が多く形成されて、硬化物の体積抵抗率は小さくなる。
また、本発明の実施形態の導電性ペースト1は、アミンのアジピン酸塩のアミンの炭素数は、2以上であることを特徴としている。これによれば、アミンの炭素数が2以上であることから、アミンのアジピン酸塩の分子内分極率は比較的小さくなるので、加熱工程中に熱硬化性樹脂Dの中に溶解し易くなる。そのため、熱硬化性樹脂Dと接している導電性フィラーAの表面の酸化皮膜は効率的に還元されて除去されるとともに、熱硬化性樹脂Dと接している導電性フィラーAの表面は、効率的に金属同士が濡れ易い状態にアミンが吸着して活性化されるので、硬化物内部には、金属結合した接合面が多く形成される。
また、本発明の実施形態の導電性ペースト1は、アミンのアジピン酸塩は、n−ブチルアミンアジピン酸塩であることを特徴としている。これによれば、n−ブチルアミンアジピン酸塩のアミンの炭素数が4となっていることによって、熱硬化性樹脂Dに対する相溶性の大きさと、フラックス成分として活性化する温度の低さと、のバランスが良くなるため、焼成時に、導電性フィラーA表面の酸化皮膜は十分に時間を掛けて除去されるとともに、導電性フィラーAの表面は十分な時間を掛けて活性化されるので、導電性フィラーAの集合した導電パスの各所には、金属結合した接合面を多く形成することが出来る。
また、本発明の実施形態の導電性ペースト1は、イミダゾール化合物は、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールであることを特徴としている。これによれば、1つのヒドロキシル基及びフェニル基を有する2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールを用いることによって、熱硬化性樹脂Dに対するイミダゾール化合物の相溶性の大きさと、活性化する温度の高さと、のバランスが良くなる。そのため、焼成時に熱硬化性樹脂Dの中に均一に溶解する。また、熱硬化性樹脂Dの中に均一に溶解すると、活性化したときには熱硬化性樹脂Dが均一に硬化するので、金属接合による導電性フィラーAの集合した導電パスが均一に、すなわち電気的な接合の欠陥が少なくなるので、導電性フィラーAの集合した導電パスの体積抵抗率は小さくなる。
また、本発明の実施形態の導電性ペースト1は、熱硬化性樹脂は、分子構造の末端部分に反応性のグリシジル基を有する合成樹脂であることを特徴としている。これによれば、分子構造の末端部分に反応性のグリシジル基を有する合成樹脂を用いることによって、熱硬化性樹脂Dを重合させた高分子量体Gの内部には、三次元架橋構造が形成されるので、導電性ペースト1の硬化物の機械強度及び耐熱性が高くなる。
また、本発明の実施形態の導電性ペースト1は、金属粒子Cは、AgめっきCu粒子またはSnめっきCu粒子であることを特徴としている。これによれば、金属粒子Cの表面は、めっき膜に保護されて酸化され難くなるため、導電性ペースト1を印刷して焼成した硬化物内部の導電性フィラーAの集合体の体積抵抗率は小さくなる。
また、本発明の実施形態の導電性ペースト1は、導電性フィラーAの平均粒子径は、10μm以下であることを特徴としている。これによれば、平均粒子径を10μm以下とすることで、各粒子は転がり易くなるので、導電性ペースト1は、滑らかなペースト性を備えるようになり、また、印刷性が良くなり、また、ファインピッチでのパターンニングが可能となる。
また、本発明の実施形態の配線基板10は、導電性ペースト1を熱硬化させた硬化物による配線11が形成されていることを特徴としている。これによれば、配線11の体積抵抗率が小さいことから、伝達される信号の損失が少ない配線基板10とすることができる。
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができる。例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
上記実施形態では、金属粒子Cとして、めっき処理をしたCu粒子を用いた構成となっていたが、金属粒子Cは、めっき処理をしていないCu粒子であってもよい。このことによれば、導電性フィラーAの材料コストが小さくなるので、導電性ペースト1の製造コストは小さくなる。
上記実施形態では、金属粒子Cとして、単独のAgめっきCu粒子または単独のSnめっきCu粒子を用いた構成となっていたが、AgめっきCu粒子及びSnめっきCu粒子の混合粉を用いた構成であってもよい。このことによれば、Agめっき膜と、Snめっき膜と、では、加熱前における熱硬化性樹脂Dに対する濡れ性が異なるので、配合比を調節することにより導電性ペーストのペースト粘度が調節可能となる。
上記実施形態では、単独の成分からなる熱硬化性樹脂Dを用いた構成となっていたが、熱硬化性樹脂Dには、複数種類の樹脂混合物を用いても良い。このことによれば、複数の樹脂混合物を硬化させてなる高分子量体Gは、共重合構造を併せ持つようになるので、導電性ペースト1の硬化物は、必要とされる吸水率や透湿性、硬化硬度、線膨張係数などの物性を併せ持つようになる。
上記実施形態では、硬化剤Eには、単独の成分からなるイミダゾール化合物が用いられていたが、硬化剤Eには、複数種類のイミダゾール化合物を混合した組成体が用いられていてもよい。このことによれば、単独の成分からなるイミダゾール化合物を用いる場合には制御することの困難な熱硬化性樹脂Dの重合開始温度及び硬化速度のプロファイルを、詳細に制御可能になる。
上記実施形態では、単独のアミンのアジピン酸塩からなるフラックス成分Fが用いられていたが、フラックス成分Fは、複数種類のアミンのアジピン酸塩を混合させたものであってもよい。このことによれば、加熱工程中に、フラックス成分Fの活性化する温度及び加熱時間の範囲を広げることが可能となるので、導電性フィラーAの表面が金属結合を形成するのに適した状態に活性化される温度及び加熱時間の範囲を広げることが可能となる。
尚、本発明の実施形態では、分かり易くするために、熱イベントT1からT9について、具体的な時間及び温度を示して説明したが、これらの時間及び温度は、導電性ペースト1の配合及び加熱工程の温度プロファイルに準じてずれる値であることは明らかである。そのため、熱イベントT1からT9の時間及び温度のずれた類似の実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
尚、熱イベントT2からT3は、分かり易くするために、別の状態として分割して説明したが、これらの状態が連続して起こることは化学の一般的な知識に属する事柄なので言うまでもない。また、これらの状態は一部が重複して起こるので、熱イベントT2からT3に係る状態の一部が入れ替わった類似の実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
尚、熱イベントT3からT4及び熱イベントT7からT9は、分かり易くするために、別の状態として分割して説明したが、これらの状態が連続して起こることは化学の一般的な知識に属する事柄なので言うまでもない。また、これらの状態は一部が重複して起こるので、熱イベントT3からT4及び熱イベントT7からT9に係る状態の一部が入れ替わった類似の実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
[硬化剤Eの化学種の検討]
以下、実施形態の実施例1について説明する。図1は、本発明の実施形態の実施例1の結果を説明する表を示す図である。
(材料の配合)
実施例1の条件1−1には、金属粒子Bとして、平均粒子径6μmのSnBi合金粉(Sn比率42w%)を25重量部配合した。また、金属粒子Cとして平均粒子径5μmのAgめっきCu粉を75重量部配合した。また、熱硬化性樹脂Dとして、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂(ADEKA製EP−4100HF)を15重量部配合した。また、フラックス成分Fとしてn−ブチルアミンアジピン酸塩を0.750重量部配合した。また、図1に示すように、硬化剤Eとして2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールを0.750重量部配合した。
尚、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールは、イミダゾール環に、1つのフェニル基と、1つのメチル基と、1つのヒドロキシル基と、が結合した化合物である。
また、図1に示すように、本実施例の条件1−2には、硬化剤Eとして2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールを0.750重量部配合した。また、本実施例の比較例1の材料には、硬化剤として2−メチルイミダゾールを0.750重量部配合した。また、条件1−2及び比較例1の硬化剤以外の材料は、条件1−1と同じ成分を同じ量配合した。
尚、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールは、イミダゾール環に、1つのフェニル基と、1つのメチル基と、2つのヒドロキシル基と、が結合した化合物である。
尚、2−メチルイミダゾールは、イミダゾール環に、1つのメチル基が結合した化合物である。
(分散処理)
配合した材料は、手作業で混練した後、室温下で三本ロールミルを用いて分散処理して、均一に調製した。
(印刷条件)
調製が完了した導電性ペーストは、スクリーン版(ステンレス400メッシュ(本/inch))を用いたスクリーン印刷で、厚さ75μmのPETフィルム基材へ幅0.3mm、長さ50mmの塗膜に成形した。また、導電性ペーストの粘度が大きすぎて印刷が困難な場合は、反応性希釈剤(ADEKA製EP−4088S)を適宜加えて、粘度を調節した。また、塗膜は、条件毎に、n=5印刷し、サンプル数が5つとなるようにした。
(加熱工程)
印刷した塗膜及びPETフィルム基材は、熱風乾燥炉を用いて、室温から毎秒3.5℃の昇温速度(硬化昇温速度)で170℃まで加熱した。また、170℃の状態を30分間保持した後、熱風乾燥炉から取り出して、室温下で除冷した。
以上の工程を経て、PETフィルム基材上に形成された導電性ペーストを印刷して焼成した硬化物を得た。
(硬化物の体積抵抗率の測定)
加熱工程の終了した各条件でそれぞれ5つの硬化物の寸法を測定したところ、平均値で長さ50mm、幅0.3mm、膜厚32μmであった。また、それぞれの硬化物の長さ方向の両端部にデジタルマルチメーターの端子を当てて、4端子法で、電気抵抗値[Ω]を測定した。また、測定した電気抵抗値及び寸法を、体積抵抗率[Ω・cm]=電気抵抗値[Ω]×膜厚[cm]×幅[cm]/長さ[cm]の関数に代入して、各条件のそれぞれ硬化物の体積抵抗率を算出した。
尚、硬化物の体積抵抗率は、各条件の5つの硬化物ひとつずつについて算出し、各条件の5つの硬化物の体積抵抗率の平均値を、その条件での体積抵抗率とした。
尚、硬化物の膜厚は、実寸をイメージし易くするために、具体的な数値で説明したが、膜厚は、5つの硬化物ひとつずつについて測定し、各硬化物での任意の5箇所について膜厚測定を実施し、それらの測定値の平均値をその硬化物の膜厚とし、各条件の5つの硬化物の平均値をその条件での膜厚とした。
(結果)
図1の表に示すように、硬化剤Eとして2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールを用いた条件1−1の導電性ペースト1を印刷して焼成した硬化物の体積抵抗率は、1.0E−4[Ω・cm]だった。また、硬化剤Eとして2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールを用いた条件1−2の体積抵抗率は、2.0E−4[Ω・cm]だった。また、硬化剤として2−メチルイミダゾールを用いた比較例1の硬化物は、導通しなかった。
(考察;ヒドロキシル基を有する硬化剤E)
ヒドロキシル基を有するイミダゾール化合物を硬化剤Eとして用いた条件1−1及び条件1−2の体積抵抗率が、ヒドロキシル基を持たない硬化剤を用いた比較例1の体積抵抗率より優れていた理由について考察する。最初に注目すべきことは、分子内にヒドロキシル基を有する物質は水素結合の影響を受けて相転移温度が高くなるので、ヒドロキシル基を有する硬化剤Eの相転移温度は高くなる、ということである。また、硬化剤Eの相転移温度が高い場合、硬化剤Eの活性化する温度は高くなる。その様な場合、熱硬化性樹脂Dは、加熱工程中に、高温且つ液相である状態を保つ時間が長くなる。また、導電性ペースト1は、鉛フリー半田の技術を用いて硬化物の内部に金属結合した接合面を形成することを前提とした構成となっている。また、高温且つ液相である状態は化学反応が活発に起こる上で理想的な状態である。これらの条件が揃っている場合、加熱時に、フラックス成分Fは、化学反応によって活発に導電性フィラーAの金属表面の酸化皮膜を取り除く。また、フラックス成分Fは、化学反応によって活発に導電性フィラーAの表面を活性化させて、金属表面同士が濡れ易い状態にする。そのため、加熱工程中において、導電性フィラーAは、酸化皮膜が十分に取り除かれ、且つ、表面が十分に活性化され、且つ、液相に包まれて容易に移動または変形可能である、という状態で長く保持される。このような状態は、半田の金属結合を形成するのに適切な条件なので、条件1−1及び条件1−2の硬化物内部には、金属結合によって接合された接合面が多く形成された、と考えてよい。
(考察;ヒドロキシル基の数)
1つのヒドロキシル基を有する硬化剤Eを用いた条件1−1の体積抵抗率が、2つのヒドロキシル基を有する硬化剤Eを用いた条件1−2の体積抵抗率よりも小さかった理由について考察する。分子内にヒドロキシル基を有する物質の物性について考察するとき、相転移温度の次に考察すべき一般的な事柄は、極性の高い官能基(ヒドロキシル基)が分子に結合していることによって、その分子の分子内分極率が大きくなるということである。また、その様な分子の分子内分極率は、分子内に有しているヒドロキシル基の数に順じて大きくなる。また、分子内分極率の著しく異なる物質同士は相溶し難くなる。
相溶性の小さい硬化剤E及び熱硬化性樹脂Dを反応させてなる高分子量体Gは、相溶性の大きな材料を用いた場合と比較して、特性が変わる可能性がある。
以下に、実施例1の考察をまとめる。2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールは、極性の小さな官能基であるフェニル基を有するので、硬化剤Eの分子内分極率は小さい。また、熱硬化性樹脂Dの分子内分極率は小さいので、硬化剤E及び熱硬化性樹脂Dの分子内分極率の差は小さくなる。また、硬化剤E及び熱硬化性樹脂Dの相溶性は高くなる。また、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールは、イミダゾール環に結合したヒドロキシル基の数は1つなので、硬化剤Eの分子内分極率は大きくなり過ぎない。また、硬化剤E及び熱硬化性樹脂Dの相溶性は低くなり過ぎない。熱硬化性樹脂Dに対する相溶性が高い硬化剤Eは、熱硬化性樹脂Dの中に均一に溶解する。また、熱硬化性樹脂Dの中に均一に溶解した硬化剤Eの分子は、熱硬化性樹脂Dの分子に均一に作用する。また、熱硬化性樹脂Dの中に均一に溶解した硬化剤Eの分子は活性化する温度に達したとき、熱硬化性樹脂Dの分子を均一に重合させる。そして、均一に重合した熱硬化性樹脂Dを重合してなる高分子量体Gは、均一に硬化収縮するので、高分子量体Gの中に分散している導電性フィラーAの集合した導電パスは、全体が均一に引き締められる。また、導電性フィラーAは、表面の一部同士が確実に接触する。また、収縮した高分子量体Gに引き締められて一部が接触した導電性フィラーAの接合面は、弾性変形して接触面積が広くなるので、その導電パスの体積抵抗率は小さくなる。
また、イミダゾール環に結合したフェニル基がイミダゾール化合物の塩基部分を共鳴安定化させるので、イミダゾール化合物は塩基性が強くなる。また、塩基性の強いイミダゾール化合物を硬化剤Eとして用いるとき、熱硬化性樹脂Dを重合してなる高分子量体Gの内部に形成される架橋結合は、形成される機会が増える。そして、架橋結合が密に形成された高分子量体の自由体積は小さくなるので、高分子量体Gは接着性が良くなる。また、高分子量体Gに保持される導電性フィラーAは、強い接着力に支えられて確実に保持される。そして、高分子量体Gに保持された導電性フィラーAの集合した導電パスは、熱硬化性樹脂Dの硬化収縮する力の作用をまともに受けるので、導電性フィラーA同士は一部が確実に接触する。また、その導電性フィラーA同士の接合面は、一部が弾性変形して接触面積が広くなるので、その導電パスの体積抵抗率は小さくなる。また、その導電パスを内包した硬化物の体積抵抗率は小さくなる。
[フラックス成分Fの選択]
以下、実施形態の実施例2について説明する。図2は、実施形態の実施例2の結果を説明する表を示す図である。図3は、実施形態の実施例2の結果のデータプロットを平滑線でつなげた散布図である。図11は、実施形態の導電性ペースト1の加熱工程前の構成を説明する模式図である。
(材料の配合)
実施例2の条件2−1には、実施例1の条件1−1と同じ成分を同じ量配合した。
また、本実施例の条件2−2には、フラックス成分Fとしてジメチルアミンアジピン酸塩を0.750重量部配合した。また、本実施例の条件2−3には、フラックス成分Fとしてモノエチルアミンアジピン酸塩を0.750重量部配合した。また、本実施例の比較例2−1には、フラックス成分を配合しなかった。また、本実施例の比較例2−2には、フラックス成分としてモノエチルアミン塩酸塩を0.750重量部配合した。また、本実施例の比較例2−3には、フラックス成分として1,3−ジフェニルグアニジン塩酸塩を0.750重量部配合した。また、条件2−2及び条件2−3及び比較例2−1から比較例2−3のフラックス成分以外の材料は、条件2−1と同じ成分を同じ量配合した。
(分散処理、印刷条件、加熱工程、硬化物の体積抵抗率の測定)
実施例2の分散処理、印刷条件、加熱工程、硬化物の体積抵抗率の測定は、実施例1と同様の手順で実施した。
(結果)
図2の表に示すように、フラックス成分Fとしてn−ブチルアミンアジピン酸塩を用いた条件2−1の導電性ペースト1を印刷して焼成した硬化物の体積抵抗率は、1.0E−4[Ω・cm]だった。また、フラックス成分Fとしてジメチルアミンアジピン酸塩を用いた条件2−2の体積抵抗率は、3.0E−4[Ω・cm]だった。また、フラックス成分Fとしてモノエチルアミンアジピン酸塩を用いた条件2−3の体積抵抗率は、4.0E−4[Ω・cm]だった。また、フラックス成分を配合しなかった比較例2−1の体積抵抗率は、1.0E+12[Ω・cm]だった。また、フラックス成分としてモノエチルアミン塩酸塩を用いた比較例2−2の体積抵抗率は、1.5E−1[Ω・cm]だった。また、フラックス成分として1,3−ジフェニルグアニジン塩酸塩を用いた比較例2−3の体積抵抗率は、2.0E−1[Ω・cm]だった。
(考察;フラックス成分及び熱硬化性樹脂の相溶性)
アミンのアジピン酸塩を用いた条件2−1から条件2−3の体積抵抗率は、アミンの塩酸塩を用いた比較例2−2の体積抵抗率より3桁小さかった。また、アミンのアジピン酸塩及びアミンの塩酸塩は、半田の融剤として一般的に用いられる化学種なので、融剤としての作用の強さに格別な違いがあるとは考え難い。これらの情報は、導電性ペーストの内部でフラックス成分が作用するとき、フラックス成分の分子単独の融剤としての強さ以外の要素が、導電性ペーストを印刷して焼成した硬化物の体積抵抗率の大きさに影響を与えている可能性があることを示唆している。また、その示唆の内容を考慮しながら、本実施例の各条件の導電性ペーストの原料を見直すと、アミンのアジピン酸塩の分子内分極率と、アミンの塩酸塩の分子内分極率と、が大きく異なることに気が付く。また、その分子内分極率の違いによって、熱硬化性樹脂及びアミンのアジピン酸塩の相溶性と、熱硬化性樹脂及びアミンの塩酸塩の相溶性と、が大きく異なることに気が付く。
以下に、熱硬化性樹脂及びフラックス成分の相溶性に関連する情報を整理する。塩の定義は、実施形態の導電性ペーストの構成で説明したとおりである。また、分子内分極率と、相溶性と、の関係については、実施例1で説明したとおりである。また、塩の分子内分極率は、酸性物質の酸としての強さと、塩基性物質の塩基としての強さと、に依存する。また、アジピン酸は、塩酸より弱い酸性物質なので、アミンのアジピン酸塩の分子内分極率は、アミンの塩酸塩より小さい。また、本実施例に用いた熱硬化性樹脂D(ADEKA製EP−4100HF)は、主鎖にビスフェノールAの分子構造を含む分子内分極率が小さい樹脂なので、アミンのアジピン酸塩は、アミンの塩酸塩より熱硬化性樹脂Dの中に溶解し易い。
以下に、条件2−1から条件2−3の結果が優れていた理由について、具体的に考察する。フラックス成分Fが融剤として作用する対象は導電性フィラーAの表面である。また、導電性フィラーAの表面と、最も広い面積で接触しているのは、図11に示す熱硬化性樹脂Dなので、フラックス成分Fと熱硬化性樹脂Dとの関係が、導電性ペースト1を印刷して焼成した硬化物の体積抵抗率に影響を与えた可能性は高い。つまり、熱硬化性樹脂Dの内部に溶解し易いアミンのアジピン酸塩は、加熱工程中に熱硬化性樹脂Dの中に溶解して、熱硬化性樹脂Dと接している導電性フィラーAの表面に作用する機会が多くなる。そのため、加熱工程中に、導電性ペースト1の内部の導電性フィラーAの表面の酸化皮膜は十分に除去される。また、酸化皮膜を除去された導電性フィラーAの表面は十分に活性化されて、鉛フリー半田の金属結合が形成され易い状態になる。そして、そのような状態は、半田の金属結合が形成されるのに適しているので、金属結合した接合面が、導電性フィラーAの集合した導電パスの各所に形成される。
(考察;アミンのアジピン酸塩のアミンの炭素数)
図3に示すように、アミンのアジピン酸塩のアミンの炭素数を大きくするとき、体積抵抗率が小さくなる傾向が現れた原因についても、アミンのアジピン酸塩及び熱硬化性樹脂Dの相溶性の違いから説明することが可能である。即ち、アミンの炭素数が大きくなるとき、アミンのアジピン酸塩の極性は小さくなるので、アミンのアジピン酸塩は加熱工程中に熱硬化性樹脂Dの中に溶解し易くなる。そのため、フラックス成分Fとして、アミンの炭素数が大きいアミンのアジピン酸塩を用いるとき、導電性フィラーAの表面の酸化皮膜は十分に取り除かれた。また、酸化皮膜を除かれた導電性フィラーAの表面は十分に活性化されて、鉛フリー半田の金属結合が形成され易い状態になった。このように解釈すると、アミンの炭素数が4であるn−ブチルアミンアジピン酸塩を用いた条件2−1の結果が優れていた理由を説明できる。ただし、アミンのアジピン酸塩のアミンの炭素数を大きくする場合、アミンのアジピン酸塩の分子量は大きくなって、活性化温度が上がるので、アミンのアジピン酸塩のアミンの炭素数は広い視野を持って選択すべきである。
[熱硬化性樹脂Dの比較]
以下、実施形態の実施例3について説明する。図4は、実施形態の実施例3の結果を説明する表を示す図である。
(材料の配合)
実施例3の条件3−1には、実施例1の条件1−1と同じ成分を同じ量配合した。
また、本実施例の条件3−2には、熱硬化性樹脂DとしてビスフェノールF型のエポキシ樹脂(日本化薬製RE−303S−L)を15重量部配合した。また、本実施例の条件3−3には、熱硬化性樹脂Dとして脂肪族環状型のエポキシ樹脂(ADEKA製EP−4088S)を15重量部配合した。また、条件3−2及び条件3−3の熱硬化性樹脂D以外の材料は、条件3−1と同じ成分を同じ量配合した。
(分散処理、印刷条件、加熱工程、硬化物の体積抵抗率の測定)
実施例3の分散処理、印刷条件、加熱工程、硬化物の体積抵抗率の測定は、実施例1と同様の手順で実施した。
(結果)
図4の表に示すように、熱硬化性樹脂DとしてビスフェノールA型のエポキシ樹脂を用いた条件1−1の体積抵抗率は、1.0E−4[Ω・cm]だった。また、熱硬化性樹脂DとしてビスフェノールF型のエポキシ樹脂を用いた条件3−2の体積抵抗率は、0.9E−5[Ω・cm]だった。また、熱硬化性樹脂Dとして脂肪族環状型のエポキシ樹脂を用いた条件3−3の体積抵抗率は、1.0E−4[Ω・cm]だった。
(考察)
当業者が導電性ペーストの体積抵抗率を小さくするために樹脂成分の技術検討をするとき、樹脂成分の焼成後の物性は、注目されることが多い。一方、樹脂成分の焼成中の物性は、注目されないことが多い。また、焼成開始から除冷までの間、塗膜内部が状態変化する様子を、連続的且つ継続的に観察し続けることは困難なので、焼成中の塗膜内部がどのように変化するのか、具体的には良く判っていない。そのような事情から、本実施例では、条件3−1から条件3−3の導電性ペースト1の熱硬化性樹脂Dには、重合して硬化したとき、剛性、可撓性、弾性等の物性の異なる高分子量体を形成する代表的な3系統のエポキシ樹脂を用いて比較実験した。そして、条件3−1から条件3−3の結果の間には、大きな差が無かった。つまり、本実施例の結果は、熱硬化性樹脂Dまたは熱硬化性樹脂Dを重合させてなる高分子量体Gの焼成後の物性が、導電性ペースト1を印刷して焼成した硬化物の体積抵抗率に殆ど影響を与えない可能性があることを示唆する内容を含んでいた。つまり、本実施例の結果を逆説的に捉えれば、硬化物の体積抵抗率は、熱硬化性樹脂Dの硬化反応が終了する前に決定する、と解釈することが出来る。
[n−ブチルアミンアジピン酸塩の配合量]
以下、実施形態の実施例4について説明する。図5は、実施形態の実施例4の結果を説明する表を示す図である。図6は、実施形態の実施例4の結果のデータプロットを平滑線でつなげた散布図である。
(材料の配合)
実施例4の条件4−1には、実施例1の条件1−1と同じ成分を同じ量配合した。
また、本実施例の条件4−2には、フラックス成分Fとしてn−ブチルアミンアジピン酸塩を0.300重量部配合した。また、本実施例の条件4−3には、フラックス成分Fとしてn−ブチルアミンアジピン酸塩を0.150重量部配合した。また、本実施例の条件4−4には、フラックス成分Fとしてn−ブチルアミンアジピン酸塩を0.075重量部配合した。また、本実施例の条件4−5には、フラックス成分Fとしてn−ブチルアミンアジピン酸塩を0.015重量部配合した。また、条件4−2から条件4−5のフラックス成分F以外の材料は、条件4−1と同じ成分を同じ量配合した。
(分散処理、印刷条件、加熱工程、硬化物の体積抵抗率の測定)
実施例4の分散処理、印刷条件、加熱工程、硬化物の体積抵抗率の測定は、実施例1と同様の手順で実施した。
(結果)
図5の表に示すように、条件4−1の体積抵抗率は、1.0E−4[Ω・cm]だった。また、条件4−2の体積抵抗率は、5.0E−4[Ω・cm]だった。また、条件4−3の体積抵抗率は、8.0E−4[Ω・cm]だった。また、条件4−4の体積抵抗率は、9.0E−3[Ω・cm]だった。また、条件4−5の体積抵抗率は、1.0E+0[Ω・cm]だった。
また、図6のグラフに示すように、フラックス成分Fとしてn−ブチルアミンアジピン酸塩を配合した硬化物の体積抵抗率は、n−ブチルアミンアジピン酸塩の配合量が増えるほど、小さくなる傾向を示した。また、その体積抵抗率は、n−ブチルアミンアジピン酸塩の配合量を0.015重量部から0.300重量部まで増やしたとき、指数関数的に減少して、8.0E−4[Ω・cm]前後で一度飽和した。また、その体積抵抗率は、n−ブチルアミンアジピン酸塩の配合量を0.300重量部から0.750重量部まで増やしたとき、一次関数的に小さくなる傾向を示した。
(考察)
本実施例の導電性ペースト1の体積抵抗率が示した傾向は、指数関数的な傾向と、一次関数的な傾向と、を複合して含んでいた。このような傾向は、n−ブチルアミンアジピン酸塩が導電性ペースト1を印刷して焼成した硬化物の体積抵抗率を小さくさせる作用が2種類以上存在することを示している。また、n−ブチルアミンアジピン酸塩の添加量が多くなるとき、それらの作用は、複合して、全体的に導電性ペースト1を印刷して焼成した硬化物の体積抵抗率を小さくすることを示している。ただし、n−ブチルアミンアジピン酸塩は、熱硬化性樹脂Dを重合させてなる高分子量体Gから見れば、重合後に高分子量体G中に残留する不純物に相当するので、思わぬ副作用の原因となる虞がある。そのため、n−ブチルアミンアジピン酸塩の配合量は、ただ単に多くすればよい訳ではなく、製品全体の性能を視野に入れて広い範囲から選ぶべき値であることは言うまでも無い。
[硬化昇温速度の調査]
以下、実施形態の実施例5について説明する。図7は、実施形態の実施例5の結果を説明する表を示す図である。図8は、実施形態の実施例5の結果のデータプロットを平滑線でつなげた散布図である。
(材料の配合)
実施例5の条件5−1から条件5−3には、実施例1の条件1−1と同じ成分を同じ量配合した。
(分散処理、印刷条件、硬化物の体積抵抗率の測定)
実施例5の分散処理、印刷条件、硬化物の体積抵抗率の測定は、実施例1と同様の手順で実施した。
(加熱工程)
実施例5の条件5−1の印刷した導電性ペースト1及びPETフィルム基材は、実施例1と同様の手順で加熱工程を施した。また、本実施例の条件5−2の印刷した導電性ペースト1及びPETフィルム基材は、熱風乾燥炉を用いて、毎秒1.0℃の硬化昇温速度で170℃まで加熱した。また、170℃の状態を30分間保持した後、熱風乾燥炉から取り出して、室温下で除冷した。また、本実施例の条件5−3の印刷した導電性ペースト1及びPETフィルム基材は、熱風乾燥炉を用いて、毎秒0.5℃の硬化昇温速度で170℃まで加熱した。また、170℃の状態を30分間保持した後、熱風乾燥炉から取り出して、室温下で除冷した。
(結果)
図7の表に示すように、硬化昇温速度3.5[℃/sec.]で焼成させた条件5−1の体積抵抗率は、1.0E−4[Ω・cm]だった。また、硬化昇温速度1.0[℃/sec.]で焼成させた条件5−2の体積抵抗率は、1.0E−3[Ω・cm]だった。また、硬化昇温速度0.5[℃/sec.]で焼成させた条件5−3の体積抵抗率は、5.0E−2[Ω・cm]だった。
また、図8に示すように、硬化昇温速度を0.5[℃/sec.]から3.5[℃/sec.]に大きくしたとき、硬化物の体積抵抗率は、指数関数的に減少する傾向を示した。
(考察)
本実施例の結果は、硬化昇温速度の増加が、導電性ペースト1を印刷して焼成した硬化物の体積抵抗率を小さくさせる効果があることを示している。ただし、硬化昇温速度の大きい温度変化に晒された物体の内部には、構造的な歪み、及び、残留応力が発生して製品の品質が悪くなる虞があるので、硬化昇温速度は製品全体の性能を視野に入れて広い範囲から選ぶべき値であることは言うまでも無い。
1 導電性ペースト
2 塗膜
10 配線基板
11 配線
A 導電性フィラー
B 金属粒子
C 金属粒子
D 熱硬化性樹脂
E 硬化剤
F フラックス成分
G 高分子量体
T1、T2、T3、T4、T5、T6、T7、T8、T9 熱イベント

Claims (8)

  1. 導電性フィラーとなるSnBi合金粒子及びCu粒子と、
    熱硬化性樹脂と、
    硬化剤となるイミダゾール化合物と、
    フラックス成分となるアミンのアジピン酸塩と、を含んでいる導電性ペーストにおいて、
    前記イミダゾール化合物は、ヒドロキシル基を有し、
    前記アミンのアジピン酸塩の活性化する温度は、前記熱硬化性樹脂と共に用いられるとき、前記SnBi合金粒子の融点よりも低いことを特徴とする導電性ペースト。
  2. 前記アミンのアジピン酸塩のアミンの炭素数は、2以上であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ペースト。
  3. 前記アミンのアジピン酸塩は、n−ブチルアミンアジピン酸塩であることを特徴とする請求項2に記載の導電性ペースト。
  4. 前記イミダゾール化合物は、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の導電性ペースト。
  5. 前記熱硬化性樹脂は、分子構造の末端部分に反応性のグリシジル基を有する合成樹脂であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の導電性ペースト。
  6. 前記Cu粒子は、AgめっきCu粒子またはSnめっきCu粒子であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ペースト。
  7. 前記SnBi合金粒子及びCu粒子の平均粒子径は、10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ペースト。
  8. 請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の前記導電性ペーストを熱硬化させた硬化物による配線が形成されていることを特徴とする配線基板。
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