JP2015213049A - 二次電池電極用バインダ樹脂、これを用いた二次電池電極用スラリー、二次電池用電極、及び二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
PVDFの密着性の低さを改良する方法として、(メタ)アクリロニトリル重合体を用いる提案がなされている。例えば、特許文献1、2ではアクリロニトリル重合体をバインダに使用し、集電体との密着性・接着性を向上させている。
また、特許文献3では、バインダ樹脂としてアクリル酸エステルとリン酸エステルを含む共重合体を用いる提案がなされており、リン酸エステルが集電箔との結着性を発揮するとともに、活物質の分散性が向上し電池性能に優れた電極を得ることができるとされている。
また、特許文献2ではアクリロニトリル重合体を主成分とした電極用バインダが提案されている。しかしながら、(メタ)アクリロニトリル重合体を主成分にした場合、作製した電極が柔軟性に劣り、製造プロセス中での巻回工程において合剤層に割れ、クラックが生じ、電池を製造することが困難になることが想定された。
また、特許文献3に記載のようにバインダ樹脂内にアクリル酸エステル単位を重合させることで集電箔への密着性は向上するが、アクリル酸エステル単位を主成分とするため、電池内での酸化還元反応によって分解され、特に長期の使用においては期待される電池性能を発揮できないと懸念される。
〔1〕構成単位としてシアン化ビニル単位50〜99.99モル%と、酸性基を持つ単位0.01〜10モル%を含有し、質量平均分子量が20万以上200万以下の重合体を含む二次電池電極用バインダ樹脂。
〔2〕酸性基がリン酸基である前記〔1〕記載の二次電池電極用バインダ樹脂。
〔3〕酸性基がカルボキシル基である前記〔1〕記載の重合体をさらに含む、前記〔2〕記載の二次電池電極用バインダ樹脂。
〔4〕バインダ樹脂として、シアン化ビニル単位を含みかつ酸性基を持つ単位を含まない重合体(B)をさらに含む前記〔1〕〜〔3〕いずれかに記載の二次電池電極用バインダ樹脂。
〔5〕前記〔1〕〜〔4〕いずれかに記載のバインダ樹脂を含む、二次電池電極用バインダ樹脂組成物。
〔6〕前記〔1〕〜〔4〕いずれかに記載のバインダ樹脂、あるいは前記〔5〕に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物と、活物質と、溶媒とを含む、電極スラリー。
〔7〕集電体と、該集電体上に設けられた合剤層とを備え、
前記合剤層は、前記〔1〕〜〔4〕いずれかに記載の二次電池電極用バインダ樹脂、あるいは前記〔5〕に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物を含有する、二次電池用電極。
〔8〕前記〔7〕に記載の二次電池用電極を備える、非水系二次電池。
本発明で用いられるバインダ樹脂は、構成単位としてシアン化ビニル単位50〜99.99モル%と、酸性基を持つ単位0.01〜10モル%を含み、質量平均分子量が20万以上200万以下となる重合体(A)を含有する。
シアン化ビニル単位を構成するシアン化ビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル類;α−シアノアクリレート、ジシアノビニリデン等のシアン系ニトリル基含有単量体;フマロニトリル等のフマル系ニトリル基含有単量体が挙げられる。これらの中では、重合の容易さやコストパフォーマンスの点から、(メタ)アクリロニトリルが好ましい。
これらのシアン化ビニル単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸性基を持つ単位が有する酸性基としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基が挙げられる。
酸性基を持つ単位を構成する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、桂皮酸等の脂肪族不飽和カルボン酸;(メタ)アクリル酸2−カルボキシエチル、クロトン酸2−カルボキシエチル、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノオクチル等のカルボキシル基含有不飽和カルボン酸エステル;2−カルボキシプロピオン酸ビニル等のカルボキシル基含有単量体;(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有単量体又はリン酸基含有単量体等の酸性基含有単量体;これらの混合物が挙げられる。
これらの中では、リン酸基含有単量体が好ましい。
リン酸基含有単量体とは、リン酸基を有するビニル単量体を示し、好適にはリン酸基を有する(メタ)アクリレート及びアリル化合物である。
これらのリン酸基含有単量体の中では、集電体に対する密着性と電極製造時のハンドリング性に優れることから、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートが好ましい。
2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートは、工業的にライトエステルP1−M(商品名、共栄社化学株式会社製)として入手可能である。
リン酸基含有単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
その他の単量体単位を構成する、その他の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等の短鎖(メタ)アクリル酸エステル単量体;ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の長鎖(メタ)アクリル酸エステル単量体;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル単量体;マレイン酸イミド、フェニルマレイミド等のマレイミド類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニルが挙げられる。
その他の単量体単位の含有率は、シアン化ビニル単位及び酸性基を持つ単位の含有率(モル%)と合わせて100モル%となる量である。
カルボン酸基を持つ単位を構成する単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有単量体及びその塩が挙げられ、集電体に対する密着性と電極製造時のハンドリング性に優れることから、メタクリル酸が好ましい。カルボン酸基含有単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
バインダ樹脂中にカルボン酸基を有する重合体(a2)を含む場合、バインダ樹脂に含まれるすべての重合体(A)の合計を100質量%とすると、リン酸基を有する重合体(a1)の割合は、5〜99質量%であることが好ましく、7〜95質量%であることがより好ましく、10〜90質量%であることが特に好ましい。カルボン酸基を有する重合体(a2)の割合は、1〜95質量%であることが好ましく、5〜93質量%であることがより好ましく、10〜90質量%であることが特に好ましい。カルボン酸基を有する重合体(a2)の含有量が上記範囲の上限値以下であれば、樹脂組成物を含むスラリーを塗工して形成される合剤層の可撓性がより優れる。カルボン酸基を有する重合体(a2)の含有量が上記範囲の下限値以上であれば、本発明のバインダ樹脂を使用したスラリーが塗工安定性に優れる。
本発明の重合体(A)の質量平均分子量は20万以上200万以下であり、20万以上100万以下が好ましく、20万以上75万以下がより好ましく、35万以上50万以下が最も好ましい。重合体(A)の質量平均分子量を20万以上とすることで、スラリーを作製する際に重合体が溶媒に過剰に溶解し易くなることを防止し、重合体(A)がスラリー内の活物質を覆うことなく結着することが可能になり、塗布後の電極の柔軟性を向上させることが可能になる。また質量平均分子量を200万以下とすることで、スラリーを作製する際に重合体(A)が溶媒に溶解することが可能となり、集電箔に対して優れた結着性を発揮することが可能となる。
重合体(A)の重合の方法は特に限定されず、使用する単量体の種類や生成する重合体の溶解性等に応じて、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等を選ぶことができる。
上記の懸濁重合、乳化重合、溶液重合において、単量体の投入方法は特には限定されず、一度に全量の単量体を仕込んで重合する方法や全単量体を少しずつ滴下して重合する方法を選択することができる。
懸濁重合や乳化重合を実施する場合に用いる重合開始剤としては、重合開始効率等に優れることから、水溶性重合開始剤が好ましい。
水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;過酸化水素等の水溶性過酸化物;2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド等の水溶性アゾ化合物が挙げられる。
過硫酸塩等の酸化剤は、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイト等の還元剤、及び硫酸、硫酸鉄、硫酸銅等の重合促進剤と組み合わせて、レドックス系開始剤として用いることもできる。
これらの中では、共重合体の製造が容易であることから、過硫酸塩が好ましい。
懸濁重合や乳化重合を実施する場合では、分子量調節等の目的で、連鎖移動剤を用いることができる。
連鎖移動剤を使用する場合において、その添加量は対単量体で0.001質量%以上、10質量%以下が好ましい。
連鎖移動剤としては、例えば、メルカプタン化合物、チオグリコール、四塩化炭素、α−メチルスチレンダイマー、次亜リン酸ナトリウムが挙げられる。これらの中では、臭気が少なく取扱いが容易であることから、α−メチルスチレンダイマー、あるいは次亜リン酸ナトリウムが好ましい。
懸濁重合を実施する場合では、得られる共重合体の粒子径を調節するため、水以外の溶媒を加えることができる。
水以外の溶媒としては、例えば、NMP(N−メチルピロリドン)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;N,N−ジメチルエチレンウレア、N,N−ジメチルプロピレンウレア、テトラメチルウレア等のウレア類;γ−ブチロラクトン、γ−カプロラクトン等のラクトン類;プロピレンカーボネート等のカーボネート類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテート等のエステル類;ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム類;トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;スルホラン等のスルホン類;メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類が挙げられる。
これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水以外の溶媒を使用する際には、水100質量部に対して0.01質量部以上、100質量部以下の範囲で加えることが好ましい。
重合体(A)を乳化重合で製造する場合、界面活性剤を用いることができる。
界面活性剤としては、例えば、ドデシル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル等のノニオン系界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルアミン等のカチオン系界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明で用いられるバインダ樹脂は、シアン化ビニル単位を含み、かつ酸性基を持つ単位を含まない重合体(B)をさらに含んでいても良い。
重合体(B)に含まれるシアン化ビニル単位は、重合体(A)の説明で挙げたシアン化ビニル単位と同様である。
重合体(B)に含まれるシアン化ビニル単位は1種でも2種以上でもよい。
重合体(B)は、シアン化ビニル単位を主成分とする重合体であることが好ましい。シアン化ビニル単位が主成分であると、樹脂組成物の非水溶媒に対する溶解性または分散性が向上し、これをバインダとして用いた合剤層の集電体への密着性が向上する。
「主成分」とは、重合体(B)を構成する全ての構成単位の合計を100モル%とした場合、シアン化ビニル単位の含有量が50モル%超100モル%以下であることを示す。
重合体(B)中のシアン化ビニル単位の含有量は、重合体(B)を構成する全ての構成単位の合計に対し、90モル%以上100モル%以下であることが好ましい。
重合体(B)の質量平均分子量は、0.1万〜200万の範囲内であることが好ましく、3万〜100万であることがより好ましく、3万〜50万であることがさらに好ましく、5万〜50万であることが特に好ましい。
重合体(B)の質量平均分子量は、重合体(A)の質量平均分子量と同様の方法で測定することができる。
重合体(B)は、公知の重合方法で製造できる。例えば、酸性基含有単量体を用いない以外は、前述した重合体(A)の説明で挙げた製造方法と同様の方法で製造できる。
バインダ樹脂に含まれる重合体(B)は1種でも2種以上でもよい。
バインダ樹脂中に重合体(B)を含む場合、バインダ樹脂に含まれる重合体(A)と重合体(B)との合計を100質量%とすると、重合体(B)の割合は、1〜90質量%であることが好ましく、5〜70質量%であることがより好ましく、10〜50質量%であることが特に好ましく、10〜35質量%であることがより特に好ましい。重合体(B)の含有量が上記範囲の上限値以下であれば、樹脂組成物を含むスラリーを塗工して形成される合剤層の可撓性がより優れる。重合体(B)の含有量が上記範囲の下限値以上であれば、本発明のバインダ樹脂を使用したスラリーが塗工安定性に優れる。
最終的に電極に残留する添加剤については、電気化学的安定性のあることが好ましい。
本発明の二次電池用バインダ樹脂が使用できる電池の種類は特に限定されないが、非水系の二次電池、中でも、リチウムイオン二次電池における正極または負極への使用が特に好ましい。
二次電池電極用スラリー組成物は、少なくとも、上述のバインダ樹脂、電極活物質及び溶媒を含む。また、更に導電助剤その他の添加剤を含んでいてもよい。具体的には、本発明の二次電池電極用バインダ樹脂と電極活物質とを、導電助剤その他の添加剤と共に、溶媒中に分散又は溶解させて得ることできる。
二次電池用電極は、集電体と、この集電体の少なくとも一面に設けられた合剤層とを有するものである。本発明のバインダ樹脂は、この合剤層を構成する材料として使用される。具体的には、本発明の二次電池電極用バインダ樹脂に活物質を配合し、溶媒に溶解又は分散させたスラリー組成物を乾燥して得られる固相が合剤層となる。
リチウムイオン二次電池の場合、用いられる正極活物質としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる少なくとも1種類以上の金属とリチウムを含有するリチウム含有金属複合酸化物が挙げられる。正極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、用いられる負極活物質としては、例えば、黒鉛、非晶質炭素、炭素繊維、コークス、活性炭等の炭素材料;上記炭素材料とシリコン、錫、銀等の金属又はこれらの酸化物との複合物が挙げられる。負極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
尚、正極活物質には、導電助剤を組み合わせて使用してもよい。
導電助剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、導電性高分子が挙げられる。これらの導電助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
集電体の形状としては、薄膜状、網状、繊維状が挙げられる。この中では、薄膜状が好ましい。集電体の厚さは、5〜30μmが好ましく、8〜25μmがより好ましい。
また、スラリー組成物には、必要に応じて、分散剤、粘度調整剤等の添加剤を添加することができる。具体的には、スラリーの粘度を調整するレオロジーコントロール剤、集電体へ塗工後の平滑性を出すレベリング剤、分散剤等である。これらはいずれも公知のものを用いることができる。
リチウム塩としては、電解液としては、例えば、LiClO4、LiBF4、LiI、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H5)4、LiCH3SO3、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)2N、Li[(CO2)2]2Bが挙げられる。
電池は、公知の方法を用いて製造することができ、例えば、非水系二次電池であるリチウムイオン二次電池の場合は、先ず、正極と負極の2つの電極を、ポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを介して捲回する。得られたスパイラル状の捲回群を電池缶に挿入し、予め負極の集電体に溶接しておいたタブ端子を電池缶底に溶接する。得られた電池缶に電解液を注入し、さらに予め正極の集電体に溶接しておいたタブ端子を電池の蓋に溶接し、蓋を絶縁性のガスケットを介して電池缶の上部に配置し、蓋と電池缶とが接した部分をかしめて密閉することによって電池を得る。
(製造例1)
攪拌機、温度計、冷却管及び窒素ガス導入管を装備した1リットルのセパラブルフラスコに、蒸留水235gと1質量%の硫酸水溶液を仕込み、窒素ガスを通気量100mL/分で15分間バブリングした。攪拌しながら60℃まで昇温し、窒素ガスの通気をフローに切り替えた。
次いで、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.27g、50質量%亜硫酸水素アンモニウム0.81g、0.01質量%硫酸鉄0.1875g及び蒸留水15gを投入した。
アクリロニトリル24.91gとライトエステルP1−M(共栄社化学株式会社製)0.10gを混合した単量体を、窒素ガスを15分間バブリングした後、セパラブルフラスコに30分間滴下しながら投入した。滴下終了後、60℃で3時間保持して重合を完了させた。
攪拌を止めて冷却し、反応液を吸引濾過した。60℃の温水で洗浄後、80℃で24時間乾燥させ、重合体(A1)を得た。
バインダ樹脂1のGPC測定(溶媒:DMF)による質量平均分子量は105万であった。
滴下する単量体をアクリロニトリル24.50gとライトエステルP1−M0.49gを混合したものとする以外は製造例1と同様にして重合体(A2)を得た。
重合体(A2)のGPC測定(溶媒:DMF)による質量平均分子量は47万であった。
滴下する単量体をアクリロニトリル24.16gとライトエステルP1−M0.97gを混合したものとする以外は製造例1と同様にして重合体(A3)を得た。
重合体(A3)のGPC測定(溶媒:DMF)による質量平均分子量は41万であった。
攪拌機、温度計、冷却管及び窒素ガス導入管を装備した1リットルのセパラブルフラスコに、蒸留水235gと1質量%の硫酸水溶液、次亜リン酸ナトリウム0.0125gを仕込み、窒素ガスを通気量100mL/分で15分間バブリングした。攪拌しながら60℃まで昇温し、窒素ガスの通気をフローに切り替えた。
次いで、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.27g、50質量%亜硫酸水素アンモニウム0.81g、0.01質量%硫酸鉄0.1875g及び蒸留水15gを投入した。
アクリロニトリル24.50gとライトエステルP1−M0.49gを混合した単量体を、窒素ガスを15分間バブリングした後、セパラブルフラスコに30分間滴下しながら投入した。滴下終了後、60℃で3時間保持して重合を完了させた。
攪拌を止めて冷却し、反応液を吸引濾過した。60℃の温水で洗浄後、80℃で24時間乾燥させ、重合体(A4)を得た。
重合体(A4)のGPC測定(溶媒:DMF)による質量平均分子量は45万であった。
滴下する単量体をアクリロニトリル24.16gとライトエステルP1−M0.97gを混合したものとする以外は製造例4と同様にして重合体(A5)を得た。
重合体(A5)のGPC測定(溶媒:DMF)による質量平均分子量は37万であった。
使用するジ亜リン酸ナトリウムの量を0.25gとする以外は製造例4と同様にして重合体(A6)を得た。
重合体(A6)のGPC測定(溶媒:DMF)による質量平均分子量は31万であった。
滴下する単量体をアクリロニトリル22.46gとライトエステルP1−M2.67gを混合したものとする以外は製造例4と同様にして重合体(A7)を得た。
重合体(A7)のGPC測定(溶媒:DMF)による質量平均分子量は44万であった。
滴下する単量体をアクリロニトリル20.77gとライトエステルP1−M4.33gを混合したものとする以外は製造例4と同様にして重合体(A8)を得た。
重合体(A8)のGPC測定(溶媒:DMF)による質量平均分子量は23万であった。
滴下する単量体をアクリロニトリル20.77gとライトエステルP1−M4.33gを混合し、添加する次亜リン酸ナトリウムを0.25gとする以外は製造例4と同様にして重合体(A9)を得た。
重合体(A9)のGPC測定(溶媒:DMF)による質量平均分子量は8万であった。
滴下する単量体をアクリロニトリル12.56gとライトエステルP1−M12.44gを混合したものとする以外は製造例1と同様にして重合体(A10)を得た。
重合体(A10)はDMFに溶解せず、GPC測定による質量平均分子量が算出できなかった。
攪拌機、温度計、冷却管及び窒素ガス導入管を装備した1リットルのセパラブルフラスコに、蒸留水235gと1質量%の硫酸水溶液を仕込み、窒素ガスを通気量100mL/分で15分間バブリングした。攪拌しながら60℃まで昇温し、窒素ガスの通気をフローに切り替えた。
次いで、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.27g、50質量%亜硫酸水素アンモニウム0.81g、0.01質量%硫酸鉄0.1875g及び蒸留水15gを投入した。
アクリロニトリル25.0gを混合した単量体を、窒素ガスを15分間バブリングした後、セパラブルフラスコに30分間滴下しながら投入した。滴下終了後、60℃で3時間保持して重合を完了させた。
攪拌を止めて冷却し、反応液を吸引濾過した。60℃の温水で洗浄後、80℃で24時間乾燥させ、重合体(B1)を得た。
重合体(B1)のGPC測定(溶媒:DMF)による質量平均分子量は31万であった。
滴下する単量体をアクリロニトリル24.50gとメタクリル酸0.50gを混合したものとする以外は製造例1と同様にして重合体(A11)を得た。
重合体(A11)のGPC測定(溶媒:DMF)による質量平均分子量は43万であった。
製造例1〜12のバインダ樹脂合成の仕込みモル比と質量平均分子量を表1に示す。表1中、組成の数値の単位はモル%である。
上記製造例1で製造した重合体(A1)をバインダ樹脂として用いた電極用スラリー組成物を以下のように調製し、その特性評価を行なった。
バインダ樹脂組成物として、コバルト酸リチウム(日本化学工業(株)製、品名:セルシードC−5H)、アセチレンブラック(電気化学工業(株)製、品名:デンカブラック)、重合体(A1)を、質量比 100:5:3で混ぜ合わせ、溶剤としてN−メチルピロリドンを用いて、所謂固練りになるように加えて混練した。混練には自転公転ミキサー(泡取り練太郎ARV−200、シンキー株式会社製)を使用した。さらに、N−メチルピロリドンを加えて混練して、塗工可能な粘度になるように固形分を下げて、最終的な電池電極用スラリーを得た。
上記で調製したスラリーを、ドクターブレードを用いて集電体に塗布した。ドクターブレードの設定膜厚は220μm、用いた集電体はアルミ箔(厚み20μm)であった。スラリーを塗布した集電体を、80℃で50分間乾燥させて、目付け21mg/cm2の電極を得た。
電極を幅3cm×長さ5cmに切り出し、プレスロールでプレスして電極密度を3g/cm3に合わせて試験片1とした。続いて、試験片1の銅箔面にマンドレル(直径はそれぞれ16mm、10mm、8mm、6mm、5mm)をあて、試験片1の片側をテープで固定した。アルミ箔面が内側になるよう試験片1を折り曲げたときの合剤層の状態を目視にて観察し、以下の評価基準にて電極の柔軟性を評価した。
○:変化なし。
×:クラックや剥がれが生じた。
正極電極を横20mm、縦80mmになるように切り出し、プレスロールでプレスして電極密度を3g/cm3に合わせた後、切り出し片の合剤層面を両面テープ(積水化学工業株式会社製、「#570」)でポリカーボネートシート(横25mm、縦100mm、厚さ1mm)に固定し、試験片2とした。試験片2を引張り強度試験テンシロン試験機(オリエンテック社製、「RTC−1210A」)にセットし、10mm/minで銅箔を180°剥離し、剥離強度(N/cm)を測定した。試験は5回実施し、その平均値を記録した。
電池電極用バインダ樹脂として重合体(A2)〜(A8)を使用した以外は、実施例1と同様に電極を作製し、柔軟性、結着性を評価した。
電池電極用バインダ樹脂として重合体(A2):重合体(B1):添加剤であるポリグリセリン#500(商品名:阪本薬品工業(株)ポリグリセリン平均分子量500)を質量比45:45:10で混合したものを使用した。
バインダ樹脂組成物として、コバルト酸リチウム(日本化学工業(株)製、品名:セルシードC−5H)、アセチレンブラック(電気化学工業(株)製、品名:デンカブラック)、混合後のバインダ樹脂を、質量比 100:5:3で混ぜ合わせ、溶剤としてN−メチルピロリドンを用いて、所謂固練りになるように加えて混練した。混練には自転公転ミキサー(泡取り練太郎ARV−200、シンキー株式会社製)を使用した。さらに、N−メチルピロリドンを加えて混練して、塗工可能な粘度になるように固形分を下げて、最終的な電池電極用スラリーを得た。
混合するバインダ樹脂を重合体(A2):重合体(B1):ポリグリセリン#500を質量比63:27:10としたものを用いる以外は実施例8と同様に電極を作製し、柔軟性、結着性を評価した。
混合するバインダ樹脂を重合体(A5):重合体(B1):ポリグリセリン#500を質量比63:27:10としたものを用いる以外は実施例8と同様に電極を作製し、柔軟性、結着性を評価した。
混合するバインダ樹脂を重合体(A5):重合体(B1):ポリグリセリン#500を質量比56:24:20としたものを用いる以外は実施例8と同様に電極を作製し、柔軟性、結着性を評価した。
混合するバインダ樹脂を重合体(A2):重合体(A11)を質量比50:50としたものを用いる以外は実施例9と同様に電極を作製し、柔軟性、結着性を評価した。
混合するバインダ樹脂を重合体(A2):重合体(A11)を質量比25:75としたものを用いる以外は実施例9と同様に電極を作製し、柔軟性、結着性を評価した。
混合するバインダ樹脂を重合体(A2):重合体(A11)を質量比10:90としたものを用いる以外は実施例9と同様に電極を作製し、柔軟性、結着性を評価した。
(実施例16)
混合するバインダ樹脂を重合体(A2):重合体(A11):ポリグリセリン#500を質量比9:81:10としたものを用いる以外は実施例9と同様に電極を作製し、柔軟性、結着性を評価した。
<電池電極用スラリーの調製>
バインダ樹脂組成物として、チタン酸リチウム(LTO)、アセチレンブラック(電気化学工業(株)製、品名:デンカブラック)、重合体(A2)、重合体(A11)を、質量比 100:5:1.5:1.5で混ぜ合わせ、溶剤としてN−メチルピロリドンを用いて、所謂固練りになるように加えて混練した。混練には自転公転ミキサー(泡取り練太郎ARV−200、シンキー株式会社製)を使用した。さらに、N−メチルピロリドンを加えて混練して、塗工可能な粘度になるように固形分を下げて、最終的な電池電極用スラリーを得た。
上記で調製したスラリーを、ドクターブレードを用いて集電体に塗布した。用いた集電体はアルミ箔(厚み20μm)であった。スラリーを塗布した集電体を、80℃で50分間乾燥させて、目付け11.2mg/cm2の電極を得た。
プレスロールでプレスして膜厚約70μm、電極密度を1.6g/cm3に合わせた以外は実施例1と同様にして、電極の柔軟性、結着性の評価を実施した。
混合するバインダ樹脂を重合体(A2):重合体(A11)を質量比25:75としたものを用いる以外は実施例17と同様に電極を作製し、柔軟性、結着性を評価した。
混合するバインダ樹脂を重合体(A2):重合体(A11)を質量比10:90としたものを用いる以外は実施例17と同様に電極を作製し、柔軟性、結着性を評価した。
電池電極用バインダ樹脂として重合体(A9)、(A10)をそれぞれ使用した以外は実施例1と同様に電極を作製し、柔軟性、結着性を評価した。
実施例1〜19、比較例1、2の評価結果を表2に示す。
また、同活物質で比較した場合、実施例9〜12に比べ、実施例13〜16は、酸性基がカルボキシル基である重合体をさらに含有しているため、電極の高い柔軟性を維持しつつ、バインダの結着性が特に高かった。
さらに、酸性基がカルボキシル基である重合体をさらに含有するバインダを使用すれば、実施例17〜19で示したように他の活物質にも好適に用いることが可能であった。
比較例1に記載のバインダ樹脂は分子量が8万であり、20万未満であったため、スラリーを作製する際にバインダ樹脂が溶媒であるN−メチルピロリドンに過剰に溶解し、バインダ樹脂がスラリー内の活物質を覆ってしまい、電極作製後の合剤層の柔軟性を阻害する結果が得られた。
比較例2に記載のバインダ樹脂は、リン原子を含む官能基を持つ単位を20モル%含んでいたため、溶剤であるN−メチルピロリドンへの溶解性が大きく低下し、集電箔上に塗工することができず、電極を得ることができなかった。
Claims (8)
- 構成単位としてシアン化ビニル単位50〜99.99モル%と、酸性基を持つ単位0.01〜10モル%を含有し、質量平均分子量が20万以上200万以下の重合体を含む二次電池電極用バインダ樹脂。
- 酸性基がリン酸基である請求項1記載の二次電池電極用バインダ樹脂。
- 酸性基がカルボキシル基である請求項1記載の重合体をさらに含む、請求項2記載の二次電池電極用バインダ樹脂。
- バインダ樹脂としてシアン化ビニル単位を含み、酸性基を持つ単位を含まない重合体(B)をさらに含む請求項1〜3いずれかに記載の二次電池電極用バインダ樹脂。
- 請求項1〜4いずれかに記載のバインダ樹脂を含む、二次電池電極用バインダ樹脂組成物。
- 請求項1〜4いずれかに記載のバインダ樹脂、あるいは請求項5に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物と、活物質と、溶媒とを含む、電極スラリー。
- 集電体と、該集電体上に設けられた合剤層とを備え、
前記合剤層は、請求項1〜4いずれかに記載の二次電池電極用バインダ樹脂、あるいは請求項5に記載の二次電池電極用バインダ樹脂組成物を含有する、二次電池用電極。 - 請求項7に記載の二次電池用電極を備える、非水系二次電池。
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