JP2013122913A - 二次電池電極用バインダ、これを用いた二次電池電極用スラリー組成物、二次電池用電極、及び二次電池 - Google Patents

二次電池電極用バインダ、これを用いた二次電池電極用スラリー組成物、二次電池用電極、及び二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリアクリロニトリル系樹脂をバインダとして用いる系において、集電体と電極合剤層との密着性に優れた電池、該電極、ならびにそのスラリーを提供する。また、その電極用スラリーが高いチキソ性を有し、活物質等が沈降したり、電極の合剤層が偏在したりしない、均一な電極板を提供する。
【解決手段】ニトリル基含有重合体にヒドロキシルアミン又はその塩を作用させて得られる、二次電池電極用バインダ、並びに該バインダを含む二次電池電極用スラリー組成物、二次電池用電極及び二次電池。
【選択図】なし

Description

本発明は、二次電池用バインダと活物質粒子を含む二次電池電極用スラリー組成物、該スラリー組成物を用いて製造される二次電池用電極、及び該電極を備える二次電池に関する。
近年、リチウムイオン二次電池は、携帯電話、ビデオカメラ、ノート型パソコン等のポータブル機器や、ハイブリッド車、電気自動車に用いられている。リチウムイオン二次電池用電極は、通常、電極活物質材料に結着剤(バインダ)を適当量添加した混合物に溶媒を混ぜてペースト状にし、集電体に塗布、乾燥後圧着させて得られる。結着剤としては、電解液に用いられる有機溶媒への耐溶剤性、駆動電圧内での耐酸化性、耐還元性等を満足する材料として、ポリフッ化ビニリデン(以下、「PVDF」と略記)が使用されている。しかしながら、PVDFは集電体との密着性が低いという問題があった。
PVDFの密着性の低さを改良する方法として、(メタ)アクリロニトリル重合体を用いる提案がなされている。例えば、特許文献1及び2ではアクリロニトリル重合体をバインダに使用し、集電体との密着性・接着性を向上させている。さらに、特許文献3ではキレート高分子を含む非水電解質電池が提案されている。特許文献4では、アクリロニトリル重合単位に酸モノマー単位をと共重合導入することにより、密着性能の向上を図っている(特許文献4)。
WO02/039518 特開2010−174058号公報 特開平11−121012号公報 特表2011−513911号公報
しかしながら、特許文献1ではバインダ全量に占めるアクリロニトリルの量が少なく、(メタ)アクリロニトリル重合体の持つ集電体との密着性の良さを充分には発揮できない。
また、特許文献2ではアクリロニトリル重合体を主成分とした電極用バインダが提案されている。しかしながら、(メタ)アクリロニトリル重合体を主成分にした場合、バインダと活物質、導電助剤等を混ぜ合わせた電極スラリーのチキソトロピー性(以下、チキソ性)が低いため、スラリー中で活物質等の沈降が起こり、均一な電極板を形成することが困難なため、集電体と電極合剤層との密着性が劣るという課題があった。
特許文献3で提案されているキレート高分子は、ポリスチレンをベースとするイミノ酢酸型のキレート高分子であり、ベースとなる高分子が酸化安定性に劣るため、電池特性に改善の余地があった。
上記の通り、電池電極用バインダ樹脂組成物において、集電体と電極合剤層とが非常に高い密着性を有し、かつその電池電極用スラリーが高いチキソ性を持つために均一な電極板を形成することが出来るものは、見出せていなかった。
特許文献4では、共重合法により酸、アミン等の官能基含有モノマーをポリマー鎖に導入しているが、水系重合でAN共重合体を得る場合、重合中にカレットが生成しやすくなり、品質が安定しなくなる恐れがあった。
ところで、電極スラリーのチキソ性は,電極スラリーに低いせん断速度を与えたときの見掛け粘度と高いせん断速度を与えたときの見かけ粘度の比で表すことが出来る。高固形分分散液のスラリー粘度は、分散媒や分散体の性状、形状に大きく影響されるが、電池電極用スラリーの場合、バインダ樹脂組成物によっても大きく異なることが分かった。すなわち、同じ溶媒、活物質、導電助剤等を用いて同じ組成比でスラリーを調製しても、バインダの種類によってそのチキソ性が異なる。例えば、現行のリチウムイオン二次電池において汎用であるPVDFを使用したスラリーは非常に高いチキソ性を有するが、アクリロニトリル系重合体を使用した場合それが低くなる。
また、バインダ、活物質及び導電助剤が溶剤に分散してなる電極スラリーにおいては、粒子径が小さい導電助剤はスラリーのレオロジーに対する影響が顕著で、導電助剤同士の相互作用によりチキソ性が高くなる。バインダにPVDFを用いた場合、PVDFは導電助剤との相互作用が弱いため、導電助剤同士の相互作用を妨げず、高いチキソ性を維持することができる。しかし、バインダにアクリロニトリル系重合体を用いると、アクリロニトリル系重合体と導電助剤との相互作用が強くなり、導電助剤同士の相互作用が断ち切られ、よってチキソ性が低くなると考えられる。
一方、密着性に寄与する官能基を導入する方法として、官能基を有するモノマーと共重合させる手法が一般的であるが、官能基を有するモノマーが水溶性で水系重合する場合、重合時カレットが生成しやすくなる傾向にあり、バインダーの品質が安定しない恐れがあった。さらに、カレットが生成しにくい重合法として乳化重合法があるが、不純物として乳化剤が存在することになるので、乳化剤が電池性能に悪影響を与えること恐れがあった。
本発明者は、上記課題とその考察に鑑み、鋭意研究をした結果、ニトリル基を含有する重合体(以下、「ニトリル基含有重合体」という。)にヒドロキシルアミンまたはその塩を作用させるアミドキシム化処理する、あるいはアルカリ水酸化物で処理することにより、ニトリル基含有重合体と導電助剤との相互作用を押させることができ電極スラリーが高いチキソ性を有することを見出した。これにより、電極の合剤層に偏在がなく、密着性、電極膨潤性、柔軟性、電池特性に優れた二次電池用電極を作製できることを見出し、本発明に至った。
本発明は、以下のものに関する。
[1]ニトリル基含有重合体に塩基性物質を作用させて得られる、二次電池電極用バインダ。
[2]該ニトリル基含有重合体を構成する単量体単位の30質量%以上がアクリロニトリルである、上記[1]に記載の二次電池電極用バインダ。
[3]上記[1]又は[2]に記載のバインダを含有する二次電池電極用スラリー組成物。
[4]上記[1]又は[2]に記載のバインダを含有する二次電池用電極。
[5]上記[1]又は[2]に記載のバインダを含有する二次電池。
本発明の二次電池電極用バインダを用いた二次電池電極用スラリー組成物は高いチキソ性を有する。また、本発明のバインダを含有する二次電池用電極は、合剤層の偏在が小さく、かつ、集電体と電極合剤が強く密着し、密着性、電極膨潤性、柔軟性に優れる。さらに本発明によると、電池特性、特に長期のサイクル特性に優れる二次電池の提供が可能となる。
以下、本発明について詳細に説明する。
<二次電池電極用バインダ>
本発明で用いられる二次電池電極用バインダは、塩基性物質を作用させて得られる高分子化合物である。塩基性物質にヒドロキシルアミンまたはその塩を用い作用させた場合、前記ニトリル基の少なくとも一部がアミドキシム基に転化されると考えられる。塩基性物質にアルカリ水酸化物を用い作用させた場合、二トリル基は加水分解され、ニトリル基の30−80モル%がカルボキシル基に転化され、ニトリル基の20−70モル%がアミド基に転化され、そしてニトリル基の0−20モル%が未変のままである部分的に加水分解されたアクリロノトリルのホモポリマ−及び/またはコポリマ−が生成する。
ただし、この転化率は、樹脂と塩基性物質を含む処理液が充分に湿潤した場合の数値であり、湿潤が不十分な場合、各転化率は低下する。
<ニトリル基含有重合体>
ニトリル基含有重合体の入手経路に特に制限はなく、一般にはニトリル基を含有する単量体を重合することで容易に得ることができる。例えばアクリロニトリル及びメタクリロニトリルのようなアクリル系ニトリル基含有単量体より得られる重合体、α−シアノアクリレート及びジシアノビニリデンのようなシアン系ニトリル基含有単量体より得られる重合体、フマロニトリルのようなフマル系ニトリル基含有単量体より得られる重合体、N,N−ジ(シアノアルキル)アクリルアミド、N,N−ジ(シアノアルキル)メタアクリルアミドのような単量体より得られる重合体、等を用いることができる。これらの中では、重合のし易さやコストパフォーマンスの点から、ポリ(メタ)アクリロニトリルが好ましく、ポリアクリロニトリルが特に好ましい。別法として、ニトリル基以外の官能基を含有する単量体から重合体を合成し、その後に当該官能基をニトリル基へ転化することにより、ニトリル基含有重合体を得てもよい。
これらのニトリル基含有重合体は、単独で、又は二種類以上組み合わせて、用いることが出来る。またニトリル基を含有する単量体を、二種類以上共重合させた重合体を用いることも出来る。
ニトリル基を含有する重合体は、本発明の所期の効果を損なわない限り、ニトリル基含有単量体の他に、ニトリル基を含有しない他の単量体を適宜組み合わせて得ることも出来る。
ニトリル基を含有しない他の単量体としては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレートなどの短鎖(メタ)アクリル酸エステル単量体;ステアリル(メタ)アクリレートやラウリル(メタ)アクリレートなどの長鎖(メタ)アクリル酸エステル単量体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有単量体及びその塩;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル単量体;マレイン酸イミド、フェニルマレイミドなどのマレイミド類;スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体;(メタ)アリルスルホン酸ナトリウム、(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのスルホン酸基含有ビニル単量体及びその塩;(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニルなどが挙げられる。
これらの他の単量体は、単独で、又は二種類以上組み合わせて、用いることが出来る。
ニトリル基を含有しない他の単量体を組み合わせた場合のニトリル基含有重合体中のニトリル基含有単量体単位の含有量は、当該重合体の20質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。ニトリル基含有単量体単位の含有量が20質量%以上であれば、アミドキシム基に転化され得るニトリル基の量が充分にあるため、集電体との密着性を充分に発揮することが出来る。ニトリル基含有単量体単位の含有量の上限は100質量%であるが、この場合の重合体はニトリル基含有単量体単位のみを含有する。
<バインダの製造方法>
本発明のバインダは、公知の重合方法及び公知の塩基性物質処理により製造することがでる。ニトリル基を含有する重合体は、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合などを用いることで製造することができる。
上記の懸濁重合、乳化重合、溶液重合において、単量体の投入方法は特には限定されず、一度に全量の単量体を仕込んで重合する方法や全単量体を少しずつ滴下して重合する方法を選択することが出来る。
<重合開始剤>
懸濁重合に用いる重合開始剤としては、重合開始効率等に優れることから、水溶性重合開始剤が好ましい。
水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;過酸化水素等の水溶性過酸化物;2,2'−アゾビス(2−メチ
ルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド等の水溶性アゾ化合物が挙げられる。
過硫酸塩等の酸化剤は、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイト等の還元剤、及び硫酸、硫酸鉄、硫酸銅等の重合促進剤と組み合わせて、レドックス系開始剤として用いることもできる。
これらの中では、共重合体の製造が容易であることから、過硫酸塩が好ましい。
<連鎖移動剤>
懸濁重合では、分子量調節等の目的で、連鎖移動剤を用いることができる。
連鎖移動剤としては、例えば、メルカプタン化合物、チオグリコール、四塩化炭素、α−メチルスチレンダイマーが挙げられる。これらの中では、臭気が少なく取扱いが容易であることから、α−メチルスチレンダイマーが好ましい。
<溶媒>
懸濁重合では、得られる共重合体の粒子径を調節するため、水以外の溶媒を加えることができる。
水以外の溶媒としては、例えば、NMP、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;N,N−ジメチルエチレンウレア、N,N−ジメチルプロピレンウレア、テトラメチルウレア等のウレア類;γ−ブチロラクトン、γ−カプロラクトン等のラクトン類;プロピレンカーボネート等のカーボネート類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテート等のエステル類;ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム類;トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;スルホラン等のスルホン類;メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類が挙げられる。
これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
<界面活性剤>
重合体を乳化重合で製造する場合、界面活性剤を用いることができる。
界面活性剤としては、例えば、ドデシル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル等のノニオン系界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルアミン等のカチオン系界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。界面活性剤は、樹脂中に残存すると電池性能に影響する場合がるので、できるだけ使用しないことが望ましい。
<塩基性物質>塩基性物質は、水中ではpHが塩基性を示す物質であり、ヒドロキシルアミンやアルカリ水酸化物等が挙げられる。塩基性物質の詳細は下記で列挙するが、付与したい官能基種と量を考慮し塩基性物質を選定することが望ましい。
<アミドキシム化試薬>
アミドキシム化処理に使用するヒドロキシルアミンの形態は特に限定はしないが、例えば、ヒドロキシルアミン塩酸塩、ヒドロキシルアミン硫酸塩、ヒドロキシルアミン硝酸塩、ヒドロキシルアミン燐酸塩などのヒドロキシルアミンの塩類を使用することが出来る。また、ヒドロキシルアミン塩酸塩をメタノールに溶解し、ナトリウムメトキシドを作用させて、生じた塩を取り除いて得られるヒドロキシルアミンのメタノール溶液を利用することも出来る。
<アルカリ水酸化物試薬>
アルカリ水酸化物処理に使うアルカリ水酸化物の形態は特に限定はしないが、例えば、一価金属イオンの水酸化物塩、多価金属イオンの水酸化物塩を使用することが出来る。均一処理の観点から、アルカリ水酸化物塩は処理溶媒に溶解することが望ましい。
ニトリル基含有重合体の塩基性物質処理は、該重合体に官能基を付与する方法として知られており、公知の方法で行うことができる。ニトリル基含有重合体の分散体あるいは溶液に、塩基性物質を作用させる方法が、一般に知られている。
<アミドキシム化処理>
本発明で用いられる二次電池電極用バインダを合成するためのアミドキシム化処理は、公知の手法で行なうことが出来る。例えば、ニトリル基含有重合体またはその溶液と特定のpH範囲のヒドロキシルアミン溶液とを接触させて加熱させる方法、ニトリル基含有重合体に塩酸ヒドロキシルアミン溶液を作用させて、該ニトリル基の少なくとも一部をアミドキシム基に転化させた重合体を得る方法などがある。
<アルカリ水酸化物処理>
本発明で用いられる二次電池電極用バインダを合成するためのアルカリ水酸化物処理は、公知の手法で行なうことが出来る。例えば、ニトリル基含有重合体水分散液と特定のpH範囲のアルカリ水酸化物溶液を添加して加熱させる方法、ニトリル基含有重合体の分散媒を水/有機溶媒として、重合体を膨潤させた後、アルカリ水酸化物溶液を添加して加熱させる方法などがある。



ヒドロキシルアミンの使用量は、アミドキシム化反応が行なわれる範囲であれば特に限定されないが、好ましくはニトリル基1当量に対して0.01〜10当量である。この範囲であれば、重合体が含有するニトリル基のうちアミドキシム基に転化されるニトリル基の量をコントロールすることが出来るため、集電体と電極合剤層との密着性や電極スラリーのチキソ性をコントロールすることが可能である。したがって、本発明のバインダに含まれるアミドキシム基含有量の制御は、アミドキシム化処理前に、上述のニトリル基含有単量体単位の含有量を調整することで実施してもよいし、アミドキシム化処理時に、ニトリル基の一部のみがアミドキシム基に転化されるように調整することで実施してもよい。
<アミドキシム化処理時の温度>
アミドキシム化処理は、通常加熱して実施される。その温度は、アミドキシム化処理される重合体や使用する試薬が分解等をせずに正常に反応する温度範囲、また使用する溶媒の沸点などによって、決めることが出来る。アミドキシム化処理する温度は、特に限定はされないが、40℃〜140℃、好ましくは50℃〜100℃である。この範囲であれば、重合体や試薬が分解等をせずに正常に反応する。
<アミドキシム化処理溶媒>
アミドキシム化処理に用いる溶媒は、特に限定されないが、例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ブチルセロソルブアセテート等)、トルエン、ベンゼン、水、などを使用することが出来る。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
<アミドキシム化反応の系>
本発明で実施されるアミドキシム化処理の反応系の形態は特に限定されない。アミドキシム化処理される重合体や使用する試薬が溶媒に均一に溶解する系であってもよく、またアミドキシム化処理される重合体や使用する試薬が溶媒に溶解しない不均一の系であってもよい。
<アルカリ水酸化物処理の溶媒量>
アルカリ水酸化物水溶液で処理する場合は、ポリアクリロニトリルと水の重量比は、1:2−1:8、好ましくは1:2−1:6である。樹脂分散液の混合状態、樹脂の変性率および処理液の増粘具合を観ながら、比率を決めることが望ましい。乾燥粉を媒体浸漬する場合、粒子内部まで浸漬しないことが想定されるため、使用するポリアクリロ二トリルは乾燥の履歴がないものを使用することがより望ましい。
<アルカリ水酸化物処理の量比>
ポリアクリロニトリル単量体単位とアルカリ水酸化物におけるモル比が1:0.001−1:0.2の範囲であり、1:0.005−1:0.05であることがより好ましい。0.1以上だと、電極作製時の溶媒に溶解しなくなる可能性がありため、電極作製が困難になる恐れがある。
<アルカリ水酸化物処理条件>
20−100℃、好ましくは55−85℃で0.05−4時間、好ましくは2−3時間反応させて転化せしめる、バインダー性能を観ながら、処理原料仕込み重量比、処理条件を調整することが好ましい。過剰に変性処理すると、電極作製の溶剤に溶解しなくなるので注意する必要がある。
また、アルカリ変性後、酸性溶液で処理しても良い。アルカリ変性により生成したカルボキシル基の金属塩構造が、酸性溶液によりプロトン化する。これにより、集電箔への密着性が変化する。
<バインダ樹脂組成物>
本発明によるニトリル基の少なくとも一部をアミドキシム基に転化させた重合体ああるいは、一部をカルボキシル基あるいはアミド基に添加させた重合体に、これとは異なる他の重合体や添加剤を適宜組み合わせて二次電池電極用バインダ樹脂組成物を構成することも出来る。具体的には、電池性能を向上させるその他のバインダ重合体、塗工性を向上させる粘度調整剤等の添加剤を、本発明の所期の効果を損なわない範囲で組み合わせることができる。
他のバインダ重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム、ポリ(メタ)アクリロニトリル、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、酢酸ビニルポリマー等の重合体;ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン等のフッ素系重合体が挙げられる。これらの中から、単独で、又は二種類以上組み合わせて、使用することが出来る。
粘度調整剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒド
ロキシプロピルセルロース等のセルロース系重合体及びこれらのアンモニウム塩;ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム等のポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、アクリル酸又はアクリル酸塩とビニルアルコールの共重合体、無水マレイン酸、マレイン酸又はフマル酸とビニルアルコールの共重合体、変性ポリビニルアルコール、変性ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸が挙げられる。
最終的に電極に残留する添加剤については、電気化学的安定性のあることが好ましい。
ニトリル基含有重合体とその他の重合体や添加剤との質量比率は、特に限定されないが、好ましくは100:0〜30:70、より好ましくは100:0〜50:50、さらに好ましくは100:0〜70:30である。上記好ましい範囲において、ニトリル基含有重合体を塩基性物質で処理したバインダが、集電体と電極合剤層との密着性により効果を発揮する。
電池電極用バインダ樹脂組成物は、粉体状、溶媒に溶解した溶液、水性又は油性媒体に分散させたエマルションのいずれの形態で使用してもよい。
<バインダの用途>
本発明の二次電池用バインダが使用できる電池の種類は特に限定されないが、非水系の二次電池、例えば、リチウムイオン二次電池における正極または負極への使用が特に好ましい。
<二次電池電極用スラリー組成物>
二次電池電極用スラリー組成物は、少なくとも、上述のバインダ又はバインダ樹脂組成物、電極活物質及び溶媒を含む。また、更に導電助剤その他の添加剤を含んでいても良い。具体的には、本発明の電池電極用バインダ又はバインダ樹脂組成物と電極活物質とを、必要に応じて導電助剤その他の添加剤と共に、溶媒中に分散又は溶解させて得ることができる。
電池電極用スラリー組成物の組成は、活物質を100質量部とした場合、本発明の電池電極用バインダ又はバインダ樹脂組成物を0.1〜20質量部、導電助剤を0.5〜10質量部とするのが好ましい。またその他の添加剤を0〜10質量部加えても良い。
<二次電池用電極>
二次電池用電極は、集電体と、この集電体の少なくとも一面に設けられた合剤層とを有するものである。本発明のバインダ又はバインダ樹脂組成物は、この合剤層を構成する材料として使用される。具体的には、本発明の電池電極用バインダ又はバインダ樹脂組成物に活物質を配合し、溶媒に溶解又は分散させたスラリー組成物を乾燥して得られる固相が合剤層となる。
合剤層に用いる活物質は、正極材の電位と負極材の電位が異なるものであればよい。リチウムイオン二次電池の場合、用いられる正極活物質としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる少なくとも1種類以上の金属とリチウムを含有するリチウム含有金属複合酸化物が挙げられる。正極活物質は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、用いられる負極活物質としては、例えば、黒鉛、非晶質炭素、炭素繊維、コークス、活性炭等の炭素材料;前記炭素材料とシリコン、錫、銀等の金属又はこれらの酸化物との複合物が挙げられる。負極活物質は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
リチウムイオン二次電池において、正極にはリチウム含有金属複合酸化物、負極には黒鉛を用いることが好ましい。このような組合せとすることで、リチウムイオン二次電池の電圧は約4Vとなる。
尚、正極活物質には、導電助剤を組み合わせて使用してもよい。
導電助剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、導電性高分子が挙げられる。これらの導電助剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記集電体としては、導電性を有する物質であればよく、材料としては金属が使用できる。リチウムと合金化し難い金属が望ましく、具体的には、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、あるいはこれらの合金が挙げられる。
集電体の形状としては、薄膜状、網状、繊維状が挙げられる。この中では、薄膜状が好ましい。集電体の厚さは、5〜30μmが好ましく、8〜25μmがより好ましい。
合剤層は、電極活物質等を含むバインダ又はバインダ樹脂組成物を用いて形成される。合剤層は、例えば、前記バインダ又はバインダ樹脂組成物、添加剤、溶媒及び電極活物質を含むスラリー組成物を調製し、このスラリー組成物を集電体に塗布し、溶媒を乾燥除去することによって得られる。
スラリー組成物の調製に用いる溶媒は、例えば、水、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルスルホルアミド、テトラメチル尿素、アセトン、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドンとエステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等)の混合溶媒、N−メチルピロリドンとグライム系溶媒(ジグライム、トリグライム、テトラグライム等)の混合溶液の混合溶媒等であればよく、特にN−メチルピロリドンが好ましい。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
また、スラリー組成物には、必要に応じて、分散剤、粘度調整剤等の添加剤を添加することができる。具体的には、スラリーの粘度を調整するレオロジーコントロール剤、集電体へ塗工後の平滑性を出すレベリング剤、分散剤などである。これらはいずれも公知のものを用いることが出来る。
電極を作製するプロセス例として、本発明の電池電極用バインダ、電極活物質、アセチレンブラックを溶媒、例えばN−メチルピロリドン(NMP)の存在下で混練してスラリーを得る。前記スラリーを電極集電体に塗布、乾燥後、必要に応じてプレスして電極が得られる。乾燥条件は、溶媒が十分に除去可能で前記電池用バインダが分解しない条件であれば、特に限定されないが、40〜160℃、好ましくは60〜140℃で、1分間〜10時間、加熱処理することが好ましい。この範囲で、前記二次電池用バインダ樹脂組成物は分解することなく、活物質と集電体、あるいは活物質間の高い密着性を付与することが出来る。
以上の様にして作製された負極構造体と正極構造体とを、透液性のセパレータ(例えば、ポリエチレンあるいはポリプロピレン製の多孔性フィルム)を間に介して、配置し、これに非水系の電解液を含浸させることにより非水系二次電池が形成される。また、両面に活性層が形成された負極構造体/セパレータ/両面に活性層が形成された正極構造体/セパレータからなる積層体をロール状(渦巻状)に巻回して得られる構造体を有底の金属ケーシングに収容し、負極を負極端子に、正極を正極端子に接続し、電解液を含浸させた後、ケーシングを封止することにより筒状の二次電池が得られる。
前記電解液としては、例えば、リチウムイオン二次電池の場合、電解質としてのリチウ
ム塩を1M程度の濃度で非水系有機溶媒に溶解したものが用いられる。
前記リチウム塩としては、前記電解液としては、例えば、LiClO4、LiBF4、LiI、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H5)4、LiCH3SO3、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)2N、Li[(CO2)2]2Bが挙げられる。
前記、非水系有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン等のオキソラン類;アセトニトリル、ニトロメタン、NMP等の含窒素類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル等のエステル類;ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム類;アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;スルホラン等のスルホン類;3−メチル−2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類;1,3−プロパンスルトン、4−ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類が挙げられる。前記電解液は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
<二次電池>
電池は、公知の方法を用いて製造することができ、例えば、リチウムイオン二次電池の場合は、先ず、正極と負極の2つの電極を、ポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを介して捲回する。得られたスパイラル状の捲回群を電池缶に挿入し、予め負極の集電体に溶接しておいたタブ端子を電池缶底に溶接する。得られた電池缶に電解液を注入し、さらに予め正極の集電体に溶接しておいたタブ端子を電池の蓋に溶接し、蓋を絶縁性のガスケットを介して電池缶の上部に配置し、蓋と電池缶とが接した部分をかしめて密閉することによって電池を得る。
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
<スラリーのチキソ性評価>
上記電池電極用スラリーを用いて、スラリーのチキソ性評価を行った。チキソ性の評価は、以下の(1)〜(6)の条件で行った。
(1)装置:応力制御レオメーターAR550(TA Instruments Waters LC)
(2)ジオメトリー:コープレート(φ40mm、角度2°)
(3)ギャップ:69μm
(4)温度:20℃
(5)剪断速度範囲:0.03〜100sec−1、100〜0.03sec−1
(6)測定時間:10分
この条件における、いわゆるチキソトロピー指数TI値(剪断速度0.1sec−1での粘度/剪断速度100sec−1での粘度)を算出し、以下の基準でチキソ性を評価した。
○:上記TI値が10以上100未満
×:上記TI値が10未満
<密着性評価>
上記手法で得られた電極の密着性を評価した。密着性の評価は以下の(1)〜(7)の
条件で行った。
(1)装置:SAICAS(ダイプラウインテス(株)製)
(2)切り刃:ボラゾン刃(幅1mm、スクイ角度20°、ニゲ角度10°)
(3)測定モード:定荷重モード
(4)押圧荷重:0.3N
(5)水平速度:3μm/sec
(6)垂直速度:0.2μm/sec
(7)フィードバック:許容範囲0.01N
この条件において、剥離強度のピークトップ4〜5点の平均値を算出した。これを1回の測定結果としてこの測定を3回行ない、3回の測定結果の平均値を密着性の数値とした。以下の基準で密着性を評価した。
○:上記剥離強度が1kN/m以上
×:上記剥離強度が1kN/m未満
<電池電極用バインダ樹脂の合成>
(製造例1)バインダ樹脂(B)としての重合体−1の製造
攪拌機、温度計、冷却管及び窒素ガス導入管を装備した2リットルのセパラブルフラスコに、蒸留水870gを仕込み、窒素ガスを通気量100mL/分で15分間バブリングした。攪拌しながら60℃まで昇温し、窒素ガスの通気をフローに切り替えた。
次いで、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.72g、50質量%亜硫酸水素アンモニウム2.16g、0.1質量%硫酸鉄0.15g及び蒸留水30gを投入した。
アクリロニトリル100gに窒素ガスを15分間バブリングした後、セパラブルフラスコに30分かけて滴下投入した。60℃で3時間保持して重合を完了させた。
攪拌を止めて冷却し、反応液を吸引濾過した。60℃の温水で洗浄後、80℃で24時間乾燥させ、重合体−1を得た。
(製造例2)バインダ樹脂(B)としての重合体−2の製造
滴下するモノマーをアクリロニトリル64.1gと、酢酸ビニル2.5gとした以外は、製造例1と同様に調製し、重合体−2を得た。
(製造例3)バインダ樹脂(B)としての重合体−3の製造
ヒドロキシルアミン塩酸塩3g(0.043mol)をメタノール80mLに溶解し、攪拌しながらナトリウムメトキシドの28質量%メタノール溶液を8.5g加えた。析出した塩を濾過で取り除き、ヒドロキシルアミンのメタノール溶液を得た。これに、製造例1で得た重合体(A)のうち0.6g(0.011mol)を入れ、3時間60℃で加熱した。濾過して乾燥させ、アミドキシム化処理した重合体−3を得た。
(製造例4)バインダ樹脂(B)としての重合体−4の製造
製造例2で得た重合体−2を60gと水300gを500ミリリットルのセパラブルフラスコに仕込み、80℃で1時間攪拌した。次いで、6重量%水酸化ナトリウム水溶液1.1gと水28.9gの混合液を添加し、さらに80℃、3時間反応させた。反応後、攪拌を止めて水冷し、この反応液を吸引濾過し、洗浄水をpH試験を確認しながら、水5Lで洗浄した。次いで、60℃で24時間乾燥して、重合体−4を得た。
(実施例)
製造例3〜4で得られた重合体−3、重合体−4を用いた電極用スラリーの特性評価を行なった。
<電池電極用スラリーの調製>
電極組成物として、コバルト酸リチウム(日本化学工業(株)製、品名:セルシードC−5H)、アセチレンブラック(電気化学工業(株)製、品名:デンカブラック)、バインダ樹脂(B)を、質量比で100:5:2で混ぜ合わせ、溶剤としてN−メチルピロリドンを用いて、所謂固練りになるように加えて混練した。混練には自転公転ミキサー(あわとり練太郎ARV−200、シンキー株式会社製)を使用した。さらに、N−メチルピロリドンを加えて混練し、塗工可能な粘度になるように固形分を下げた。電池電極用スラリーの最終的な固形分及びチキソ性の結果を表1に示す。
<電極の作成>
上記で調製したスラリーを、ドクターブレードを用いて集電体に塗布した。ドクターブレードの設定膜厚は250μm、用いた集電体はアルミ箔(厚み20μm)であった。スラリーを塗布した集電体を、140℃のホットプレートで10分間乾燥させて、電極を得た。電極合剤層の膜厚及び密着性評価の結果を表1に示す。
(比較例)
電池電極用バインダ樹脂組成物として製造例1および製造例2で得られた重合体−1および重合体−2を使用した以外は、実施例1と同様にスラリーを調製し、スラリーのチキソ性を評価した。またそのスラリーを用いて、実施例1と同様にして得た電極の密着性を評価した。スラリーの最終固形分(質量%)及びチキソ性、乾燥後の電極合剤層の膜厚、密着性の評価結果を表1に示す。
表1に示すように、本発明のバインダ樹脂組成物を用いた実施例は、比較例に比べて集電体と電極合剤層との密着性が高く、かつ電極スラリーのチキソ性が高いことが分かる。本発明のバインダ樹脂組成物を用いると、以下の効果が得られると考えられる。
(1)調製後のスラリー中での活物質等の沈降を防止できる。
(2)高せん断で充分に低粘度になるため、塗工後の電極板の平滑性が得られやすい。
(3)塗工中に低粘度になったスラリーが塗工後に粘度回復するため、塗工後から乾燥させるまでの間での活物質等の沈降を防止でき、偏在のない均一な電極板を得ることが出来る。
(4)集電体と電極合剤層との密着性が高く、電池特性、特に長期サイクル特性に優れた電池を得ることが出来る。
一方比較例1,2では、ニトリル基にヒドロキシルアミンを作用させて得られるアミドキシム基またはアルカリ水酸化物を作用させて得られるカルボキシル基が重合体に含まれないため、集電体と電極合剤層との密着性が低く、電極スラリーのチキソ性も低い。よって、以下の点が懸念される。
(1)調製後のスラリー中で活物質等が沈降する。
(2)塗工可能なように高せん断で充分に低粘度にさせると、塗工後に粘度回復し難いため、塗工後から乾燥させるまでの間で活物質等が沈降し、偏在のない電極板を得ることが難しい。
(3)塗工後に活物質等が沈降しないように高粘度を維持すると、塗工中に充分に低粘度にならず、平滑性のある電極板が得られない。
(4)集電体と電極合剤層との密着性が低いため、電池特性、特に長期サイクル特性に優れた電池が得られない。

Claims (6)

  1. ニトリル基含有重合体に塩基性物質を作用させて得られる、二次電池電極用バインダ。
  2. 該ニトリル基含有重合体を構成する単量体単位の20質量%以上がアクリロニトリルである、請求項1に記載の二次電池電極用バインダ。
  3. 請求項1記載の塩基性物質が、ヒドロキシルアミン又はその塩、あるいは水酸化アルカリである、請求項1に記載の二次電池電極用バインダ
  4. 請求項1又は請求項2に記載のバインダを含有する二次電池電極用スラリー組成物。
  5. 請求項1又は請求項2に記載のバインダを含有する二次電池用電極。
  6. 請求項1又は請求項2に記載のバインダを含有する二次電池。
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