JP2015209936A - 転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルミナ−ジルコニア系セラミックス製の転動体を備える転がり軸受の更なる長寿命化を図り、特に液化天然ガスと接触する装置の回転支持部に好適な転がり軸受を提供する。
【解決手段】金属製の軌道輪と、セラミックス製の転動体とを有する転がり軸受において、転動体は、ZrO2と、Y2O3、SiO2、CeO2、TiO2、CaOまたはMgOから選ばれる酸化物焼結助剤とを主成分とする第1構成相と、Al2O3からなる第2構成相とが、質量比で、第1構成相:第2構成相=55:45〜95:5の割合であり、かつ、10〜30μmのジルコニア塊の個数が15個/300mm2以下である。
【選択図】図1
【解決手段】金属製の軌道輪と、セラミックス製の転動体とを有する転がり軸受において、転動体は、ZrO2と、Y2O3、SiO2、CeO2、TiO2、CaOまたはMgOから選ばれる酸化物焼結助剤とを主成分とする第1構成相と、Al2O3からなる第2構成相とが、質量比で、第1構成相:第2構成相=55:45〜95:5の割合であり、かつ、10〜30μmのジルコニア塊の個数が15個/300mm2以下である。
【選択図】図1
Description
本発明は、セラミックス製の転動体を備える転がり軸受に関する。
低温での液化天然ガス(メタン、エタン、液体水素、窒素)や水環境中など、潤滑条件の良くない環境下において使用される転がり軸受の転動体として、窒化珪素製の転動体が採用される場合がある。窒化珪素は、転動体の素材として一般的に採用される鋼に比べて耐摩耗性や耐食性に優れる。このため、潤滑条件の良くない環境下における機械性能向上を目的として、近年は窒化珪素を使用するケースが増加している。
しかし、窒化珪素はコスト高という問題点と、鋼材料よりもヤング率が高いために、軸受の転動体に用いた際、面圧が高くなり、相手材である鋼の寿命を低下させてしまう。また、線膨張係数が鋼に対して低いので、ラジアル隙間が減少し、トルク上昇して焼付きが発生しやすいという問題があった。
このような問題に対して、アルミナ系セラミックスで転動体を形成して低コスト化を図ったり、更にはアルミナとジルコニアとを複合化したセラミックス材料で転動体や軌道輪を形成することも行われている。例えば、特許文献1では、アルミナとジルコニアからなる複合セラミック材料を転動体、軌道輪に用いることでアルミナの靭性を向上し、転動寿命を向上させている。しかし、結晶粒径についての規定がなく、転動体材料としては十分な寿命を確保できない可能性がある。セラミック転動体材料の寿命の決定的な支配要因は欠陥であり、材料の組成の規定、結晶粒度を微細にしても長寿命化の効果は必ずしも最適にはならない。
また、特許文献2でもアルミナとジルコニアからなる複合セラミック材料を転動体に用いているが、材料組成に関する詳細な記述がなく、組成によっては線膨張係数が鋼と大きく異なることがある。また、粒径・欠陥に関する規定もなく、安定した転がり寿命を確保することが困難になる可能性もある。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、アルミナ−ジルコニア系セラミックス製の転動体を備える転がり軸受の更なる長寿命化を図り、特に液化天然ガスと接触する装置の回転支持部に好適な転がり軸受を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明は、下記の転がり軸受を提供する。
(1)金属製の軌道輪と、セラミックス製の転動体とを有する転がり軸受において、
転動体は、ZrO2と、Y2O3、SiO2、CeO2、TiO2、CaOまたはMgOから選ばれる酸化物焼結助剤とを主成分とする第1構成相と、Al2O3からなる第2構成相とが、質量比で、第1構成相:第2構成相=55:45〜95:5の割合であり、かつ、10〜30μmのジルコニア塊の個数が15個/300mm2以下であることを特徴とする転がり軸受。
(2)第1構成相の酸化物焼結助剤の含有量が、第1構成相に対して3mol%〜10mol%であることを特徴とする上記(1)記載の転がり軸受。
(3)−200℃〜−50℃環境下での各温度における線膨張係数比(転動体/軌道輪)が0.6〜0.8であり、かつ、
転動体におけるアルミナ粒子及びジルコニア粒子の各平均結晶粒径が0.5μm以下で、アスペクト比(a:長径部長さ、b:短径部長さ)が0.4≦b/a≦0.8であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の転がり軸受。
(4)液化天然ガスと接触する装置の回転支持部に使用されることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の転がり軸受。
(1)金属製の軌道輪と、セラミックス製の転動体とを有する転がり軸受において、
転動体は、ZrO2と、Y2O3、SiO2、CeO2、TiO2、CaOまたはMgOから選ばれる酸化物焼結助剤とを主成分とする第1構成相と、Al2O3からなる第2構成相とが、質量比で、第1構成相:第2構成相=55:45〜95:5の割合であり、かつ、10〜30μmのジルコニア塊の個数が15個/300mm2以下であることを特徴とする転がり軸受。
(2)第1構成相の酸化物焼結助剤の含有量が、第1構成相に対して3mol%〜10mol%であることを特徴とする上記(1)記載の転がり軸受。
(3)−200℃〜−50℃環境下での各温度における線膨張係数比(転動体/軌道輪)が0.6〜0.8であり、かつ、
転動体におけるアルミナ粒子及びジルコニア粒子の各平均結晶粒径が0.5μm以下で、アスペクト比(a:長径部長さ、b:短径部長さ)が0.4≦b/a≦0.8であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の転がり軸受。
(4)液化天然ガスと接触する装置の回転支持部に使用されることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の転がり軸受。
本発明の転がり軸受で用いる転動体は、特定の焼結助剤を用いることにより、ジルコニアの破壊靭性値を最適にできる部分安定化ジルコニアの状態にすることができ、アルミナの緻密化を促進する効果が得られる。また、粗大なジルコニア塊の発生が抑えられる。そのため、はく離の発生が抑制されて長寿命となる。
また、低温(−200〜−50℃)環境下における転動体と軌道輪との線膨張係数が近く、ラジアル隙間の減少や、トルク上昇、焼付きが窒化珪素よりも抑制され、軸受の滑らかな長期稼働が実現できる。
更には、アルミナ粒子及びジルコニア粒子が微細であるため、単斜晶の発生を抑えて曲げ強度・転がり寿命を向上でき、アスペクト比を規定範囲内にすることにより耐摩耗性、破壊靭性を同時に確保できる。
このように、本発明の転がり軸受は低温環境下での作動時のトルク上昇を抑制でき、滑らかな回転が長期にわたり維持できるため、特に液化天然ガスと接触する装置の回転支持部に好適である。
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
本発明において、転がり軸受の構造には制限はなく、例えば図1に断面図で示すような玉軸受を例示することができる。図示される玉軸受は、外輪1と内輪2との間に、玉3が転動自在に介装してあり、玉3は保持器4により所定間隔に維持するようになっている。外輪1及び内輪2の両側部には、それぞれシール溝11,12が形成しており、外輪1のシール溝11には、芯金部材21と一体化したシール部材20が装着されており、シールリップ22の接触面22aが内輪2のシール溝12に接触するように構成されている。また、内輪2とシールリップ22との間の空間sに潤滑剤が封入される。
本発明では、玉3を後述する特定のアルミナ−ジルコニア製とし、外輪1及び内輪2をSUJ2鋼、SUS鋼、13Cr鋼、SUS440C鋼等の金属製とする。そのため、外輪1及び内輪2と、玉3とが金属接触にならず、金属凝着による損傷を防止することもできる。
玉3はアルミナ−ジルコニア製であるが、ジルコニア成分(第1構成相)は、ジルコニア(ZrO2)と、イットリア(Y2O3)、シリカ(SiO2)、セリア(CeO2)、チタニア(TiO2)、カルシア(CaO)またはマグネシア(MgO)から選ばれる酸化物焼結助剤とを主成分とする。また、アルミナ成分(第2構成相)との割合は、質量比で、第1構成相:第2構成相=55;45〜95:5である。この比率範囲にすることにより、長寿命化を図ることができる。
アルミナとジルコニアの異種セラミック粉末を複合化させることで粒子同士の拡散、成長が抑制され、粒子の緻密化が促進されるため、玉3として使用したときの長寿命化が達成される。また、応力が作用した際に、ジルコニアの相転移(正方晶⇒単斜晶)によるアルミナ粒子への圧縮応力が負荷され、亀裂進展が防止される。
ジルコニアは、焼結から室温まで冷却した際に正方晶⇒単斜晶への変態による体積膨張に伴い、クラックが発生して材料強度が低下する問題がある。そこで、正方晶を室温でも準安定的に存在させた部分安定化ジルコニアの状態とするため、上記した特定の酸化物焼結助剤を添加する。特に、シリカ及びセリアを用いることにより、高い温度安定性が得られる。
(酸化物焼結助剤の添加量の検証)
第1構成相における酸化物焼結助剤の添加量を検討するために、下記試験を行った。
第1構成相における酸化物焼結助剤の添加量を検討するために、下記試験を行った。
表1に示すように、ジルコニア−イットリアのイットリア添加量、またはジルコニア−セリアのセリア添加量を変えてテストピース(TP)となる各ロット(N=10)作製した。なお、材料成分は同一粉末ロットのTPを用いてICP発光分析法で測定した。
そして、下記に示す条件で低温曲げ強度試験を実施し、各ロットでの平均強度を求めた。
<曲げ強度試験条件>
・試験温度:−196℃(冷媒:液体窒素)
・3点曲げ試験
・JIS R1601に準拠して実施
<曲げ強度試験条件>
・試験温度:−196℃(冷媒:液体窒素)
・3点曲げ試験
・JIS R1601に準拠して実施
結果を図2に示すが、焼結助剤であるイットリアまたはセリアの添加量が3〜10mol%の範囲であれば曲げ強度が最適になる。しかし、3mol%未満または10mol%超では曲げ強度が低下している。これは、3mol%未満ではジルコニアの結晶構造の単斜晶が残存しているため強度が劣化した状態となっていること、一方10mol%超では正方晶が完全に安定な状態となり、応力が負荷された際の相転移(正方晶⇒単斜晶)による応力緩和効果が発現されないためである。
このことから、酸化物焼結助剤の添加量が3〜10mol%の場合に最適な曲げ強度が得られることがわかる。但し、セリアは、添加量が2.2〜12mol%でも曲げ強度が高くなっているため、セリアの添加量は2.2〜12mol%が好ましい。また、セリア以外の上記した酸化物焼結助剤でも、添加量が3〜10mol%の範囲が好ましい。
(第1構成相と第2構成相との割合の検証)
第1構成相と第2構成相との割合について検討するため、表2に示すようにアルミナ原料粉末の添加量を変えて試作球を作製した。なお、ジルコニアの酸化物焼結助剤はセリアを3mol%とした。
第1構成相と第2構成相との割合について検討するため、表2に示すようにアルミナ原料粉末の添加量を変えて試作球を作製した。なお、ジルコニアの酸化物焼結助剤はセリアを3mol%とした。
そして、下記に示す試験条件で各ロットの試作球の寿命試験をそれぞれ10回(N=10)行い、各ロットのL10寿命を求めた。
<転がり寿命試験条件>
・荷重:4410N
・玉サイズ:3/8in
・玉数:3球
・回転数:1000min−1
・軸受:51305
・内輪・外輪:SUS440C
・潤滑:RO68油浴潤滑
<転がり寿命試験条件>
・荷重:4410N
・玉サイズ:3/8in
・玉数:3球
・回転数:1000min−1
・軸受:51305
・内輪・外輪:SUS440C
・潤滑:RO68油浴潤滑
結果を図3に示すが、アルミナ添加量が5〜45質量%の場合に計算寿命を満足しており、寿命の向上効果が大きいことがわかる。これは複合化による粒子成長の抑制、また残留圧縮応力の効果などが原因としてあげられる。
(−200−50℃における各温度の線膨張係数比(転動体/軌道輪)の検証)
表3に示すように、窒化珪素の線膨張係数は、一般的なステンレス軸受鋼であるSUS440Cの線膨張係数に比べて3分の1から4分の1程度と低いため、ラジアル隙間が減少し、トルク上昇して軸受が滑らかに回転しないという可能性があった。そこで、玉3の線膨張係数を内外輪の金属材料の線膨張係数に近づけ、具体的には0.6〜0.8にすることにより、低トルクで、滑らかな回転を実現させる。特に、液体天然ガスと接触する装置への適用を考慮して、−200−50℃の低温環境下における線膨張係数比を0.6〜0.8の範囲にする。
表3に示すように、窒化珪素の線膨張係数は、一般的なステンレス軸受鋼であるSUS440Cの線膨張係数に比べて3分の1から4分の1程度と低いため、ラジアル隙間が減少し、トルク上昇して軸受が滑らかに回転しないという可能性があった。そこで、玉3の線膨張係数を内外輪の金属材料の線膨張係数に近づけ、具体的には0.6〜0.8にすることにより、低トルクで、滑らかな回転を実現させる。特に、液体天然ガスと接触する装置への適用を考慮して、−200−50℃の低温環境下における線膨張係数比を0.6〜0.8の範囲にする。
玉3の線膨張係数は、ジルコニアとアルミナとの配合割合によって異なるため、表3に示すように、ジルコニア(酸化物焼結助剤はセリア3mol%)とアルミナとの配合割合の異なるテストピースを作製した。そして、JIS R1516に準拠して各温度における線膨張係数を測定した。また、内外材料としてSUS440Cを想定し、SUS440Cの各温度の線膨張係数を測定した。更に、比較のために、窒化珪素の各温度における線熱膨張係数を測定した。それぞれの材料の各温度における線膨張係数を表3及び図4に示す。また、−50〜−200℃における、SUS440Cに対する線膨張率係数比を表4に示す。
表4に示すように、各温度での線膨張係数比は、材料ごとにある一定の範囲に落ち着くことがわかる。
また、SUS440C製の内外輪に、表5に示す材料からなる玉を組み込み、下記に示す試験条件にて一定時間(300hr)軸受を稼働させた後にトルク測定を行った。
<試験条件>
・軸受:6206
・潤滑:液体窒素循環供給
・試験時間:300hr
・回転数:3900min−1
・玉数:9球
・内輪・外輪:SUS440C
<試験条件>
・軸受:6206
・潤滑:液体窒素循環供給
・試験時間:300hr
・回転数:3900min−1
・玉数:9球
・内輪・外輪:SUS440C
結果を表5及び図5に示すが、線膨張係数比が0.6〜0.8の範囲であれば、摩擦トルクは0.2N・m未満の低いレベルに落ち着く。これに対し線膨張係数比が0.6未満で、線膨張係数比が小さくなるのに従ってトルクが上昇している。また、線膨張係数比は1.0に近づくことが望ましいが、本発明材料で達成しうる線膨張係数の上限レベルが8.5×10−6/℃であることから、線膨張係数比は0.8を上限とした。
(アルミナ粒子及びジルコニア粒子の平均結晶粒径の検証)
ジルコニア(セリア3mol%):アルミナ=70:30の組成からなるテストピース(N=10)を作製した。その際、製造条件を調整して、表6に示すように、アルミナ粒子及びジルコニア粒子の平均結晶粒径を制御した。粒径の測定は、大気雰囲気中、1300℃×2hrの熱処理を行い、テストピース表面に結晶粒界を現出させ、日本電子(株)製のSEMを用いて10000倍で写真を撮影した。粒径はテストピース表面の任意の位置で、図6に示すようにコード法に基づいて合計30μmとなるように10μmの線を3本任意に引き、結晶粒と線との交点をカウントして、平均結晶粒径を算出した。
ジルコニア(セリア3mol%):アルミナ=70:30の組成からなるテストピース(N=10)を作製した。その際、製造条件を調整して、表6に示すように、アルミナ粒子及びジルコニア粒子の平均結晶粒径を制御した。粒径の測定は、大気雰囲気中、1300℃×2hrの熱処理を行い、テストピース表面に結晶粒界を現出させ、日本電子(株)製のSEMを用いて10000倍で写真を撮影した。粒径はテストピース表面の任意の位置で、図6に示すようにコード法に基づいて合計30μmとなるように10μmの線を3本任意に引き、結晶粒と線との交点をカウントして、平均結晶粒径を算出した。
また、下記に示す条件にて低温曲げ強度試験を行い、各テストピースの平均曲げ強度を測定した。
<曲げ強度試験条件>
・試験温度:−196℃(冷媒:液体窒素)
・3点曲げ試験
・JIS R1601に準拠して実施
<曲げ強度試験条件>
・試験温度:−196℃(冷媒:液体窒素)
・3点曲げ試験
・JIS R1601に準拠して実施
結果を表6及び図7に示すが、粒径が微細であるほど曲げ強度が向上し、粒径が0.5μm以下で曲げ強度が飽和して最適な状態となる。これは、微細化によって粒子全体の表面積が増大し、粒界強度が上昇して粒界に作用する応力を緩和できるためである。
(粒子のアスペクト比の検証)
平均結晶粒径が0.5μmであるジルコニア(セリア3mol%):アルミナ=80:20の組成で、表7に示すように、粒子のアスペクト比を変化させた種々のテストピースを作製した。なお、アスペクト比は、図8に示すように、粒子の長径部の長さをa、短径部の長さをbとし、(b/a)をアスペクト比と定義する。そして、断面を鏡面研磨し、JIS−R1607に規定されるIF法により破壊靭性値を測定した。破壊靭性値の測定試験条件、また、靭性値の算出に用いたNiiharaの式を下記に示す。
<破壊靭性値測定条件>
・試験条件:荷重196N、保持時間30秒
・Niiharaの式:
Kc=10.4・E0.4・P0.6・a0.8・C−1.5
(ここで、Kc:破壊靭性値(MPa・m1/2)、E:ヤング率(GPa)、a:圧痕の対角線長さの平均の半分(μm)、P:押込荷重(kgf)、C:クラック長さの平均の半分(μm)である。)
平均結晶粒径が0.5μmであるジルコニア(セリア3mol%):アルミナ=80:20の組成で、表7に示すように、粒子のアスペクト比を変化させた種々のテストピースを作製した。なお、アスペクト比は、図8に示すように、粒子の長径部の長さをa、短径部の長さをbとし、(b/a)をアスペクト比と定義する。そして、断面を鏡面研磨し、JIS−R1607に規定されるIF法により破壊靭性値を測定した。破壊靭性値の測定試験条件、また、靭性値の算出に用いたNiiharaの式を下記に示す。
<破壊靭性値測定条件>
・試験条件:荷重196N、保持時間30秒
・Niiharaの式:
Kc=10.4・E0.4・P0.6・a0.8・C−1.5
(ここで、Kc:破壊靭性値(MPa・m1/2)、E:ヤング率(GPa)、a:圧痕の対角線長さの平均の半分(μm)、P:押込荷重(kgf)、C:クラック長さの平均の半分(μm)である。)
結果を表7及び図9に示すが、アスペクト比が0.4以上0.8以下であれば、破壊靭性値7.0MPa・m1/2以上を確保できる。これは、粒径の形状が円に近い等軸の結晶粒よりも、異方性を持った結晶粒のほうがクラックを迂回させる効果が発現されるためである。
(10〜30μmのジルコニア塊の個数の検証)
ジルコニア(セリア3mol%):アルミナ=80:20の組成からなるセラミック球を試作し、転がり寿命試験を行ったところ、計算寿命未達で短寿命はく離が発生した。はく離の起点を解析したところ、ジルコニア塊が起点であった。そこで、ジルコニア塊の発生を抑制できれば、寿命を改善できると考え、粉砕条件をそれぞれ変更してジルコニア塊の分布の異なる種々のロット球を試作した。なお、ジルコニア塊の粒径は、光学顕微鏡を用いて200倍でサーチし、1000倍で写真を撮影してその粒径を測定した。また、ジルコニア塊の視認性の問題から全数検査は困難であったため、抜取検査で寿命に有害なジルコニア塊の個数を予測するべく、統計的な手法により抜取検査面積を300mm2と算出した。そして、この面積中で出現頻度の高いサイズであった10〜30μmの塊に着目すれば、製造条件の違いによるジルコニア塊のレベルを正しく把握できることがわかった。表8に、10〜30μmのジルコニア塊の300mm2当りの個数を示す。
ジルコニア(セリア3mol%):アルミナ=80:20の組成からなるセラミック球を試作し、転がり寿命試験を行ったところ、計算寿命未達で短寿命はく離が発生した。はく離の起点を解析したところ、ジルコニア塊が起点であった。そこで、ジルコニア塊の発生を抑制できれば、寿命を改善できると考え、粉砕条件をそれぞれ変更してジルコニア塊の分布の異なる種々のロット球を試作した。なお、ジルコニア塊の粒径は、光学顕微鏡を用いて200倍でサーチし、1000倍で写真を撮影してその粒径を測定した。また、ジルコニア塊の視認性の問題から全数検査は困難であったため、抜取検査で寿命に有害なジルコニア塊の個数を予測するべく、統計的な手法により抜取検査面積を300mm2と算出した。そして、この面積中で出現頻度の高いサイズであった10〜30μmの塊に着目すれば、製造条件の違いによるジルコニア塊のレベルを正しく把握できることがわかった。表8に、10〜30μmのジルコニア塊の300mm2当りの個数を示す。
また、下記に示す試験条件にて各ロット球の寿命試験をそれぞれN=10行い、各ロット球のL10寿命を求めた。
<転がり寿命試験条件>
・荷重:4410N
・玉サイズ:3/8in
・玉数:3球
・回転数:1000min−1
・軸受:51305
・内輪・外輪:SUS440C
・潤滑:RO68油浴潤滑
<転がり寿命試験条件>
・荷重:4410N
・玉サイズ:3/8in
・玉数:3球
・回転数:1000min−1
・軸受:51305
・内輪・外輪:SUS440C
・潤滑:RO68油浴潤滑
図10に示すように、10〜30μmのジルコニア塊の300mm2当たりの個数が15個以下であれば、L10寿命は計算寿命以上であり、安定して長寿命を達成できる。
上記の結果を基に下記実施例を行ったが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
第1構成相としてジルコニア及びセリア、第2構成相としてアルミナからなるセラミックスからなる3/8inの転動体を作製した。第1構成相と第2構成相との割合は、表9に示すとおりである。また、比較のために、窒化珪素による3/8inの転動体を作製した(比較例4)。
また、内輪及び外輪はSUS440C製として試験軸受を組み立て、下記の条件にて低温曲げ強度測定、転がり寿命試験、線膨張係数測定、粒径測定、破壊靭性値測定、低温環境転がりトルク測定を行った。それぞれの結果を表9、並びに図11〜図16にグラフ化して示す。
(曲げ強度試験条件)
・試験温度:−196℃(冷媒:液体窒素)
・3点曲げ試験
・JIS R1601に準拠して実施
・試験温度:−196℃(冷媒:液体窒素)
・3点曲げ試験
・JIS R1601に準拠して実施
(転がり寿命試験条件)
・荷重:4410N
・玉サイズ:3/8in
・玉数:3球
・回転数:1000min−1
・軸受:51305
・内輪・外輪:SUS440C
・潤滑:RO68油浴潤滑
・荷重:4410N
・玉サイズ:3/8in
・玉数:3球
・回転数:1000min−1
・軸受:51305
・内輪・外輪:SUS440C
・潤滑:RO68油浴潤滑
(破壊靭性値測定条件)
・JIS R1607に準拠して実施
・玉サイズ:3/8in
・試験条件:荷重196N、保持時間30秒
・Niiharaの式:
Kc=10.4・E0.4・P0.6・a0.8・C−1.5)
(ここで、Kc:破壊靭性値(MPa・m1/2)、E:ヤング率(GPa)、a:圧痕の対角線長さの平均の半分(μm)、P:押込荷重(kgf)、C:クラック長さの平均の半分(μm)である。)
・JIS R1607に準拠して実施
・玉サイズ:3/8in
・試験条件:荷重196N、保持時間30秒
・Niiharaの式:
Kc=10.4・E0.4・P0.6・a0.8・C−1.5)
(ここで、Kc:破壊靭性値(MPa・m1/2)、E:ヤング率(GPa)、a:圧痕の対角線長さの平均の半分(μm)、P:押込荷重(kgf)、C:クラック長さの平均の半分(μm)である。)
(線膨張係数測定)
・熱機械分析装置による、JIS R1618に準拠
・熱機械分析装置による、JIS R1618に準拠
(低温環境転がりトルク測定)
・軸受:6206
・潤滑:液体窒素循環供給
・試験時間:300hr
・回転数:3900min−1
・玉数:3球
・内輪・外輪:SUS440C
・軸受:6206
・潤滑:液体窒素循環供給
・試験時間:300hr
・回転数:3900min−1
・玉数:3球
・内輪・外輪:SUS440C
実施例が示すように、酸化物焼助剤としてセリアを用い、第1構成相(ジルコニア):第2構成相(アルミナ)=55;45〜95:5の割合であり、かつ、10μm以上のジルコニア塊の個数が5個/300mm2以下である転動体を備えることにより、高強度、長寿命及び低トルクとなる。特に、実施例1〜10では、2200MPa前後の曲げ強度及び7.0MPa・m1/2以上の破壊靭性値が得られており、特に好ましい。
但し、実施例14〜16のように、平均結晶粒径が0.5μm超になると曲げ強度が最適にはならない。また、実施例17〜19のように、粒子のアスペクト比が0.8超になると破壊靭性値が最適にはならない。
これに対し、比較例1〜4のように、材料組成が本発明範囲外であれば、曲げ強度は最適なものにはならない。また、比較例2〜4に示すように、低温領域での線膨張係数の比が0.6未満であれば摩擦トルクが増大する。更に、比較例5〜7に示すように、10〜30μmのジルコニア塊の個数が300mm2当たり15個より多くなると寿命は計算寿命に満たない。
以上の結果が示すように、本発明の転がり軸受は、低温環境下での特性にも優れることから、液化天然ガス用転がり軸受として好適である。
1 外輪
2 内輪
3 玉
4 保持器
20 シール部材
21 芯金部材
22 シールリップ
22a 接触面
2 内輪
3 玉
4 保持器
20 シール部材
21 芯金部材
22 シールリップ
22a 接触面
Claims (4)
- 金属製の軌道輪と、セラミックス製の転動体とを有する転がり軸受において、
転動体は、ZrO2と、Y2O3、SiO2、CeO2、TiO2、CaOまたはMgOから選ばれる酸化物焼結助剤とを主成分とする第1構成相と、Al2O3からなる第2構成相とが、質量比で、第1構成相:第2構成相=55:45〜95:5の割合であり、かつ、10〜30μmのジルコニア塊の個数が15個/300mm2以下であることを特徴とする転がり軸受。 - 第1構成相の酸化物焼結助剤の含有量が、第1構成相に対して3mol%〜10mol%であることを特徴とする請求項1記載の転がり軸受。
- −200℃〜−50℃環境下での各温度における線膨張係数比(転動体/軌道輪)が0.6〜0.8であり、かつ、
転動体におけるアルミナ粒子及びジルコニア粒子の各平均結晶粒径が0.5μm以下で、アスペクト比(a:長径部長さ、b:短径部長さ)が0.4≦b/a≦0.8であることを特徴とする請求項1または2記載の転がり軸受。 - 液化天然ガスと接触する装置の回転支持部に使用されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の転がり軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014092501A JP2015209936A (ja) | 2014-04-28 | 2014-04-28 | 転がり軸受 |
Applications Claiming Priority (1)
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Cited By (1)
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CN107795966A (zh) * | 2016-08-30 | 2018-03-13 | 广州市浩洋电子股份有限公司 | 一种光学元件的旋转装置及具有其的舞台灯光学装置 |
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2014
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CN107795966A (zh) * | 2016-08-30 | 2018-03-13 | 广州市浩洋电子股份有限公司 | 一种光学元件的旋转装置及具有其的舞台灯光学装置 |
CN107795966B (zh) * | 2016-08-30 | 2023-06-02 | 广州市浩洋电子股份有限公司 | 一种光学元件的旋转装置及具有其的舞台灯光学装置 |
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