JP2015207351A - 多極子レンズ、収差補正装置、および電子顕微鏡 - Google Patents

多極子レンズ、収差補正装置、および電子顕微鏡 Download PDF

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Abstract

【課題】電子線の進行方向に関して強度の異なる静磁場を発生させることができる多極子レンズを提供する。【解決手段】多極子レンズ100は、ヨーク14a,14b,14cと、ヨーク14a,14b,14cに磁気的に接続された基部13a,13b,13c、および基部13a,13b,13cに磁気的に接続された先端部11a,11b,11cを有する極子12a,12b,12cと、を備えた構造体10a,10b,10cを含み、構造体10a,10b,10cは複数積層され、構造体10a,10b,10cの積層方向に隣り合う先端部11a,11b,11cの間には、非磁性体からなる磁場分離部20,22が設けられている。【選択図】図4

Description

本発明は、多極子レンズ、収差補正装置、および電子顕微鏡に関する。
透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)等の電子顕微鏡において、球面収差や色収差は分解能低下要因の一つである。電子顕微鏡において、球面収差や色収差を補正することにより、分解能が向上する。球面収差補正装置や色収差補正装置では、多極子を用いて、磁場や電場を発生させて球面収差や色収差を補正している。
例えば、非特許文献1には、球面収差補正装置に用いられている多極子として、磁場のみを発生させる多極子が開示されている。非特許文献1では、Soft Iron(軟磁性体)等で作製された十二極子のポール(磁極片)にコイルを巻いて多極子を構成している。また、非特許文献1では、多極子の中心の穴にライナーチューブ(内部を真空にするための筒状の金属)が配置されており、内部のみを真空とし、多極子自体は真空外に配置されている。そのため、電子線は真空内を通過するが、多極子から発生した磁場は、非磁性体でできたライナーチューブをしみ出して、電子線に対して所望の対称場を作ることができる。
また、非特許文献2には、静電・静磁場を発生させることができる十二極子が開示されている。それぞれのポールは金属(軟磁性体)でできており、コイルにより静磁場を発生させるとともに、電気的に電圧をかけることにより、静磁場を同時に発生させることができる。多極子自体は真空内に配置されており、電子線は多極子の中心を通り、静電・静磁場からの多極子場の影響を受ける。
また、特許文献1には、上述した非特許文献2に開示された多極子と同様に、静電・静磁場を発生させることができる十二極子が開示されている。特許文献1に開示された多極子は、非特許文献1に開示された多極子と異なり、静電場を発生させる多極子のみを真空内に配置し、静電場を発生させる多極子(ポールとコイル)は真空外に配置されている。
特開2010−114068号公報
M.Haider, G. Braunshausen, E. Schwan:Optik 1995 No.4 p.167−179 裏克己、ナノ電子光学 p.284
上記の多極子では、電子線の進行方向に関して一定の強度の静磁場、または静電場および静磁場の重畳場しか発生することができない。すなわち、上記の多極子では、電子線の進行方向に関して強度の異なる静磁場を発生させることができない。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、電子線の進行方向に関して強度の異なる静磁場を発生させることができる多極子レンズを提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の
1つは、上記多極子レンズを含む収差補正装置、および電子顕微鏡を提供することにある。
(1)本発明に係る多極子レンズは、
ヨークと、
前記ヨークに磁気的に接続された基部、および前記基部に磁気的に接続された先端部を有する極子と、
を備えた構造体を含み、
前記構造体は複数積層され、
前記構造体の積層方向に隣り合う前記先端部の間には、非磁性体からなる磁場分離部が設けられている。
このような多極子レンズでは、磁場分離部によって、構造体の積層方向に隣り合う先端部を磁気的に分離することができる。したがって、このような多極子レンズでは、例えば、構造体の積層方向に配列された極子が発生させる静磁場を個別に制御して、電子線の進行方向に関して強度の異なる静磁場を発生させることができる。また、このような多極子レンズでは、例えば構造体の積層方向に隣り合う先端部を接触させた場合と比べて、隣り合う先端部が発生させる静磁場の境界を明瞭にすることができる。
(2)本発明に係る多極子レンズにおいて、
前記磁場分離部は、導電性を有していてもよい。
このような多極子レンズでは、構造体の積層方向に隣り合う先端部を等電位にすることができる。
(3)本発明に係る多極子レンズにおいて、
前記先端部に電圧を印加するための端子を含んでいてもよい。
このような多極子レンズでは、静磁場に加えて、静電場を発生させることができる。
(4)本発明に係る多極子レンズにおいて、
前記基部と前記先端部とは、離間していてもよい。
このような多極子レンズでは、例えば、多極子レンズを電子顕微鏡に組み込んだ際に、基部と先端部との間に内部を真空に保つための真空隔壁を配置することができる。これにより、先端部を真空排気された空間に配置し、基部を真空外に配置させることができる。この結果、先端部における放電を避けることができ、かつ、真空悪化の原因となるコイルを真空外に配置することができる。
(5)本発明に係る多極子レンズにおいて、
前記積層方向に隣り合う前記極子が発生させる電場の強度は等しく、前記積層方向に隣り合う前記極子が発生させる磁場の強度は異なっていてもよい。
(6)本発明に係る多極子レンズにおいて、
前記磁場分離部は、前記積層方向に隣り合う前記先端部と接していてもよい。
このような多極子レンズでは、磁場分離部によって先端部を支持することができる。
(7)本発明に係る多極子レンズにおいて、
前記積層方向に隣り合う前記基部の間には、非磁性体からなる第1支持部が設けられていてもよい。
このような多極子レンズでは、第1支持部によって、基部を磁気的に分離しつつ、基部を支持することができる。
(8)本発明に係る多極子レンズにおいて、
前記積層方向に隣り合う前記ヨークの間には、非磁性体からなる第2支持部が設けられていてもよい。
このような多極子レンズでは、第2支持部によって、ヨークを磁気的に分離しつつ、ヨークを支持することができる。
(9)本発明に係る多極子レンズにおいて、
前記基部に設けられた第1コイルと、
前記基部に設けられ、前記第1コイルよりも巻き数が少ない第2コイルと、
を含んでいてもよい。
このような多極子レンズでは、例えば、第1コイルによって主となる静磁場を発生させつつ、第2コイルによって調整用の静磁場を発生させることができる。
(10)本発明に係る収差補正装置は、
本発明に係る多極子レンズを含む。
このような収差補正装置では、収差を補正することができる。
(11)本発明に係る収差補正装置において、
前記多極子レンズは、色収差を打ち消すための電磁場を発生させてもよい。
このような収差補正装置では、色収差を補正することができる。
(12)本発明に係る電子顕微鏡は、
本発明に係る収差補正装置を含む。
このような電子顕微鏡では、収差を補正することができるため、高分解能化を図ることができる。
(13)本発明に係る電子顕微鏡において、
前記基部と前記先端部との間には、真空隔壁が配置されていてもよい。
このような電子顕微鏡では、収差を補正することができるため、高分解能化を図ることができる。
本実施形態に係る多極子レンズを模式的に示す平面図。 本実施形態に係る多極子レンズを模式的に示す断面図。 本実施形態に係る多極子レンズの極子を模式的に示す斜視図。 本実施形態に係る多極子レンズを模式的に示す一部切欠き斜視断面図。 隣り合う極子の先端部間に非磁性体からなる磁場分離部を設けた場合に、多極子が発生させる静磁場を模式的に示す図。 隣り合う極子の先端部を接触させた場合に、多極子が発生させる静磁場を模式的に示す図。 本実施形態に係る多極子レンズを電子顕微鏡に組み込んだ状態を模式的に示す平面図。 本実施形態に係る多極子レンズを電子顕微鏡に組み込んだ状態を模式的に示す断面図。 本実施形態に係る色収差補正装置を搭載する電子顕微鏡の構成を説明するための図。 本実施形態に係る色収差補正装置の光学系を示す図。 図11(A)は、本実施形態に係る色収差補正装置の構成を説明するための図であり、図11(B)は、本実施形態に係る色収差補正装置の各部分における二回非点成分を示す図であり、図11(C)は、本実施形態に係る色収差補正装置の各部分で発生するレンズ効果を示す図であり、図11(D)は、本実施形態に係る色収差補正装置の第1多極子および第2多極子で発生する色二回非点成分を示す図である。 本実施形態に係る色収差補正装置の第1多極子の第1部分を模式的に示す平面図。 四極の電極が発生させる電場四極子場から、電子線が受ける力を説明するための図。 四極の磁極が発生させる磁場四極子場から、電子線が受ける力を説明するための図。 本実施形態に係る色収差補正装置の第2多極子の第1部分を模式的に示す平面図。 本実施形態に係る色収差補正装置の第1多極子内および第2多極子内の電子線の軌道を示す模式図。 本実施形態の第1変形例に係る色収差補正装置の光学系を示す図。 図18(A)は、本実施形態の第1変形例に係る色収差補正装置の構成を説明するための図であり、図18(B)は、本実施形態の第1変形例に係る色収差補正装置の各部分における二回非点成分を示す図であり、図18(C)は、本実施形態の第1変形例に係る色収差補正装置の各部分で発生するレンズ効果を示す図であり、図18(D)は、本実施形態の第1変形例に係る色収差補正装置の第1多極子および第2多極子で発生する色二回非点成分を示す図である。 本実施形態の第2変形例に係る色収差補正装置の光学系を示す図。 本実施形態の第3変形例に係る色収差補正装置の光学系を示す図。 本実施形態の第4変形例に係る電子顕微鏡の構成を説明するための図。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1. 多極子レンズ
まず、本実施形態に係る多極子レンズについて、図面を参照しながら説明する。図1は、多極子レンズ100を模式的に示す平面図である。図2は、多極子レンズ100を模式的に示す断面図である。図3は、多極子レンズ100の極子12a,12b,12cを模式的に示す斜視図である。図4は、多極子レンズ100を模式的に示す一部切欠き斜視断面図である。なお、図2は、図1のII−II線断面図である。また、図1および図2には、互いに直交する軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。
多極子レンズ100は、図1〜図4に示すように、第1構造体10aと、第2構造体10bと、第3構造体10cと、磁場分離部20,22と、第1支持部30,32と、第2
支持部40,42と、を含む。
第1構造体10aは、極子12aと、ヨーク14aと、コイル16a,18aと、を有している。
極子12aは、複数(図示の例では12個)設けられている。12個の極子12aは、多極子レンズ100の光軸OAに対して対称に配置されている。12個の極子12aは、光軸OAまわりに等間隔(30°ごと)に配置されている。図示の例では、12個の極子12aは、各極子12aの中心軸C(図2参照)が光軸OAに垂直な平面内(XY平面に平行な面内)に位置するように配置されている。各極子12aの中心軸Cは、多極子レンズ100の光軸OAと直交しており、光軸OA上の1点で交わる。光軸OAは、図示の例では、Z軸に平行である。なお、極子12aの中心軸Cとは、極子12aの中心を通り、極子12aの長手方向に延在する軸である。
極子12aは、基部11aと、先端部13aと、を有している。基部11aは、ヨーク14aと磁気的に接続されている。図示の例では、基部11aとヨーク14aとは離間して(間を離して)いるが、磁束は基部11aとヨーク14aとの間の空間に漏れて、基部11aとヨーク14aとの間を伝わる。すなわち、磁束は、基部11aとヨーク14aとの間の隙間をしみ出して透過し磁気回路を構成している。なお、基部11aとヨーク14aとは、接していてもよい。基部11aは、コイル16a,18aの磁心となる。
極子12aの先端部13aは、基部11aと磁気的に接続されている。先端部13aと基部11aとは、離間しているが、磁束は基部11aと先端部13aとの間の空間に漏れて、基部11aと先端部13aとの間を伝わる。すなわち、磁束は、基部11aと先端部13aとの間の隙間をしみ出して透過し磁気回路を構成している。後述するように、多極子レンズ100が電子顕微鏡に組み込まれると、先端部13aと基部11aとの間には、真空隔壁(ライナーチューブ)が配置される。
先端部13aには、先端部13aに電圧を印加するための端子(図示せず)が設けられている。この端子を介して、先端部13aに電圧が印加され、先端部13aから静電場を発生させることができる。端子は、構造体10a,10b,10cの積層方向に並ぶ先端部13a,13b,13cのうちの1つの先端部(先端部13a)のみに設けられ、その他の先端部(例えば先端部13b、先端部13c)には設けられていない。先端部13a、先端部13b、先端部13cは、磁場分離部20,22によって電気的に接続されているため、先端部13aに電圧を印加することで、先端部13bおよび先端部13cにも電圧が印加される。
ヨーク14aは、コイル16a,18aで作られる磁束を有効に極子12aに導くことができる。ヨーク14aは、平面視において(Z軸方向から見て)、環状に設けられている。ヨーク14aの内側には、複数の極子12aが配置されている。極子12aおよびヨーク14aは、例えば、パーマロイ等の軟磁性体からなる。
コイル16a,18aは、基部11aに設けられている。コイル16a,18aは、磁束を発生させる。第1コイル(主コイル)16aは、第2コイル(副コイル)18aよりも巻き数が多い。
第2構造体10bは、極子12bと、ヨーク14bと、コイル16b,18bと、を有している。第2構造体10bを構成する各部材12b,14b,16b,18bは、第1構造体10aを構成する各部材12a,14a,16a,18aと、第1コイル16bの巻き数が、第1コイル16aの巻き数よりも多い点を除いて同様の機能を有している。そ
のため、第2構造体10bを構成する各部材12b,14b,16b,18bの詳細な説明を省略する。
第3構造体10cは、極子12cと、ヨーク14cと、コイル16c,18cと、を有している。第3構造体10cを構成する各部材12c,14c,16c,18cは、第1構造体10aを構成する各部材12a,14a,16a,18aと同様の機能を有している。そのため、第3構造体10cを構成する各部材12c,14c,16c,18cの詳細な説明を省略する。
なお、多極子レンズ100を構成しているすべての第1コイル(12個の第1コイル16a、12個の第1コイル16b、および12個の第1コイル16c)は、1つの電源(図示せず)の一方の端子から他方の端子まで一筆書きできるように接続された導線によって形成されている。すなわち、多極子レンズ100を構成しているすべての第1コイル16a,16b,16cは、いわゆるシリーズ巻きとなっている。そのため、第1コイル16a,16b,16cに流れる電流にノイズが乗ったとしても、ノイズに起因して各コイル16a,16b,16cから発生する磁場は互いに打ち消されるので、電子線の擾乱を低減させることができる。
また、第2コイル18a,18b,18cは、1つの第2コイル18a,18b,18cごとに電源(図示せず)が設けられている。第2コイル18a,18b,18cでは、電源から供給される電流を制御することにより、各第2コイル18a,18b,18cごとに発生させる磁場の大きさを制御することができる。そのため、第2コイル18a,18b,18cを副コイルとして調整用の磁場を発生させることに用いることができる。
このように、多極子レンズ100では、1つの電源から電流が供給され高い安定度を有する第1コイル16a,16b,16cと、調整用の磁場を発生させる第2コイル18a,18b,18cと、を用いることにより、効率的に高い安定度を得ることができる。
第1構造体10a、第2構造体10b、第3構造体10cは、多極子レンズ100の光軸OAの方向(Z軸方向)に積層されている。そのため、各極子12a,12b,12cは、光軸OAの方向から見て重なっている。また、各ヨーク14a,14b,14cは、光軸OAの方向から見て重なっている。
磁場分離部20,22は、構造体10a,10b,10cの積層方向(すなわち光軸OAの方向、Z軸方向)に隣り合う先端部13a,13b,13cの間に設けられている。図示の例では、磁場分離部20は、第1構造体10aの先端部13aと第2構造体10bの先端部13bとの間に設けられている。また、磁場分離部22は、第2構造体10bの先端部13bと第3構造体10cの先端部13cとの間に設けられている。
磁場分離部20,22は、構造体10a,10b,10cの積層方向に隣り合う先端部13a,13b,13cに接している。図示の例では、磁場分離部20は、第1構造体10aの先端部13aおよび第2構造体10bの先端部13bと接している。また、磁場分離部22は、第2構造体10bの先端部13bおよび第3構造体10cの先端部13cと接している。
磁場分離部20,22は、非磁性体からなる。そのため、磁場分離部20によって、第1構造体10aの先端部13aと第2構造体10bの先端部13bとの間は磁気的に接続されない。同様に、磁場分離部22によって、第2構造体10bの先端部13bと第3構造体10cの先端部13cとの間は磁気的に接続されない。また、磁場分離部20,22は、導電性を有している。そのため、磁場分離部20によって、第1構造体10aの先端
部13aと第2構造体10bの先端部13bとの間は電気的に接続される。同様に、磁場分離部22によって、第2構造体10bの先端部13bと第3構造体10cの先端部13cとの間は電気的に接続される。磁場分離部20,22の材質は、例えば、銅(Cu)、ステンレス鋼(SUS)等である。磁場分離部20,22の厚さd(Z軸方向の大きさ、図2参照)は、例えば、1mm以上3mm以下程度である。
第1支持部(基部支持部)30、32は、構造体10a,10b,10cの積層方向に隣り合う基部11a,11b,11cの間に設けられている。図示の例では、第1支持部30は、第1構造体10aの基部11aと第2構造体10bの基部11bとの間に設けられている。第1支持部32は、第2構造体10bの基部11bと第3構造体10cの基部11cとの間に設けられている。第1支持部30,32は、基部11a,11b,11cを支持している。第1支持部30,32は、例えば、非磁性体からなる。そのため、第1支持部30によって、第1構造体10aの基部11aと第2構造体10bの基部11bとの間は磁気的に接続されない。同様に、第1支持部32によって、第2構造体10bの基部11bと第3構造体10cの基部11cとの間は磁気的に接続されない。第1支持部30,32の材質は、例えば、銅(Cu)、ステンレス鋼(SUS)等である。
第2支持部(ヨーク支持部)40、42は、構造体10a,10b,10cの積層方向に隣り合うヨーク14a,14b,14cの間に設けられている。図示の例では、第2支持部40は、第1構造体10aのヨーク14aと第2構造体10bのヨーク14bとの間に設けられている。第2支持部42は、第2構造体10bのヨーク14bと第3構造体10cのヨーク14cとの間に設けられている。第2支持部40,42は、ヨーク14a,14b,14cを支持している。第2支持部40,42は、例えば、非磁性体からなる。そのため、第2支持部40によって、第1構造体10aのヨーク14aと第2構造体10bのヨーク14bとの間は磁気的に接続されない。同様に、第2支持部42によって、第2構造体10bのヨーク14bと第3構造体10cのヨーク14cとの間は磁気的に接続されない。第2支持部40,42の材質は、例えば、銅(Cu)、ステンレス鋼(SUS)等である。
なお、ここでは、多極子レンズ100が、構造体10a,10b,10cが3つ積層された形態である場合について説明したが、構造体の積層数は2つ以上であれば特に限定されない。すなわち、多極子レンズ100は、光軸OAの方向に2段以上の異なる大きさの磁場を発生させてもよい。
多極子レンズ100は、例えば、以下の特徴を有する。
多極子レンズ100では、構造体10a,10b,10cは複数積層され、構造体10a,10b,10cの積層方向に隣り合う極子12a,12b,12cの先端部13a,13b,13cの間には、非磁性体からなる磁場分離部20,22が設けられている。そのため、多極子レンズ100では、磁場分離部20,22によって、構造体10a,10b,10cの積層方向に隣り合う先端部13a,13b,13cを磁気的に分離することができる。したがって、多極子レンズ100では、例えば、構造体10a,10b,10cの積層方向に配列された極子12a,12b,12cが発生させる静磁場を個別に制御して、電子線の進行方向に関して強度の異なる静磁場を発生させることができる。
図5は、構造体10a,10b,10cの積層方向に隣り合う先端部13aと先端部13bの間に磁場分離部20を設け、構造体10a,10b,10cの積層方向に隣り合う先端部13bと先端部13cとの間に、非磁性体からなる磁場分離部22を設けた場合に、多極子が発生させる静磁場を模式的に示す図である。図6は、構造体10a,10b,10cの積層方向に隣り合う先端部13aと先端部13bとを接触させ、構造体10a,
10b,10cの積層方向に隣り合う先端部13bと先端部13cとを接触させた場合に、多極子が発生させる静磁場を模式的に示す図である。なお、図5および図6において、矢印Bは、静磁場の大きさを表している。
図6に示すように、先端部13aと先端部13bとを接触させ、先端部13bと先端部13cとを接触させた場合、先端部13aが発生させる静磁場と先端部13bが発生させる静磁場との境界、および先端部13bが発生させる静磁場と先端部13cが発生させる静磁場との境界は明瞭ではない。これに対して、図5に示すように、先端部13aと先端部13bの間に磁場分離部20を設け、先端部13bと先端部13cとの間に、非磁性体からなる磁場分離部22を設けた場合、先端部13aが発生させる静磁場と先端部13bが発生させる静磁場との境界、および先端部13bが発生させる静磁場と先端部13cが発生させる静磁場との境界は、明瞭になる。
したがって、多極子レンズ100では、構造体10a,10b,10cの積層方向に隣り合う極子12a,12b,12cの先端部13a,13b,13cの間には、非磁性体からなる磁場分離部20,22が設けられているため、電子線の進行方向に関して強度の異なる多段の静磁場を精度よく発生させることができる。
多極子レンズ100では、磁場分離部20,22は、導電性を有している。そのため、多極子レンズ100では、構造体10a,10b,10cの積層方向に隣り合う極子12a,12b,12cの先端部13a,13b,13cを等電位とすることができる。これにより、多極子レンズ100では、電子線の進行方向に対して、一定の静電場を発生させることができる。すなわち、多極子レンズ100では、電子線の進行方向に対して一定の静電場を発生させつつ、電子線の進行方向に対して強度の異なる静磁場を発生させることができる。
また、多極子レンズ100では、上記のように、磁場分離部20,22が導電性を有しているため、構造体10a,10b,10cの積層方向に隣り合う極子12a,12b,12cの先端部13a,13b,13cは等電位となる。そのため、多極子レンズ100では、高い安定度が必要な静電場を発生させるための電源を共通化することができる。したがって、多極子レンズ100では、例えば、構造体10a,10b,10cの積層方向に隣り合う極子12a,12b,12cの先端部13a,13b,13cに対してそれぞれ電源を設ける場合と比べて、複雑な電源構成が必要なく、安定度が高い光学系を実現することができる。これにより、結果として高分解能像を得ることができる。
多極子レンズ100では、極子12a,12b,12cの先端部13a,13b,13cに電圧を印加するための端子を含むため、多極子レンズ100は、静磁場に加えて、静電場を発生させることができる。
多極子レンズ100では、極子12aにおいて、基部11aと先端部13aとは離間している。同様に、極子12bにおいて、基部11bと先端部13bとは離間し、極子12cにおいて、基部11cと先端部13cとは離間している。そのため、多極子レンズ100では、多極子レンズ100を電子顕微鏡に組み込んだ際に、基部11bと先端部13bとの間に、内部を真空に保つための真空隔壁(例えばライナーチューブ等)を配置することができる。
図7は、多極子レンズ100を電子顕微鏡に組み込んだ状態を模式的に示す平面図である。図8は、多極子レンズ100を電子顕微鏡に組み込んだ状態を模式的に示す断面図である。なお、図8は、図7のVIII−VIII線断面図である。
多極子レンズ100では、図7および図8に示すように、基部11bと先端部13bとの間に、真空隔壁50が配置されている。真空隔壁50は、例えば、筒状の部材である。真空隔壁50の内側の空間は真空排気され、真空隔壁50の外側は真空外(大気)である。真空隔壁50の材質は、例えば、ステンレス鋼である。
多極子レンズ100では、基部11bと先端部13bとの間に真空隔壁50が配置されるため、先端部13a,13b,13cを真空排気された空間に配置し、基部11a,11b,11cを真空外に配置させることができる。これにより、多極子レンズ100では、先端部13a,13b,13cにおいて放電を避けることができ、かつ、真空悪化の原因となるコイル16a,16b,16c,18a,18b,18cを真空外に配置させることができる。また、多極子レンズ100では、例えば多極子レンズの極子全体を真空隔壁内に配置した場合と比べて、真空排気する領域を小さくすることができる。その結果、電子顕微鏡において、高真空を達成することができ、多極子レンズ100が鏡筒内や試料室の真空度の悪化させることを抑制することができる。
多極子レンズ100では、磁場分離部20は、構造体10a,10b,10cの積層方向に隣り合う先端部13a,13bと接しており、磁場分離部22は、構造体10a,10b,10cの積層方向に隣り合う先端部13b,13cと接している。そのため、磁場分離部20,22は、先端部13a,13b,13cを支持することができる。また、磁場分離部20,22は、導電性を有しているため、磁場分離部20,22が構造体10a,10b,10cの積層方向に隣り合う先端部13a,13b,13cと接していることにより、先端部13a,13b,13cを等電位にすることができる。
多極子レンズ100では、構造体10a,10b,10cの積層方向に隣り合う基部11a,11bの間には、第1支持部30が設けられ、構造体10a,10b,10cの積層方向に隣り合う基部11b,11cの間には、第1支持部32が設けられている。これにより、基部11a,11b,11cを磁気的に分離しつつ、基部11a,11b,11cを支持することができる。
多極子レンズ100では、構造体10a,10b,10cの積層方向に隣り合うヨーク14a,14bの間には、第2支持部40が設けられ、構造体10a,10b,10cの積層方向に隣り合うヨーク14b,14cの間には、第2支持部42が設けられている。これにより、ヨーク14a,14b,14cを磁気的に分離しつつ、ヨーク14a,14b,14cを支持することができる。
多極子レンズ100では、基部11a,11b,11cに設けられた第1コイル16a,16b,16cと、基部11a,11b,11cに設けられ、第1コイル16a,16b,16cよりも巻き数が少ない第2コイル18a,18b,18cと、を含む。そのため、例えば、第1コイル16a,16b,16cによって主となる静磁場を発生させつつ、第2コイル18a,18b,18cによって調整用の静磁場を発生させることができる。
2. 色収差補正装置
2.1. 色収差補正装置の構成
次に、本実施形態に係る色収差補正装置について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る色収差補正装置は、電子顕微鏡用の色収差補正装置である。ここで、電子顕微鏡とは、観察対象に電子(電子線)を当てて拡大する顕微鏡であり、例えば、透過電子顕微鏡(TEM)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)、走査電子顕微鏡(SEM)等である。
図9は、本実施形態に係る色収差補正装置1000を搭載する電子顕微鏡200の構成を説明するための図である。ここでは、色収差補正装置1000を透過電子顕微鏡に搭載した場合について説明する。すなわち、色収差補正装置1000は、透過電子顕微鏡用の色収差補正装置である。
電子顕微鏡200は、電子銃211と、高圧制御部212と、集束レンズ213と、対物レンズ214と、試料ステージ215と、色収差補正装置1000と、中間・投影レンズ216と、観察室217と、を含んで構成されている。電子顕微鏡200では、色収差補正装置1000を、結像系の収差補正装置として用いている。
電子銃211は、高圧制御部212によって高圧電源が制御されて、電子線を発生させる。
集束レンズ213は、電子銃211で発生した電子線を集束する。集束レンズ213で集束された電子線は、対物レンズ214および試料ステージ215に至る。集束レンズ213は、試料ステージ215上の試料に電子線を照射するための照射系(照射レンズ系)を構成している。
対物レンズ214は、試料を透過した電子線で結像するための初段のレンズである。試料ステージ215は、試料を保持している。試料を透過した電子線は、色収差補正装置1000に入射する。対物レンズ214と色収差補正装置1000との間には、対物ミニレンズ220,222(図10参照)が配置されていてもよい。
色収差補正装置1000は、対物レンズ214の色収差を補正する。色収差補正装置1000は、本発明に係る多極子レンズを含む。ここでは、色収差補正装置1000が本発明に係る多極子レンズとして上述した多極子レンズ100を含む例について説明する。多極子レンズ100は、図7および図8に示すように、基部11bと先端部13bとの間に、真空隔壁50が配置されるように、電子顕微鏡200に組み込まれる。色収差補正装置1000で色収差が補正された電子線は、中間・投影レンズ216に至る。なお、色収差補正装置1000の詳細については後述する。
中間・投影レンズ216は、対物レンズ214ともに、試料を透過した電子線で結像するための結像系(結像レンズ系)を構成している。中間・投影レンズ216は、観察室217内のカメラ(図示せず)上に結像する。
電子顕微鏡200では、色収差補正装置1000を含むため、結像系(対物レンズ214)の色収差を補正することができる。したがって、電子顕微鏡200は、高い分解能を有することができる。
図10は、色収差補正装置1000の光学系を示す図である。図10に示すように、試料Sを透過した電子線EBは、対物レンズ214、対物ミニレンズ220,222を通過して色収差補正装置1000に入射する。対物ミニレンズ220,222は、対物レンズ214、および中間・投影レンズ216とともに結像系を構成している。
色収差補正装置1000は、対物レンズ214(対物ミニレンズ220,222)の後段に配置されている。色収差補正装置1000は、第1多極子110と、第2多極子120と、を含む。多極子110および多極子120として、多極子レンズ100を用いることができる。色収差補正装置1000は、さらに、転送レンズ130を含むことができる。
色収差補正装置1000では、電子線EBの上流側から、第1多極子110、転送レンズ130、第2多極子120の順で配置されている。電子線EBは、第1多極子110に入射し、転送レンズ130を通って、第2多極子120から射出される。
図11は、色収差補正装置1000の第1多極子110および第2多極子120について説明するための図である。図11(A)は、色収差補正装置1000の構成を説明するための図である。図11(A)では、電子線EBのX軸方向の典型的なビーム軌道としてX軌道EBxを示し、電子線EBのY軸方向の典型的なビーム軌道としてY軌道EByを示している。なお、X軸およびY軸は、光軸OAに垂直な軸であり、互いに直交する軸である。図11(B)は、多極子110,120の各部分110a,110b,110c,120a,120b,120cにおける二回非点成分を示す図である。図11(C)は、多極子110,120の各部分110a,110b,110c,120a,120b,120cで発生するレンズ効果を示す図である。図11(D)は、第1多極子110および第2多極子120で発生する色二回非点成分を示す図である。
第1多極子110は、図11(A)に示すように、光軸OAに沿って3つの部分(1段目(第1部分)110a、2段目(第2部分)110b、3段目(第3部分)110c)に分かれている。ここで、第1多極子110の第1部分110aは、図1〜図4に示す第1構造体10aに対応し、第1多極子110の第2部分110bは、第2構造体10bに対応し、第1多極子110の第3部分110cは、第3構造体10cに対応している。電子線EBは、第1部分110aに入射し、第2部分110bを通って第3部分110cから射出する。
第1多極子110は、第1の電磁場を発生させる。第1多極子110の3つの部分110a,110b,110cの各々は、電場四極子場(二回対称の電場)と磁場四極子場(二回対称の磁場)とを重畳して電磁場重畳の四極子場(二回対称の電磁場)を発生させる。第1多極子110の3つの部分110a,110b,110cが発生させる電磁場重畳の四極子場によって、第1の電磁場が形成される。すなわち、第1の電磁場は、光軸OAに沿って並ぶ各部分110a,110b,110cがつくる電磁場重畳の四極子場によって構成されている。
以下、第1多極子110の3つの部分110a,110b,110cについて詳細に説明する。
まず、第1多極子110の第1部分(1段目)110aについて説明する。図12は、第1多極子110の第1部分110aを模式的に示す平面図である。
第1多極子110の第1部分110aは、光軸OAの周囲に規則的に配列された複数の電極および複数の磁極を有する。図示の例では、第1部分110aは、光軸OAの周囲に配列された、四極の電極112a〜112dと、四極の磁極114a〜114dと、を有している。
各電極112a〜112dは、光軸OAに垂直な平面(XY平面)上で90°ごとに振り分けられて配置されている。また、各電極112a〜112dの印加電圧の絶対値は互いに等しく、極性のみが交互に変わっている。四極の電極112a〜112dは、電場四極子場を発生させる。
各磁極114a〜114dは、光軸OAに垂直な平面(XY平面)上で90°ごとに振り分けられて配置されている。各磁極114a〜114dの起磁力は互いに等しく、極性のみが交互に変わっている。四極の磁極114a〜114dは、磁場四極子場を発生させ
る。
第1多極子110の第1部分110aでは、図1に示す多極子レンズ100の第1構造体10aの12個の極子12aを、図12に示す電極112a〜112d、および磁極114a〜114dとして用いている。すなわち、第1構造体10aの12個の極子12aによって、電場四極子場および磁場四極子場を発生させて、電磁場重畳の四極子場を発生させる。
図13は、四極の電極112a〜112dが発生させる電場四極子場から電子線EBが受ける力を説明するための図である。
図13に示すように、四極の電極112a〜112dが発生させる電場四極子場は、電子線EBに対して、X軸方向に収束作用を持ち、Y軸方向に発散作用を持つ。したがって、電子線EBは、電場四極子場から力Fを受けることによって、X軸方向に収束し、Y軸方向に発散する。
図14は、四極の磁極114a〜114dが発生させる磁場四極子場から電子線EBが受ける力を説明するための図である。
図14に示すように、四極の磁極114a〜114dが発生させる磁場四極子場は、電子線EBに対して、X軸方向に発散作用を持ち、Y軸方向に収束作用を持つ。したがって、電子線EBは、磁場四極子場から力Fを受けることによって、X軸方向に発散し、Y軸方向に収束する。
第1部分110aでは、電場四極子場と磁場四極子場とを重畳して四極子場(電磁場重畳四極子場)を発生させる。第1部分110aでは、上記のように、電場四極子場によって電子線EBが受ける力Fと磁場四極子場によって電子線EBが受ける力Fとが、互いに相殺する方向に加えられる。
ここで、第1部分110aは、磁場四極子場に比べて電場四極子場が強く設定される。すなわち、第1部分110aでは、磁場四極子場によって電子線EBが受ける力Fよりも、電場四極子場によって電子線EBが受ける力Fが大きく設定される(F<F)。これにより、電子線EBに二回非点成分を与え、軌道を変化させる。より具体的には、第1部分110aは、図11(A)および図11(B)に示すように、電子線EBのY軌道EByに二回非点の発散方向の成分を与え、電子線EBのX軌道EBxに二回非点の収束方向の成分を与える。
また、第1部分110aは、電子線EBの進行方向に対して厚みを有している。より具体的には、第1部分110aは、多極子場のプライマリー項以外の高次項による場によってコンビネーションアベレーションが発生する厚みを有している。そのため、第1部分110aでは、コンビネーションアベレーションにより負の色収差が発生する。また、第1部分110aは、図11(C)に示すように、コンビネーションアベレーションにより電子線EBに対して凹レンズ作用を生じさせる。すなわち、第1部分110aは、電子線EBに対する凹レンズ作用を有している。この原理については、後述する。
ここで、コンビネーションアベレーションとは、ある場所で発生した収差(収差1)がある距離伝搬することにより入射点が変わり、別の収差(収差2)の影響を受けたとき、収差1と収差2の組み合わせにより生まれる組み合わせ収差のことである。
次に、第1多極子110の第2部分(2段目)110bについて説明する。第2部分1
10bの構成は、図12に示す第1部分110aの構成と同様である。すなわち、第1多極子110の第2部分110bは、光軸OAの周囲に配列された、四極の電極112a〜112dと、四極の磁極114a〜114dと、を有している。
第1多極子110の第2部分110bでは、多極子レンズ100の第2構造体10bの12個の極子12bを、電極112a〜112d、および磁極114a〜114dとして用いている。すなわち、第2構造体10bの12個の極子12bによって、電場四極子場および磁場四極子場を発生させて、電磁場重畳の四極子場を発生させる。
第2部分110bでは、電場四極子場に比べて磁場四極子場が強く設定される。すなわち、第2部分110bでは、電場四極子場によって電子線EBが受ける力Fよりも、磁場四極子場によって電子線EBが受ける力Fが大きく設定される(F<F)。これにより、第2部分110bは、第1部分110aで発生する二回非点成分とは逆符号の二回非点成分を発生させる。すなわち、第2部分110bでは、第1部分110aとは、逆向きの四極子場を電子線に与える。より具体的には、第2部分110bは、図11(A)および図11(B)に示すように、電子線EBのY軌道EByに二回非点の収束方向の成分を与え、電子線EBのX軌道EBxに二回非点の発散方向の成分を与える四極子場を発生させる。これにより、第2部分110bは、図11(A)に示すように、発散成分を持ったY軌道EByを逆向きに押し戻して二回非点成分を減少させ、かつ、X軌道EBxの二回非点の収束成分を弱める。
また、第2部分110bは、第1部分110aと同様に、電子線EBの進行方向に対して厚みを有している。そのため、第2部分110bでは、コンビネーションアベレーションにより負の色収差が発生する。また、第2部分110bは、図11(C)に示すように、コンビネーションアベレーションにより電子線EBに対して凸レンズ作用を生じさせる。すなわち、第2部分110bは、電子線EBに対する凸レンズ作用を有している。
次に、第1多極子110の第3部分(3段目)110cについて説明する。第3部分110cの構成は、図12に示す第1部分110aの構成と同様である。すなわち、第1多極子110の第3部分110cは、光軸OAの周囲に配列された、四極の電極112a〜112dと、四極の磁極114a〜114dと、を有している。
第1多極子110の第3部分110cでは、多極子レンズ100の第3構造体10cの12個の極子12cを、電極112a〜112d、および磁極114a〜114dとして用いている。すなわち、第3構造体10cの12個の極子12cによって、電場四極子場および磁場四極子場を発生させて、電磁場重畳の四極子場を発生させる。
第3部分110cでは、第1部分110aと同様に、磁場四極子場に比べて電場四極子場が強く設定される。すなわち、第3部分110cでは、磁場四極子場によって電子線EBが受ける力Fよりも、電場四極子場によって電子線EBが受ける力Fが大きく設定される(F<F)。これにより、第3部分110cは、第1部分110aと同様に、電子線EBに二回非点成分を与え、軌道を変化させる。より具体的には、第3部分110cは、図11(A)および図11(B)に示すように、電子線EBのY軌道EByに二回非点の発散方向の成分を与え、電子線EBのX軌道EBxに二回非点の収束方向の成分を与える。これにより、第1多極子110から射出される電子線EBの二回非点成分をなくす(低減する)ことができる。
また、第3部分110cは、第1部分110aと同様に、電子線EBの進行方向に対して厚みを有している。そのため、第3部分110cでは、コンビネーションアベレーションにより負の色収差が発生する。また、第3部分110cは、図11(C)に示すように
、コンビネーションアベレーションにより電子線に対して凹レンズ作用を生じさせる。すなわち、第3部分110cは、電子線EBに対する凹レンズ作用を有している。
第1多極子110において、第1部分110aおよび第3部分110cで発生する電磁場重畳の四極子場の二回非点成分は、第2部分110bで発生する電磁場重畳の四極子場の二回非点成分と逆符号である。また、第1部分110aで発生する電磁場重畳の四極子場は、図示の例では、第3部分110cで発生する電磁場重畳の四極子場と同じである。すなわち、第1部分110aの電磁場重畳の四極子場が電子線に与える作用と第3部分110cの電磁重畳の四極子場が電子線に与える作用とは、同じである。
第1多極子110では、図11(A)に示すように、電子線EBのX軌道EBxは、第1多極子110の中心cで光軸OAを横切る。また、第1多極子110では、電子線EBのX軌道EBxは、中心cを対称の中心として、前半部分(入射面から中心cまで軌道)と、後半部分(中心cから射出面までの軌道)は、互いに点対称である。また、第1多極子110では、電子線EBのY軌道EByは、前半部分(入射面から中心cまで軌道)と後半部分(中心cから射出面までの軌道)とが面対称である。このように、第1多極子110では、電子線EBの軌道の対称性が良好である。
また、第1多極子110では、図11(A)に示すように、電子線EBの軌道EBx,EByを第1部分110aで大きく変化させた後に、第2部分110bで戻し、最終的に第3部分110cで二回非点成分を打ち消して電子線EBを射出する。このように、第1多極子110では、電子線の軌道EBx,EByを大きく変化させているため、色収差の発生効率が高い。
ここで、例えば、第1多極子110では、各部分110a,110b,110cの電場四極子場の強さを一定に設定し、第1部分110aおよび第3部分110cの磁場四極子場に比べて、第2部分110bの磁場四極子場を強く設定することで、上述した第1の電磁場を発生させる。
第1多極子110として用いられる多極子レンズ100では、図2〜図4に示すように、構造体10a,10b,10cの積層方向に隣り合う先端部13a,13b,13cは、導電性の磁場分離部20,22によって接続されているため、等電位である。そのため、各部分110a,110b,110cの電場四極子場の強さを一定にすることができる。また、多極子レンズ100では、先端部13a,13b,13cは、非磁性体からなる磁場分離部20,22によって分離されているため、各部分110a,110b,110cで異なる大きさの磁場四極子場を発生させることができる。
第2多極子120は、第1の電磁場を光軸OAまわりに90°回転させた第2の電磁場を発生させる。すなわち、第2多極子120では、図11(A)に示すように、X軌道EBxとY軌道EByが第1多極子110に対して対称になるように電場および磁場が設定される。これにより、図11(D)に示すように、第1多極子110で発生した色二回非点成分を、第2多極子120で発生した色二回非点成分で相殺することができる。したがって、色収差補正装置1000では、全体として、色二回非点成分をなくすことができる。
第2多極子120は、図11(A)に示すように、光軸OAに沿って3つの部分(1段目(第1部分)120a、2段目(第2部分)120b、3段目(第3部分)120c)に分かれている。ここで、第2多極子120の第1部分120aは、図1〜図4に示す第1構造体10aに対応し、第2多極子120の第2部分120bは、第2構造体10bに対応し、第2多極子120の第3部分120cは、第3構造体10cに対応している。第
2多極子120において、電子線EBは、第1部分120aに入射し、第2部分120bを通って第3部分120cから射出する。第2多極子120の3つの部分120a,120b,120cの各々は、電場四極子場と磁場四極子場とを重畳して電磁場重畳の四極子場を発生させる。第2多極子120の3つの部分120a,120b,120cが発生させる電磁場重畳の四極子場によって、第2の電磁場が形成される。すなわち、第2の電磁場は、光軸OAに沿って並ぶ各部分120a,120b,120cがつくる電磁場重畳の四極子場によって構成されている。
以下、第2多極子120の3つの部分120a,120b,120cについて詳細に説明する。
まず、第2多極子120の第1部分(1段目)120aについて説明する。図15は、第2多極子120の第1部分120aを模式的に示す平面図である。
第2多極子120の第1部分120aは、光軸OAの周囲に規則的に配列された複数の電極および複数の磁極を有する。図示の例では、第2多極子120の第1部分120aは、光軸OAの周囲に配列された、四極の電極122a〜122dと、四極の磁極124a〜124dと、を有している。
各電極122a〜122dは、光軸OAに垂直な平面(XY平面)上で90°ごとに振り分けられて配置されている。また、各電極122a〜122dの印加電圧の絶対値は互いに等しく、極性のみが交互に変わっている。四極の電極122a〜122dは、電場四極子場を発生させる。
各磁極124a〜124dは、光軸OAに垂直な平面(XY平面)上で90°ごとに振り分けられて配置されている。各磁極124a〜124dの起磁力は互いに等しく、極性のみが交互に変わっている。四極の磁極124a〜124dは、磁場四極子場を発生させる。
第2多極子120の第1部分120aの各極122a〜122d、124a〜124dの物理的な配置は、図15に示すように、第1多極子110の第1部分110a(図12参照)と同様であるが、その極性が逆である。すなわち、第2多極子120の極性は、第1多極子110に対して90°回転している。
第2多極子120の第1部分120aでは、図1に示す多極子レンズ100の第1構造体10aの12個の極子12aを、電極122a〜122d、および磁極124a〜124dとして用いている。すなわち、第1構造体10aの12個の極子12aによって、電場四極子場および磁場四極子場を発生させて、電磁場重畳の四極子場を発生させる。
ここで、第1部分120aは、磁場四極子場に比べて電場四極子場が強く設定される。すなわち、第1部分120aでは、磁場四極子場によって電子線EBが受ける力Fよりも、電場四極子場によって電子線EBが受ける力Fが大きく設定される(F<F)。これにより、電子線EBに二回非点成分を与え、軌道を変化させる。より具体的には、第1部分120aは、図11(A)および図11(B)に示すように、電子線EBのX軌道EBxに二回非点の発散方向の成分を与え、電子線EBのY軌道EByに二回非点の収束方向の成分を与える。第2多極子120の第1部分120aが発生させる電磁場重畳の四極子場は、第1多極子110の第1部分110aが発生させる電磁場重畳の四極子場を光軸OAまわりに90°回転させた場である。
また、第1部分120aは、電子線EBの進行方向に対して厚みを有している。より具
体的には、第1部分120aは、多極子場のプライマリー項以外の高次項による場によってコンビネーションアベレーションが発生する厚みを有している。そのため、第1部分120aでは、コンビネーションアベレーションにより負の色収差が発生する。また、第1部分120aは、コンビネーションアベレーションにより電子線に対して凹レンズ作用を生じさせる。すなわち、第1部分120aは、電子線EBに対する凹レンズ作用を有している。
次に、第2多極子120の第2部分(2段目)120bについて説明する。第2部分120bの構成は、図15に示す第1部分120aの構成と同様である。すなわち、第2多極子120の第2部分120bは、光軸OAの周囲に配列された、四極の電極122a〜122dと、四極の磁極124a〜124dと、を有している。
第2多極子120の第2部分120bでは、多極子レンズ100の第2構造体10bの12個の極子12bを、電極122a〜122d、および磁極124a〜124dとして用いている。すなわち、第2構造体10bの12個の極子12bによって、電場四極子場および磁場四極子場を発生させて、電磁場重畳の四極子場を発生させる。
第2部分120bでは、電場四極子場に比べて磁場四極子場が強く設定される。すなわち、第2部分120bでは、電場四極子場によって電子線EBが受ける力Fよりも、磁場四極子場によって電子線EBが受ける力Fが大きく設定される(F<F)。これにより、第2部分120bは、第1部分120aで発生する二回非点成分とは逆符号の二回非点成分を発生させる。すなわち、第2部分120bでは、第1部分120aとは、逆向きの四極子場を電子線に与える。より具体的には、第2部分120bは、図11(A)および図11(B)に示すように、電子線EBのX軌道EBxに二回非点の収束方向の成分を与え、電子線EBのY軌道EByに二回非点の発散方向の成分を与える四極子場を発生させる。これにより、第2部分120bは、図11(A)に示すように、発散成分を持ったX軌道EBxを逆向きに押し戻して二回非点成分を減少させ、かつ、Y軌道EByの二回非点の収束成分を弱める。第2多極子120の第2部分120bが発生させる電磁場重畳の四極子場は、第1多極子110の第2部分110bが発生させる電磁場重畳の四極子場を光軸OAまわりに90°回転させた場である。
また、第2部分120bは、第1部分120aと同様に、電子線EBの進行方向に対して厚みを有している。そのため、第2部分120bでは、コンビネーションアベレーションにより負の色収差が発生する。また、第2部分120bは、図11(C)に示すように、コンビネーションアベレーションにより電子線EBに対して凸レンズ作用を生じさせる。すなわち、第2部分120bは、電子線EBに対する凸レンズ作用を有している。
次に、第2多極子120の第3部分(3段目)120cについて説明する。第3部分120cの構成は、図15に示す第1部分120aの構成と同様である。すなわち、第2多極子120の第3部分120cは、光軸OAの周囲に配列された、四極の電極122a〜122dと、四極の磁極124a〜124dと、を有している。
第2多極子120の第3部分110cでは、多極子レンズ100の第3構造体10cの12個の極子12cを、電極122a〜122d、および磁極124a,124dとして用いている。すなわち、第3構造体10cの12個の極子12cによって、電場四極子場および磁場四極子場を発生させて、電磁場重畳の四極子場を発生させる。
第3部分120cでは、第1部分120aと同様に、磁場四極子場に比べて電場四極子場が強く設定される。すなわち、第3部分120cでは、磁場四極子場によって電子線EBが受ける力Fよりも、電場四極子場によって電子線EBが受ける力Fが大きく設定
される(F<F)。これにより、第3部分120cは、第1部分120aと同様に、電子線EBに二回非点成分を与え、軌道を変化させる。より具体的には、第3部分120cは、電子線EBのX軌道EBxに二回非点の発散方向の成分を与え、電子線EBのY軌道EByに二回非点の収束方向の成分を与える。これにより、第2多極子120から射出される電子線EBの二回非点成分をなくす(低減する)ことができる。第2多極子120の第3部分120cが発生させる電磁場重畳の四極子場は、第1多極子110の第3部分110cが発生させる電磁場重畳の四極子場を光軸OAまわりに90°回転させた場である。
また、第3部分120cは、第1部分120aと同様に、電子線EBの進行方向に対して厚みを有している。そのため、第3部分120cでは、コンビネーションアベレーションにより負の色収差が発生する。また、第3部分120cは、コンビネーションアベレーションにより電子線に対して凹レンズ作用を生じさせる。すなわち、第3部分120cは、電子線EBに対する凹レンズ作用を有している。
第2多極子120において、第1部分120aおよび第3部分120cで発生する電磁場重畳の四極子場の二回非点成分は、第2部分120bで発生する電磁場重畳の四極子場の二回非点成分と逆符号である。また、第1部分120aで発生する電磁場重畳の四極子場は、図示の例では、第3部分120cで発生する電磁場重畳の四極子場と同じである。すなわち、第1部分120aの電磁場重畳の四極子場が電子線に与える作用と第3部分120cの電磁重畳の四極子場が電子線に与える作用とは、同じである。
第2多極子120では、図11(A)に示すように、電子線EBのY軌道EByは、第2多極子120の中心cで光軸OAを横切る。また、第2多極子120では、電子線EBのY軌道EByは、中心cを対称の中心として、前半部分(入射面から中心cまで軌道)と、後半部分(中心cから射出面までの軌道)は、互いに点対称である。また、第2多極子120では、電子線EBのX軌道EBxは、前半部分(入射面から中心cまで軌道)と後半部分(中心cから射出面までの軌道)とが面対称である。このように、第2多極子120では、電子線EBの軌道は対称性が良好である。
また、第2多極子120では、図11(A)に示すように、電子線の軌道EBx,EByを第1部分120aで大きく変化させた後に、第2部分120bで戻し、最終的に第3部分120cで二回非点成分を打ち消して電子線EBを射出する。このように、第2多極子120では、電子線の軌道EBx,EByを大きく変化させているため、色収差の発生効率が高い。
ここで、例えば、第2多極子120では、第1多極子110と同様に、各部分110a,110b,110cの電場四極子場の強さを一定に設定し、第1部分110aおよび第3部分110cの磁場四極子場に比べて、第2部分110bの磁場四極子場を強く設定することで、上述した第2の電磁場を発生させる。
第2多極子120として用いられる多極子レンズ100では、図2〜図4に示すように、先端部13a,13b,13cは、導電性の磁場分離部20,22によって接続されているため、等電位である。そのため、各部分120a,120b,120cの電場四極子場の強さを一定にすることができる。また、多極子レンズ100では、先端部13a,13b,13cは、非磁性体からなる磁場分離部20,22によって分離されているため、各部分120a,120b,120cで異なる大きさの磁場四極子場を発生させることができる。
転送レンズ130は、第1多極子110と第2多極子120との間に配置されている。
転送レンズ130は、図示の例では、3つのレンズ130a,130b,130cで構成されている。転送レンズ130は、例えば、転送倍率1:1のレンズである。転送レンズ130は、第1多極子110において形成された逆空間像を、第2多極子120に転送する。転送レンズ130は、例えば、第1多極子110の中心を第2多極子120の中心に完全転送させる配置からずらし、第2多極子120の出口(射出面)で二回非点成分が無いように配置される。なお、図示はしないが、転送レンズ130が一対(2つ)のレンズで構成されてもよい。
2.2. 色収差補正装置の動作
次に、本実施形態に係る色収差補正装置1000の動作について説明する。図16は、色収差補正装置1000の第1多極子110内および第2多極子120内の電子線の軌道を示す模式図である。図16において、それぞれの円は、角度ごと(10mradごと)の電子線の軌道を示している。以下、図11および図16を参照しながら説明する。
第1多極子110の第1部分110aでは、電場四極子場が磁場四極子場に比べて大きく設定されている。これにより、第1部分110aに入射した電子線EBは、二回非点成分を持ち、軌道が変化する。具体的には、電子線EBは、第1部分110aにおいて、Y軌道EByが二回非点の発散成分を持ち、X軌道EBxが二回非点の収束成分を持つ。
第2部分110bでは、磁場四極子場が電場四極子場に比べて大きく設定されている。これにより、第2部分110bにおいて、発散成分を持ったY軌道EByは押し戻されて、二回非点成分が減少する。また、X軌道EBxは、二回非点成分の収束成分が弱まり、第1多極子110の中心cを通る。X軌道EBxでは、図11(A)および図16に示すように、第1多極子110の中心cで、+X軸側の軌道と−X軸側の軌道とが交差する。
第3部分110cでは、電場四極子場が磁場四極子場に比べて大きく設定されている。これにより、第3部分110cにおいて、電子線EBの二回非点成分が最終的に打ち消される。第3部分110c(第1多極子110)から射出された電子線EBは、図16に示すように、二回非点成分が無い。第1多極子110から射出された電子線EBは、転送レンズ130に入射する。
転送レンズ130では、第1多極子110において形成された逆空間像が、第2多極子120に転送される。ここで、第1多極子110から射出される電子線EBは二回非点成分を持たないため、電子線EBを転送レンズ130の中心付近に入射させることができる。
第2多極子120では、電子線EBのX軌道EBxおよびY軌道EByが、第1多極子110における電子線EBのX軌道EBxおよびY軌道EByに対して対称となる電磁場を発生させる。すなわち、第2多極子120が発生させる電磁場は、第1多極子110が発生させる電磁場を光軸OAまわりに90°回転させた電磁場である。これにより、第2多極子120において、第1多極子110で発生した色二回非点成分が、第2多極子120で発生した色二回非点成分で相殺される。図16に示すように、第2多極子120における電子線の軌道は、第1多極子110における電子線の軌道を、光軸OAまわりに90°回転させた軌道である。
ここで、多極子110,120の各部分110a,110b,110c,120a,120b,120cでは、コンビネーションアベレーションにより負の色収差を発生させる。したがって、色収差補正装置1000では、全体として負の色収差を発生させる。これにより、対物レンズ214の正の色収差を、色収差補正装置1000の負の色収差で相殺することができる。
2.3. 原理
次に、電子線の進行方向に対して厚みを持った四極子場のコンビネーションアベレーションにより、凹レンズ効果が発生する原理、および第2多極子120で色二回非点収差を相殺できる原理について説明する。
例えば、四極子、六極子は、それぞれ、二回対称場、三回対称場を基本的に発生させる。これらの場はその多極子が生じる場を多重極界展開した場合のプライマリー項と称される。実際の多極子は、僅かであるがプライマリー項以外の高次項による場が発生している。通常の厚みを持たない(又は薄い)多極子においては、プライマリー項以外の高次項は多極子の使用目的に対して無視されるか又は単なる寄生要因に過ぎない。しかし、多極子の厚みを増していくと、プライマリー項以外の高次項による効果が現れる。この効果を活かすために、電子線の進行方向に必要な長さを持った多極子が「厚み」を有する多極子であり、そこから発生する場は「厚み」のある場である。
四極子による静電場又は静磁場、或いはそれらの重畳場によって生じた四極子場(二回対称場)による二回非点収差を考える。複素表記を用いた電子線の軌道計算において、逆空間(焦点面)での位置のr、傾きをr'(=∂r/∂z)、複素角をΩ、複素角に対する微分Ω'(=∂Ω/∂z)とする。Aを単位長さあたりの二回非点収差係数とすると、二回非点収差(幾何収差)は、AとΩの複素共役を用いて、下記式で表される。
四極子の入射面における電子線の位置rと傾きr'の複素数表記を下記のように表す。
また、四極子の射出面における電子線の位置rと傾きr'の複素数表記を下記のように表す。
対物レンズの焦点距離をfとすると、この対物レンズ内に試料面がある場合、この位置における電子線の位置と傾きを逆空間で表すと、それぞれr=fΩ、r'=fΩ'になる。
電子線の進行方向の多極子の厚みをtとすると、この多極子の射出面における電子線の傾きは、下記式(1)で表される。
ただし、nは、整数(n>0)である。
式(1)において、|A2nの係数をもつ項は円筒対称なレンズ作用を表し、符号が+の項は凹レンズ作用を表す。この作用で生じる効果を「円筒対称型発散方向フォーカス効果」ともいう。一方、A・|A2(n−1)の係数をもつ項は二回非点収差を表す。
ところで、電場四極子場(二回対称電場)による二回非点収差係数をAE2で表すと、電場四極子場の強さ|AE2|は、下記式(2)で表される。
但し、Uは、加速電圧である。
また、磁場四極子場(二回対称磁場)による二回非点収差係数をAB2で表すと、磁場四極子場の強さ|AB2|は、下記式(3)で表される。
厚みをもつ四極子場から生じた凹レンズ作用を有する光学系において、式(1)の係数|A|の指数が2n、2(n−1)であることを考慮すると、当該光学系による偏向力の加速電圧依存性を係数|A|に係る各項の組み合わせによって1/U(Nは正の整数)に比例するように定めることができる。
また、所定の加速電圧の電子線に対する電気的偏向力と磁気的偏向力が相殺される光学系においても、所定の加速電圧と異なる加速電圧の電子線に対しては係数|A|が有限の値となる。したがって、その電子線は凹レンズ作用を受けることになる。
さらに、式(1)に示した焦点距離fの対物レンズが磁場型(磁界型)である場合、この対物レンズによる偏向力は、下記式(4)で表される。
上述したように、厚みを持つ四極子場による偏向力の加速電圧依存性は1/Uで表される。一方、式(4)に示した対物レンズによる偏向力の加速電圧依存性は1/Uで表される。すなわち、互いの加速電圧依存性は大きく異なるため、厚みをもつ四極子場は対物レンズと異なった屈折率をもつ。そして、この違いから、厚みをもつ四極子場の凹レンズ作用が対物レンズの色収差補正に適用できることがわかる。
また、式(1)に示すように、四極子の厚みtを増加させていくと凹レンズ作用が増加する。したがって、必要な凹レンズ作用の強度に合わせた厚みtを定めることもできる。
ところで、式(1)右辺のA・|A2(n−1)の係数を持つ項に示されるように、一段の四極子場では二回非点収差が新たに発生する。しかしながら、この二回非点収差は以下に示すように四極子を二段にすることで除去できる。二段の四極子のそれぞれが発生する二回対称場は相似かつ反対称に分布させる。具体的には、同一構造の二つの多極子を配置し、印加する電圧または励磁の極性を互いに逆にする。両四極子の光軸に沿った厚みは等しいとすると、二段目の四極子の射出面における電子線の傾きr'は、下記式(5)で表される。
なお、n、mは、正の整数である。
式(5)に示すように、極性を互いに逆にして二段の四極子を配置すると、式(1)に示された二回非点収差の項(A・|A2(n−1)の係数を持った項)が無くなる。同式の右辺の項において+の符号をもつ項は凹レンズ作用を示すので、収差補正に必要な円筒対称レンズ作用のみが取り出される。このように、それぞれが厚みをもつ二段の四極子の凹レンズ作用は二回非点収差を生じさせることなく対物レンズの色収差を補正することができる。
本実施形態に係る色収差補正装置1000および電子顕微鏡200は、例えば、以下の特徴を有する。
色収差補正装置1000では、第1多極子110は、光軸OAに沿って配置されている第1部分110a、第2部分110b、および第3部分110cを有し、第1部分110a、第2部分110b、および第3部分110cの各々は、電子線EBの進行方向に対して厚みを有している。これにより、第1多極子110の第1部分110aおよび第3部分110cは、電子線の進行方向に対して厚みを持った四極子場のコンビネーションアベレ
ーションにより、凹レンズ効果を発生させることができる。また、第1多極子110の第2部分110bは、電子線の進行方向に対して厚みを持った四極子場のコンビネーションアベレーションにより、凸レンズ効果を発生させることができる。
また、第1多極子110の各部分110a,110b,110cは、電場四極子場と磁場四極子場とを重畳した電磁場重畳の四極子場を発生させる。これにより、例えば、電場四極子場または磁場四極子場のみで四極子場を発生させた場合と比べて、大きな負の色収差を得ることができる。
色収差補正装置1000では、第1多極子110において、第1部分110aは、磁場四極子場に比べて電場四極子場が強く設定され、第2部分110bは、電場四極子場に比べて磁場四極子場が強く設定され、第3部分110cは、磁場四極子場に比べて電場四極子場が強く設定され、第2部分110bで発生する二回非点成分は、第1部分110aおよび第3部分110cで発生する二回非点成分と逆符号である。これにより、第1多極子110から二回非点成分を持たない電子線EBを射出することができる。そのため、例えば、転送レンズ130の中心付近に電子線EBを入射させることができる。したがって、色収差補正装置1000によれば、転送レンズ130の収差の影響を低減でき、アライメント(軸合わせ)を簡便に行うことができる。
例えば、二回非点を持った電子線が第1多極子から射出される場合、第1多極子と第2多極子との間に位置する転送レンズで電子線が広がる。一般的に、電子線がレンズの端を通ると、大きな収差が導入される。そのため、二回非点を持った電子線が第1多極子から射出される場合、電子線が転送レンズから大きな収差を受ける場合がある。これは、アライメント(軸合せ)を困難、複雑にする原因となる。色収差補正装置1000によれば、第1多極子110から二回非点成分を持たない電子線EBを射出することができるため、転送レンズ130の収差の影響を低減でき、アライメント(軸合わせ)を簡便に行うことができる。
さらに、第1多極子110では、3つの部分(3段)110a,110b,110cで電子線の軌道EBx,EByを大きく変化させることができるため、例えば、多極子が1段の場合と比べて、色収差を効率的に発生させることができる。したがって、第1多極子110の厚み(電子線の進行方向の長さ)を短くすることができる。例えば、多極子において、電場のチャージや微量な電圧不安定性は最終的に得られる電子顕微鏡の分解能を低減させる大きな原因となる。電場は、多極子の厚み(電子線の進行方向の長さ)が大きいほど、これらのノイズ成分を受ける距離が伸びるため、電子線に対する擾乱が増加する。したがって、多極子の厚みを小さくすることで、分解能を向上させることができる。色収差補正装置1000では、上述のように第1多極子110を短くすることができるため、電子顕微鏡200の分解能を向上させることができる。
色収差補正装置1000では、第2多極子120で発生する第2の電磁場は、第1多極子110で発生する第1の電磁場を光軸まわりに90°回転させた電磁場である。これにより、第1多極子110で発生した色二回非点成分を、第2多極子120で発生した色二回非点成分で相殺することができる。したがって、色収差補正装置1000では、全体として、色二回非点成分をなくすことができる。
色収差補正装置1000では、第1多極子110が発生させる第1の電磁場の電場四極子場成分は、光軸OAの方向において、一定である。これにより、簡易な構成で、電場四極子場を発生させることができる。
色収差補正装置1000では、多極子レンズ100を含むため、多極子レンズ100に
よって、第1の静磁場および第2の静磁場を発生させることができる。これにより、色収差を補正することができる。
電子顕微鏡200では、色収差補正装置1000が、負の色収差を効率的に発生させて、収差を補正することができる。したがって、電子顕微鏡200によれば、第1多極子110の長さを短く(厚みを小さく)することができ、分解能を向上させることができる。さらに、電子顕微鏡200によれば、色収差補正装置1000を含むため、アライメント(軸合わせ)を簡便化することができる。
2.4. 変形例
次に、本実施形態に係る色収差補正装置の変形例について、図面を参照しながら説明する。
(1)第1変形例
まず、第1変形例について説明する。図17は、第1変形例に係る色収差補正装置2000の光学系を示す図である。図18は、色収差補正装置2000の第1多極子110および第2多極子120について説明するための図である。なお、図18(A)は、色収差補正装置2000の構成を説明するための図である。図18(A)では、電子線EBのX軸方向の典型的なビーム軌道としてX軌道EBxを示し、電子線EBのY軸方向の典型的なビーム軌道としてY軌道EByを示している。図18(B)は、多極子110,120の各部分110a,110b,110c,120a,120b,120cにおける二回非点成分を示す図である。図18(C)は、多極子110,120の各部分110a,110b,110c,120a,120b,120cで発生するレンズ効果を示す図である。図18(D)は、第1多極子110および第2多極子120で発生する色二回非点成分を示す図である。
以下、色収差補正装置2000において、上述した色収差補正装置1000の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
上述した色収差補正装置1000は、図10および図11に示すように、第1多極子110と、第2多極子120と、第1多極子110と第2多極子120との間に配置されている転送レンズ130と、を含んで構成されていた。
これに対して、色収差補正装置2000は、図17および図18に示すように、第1多極子110と、第2多極子120と、を含んで構成されている。すなわち、色収差補正装置2000では、第1多極子110と第2多極子120との間に転送レンズ130が配置されない。第1多極子110と第2多極子120との間の距離は、軸外収差が低減されるような距離に設定される。色収差補正装置2000のその他の構成は、上述した色収差補正装置1000と同様であり、その説明を省略する。
色収差補正装置2000によれば、上述した色収差補正装置1000と同様の作用効果を奏することができる。
(2)第2変形例
次に、第2変形例について説明する。図19は、第2変形例に係る色収差補正装置3000の光学系を示す図である。以下、色収差補正装置3000において、上述した色収差補正装置1000の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
色収差補正装置3000では、第1多極子110が発生させる第1の電磁場に、四回対
称の電場を重畳させる第3多極子3010と、第2多極子120が発生させる第2の電磁場に、四回対称の電場を重畳させる第4多極子3020と、を含む。これにより、色収差補正装置3000では、色収差に加えて、球面収差を補正することができる。
第3多極子3010は、第1多極子110の第2部分110b(図11参照)で発生する電磁場重畳の四極子場に四回対称の電場を重畳させる。第4多極子3020は、第2多極子120の第2部分120bで発生する電磁場重畳の四極子場に四回対称の電場を重畳させる。第3多極子3010および第4多極子3020は、例えば、八極子である。
ここで、電子線EBが二回非点を持っている場合、そこに四回対称場を重畳すると、下記式に示すように、負の球面収差(−Cs)が発生する。
ただし、Aは、二回非点係数、Aは、四回非点係数である。このように、四回対称の非点場を重畳することで、色収差と球面収差の同時補正が行える。
色収差補正装置3000によれば、色収差の補正に加えて、球面収差を補正することができる。
なお、色収差補正装置3000の第3多極子3010および第4多極子3020は、四回対称の電場にかえて四回対称の磁場を重畳させてもよい。この場合も同様に、色収差の補正に加えて、球面収差を補正することができる。
(3)第3変形例
次に、第3変形例について説明する。図20は、第3変形例に係る色収差補正装置4000の光学系を示す図である。以下、色収差補正装置4000において、上述した色収差補正装置1000の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
色収差補正装置4000では、第1多極子110が発生させる第1の電磁場に、三回対称の電場を重畳させる第3多極子4010と、第2多極子120が発生させる第2の電磁場に、三回対称の電場を重畳させる第4多極子4020と、を含む。これにより、色収差補正装置4000では、色収差に加えて、球面収差を補正することができる。
第3多極子4010は、第1多極子110の第1部分110aまたは第3部分110cで発生する電磁場重畳の四極子場に三回対称の電場を重畳させる。第4多極子4020は、第2多極子120の第1部分120aまたは第3部分120cで発生する電磁場重畳の四極子場に三回対称の電場を重畳させる。第3多極子4010および第4多極子4020は、例えば、六極子である。
ここで、電子線EBが多極子110,120内で広がっている場合、三回非点を重畳させると、球面収差補正を行うことができる。したがって、色収差補正装置4000によれば、色収差の補正に加えて、球面収差を補正することができる。
なお、色収差補正装置4000の第3多極子4010および第4多極子4020は、三回対称の電場にかえて三回対称の磁場を重畳させてもよい。この場合も同様に、色収差の
補正に加えて、球面収差を補正することができる。
(4)第4変形例
次に、第4変形例について説明する。図21は、第4変形例に係る電子顕微鏡300の構成を説明するための図である。以下、電子顕微鏡300において、上述した電子顕微鏡200の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
上述した電子顕微鏡200では、図7に示すように、本発明に係る色収差補正装置を、結像系の収差補正装置として用いていた。
これに対して、第4変形例に係る電子顕微鏡300では、本発明に係る色収差補正装置を、照射系の色収差補正装置として用いている。ここでは、本発明に係る色収差補正装置として、色収差補正装置1000を用いた場合について説明する。
電子顕微鏡300は、電子銃211と、高圧制御部212と、第1集束レンズ213aと、色収差補正装置1000と、第2集束レンズ213bと、対物レンズ214と、試料ステージ215と、中間・投影レンズ216と、観察室217と、を含んで構成されている。
電子銃211は、高圧制御部212によって高圧電源が制御されて、電子線を発生する。
第1集束レンズ213aは、電子銃211で発生した電子線を集束する。第1集束レンズ213aで集束された電子線は、色収差補正装置1000に入射する。
色収差補正装置1000は、第1集束レンズ213aの収差を補正する。色収差補正装置1000で色収差が補正された電子線は、第2集束レンズ213bによって集束される。この集束された電子線は、対物レンズ214および試料ステージ215を通過する。
中間・投影レンズ216は、対物レンズ214ともに、結像系を構成している。中間・投影レンズ216は、観察室217内のカメラ(図示せず)上に結像する。
電子顕微鏡300では、色収差補正装置1000を含むため、照射系(第1集束レンズ213a)の色収差を補正することができる。したがって、電子顕微鏡300は、高い分解能を有することができる。また、電子顕微鏡300では、色収差補正装置1000が、負の色収差を効率的に発生させて、収差を補正することができる。したがって、電子顕微鏡300によれば、第1多極子110の長さを短く(厚みを小さく)することができ、分解能を向上させることができる。さらに、電子顕微鏡300によれば、色収差補正装置1000を含むため、アライメント(軸合わせ)を簡便化することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
上述した実施形態および変形例では、多極子レンズ100を色収差補正装置に適用した例について説明したが、本発明に係る多極子レンズを球面収差補正装置に適用してもよい。
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
10a…第1構造体、10b…第2構造体、10c…第3構造体、11a,11b,11c…基部、12a,12b,12c…極子、13a,13b,13c…先端部、14a…,14b,14c…ヨーク、16a,16b,16c…第1コイル、18a,18b,18c…第2コイル、20,22…磁場分離部、30,32…第1支持部、40,42…第2支持部、50…真空隔壁、100…多極子レンズ、110…第1多極子、110a…第1部分、110b…第2部分、110c…第3部分、112a,112b,112c,112d…電極,114a,114b,114c,114d…磁極、120…第2多極子、120a…第1部分、120b…第2部分、120c…第3部分、122a,122b,122c,122d…電極、124a,124b,124c,124d…磁極、130…転送レンズ、130a,130b,130c…レンズ、200…電子顕微鏡、211…電子銃、212…高圧制御部、213…集束レンズ、213a…第1集束レンズ、213b…第2集束レンズ、214…対物レンズ、215…試料ステージ、216…投影レンズ、217…観察室、220,222…対物ミニレンズ、300…電子顕微鏡、1000,2000,3000…色収差補正装置、3010…第3多極子、3020…第4多極子、4000…色収差補正装置、4010…第3多極子、4020…第4多極子

Claims (13)

  1. ヨークと、
    前記ヨークに磁気的に接続された基部、および前記基部に磁気的に接続された先端部を有する極子と、
    を備えた構造体を含み、
    前記構造体は複数積層され、
    前記構造体の積層方向に隣り合う前記先端部の間には、非磁性体からなる磁場分離部が設けられている、多極子レンズ。
  2. 請求項1において、
    前記磁場分離部は、導電性を有している、多極子レンズ。
  3. 請求項1または2において、
    前記先端部に電圧を印加するための端子を含む、多極子レンズ。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、
    前記基部と前記先端部とは、離間している、多極子レンズ。
  5. 請求項1ないし3のいずれか1項において、
    前記積層方向に隣り合う前記極子が発生させる電場の強度は等しく、前記積層方向に隣り合う前記極子が発生させる磁場の強度は異なっている、多極子レンズ。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項において、
    前記磁場分離部は、前記積層方向に隣り合う前記先端部と接している、多極子レンズ。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項において、
    前記積層方向に隣り合う前記基部の間には、非磁性体からなる第1支持部が設けられている、多極子レンズ。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項において、
    前記積層方向に隣り合う前記ヨークの間には、非磁性体からなる第2支持部が設けられている、多極子レンズ。
  9. 請求項1ないし8のいずれか1項において、
    前記基部に設けられた第1コイルと、
    前記基部に設けられ、前記第1コイルよりも巻き数が少ない第2コイルと、
    を含む、多極子レンズ。
  10. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載の多極子レンズを含む、収差補正装置。
  11. 請求項10において、
    前記多極子レンズは、色収差を打ち消すための電磁場を発生させる、収差補正装置。
  12. 請求項10または11に記載の収差補正装置を含む、電子顕微鏡。
  13. 請求項12において、
    前記基部と前記先端部との間には、真空隔壁が配置されている、電子顕微鏡。
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