以下、本発明の実施の形態につき図面に示す実施例を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、本発明は、被取付物5を保持した状態で、車体101側の所定構造部をなす車体側構造体102に係合固定することにより、被取付物5を車体101側に固定するクランプ1である。本発明のクランプ1は、図9〜図12に示すように、車体側構造体102に係合固定されるアンカー部材10と、被取付物5を保持する主保持部材3とを有し、それらアンカー部材10と主保持部材3とが着脱可能に構成される。本発明は、そのクランプ1を用いて車体側構造体102に被取付物5を取り付ける取付構造(被取付物固定構造)にも特徴を有する。
本実施形態の車両用クランプ1は、図1に示す車体101の前後方向(車両前後方向100X)あるいは左右方向(車両左右方向100Y)に延出するフレーム構造部102に対し係合固定される。ここでの車体101は貨物用自動車(ここではトラック)のものであり、ここでのフレーム構造部102は、車体前後方向に対向して延出する一対のサイドレールと、その一対のサイドレール間に梯子状に架設される複数本のクロスメンバと、を有して形成される車体フレーム(トラックフレーム)である。
本実施形態の被取付物5は、車両に配線または配管されるフレキシブルな長尺部材であり、ここではワイヤハーネスである。
なお、車体101については貨物用自動車(ここではトラック)のものに限らず普通自動車等の他の車両のものでもよいが、本発明の車両クランプ1は、車体フレーム102がより長く延出し、多種多様のワイヤハーネス5が引き回される貨物用自動車等に対し特に好適となる。
アンカー部材10は、図13〜図16に示すように、自身の先端10t(図16参照)側に形成され、フレーム構造部102において予め定められた方向に延出形成された所定の穴部102H(図3参照)内に、自身の軸線11Xの延出方向10Xの先端10tから挿入されて係合固定されるアンカー部11と、アンカー部11よりも該アンカー部材10の基端10s(後述の第二側板部13C:図16参照)側に設けられ、別体形成された所定のベルト2(図7及び図8参照)を挿通可能なベルト挿通孔12Hを有したベルト組付け部12と、アンカー部11よりも該アンカー部材10の基端10s側に設けられ、別体形成された所定の主保持部材3が着脱可能に組み付けられる保持部材組付け部13と、を一体に備える。本実施形態のアンカー部材10は、一体成形された樹脂射出成型体である。
本実施形態のアンカー部材10は、図3に示すように、アンカー部11が穴部102Hに挿入されたときにフレーム構造部102の表面102aに当接する当接部14も一体に備える。ベルト組付け部12及び主保持部材組付け部13の双方は、当接部14よりも基端10s側に設けられる。
なお、本実施形態では、アンカー部11の軸線11Xをアンカー軸線、そのアンカー軸線11Xの延出方向10Xをアンカー軸線方向10X、アンカー部材10の先端10t側をアンカー軸線方向10Xの第一側、アンカー部材10の基端10s側をアンカー軸線方向10Xの第二側とする。アンカー軸線方向10Xの第一側に向かう方向10X1(図3参照)が、アンカー部材10の穴部102Hへの挿入方向である。
アンカー部11について説明する。
アンカー部11は、図13〜図16に示すように、アンカー軸線11Xに沿って直線状に延出する軸部11Aと、穴部102H内で係合固定される係合部11Bと、を有する。本実施形態において、軸部11Aは円筒状をなし、係合部11Bは軸部11Aの外周面から外向きに突出する係合突起部をなす。
本実施形態の係合突起部11Bは、軸部11Aの外周側において周方向10R(図15参照)に複数形成される。それら係合突起部11Bは、図3に示すように、フレーム構造部102において所定方向に延出形成された穴部102Hに対しアンカー部材10が挿入されて係合固定されたときに、そのアンカー部11の姿勢(周方向10Rの向き)が一定となるよう設けられている。ここでの係合突起部11Bは、周方向10Rにおいて等間隔おきに複数(ここでは2箇所)設けられ、それらはアンカー軸線方向10Xに1ずつ(アンカー部11がアンカー軸線方向10Xに長い場合は複数ずつ)並んで設けられている。
係合突起部11Bは、図3に示すように、アンカー軸線方向10Xの第一側に軸部11Aとの連結部11Baを有し、連結部11Baを支点として係合突起部11B全体を軸部11Aの内部へと回転変位させて収容する内向きの弾性変形が可能な弾性片である。係合突起部11Bのアンカー軸線方向10Xの第一側の面11Bbは、アンカー部11の穴部102Hへの挿入時に、穴部102Hの開口内周面102hと当接して係合突起部11Bに上記内向きの弾性変形を促すよう、アンカー軸線方向10Xの第二側ほど外に位置する傾斜面11Bbとして形成される。他方、係合突起部11Bのアンカー軸線方向10Xの第二側となる面11Bcは、アンカー部11の穴部102Hへの挿入に際して上記のように内向きに弾性変形した係合突起部11Bが、穴部102Hの内周面102hに設けられた係合凹部102Jに達した際に外向きに弾性復帰して該係合凹部102J内へと進入し、該係合凹部102Jの内部においてアンカー軸線方向10Xの第二側となる面102jと対向して位置する抜け止め面11Bcである。つまり、係合突起部11Bは、穴部102Hへの挿入を促すガイド面11Bbを有した挿入ガイド部と、穴部102Hからの抜けを阻止する抜け止め面11Bcを有した抜け止め部との双方の機能を備える。
当接部14について説明する。
当接部14は、図13〜図16に示すように、アンカー部11の基端から外向きに延出し、アンカー軸線方向10Xの第二側への弾性変形が許容される形で設けられる。本実施形態の当接部14は、アンカー部11の基端側から先端側へと拡径しながら延出する板状をなすとともに、アンカー軸線11Xまわりにおいて所定間隔おきに切り欠きが形成されている。つまり、当接部14は、当該切り欠きを除く残余部として形成されており、アンカー軸線方向10Xの第二側への弾性変形が生じやすくなっている。これにより、当接部14は、図3のようにアンカー部11がフレーム構造部102の穴部102Hに挿入されて係合固定されたときに、フレーム構造部102の表面102aに押圧されてアンカー軸線方向10Xの第二側へと弾性変形し、その逆の第一側に向かう弾性復帰力によって押圧した当接状態となりうる。なお、当接部14は、弾性変形が容易には生じないようアンカー軸線方向10Xに延出するリブ14b(図13参照)を備える。
ベルト組付け部12について説明する。
ベルト組付け部12は、図13〜図16に示すように、アンカー部材10においてアンカー部11及び当接部14のアンカー軸線方向10Xの第二側に設けられ、別体形成された所定のベルト2を予め定められたベルト挿通方向10Yに挿通可能なベルト挿通孔12H(図16参照)を有する。本実施形態のベルト挿通方向10Yは、図16に示すように、アンカー軸線方向10Xに直交する方向であり、ベルト挿通孔12Hはその方向10Yに貫通形成された筒状孔である。
なお、ベルト挿通方向10Yは、ここではアンカー軸線方向10Xに直交する方向とされているが、他の方向でもよい。
本実施形態のベルト組付け部12は、アンカー部11及び当接部14の基端と連結して平板状に広がる第一側板部12Aと、第一側板部12Aに対しアンカー軸線方向10Xの第二側に対向配置される中間板部12Cと、第一側板部12Aの両端側から中間板部12Cの両端側へと延出する対向板部12B,12Bと、を有した筒状をなす。ベルト挿通孔12Hは、それら第一側板部12Aと対向板部12B,12Bと中間板部12Cとに取り囲まれる形で貫通形成される。ここでの中間板部12Cの両端とは、第一側板部12A及び中間板部12Cにおけるアンカー軸線方向10X(ベルト挿通孔12Hの開口高さ方向10Xともいう)とベルト挿通方向10Y(ベルト挿通孔12Hの奥行き方向10Yともいう)に直交する方向10Z(ベルト挿通孔12Hの開口幅方向10Zともいう)における両側の端部のことであり、それら端部の先端位置は対向板部12B,12Bよりも当該方向10Zの外側に突出する。
ベルト組付け部12の第一側板部12Aは、図16に示すように、ベルト挿通方向10Yにおける両端間において、その中間位置ほどアンカー軸線方向10Xの第二側に膨出するよう湾曲した膨出部12Aaを有する。膨出部12Aaは、ベルト挿通孔12Hの開口高さを、挿通されるベルト2が挿通可能としつつも該ベルト2の厚みと同程度に狭めている。また、膨出部12Aaは、ベルト挿通方向10Yの中間位置ほどアンカー軸線方向10Xの第二側に膨出する膨出形状を有することで、ベルト挿通孔12Hの開口高さがベルト挿通方向10Yにおける両端側(ベルト挿通方向10Yにおける手前側入口と奥側入口)で拡げられており、ベルト2の当該両端側のどちら側からの挿通も容易になっている。
なお、ここでの膨出部12Aaは、図16及び図75に示すように、ベルト挿通孔12Hの開口幅方向10Zにおける中間位置を挟んだ両側にそれぞれ突出形成されており、直線レール状をなす。本実施形態のレール状の膨出部12Aa,12Aaは、ベルト挿通方向10Yに直交する断面において、突出側が凸状に湾曲する形状をなしている。
ベルト組付け部12の対向板部12B,12Bは、それらの内側に挿通されるベルト2(図7及び図8参照)が挿通可能な程度に対向間隔が狭められている。ベルト組付け部12の対向板部12B,12Bは、ベルト挿通孔12Hの開口幅方向10Z(図16参照)において、中間板部12Cの両端よりも内側からアンカー軸線方向10Xに延出形成される。
ベルト組付け部12の対向板部12B,12Bはそれぞれ、ベルト挿通方向10Yにおける中間部の外側(内側のベルト挿通孔12H側とは逆側)から外向きに突出する形で、第一側板部12Aから中間板部12Cにかけて延出する補強リブ12Bb(図13及び図14参照)を有する。
ベルト組付け部12の中間板部12Cは、ベルト挿通方向10Yにおいて対向板部12B,12Bの第一側からその逆の第二側にかけて形成されるが、第一側から第二側まで形成されているのは、図13及び図14に示すように、対向板部12B,12Bの外側(ベルト挿通孔12Hの外側)だけである。対向板部12B,12Bに挟まれる内側(ベルト挿通孔12Hの内部側)のは、図13及び図16に示すように、対向板部12B,12Bの第一側から、第二側に達する途中の中間で途切れている。対向板部12B,12Bは、その中間から第二側において、後述する主保持部材組付け部13の対向板部13B,13Bと対向幅が一定のまま連続して形成されている。つまり、ベルト組付け部12の対向壁部12B,12Bに挟まれる空間のうちベルト挿通方向10Yの第二側の空間は、後述する主保持部材組付け部13の対向板部13B,13Bに挟まれる空間のベルト挿通方向10Yの第二側の空間と連通している。この連通する空間は、ベルト挿通孔12Hに挿通されるベルト2が配置可能な空間であり、アンカー部材10に主保持部材3を組み付けてワイヤハーネス5をベルト2で結束保持する際、ベルト挿通孔12Hに挿通されたベルト2は、この空間を通過する形で配置される。このとき、対向板部12B,12Bのベルト挿通孔12H内の内壁面は、ベルト挿通孔12Hに挿通されるベルト2の幅方向位置を規定する挿通ガイド面として機能する。また、この内壁面と連続する主保持部材組付け部13の対向板部13B,13Bの内壁面(後述する移動規制壁部13D側の内壁面)も、同じ挿通ガイド面として当該空間内に位置するベルト2の幅方向位置を規定する機能を果たす。
また、中間板部12Cは、図14に示すように、上記直線レール状の膨出部12Aa,12Aaとアンカー軸線方向10Xにおいて対向する形で直線レール状の突条部12Ab,12Abを備える。直線レール状の突条部12Ab,12Abは、ベルト挿通方向10Yに直交する断面が矩形状をなし、上記レール状の膨出部12Aa,12Aaとの対向面が平坦面をなすが、ベルト挿通方向10Yの第一側と第二側の両端部においては、先端に近づくほどベルト挿通孔12Hの開口幅方向10Zに広がるように湾曲している。これにより、ベルト挿通孔12Hへのベルト2の挿通を容易にしている。なお、直線レール状の突条部12Ab,12Abは、図16に示すように、ベルト挿通方向10Yの第二側端部において連結部12Acにより連結した形状をなす。連結部12Acは、突条部12Ab,12Abの上記対向面から連続する同一平面を有するとともに、ベルト挿通方向10Yの第二側には上記湾曲が形成されている。
ベルト2は、図7に示すような所定長さを有する帯状部材であり、図8に示すように、その長さ方向(ベルト長さ方向)2Lにおいて円弧状に湾曲させ、最終的には環状をなすように弾性変形させることができる。ベルト2又はベルト組付け部12のいずれか又は双方には、ベルト2の環状状態が保持されるよう互いを係合固定する係合固定部2B1,2B2がそれぞれ設けられる。さらに、係合固定部2B1,2B2は、環状状態とされたベルト2の環状部分の長さを複数段階(多段階)に調整可能な形で互いに係合固定する。
本実施形態のベルト2には、図7に示すように、その長さ方向2Lに沿って形成された複数の係止歯2b1からなる係止歯群2B1を係合固定部2B1として有する。さらにベルト2は、自身の環状状態が保持されるよう係止歯2b1に対し係止される形で該ベルト2を結束する結束固定部2B2を係合固定部2B2として有する。ここでのベルト2の各係止歯2b1は略鋸歯状をなし、ベルト2の先端部及び基端部を除く中間部分にて、ベルト2の長さ方向に等間隔おきに多数形成されている。他方、結束固定部2B2は、ここではベルト2の基端部に略矩形筒状の形態をなすとともに、ベルト2をその先端側から挿通可能なベルト挿通部2B2として形成される。結束固定部2B2の内周面には、ベルト挿通方向2Mの先端側にベルト2の係止歯2b1と係止可能な係止爪2b2が設けられた係止片2b0(図8参照)が形成される。
本実施形態のベルト2は、図8に示すように、結束固定部2B2をなすベルト挿通部2B2内に先端から挿通され、各係止歯2b1を順に、係止爪2b2を有する係止片2b0を弾性的に乗り越える形で奥へと挿通される。係止片2b0(係止爪2b2)を乗り越えた係止歯2b1は、乗り越えた直後に、ベルト2の逆向きへの抜けが阻止されるよう係止片2b0(係止爪2b2)に対しその挿通方向とは逆向きに当接する係止状態となる。そして、ベルト2が結束固定部2B2をなす挿通部2B2内により長く挿通されていくほど、ベルト2の環状部分の面積(即ちワイヤハーネス5が通過可能となる通過可能領域)が減じられて、ワイヤハーネス5はより強く結束保持される。
また、図7に示すように、ベルト2の中間部には、係止歯2b1の列(係止歯群)2B1の両隣りに、長さ方向2Lに沿って延出形成された補強リブ2b3が形成され、ベルト2の円弧状の湾曲弾性変形に対する剛性を確保している。また、このリブ2b3は、結束固定部2B2をなす挿通部2B2内に挿通される際に、その挿通部2B2内に設けられた溝部2b4によってガイドされる形で挿通される。
主保持部材組付け部13について説明する。また、後述する主保持部材3のアンカー部材組付け部31についても説明する。
主保持部材組付け部13は、図13〜図16に示すように、ベルト組付け部12のアンカー軸線方向10Xの第二側に設けられ、主保持部材3のアンカー部材組付け部31(図9〜図12参照)を着脱可能に固定する構造を有する。ここでの主保持部材組付け部13と、主保持部材3のアンカー部材組付け部31とは、一方が他方に対し嵌入される形で固定される。なお、主保持部材組付け部13に対するアンカー部材組付け部31の嵌入組付け方向13Y(嵌入方向:図16参照)は、ここではベルト挿通方向10Yの順逆2方向のうちの一方(ここではベルト挿通方向10Yの第二側から第一側に向かう方向)と定めている。
本実施形態の主保持部材組付け部13は、図16に示すように、ベルト組付け部12の中間板部12Cと、中間板部12Cに対しアンカー軸線方向10Xの第二側に対向配置される第二側板部13Cと、中間板部12Cの両端側から第二側板部13Cの両端側へと延出する対向板部13B,13Bと、を有した形状をなす。
主保持部材組付け部13の中間板部12Cは、図75〜図80に示すように、アンカー軸線方向10Xと嵌入組付け方向13Yに直交する方向13Zにおいて、互いに対向する対向板部12B,12Bから互いに離間する方向(外向き)に突出した突出壁部12G,12Gを有する。これに対し組み付け対象となる主保持部材3のアンカー部材組付け部31は、図71〜図80に示すように、互いに対向する形で底端面310bから突出する外側壁部31A,31Aを有する。主保持部材組付け部13は、アンカー部材組付け部31に組み付けられる際に、突出壁部12G,12Gが外側壁部31A,31Aの内側となる対向空間内に嵌入される。つまり、この突出壁部12Gが、主保持部材3のアンカー部材組付け部31に主保持部材組付け部13を嵌入させて組み付ける際の嵌入ガイド部として機能する。互いに対向する外側壁部31A,31Aの突出方向先端側は、互いに近接する方向に屈曲した先端部を有し、その先端部によって、突出壁部12G,12Gのアンカー軸線方向10Xの第一側を覆って当接ないし近接する(図75参照)。これにより、アンカー軸線方向10Xへの抜けが阻止される。
主保持部材組付け部13の第二側板部13Cは、図77〜図80に示すように、互いに対向する対向板部13B,13Bの対向方向13Z(図16参照)において、それら対向板部13B,13Bから互いに離間する方向(外向き)に突出した突出壁部13Gを有する。これに対し組み付け対象となる主保持部材3のアンカー部材組付け部31は、図71〜図80に示すように、互いに対向する外側壁部31A,31Aの内側に、互いに対向する形で底端面310bから突出する内側壁部31B,31Bを有する。主保持部材組付け部13は、アンカー部材組付け部31に組み付けられる際に、突出壁部13G,13Gが内側壁部31B,31Bの内側となる対向空間内に嵌入される。つまり、この突出壁部13Gも、主保持部材3のアンカー部材組付け部31を主保持部材組付け部13に嵌入させて組み付ける際の嵌入ガイド部13Gとして機能する。互いに対向する内側壁部31B,31Bの突出方向先端側は、互いに近接する方向に屈曲した先端部を有し、その先端部によって、突出壁部13G,13Gのアンカー軸線方向10Xの第一側を覆って当接ないし近接する(図75参照)。これにより、アンカー軸線方向10Xの第一側への抜けが阻止される。
主保持部材組付け部13は、図75及び図76に示すように、嵌入組付け状態となった主保持部材3におけるアンカー部材組付け部31の内側壁部31B,31Bに対し嵌入組付け方向13Y(図76参照)に嵌入した際に当接して、嵌入組付け方向13Yにおける所定位置よりも奥側への移動を規制する移動規制壁部13D(図75参照)を、対向板部13B,13Bの嵌入組付け方向13Yとは逆側の端部に有する。本実施形態の移動規制壁部13Dは、対向する対向板部13B,13Bの嵌入組付け方向13Yの手前側で、対向板部13B,13Bの対向方向13Zにおいて互いに離間する向き(外向き)に突出する壁部であり、ここではアンカー軸線方向10Xにおいて中間板部12Cから第二側板部13Cにかけて延出する壁部であって、対向板部13B,13Bのベルト挿通方向10Yの第二側から対向方向13Zにおいて互いの離間する向きに屈曲した形で形成される。
主保持部材組付け部13は、図76に示すように、主保持部材3のアンカー部材組付け部31を嵌入させて組み付ける際に、所定位置まで嵌入した主保持部材3の嵌入組付け方向13Yとは逆向きの抜けを阻止する抜け止め部13cを有する。本実施形態の主保持部材組付け部13では、第二側板部13Cが、対向する対向板部13B,13Bのアンカー軸線方向10Xの第二側にそれぞれが分離した部位13C,13C(図77及び図78参照)として設けられており、抜け止め部13cは、それら第二側板部13C,13Cを連結する連結壁部13c(図79参照)として形成されている。これに対し主保持部材3のアンカー部材組付け部31は、嵌入組付け方向13Yの奥側に向かって延出するとともにその延出方向先端側に係止爪31cが設けられた係止片31Cを有する。係止片31Cは、主保持部材3の嵌入組付けの際には、その嵌入の途中で、連結壁部13cをなす抜け止め部13cに対し係止爪31cが当接し、さらに嵌入が進むにつれて、その当接によってアンカー軸線方向10Xの第一側への弾性変形が促される。弾性変形した係止片31Cは、さらに嵌入が進むと、係止爪31cが抜け止め部13cを乗り越えたときに弾性復帰する。このとき、弾性復帰した係止片31Cの係止爪31cは、抜け止め部13cの嵌入組付け方向13Yの手前側に回り込む。即ち、係止爪31cが抜け止め部13cに対し嵌入組付け方向13Yとは逆向きに対向して位置するようになって、係止片31Cは、嵌入組付け方向13Yの逆向きに抜け止めされた状態となる。この抜け止め状態が、アンカー部材10(主保持部材組付け部13)と主保持部材3(アンカー部材組付け部31)の組付け状態である。
主保持部材3のアンカー部材組付け部31は、図77〜図80に示すように、主保持部材組付け部13を嵌入組付けした場合に、その主保持部材組付け部13の突出壁部12G,12Gに対し嵌入組付け方向13Yにおいて当接して、その主保持部材組付け部13の嵌入組付け方向13Yにおける所定位置よりも奥側への移動を規制する移動規制壁部31D(図71〜図74参照)を、外側壁部31A,31Aの嵌入組付け方向13Y側の端部に有する。本実施形態の移動規制壁部31Dは、対向する外側壁部31A,31Aの嵌入組付け方向13Yの奥側で、それら対向する外側壁部31A,31Aの対向方向13Zにおいて互いに接近する向き(内向き)に突出する壁部である。
このように本実施形態のアンカー部材10は、ベルト組付け部12をアンカー軸線方向10Xの第一側に有し、主保持部材組付け部13をアンカー軸線方向10Xの第二側に有した二段構造を有する。アンカー部材10は、ベルト挿通孔12Hにベルト2を挿通させた状態で、主保持部材組付け部13よりもアンカー軸線方向10Xの第二側に配置されるワイヤハーネス5を、その外周側からベルト2によって取り巻いて結束して保持する第一保持状態(図6参照)とすることができる。この際、主保持部材組付け部13は、ベルト組付け部12よりもアンカー軸線方向10Xの第二側に向かって突出する突起部13であり、ベルト2によって取り巻かれた際に、この突起部13をワイヤハーネス5に食い込ませた状態とすることで、ワイヤハーネス5をより強固に保持できる。さらにアンカー部材10は、アンカー部材10の主保持部材組付け部13と主保持部材3のアンカー部材組付け部31とが組み付けられた状態で、ワイヤハーネス5を主保持部材3に配置して保持する第二保持状態(図4及び図5参照)とすることもできる。
上記構成を備えるアンカー部材10は、本実施形態においては少なくとも2種類以上存在する。それらの違いはアンカー部11の形状や大きさとすることができる。本実施形態においては、アンカー部11の円筒状の軸部11A(図13及び図14参照)の径が異なる第一のアンカー部材10A(図9及び図11参照)と、第二のアンカー部材10B(図10及び図12参照)の2種類が例示されている。なお、形状や大きさの異なるアンカー部11は、車体101側の穴部102Hの形状に応じて設けられ、これにより様々な車種に対応することができる。なお、本実施形態のアンカー部材10A,10Bは、アンカー部11の径だけでなく、係合部11Bの数も異なる。
さらに本実施形態においては、全種類のアンカー部材10において、主保持部材組付け部13だけでなく、ベルト組付け部12も同一の構造を有する。これにより、共通の形状を有する1種類のベルト2が、全種のアンカー部材10に適用可能になっている。なお、第一のアンカー部材10Aと第二のアンカー部材10Bにおける共通の機能部については、同符号を伏してその説明を省略する。
一方、主保持部材3も、本実施形態においては2種類以上存在する。それらの違いはアンカー部材組付け部31を除く残余部の形状であり、アンカー部材組付け部31は互いの形状が同じである。ここでは、主保持部材3として、配置部32の形状が異なる第一の主保持部材3A(図17〜図44参照)と、第二の主保持部材3B(図45〜図70参照)との2種類を例示している。なお、第一の主保持部材3Aと第二の主保持部材3Bにおける共通の機能部についても、同符号を伏してその説明を省略する。
主保持部材3は、図17〜図44及び図45〜図70に示すように、複数のワイヤハーネス5を各々区画された配置領域に配置可能な区画配置型保持部材である。本実施形態の主保持部材3は、アンカー部材10の主保持部材組付け部13に着脱可能に組み付けられるアンカー部材組付け部31と、複数のワイヤハーネス5がそれぞれ区画された配置領域に配置される配置部32と、を少なくとも一体に備えるとともに、配置部32に配置されたワイヤハーネス5を拘束部33によって拘束して保持することができる。これにより、アンカー部材10の主保持部材組付け部13と主保持部材3のアンカー部材組付け部31とが組み付けられた状態において、ワイヤハーネス5を、主保持部材3の配置部32に配置して拘束部33によって拘束して保持する第二保持状態(図4及び図5参照)とすることができる。本実施形態の主保持部材3は、少なくともアンカー部材組付け部31と配置部32とが樹脂射出成型体として一体成形される。さらにいえば、本実施形態の主保持部材3は、後述する第一の拘束部331も樹脂射出成型体として一体に成形されている。
主保持部材3(3A,3B)の配置部32は、図17及び図51に示すように、アンカー部材組付け部31が突出形成される面310bの裏側に設けられており、ワイヤハーネス5が配置される配置領域を隔てる区画壁部302,303,305を有した区画配置部321,322である。区画壁部302,303,305は、配置されるワイヤハーネス5と当接してその配置位置を規定する当接壁面32u,32p,32j,32iを有する。当接壁面32u,32p,32j,32iは、配置される長手状のワイヤハーネス5の長手方向5L(図19及び図20参照)において所定長さを有して延出する面であり、配置される長手状のワイヤハーネス5に対しその長手方向5Lの向きを規定する形で、その長手方向5Lに沿って当接する。
なお、区画配置部321,322に配置されるワイヤハーネス5の長手方向5Lの向きは、アンカー部材組付け部31に対し組み付けられたアンカー部材10のアンカー軸線方向10Xに対し直交する方向であり、ここではベルト挿通方向10Yと同方向とされている。
主保持部材3の拘束部33は、図23及び図51に示すように、区画配置部321,322の当接壁面32u,32p,32j,32iに対し当接状態で配置されたワイヤハーネス5を、その当接状態のまま、当該区画配置部32から離脱不能に保持する。本実施形態の主保持部材3は、ワイヤハーネス5の離脱不能の保持状態が継続する保持状態と、ワイヤハーネス5の離脱可能な非保持状態との間で切り替え可能な形で、拘束部33を組み付けられている。
第一の主保持部材3Aについて説明する。
図17〜図44に示すように、第一の主保持部材3Aは、区画配置部321,322において、上記当接壁面をなす凹壁面32u,32jが形成された収容配置部32U,32Jを有する。収容配置部32U,32Jは、ワイヤハーネス5を、底面をなす凹壁面32u,32jに当接させて配置することにより、そのワイヤハーネス5の少なくとも一部を、その凹壁面32u,32jの形成する凹空間内に収容する。凹壁面32u,32jの臨む側(凹壁面32u,32jの対向方向側)は、ワイヤハーネス5を収容・配置するために進入口となるよう開放されている。
なお、凹壁面32u,32jは湾曲凹面とすることができる。本実施形態の凹壁面32u,32jは円弧状に湾曲する湾曲凹面であり、円筒の内周面をその軸線方向に平行な1以上の平面で切断して得られる内周面形状をなす。具体的にいえば、本実施形態の凹壁面32uは、円筒をその軸線を通過する平面で2等分割に切断して得られる内周面形状であり、本実施形態の凹壁面32jは、円筒をその軸線を通過する平面で4等分割に切断して得られる内周面形状である。本実施形態の収容配置部32U,32Jには、凹壁面32uを有する第一の収容配置部32Uと、凹壁面32jを有する第二の収容配置部32Jとがある。なお、凹壁面32u,32jには内向きに突出する凸部(リブ)3eを設けてもよい。
さらに第一の主保持部材3Aは、区画配置部321,322において、上記収容配置部32U,32Jと共に、該収容配置部32U,32Jに配置されたワイヤハーネス5に積み重なる形で配置された別のワイヤハーネス5に対し当接する当接壁面32p、32iが形成された重ね配置部32P,32Iを有する。つまり、重ね配置部32P,32Iは、収容配置部32U,32Jにおけるワイヤハーネス5の収容空間と空間が連続する形で、かつ収容配置部32U,32Jの開放側に隣接して形成される。
なお、本実施形態における重ね配置部32P,32Iは、隣接形成される収容配置部32U,32Jにおいて円弧状に湾曲する凹壁面32u,32jの曲率半径よりも長い直線状の当接壁面32p、32iを少なくとも1以上有する。ここでは、収容配置部32U,32Jから重ね配置部32P,32Iにかけて連続するワイヤハーネス5の収容空間の総深さ(ワイヤハーネス5の重なり方向5Xの高さ:図86参照)が、その曲率半径の2倍より大とされている。
重ね配置部32P,32Iは、収容配置部32U,32Jに配置されたワイヤハーネス5に重ねて配置される別のワイヤハーネス5に対し、その配置位置を規定する形で当接する当接壁面32p、32iを有する。ただし、重ね配置部32P,32Iは、当接壁面32p、32iとして、互いに対面する対向壁面32p,32pを有する第一の重ね配置部32Pと、対面方向を開放させた片壁面32iを有する第二の重ね配置部32Iとがある。
第一の重ね配置部32Pは、対向壁面32p,32pに挟まれた対向間空間を、収容配置部32Uのワイヤハーネス5の収容空間から連続する形で有し、その対向空間をワイヤハーネス5の収容空間とする。本実施形態の対向壁面32p,32pは、第一の収容配置部32Uの凹壁面32uの湾曲方向3R(図40及び図41参照)の両端から連続する形で、互いに平行をなして直線状に延出する平面である。つまり、ここでの対向壁面32p,32pは、凹壁面32uに対しその湾曲方向3Rの両端で接する接平面として形成される。
第二の重ね配置部32Iは、収容配置部32Jの凹壁面32jの湾曲方向3R(図40及び図41参照)の一端から連続する形で直線的に延出形成される片壁面32iを有し、その片壁面32iの対面方向側が、ワイヤハーネス5を進入可能となるよう開放されている。本実施形態の片壁面32iは、第二の収容配置部32Jの凹壁面32jの湾曲方向3Rの一端から連続する形で形成された、直線状に延出する平面である。つまり、ここでの片壁面32iは、凹壁面32jに対しその湾曲方向3Rの一端で接する接平面として形成される。
本実施形態において、第一の主保持部材3Aの第一の区画配置部321は、アンカー部材組付け部31が形成される底端面310bを有する底壁部310から、その底端面310bに対し直交する方向に互いに対向する形で突出形成される区画壁部(対向壁部)301,302により1つ形成され、同じくその底端面310bに対し直交する方向に互いに対向する形で突出形成される区画壁部302,303によりもう1つ形成されている。互いに対向する区画壁部301,302と互いに対向する区画壁部302,303はそれぞれ、互いに対面する側となる内向きの壁面をなす対向壁面32p、32pと、それら対向壁面32p、32pから底端面310b側に続く凹壁面32uとからなる連続面を有する。
本実施形態において、第一の主保持部材3Aの第二の区画配置部322は、アンカー部材組付け部31が形成される底端面310bを有する底壁部310から、その底端面310bに対し直交する方向に突出形成される区画壁部303によって、1つだけ形成されている。区画壁部303は、対面側が開放されている外向きの壁面として、片壁面32iと、その片壁面32iの底端面310b側に続く凹壁面32jとからなる連続面を有する。
また、本実施形態の第一の主保持部材3Aは、第一の収容配置部32Uと第一の重ね配置部32Pとによって複数のワイヤハーネス5をその長手方向5Lを一致させる形で積み上げて配置可能な第一の区画配置部321と、第二の収容配置部32Jと第二の重ね配置部32Iとによって複数のワイヤハーネス5を積み上げて配置可能な第二の区画配置部322とを、それぞれの収容配置部32U,32J同士、重ね配置部32P,32I同士を、横並びにした形態で形成される。この横並び方向3Z(図21及び図22参照)は、各区画配置部321,322に配置されたワイヤハーネス5の長手方向5Lと、アンカー部材組付け部31に対し組み付けられたアンカー部材10のアンカー軸線方向10Xとの双方に直交する方向3Zである。
横並び方向3Zに隣接形成される第一の区画配置部321と第二の区画配置部322とは、双方を形成する共通の区画壁部303によって、それぞれのワイヤハーネス5の配置空間が区画されている。
なお、第二の区画配置部322は、第一の主保持部材3A(主保持部材3)において横並び方向3Zにおける端部に形成する必要がある。
また、本実施形態の第一の主保持部材3Aは、横並び方向3Zに隣接形成される第一の区画配置部321,321を複数(ここでは2つの)有する。それら隣接する第一の区画配置部321,321は、それぞれの収容配置部32U,32U同士、重ね配置部32P,32P同士を、横並び方向3Zに並んだ形態で形成される。
横並び方向3Zに隣接形成される第一の区画配置部321,321は、双方を形成する共通の区画壁部302によって、それぞれのワイヤハーネス5の配置空間が区画されている。
本実施形態の第一の主保持部材3Aにおいて、横並びする2つの第一の区画配置部321の主な違いは、対向壁面32p,32pの対向幅及び円弧状に湾曲する凹壁面32uの径と、それぞれの拘束部33の位置である。本実施形態の第一の主保持部材3Aは、横並び方向3Zにおいて中央に位置する第一の区画配置部321の対向壁面32p,32pの対向幅が広幅で、凹壁面32uの径が大径とされ、その隣に位置する第一の区画配置部321の対向壁面32p,32pの対向幅が狭幅で、凹壁面32uの径が小径とされている。
底壁部310は、横並び方向3Zに形成される区画壁部301,302,303にまたがって広がっており、その主面として形成される底端面310bは平坦面として形成される。
区画壁部301の対向壁面32pとは逆の裏面をなす壁面311b(図17及び図18参照)は、第一の主保持部材3A全体の側端面311bである。第一の主保持部材3Aの底端面310bと側端面311bとをつなぐ角部310R(図17及び図18参照)には、外周面に円弧状に湾曲する面取り面310r(図43及び図44参照)が形成され、内周面に凹壁面32uが形成される。面取り面310rの曲率半径が、直近の凹壁面32uよりも小さいため、その角部310Rは剛性を高める補強用の肉厚部として機能する。また、区画壁部302,303も、その先端側とは逆の基部側が表裏に凹壁面32u,32uあるいは凹壁面32u,32jを形成する山型をなし、剛性を高める補強用の肉厚部として機能する。
第一の主保持部材3Aの拘束部33は、第一の区画配置部321及び第二の区画配置部322それぞれに対応するものを有している。
第一の区画配置部321に設けられる第一の拘束部331,331は、第一の重ね配置部32P,32Pにおける開放側(第一の収容配置部32Uとは逆側)において、対向壁部301,302の間をまたぐ形で配置される。具体的にいえば、第一の拘束部331,331は、第一の重ね配置部32P,32Pを形成する対向壁部のうちの一方の壁部301,303の先端部(第一側端部)301T,303T(図40及び図41参照)から延出形成されるとともに、延出した先の先端側が屈曲ないし弾性変形によって、他方の先端部(第二側端部)302T側に向かって接近可能に形成される。本実施形態の第一の拘束部331,331は、第一の重ね配置部32P,32Pを形成する対向壁部のうちの一方の壁部301,303の先端部301T,303Tに対し、ヒンジ部331Aを介して一体に形成されており、そのヒンジ部331Aを中心に先端部331T側を旋回(回転)させる形で屈曲変形する。また、第一の拘束部331には、ワイヤハーネス5と対向する面に凸部(リブ)3eを設けてもよい。
第一の拘束部331の先端部331Tには係合固定部331Cが設けられ、当該係合固定部331Cは、壁部302の先端部(第二側端部)302Tに設けられた係合固定部302Cに対し係合固定される。
本実施形態の第一の拘束部331の具体的な形状を説明する。第一の拘束部331は、図42A〜図42Cに示すように、一方の対向壁部301,303の先端部301T,303Tに設けられたヒンジ部331A(図40及び図41参照)から、第一の収容配置部32U側とは逆に向かって延出するとともに、その先で他方の対向壁部302側に湾曲し、その湾曲した先が、該対向壁部302の先端部302Tに向かって直線状に延出する。そして、直線状に延出した先は、第一の収容配置部32U側に向かうよう湾曲し、湾曲した先に先端部331T(図40及び図41参照)を有する。
また、第一の拘束部331の先端部331Tには、図40及び図41に示すように、ヒンジ部331Aを中心とする回転変位によって、壁部302の先端部(第二側端部)302Tに形成された係合穴(開口)302Hからその内部に進入して係合固定される係合固定部331Cが形成される。この係合固定によって、第一の拘束部331は、図42A〜図42Cに示すように、双方の対向壁部301,303の先端部301T,303Tの間をまたがる形で被さった状態に固定される。即ち、第一の拘束部331におけるヒンジ部331Aから先端部331Tまでをなす延出部(アーム部)331Bが、第一の区画配置部321に収容配置されたワイヤハーネス5の離脱を妨げるよう第一の区画配置部321の開放側を被うように位置して固定された結果、収容配置されたワイヤハーネス5が拘束保持状態となる。
また、本実施形態の第一の拘束部331は、第一の区画配置部321において、第一の重ね配置部32Pに当接して配置されたワイヤハーネス5を、隣接する第一の収容配置部32U側へと押し込む(押し付ける)ことができるよう、自身331が上記係合固定状態となる係合固定位置を、第一の収容配置部32U側に向かって複数段階に調整可能な形で位置変更できる。
具体的にいえば、図42A〜図42Cに示すように、第一の拘束部331の係合固定部331Cは、先端部331T(図40及び図41参照)の側面において、先端に向かって複数連続形成された係止歯331cからなる係止歯群331Cである。他方、対向壁部302の係合固定部(開口内係合固定部)302Cは、第一の拘束部331の先端部331Tが挿入される略矩形筒状の係合穴302H内に形成された係止片302Cである。係合穴302Hは、対向壁部302における先端部302Tの先端面に挿入口を有し、係合穴302H内の内周面には、挿入される第一の拘束部331の先端部331Tの係止歯331cと係止可能な係止片302Cが形成される。係合穴302Hに第一の拘束部331の先端部331Tを挿入すると、その先端部331Tの各係止歯331cは、先端側の係止歯331cから順に、係止片302Cを弾性変形させる形で該係止片302Cの係止爪302cを乗り越えていき、奥(収容配置部32U側)へと進入する。係止片302C(係止爪302c)を乗り越えた直後の係止歯331cは、拘束部331の先端部331Tの進入方向とは逆向きへの抜けが阻止されるよう、係止爪302cに対して進入方向とは逆向きに対向した状態となる。これにより、拘束部331は、係合穴302Hに対し抜け止めされた係合固定状態となる。この構成によると、拘束部331の先端部331Tのより多くの係止歯331cが、対向壁部302の係合穴302H内の係止片302C(係止爪302c)を弾性的に乗り越えて、より奥(収容配置部32U側)へと挿入されることにより、拘束部331の延出部331B(特に先端部331T側)がより第一の収容配置部32U側へと接近するように変位して、重ね配置部32Pに配置されているワイヤハーネス5を、第一の収容配置部32Uに配置されたワイヤハーネス5と合わせて、第一の収容配置部32Uの凹壁面32uへとより強く押し付けることができる。つまり、第一の拘束部331は、第一の区画配置部321に配置されたワイヤハーネス5を当接壁面32uへと押し付ける押付拘束部として機能する。
なお、本実施形態においては、図86に示すように、第一の拘束部331の先端部331Tが、ヒンジ部331Aを中心とした円軌跡331kを描く形でその軌跡331k上を回転変位するとともに、その先端部331T(図40及び図41参照)の形状がその円軌跡331kに沿って延出する形状をなす。その先端部331Tに設けられる係合固定部331Cは、その円軌跡331kに沿った方向において係合穴302H内の奥に向かう3以上の異なる係合固定位置(進入深さ位置:図42A〜図42Cが示す各位置)のそれぞれで、その係合穴302Hの内部の係合固定部302Cと係合固定可能とされており、第一の拘束部331の係合穴302内への進入深さが可変可能とされている。
さらに本実施形態においては、図86に示すように、対向壁部302の係合穴302Hの内部において、ヒンジ部331Aが形成される対向壁部301,303側となる内壁面(第一側内壁面)302fからその逆側の内壁面(第二側内壁面)302eに向けて突出形成された開口内突出部302Dを有する。他方、係合穴302H内の係合固定部302Cは、その逆向きで、内壁面(第二側内壁面)302eから内壁面(第一側内壁面)302fに向けて突出する突出部(係止爪302c)をなす。第一の拘束部331の先端部331Tを、円軌跡331kに沿って開口内突出部302Dと係合穴302H内の係合固定部302Cとの間隙から進入させると、第一の拘束部331の係合固定部331Cは、各係合固定位置(各進入深さ位置)での係合固定部302Cとの係合固定状態を順に乗り越えてより奥へと進入していくが、より奥に進入していった場合、第一の拘束部331の先端部331Tは、円軌跡331kに沿って、開口内突出部302Dの先端位置よりも内壁面(第一側内壁面側)302fへと接近していく。これに対し係合穴302Hは、その先端部331Tを迎え入れることが可能な受入空間302gを内部に有する。受入空間302gは、開口内突出部302Dの奥側で、かつ開口内突出部302Dの先端位置よりも内壁面(第一側内壁面側)302fの空間である。
この開口内突出部302gは、図86に示すように、直線状に延出する壁部302の内部に第一の拘束部331が進入しない図88〜図90に示すような主保持部材3’には不要である。図88〜図90に示すような主保持部材3’の場合、第一の拘束部331が回転しても、その先端部331Tは、凹壁面32uの裏面32u’に面した裏側空間302g’(図89及び図90参照)へと進入していくが、その裏面32u’を凹壁面に沿って湾曲させる形状とすれば、図86のように開口内突出部302gをあえて設けてその奥に上記受入空間302gを形成しておく必要はない。
また、第一の拘束部331の先端部331Tは、自身が回転移動する円軌跡331kに沿って延出する形状をなすが、図87に示すように、その形状は補強リブ3eによって保持されている。補強リブ3eは、第一の拘束部331の幅方向(ここでは配置されるワイヤハーネスの長手方向5Lと同じ)の中央に、円弧状の先端部331Tの延出方向に沿って突出形成される。円弧外周側の補強リブ3eは、各係止歯331cの先端位置と同じ高さとなる形でそれら係止歯331cに跨るように形成される。
なお、本実施形態においては、凹壁面32uの底位置32bからその円弧の中心位置32aを通過する方向を高さ方向5X(上述の重なり方向5Xと同じ)とした場合、その高さ方向5Xにおいて、図86に示すように、第一の拘束部331のヒンジ部331Aは、凹壁面32uの円弧形状に沿って描かれる円32kよりも高い位置に形成される。そして、第一の拘束部331は、係合穴302H内での各進入深さ位置での係合固定状態において、凹壁面32uの円弧形状に沿って描かれる円32kよりも高い位置で、かつ当該円32kに重なることないように、壁部303(301でも同じ)の先端部(第一側端部)303Tから、壁部302の先端部(第二側端部)302T側へと延出形成されている。これは壁部301の先端部301Tから延出形成される第一の拘束部331も同じである。
なお、第一の主保持部材3Aでは、図21に示すように、2つの第一の区画配置部321,321が横並びに形成されており、それら2つの第一の区画配置部321,321の第一の拘束部331,331が係合固定される係合穴302Hは、双方共に、2つの第一の区画配置部321,321の間に位置する共通の区画壁部302に形成されている。具体的にいえば、その共通の区画壁部302を、それら2つの第一の区画配置部321に配置されるワイヤハーネス5の長手方向5Lにおいて複数に区分し、区分された区間の1つに一方の係合穴302Hが、別の区間に他方の係合穴302Hが形成されている。
また、第一の主保持部材3Aでは、第一の重ね配置部32Pを形成する壁部301,302,303のうち、係合穴302Hが形成される区画壁部302が、形成されない他の壁部301,303よりも、横並び方向3Zの厚みが厚く形成される。つまり、係合穴302Hの穴幅を確保するために、他よりも厚みを持って形成されている。
さらに第一の主保持部材3Aでは、図17に示すように、第一の重ね配置部32Pを形成する壁部301,302,303のうち、係合穴302Hが形成される区画壁部302が、形成されない他の壁部301,303よりも、配置される複数のワイヤハーネス5の重なり方向5X(図19及び図20参照)の高さが高く形成される。つまり、係合穴302Hの奥行を確保するために、他よりも長く形成されている。
さらに第一の主保持部材3Aでは、図86に示すように、区画壁部302に形成される係合穴302Hの開口入り口、即ち第一の拘束部331の挿入口を、当該壁部302の先端面だけでなく、その先端面から対向壁面32pの上端側にかけて続く形で形成される。これにより、円軌跡331kに沿って区画壁部302の係合穴302Hに進入してくる第一の拘束部331の係合固定位置を、円軌跡331kの中心位置331a(ヒンジ部331A)よりも進入方向奥側に位置させつつ、区画壁部302の厚みを減じることができる。
第二の区画配置部322に設けられる第二の拘束部332は、図43及び図44に示すような別体形成されたベルト332である。
なお、本実施形態のベルト332は、アンカー部材10においてベルト挿通孔12Hに対し挿通可能とされたベルト2と同じである。ベルト332は、ベルト2とは異なるベルトとしてもよいが、同じベルト2とすることで、部品点数を減じ、コストを抑えることができる。
ベルト332は、図43及び図44に示すように、区画配置部321,322を形成する区画壁部301,302,303に形成されたベルト挿通ガイド部32G1,32G3(図40及び図41参照)に沿って配置される。
ベルト挿通ガイド部32G1,32G3は、区画配置部301,302を形成する壁部302,303を貫通するベルト挿通孔(主保持部材側ベルト挿通孔)32H1,32H3を有する。ベルト332は、ベルト挿通孔32H1,32H3に対し孔内の内周壁面によってガイドされる形で容易に挿通することができるだけでなく、挿通されたベルト332が貫通配置状態となることで、ベルト332の配置位置と挿通方向が決められて、挿通方向以外への移動が規制(位置ずれ防止)されるから、その後に行うワイヤハーネス5の曲げと結束による保持作業を安定かつ容易に行うことが可能になる。
また、ベルト挿通ガイド部32G1,32G3は、区画配置部321,322を形成する壁部302,303の凹壁面32u,32jに沿って湾曲形成される凹状ガイド壁面32g1,32g3を有する。ベルト332は、凹状ガイド壁面32g1、32g3に密着させるような形で配置される。これにより、ベルト332は、凹状ガイド壁面32g1、32g3に対面(対向)する形で位置し、そのベルト332を、対面する凹状ガイド壁面32g1、32g3に密着させることで、そのベルト332の密着区間を凹壁面32u、32jに沿って曲げ変形させることが可能となる。つまり、凹状ガイド壁面32g1、32g3は、ベルト332を密着させるだけで、ベルト332を凹壁面32u、32jに沿った曲げ形状へと容易に弾性変形させることができる。ベルト332は、一部区間が既に曲げられていれば、残余区間を環状に曲げることは、直線状のベルト332を環状にするよりも容易である。
本実施形態における第一のベルト挿通ガイド部32G1は、図40及び図43に示すように、第二の区画配置部322を形成する区画壁部303から、区画壁部302に向かう横並び方向3Zに貫通するベルト挿通孔32H1と、そのベルト挿通孔32H1の貫通した先に位置する区画壁部302の凹壁面32uに対し凹む形でその凹壁面32uの湾曲方向3Rに沿って延出するベルト挿通ガイド溝32H2と、を有する。
ベルト挿通孔32H1は、区画壁部303において凹壁面32j側に設けられた開口から、その裏側の凹壁面32u側に設けられた開口へと横並び方向3Zに続く貫通孔である。凹壁面32j側に設けられた開口は、凹壁面32uに設けられた開口よりも広く形成されたベルト入口として機能する。他方、凹壁面32u側に設けられた開口は、凹壁面32jに設けられた開口から挿入されたベルト332を、ベルト挿通ガイド溝32H2へと導くベルト出口として機能するものであり、ベルト332をベルト挿通ガイド溝32H2へと正確に導くよう狭く形成されている。ベルト出口をなす開口が形成された凹壁面32uの、区画壁部303内における裏面32k0(図40参照)は、その凹壁面32uに沿って湾曲する湾曲面であり、ベルト出口よりも高さ幅の広いベルト入口から挿入されたベルト332を高さ幅の狭いベルト出口へと導くようガイドする挿入ガイド面として機能する。
ベルト挿通ガイド溝32H2は、凹壁面32uに設けられたベルト挿通孔32H1の開口から続く溝部であり、その開口に対面する側の凹壁面32uにおいて外向き(曲率半径方向の外向き)に凹む形で、凹壁面32uの湾曲方向3Rに沿って延出形成される。つまり、ベルト挿通ガイド溝32H2は、区画壁部302に形成される凹壁面32uに対し段差を設ける形で形成された溝部である。そして、その凹壁面32uに形成されるベルト挿通ガイド溝32H2は、開放側で隣接する対向壁面32pへと続いている。凹壁面32jに設けられた開口からベルト挿通孔32H1に挿入されたベルト332は、逆側の凹壁面32uに設けられた開口から出ると、ベルト挿通ガイド溝32H2の溝底面32g1に沿って溝底面32g1上を摺動するから、自動的に溝底面32g1に沿って湾曲した状態、つまりは凹壁面32uに沿って湾曲した状態となるとともに、その先では対向壁面32pに沿って開放側へと自動的に送り出される。つまり、この溝底面32g1は、ベルト332の挿通配置をガイドする挿通ガイド部として機能している。この溝底面32g1は上記凹状ガイド壁面32g1でもある。また、ベルト挿通孔32H1及びベルト挿通溝32H2に配置されたベルト332は、孔内や溝内に収容された状態となるから、第一の区画配置部321側の凹壁面32uに対しワイヤハーネス5を配置するにあたって、そのワイヤハーネス5に対し多少接触することはあっても、そのワイヤハーネス5の配置を邪魔することはないし、ベルト332自身の位置ずれも生じにくい。
なお、ベルト挿通ガイド溝32H2の溝底面32g1は、図40に示すように、凹壁面32uの底位置32b(最深位置:図86参照)に対応する位置において、ベルト挿通孔32H1の孔底面32g0と接する形で、滑らかに連続するよう形成される。つまり、直線状に延出形成されるベルト挿通孔32H1の孔底面32g0が、ベルト挿通溝32H2の溝底面32g1に接する接平面となっている。また、ここでの孔底面32g0は、その裏面をなす底端面310bと平行をなし、ベルト332を挿入する際の直線状のガイド壁面(直線状ガイド面)としても機能する。さらに、ベルト挿通ガイド溝32H2は、開放側で隣接する対向壁面32pにも直線状に続いており、凹状の溝底面32g1から直線状の溝底面(直線状ガイド面)32g2へと続いている。
なお、第一のベルト挿通ガイド部32G1(32H1,32H2)は、区画壁部302,303が形成する第一の区画配置部321に配置されるワイヤハーネス5の長手方向5Lにおいて、その区画壁部302,303の一方の端部に形成される。そして、他方の端部には、区画壁部302,303が形成する第一の区画配置部321に配置されるワイヤハーネス5を拘束して保持する第一の拘束部331が形成される。区画壁部302,303が形成する第一の区画配置部321に配置されるワイヤハーネス5は、その長手方向5Lにおける一方の側(第一側)において第一の拘束部331により拘束することができ、その逆側(第二側)においてベルト(補助保持部)332により拘束することができるため、ワイヤハーネス5をより強固にかつ安定して保持できる。
本実施形態における第二のベルト挿通ガイド部32G3は、図41及び図44に示すように、第二の区画配置部322を形成する区画壁部303の内部をその延出方向(既に述べた高さ方向)5Xに沿って直線状に貫通するベルト挿通孔32H3である。
また、ベルト挿通ガイド部32G3は、ベルト挿通孔32H3における孔内(内部)の内周壁面の一部を、凹状ガイド壁面32g3とすることができる。これにより、ベルト挿通孔32H3にベルト332が挿通されれば、そのベルト332はそのまま凹状ガイド壁面32g3に対し当接可能な状態となる。
ベルト挿通孔32H3は、区画壁部303において先端部303Tの先端面に設けられた開口から、底端面310bに設けられた開口へと、延出方向5Xに続く貫通孔である。底端面310bに設けられた開口は、先端部303Tの先端面に設けられた開口よりも広く形成されたベルト入口として機能する。他方、先端部303Tの先端面に設けられた開口は、底端面310bに設けられた開口から挿入されたベルト332を、外へと導くベルト出口として機能するものであり、挿入されたベルト332の姿勢がある程度規定されるよう狭く形成されている。広く形成された開口側に位置する凹壁面32jの裏面32g3は、凹壁面32jの湾曲方向3Rに沿って湾曲形成された内壁面(内周側壁面)であり、そのベルト入口から挿入されるベルト332をベルト出口へと導くようガイドする挿入ガイド壁面として機能する。なお、本実施形態のベルト挿通孔32H3は、区画壁部303の底端面310b側において、底端面310b側に向かうに従い、表裏両側の凹壁面32j、32uに沿って広がって開口するよう形成されるが、当該開口内の凹壁面32u側には、挿通されたベルト332の凹壁面32u側への曲げが生じないよう凹壁面32uの裏面から突出する壁部32g4(図22及び図28参照)が形成されている。
底端面310bに設けられた開口からベルト挿通孔32H3に挿入されたベルト332は、凹壁面32jの裏面32g3と対面した状態となる。そのベルト332を凹壁面32j側に湾曲させた場合、その裏面32g3に当該ベルト332を容易に当接させることができる。この裏面32g3が上記凹状ガイド壁面である。また、ベルト挿通孔32H3に挿通配置されたベルト332は、ベルト挿通孔32H3内に収容された状態となるから、第二の区画配置部322側の凹壁面32jに対しワイヤハーネス5を配置するにあたって、そのワイヤハーネス5に対し接触することがないため、その配置を邪魔することはないし、ベルト332自身の位置ずれも生じにくい。また、図44に示すように、ベルト挿通孔32H3の内壁面には、裏面32g3から続く直線状の内周側壁面(内側壁面)32k2と、同じく直線状の外周側壁面(外側壁面)32k3とを、挿通されたベルト332と密着可能なガイド面(直線状ガイド面)として有する。
なお、第二のベルト挿通ガイド部32G3(32H3)は、区画壁部303が形成する第二の区画配置部322に配置されるワイヤハーネス5の長手方向5Lにおいて、その区画壁部303の一部区間に形成される。ここでは、区画壁部303のうち、長手方向5Lにおける両端部を除いた中央部に形成される。本実施形態では、区画壁部303のうち、長手方向5Lにおける一方の端部に、比較的長い区間をとって第一の拘束部331が形成される一方、他方の端部に第一のベルト挿通ガイド部32G1が形成されるため、第二のベルト挿通ガイド部32G3は、それらの間となる、他方の端部側に偏った中央区間に形成されている。
なお、ベルト挿通ガイド部32G3は、第一の主保持部材3Aの区画壁部301,302,303のいずれにかまたは複数形成してもよい。
ところで、第一の主保持部材3Aに2つ設けられた第一の区画配置部321には、図18に示すように、第一の収容配置部32Uの凹壁面32uの一部領域が切り欠かれており、切り欠かれた領域内に弾性片3cが形成されている。弾性片3cは、その凹壁面32uに当接してワイヤハーネス5が配置された場合に、そのワイヤハーネス5をその凹壁面32uに対する開放側とは逆側(該凹壁面32uとの当接方向)へと押し込むよう弾性変形可能である。凹壁面32u上に当接配置されたワイヤハーネス5が拘束部33によって拘束されると、弾性片3cは押し込まれ、これを押し返す弾性復帰力をワイヤハーネス5に付与する。これにより、ワイヤハーネス5は、凹壁面32uと拘束部33との間で狭圧状態となって、安定して保持できる。
ただし、弾性片3cは必ずしも設ける必要はない。第一の主保持部材3Aにおいても、双方の第一の区画配置部321に弾性片3cを設けてもよいし、対向壁面32p,32pの対向幅及び円弧状に湾曲する凹壁面32uの径が大となる第一の区画配置部321にのみ、弾性片3cを設けてもよい。
また、第一の主保持部材3Aに設けられた第一の区画配置部321には、図40に示すように、第一の収容配置部32Uと第一の重ね配置部32Pに積み重なる形で配置されるワイヤハーネス5,5の間を仕切る仕切り片3dが、それらワイヤハーネス5,5の積み重なり方向5X(アンカー軸線方向10X)に弾性変位可能な形で設けられている。本実施形態の仕切り片3dは、第一の拘束部331に形成されており、ヒンジ部331Aを中心に一体に回動変位する。具体的には、第一の拘束部331のヒンジ部331A側の端部に形成されている。
ただし、仕切り片3dも必ずしも設ける必要はない。第一の主保持部材3Aにおいて、双方の第一の区画配置部321に仕切り片3dを設けてもよいし、対向壁面32p,32pの対向幅及び円弧状に湾曲する凹壁面32uの径が大となる第一の区画配置部321にのみ、仕切り片3dを設けてもよい。
また、第一の主保持部材3Aに設けられた第一の区画配置部321には、第一の収容配置部32Uと第一の重ね配置部32Pに積み重なる形で配置されるワイヤハーネス5,5の間を仕切る仕切り片3dが、それらワイヤハーネス5,5の積み重なり方向5X(アンカー軸線方向10X)に弾性変位可能な形で設けられている。本実施形態の仕切り片3dは、第一の拘束部331に形成されており、ヒンジ部331Aを中心に一体に回動変位する。具体的には、第一の拘束部331のヒンジ部331A側の端部に形成されている。
第二の主保持部材3Bについて説明する。
図45〜図70に示すように第二の主保持部材3Bも、第一の主保持部材3Aと同様の第一の区画配置部321及び第二の区画配置部322を有する。なお、第一の主保持部材3Aと同様の構成や同様の機能部については、第一の主保持部材3Aに付した符号と同じ符号を図示することにより、説明を省略する。
第二の主保持部材3Bでは、1つの第一の区画配置部321と1つの第二の区画配置部322とを横並び方向3Zに隣接して有する点は共通するが、横並び方向3Zに隣接する2つの第一の固定配置部321を有さない点で異なる。また、横並びする第一の区画配置部321と第二の区画配置部322との間に設けられる共通の区画壁部305の形状が、第一の主保持部材3Aの区画壁部302,303とは異なる。また、第二の主保持部材3Bの区画壁部304,305は、第一の主保持部材3Aの区画壁部301〜303よりも、長手方向5Lの長さが短い。
具体的にいえば、区画壁部305には、図69に示すように、区画壁部302,303とは異なり、配置されるワイヤハーネス5の長手方向5Lにおける一端側の先端部305Tに係合穴302Hが形成され、その係合穴302Hには、区画壁部304から延出する第一の拘束部331が係合し固定される。区画壁部304,305が形成する第一の区画配置部321に配置されたワイヤハーネス5は、その係合穴302Hに係合固定された第一の拘束部331によって拘束されて保持される。他方、図67に示すように、区画壁部305には、配置されるワイヤハーネス5の長手方向5Lにおける他端側にベルト挿通ガイド部32G5が形成され、ベルト挿通ガイド部32G5にガイドされる形で第二の拘束部332であるベルト2を配置できる。
この区画壁部305は、横並び方向3Zの一方側に第二の区画配置部322を形成するものであり、第二の収容配置部32Jの凹壁面32jと、その凹壁面32jの湾曲方向3Rの一端から連続する形で直線的に延出形成された第二の重ね配置部32Iの片壁面32iとを有する点で、区画壁部303と共通するが、凹壁面32jの湾曲方向3Rの他端側も同様に、当該他端から連続する形で直線的に延出形成された片壁面32iを有する。つまり、凹壁面32jの両端から、凹壁面32jに対し接平面をなすよう延出する第一の片壁面32iと第二の片壁面32iが、互いに平行をなすことなく直線状に形成されている。ここでの第一の片壁面32iと第二の片壁面32iは、互いに直交する方向に延出形成されている。
ベルト挿通ガイド部32G5は、図70に示すように、第一の片壁面32iから凹壁面32jへ、さらにその凹壁面32jから第二の片壁面32iへと連続する全ての当接壁面32i,32j,32iに沿って、それらを形成する略L字型壁部305の内部を貫通するベルト挿通孔32H5として形成される。ベルト332の入口及び出口は、第一の片壁面32iを形成する直線状壁部の先端部305Tの先端面と、第二の片壁面32iを形成する直線状壁部の先端部305Sの先端面とに、同形状の開口として形成されている。
ベルト挿通孔32H5を形成する内壁面のうち、凹壁面32jの裏面となる該凹壁面32jに沿った内壁面(内周側壁面・外向き壁面)32g5が凹状ガイド壁面をなす。他方、ベルト挿通孔32H5を形成する内壁面のうち、内壁面32g5と対面する内壁面(外周側壁面・内向き壁面)32g6も、上記凹状ガイド壁面をなすとともに、ベルト挿通孔32H5内にベルトを挿通する際には、ベルト332を、ベルト挿通孔32H5の屈曲形状に沿って摺動させる形で曲げ変形させながら挿通させていく挿通ガイド壁面として機能する。
また、第二の主保持部材3Bでは、係合穴302Hが形成される区画壁部305が、対向するもう一方の区画壁部304よりも長く形成される。そして、その長い区画壁部305の先端部305Tは、配置されるワイヤハーネス5の長手方向5Lにおける一端側に係合穴302Hを、他端側にベルト挿通孔32H5の挿入口(開口)を有する。
また、第二の主保持部材3Bでは、凹壁面32jの全面が、凹凸無く滑らかに連続する湾曲面(図54参照)として形成されている。
一方、第一の主保持部材3Aの凹壁面32jは、図41に示すように、配置されるワイヤハーネス5の長手方向5Lにおいて、中央部に形成される第二のベルト挿通ガイド部32G3に沿った湾曲方向3Rに延出する中央領域の両端と、その中央領域の両隣りの領域の外端に形成された突条部32j(図26参照)の突出側先端(ここでは先端面)であり、長手方向5Lに断続的に形成される。つまり、突条部32jの突出側先端が複数併設されることで、ワイヤハーネス5の配置面(凹壁面)が形成されている。このように本発明の当接壁面32u,32j,32p、32iは、第一の主保持部材3Aの複数の突条部32jと同じように、先端の突出高さが当接壁面32u,32j,32p、32iに一致するよう突出する突出部の先端によって形成されてもよい。つまり、当接壁面32u,32j,32p、32iは、必ずしも面である必要はなく、ワイヤハーネス5との当接位置を、線や点での当接によって予め定められた当接想定面(当接壁面32u,32j,32p、32i)に規定できるものであればよい。
なお、第一の主保持部材3Aと第二の主保持部材3Bの各壁部301,302,303,304,305には、補強用にリブを残しつつ適宜凹部を形成する形で肉取りがなされ、薄肉化・軽量化されている。特に各区画壁部302,303,305は、横並び方向3Z両側に薄い板部を対向配置し、間に空隙を挟む形で形成されている。
このように、主保持部材3(3A,3B)は、ワイヤハーネス5や電線等の長手状の部材を積み上げる形で収容可能な区画配置部321を横並びに複数備えるとともに、それら区画配置部321に収容した長手状の部材の脱落を防ぐよう拘束する拘束部33を備えることにより、長手状の部材をクランプ保持することが可能なクランプ部材である。さらに主保持部材3(3A,3B)は、ベルト2をひっかけるガイド部32G(32G1,32G3,32G5)が、配置部321を構成する壁部を貫通して形成されており、配置部321に収容された長手状の部材を、ガイド部32Gに挿通させたベルト2によって収容状態に保持することも可能である。また、主保持部材3(3A,3B)は、別部材をなすアンカー部材10に対し着脱可能に組み付けることで車体等への固定が可能であり、アンカー部材10とともにクランプ1の部品をなすものである。
以上、本発明の一実施例を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、追加及び省略等の種々の変更が可能である。以下、上記実施例の変形例について説明する。なお、上記実施例と共通の機能を有する部位には同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、上記実施例と下記変形例とは、技術的な矛盾を生じない範囲において適宜組み合わせて実施できる。
上記実施形態のクランプ1において、アンカー部材10は、車体側構造体102の穴部102Hに挿入されて係合固定される場合に、所定の姿勢が保持される形で係合固定されるよう構成される。主保持部材3の配置部32及び拘束部33は、ワイヤハーネス5をその長手方向5Lが所定方向に向くよう規制する形で配置して拘束する保持部として構成される。そして、アンカー部材10の主保持部材組付け部13と主保持部材3のアンカー部材組付け部31は、それら双方のうちの一方が他方に嵌入され、その嵌入方向(嵌入組付け方向)13Yの奥側で当接する形で組み付けられる。ところが、本実施形態のクランプ1’は、上記実施形態のクランプ1とはその組み付け状態が上記実施形態とは異なっており、図81〜図85に示すように、アンカー部材10が上記所定の姿勢で車体側構造体102の穴部102Hに係合固定された場合に、主保持部材3の配置部32に配置されて拘束部33によって拘束されるワイヤハーネス5の長手方向5Lが水平方向(車両前後方向100X及び車両左右方向100Yを含む)となり、かつ嵌入方向13Yの奥側が車体上下方向における下向き100Z1となるよう構成できる。これは、主保持部材3の底端面310bに形成されるアンカー部材組付け部31の向きの違いによって実現することができる。
上記実施形態のクランプ1,1’において、アンカー部材10は、主保持部材3を用いてワイヤハーネス5を保持する第二保持状態においても、アンカー部材10のベルト挿通孔12Hにベルト2を挿通することが可能に構成されている。これにより、上記第二保持状態において、ベルト挿通孔12Hにベルト2を挿通し、長手状の車体側構造体(フレーム構造部)102を、その外周側からそのベルト2によって取り巻いて結束して保持することができる(例えば図85参照)。さらには、上記第二保持状態において、ワイヤハーネス5を、主保持部材3を巻き込む形で外周側から取り巻いて結束して保持することができる(例えば図84参照)。本発明においては、必ずしもいずれかを実現可能とする必要はないが、いずれか又は双方を可能とすることで、クランプ1,1’を多彩な目的で使用することができるし、多様なワイヤハーネス5に対しても柔軟に対応可能になる。
上記実施形態において、第一の拘束部331のヒンジ部331Aは、図86に示すように、凹壁面32uの円弧の中心位置32aに対し、該凹壁面32uの底位置32bとは逆側に位置するよう形成される。さらに、凹壁面32uの底位置32bからその円弧の中心位置32aを通過する方向を高さ方向5X(上記重なり方向と同方向)とした場合、その高さ方向5Xにおいて、ヒンジ部331Aに対し、開口内突出部302Dと、第一の拘束部331の係合固定部331Cと係合穴302H内の係合固定部302Cとの係合固定位置より低い高さとなっているが、同じ高さとしてもよい。低い高さとなっている場合は、係合固定の強度を増すことができるし、同じ高さに近づくほど、図86が示す係合穴302H内の穴幅をより狭くし、壁部302の厚みを減じることができる。これは壁部301の先端部301Tから延出形成される第一の拘束部331も、壁部303の先端部303Tから延出形成される第一の拘束部331も同じとすることができる。
本発明の主保持部材は図88〜図90に示す主保持部材3’も含めてよい。